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世界の中心で愛を叫んだけもの(ハヤカワ文庫 SF) ハーラン・エリスン

奇才のSF作家と言われている著者の短篇集で原題は「(The Beast that shouted Love at The Heart of The World」とほぼ直訳のタイトルです。

最初このタイトルを見たときは、セカチュー人気にあやかって変な意訳にしたなぁーって勝手に思っていたら違いました、すみません。

著者はこうしたSF小説から、テレビドラマの脚本家として、「宇宙大作戦」や「アンタッチャブル」「ルート66」など多くの作品も手がけている多彩な方です。

この短篇集に収録されているのは下記の15篇です。

・世界の中心で愛を叫んだけもの(The Beast that shouted Love at The Heart of The World)
・101号線の決闘(Along The Scenic Route)
・不死鳥(Phoenix)
・眠れ、安らかに(Asleep: With Still Hands)
・サンタ・クロース対スパイダー(Santa Claus VS. S.P.I.D.E.R.)
・鈍いナイフで(Try A Dull Knife)
・ピトル・ポーウェブ課(The Pitill Pawob Division)
・名前のない土地(The Place with No Name)
・雪よりも白く(White on White)
・星ぼしへの脱出(Run for The Stars)
・聞いていますか?(Are Your listening?)
・満員御礼(S.R.O.)
・殺戮すべき多くの世界(Worlds to Kill)
・ガラスの小鬼が砕けるように(Shattered like A Glass Goblin)
・少年と犬(A Boy and His Dog)

SFですから、ふざけたものから、割とシリアスなものまで様々ですが、あまり真面目なリアリストが読むと混乱するというか嫌になって放り投げたくなるかも知れません。

というのも、1950年代から1960年代にかけて書かれた作品なので、最近書かれた現代のSFというイメージとはかけ離れています。それだけに「50年代にそこまで考えたか?」と読み込むとなかなか深いですが。

それだけに感想を書くのも難しく(よくわからなかったということもある)、おそらく数回読み込まないとちゃんとした感想や書評は難しそうです。

個人的には一番まっとう?な、ラストの「少年と犬」が一番面白かったです。最後はちょっとブラックでしたけど。

60年以上も経っても、異国(日本)で読み継がれている作品だけに、中身は確かそうです。よくわかりませんが。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

溺レる (文春文庫)  川上弘美

1999年に単行本、2002年に文庫化された短篇小説集で、伊藤整文学賞を受賞しています。

短篇は、「さやさや」「溺レる」「亀が鳴く」「可哀相」「七面鳥が」「百年」「神虫」「無明」の8編で、いずれも明快ではない純文学風です。

個人的には、こうした少し風変わりと思える女性から見た恋愛観や性愛などについては理解できない点も多く難解ですが、一般教養?として読み続けています。

著者は私と同年代ですが、書かれたのが23年前ということもあり、40代になり中年域にかかってきた様々な葛藤と複雑な心境(例え著者にはなくとも私にはあった)を言葉にしたものかなぁというのが感想。

この年代というのは、経験もあるし諦めもあって微妙な心理状態な時期です。そうした中での男女の機微を読むと、「そうなんだ」とか「それはないかな」とか様々な思いがよぎります。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

生きている理由 (講談社文庫) 松岡圭祐

著者の作品の中では義和団事件の「黄砂の籠城」や、キスカ島撤退作戦の「八月十五日に吹く風」など、実際にあった歴史上の事件や作戦を元に小説仕立てにした作品がとても面白く、次いでこの清朝崩壊後の歴史を下敷きにしたこの小説を読みました。

2017年に文庫で刊行された長編小説で、崩壊した清朝の王家の娘が子供の頃に日本の家庭に養女としてだされ、その後日中両国で様々な話題を提供することになる日本名川島芳子の少女時代の物語です。

川島芳子は、清朝の第10代粛親王善耆の第十四王女で、本名は愛新覺羅顯し(あいしんかくら けんし、最後の「し」は王偏に子)です。後に「男装の麗人」とか、「東洋のマタ・ハリ」とか、呼ばれることになり、最後は当時中国を支配していた中華民国に捕らわれ、売国奴として死刑に処されます。

この小説では、満蒙独立運動の先駆者で粛親王と親しかった日本人の川島浪速に8歳の時に引き取られ、表向きは川島家の養女となりますが、なぜか籍は入れずに清朝の皇族のままで育てられます。

理由は、いずれモンゴル人で満州国の軍人に清朝皇族として嫁がせ、そこで清朝王国を復興させようという目論見からでした。

そうした政略結婚(のち離婚)後の華々しい活躍と悲惨な最期はこの小説では出てこず、少女の頃に日本で様々なことが起きたことをフィクションとして書かれています。

先に挙げた歴史小説と比べると、ちょっと奇想天外、松本聯隊のの下級将校が東京においても付きっきりでガードしたり、日本の街中で相続した黄金の駒を中国人と奪い合いで派手な銃撃戦が展開されるなど、無理なところが目立ってしまい、ちょっと残念に思います。

その後の川島芳子を描いた続編が予定されているそうですが、まだ出てなさそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ミーナの行進(中公文庫) 小川洋子

2006年に単行本、2009年に文庫化された長編小説で、2006年に谷崎潤一郎賞を受賞しています。

著者の作品では「博士の愛した数式」だけを読んでいます。その小説を読んだ後、寺尾聰や深津絵里らの出演する同名の映画も見ましたが、とても良い心が穏やかな気分になる作品でした。

この作品は最初は母子家庭の主人公の女子中学生が、母親の仕事の関係で、2年間芦屋住まいでお金持ちの叔母夫婦の元に預けられるという設定で、なにか陰湿なイジメにでも遭うような話しなのかな?と身構えましたが、まったく見当外れで、心が洗われるような話しで良かったです。

その主人公が居候させてもらう芦屋の豪邸には、叔母夫婦と、その娘、叔父の母親でドイツ人の老婆の4人の他、住み込み家政婦で実質的に家事全般を仕切っている老婆、通いの庭師でもあり飼育しているコビトカバの世話係の男性が主要な登場人物です。

時代は、著者の年齢にほぼ合わせている感じで、1972年~1973年頃に中学生時代を送っているその時代の頃の話です。

タイトルのミーナとは、主人公の叔母夫婦の娘で小学生の美奈子のことで、喘息もちで身体が弱く、学校以外は滅多に外出しない少女。

そして通学など外出するときには、クルマの排気ガスが苦手なので、コビトカバの背中に乗って移動することが多いという変わった子供です。

どちらかと言えば貧しい家庭の子だった主人公が、いきなり上流社会、しかも家族に外国人がいる家庭で暮らす毎日は刺激的で、しかもその家族の中で大事にされ育てられます。

淡い恋や、ミュンヘンオリンピック(1972年9月)での男子バレーボール日本代表チームの活躍など、様々な出来事が散りばめられていて、退屈しない面白い作品でした。

★★☆

【関連リンク】
 4月前半 蜜蜂と遠雷(上)(下) 、となり町戦争、連続殺人犯、追想五断章
 3月後半 虹色天気雨、老いた家 衰えぬ街、冷たい校舎の時は止まる、ドリーム・ハウス
 3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋

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1628
蜜蜂と遠雷(上)(下) (幻冬舎文庫) 恩田陸

2016年に単行本として、2019年に文庫版になった長編小説ですが、2017年の直木賞を受賞した作品です。また同年の本屋大賞も受賞しています。

まだ直木賞受賞者じゃなかったの?というぐらいにベテランで売れっ子作家さんです。私も好きで2006年頃から18作品を読んでいます。好きなのは古い小説ですが「黒と茶の幻想」(2001年)や「夜のピクニック」(2004年)などです。

久しぶりにガッツリ分量のある重量級作品で読む前はちょっと身構えていましたが、読み始めると物語に引き込まれスイスイと読み進めることができました。

内容はまったく知らなかったのですが、国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられるコンテスタント達の熾烈な競争と、過去の経緯などが散りばめられています。

浜松市で開かれている国際ピアノコンクールのことは新人登竜門として有名ですが、3年に1回おこなわれているとか、アジアでは少ない国際コンクールと言うことで中韓のコンテスタントの参加が多いことなど知らないこともいっぱいありました。

最終的な着地は想像ができましたが、個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かったかなと。

つまり順位は明記せず、主人公達の決勝演奏が終わり、しばらくしてからその主要メンバーが海辺かどこかに集まって思い出を語ることで、なんとなく読者にはその順位が想像できるという終わり方を想像していました。

しかし、直木賞に相応しい力作でした。著者にしてみれば、これで賞が取れないのならもう縁がないものと諦められそうです。

しかし各コンテスタントが弾くピアノ演奏の表現力、演目のクラシック音楽の解釈などにいくつものパターンがあり、これには苦心しただろうなぁと想像できます。

読者側からすると、そこはあまり物語りの中で重要でないので、軽く読み飛ばすところではあるのですが、作家としては手を抜けません。

私としてはあまり縁のない世界ですが、いろいろと知識が広がり面白かったです。

★★★

著者別読書感想(恩田陸)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

となり町戦争(集英社文庫) 三崎亜記

久留米市役所に勤務する公務員のかたわら、この長編小説を2005年に発表して実質的なメジャーデビューをされた著者で、2007年からは専業作家として活躍されています。

そう言えば売れっ子作家の篠田節子氏も八王子市役所の勤務からデビューされていました。医者と作家と同様、市役所と作家業って相性良いのかしら?

それはともかく、小説の中にも役所の手続きの複雑さや、行政の四角四面のやり方が面白おかしく書かれていますが、それはその中にいるからこそわかることでしょう。

内容は、タイトルでわかる?とおり、となり町同士が行政上の手続きに従って戦争を始めることで、たまたまその町で暮らしていた主人公の独身男がそれに巻き込まれていくというストーリーです。

そういう意味ではリアリティはまったくありませんが、戦争という愚かな行いは、今もまだロシアがウクライナへ進行し破壊の限りを尽くし、ミャンマーでは軍部政権が反政府勢力を軍隊で弾圧していて、きっと人類は基本的に戦争(内戦含む)が好きで、世界からなくなることは永久にないのでしょう。

幸い、日本国内では太平洋戦争以降、戦争とは縁がなく、紛争中の地域は除いて攻められたり攻めたりすることもなく、比較的平和を享受しています。

この小説では、「もし・・・」という仮定の話として、国内の地方公共団体同士で内戦が起きると、お役所の手続きとしてこうなりそうという話しをコミカルに描いたもので、平和ボケした日本人にとって身近に戦争が体験できる一種ホラーの要素もあるかも知れません。

しかしなぜ戦争が起きるとかの根拠や必然性に乏しく、いくらフィクションでも設定にかなり無理があるなぁという気がします。

タイトルを見たときに思ったのは、高齢者ばかりになった過疎の町が、その社会保障費に耐えきれず、となり町と共同して高齢者同士を社会保障の予算をぶんどるために戦わせるような「現代の口減らし策」かな?と勝手に想像していました。

なお、この作品は2007年に江口洋介主演で映画化されています。見ていませんが。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

連続殺人犯(文春文庫) 小野一光

2015年に「殺人犯との対話」というタイトルで単行本が、2019年に「連続殺人犯」というタイトルに改題されて文庫版が発刊されたノンフィクションです。

タイトルにあるように、複数の人が犠牲となった実際に起きた殺人事件とその加害者を取り上げ、どうしてこのような事件を起こしたのか、起こさなければならなかったのか、裁判ではどのように証言したか、判決後に加害者はどう思っているのか?など、元雑誌記者らしく事件と加害者を深掘りした内容となっています。

著者は雑誌編集や記者のあとフリージャーナリストとして様々な事件や災害、戦争などを取材している方です。最近では「冷酷 座間9人殺人事件」(2021年)などのノンフィクションもあります。

この著作で取り上げられているのは、( )は事件発覚年

・大牟田連続4人殺人事件(2004年)
・北九州監禁連続殺人事件(2002年)
・秋田児童連続殺人事件(2006年)
・福岡3女性連続強盗殺人事件(2005年)
・大阪2児虐待死事件(2010年)
・大阪姉妹殺人事件(2005年)
・福岡一家4人殺人事件(2003年)
・中州スナックママ連続保険金殺人事件(2004年)
・尼崎連続変死事件(2011年)
・近畿連続青酸死事件(2014年)

の10件のケースです。

なかでも「尼崎連続変死事件(2011年)」は、別のノンフィクション「家族喰い 尼崎連続変死事件の真相」という単独の著作があるほど、特に詳しく書かれています。

しかしこの「尼崎連続変死事件」は、登場人物が多い上に、事件の構造が複雑で、当時新聞やテレビで知ってはいましたが、よく理解できませんでした。

全体的に、週刊誌で何週にわたって事件の詳細が報道されるものと同じで、関係者への取材や公判記録、加害者の生い立ちなどを調べ上げ幅広く書かれています。

しかしフリージャーナリストの限界もあり、収監中の加害者(犯人)や、事件後には姿を消してしまうことが多い加害者の親族から直接話しを聞けることはほとんどなく、内容のほとんどが、他の記者や弁護士、警察、司法関係者、加害者や被害者の知人、同級生などから聞いたという話しです。

そうした話しには当然ながらバイアスがかかり、裏をとることも難しく、誤解やニセ情報が一人歩きすることもありそうです。

それはともかく、いつも小説でフィクションばかりを読んでいると、それが現実と混在してしまいそうになります。時には現実に起きたことを知ることも必要だと思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

追想五断章(集英社文庫) 米澤穂信

2009年に単行本、2012年に文庫化されたちょっと変わったミステリー小説です。

最初内容はまったく知らないまま、タイトルだけで判断すると、この著者としては小難しそうな内容なのかな?と勝手に判断していましたが、そうではなく(やや解釈自体に難しさはありますが)、長編小説の中に短編小説が5つも出てくるというなかなか凝った作りの小説でした。

主人公は静岡から東京の大学へ進学したものの、1年前に実家の父親が不慮の事故で亡くなったことで、仕送りが滞りやむなく学校を休学中で、居候させてもらっている叔父の古書店を手伝っている若い男性です。

この古書店の主の叔父というのが良い味を出してますが、主人公にとってはなにか助けてもらえる存在というわけではありません。

主人公はなんとかアルバイトをして学費をため復学したいと思っていますが、そんなときに、来店した女性客から「亡くなった父親が書いた5篇の短編小説を探して欲しい」と頼まれ、謝礼を出してもらえることから、叔父には内緒で引き受けます。

ここからがミステリーに入っていくのですが、その短篇を書いた女性の父親には、外国を妻と旅行中に妻がホテルの部屋で首を吊って自殺をしたということで、実は夫が殺したのではないか?という噂がありました。

その自殺と、この短篇5篇が関わっていることが徐々に明らかとなっていき、、、というストーリーで、さらにこの5篇の短篇はいずれもリドルストーリーという最後まで残った謎が解けないまま終わる体裁で、最後の1行だけが別に保管されているというややこしい設定です。

リドルストーリーで有名な日本の小説には芥川龍之介の「藪の中」があります。その他にも既読の小説では貫井徳郎氏の「微笑む人」などもそれにあたりそうです。

実は先に読んだ恩田陸氏の直木賞受賞作品「蜂蜜と遠雷」を読んだときの感想で、「個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かった」と書きましたが、まさに読者に長い小説の余韻を残して終わるやり方もありだろうなぁと思った次第です。

いずれにしても、たいへん読み応えのある良い作品でした。

★★★

著者別読書感想(米澤穂信)

【関連リンク】
 3月後半 虹色天気雨、老いた家 衰えぬ街、冷たい校舎の時は止まる、ドリーム・ハウス
 3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋
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1624
虹色天気雨 (小学館文庫) 大島真須美

著者は今年還暦を迎える私とも近い世代で、1992年にメジャーデビューし、2019年には初めて書いた時代小説「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」で直木賞を受賞された方です。作品を読むのは今回が初めてです。

この作品は2006年単行本、2009年に文庫化された作品で、ビターシュガーシリーズとして続編の「ビターシュガー(虹色天気雨2)」が2010年に出版されています。

また2011年にはこの作品を原作とする全10回のドラマがNHKで製作され放送されました。

アラフォーの仲良し女性3人組が主な登場人物で、3人中ひとりだけ既婚者で小学生の子供がいます。

その子供を突然預かってくれと早朝に叩き起こされ、理由を聞くと旦那さんが仕事を放り出して突然家出したので探すのだと。そういうシーンから始まります。

登場人物の説明がなく、いったいどういう人達?どういう関係?とかわからず(後々なんとなくわかってくる)その流れをつかむまで謎ばかりで疲れます。ミステリー小説ではないのですけど。

とにかく女性が三人寄れば恋愛と男の話しばかりというのが普通過ぎて夢がなく、主人公の独身の女性は最近別れた男性に未練たっぷり、もうひとりの女性は愛情よりカメラマンで海外の仕事を優先する年下の恋人と関係がギグシャクしていてと、男にはなかなか理解しがたいねっとりした感情が繰り返されます。

昭和な男性は読むときっと辟易させられますが、同じような年齢、立場の女性には勇気と清涼感を与えるのでしょう。知らんけど。

続編は読みたい?ん~、しばらくはお腹いっぱいで読みたくはないかな。

★★☆

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老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書) 野澤千絵

著者の2016年刊新書「老いる家 崩れる街」を2018年に読んでいますが、その続編というか、ヒットした作品の柳の下のドジョウと思われるのが2018年に発刊されたのが本著です。

2018年7月前半の読書と感想、書評(老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路)

タイトルを見て、前のとなにが違う?と一瞬わかりませんでしたが、よく見ると現在進行形から過去形に、そして悲観論から楽観論(期待論)へと変わっています。

本書では、高齢者世帯が住んでいる持ち家の一軒家やマンションが今後急速に空き家となり、その不動産を相続する遺族や関係者にとってたいへんな問題となるという話しがメインです。

確かに高齢者だけが住む世帯が増えつつあります。そしてその高齢者が亡くなったり、自活できずに施設に入ったりすると、その空き家は一気に荒れてきます。

老朽化した一戸建ての場合は、雨漏りや倒壊の危険性があり、マンションの場合は、管理費や修繕積立金、修繕一時金の未払い金が積み上がっていきます。

そうした一戸建てやマンションを相続する人達は、そこに住むか、あるいはすぐに売却することができれば問題はありませんが、そうでない限り、相続放棄するか、放置せざるを得なく、そうした物件が今後20年ほど一気に増加することが予想されています。

私も知りませんでしたが、相続放棄すれば管理責任もなくなると思ったらそうではなく、倒壊の危険性のある建築物や、マンションの共同管理上の責任などからは逃れられません。

そうした相続人(主に子や孫)に負担をかけないように、今の高齢者は準備しておく必要があるということを伝えています。

ひとつだけ、嫌な表現だと思ったのは、不動産のことを負動産、相続のことを争続と表現して書かれていることです。

流行に乗るのもわからなくはありませんが、外国人を害人などと書くのと同様に、なにか不快で悪意を感じる言葉に思えます。一般個人ならともかく、少なくとも最高学府の教授先生が使う言葉ではないでしょう。

★★☆

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冷たい校舎の時は止まる(上)(下) (講談社文庫) 辻村深月

大学卒業後、団体職員として働きながら書いた実質的なデビュー作で、2004年に単行本、2007年に文庫化されました。

デビュー作というと荒削りなものが多い中、とても新人とは思えない書きっぷりで驚きました。

文庫で上・下巻計約1000ページ(単行本は3巻で計約800ページ)とかなり多い分量で、読み始める前まではやや身構えましたが、一度入っていくとグイグイと物語の中に吸い寄せられました。

内容は、8人の高校生クラスメイト達が、大雪の中、校舎に閉じ込められます。その2ヶ月前におこなわれた文化祭の最終日にはクラスメイトのひとりが校舎の屋上から飛び降り自殺をして亡くなるという事件が起きています。

ところがその閉じ込められた8人には誰が飛び降りたのか記憶が消されていて、そのクラスメイト8人の中のひとりではなかったか?その自殺した人間が作りだした精神世界に連れてこられたのか?という疑心暗鬼が生まれてきます。

とにかく8人の過去の闇、友人関係、親子関係、イジメ、親子心中、援助交際などが露わになってきますが、それにしても8人分あるので長いです。

ミステリー小説と言うことで、いろいろとルールに則した内容になっていますが、結果はちょっと意外でズルイという感じもしました。

面白かったけど、やっぱり長過ぎ。この内容だったら文庫1冊でなんとかして欲しいところですって言うか、8人もいるか?と思いましたが、8人が絶海の孤島に閉じ込められひとりずつ謎の死を遂げる「そして誰もいなくなった」をインスパイアしたものとなっているのでしょうかね。

★★☆

著者別読書感想(辻村深月)

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ドリーム・ハウス (新潮文庫) 小林信彦

数多くの小説やエッセイなどを出している著者の1992年に単行本、1996年に文庫化された中編小説です。

過去には著者の作品は、「ぼくたちの好きな戦争」「ムーン・リヴァーの向こう側」の2作だけ読んでいます。

主人公は売れっ子とは言えないまでも、様々なエッセイや講演会などを依頼されそれで食っていける専業の作家です。

住まいにはあまりこだわりはなくひとりでマンションに暮らしていますが、静かな書斎と広い書庫が欲しいと思っています。

戦後の祖父の時代に手に入れた実家にはあまり仲が良くない母親がひとりで住んでいますが、友人から交換殺人を持ちかけられたあとに、偶然なのか自然死で亡くなり、ひとりっ子の主人公は土地と古い建物を相続します。これがちょっとホラー1。

その相続した土地は公道との接続が悪く建築法で新築できない場所ですが、残った古家の改築ということであればほぼ新築同様に建設が可能だということがわかり、パチンコ屋で知り合った恋人とともに夢のマイホームを計画していくことになります。

ところが同じ敷地には亡くなった母親が契約書も作らずに破格の家賃で貸し出した隣家があり、どうすれば立ち退いてもらえるか弁護士とやりとりしている中、これまた偶然なのか、隣家が不在の時に失火が出てその家には住めなくなり出て行ってくれます。これもホラー2です。

さらに、家の改築が完成し、恋人と引っ越ししてきますが、、、これがまたホラー3ということになります。

確かに日本人は家を買うことを一生の目的としている面があります。特にこの小説が書かれた1992年というと、まだバブルの余韻が根深い頃で、土地神話などという言い方もされていました。

私も結婚後にはそれに翻弄されていくことになりますが、国民がみな同じ方向を向いて同じ事をしている姿というのはちょっと不気味な気もします。

そうしたマイホーム協奏曲と微妙なホラーとの合体で楽しめました。

★★☆

著者別読書感想(小林信彦)

【関連リンク】
 3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋
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1620
思いつきで世界は進む─「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと (ちくま新書) 橋本治

この新書は筑摩書房のPR誌「ちくま」に2014年から2018年に連載されていた著者のエッセイ「遠い地平、低い視点」を、整理して再構成したものです。

このPR誌「ちくま」のバックナンバーは、今でも読めますので、ランダムで良ければそちらでどうぞお読みくださいって感じです。

小説家でもあり評論家としても活躍されていた著者の小説は過去に「リア家の人々」など2作品、新書も1作品を読んでいますが、3年前の2019年にその作品のひとつの新書をたまたま読んでいるとき、テレビで亡くなられたという報道があり驚きました。享年70歳でした。

この新書は、その時々の時事問題や、著者が日常で気になることが、特にテーマを決めず(一応テーマらしき分類はされていますが)にとりとめない話です。

なにか新たな発見がある新書ではなく、著者の世界観がよくわかるもので、ファンの人には楽しく読めそうです。

特にファンではない人には?

それなりに素通りして読めます。

★☆☆

著者別読書感想(橋本治)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

つまをめとらば (文春文庫) 青山文平

著者は団塊世代生まれの作家さんで、2011年にメジャーデビューされました。今回作品を読むのは初めてです。直木賞という金字塔はやっぱり偉大です。

2015年単行本、2018年に文庫化された6篇の時代もの小説短篇集で、2015年の直木賞を受賞した作品です。短篇は「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付」「ひと夏」「逢対」「つまをめとらば」の6篇です。

いずれも江戸時代の下級侍やその家族を主人公とした時代物小説で、まだ維新の兆しはなく、平和な時代が長く続き、戦う武士からプライドだけは高いサラリーマン侍に変わってしまっている時代です。

そうした平和ボケ?している世界観は、今の平成・令和時代の日本とも相通じるかもしれません。

歴史小説や時代もの小説を読むと、まるでその数百年前の世界をのぞき見てきたかのように描かれていて、そうした単に浅い知識だけではダメで、目の肥えた評論家や審査員をもうならせる文章力と創造性はどのようにして得られるのか、いつも不思議に思います。

短篇集なので、特に内容はいちいち書きませんが、下級武士の身分、お役目、お金、副業、妻や母親との関係など、庶民に近いというか、現在のサラリーマンの悲哀を読んでいるような感じで面白く読めます。

★★☆

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ガッツン! (双葉文庫) 伊集院静

2013年に単行本、2016年に文庫化された麻雀を通して成長していく若者達を描いた長編小説です。

舞台が神楽坂周辺で、行ったことのある人なら馴染みのあるお寺や神社、坂道などが出てきてなんとなく主人公達の姿が生き生きと思い浮かべられそうです。

主人公は、東京の三流私立大学へ通う山口県出身の貧乏大学生、東大と思える大学に通う静岡出身の秀才大学生、神楽坂の料亭の跡取り娘で学習院に通う女子大生の3人がふとしたことがきっかけで出会い、その後麻雀をともにする仲になっていきます。

麻雀小説というと、アングラな雰囲気が漂い、大金が飛び交い、生きるか死ぬかのような対決が多いのですが、こちらは大学生のお遊び麻雀の延長なので、最低限のお金こそ賭けますが、レートは低く、貧乏大学生向けの設定となっています。

著者は麻雀に造詣が深いことはよく知られていますが、同時に「麻雀放浪記」などで有名な阿佐田哲也氏に見出されて、作家になったこともあり、本著でもバーの隅で眠りこける「伝説の雀士」として描かれています。

2015年に亡くなった白川道氏の小説でも、よく主人公が麻雀を打つ場面がありましたが、そういうシーンを読む度に、若い頃によくやった麻雀を弱い癖にやりたくなってしまいます。

今は、パソコンの中にオンラインではない昔ながらの麻雀ゲームを入れていますので、時々引っ張り出して楽しんでいます。

★★☆

著者別読書感想(伊集院静)

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真昼なのに昏い部屋 (講談社文庫) 江國香織

2010年に単行本、2013年に文庫が発刊されていますが、初掲載は週刊現代に2009年に連載されていたものです。

奥泉光氏の巻末の解説に書いてありましたが、あまり見かけない複数人の視点で物語が進んでいく「三人称多元」というスタイルで書かれていて、最初のうちはどうも違和感がつきまとい、それに慣れるのに少し時間がかかりました。

つまりそれぞれの視点ごとに、物の見方、考え方、心理状態が違うので、その都度頭の中で切り替えていく必要があります。慣れればそれも心地よいのですけどね。

内容は、不倫小説で、経済的にも生活にもなにも不満がない恋愛結婚した専業主婦と、近所に住む妻子をアメリカに残したままで日本で単身生活しているアメリカ人が、お友達の範囲を超えてくっついてしまうというベタとも思える内容です。

浮気される旦那さんにもまったく問題(妻の言い訳をちゃんと冷静に聞かなかったとか)がなかったとは言えませんが、男性視点ではこれで旦那さんを責めては気の毒だと思います。

あるいは女性作家さんが主に中高年男性が読む週刊誌の掲載と言うことで、女性視点で満ち足りた結婚生活の中で、精神的な不満足を刺激的に伝えたかったのか?と思えてきます。

そういうわけで、男性側からすると、「なぜ?」「どうして?」という理解不能な展開となっていき、後味は決して良くありませんでした。

★★☆

著者別読書感想(江國香織)

【関連リンク】
 2月後半 退廃姉妹、冬の旅、彼が通る不思議なコースを私も、IQ、かなたの子
 2月前半 流、女神記、遠い山なみの光、新・日本の階級
 1月後半 風味絶佳、美しい家、老老戦記、イッツ・オンリー・トーク、百年法(上)(下)
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退廃姉妹 (文春文庫) 島田雅彦

1983年に短篇集「優しいサヨクのための嬉遊曲」でメジャーデビューした著者の2005年(文庫は2008年)の作品です。著者の作品は2011年に「自由死刑」(1999年刊)を読んでいます。

11月後半の読書(自由死刑) 2011/12/4

この作品は、太平洋戦争直前から始まり、母親は戦争前に亡くなっていて父親が映画会社に勤務、目黒にある家に住む比較的上流社会の姉妹の物語です。

戦争中は周囲の家が焼夷弾で焼けていく中で、奇跡的に人も家も無傷のままで終戦を迎えます。

ところが父親が戦犯容疑で捕らえられ、まだ女学校の生徒だった姉妹は、住む家こそあるものの、生きていくために苦労を強いられます。

行動的な妹が、銀座で米兵相手の娼婦と仲良くなり、食べていくため自宅で米兵相手の売春宿を開くことを姉に提案し、認めさせます。妹は娼婦として、姉は賄いなどの役割分担です。

奥手の姉は、戦争中に知り合い、その後学徒出陣で戦地へ行った慶応の大学生の帰りをひたすら待ち続けます。

そのような戦後の大変な時期の話しが盛りだくさん詰まっていて、決して暗いばかりではなく、姉妹の恋愛ドラマも挟まれて、父親の無罪釈放や、再婚など明るい前向きな話しも加わり、読んでいてなにか日本の庶民達の近代史を垣間見るような感じです。

結局、タイトルにある「退廃」は、姉は闇市にどっぷりつかった上、戦争中の復讐のために元上官を惨殺して逃亡中の恋人と心中一歩手前までいき、妹は娼婦の身ながら米兵と恋仲になりやがて別れが来たときに自殺を図るというそれぞれに退廃した生き方をせざるを得なかったことから来ているものと思われます。

★★☆

著者別読書感想(島田雅彦)

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冬の旅 (集英社文庫) 辻原登

文芸誌すばるに2011年から連載された長編小説で、2013年に単行本、2015年に文庫化されました。

著者の作品を読むのはこれが初めてです。1990年には 「村の名前」で芥川賞、その他にも著名な賞を数多く受賞されています。この「冬の旅」も伊藤整文学賞を受賞しています。

内容は、離婚した母親の元で育ち専門学校を卒業後に就職しますが、そこで最初の躓きが起きますが、無事に再就職を果たし、結婚もして順調な人生を送るかと思えば、何度も不幸や自己の怠慢、悪事などがあり、自ら人生をゆがんだものにしてしまいます。

転落していく人の象徴みたいな話で、先が見えて気が重くなってきますが、最初に刑務所から出てくるシーンがあり、それへ向かってまっしぐらというストーリーです。

刑務所から出てきた後にも何度か立ち直るチャンスがありながら、それらも無為にしてしまい、最後にはさらに重苦しい結末がまっています。

実はこの本はジャケ買いです。と言うのも立原白秋の小説「冬の旅」を原作としたテレビドラマ「冬の旅」を中学生の頃(1970年頃)に見た印象が強く残っていて、それとかぶったのでタイトルに惹かれて買いました。

そのドラマでは、シューベルト作曲の「冬の旅」が重々しくテーマソングとして使われていて、この小説と同様、理不尽な悪が暗躍するシーンが印象的でした。

そういう意味からすると、内容は知らずに読みましたが、想像通りの内容だったと言えますが、元々は母親思いの1青年が、悪のスパイラルにはまっていくところを見るのはつらいものがあります。

★★☆

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彼が通る不思議なコースを私も (集英社文庫) 白石一文

2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説です。著者の作品は文庫になったものはできるだけ読むようにしていて過去に19作品を読みましたが、最近読んだのが2020年なのでちょっとサボり気味で2年ぶりになります。

普通の恋愛小説かな?ぐらいに思っていましたが、主人公の女性が合コンで気が合ってそのまま結婚した相手の男性には不思議な能力があることに気がつきます。

その男性は、小学校の教師をしていましたが、普段から子供中心には考えない既存の教育システムに限界を感じていて、結婚と同時に辞めてしまい、様々な問題を抱える子供達を集めた体育塾を始めます。

主人公の女性は大手企業で働いているのと、男性の実家は裕福なので、最初のうちは赤字でもなんとかやっていけますが、女性に抜擢の異動があり、関西へ転勤をすることになります。なかなか現代風なカップルです。

イジメや家庭の問題など、現実にもたびたび報道されるような様々な子供の問題を男性は仲間の協力を得ながら解決していきますが、そこには抵抗勢力もあり、子供によかれと思ったことでも、時には親から訴えられたりすることもあります。難しい問題をはらんでいます。

そうした一種の世直し事業は成功していきますが、やがて死期が近いことを悟った男性は、、、

最後のパラレルワールドというか、ふりだしに戻るところはちょっと理解不能でした。

★★☆

著者別読書感想(白石一文)

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IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ジョー・イデ

著者(Joe Ide)は1958年生まれの日系アメリカ人作家で、2016年に出したこの小説がデビュー作です。

日系人が黒人を主人公として黒人コミュニティだけ描いた小説を書くというのは珍しいパターンですが、著者が子供の頃から住んでいたのが物語の舞台にもなる黒人が多く住むロサンゼルスのサウス・セントラル地区(現サウス・ロサンゼルス)だったことからだそうです。このエリアは全米でもトップクラスの犯罪多発地域だそうです。

欧米の探偵小説と言えば、ホームズにしても、マーローにしても、サム・スペードにしても、スペンサーにしても、マット・スカダーにしても白人のスマートな男性が多いのですが、この小説では、名前のイニシャルから、そして人並み外れた頭脳の持ち主ということでIQと呼ばれる若い黒人男性が主人公です。

しかし主人公の若い頃はひき逃げで亡くなった兄と一緒に住んでいた借家の家賃を支払うため、同じ黒人仲間と計画的に深夜小売店へ忍び込んで商品を盗み出すことを続けていた小悪人です。

この主人公IQは無資格探偵ですが、元々は自分が関係した犯罪の報復で、まったく関係がない夫婦が巻き添えで殺されてしまい、その夫婦の子供も銃弾を受けて一生歩けない重傷を負います。

それがトラウマになり、尊敬していた亡くなった兄がいつも言われていた「人の役に立つことしろ」を実行しようと、弱い人の味方になって様々な問題を解決していくことで、それが口コミで拡がり、それが仕事になっていきます。

そうした主人公の小悪人からの再生と、今回どうしてもお金が必要になって昔の犯罪仲間から、殺されかけた有名なラップミュージシャンを守る仕事を請け負うことになります。

その若い頃の小悪人だった頃の話と、現在のまともな探偵業の話がパラレルで進んでいきますので、ちょっと混乱することもありますが、スリリングでよくできたサスペンスミステリーです。

本作の最後のエピローグでは、兄が亡くなった原因となったひき逃げをしたクルマをスクラップ工場で発見するという次作への予告めいたことが書かれてあり、それが次作のIQ2(原題はRighteous)らしく、すでに既刊です。

★★★

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かなたの子 (文春文庫) 角田光代

文學界などに掲載され2011年に単行本、2013年に文庫化された8作の短編小説集です。それぞれのタイトルは「おみちゆ」「同窓会」「闇の梯子」「道理」「前世」「わたしとわたしではない女」「かなたの子」「巡る」です。

なんというか、古い因習や前世の因果、過去に起きた暗い話など、重苦しい話が多いのと、恋愛、出産、子育てなど女性を主人公とした物語が多いので、古い男性にとってはどうもとっつきにくい内容です。

遠野物語」に出てきそうな摩訶不思議な話もあれば、現代の話しもありで、一気に連続して読んでいると、なにかがなんだか混乱しそうでした。

中にはホラー?と思えるものもあったり、そういう読み方をすれば面白いのかも知れませんが、ホラーのように結末がハッキリするようなものはなく、いわゆる文学的に「あとはそれぞれが勝手に想像して余韻を楽しんでください」的な終わり方で、個人的には消化不良が続きます。

文芸雑誌に掲載する短編小説にはこの手のものが多いですね。

ということで、あまり私には良い印象は残りませんでした。

★☆☆

著者別読書感想(角田光代)

【関連リンク】
 2月前半の読書 流、女神記、遠い山なみの光、新・日本の階級
 1月後半 風味絶佳、美しい家、老老戦記、イッツ・オンリー・トーク、百年法(上)(下)
 1月前半 漂砂のうたう、ツリーハウス、嗤う伊右衛門、ジェームズ・ボンドは来ない、自動車保険は出ないのがフツー



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