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先月「国家戦略会議」(議長・野田佳彦首相)の「フロンティア分科会」(座長・大西隆東大大学院教授)が、日本のこれからの雇用の長期ビジョン「フロンティア構想」として報告書をとりまとめ、発表されました。

<フロンティア分科会報告書>
あらゆる力を発露し創造的結合で新たな価値を生み出す「共創の国」づくり (PDF)

これが大きくニュースとなって報道され、賛否両論ありましたが、ニュースを一読しただけだけではなんのことかさっぱりわからなかったので、少しまとめてみます。もちろん38年後といえば私はもうこの世とはとうにおさらばしているはずなので、どうでもいいっちゃいいのですが。

ニュースの概要は、
フロンティア分科会:40歳定年制など提言 実現は不透明(毎日新聞)

2050年の日本のあるべき姿を検討してきた有識者会議「フロンティア分科会」が7月6日、首相に提出した報告書は、雇用流動化で経済を活性化させるための「40歳定年制」の導入や、高所得者への社会保障給付の削減など大胆な政策を提言した。現状への危機感を踏まえたものだが、どこまで実現するかは見通せない。
(中略)
そのための施策として、少子高齢化に対応して75歳まで働ける雇用環境を整備する一方、40歳定年を選べる制度作りも提案。働き盛りでひとまず定年を迎え、成長企業に転職することなどを想定している。
(後略)
とのことですが、この後段部分を読んで理解できる人がいるのかどうか?

日経新聞はもう少し詳しく書かれています。
雇用流動化へ「40歳定年を」、政府が長期ビジョン、労働者の再教育を支援(日本経済新聞)

国家戦略会議の分科会は6日、国の長期ビジョン「フロンティア構想」の報告書をまとめた。国家の衰退を防ぎ、個人や企業が能力を最大限生かして新たな価値を生む国家像を2050年に実現するための政策を提言。「40歳定年」で雇用を流動化するなど労働生産性を高める改革案を盛り込んだ。
(中略)
改革案の柱は雇用分野だ。60歳定年制では企業内に人材が固定化し、産業の新陳代謝を阻害していると指摘。労使が合意すれば、管理職に変わる人が増える40歳での定年制もできる柔軟な雇用ルールを求めた。早期定年を選んだ企業には退職者への定年後1~2年間の所得補償を義務付ける。社員の再教育の支援制度も作る。雇用契約は原則、有期とし、正社員と非正規の区分もなくす。
もっとも定年制の前倒しには労働者の強い反発が必至だ。社内教育で従業員に先行投資する企業側の抵抗も予想される。改革の実現には転職市場や年功型の退職金制度、人材育成などと一体的な検討が必要だ。改革案は長期的な指針で、全
て早期に実現を目指すという位置づけではない。
(後略)

ここでは「雇用問題」に限定しますが、上記で言いたいことは

前提
1)現在の60歳定年制は雇用の硬直性を招いている
2)現状のままでは企業は40年後には新興国に敗れる
そこで
3)付加価値の高い産業や仕事で時間や場所を選べる労働が理想
例えば
4)企業は40歳定年制も選択できるようルール改正する
5)早期定年者には1~2年の所得補償義務づけや再教育支援制度を実施
さらに
6)雇用は有期契約のみとし正規・非正規の区分を廃止する

と言ったところでしょうか。

これを見て感じたのは、あくまで雇用する側(使用者)の立場での論理構成だなと感じました。委員会の構成メンバーの多くが大学教授で、一般社会と企業の現実を知らなさすぎるというのが最大の要因でしょう。

つまり安い給料で元気に働いてくれる30歳代までの人を企業は積極的に使い、40歳代以上は体力も落ちて持病も多くなり、さらに仕事よりも家庭を中心と考えるようになるので、ごく一部の役員候補以外は自動的に若年定年制にして追い出し、企業は身軽になって国際競争力をつけようと言っているかのようです。そしていったん役員になりさえすればそれこそ70代でも80代でも何歳でもOKよと。それは支配層にとっては夢のようなパラダイスでしょう。

しかし現実はというと社会保障費削減のあおりを受けて、年金受給開始が遅れ、働きたくなくても定年を延長して65歳に、さらに70歳にしようという方向まで決まっています。そしてこれからの主役となってくる若い新卒の社員達は、ずっと定年までひとつの会社で働きたいという願望が年々強くなってきています。

これらの記事の「40歳定年」と言っているのは、どうも現在の60歳定年と同じ意味の定年ではなさそうで、一部の企業で導入され始めている「選択定年制」のようなものなのかなと最初は思いました。

もし現在の「選択定年制」であれば辞める辞めないは雇用者側が判断するのであって、長くそのまま働きたい人は残ってもなんら問題はないのですが、ここではそうではなさそうです。

結局「使用者側が柔軟に決められる定年制」と呼ぶべきでしょうか。まるで使用者が絶対的立場で強く、従業員を奴隷のように扱い女工哀史を生んだ明治、大正の頃の大企業労使関係のようで、時代を逆行しているように感じます。

また現在は有期と無期が入り交じっている雇用契約を、すべて有期雇用にするということは、欧米の雇用契約に近づけようという意味合いなのでしょうが、これも使用者側にとっては誠に都合がよい雇用形態です。

通常有期雇用契約と言えば最大で1年間ですから(プロ野球の3年契約とかは雇用契約ではなく球団参加契約)、使用者が毎年残したい人だけ選抜し、あとはその時の業績や気分で自由に解雇ができるという使用者側からすると願ってもない夢のような話しです。

この改革案は直ちに政府方針となるわけではないとのことですが、こうまでして学会や政界はパトロンの経済界におもねって雇用の流動化を推進し、アジアの新興国に対し経済や政治で必死にリードを守っていく必要が本当にあるのでしょうか。

超高齢化に向かうこの社会において、しゃかりきになってアジア各国と経済競争をするのではなく、国内内需に重点を置いて世界に羨ましがられる国や社会インフラを作り上げ、日本へ行けば世界でトップクラスの医療、介護、エンタテーメント、リゾートなどの質の高いサービスが得られ、世界中(のお金持ち)から老後はこの安全で清潔な国に移り住みたいと思ってもらえる国を目指すほうが、国際社会の中においてずっと存在感が増すのではないでしょうか。





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625
大手メディア(特に日経新聞)に5月末から7月上旬のあいだに掲載されたリストラ(解雇や退職勧奨)情報を調べてみました。これらから業種や職種による好不況が読むとれるかどうかやってみます。

なお本来リストラ(restructuring)とは企業が収益構造の改善を図るために事業を再構築する意味ですが、ここでは異論もあるでしょうが、あえて一般的な使われ方になりつつある「リストラ≒人員整理」という意味で使用しています。

【リストラ】

パナソニック(家電製造)
携帯部門1000人削減検討、、海外に軸足
2012/05/30 日本経済新聞

オリンパス(光学機器製造)
本業に集中、2500人削減、来月に新計画、不採算子会社を整理へ
2012/05/31 日本経済新聞

ミスズ・サンメディカル(電子部品製造)
希望退職70人募集、テレビ向け電子部品不振
2012/06/01 日本経済新聞

ルネサスエレクトロニクス(半導体製造)
最大14000人と全従業員の3割を削減
2012/06/10 日本経済新聞

UKC(半導体商社)
希望退職60人募集、国内営業など縮小。国内拠点の営業・管理部門などの社員が対象
2012/06/18 日経産業新聞

あずさ監査法人(監査法人)
6月下旬に転職支援制度による早期希望退職者を募った。応募者は約280人
2012/07/04 日本経済新聞

スズケン(医薬品卸)
勤続3年以上の正社員を対象に希望退職500人募集
2012/07/10 日本経済新聞

LIXIL(住宅設備製造)
900人削減、統合受け希望退職募集。40歳から59歳で勤続5年以上の正社員を対象
2012/07/10 日経産業新聞


【採用増】

スクロール(通信販売)
企画・営業、東京に集中、9月までに5割増の150人体制
2012/05/30 日本経済新聞

システムリサーチ(システム開発)
5年以内、従業員、7割増1000人に
2012/05/30 日本経済新聞

マニー(医療機器製造)
医療機器の研究開発強化、国際競争力高める、担当者100人に増員
2012/05/30 日本経済新聞

沢井製薬(製薬)
抗がん剤専門の営業担当増員を現在の10人弱から2015年3月期までに20人程度に引き上げる
2012/06/05 日経速報ニュース

エイチーム(ゲーム開発)
モバイル端末向けのソーシャルゲーム開発者を13年末までに100人採用し倍増させる
2012/06/08 日本経済新聞

東京都(官公庁)
民間企業の勤務経験者を中途採用する「都職員キャリア活用採用」90人を採用。金融など専門家活用
2012/06/12 日本経済新聞

ファーストリテイリング(衣料専門店)
2012年に前年実績比3倍の250人、13年には350人を採用する
2012/06/15 日本経済新聞

エス・バイ・エル(住宅建設)
分譲参入、地区営業責任者、他社の経験者採用
2012/06/21 日経産業新聞

東明工業(航空機器製造)
航空機の組立技術者100人増員-800人体制に
2012/06/27 日刊工業新聞Newsウェーブ21

コスモス薬品(ドラッグストア)
2013年5月期は前期比で約10倍の100人程度を採用中途採用
2012/07/02 日経産業新聞

JR西日本(鉄道)
2012年度は30~40代の車両や線路の保守などにあたる技術者ら100人の専門社員を中途採用する計画
2012/07/03 日経産業新聞

まずリストラですが、ここ10年ぐらいはずっとこのような感じで特に代わり映えがしません。

つまり製造業を中心として大手から中堅まで幅広く恥ずかしさのみじんも感じさせずに堂々としたリストラぶりです。なぜ恥ずかしいかと言えばアメリカとは雇用習慣が違う日本では「リストラするのは私たち経営者は無能です」と言っているのと同じことだからです。

ただ数年前と比べると感覚的なものですが、リストラ件数や人数は減少しているように思われます。しかしそれが不況を脱しつつあるからとは思えません。無能な経営者が減少しているならばそれはそれで結構なことです。

ここ数年繰り返しリストラを断行しているパナソニックやルネサスエレクトロニクスなどにはリストラ大賞を差し上げたいところです。エリート意識が格段に高い監査法人も、一昨年には新日本監査法人が、昨年にはトーマツが数百人規模のリストラを断行し、これでリストラ監査法人三兄弟が出揃ったというところでしょうか。

医薬品卸業のスズケンに限らず、10年ぐらい前から国内では流通破壊が起きていて、日本独特の商習慣である卸売りの業態がもはや時代に合わなくなってきています。従来は大手卸売企業が仕入・在庫・流通・販売・ファイナンスの元締めとして独占的に君臨し、販売価格や品揃えなど横並びで統制をかけて守らせてきましたが、メーカー直販や大手量販店の独自流通網、ネット通販など卸業者を経由しないビジネスが増えてきたことにより大きな変革期にあります。

卸売業の中で比較的まだ安泰なのは、書籍など出版物の卸売り(書籍の場合はなぜか取次と呼びます)で、二大取次店のトーハンと日販が委託販売制を武器に再販制度などに守られ長くこの業界を牛耳っています。

ただしこちらもいずれ出版社からの直接買い取り販売や、Amazonなど大規模流通システムを独自に構築する企業の攻勢、それになんと言っても紙の本や雑誌から取次を通さなくてもよい電子書籍への移行が間近に来ています。しかし再販制度の堅持やISBN番号の問題など数年で劇的に変わるわけではなさそうなのでまだ当分は大丈夫でしょう。

いずれにしても改革に乗り遅れた卸売企業はいまは必死で変わろうとしていますが、その経営上層部にいる人達は「我が世の春」をずっと謳歌してきた人ばかりなので、リストラする以外に方法が思いつかないのでしょう。現場で苦労している若い人や、リストラの憂き目に遭っている役員になれなかった中高年の方々が気の毒です。

一方では採用増を計画、実行している企業や団体も増えてきています。これはその内容にもよりますがいいことです。

しかし残念なことに製造業の人員増が明らかに少ないです。雇用を守ると言えばすぐに製造業を思い浮かべるぐらい、とにかく製造業は雇用の裾野が広くて採用規模も大きく、さらには様々な能力の人を受け入れられる幅も広く、失業者対策にとっては大きなインパクトがあります。営業職や販売職など増やすと言ってもせいぜい二桁ですが、製造業の場合、ひとつの工場が稼働すれば、工場周辺を含めて数百~数千人の雇用が成り立ちます。

採用増企業(団体)の業種は「製薬」「住宅」「IT」「製造」「量販」「鉄道」「官庁」などまちまちで、特定の業界がいいから採用増というわけではなさそうです。つまりライバルが経営不振であえぐ中、同じ業界にいながら躍進し採用を増やしていこうというのですから、これは経営者の能力以外の他になにが考えられるでしょうか?

ただここに上がっている採用増企業も過去に大規模なリストラをやったことがないかと言われるとそうとも言い切れません。また今回採用された人達も、数年先に企業の業績が悪くなったとたんに解雇される可能性もあります。特にぽっと出の企業の急速な拡大による大幅採用増には注意が必要でしょう。

業績に浮き沈みがあるのは仕方がないことですが、それによってすぐに雇用人員で調整されるのでは、雇われる立場になって考えるとそれはたまったものじゃありません。「いつリストラされても大丈夫なように普段からスキルアップをしておけばなにも怖くない」とバカなこというコンサルタントや学者がいますが、そんなことで解決できる問題ではありません。

それとは別に戦略的に新卒を減らして中途の即戦力を増やしたり、本人都合の退職者の補充を控え、社内間で余剰人員を異動させたりするのはこれはリストラ(人員整理)とは言えません。そういう機転を素早く利かせられるかが経営者の能力です。

いやしかし採用増企業がまったく見られなかった数年前と比べると、採用を増やそうという企業が多少なり増えてきたことは多少明るい話題です。




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621
過去に書いた自分の日記を読み直していると、その時々の精神状態がよくわかります。私の場合は精神的につらく追い詰められているときは、前向きで明るい話題を中心に書き、逆にまずまず順調で推移しているときは悲観的で暗い話題を選んで書いているようです。

これには理由があって、落ち込んでいる時には例えカラ元気であっても明るく振舞っていないと、精神状態がどんどんと奈落へ沈んでいきますから、それを防ぐという意味合いで意識して前向きな内容となります。

逆に調子のいい時には、そのうちまたあの悪夢が襲ってくるんじゃないかと疑心暗鬼に囚われ、万が一、最悪の結果になったとしても、その時に慌てなくていいように、また精神的なショックをモロに受けないように、自然とネガティブなものの見方へなってくるのです。

ここ数年は体力は相当落ちてきたことを実感するものの、仕事はまずまず順調にいっているので、それに調子に乗らないようにと戒める意味もあってか、ネガティブでアイロニーあふれる話題と意見を多く書いているようです。これってあまり誉められものじゃないですね。

過去に一度も仕事や生活で一生のトラウマになりかねない最悪の修羅場を経験したことがないと、自分にとって最悪の状況というのが理解できません。例えば独身の20歳代で勤めていた会社が潰れて失業したり、相思相愛だと思っていた人に振られたと言っても、その年齢ならば再就職は比較的容易にできるでしょうし、恋愛もまだやり直すことができます。

でももし重い負担の住宅ローンと、扶養すべき家族や高齢で病気の親を抱え、40代や50代で突然失業の憂き目に遭ったとしたら、再就職も難しくおそらくたいへん大きな精神的ショックをうけることになるでしょう。さらに介護が必要な家族を抱えていたりすると、もうそれはパニックです。

しかもそういう厳しくつらい事態は、年齢的に若い人よりも、もうどこにも逃げ場のない中高年以降になってからよく起きるものなのです。

つまり中高年者が「失敗を恐れて新しいことをやらない」「考えが保守的になる」「チャレンジ精神に欠ける」というのは、単なる加齢による肉体的、精神的老化現象だけがもたらすものではなく、過去のおぞましい経験から、本能として避けようとしているのではないでしょうか。

中には高齢になっても気持ちは若々しく、健康でチャレンジ精神旺盛で、若い人よりも活動的な人もたくさんいます。しかし一般論としては、多くの失敗と挫折を経験し、その恐怖をよく知っている中高年こそ、若い人がもっていない特殊な才能ではないかと、ふと考えました。いえ、できない言い訳ではなく。

世の中の高齢者が、みんな気持ちが前向きで、若い人の前に出て、先頭で走り続け、引っ張っていく社会がいいとは思いません。そんなことすると若い人が目障りに感じるでしょう。高齢者には高齢者の役割があるはずで、新しいチャレンジングなことや斬新な感性を要する仕事、そして二三日徹夜しても平気という肉体にきつい仕事などには当然向きません。

「船頭多くして」といいますが、いつまでも老醜漂わせた高齢者がリーダーを務めているような集団はどこかに欠陥があるものです(別に某新聞社のことを言っているのではありません)。

いま、60歳定年から65歳定年へと動き始めています。これはどういうことかというと、企業の中で働く中高年者の割合が一気に増加するということです。今までなら60歳で引退していた人達が65歳まで残るわけですから、従業員の平均年齢も、大きくあがっていくことになります。

それら中高年族には「新しいことには消極的」「考えが保守的」「体力、気力、根性はない」「昔はやり手だったという高いプライド」「好き嫌いが激しい」「短気で怒りっぽい」「覚えが悪く、物忘れが激しい」「身体のどこかに必ず異常を持つ」などなど、なにかをするには多くの障壁が立ち塞がります。

少し前に「企業は若者の早期離職を恐れるな」で皮肉的に「若い人の退職を減らしたいなら、リーダー(経営者)を30代にして40代以上は部下として使え」と書きましたが、入社して10年でトップに立ってしまい、その後は若者に30年間使われるほうへ回るというのは、むなしいものです。本来ならこの長くなる中高年世代をうまくモチベーション高く活用することが企業としてもっとも有効な手段です。

中高年者に「変われ」と言うのは簡単ですが、上記にも書いたとおり、修羅場をくぐり抜けてきた経験と、それに対する怯えは、病院へ行って薬を処方してもらって治るようなものではありません。

そうした怯えや過去のひどい経験の記憶をいかにしてうまく希薄化させられるかが、今後の社会の中で中高年者を積極的に活用する方法ではないでしょうか。

   




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海外移転で製造業の労働者はどこへいったのか? 2012/6/2(土)

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製造業の工場海外移転は1990年代からすでに始まっていましたが、本格的に進むのは2000年に入ってからです。

戦後は焼け野原となった国土で、多くの労働者の受け皿として、また高度経済成長の牽引役として日本各地から動員されてきた工場労働者は、バブルの終焉となった1992年を頂点にその後現在まで下降傾向にあります。

戦後の初等教育では一貫して将来製造業の従業員になるための訓練をおこなってきたと言って差し支えありません。つまり単独プレーや独創性など個性は押さえ込み、均一化された大量生産に向く、金太郎飴のような人材を育成することが国家的プロジェクトとして最大の目標だったわけです。

製造業に関わる労働者数を具体的に数字で見ていくと、1970年に1,377万人と就業者全体の27%が製造業でした。20年後バブルの頃1990年は1,505万人で24%が製造業に従事していました。およそ3~4人に一人の割合です。

それがさらに20年後、2009年には製造業の就業者は1,037人と20年前から468万人減り、就業者の割合は17%となります。大ざっぱに言えば雇用される労働者のうち1970年は10人中3人が製造業だったのが、約40年後の2009年には10人中2人以下となってしまったということです。

下記のグラフは2002年に調査項目(産業分類)が大幅変更となり、1968年から2002年までと、2002年以降のふたつに分かれています。これは従来「サービス業」などで一括りにしていたものを、「医療・福祉」などに分割し細かくしたことによります。

グラフ1産業別就業者推移(1968年~2002年)
201206_01.jpg
出典:総務省統計局日本標準産業分類別雇用者数(年平均)から抜粋

グラフ2産業別就業者推移(2002年~2009年)
201206_02.jpg
出典:総務省統計局日本標準産業分類別雇用者数(年平均)から抜粋


しかし製造業の就業数の絶対数だけで見ると、1970年1,377万人、1990年1,505万人、2009年1,222万人と、率で見るのとは違ってさほど大きな変動があったようには見えません。それは団塊世代など就業者総数が2000年半ば頃まではずっと増加傾向にあったので、そのようなことが起きます。

絶対数では大きな変動がないと言っても、過去製造業で働く人がもっとも多かった1992年の1,569万人と比べると17年後の2009年は1,097万人と472万人も減少しています。不況の影響ももちろんありますが、この減った数の何割かは工場の海外移転に絡んでいるものと思われます。

ではこの約472万人の人達は、製造業からいったいどの産業へいったのでしょう?

まず第一に、上記産業別就業者推移グラフを見ると、製造業、農林業の労働者は大きく減少していますが、「サービス業」が大きく増加しています。1992年と2002年の10年間で323万人も増加しています。産業間の労働者の移動のまずひとつめとしてそれが見て取れます。

そのサービス業を細かく分類した2002年以降のグラフ(上記グラフ下)を見ると、2002年から2009年の直近7年間で「医療・福祉」で147万人の増加、「サービス業(他に分類されないもの)」が79万人増加しています。この分類では「コンサルや広告代理店、人材ビジネスなど」などが該当します。その他では「情報通信業/金融・保険業」で50万人の増加で、上記3つを合計すると276万人が増えていることになります。

2002年以前の詳細は不明ですが、おそらくこの「医療・福祉」「その他サービス」「情報通信・金融保険」で製造業で減った470万人の大部分をカバーしているのと思われます。

第二として生産人口の15~64歳の完全失業者数はどうだったかというと1970年1月は55万人(完全失業率年平均1.1%)、1993年1月は148万人(同2.5%)、2002年1月は351万人(5.4%)、2009年1月は286万人(5.1%)ですから、1993年と2009年を比べると失業者が138万人も増加していることになります。

つまり、医療福祉、サービス業、情報通信などへの労働移転が進む一方、それに漏れてしまった人が失業者となったと推測ができます。

次に、製造業や建設業でモノ作りをしていた人(工場労働者や建設労働者)が、その後どういった職種に変わっていったのかをやはり統計を用い推定してみます。

下記のグラフは職業別就業者数推移です。

201206_03.jpg
出典:総務省統計局職業別就業者数(全国、年平均)

「製造・制作・機械運転及び建設作業者」がもっとも多かったのが1992年の1,726万人でした。それが18年後の2010年は1,278万人と448万人減っています。上記の産業別より就業者数が多いのは「建設作業者」が入っているからと推測できます。

一方1992年から大きく増えているのは「保安職業,サービス職業,運輸・通信従事者」で220万人増、「管理的,専門的,技術的職業従事者」が133万人増、「採掘作業者,労務作業者」が77万人増(3つ合計で430万人)で、この3つの職種へ変わっていったと考えられます。

意外だったのは、感覚的には増えているだろうと思っていた営業職や小売業などに従事する「販売従事者」は増加どころか逆に減少傾向にあります。

それに製造業の労働者人口の減少以上に「農林漁業作業者」が一貫して下げ続け、統計のある1962年時点と比べると2010年はその2割に、ここ10年間だけを見ても20%の減少と歯止めがまったくかかっていません。第一次産業に従事する人達の高齢化と跡継ぎがなく廃業することが多くなってきていますので、今後もこの傾向は続きそうです。

もしかすると、製造業労働者の本当の受け入れ先にすべきは、サービス業やハローワーク(完全失業者)ではなく、農林水産業や畜産など第一次産業ではないのかと思ってしまいますが、勤務場所や所得、季節労働、零細規模、仕事の厳しさなどがあり、第三次や第二次産業から果たして第一次産業へ移れるか?と問われるとその難しさは容易に理解ができます。

最近になってようやく一部の事業家が大規模農業を始めたり、年間を通して栽培が可能な野菜工場が始まったり、事業運営を会社組織にして従業員が安定した収入を得られるよう第一次産業も少しは変わってきていますが、まだまだホンの一握りでしょう。

なぜ第一次産業改革が進まないかというと、やはり補助金や補償金、奨励金など既得権益を受けている人や組織が規制緩和や自由化への反対と農業改革に抵抗感が強いことがあります。政治家にとってみればそのタブーに手を出せば、次回は落選間違いなしで、農家とJAなどの関連利益団体を敵に回すことは、郵政改革で郵政族を、金融ビッグバンで金融族を敵に回したのとでは桁違いの反発を喰らうことになるでしょう。

本来なら古くから農家などの支援が強かった自民党から、サラリーマンの労働組合の支援が強い民主党に変わった段階で、それらの既得権益を打ち破らなければならなかったはずでしたが、まだ政治基盤が弱い民主党には、そういう思い切った政策がとれませんでした。

しかし債務超過のいま、いつまでも食糧自給率を盾にする第一次産業だけ補助金を出せるはずもなく、そして緊急の国家課題として雇用対策というのがあり、それの解決法としてこの農業・漁業・畜産業の改革を国家政策として押し進めていくことが日本の将来にかかっているのではないでしょうか。

ぜひ政治と民間の力で、細々とした田畑の個人農家や、休耕地を集約し、それを民間企業に委託して、また産学一体となり最先端のバイオ技術などを利用し、安全でしかも効率のいい農業や水産業を目指すべきではないのかなと思っています。

そうすることにより、高齢化して後継者不足で破綻寸前、補助金頼みの産業に活力を与え、行き場を失っている労働者や失業者が、安心して働くことができる政策を、早急に打ち出してもらいたいものです。





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正社員の解雇には2千万円かかる!それホント? 2012/5/16(水)

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経営者向けのダイヤモンドonlineに「正社員の解雇には2千万円かかる!」という記事が出ていました。弁護士の向井蘭氏が書いたシリーズのひとつで、要約すると「社員を解雇し、その後、訴訟沙汰になって負けると数千万出費することがありますよ」というものです。

その2千万円の内訳とは、

 1)賃金仮払いの仮処分(例では14カ月分420万円)
 2)本裁判で敗訴した場合の賃金支払い(19カ月分570万円)
 3)控訴して敗訴した場合の仮処分分と賃金支払い(6カ月分360万円)
 4)最終的な割増退職金など和解金(150~650万円)

と言うことです。

不思議なのは、賃金仮払いが認められて仮処分で支払われる金額(上記の1や3)と、本裁判で雇用主側が負けて支払うことになる未払い賃金(上記2と3)は、その期間が重なっているのに相殺されず、雇用主側は裁判の期間中、給料をダブルで労働者側に支払わなければならないケースがあると言うこと。知りませんでした。

この点は、不思議に思っていましたが、やはり各所から反論や指摘があり、著者が実例を元に後で追記されていました。それによると著者が関わった1審の判例にそのような事例があり、ただしそれが最高裁で争われたわけではないので、確定的な話しではないそうですが、そういう解釈をされるリスクもあるよと言うことらしいです。なので通常は仮払いと未払い給与をダブルで支払われることはまずないそうです。

話は変わって、私の知っている人で、勤務先の役員から暴言をかけられ、退職を強要された人が、会社を訴え、未払い分の賃金を含め、和解金1千万円近くを勝ち取ったケースがありました。この人は役員のその暴言を隠し持っていたレコーダーで録音していた(計画的ですね)ことが、裁判を決定的に有利にしたそうです。

これらのことから、理不尽な退職を強要されたときは、早く決着をつけてすぐに次の就職先をと考えるのもいいですが、あきらめず解雇は無効であると訴え、抵抗することで多少なりとも生活費を得ることができるかも知れません。

但し、表には出てきませんが、上記の知人の例では個人で加入できる労働組合に相談をして裁判に持っていったため、裁判費用や組合活動費として和解金の半分以上を組合へ納めたと聞きました。そうなると、金銭的な面だけ考えると、おとなしく会社の指示に従い、温情で割り増し退職金などを得たり、転職サポートサービスの提供を受けたりし、次の仕事探しに早く取りかかったほうが結果的にはよかったかも知れません。

もちろん組合に依頼をしなくても、個人で弁護士を雇い、裁判をする方法もありますが、供託金や弁護士費用は相当かかり、最悪裁判に負けてそれに使った費用すら回収できないというリスクもあります。そういうことが個人が企業相手に裁判をする時に一番迷う点でしょう。

上記の知人はまだ若く転職にもそれほど困ることはなく、裁判に打って出たのは「会社と暴言を吐いた役員に思いっきり反省させてやる」との一念がありましたから、お金がすべてではなかったのですが、中高年者の場合だと再就職が厳しいのがわかっているだけに、難しい選択となるでしょう。

いずれにしても民事の裁判というのは「儲かるのは弁護士だけ」と言われるように、勝っても負けてもそれに使う費用や時間、労力、それに精神的な重圧など、むやみにやると双方ともに傷つき、疲労が溜まるだけのケースが多いようです。相手側に明かな違法行為があった場合や訴訟マニアは別として、できれば一生涯そういうことに関わらず、できるだけ話し合いでの決着を望みたいものです。

一般的に解雇規制と言われている法律
 旧条項 労働基準法第18条の2
 現条項 労働契約法第16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

整理解雇する場合は、次の4要件を充たす必要があるとされています。 
整理解雇の4要件 
 (1)人員削減の必要性
 (2)整理解雇をすることの必要性
 (3)解雇対象の人選の妥当性
 (4)解雇手続きの妥当性

  解説
(1)整理解雇をおこなうには、相当の経営上の必要性が認められなければならない。一般的に、企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性が認められる場合は、もちろん、そうでない場合でも、企業が客観的にみて経営危機下にある場合、人員整理の必要性は認められる傾向にある。
(2)期間の定めのない雇用契約においては、解雇は最後の選択手段であることを要求される。役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がおこなわれてから着手することがやむを得ないと判断される。
(3)人選基準が合理的であり、あわせて、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。
(4)説明・協議、納得を得るための手順を踏んでいない整理解雇は、他の要件を満たす場合であっても無効とされるケースがある。




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