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30年来ずっと仲良くしている友人の話しですが、8年ほど前に40代後半で上場企業を依願退職し、同時に自己資金で資本金1千万円の中小企業向けコンサルタント会社を立ち上げました。

起業後しばらくは今までに知り合った知人や友人を中心に順調に仕事を増やしていき、また新たな顧客獲得セミナーを頻繁におこない「さすがにパワーと人徳のある人は違うなぁ」って、9割は素直に喜び、1割は妬ましく思い、頼まれれば、報酬などまったくなしで、喜んで人の紹介や営業協力など手伝ってきました。

しかし4年前にアメリカでリーマンショックが起きてその様相が一変しはじめました。アメリカで4年前に起きた大きな経済危機は、日本の大企業だとほぼ同時に影響がありますが、彼のやっている個人零細企業への影響はそれから約1年後に遅れてやってきました。

20120728.jpgまずはそれまで毎年年間契約でもらっていた企業とのコンサル契約が次々と打ち切られてしまい、コンサルタントと並行しておこなってきた付帯サービスの代理店としての販売収入もがた落ちとなってきます。

考えてみるとコンサルタントとその販売代理業務は連動していることが多かったので、ひとつがダメになるとドミノ倒しのように崩壊していきます。もちろんその他にも全般的に経済不況のため新規に顧客が獲得できないということもあります。

それでも、人を雇ったりはしていなかったので(自分と奥さんだけで事業を運営)、日々の経費は都内に借りていた小さなオフィスだけで済み、残ったコンサル契約と、さらに新たなビジネスを模索しつつその後2年間は踏ん張ってきました。

しかしやがては独自のオフィスを維持するのも難しくなってきて、まずはそれを解約しました。そして以前から代理店として活動してきた知り合いの会社の中にデスクを置いてもらい、そこを拠点として営業活動をおこなってきました。こういうときに少しでも助けてくれる人がいるのは心強いですね。

しかし、一向に回復しない景気と取引先や営業先の予算縮小による販売不振で限界が近づき、資本金分で回してきた事業資金もとうとう底をついてきました。

一般的にここで考えるのは、
(1)自分の貯金や資産を取り崩し、独力でできるところまでやる
(2)親・兄弟・親戚・知人・インキュベーター問わず出資者を集め、当面の事業資金をかき集めて事業を継続する
(3)身売り先を探す
(4)廃業する
の選択肢があるでしょう。

彼の立場になって考えてみると「もう一旗揚げよう」という気力やモチベーションはまだあるものの、年齢から来る体力的な衰えや、長いあいだ成果が出ないことによる精神的苦痛により弱く低くなっているのは仕方がありません。

20120728_2.jpg知人の年齢は57才ですから、フルに年金がもらえるようになるまであと5年ほどあります。財産は少しローンの残っているマンションと貯金が少しです。それだけでは優雅に早期引退というわけにもいかないでしょう。

しかし彼や私が社会人になった30数年前頃は、企業では55才定年というのが一般的で、多くのサラリーマンがハッピーリタイアメントをすでにしていた年齢で、現に自分の親がそうしてきたことを間近で見ています。

その頃と今では平均余命や職業意識も違ってきていますが、それでも身体のあちこちが悪くなり、無理も利かなくなり、そして精神的にも充実しているとは言えません。

そんな中で、彼が選択したのは廃業です。資本金1千万円の株式会社を設立していましたが、今後収益を維持し増やせる見込みがなく、法人を身売りするのはもちろんのこと、維持していくのも無理と判断しました。

他人から見るとおそらく普通によくある「中高年者の脱サラ失敗の図」ですが、私もいろいろと手助けをしてきた会社だけに、簡単に割り切って見ることができず、つらく残念な思いです。

私自身も40代前半になかなか再就職が決まらなかった時、別の知人の協力を得て独立をする直前までいったことがありました。偶然にそのタイミングで希望していた会社の就職内定が突然決まったので、自然消滅することになりましたが、もしその時に独立して起業していたら、間違いなくすぐにつぶしていたことでしょう。それだけに立ち上がりが順調だった彼の事業の失敗には私自身他人事とは思えずたいへんこたえます。

ただもしここで、上記の1)や2)を彼が選択し、私に出資の要請をされたり、出資してくれる先の紹介を依頼されたりすると、これも困ったことになってしまいます(出資できるほどのお金は自慢じゃないですが持っていません)。

一度始めた事業は「始めるよりも終わらせることのほうが難しい」とよく言われますが、まったくその通りで、見込みがないのがわかっていても、どうしても撤退したり廃業するのは後ろ髪を引かれ、ズルズルとより悪い破滅の道を歩んでしまうことがよくあります。特に多額のお金が絡んでいたりするとなおさらです。

友人はその後の計画はなく、まだ真っ白のようですが、底なし沼へ深入りすることなく、そういう重大な決断をしたことは、大いに尊重するとともに、周囲には誰にも迷惑をかけることなくスパッと終わらせる彼のやり方が、とても素晴らしいと称えさせてもらいます。そうした思い切りは、私にはなかなかできそうもありませんから、事業家としては成功する見込みはなさそうです。





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