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大手メディア(特に日経新聞)に5月末から7月上旬のあいだに掲載されたリストラ(解雇や退職勧奨)情報を調べてみました。これらから業種や職種による好不況が読むとれるかどうかやってみます。

なお本来リストラ(restructuring)とは企業が収益構造の改善を図るために事業を再構築する意味ですが、ここでは異論もあるでしょうが、あえて一般的な使われ方になりつつある「リストラ≒人員整理」という意味で使用しています。

【リストラ】

パナソニック(家電製造)
携帯部門1000人削減検討、、海外に軸足
2012/05/30 日本経済新聞

オリンパス(光学機器製造)
本業に集中、2500人削減、来月に新計画、不採算子会社を整理へ
2012/05/31 日本経済新聞

ミスズ・サンメディカル(電子部品製造)
希望退職70人募集、テレビ向け電子部品不振
2012/06/01 日本経済新聞

ルネサスエレクトロニクス(半導体製造)
最大14000人と全従業員の3割を削減
2012/06/10 日本経済新聞

UKC(半導体商社)
希望退職60人募集、国内営業など縮小。国内拠点の営業・管理部門などの社員が対象
2012/06/18 日経産業新聞

あずさ監査法人(監査法人)
6月下旬に転職支援制度による早期希望退職者を募った。応募者は約280人
2012/07/04 日本経済新聞

スズケン(医薬品卸)
勤続3年以上の正社員を対象に希望退職500人募集
2012/07/10 日本経済新聞

LIXIL(住宅設備製造)
900人削減、統合受け希望退職募集。40歳から59歳で勤続5年以上の正社員を対象
2012/07/10 日経産業新聞


【採用増】

スクロール(通信販売)
企画・営業、東京に集中、9月までに5割増の150人体制
2012/05/30 日本経済新聞

システムリサーチ(システム開発)
5年以内、従業員、7割増1000人に
2012/05/30 日本経済新聞

マニー(医療機器製造)
医療機器の研究開発強化、国際競争力高める、担当者100人に増員
2012/05/30 日本経済新聞

沢井製薬(製薬)
抗がん剤専門の営業担当増員を現在の10人弱から2015年3月期までに20人程度に引き上げる
2012/06/05 日経速報ニュース

エイチーム(ゲーム開発)
モバイル端末向けのソーシャルゲーム開発者を13年末までに100人採用し倍増させる
2012/06/08 日本経済新聞

東京都(官公庁)
民間企業の勤務経験者を中途採用する「都職員キャリア活用採用」90人を採用。金融など専門家活用
2012/06/12 日本経済新聞

ファーストリテイリング(衣料専門店)
2012年に前年実績比3倍の250人、13年には350人を採用する
2012/06/15 日本経済新聞

エス・バイ・エル(住宅建設)
分譲参入、地区営業責任者、他社の経験者採用
2012/06/21 日経産業新聞

東明工業(航空機器製造)
航空機の組立技術者100人増員-800人体制に
2012/06/27 日刊工業新聞Newsウェーブ21

コスモス薬品(ドラッグストア)
2013年5月期は前期比で約10倍の100人程度を採用中途採用
2012/07/02 日経産業新聞

JR西日本(鉄道)
2012年度は30~40代の車両や線路の保守などにあたる技術者ら100人の専門社員を中途採用する計画
2012/07/03 日経産業新聞

まずリストラですが、ここ10年ぐらいはずっとこのような感じで特に代わり映えがしません。

つまり製造業を中心として大手から中堅まで幅広く恥ずかしさのみじんも感じさせずに堂々としたリストラぶりです。なぜ恥ずかしいかと言えばアメリカとは雇用習慣が違う日本では「リストラするのは私たち経営者は無能です」と言っているのと同じことだからです。

ただ数年前と比べると感覚的なものですが、リストラ件数や人数は減少しているように思われます。しかしそれが不況を脱しつつあるからとは思えません。無能な経営者が減少しているならばそれはそれで結構なことです。

ここ数年繰り返しリストラを断行しているパナソニックやルネサスエレクトロニクスなどにはリストラ大賞を差し上げたいところです。エリート意識が格段に高い監査法人も、一昨年には新日本監査法人が、昨年にはトーマツが数百人規模のリストラを断行し、これでリストラ監査法人三兄弟が出揃ったというところでしょうか。

医薬品卸業のスズケンに限らず、10年ぐらい前から国内では流通破壊が起きていて、日本独特の商習慣である卸売りの業態がもはや時代に合わなくなってきています。従来は大手卸売企業が仕入・在庫・流通・販売・ファイナンスの元締めとして独占的に君臨し、販売価格や品揃えなど横並びで統制をかけて守らせてきましたが、メーカー直販や大手量販店の独自流通網、ネット通販など卸業者を経由しないビジネスが増えてきたことにより大きな変革期にあります。

卸売業の中で比較的まだ安泰なのは、書籍など出版物の卸売り(書籍の場合はなぜか取次と呼びます)で、二大取次店のトーハンと日販が委託販売制を武器に再販制度などに守られ長くこの業界を牛耳っています。

ただしこちらもいずれ出版社からの直接買い取り販売や、Amazonなど大規模流通システムを独自に構築する企業の攻勢、それになんと言っても紙の本や雑誌から取次を通さなくてもよい電子書籍への移行が間近に来ています。しかし再販制度の堅持やISBN番号の問題など数年で劇的に変わるわけではなさそうなのでまだ当分は大丈夫でしょう。

いずれにしても改革に乗り遅れた卸売企業はいまは必死で変わろうとしていますが、その経営上層部にいる人達は「我が世の春」をずっと謳歌してきた人ばかりなので、リストラする以外に方法が思いつかないのでしょう。現場で苦労している若い人や、リストラの憂き目に遭っている役員になれなかった中高年の方々が気の毒です。

一方では採用増を計画、実行している企業や団体も増えてきています。これはその内容にもよりますがいいことです。

しかし残念なことに製造業の人員増が明らかに少ないです。雇用を守ると言えばすぐに製造業を思い浮かべるぐらい、とにかく製造業は雇用の裾野が広くて採用規模も大きく、さらには様々な能力の人を受け入れられる幅も広く、失業者対策にとっては大きなインパクトがあります。営業職や販売職など増やすと言ってもせいぜい二桁ですが、製造業の場合、ひとつの工場が稼働すれば、工場周辺を含めて数百~数千人の雇用が成り立ちます。

採用増企業(団体)の業種は「製薬」「住宅」「IT」「製造」「量販」「鉄道」「官庁」などまちまちで、特定の業界がいいから採用増というわけではなさそうです。つまりライバルが経営不振であえぐ中、同じ業界にいながら躍進し採用を増やしていこうというのですから、これは経営者の能力以外の他になにが考えられるでしょうか?

ただここに上がっている採用増企業も過去に大規模なリストラをやったことがないかと言われるとそうとも言い切れません。また今回採用された人達も、数年先に企業の業績が悪くなったとたんに解雇される可能性もあります。特にぽっと出の企業の急速な拡大による大幅採用増には注意が必要でしょう。

業績に浮き沈みがあるのは仕方がないことですが、それによってすぐに雇用人員で調整されるのでは、雇われる立場になって考えるとそれはたまったものじゃありません。「いつリストラされても大丈夫なように普段からスキルアップをしておけばなにも怖くない」とバカなこというコンサルタントや学者がいますが、そんなことで解決できる問題ではありません。

それとは別に戦略的に新卒を減らして中途の即戦力を増やしたり、本人都合の退職者の補充を控え、社内間で余剰人員を異動させたりするのはこれはリストラ(人員整理)とは言えません。そういう機転を素早く利かせられるかが経営者の能力です。

いやしかし採用増企業がまったく見られなかった数年前と比べると、採用を増やそうという企業が多少なり増えてきたことは多少明るい話題です。




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