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デパートへ行こう! (講談社文庫) 真保裕一

2009年に講談社創業100周年記念の書き下ろし作品として発刊され、その後2012年に文庫化されました。その後、「行こう!」シリーズ化され「ローカル線で行こう!」「遊園地に行こう!」と続きます。

企業再生シリーズという話しを聞いていましたので、左前になってきた老舗デパートの復活物語かと想像していたところ、かなーり予想は外れて、深夜のデパート内で起きるドタバタ劇でした。

そのドタバタの中に、老舗デパートを継いだ若い御曹司社長とか、ライバルのデパートに安く身売りさせようと画策する連中に使われていた元刑事、贈賄、収賄事件の関係者の子供達など、デパートの不祥事とそれに続く身売り話の関係者が揃って営業を終えた深夜のデパート内に偶然居合わせることになります。

したがって主人公と言えるのは、自殺願望のリストラオヤジ、犯罪に手を染める元刑事、老舗デパートの社長、犯行を企むデパート勤務の女性、贈賄で逮捕された父親の娘など数名に及びます。

このようなありえない設定で、いくら小説でも、推理を楽しめるわけではなく、かと言ってドタバタのコメディにもならず、興味は半減してしまいます。

実は先に読んだ「ローカル線で行こう!」が、赤字ローカル線を立て直そうと奮闘するカリスマ新幹線売り子と鉄道マンという、旬なテーマでもあり、話しもテンポが良く割りと良かっただけに、こちらの「デパートへ行こう!」はちょっとグダグダで残念なストーリーとなっています。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ローカル線で行こう! (講談社文庫) 真保裕一

この作品は上記の「デパートへ行こう!」に続く再生がテーマの「行こう!」シリーズの第2弾で2013年の発刊(文庫版は2016年発刊)です。読む順番が逆になってしまいましたが上述の「デパートへ行こう!」の前に読みました。

主人公は親の願いを聞き入れて宮城県庁に就職したものの、同僚との出世競争に敗れ、第3セクターで運営される赤字垂れ流し状態のローカル線会社へ出向させられた独身男性と、生まれ育ったローカル線沿線に戻ってきたカリスマと言われた新幹線の売り子の女性。

そのローカル鉄道会社はやがて資金が底を打つのが見えていて、宮城県、市町村、銀行などが寄り合い所帯で、どのようにしてうまく撤退するかという議論が始まりそうな危機的状況となっています。

前の社長は銀行から送り込まれたベテランでしたが、リストラや経費削減ばかり熱心で、周囲に味方になってくれる人もなく、やがて逃げ出すように辞めてしまいます。

そこで選ばれたのが、新幹線のカリスマ売り子という経営素人で、地元愛と負けず嫌いな性格でうまく乗せられて着任してきます。その素人社長とコンビを組むのが宮城県から派遣されてきている副社長で、赤字解消に向けて次々と起死回生策を打っていきます。

ま、徹夜、休日出勤当たり前状態で、今で言えばブラック企業とも言えますが、一部の優良企業を除いて、実際の仕事の現場はこうしたものだというのがわかるだけに、働き過ぎを叩く人達にもぜひ読んで感想を聞かせてもらいたいものです。

この小説に出てくる第3セクターのローカル線は、2007年に廃線となったくりはら田園鉄道をモデルにしていると言われています。こうした常識を覆すようなリーダーが現れず、また企業努力もなかったのでしょうか。

★★☆


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おまえさん(講談社文庫)(上)(下) 宮部みゆき

2011年に単行本と文庫が同時に刊行されるという珍しいパターンの作品で、2000年から続く時代小説「「ぼんくら」シリーズの第3弾という位置づけになります。このシリーズは第1弾の「ぼんくら」(2000年)、第2弾「日暮らし」(2004年)があります。

推理ミステリーから、ファンタジー、SF、そして時代ものと、広範囲のジャンルで、しかもいずれもベストセラーとなる、その多才な創作能力には驚かされるばかりです。

前の二作品は未読ですが、主人公は顎が突き出ていてハンサムとは言えないものの、頭は切れ、人望も厚い本所深川の同心・平四郎です。

シリーズの準主役のレギュラーメンバーとしては、岡っ引きの政五郎親分、料理屋の女将、こうしたドラマには欠かせない大人顔負けの活躍をするかわいらしい有能な子供が主人公の甥という設定。

時代を江戸に移した推理ミステリー小説といったところでしょうか。大人がわからない殺人事件の謎を、優秀な子供が抜群の洞察力と推理で解いていくという小説やテレビドラマではお約束みたいになってきたパターンはやや食傷気味です。

しかし事実かどうかはわかりませんが、小説の中から江戸の庶民の生活が生き生きと伝わってきて、それがこうした時代小説の醍醐味でしょう。

時代考証の専門家から見れば、それはあり得ないとか言うのがありそうですが、そこは小説と言うことで、読者が楽しめればそれでいいのではないかと著者の声が聞こえてきそうです。

上下巻合わせると1200ページを超える長編で、最初どこかの新聞連載小説だったのかな?と思っていましたが、どうも違うようです。

それにしては、新聞小説のように、何度も同じ説明が繰り返されて、長編ならば一気に通して読めないから仕方ないかもしれないですが、そうした重複部分をいうまく端折れば2割ぐらいはページが減らせるような感じです。

殺人事件を扱う小説としては、娯楽性も豊富で、なかなか面白いものでした。

★★☆


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下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫) 白川紺子

2013年デビューの作家さんで、主に女性向けライトノベルを書いています。この小説は2015年刊ですが、同じ年に続編の「下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ」(2015年刊)、その翌年には「下鴨アンティーク 祖母の恋文」(2016年刊)、「下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ」(2016年刊)、「下鴨アンティーク 雪花の約束」(2016年刊)とシリーズ化されています。

学生時代に京都で過ごした経歴から、この小説も舞台は京都です。タイトルに使われる下鴨とは、平安時代の歌人鴨長明とゆかりがあり、京都三大祭りの葵祭で有名な下鴨神社や府立大学などがある文京的な住宅地です。

この辺りの地名や風景は、京都大学出身作家の森見登美彦氏や万城目学氏の小説の中にもよく出てきます。古くからの高級住宅街であると同時に、徒歩で少し南に下ると京都大学や同志社大学のキャンパスがあり、若い学生、その中でも割りと裕福な学生が多く住んでいる割りとハイソな地域です。

この小説ではそうした町並みや住居がどうしたという話しではなく、主人公というかレギュラーメンバーとして、同志社女子高校と思われる学校に通う女子高生と、一緒に住んでいる骨とう屋を営む兄、その兄と京都大学時代からの親友で、現在は同志社大学で教鞭を執っている男性の3人がいます。

その3人が出くわすことになる様々な、怖さを感じない、いにしえの呪いというか現象について、それらを知恵を駆使して解決していくというたわいもないストーリーで、夢枕獏氏や京極夏彦氏の怖さと中身の濃さを1/10に減じた若い女性向け平安京ミステリーといったところか。

したがって中高年のオッサンが、熱心に読むべき本ではないなぁ~ってことを読んでから知りました。すみません。

★☆☆


【関連リンク】
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