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姑獲鳥の夏 (1994年 講談社) 京極夏彦
 
ubume.jpg小説の舞台は戦後まもなくの昭和20年代後半(1940年代後半~50年代前半頃)ってところでしょうか(書いてあったかもしれませんが、記憶になし)、とにかくまだ戦争の傷跡がそこここに残っているというような東京です。「背筋が凍るような物語」というわけではないですが、すべて理詰めで密室からの行方不明男性の謎解きをおこなっていきます。
 
都内にある個人経営の病院の跡継ぎの男性が密室内から忽然と姿を消してしまったので探して欲しいと、人には見えない透視力のある私立探偵に依頼があり、たまたま居合わせた友人とともに病院へ行くと、その私立探偵は警察へ届けろと言って去ってしまいます。そこでその友人が古本屋を営む一方で神社の宮司や憑物落としをやっている別の友人とその妹に頼んで、謎解きに奔走するというストーリーです。
 
鍵となるのはタイトルにあるとおり「姑獲鳥」(うぶめ)という妊婦の妖怪のことで「産女」とも書きますが、日本各地にそれに類する伝承が残っています。
 
この小説はウルトラマンや帝都物語の映画監督で有名な実相寺監督の手により2005年に映画にもなっていたそうで、そう言えばテレビのCMで流れていたことを読後に思い出しました。その時は難しい名前だなぁってぐらいしか興味はありませんでした。今度DVDで借りてくるかな。
 
 
眩暈 (1992年 講談社) 島田 荘司
 
多くの本格的推理小説を出している島田荘司氏の作品ですが、読むのはこれが初めてです。島田氏は団塊世代の作家で売れっ子の伊坂幸太郎や綾辻行人にも大きな影響を与えたということですが、直木賞始め大きな賞には縁がなく、同じ多作の推理小説というジャンルでも社会派推理小説の松本清張氏とは対極に位置しているのかもしれません。
 
この小説は島田氏の代表的な御手洗潔シリーズ28編中のひとつで、1992年に発刊されたものです。本来はこの眩暈の中にもチラッと登場してくるシリーズ1作目で著者のデビュー作である「占星術殺人事件 」(1881年)を先に読むべきだったかなと、ちと反省するところですが、街の本屋さんにはほとんど置いてありません。
 
内容は子供?の日記から始まり、やがて成長してから自宅の中で殺人事件がおこり、通報するために外へ飛び出せば、信じがたい奇想天外な街の光景が拡がっているといた文章が探偵の御手洗潔の元に届けられ、単なる狂人の想像かと思いきや、それがすべて実際に起きていたことを証明していきます。この謎解きが多少無理なところもありますが、よくできていてビックリです。
 
長い小説ですが、このような小説ではどこに謎解きのヒントやポイントがあるのかを考えながら読むのが楽しみでもあるので、スラスラとは読めず、しっかり1ページ1ページ深く読んでいき、時には立ち止まって少し前に戻って確認をしたりして読み進めますので、暑い夏の日にクーラーの効いた部屋でゴロリと寝ころびながら読むには最適です。
 
さっそく前作の「占星術殺人事件」も読んでみたいものです。書かれたのが今から30年前の小説なので、懐かしい風景にも出会えそうです。
 
 
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 2007年) 梅田望夫
爆発的に売れた「ウェブ進化論 」で一躍有名人&お金持ちとなった梅田氏の「柳の下にドジョウ本」です。進化論でも同様でしたが、頭のいい人の特徴でしょうで、言わんとすることはなんとなくわかるのですが、自分の体験やそれを元にした想像の世界にどっぷりとつかって、お気楽な非現実的理想論を説いています。
 
なので、普通のありきたりの庶民にはどうでもいいことが多く書かれていて、またとことん主観的で「ウェブ進化論」を信奉する梅田ファン以外にはあまりお勧めできるものではありません。
 
 
優しすぎて、怖い (1994年 文春文庫) ジョイ フィールディング
 
500ページを超える長編心理サスペンス小説です。私は差別というわけではないのですが、女性作家が好んで書く延々と続く心理描写や感情表現場面が苦手で、この本はいきなりそういうシーンから始まりますので、5~6年前に購入後、数ページでイライラして断念してしまい、長らくカバーを掛けたまま本棚にしまってあった本です。
 
今回は精神的にも肉体的にもゆとりのある夏休みにゆったりと読んだので、最後までキチンと読了することができましたが、やはり私の苦手な場面が多くて(というかそういう場面が8~9割)、ちょっとげっぷが出るくらいに食傷気味です。
 
ストーリーは、主人公の美しい女性が街中で突然記憶をすっかり失ってしまい、自分が何者で、なにをしているのかがわからなくなってしまいます。しかも着ている服には大量の血の跡があり、ポケットには1万ドルの現金が入っています。起承転結の起はもうこれで十分でしょう。
 
犯罪との関わりを避けようと服を着替えお金も隠し、病院へ行くと、偶然知り合いに出会い、自分が結婚していて子供もいることが分かり、しかもこれ以上は望めないと思えるぐらいにとても裕福で恵まれています。ところが、、、ってところがミソなのであとは書きませんが、主人公が心の中でずっとあれこれと考える想像が中心にストーリーは進んでいきます。
 
タイトルは、記憶喪失で、しかも精神的不安定で、妙な想像ばかりしている妻を、甲斐甲斐しくサポートしてくれる優しくて誰もがうらやむほどの旦那さんのことだと想像します。でもこれじゃぁ明らかにその旦那になにか裏があるな?ってすぐにわかってしまいますね。しかしだからこそ、多くの読者はこの女性主人公の心の叫びに安心して感情移入できるのかもしれません。きっと私は悪くない、悪いのは周りの人達で、私は可哀想な人なんだって。
 




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