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ハンニバル (新潮文庫) (上)(下)トマス ハリス
1999年に刊行された小説で「レッド・ドラゴン 」「羊たちの沈黙 」と併せて3部作の最終編です。「羊たちの沈黙」で精神科医ハンニバル・レクター博士と関わりができたFBI特別捜査官クラリス・スターリングと、レクター博士のせいで昔、愛犬に自分の顔面を食い散らかされ、生命維持装置で生き延びている大金持ちのメイスンの残忍な復讐計画が主なテーマとなっています。
 
このハンニバルは以前テレビかビデオで見た記憶があるのですが、そのときの印象として残っているのは、ラスト近くのクライマックスで生きている人間から脳の一部を切り取りそれをフライパンで炒め本人にも食べさせるシーンだけでした。
 
この本は10年ほど前に購入したものですが、なかなかじっくり読む機会がなく、熟成されたワイン同様に長く寝かせたままになっていました。今読んでも十分に面白く、迫力があり、残忍で、ラストに待ち受ける意外な結末には驚かされることになります。
 
ただ小説の中では小柄でやせ形体型のレクター博士ですが、映画(DVD)ではやや小太りなアンソニー・ホプキンズが演じていますが、あの不気味な雰囲気は、もうすっかり定着してしまっています。
 
 
ブログでの過激な発言が人気の池田氏ですが、この方自身も日本の旧体制や年金問題からのいわゆる逃げ切り世代の代表格で、発言の内容には「もう自分はやりたいことやお金も稼ぐだけ稼がせてもらったから、あとは自分の損得には関係ないところで、若い頃にはまったマルクス理論を振りかざして、あとは野となれ山となれ」主義の筆頭という気がします。
 
書かれている内容は一部を除いて至極もっともなことで、さすが学識経験者と言ったところです。様々なデータを元にして持論を述べられていますが、データというのはそれを調べる目的や、使い方によって正反対の意味を持つ危険もあり、特に出典のないデータを持ち出して「こうだからこうだ」という決めつけが時々見られるのは本を構成する上ではやむを得ないのかもしれません。
 
一番気になるのは氏の持論でもある「解雇規制の撤廃」についてです。著者は「解雇規制すなわち正社員を解雇する権利に強い制限があることで、雇用の流動性が進まず、非正規雇用が増える」と言うことですが、これは単なる景気悪化が最大要因であることには触れず、現役世代から逃げ切った人がいくらそれを言っても説得力がありません。
 
つまり今その解雇制限について撤廃を言うのはそういう逃げ切った世代か、入社した当時から頭を押さえ続けられている団塊ジュニア世代以下の30代半ばまでの人達です。
 
現在40代~50代の人は、若い頃からそういう逃げ切り世代の人達に「今は給料が安くて仕事がきついけど、それは40代50代に給料も仕事も充実を得るために仕方がないこと」とずっと言われて我慢を押しつけられてきました。ところがパラダイムシフトが起き、それまでの約束はなかったことにすると突然言われ、さらに安定雇用も守られないとなれば、中高年者のうち10人に一人か二人の幹部以外は、みんな不要とされてしまいます。
 
ノンワーキングリッチとして働かない高額年収を得ている中高年者の例としてNHKの元同僚の話が出てきますが、そのような特殊な団体に所属している人の例を出してもまったく説得力がありません。今の40代50代の多くはリストラや企業の存続に怯え、家族や住処を守るため、若い人が毎年海外旅行へ遊びに出掛けるのを横目で見て身体にむち打ちながら必死に仕事をしています。
 
もし本当に解雇規制をなくそうと思えば、住宅ローンや子供の教育費で人生で一番金銭的負担が大きい40代50代の中高年者のセーフティネットが整備されてからのことでしょう。それは失業保険の手当ぐらいではとても収まるものではありません。



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