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40 翼ふたたび (講談社文庫) 石田 衣良

著者の作品は「エンジェル」「美丘」「REVERSE リバース」に続き4作目です。著者のファンからすると3冊では読んでいないのも同然ですが、私感で言えば、よく言うと「若い人の感性にうまくマッチした作品」、悪く言えば「商業的に若者におもねった作品」が多そうで、50代半ばのオヤジとしては読むのを敬遠していたということもあります。

「40 翼ふたたび」は2006年初出、2009年文庫化された作品ですが、この作品は中高年の入り口の40代にスポットを充てた、従来にはない中年向けの作品のようなので、読んでみることにしました。

内容は短編の連作で、大手広告代理店を辞めた主人公がフリーの広告宣伝マンとなり、銀座ののっぽビルに間借りをして仕事を始めます。最初はホームページの開設から始まり、ブログを書くようになってからボチボチと変わった仕事が舞い込むようになってきます。

サラリーマンからフリーになったあとのもがきや苦しみについて書き込みが不足している気もしますが、短編ですからそう長々と悲哀を書き連ねるわけにもいかないのでしょう。

落ち目になってきたAV女優に頼まれ会社から追い出されてしまい失意の中にいる恋人のIT長者の話し相手をしたり、20年以上引きこもっている40才の男性を親の老夫婦に依頼され外へと連れ出したり、40才までフリーター生活をおくってきて一発奮起して起業した男に広告を依頼されたりします。なんとなくフリーになって様々な変な仕事が舞い込むという意味では三浦しおん著の「まほろ駅前多田便利軒」を彷彿させます。

その他、仕事ではなく、同窓会で出会った友人の離婚問題に関わったり、前職の会社で部下だった女性に頼まれ、不倫にけじめを付けるために新しい恋人と称して不倫相手と会うなど次々と出てくる展開が面白くて飽きさせません。

40才というのは確かに男性にとって大きな岐路がやってくる時でもあり、心ではまだまだ若い、なんでもできるぞと思いながらも、実は社会の中では中途半端な存在で、特に未婚だったり結婚していても子供がいないと、自由ということと引き替えに自分の居場所を見失ってしまうような時期です。

同時に40才ぐらいから体力の衰えを感じる時で、視力も落ち、夜も無理が利かなくなってくる時期でもあります。この小説でも主人公が間借りしている会社で働く同年代のコピーライターが、肺ガンに侵され倒れるなど40代を襲う様々なケースを明るくユーモアを交えながら描かれています。

そして最後には各編で登場した様々な40代が一堂に会するシチュエーションが用意されていて、概ねハッピーエンドで締めくくられます。なかなか軽めながら、時には考えさせられることもある、面白い作品でした。


沈底魚 (講談社文庫) 曽根圭介

同作品は2007年に出版された著者の長編小説デビュー作品で、江戸川乱歩賞を受賞しています。話しは熱帯魚マニアが、、、ではなく、敵対する国へ極秘情報の提供をおこなうスパイ活動を扱った小説で、曽根氏の小説を読むのはこれが最初です。

日本では外国人犯罪やスパイを取り締まるのは警視庁公安部外事課の仕事で、主人公はその中の刑事の1人です。中国に潜っているスパイから日本の有力政治家から情報が中国側に流れているという情報と、証拠を突きつけられ捜査が始まります。

その政治家の秘書が失踪したり、犯行に手を貸した在日中国大使館の館員が亡命を希望したりと、話しは結構複雑でややこしくなってきますが、このスパイの世界というのは二重スパイ、三重スパイという可能性もあり、騙し騙され、裏切りや密告などいったいなにが真実でなにが虚偽なのかわからず人間不信になってきます。

しかし読者は主人公の刑事の目を通してしか情報が得られないので、余計な想像や推理ができず、最終的には意外な展開へと話しが進み、思いもしなかった結末がまっています。いや~長編デビュー作とは思えない素晴らしさです。

欧米のスパイもの小説は数多くありますが、その中でもフレデリック・フォーサイスやイアン・フレミング、ジョン・ル・カレ、レン・デイトン、トム・クランシー、スティーヴン・クーンツなどが有名です。

中でもフォーサイスの「THE DECEIVERシリーズ」や、クランシーの初期の作品などはすべて読みましたがなかなか秀逸でした。もちろんフレミングの「007シリーズ」は派手でエンタメを追求した映画とは違い、真面目で人間臭いスパイ、ジェームス・ボンドを描いた作品でこれもお勧めです。


この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (講談社文庫)(上)(下) 白石一文

 
2009年に発刊されたのこの長編小説は、山本周五郎賞を受賞しています。同氏の作品は文庫化されているものはほとんど読んでいますが、今までにない長編で、じっくりと楽しむことができました。

著者の作品タイトルには「僕のなかの壊れていない部分」とか「見えないドアと鶴の空」など少々変わったものがありますが、この作品はその最たるものでしょう。なにか村上春樹氏を意識しているのかなとも思えますが、それは直木賞作家にとって失礼な感想かもしれません。

しかし小説を読んでいると、意識しているのかどうかはともかく村上春樹氏の香りが漂ってきます。登場人物の名前が日本人なのにすべてカタカナとか、現代の社会の問題をあぶり出し、まるで記事や著者の主張が入ったコラムかと思える箇所がいくつもあります。

例えば、テレビのニュース番組で世界中の貧困層の問題について深刻な顔をして話しているキャスターの年収は5億円ぐらいあって、国内や海外にいくつもの投資マンションを持っていたりします。また朝日新聞など大手新聞記者の年収は30歳代で軽く1千万円を超えていて、優遇された生活が約束されている人達が、明日をも知れない生活保護受給者や派遣切りにあった人達のことを紙面で代弁できるのか?また年間30億円以上の収入があるイチロー選手や映画一本で数百億円を稼ぐハリウッドスターは、そのお金を使うことができるのか?使えないなら貧困層に回してくれてもいいのではないか?など根源的な社会問題が綴られています。

私も以前読んで大きな衝撃を受けた山本譲司著「累犯障害者」を引いて、人には多かれ少なかれ能力には優劣があり、その優劣を無視して「お前は努力不足」と両断してしまうのは狡い勝者のやり方などについては納得させられます。個人的には遺伝などによる知能や才能の優劣と、あとは家庭の経済的環境の違い、つまり裕福な環境で育てられ、莫大な遺産(お金だけではなく人脈や血縁など)やを引き継げる人と、劣悪な環境で育てられ、自力で生きていかなければならないのとでは、その後の人生に大きな差が生じてしまうことは誰でも理解していますが、それをなくそうとは誰も言い出しません。

前置きが長くなってしまいましたが、主人公は、東大で学者の道を歩んでいる妻をもつ大手出版社のやり手の週刊誌編集長。まさに夫婦とも超インテリで、世田谷に買ったマンションで暮らす典型的な勝ち組です。

しかしその主人公は結婚後に胃ガンが発見され、手術で胃の半分を切除、現在も薬を飲みつつ元の仕事に戻って働いています。また子供はひとりいますが、もうひとり赤ちゃんの時に手当てが遅れて死亡させてしまったという過去があります。

この業界がそうだというわけではないでしょうが、主人公は女性関係が派手で、次から次へととっかえひっかえです。もう不倫は文化というより不倫は息抜きかレジャーとでも言わんかのようにです。と思っていると奥さんのほうもしっかりと師でもある教授とデキていたりします。

そういうわけで話しは生臭いものとなるかと思いきや、主人公に見えるはずのない死者が見えたり、死んだ子供の声が聞こえたりとオカルト的な話しへと変わってきて、、、とこれ以上は書きません。

決してとんでも物語というわけではなく、生きているといろんなことが起きるなということや、ひとつの事象を巡って社会ではこういう物事のとらえ方をする人もいるんだなとか、あと時事にまつわる話しも多く登場し、これが10年、20年経ったあとに読むとまた違った感想を持つのかも知れませんが、ちょっと肩肘張って張り切りすぎた白石一文を堪能することができます。

この本は表紙の帯に「書き下ろし」と大きく書いてありましたが、それをみて昨年著者がTwitterに書いたことが大きな話題となったことを思い出しました。

『一年かけて500枚(×400字)の長編小説を書き、晴れて出版。定価1500円で初版部数は5000部。作家の収入は一割(税込み)なので75万円。手取りだと67万5千円。それが年収。ということは月収にすれば56250円。皆さんが図書館を利用すると良心的な作家ほど行き詰まる。』

『だから、せめて「書き下ろし」と銘打たれた本だけでも書店で買ってほしい。書き下ろしの場合、本の印税以外の原稿料は一銭もない。雑誌に連載されたものは掲載時に原稿料を受け取っているのですが、それがない書き下ろしは本の売れ行きがすべて。一年かけて月収6万円ではさすがにやれない。』


事情などまったく知らない私にはこういった作家さんの悲痛な声は頭にズシンと響きました。でも、ごめんなさい、4年前に出版されたこの本は、著者には1円も入らないブックオフで買ってしまいました。次の新刊(文庫ですが)はちゃんと本屋で買いますので許してください。


 【関連リンク】
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