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令和4年(2022年)版「高齢社会白書」が内閣府から出ましたので、概要を少し抜き出して感想を述べてみたいと思います。
まず2021年10月1日現在、総人口1億2,550万人に対し、65歳以上人口は3,621万人で、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.9%、総人口の3.4人にひとりが高齢者となりました。
高齢化率がピーク近くを迎える31年後の2053年頃には総人口が1億人を切り、高齢化率が38%を超え、総人口の2.6人にひとりが65歳以上となる予測があります。
なにか考えるだけで恐ろしい気もしますが、2021年時点ですでに秋田県で高齢化率38.1%、高知県で35.9%となっていますので、そうした地域をよく見れば20~30年後の東京や大阪の姿が見えてきそうです。
23年後の2045年の予測では、一番高齢化率が低い(若々しい)地域は東京都で30.7%、その次が沖縄県31.4%です。逆に高齢化率が高いのが秋田県で唯一50%を超えて50.1%です。秋田県ではまもなく総人口の半分以上が65歳以上になるようです。
逆手にとれば、若い人が秋田県へ移住すれば、特に体力や集中力、最先端知識がいる仕事では引く手あまたとなり、難関国公立大学へも楽々入学できそうです。でもそこへ移住して、高齢者向けの「オレオレ詐欺が入れ食い状態だ!」というのはお勧めしません。
◇ ◇ ◇
平均寿命は、2019年時点で、男性が81.41歳、女性が87.45歳で、2010年から男性で1.86年、女性で1.15年長くなっています。
同様に日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、2019年は男性が72.68年、女性が75.38年で、2010年から男性で2.26年、女性で1.76年それぞれ長くなっています。
平均寿命の伸びよりも健康寿命の伸び率が上回っていることは、医療費や介護費の増加に歯止めをかけ、国民の健康志向が高まっているとも言え、良いことではないでしょうか。
但し、要介護者数は10年前から75歳以上を中心に約186万人も増えています。
さらに2020年以降は新型コロナの影響で、特に高齢者の重症者が多かったことや、医療が逼迫したことで、高齢者の病気、特に慢性病に対し十分な対応ができなかった影響が今後統計に出てくるかも知れません。
◇ ◇ ◇
高齢者の就業率の推移は、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75歳以上では、10年前の2011年の就業率と比較して、2021年の就業率はそれぞれ14.4ポイント、14.1ポイント、9.8ポイント、2.1ポイント伸びています。
65歳以上で収入をともなう仕事(農林水産業や自営業、パートなど含む)をしている人の割合は、30.2%で、その内訳は男性が39.8%、女性が21.3%です。逆に言えば、65歳以上では働いていない人が働いている人の倍近くいると言うことです。
65歳以上の高齢者で、親しくしている友人や知人がいると答えた人は79.6%で、男女別では男性が76.4%、女性が82.4%となっています。やはり近隣や地域の中でつきあいが多く、一般的にコミュニケーション能力が高い女性のほうが高くなっています。男性は長く限られた世界で仕事をし、リタイアすると急に友人が減ってしまうということも多そうです。
65歳以上の高齢者が情報機器の利用内容は、
「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」 23.7%
「SNS(Facebook、Twitter、LINE、Instagramなど)を利用する」 13.1%
「パソコンの電子メールで家族・友人などと連絡をとる」 12.2
「情報機器を使わない」 17.0%
となっていて男女差はあまりありません。わかってはいましたが、高齢者の情報機器の利用は相変わらず少ない感じです。
75歳以上で見ると、「情報機器を使わない」が男性25.1%、女性29.8%と高くなります。
この世代は、中年になって以降にパソコンが普及し始め、高年者になってから携帯やスマホが普及したので、それらを仕事で使う機会があまりなかったことによります。
嫌でも使わざるを得なかった人を除き、情報機器を使わなくとも支障がなければその後に学ぼうというモチベーションは起きなかったでしょう。
それでも75歳以上の男性で4人に3人、女性で3人に2人は情報機器を使っていますので、その人達は、中高年以降に新たなことを覚えるため努力をされたのだと思います。
正直言うと、こうした頑として情報機器を避けたい人達がここ最近までこの国を長く支配してきたので、国や地方や政府の情報化が大きく遅れ、世界の中でもIT後進国となってしまいました。
各地の保健所がコロナ対応で、FAXを使って手書きのコロナ感染者数などを報告している姿が世界中で笑いものになっていたのは記憶に新しいところです。
今の子供達は、物心が付いた時にはスマホが身近にあり、仕事でも情報機器を当たり前に使うので、今後は一気に変わっていく気もしますが、現在はこの情報機器を使わない巨大な団塊層以上の17%の人のために、どれほど立派で便利なシステムを構築しても、旧来からのアナログのやり方と共存せざるを得ないというジレンマがあります。
総務省の「通信利用動向調査」によると、2020年のインターネットの利用者率(過去1年以内に利用したかどうか)は、20代では98.5%に対し、60代は82.7%、70代は59.6%、80代は25.6%です。やはり75歳あたりを境に情報機器の利用に大きな差が付いているようです。
◇ ◇ ◇
最後に、最近盛んに報道されることが多い高齢者が運転する自動車死亡事故についてです。
おそらく日本人なら「高齢者が起こす自動車死亡事故が急増している」と思っているでしょうけど、統計データからは、75歳以上の運転者が起こした死亡事故を、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数(運転者の年代層別でみた死亡事故件数)で見ると減少傾向にあります。
運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、2010年は75歳以上が12.7人だったのが2021年には5.7人、80歳以上は2010年が18.2人だったのが2021年は8.2人とそれぞれ半分以下に減少しています。
75歳以上の免許保有者は2010年が131万人、2021年が262万人と倍増しているので、10万人当たりの事故件数だけで見ると誤りますので、発生件数で比較すると、2010年は207件だったのが2021年は132件と半分には至りませんがやはり下がっています。
2021年は新型コロナの影響で、死亡事故全体が下がったことや、高齢者の外出が減ったことを勘案しても割合は減少傾向にあります。
いずれにしても「高齢者ドライバーの事故が急増」はマスコミが作り上げた印象操作に過ぎないということです。
今日のところはここまで。
また機会(と言うかモチベーションが)があれば分析して続編を書いてみたいと思います。
【関連リンク】
1059 高齢社会白書(平成28年度版)
967 平成27年度高齢社会白書を読む
780 あらためて高齢社会白書を概観してみる
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このブログでも過去に書いたことがある「限界集落」についてですが、その後どのようになっているのか調べてみました。
調べると、過去2回、9年前の2013年と、4年前の2018年に書いていました。
地方が限界集落化していく 2013/5/11(土)
過疎と限界集落の行方とコンパクトシティ 2018/3/24(土)
今回の元データ、「過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査報告書」(令和2年、総務省 地域力創造グループ 過疎対策室、調査時期:令和元年9月11日~令和元年11月29日)
を元にしてその概要を少し書いておきます。
まず過疎集落についてですが、過疎法(過疎地域自立促進特別措置法)により過疎地域に指定された地域のことで、市町村単位ではありません。
2022年5月時点で市町村数は1,724ありますが、その市町村からさらに区分けした現存する(居住者のいる)全集落数は調査時点で76,710集落あり、その中の49,341(64.3%)集落が過疎集落と言われています。
前回調査の4年前(2016年)は、過疎集落数が46,831(61.9%)集落だったので、4年間で2,510集落が新たに増加しています。
都市部に住んでいると、集落の6割以上が過疎という実感は感じにくいですが、旅で地方へ行くと、シャッター通りや、放置された田畑、空き家、神社などを見かけることがあります。
前回調査時点で過疎地域であった集落数は 0.6%(349 集落)減少しています。その内訳は、消滅(無人化)した集落(139 集落)や集落再編により減少した集落(327 集落)のほか、新たに誕生した集落(74 集落)等ということです。
過疎集落の中で住民の半数以上が65歳以上の集落(いわゆる高齢化率50%超え)は20,372集落あり、過疎集落全体の32.2%(4年前は22.1%)を占めます。その中には住民全員が65歳以上(高齢化率100%)の集落が956集落(1.5%)あります。
地域別では、住民の半数以上が65歳以上の集落の割合が中国圏と四国圏では40%を超えています。
同じく過疎集落において住人の半数以上が75歳以上である集落の割合は3,676集落で割合は5.8%、住民全員が75歳以上の集落は339集落で0.5%となっています。
都会でも高齢化率が3割に近づきつつあるとか言ってますが、すでに高齢化率100%の集落が国内に千近くもある(そのうち339集落は75歳以上だけの集落)とは驚くしかありません。
集落住民全員が75歳以上の集落(339集落)のほとんどが10人未満・10世帯未満の基礎集落で、約6割が集落機能の維持が困難な状況とされています。そりゃそうでしょうね。
それでも、こういう意見を述べている学者さんがいます。
限界集落の真実―過疎の村は消えるか?(2019年、首都大学東京都市教養学部准教授山下祐介)
私は「消えた」とされる集落を調べてみました。しかし高齢化が理由で消えた集落はありませんでした。消えた真相は、戦後開拓がうまくいかなかった、災害移転、ダム建設に伴う移転などであり、本当の意味で高齢化が理由で消えた集落は探してもないというのが私の結論です。 |
どうなんでしょうね。
つまるところ、出て行く一方で、財産を守り、新たなことを始める新しい血が入らず、開拓がうまくいかなかったのも、インフラを新しく更新し災害を未然に防いだり、復旧させることができなかったのは住民の高齢化が一番の原因と思いますが、どうなのでしょう。
今後10年以内に消滅(無人化)する可能性がある集落は454集落0.7%(4年前515集落)で、いずれ消滅(無人化)すると予測されている集落は2,744集落4.3%(4年前2,697集落)です。
地方ブロック別でみると、今後「10 年以内に消滅」あるいは「いずれ消滅」と予測されている集落の割合が最も高いのは四国圏です。
前回調査時に「10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されていた集落の中の508集落が、今回調査までの4年間で実際に消滅(無人化)したのは47集落(9.3%)でした。
地方ブロック別でみると、北陸圏で多く、10年以内に消滅すると予測された集落の3割近くが消滅しています。
前回調査時に「10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されながら現在も存続している集落の8割以上は、10人未満・10世帯未満の小規模集落で、いずれにしても今後数年以内には消滅する可能性が高いと思われます。
過疎集落の生活サービス機能の特徴としては、 公民館や集会所は33.2%の集落に、商店・スーパーは21.8%、、駅やバス停は53.5%の集落にある一方、病院・診療所やガソリンスタンド、郵便局、ATM、デイサービスセンター、小学校、幼稚園・保育所等がある集落は1割に満たない状況です。
コンビニや駅はもちろん、各種の病院やATMなどがすべて徒歩圏にあるという都会育ちには考えられないことでしょう。
ザクッと概要だけを抜き出しましたが、毎年国内では、茨城県や山口県の県民全人口に相当する60万人以上が減少しているので、地方の集落が毎年数百消えていくのは仕方がないことだと思います。
同じように寒村と言っても岐阜県の白川村のように、なにも努力をしなければとっくに消えていたような山深き中の集落が、今では世界遺産に指定され、国内はもとより世界中から観光客を集め、若い人の移住者が増えるという成功を収めた集落もあります。
いずれにしても、人口減少が続く日本において、その集落を生かすも殺すも、そこに住む人達の能力と努力次第で、集落を出て行った子供達や、ましてや政治や役所の力をあてにしていてはダメなのでしょう。
【関連リンク】
1587 地方の道の駅の正しい方向性は
1154 地方の可能性と限界
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私の住む地域は都市部郊外地域で、30年前に引っ越してきたときには大きな道路から少し入れば田畑など農園も拡がる割とのんびりした地域でした。
写真:日産ライフケアビークル |
そして気がつくと、自宅の周囲には多くのデイサービス(通所介護)事業所ができています。
Googleマップで自宅周辺の「デイサービス」を検索するとおよそ半径1kmほどの中に15箇所のデイサービス事業所が見つかりました。
同条件で検索するとコンビニはもう少し多くて20箇所ありますが、コンビニは駅周辺に集中しているのに対し、デイサービス事業所は地域全体に広がっています。
平日、朝にウォーキングをしていると、ディサービスの送迎車ばかりが目立ちます。住宅地の中を走るクルマは宅配便のクルマかディサービスのクルマどちらかです。
そのディサービスですが、中でなにがおこなわれているのか?というのはあまり知られていません。
規模や設備などによっても違うそうですが、ディサービスの目的は「(要介護者が)自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図る」だそうです。
つまり、
1.機能維持・向上
2.日常生活のお世話
3.機能訓練
4.孤立感の解消
5.家族の(身体的/精神的)負担軽減
結構アレもコレもと欲張りな目的です。
要介護者に認定されると、介護保険の範囲でディサービスを利用できるわけですが、当然ながら利用者側から様々な意見があります。
例えば、「はてな」にディサービスについて投稿されていたコメントを一部抜粋して引用すると、
「ボランティアでデイサービスに行ったときに、利用者の方に「みんなが好きでここにいるんじゃない」と言われた」
「デイサービスは個人の部屋が無いしまわりがガヤガヤしてるのが苦手な人は逃げ場が無いからキツい」
「塗り絵とか子どもの遊びみたいのさせられる。ばかみたいって祖母も嫌がってる。人によって「尊厳が傷つけられた」と感じる基準違うから難しい。」
「デイサービスは利用者の世代が60代から100代と幅広く、性別も趣味も障害もバラバラの人々が一堂に会するから。これを解決する手段はない」
これらの意見はいずれも介護現場の近くにいる関係者か要介護者の家族の話しばかりで、ディサービスを利用している要介護者本人の意見ではありません。
影響力がある多くのフォロワーを持つ要介護者が、TwitterなどSNSで利用者の本音を発信するようになるのは、まだあと数年はかかりそうです。
◇ ◇ ◇
NHKスペシャルでも放送されましたが、認知症診療の第一人者だった精神科医の長谷川和夫さんが認知症に罹り、社会に認知症の理解を進めていく活動をされていましたが、今年の11月に亡くなられました。
その長谷川医師が自ら提唱したディサービスへ自分が介護される立場になって通所した時のことについてこのようなことを語っています。
「認知症の第一人者が認知症になった」(NHK)
家族の負担を減らし、認知症の人の精神機能を活発化させ、利用者が一緒に楽しめる場所の重要性を訴え続けてきた。 しかし、この日、利用者全員で行うゲームに参加した長谷川さんに笑顔はなかった。 「医者のときは『デイサービスに行ったらどうですか?』って、そういうことしか言えなかったよね。少なくとも、介護している家族の負担を軽くするためには非常に良いだろうくらいな、素朴な考えしか持っていなかったよ。『今日は何がしたいんですか?したくないですか?』っていうことから出発してもらいたい。ひとりぼっちなんだ、俺。あそこに行っても。」(長谷川さん) |
確かに負担が大きい要介護者を抱えた家族にとってディサービスは大きなメリットには違いありませんが、肝心の要介護者本人にとっては「行きたい場所ではない」となっているケースがあるようです。
特に高齢者や認知症患者は新しい対人関係が苦手な人が多く、個室がなく、全員で一緒になにか(童謡を歌ったり折り紙したり)をやらされるとか、不満がたまる人もいるでしょう。集団生活が苦手な私もたぶん合いそうもないです。
最近は、高齢者の趣味嗜好にできるだけ合わせた行事や活動、レクリエーションを取り入れているところもありますが、まだまだそういうのは例外的で、多くは「危険がなく安全第一で」「できるだけ全員一緒に」「少数の介護者で管理が可能な」ことに限定されるのでしょう。
障害の程度や機能の違い、性別や年齢、趣味趣向など幅広い要介護者を相手にしますので、たいへんだとは思いますが、これから自己主張が特に強い団塊世代がその対象となって一気に増えていきますので、様々な問題やトラブルが起きそうで心配です。
【関連リンク】
1556 寝たきりの人はどのぐらいいるのか
1043 親の介護は行くのか呼ぶのか
999 覚悟の地方移住か都市部で介護難民か
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写真はUR都市機構から |
その小説では、多摩ニュータウンと思われる郊外の団地に住んでいる団塊世代と思われる男性が定年退職後に活気が失われ変わりゆくニュータウンの中で奮闘する姿が描かれています。
また今読んでいる垣谷美雨著の「ニュータウンは黄昏れて」は2013年に単行本が発刊されましたが、タイトル通り、最寄り駅からバスで5分、住民の高齢化のため昼間までも人通りがない5階建団地が10棟、エレベータなし、都心から1時間のやはり多摩っぽいニュータウンの団地(豊ヶ丘団地?)が舞台となっています。
それらの70年代の高度成長期に作られたニュータウン団地も、50年が経ち次々と建て替えられていますが、駅の近くでないと資産価値もあまり高いとは言えません。
特にニュータウンというのは丘陵地帯に作られたものが多く、また5階建でもエレベーターがなかったり、買い物にはクルマが必要だったりして足腰が弱った高齢者が日々生活するには厳しいものがあります。
ただ周辺には自然が多く、敷地は広くゆったりとってあり、自動車道路と歩道が明確に区分されていて、広い公園が計画的に作られているので、若い夫婦が子育てするのには良いところです。
ところが賃貸物件については、空き部屋が増加傾向にあるのに、急増するひとり住まいの高齢者が借りられないという状態が続いています。
テレビでやっていましたが、
・不動産会社で賃貸アパートを申し込んでも年齢だけで大家に断られる
・開業医で仕事も収入も確かな人でも高齢者のひとり住まいと言うことで断られる
・最近は独身者の場合、年齢が下がってきて40代でも年齢を理由に断られるケースもある
・およそ家主の7割が単身高齢者の入居を断っている
・国交省主導のセーフネット住宅は登録数こそ多いが実態は空室率3%未満という少なさで意味を成さない
など
確かに大家さんの立場に立つと、高齢者の単身者は孤独死や認知症発症による火事の心配や近所トラブルなどリスクが高いとされています。
また、賃貸の場合、孤独死や自殺などが起きた部屋や同じアパートに新しく入居する人に対し、その「心理的瑕疵」の事実を伝える重要事項の説明が義務化されています。そういう物件に進んで入居したいと思う人は多くはないでしょう。
そしてその「心理的瑕疵」の多くは、賃貸の場合、事故が起きてから2~3年間という長きにわたり課せられるので、大家さんとしては死活問題になってきます。
別の番組(NHKクローズアップ現代)では、なんと孤独死や部屋で自殺などがあった事故物件の売買を専門に扱う「成仏不動産」というなんとも言えない社名の代表が、やはり増えている高齢者の孤独死の問題を話していました。
まもなく世帯数の増加も頭打ち(国立社会保障・人口問題研究所の報告では2023年がピークと推計)となりこれからは減少していくことになり、空き家も2020年には876万戸にのぼり総住宅数の約14%を占めています。
賃貸の借り手はこれから急速に減っていくのに、高齢者だと言うだけで入居できないというのはなにか矛盾しているように思えます。
つまり、家主は固定資産税や相続税対策のために賃貸住宅を建てただけで、やっかいな高齢単身者に貸すぐらいなら空室が続いても構わないということなのかも知れません。
ウォーキング中に気がつきますが、農地だったところに次々単身者用っぽいマンションが建ちますが、完成後も住人の気配(洗濯物や自転車、カーテン、ゴミなど)が感じられず、ほとんどの部屋の窓には雨戸が閉まったままというところがあります。
なんとまぁ、空き室は多いのに、入居できなくて困っているというミスマッチな住宅事情ですねぇ、、、
テレビでは、R65不動産という高齢者限定の賃貸住宅をメインに仲介している会社の社長が出ていましたが、時代に合っていて狙いは良いのですが、わがままな双方(借りる方も貸すほうも高齢者が多い)の希望に合わせるのに苦心している感じがしました。
自治体によっては、入居者の見守りサービス(照明が24時間点灯しない場合に警備会社に連絡等)の費用を補助し、家主が安心して貸せるようにするなど対策をおこなっていますが、「入居者死亡保険」については特に話が出ていませんでした。
この通称「孤独死保険」は、葬儀費用や部屋のクリーニング、遺品整理、空室期間の家賃補填まで、条件次第ですべてが対象となるので、家主にとっては身寄りのない単身高齢者でも、死後の空室による機会損失や孤独死の風評被害を最小限に抑えることができて有効だと思います。
しかしイマイチ普及しないのは、その保険料を高齢者の場合だけ家賃に上乗せするということが二重価格になるのでできず、保険料もフルに加入すれば一室当たり月2~3万円(月額家賃の2~3割増し?)は余分に必要で、それをすべての部屋の家賃に上乗せすれば市場競争力がなくなってしまうことを懸念しているのかなと思います。
ここは国や自治体が、入居者も家主も使いづらい補助金制度の「セーフネット住宅」なんかすぐにやめ、民間の「見守りサービス」と「孤独死保険」をセットにして、増え続ける空き家に単身高齢者がすぐに入れるようにすべきではないでしょうか。
【関連リンク】
1303 持ち家か賃貸かは、引退後に大きな差が付く
1103 高齢者の賃貸アパート入居問題
795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用
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62歳でリタイアして、8ヶ月ぐらいは無収入で貯金を取り崩しながら生活していましたが、63歳になってその翌々月には初めての公的年金(厚生年金保険)を受け取りました。
リタイアして無収入になった途端にいきなり様々なコスト?がふりかかってくるのは覚悟はしていましたが、貯蓄額が見る見る間に減っていくのを見て末恐ろしくなりました。この話しはまた別の機会にでも。
その公的年金ですが、私の場合、受給年齢が60歳から65歳からに段階的に引き上げられた厚生年金保険のうち、63歳から一部(報酬比例部分)を受給できます。
残念というか(4年ほど早く生まれていれば60歳から受給できた)、ラッキーというか(あと4年ほど遅く生まれていれば65歳からしか受給できなかった)、微妙な年齢と言うことです。
もっと言えば、16年早く生まれていれば、報酬比例部分だけでなく、本来なら定額部分も含め60歳からフルに受給できましたので、悔しさはあります。
なんて厚かましいヤツ!と思われるかも知れませんが、私が社会人になったときには、まだ法改正されてなく「60歳になれば年金が支払われる」という国との約束で払い続けてきたので、裏切られた思いをするのもやむを得ないでしょう。(法改正は1985年と2000年)
年金の定額部分も含めて満額60歳から受給できた人は、昭和16年4月1日以前生まれの人ですから、戦中生まれまでということになります。
団塊世代(1947年~1949年生まれ)の多くは、報酬比例部分は60歳から、定額部分も63歳または64歳から受給できました。国会の選挙に大きな影響を及ぼしてきた世代ですので、むげにはできなかった妥協の産物だったのでしょう。
年金は言うまでもなく、リタイアした後の唯一確実な収入源となります。
「マンション経営しているから」とか、「投資で稼いでいる」というのは、10年20年単位で見ると決して安定した収入源ではありません。
まして「ずっと働くから年金はあてにしない」というのは、最後の手段であって、親や家族が病気になって看病や介護するため仕事を辞めざるを得なかったり、自分の健康を害することもあります。
年を取ると言うことは、イコール健康を害していくということなのです。
そんな中、こういう記事を読みました。
「年金保険料を払うのは無駄」という人の9割が誤解している年金の実態(Mocha)
年金未納率は3~4割とも言われることがあります。年金を払いたくない人は、年金未納者がたくさんいるため、年金制度はいずれ破綻すると考えていないでしょうか? (中略) 2020年度末の公的年金加入者は6740万人。このうち未納者数は115万人ですから、割合にするとわずか1.7%です。公的年金はほとんどの人が保険料を払っている状態ですから、制度としては問題なく運営されているのです。 |
わずか1.7%とは言え、まだ、年金について変な誤解をしていたり、偽情報を信じ込んでいたりして支払い拒否している人がいるのですね。収入がほとんどなく経済的に支払えないということかも知れませんが。
ちなみに生活保護受給者は年金保険料の納付が免除されています。
12年も前に発刊された、細野真宏著『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? 世界一わかりやすい経済の本』 (扶桑社新書)にも書かれていましたが、年金が破綻することは、日本が破綻しない限りありません。
日本が財政破綻したら?
その時は、きっとアメリカか中国かロシアが、国土を割譲するとかなにか大きな代償を支払えば手を差し伸べてくれるでしょうし、減額はされても年金がゼロになることはないでしょう。そうしないと、国民の半分近くが憲法で保障された生活を維持するために生活保護を申請することになります。
そうした破綻することを想像して老後を考えるよりも、どうやって年金を増やせるかを考えることが重要だと思います。
ずっと先のように思っても、30代40代から60代に達するまでは光陰矢のごとし、アッという間です。
遅くとも40代のうちには、子供の教育費や住宅ローンなどと同程度に年金についても知識をつけて、もし国民年金しかないのならば、国民年金基金で上乗せするとか、厚生年金の人でも個人年金保険に加入するなど、対策を考えて実行しておかないと、ふと50代に入ってから慌ててももう遅すぎます。
最近、FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的に自立し、早く引退)という生き方がもてはやされていて、テレビでもその実行者が紹介されます。
確かに早期リタイアは私もずっと憧れていましたが、結局はかないませんでした。
そして62歳でリタイアしたあとで気がついたことは、「60歳までキッチリ厚生年金保険を支払っていたおかげで、月々20数万円の年金を死ぬまで(配偶者には死んでからも)得ることができた」です。
FIREで早期リタイアした人は、配当金や投資活動で収入はあるでしょうけど、将来受給できる年金はフリーランスと同様に国民年金だけです。
ごく一部の、数億円の資産ができた人ならば、早めにリタイアし、豪遊はしないで利息や配当だけで暮らす質素な生活を続ければ、年金がなくても一生を穏やかに終えることもできるでしょう。
でも数千万円の資産ができたからと、30代や40代でリタイアしたら、やがて老後になった時には貯蓄が尽き、しかも年金は国民年金(月額65,000円)だけで、困窮することは目に見えています。
65歳から85歳までの20年間に必要なのは、22万円×12ヶ月×20年=5千2百万円です。かなり質素な最低限の生活を送ってこれだけかかります。
投資は、順調に稼げるときもあれば、大きく損を出すこともあります。ましてや個人の投資は情報の少なさや、投資に割ける資金の少なさから、組織的な投資企業や団体に比べて不利は免れません。
30~40年後に、いまFIREでもてはやされている人達がどうなったか、ぜひ知りたいと思いますが、その頃には私はもうとっくにこの世にはいなそうです。
【関連リンク】
1403 年金相談会へ行ってきた
1384 ねんきん定期便を精読する
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