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少し前の話になりますが、経済学者の成田悠輔氏が「高齢者は老害化する前に集団自決すればいい」という発言をしたことで様々なところに影響が出ていました。
成田悠輔氏「高齢者は集団自決」発言を“例え話”と笑っていられない理由(DIAMOND online)
イェール大学アシスタント・プロフェッサーの成田悠輔氏の「高齢者は集団自決すれば良い」という発言が批判を浴びている。これに理解を示している人もかなりおり、「尊厳死解禁」へ向けた議論が一気に進んでいく可能性もあるからだ。 |
成田悠輔氏はユニークな発言をする39歳の若手経済学者としてマスメディアへの登場が多く、バラエティ番組では硬軟織り交ぜた発言で使い出のあるコメンテーターなのでしょう。かけている眼鏡が左右で四角と丸の違った形になっているのをトレードマークとしている変わった人というのが私の感想です。
国会の場でも話題になっていて、
岸田首相、成田悠輔氏の老害発言を「極めて不適切」と答弁(産経新聞社)
岸田文雄首相は15日の参院予算委員会で、経済学者の成田悠輔氏が「高齢者は老害化する前に集団自決すればいい」とした過去の発言に対する見解を問われ「極めて不適切な発言だと強く感じる」と答えた。 |
と、1年以上も前の古い話なのに大きな問題になっていましたが、相変わらず高齢者が権勢を振るっている社会に不満を持っている若い人からは「よくぞ言ってくれた!」「若者の意見を代弁してくれた!」という雰囲気が感じられます。
私もすでに66歳という区分的には前期高齢者になって、「老害」とか「老醜」とか言葉にはビビッと神経質になります。
もし私が20代や30代だったら、「自決」という過激な言葉ではなく「引退」とか「隠居」とかの柔らかな言葉に変えて、いつまでも権力の座に居座り老醜をさらしている高齢者がいれば非難する主張をどこかでしていたかも知れません。
つまりそれぐらい現在の高齢者の「老害化」が顕著に思えているということです。高齢者の数が圧倒的に多いのでなにかにつき目についてやむを得ない面はあります。
確かにテレビを見ていると高齢者が多い政治の世界はもちろん、ビジネス界、官公庁、学者、芸能界などで目に余る老害と思える人を良く目にします。
芸術家やスポーツの世界は選手については、作品や成績がすべての世界なので、老害が発生することは少なく、起きるのは芸術や学術団体などの派閥や、日本大学のようなスポーツ指導者や経営層の老害でしょう。
そして目につくのはテレビによく登場してくる人たちで、高齢のため言葉や記憶が明瞭でないのに番組のMCやコメンテーターだったり、昔の威光だけで呼ばれている?という感じだったりしています。
言語が不明瞭で何言っているかわからないし、顔のアップにとても耐えられない老人性色素斑だらけの人を起用するテレビ局の気が知れません。
政治の世界ではいかにも悪人面した(偏見もあります)高齢の古参議員が、若手記者の取材に対して失礼な物言いで蹴散らしています。若手記者の知識不足や理解不足、勉強不足に業を煮やしてということもあるとは思いますけど。
当然ながら会社や役所の中にも、本人は決してそうは思っていないでしょうけど、周囲からは「老害」と思われている人は少なくないはずです。
もちろん高齢者がすべて老害になるとは思いません。高齢でも若々しく新鮮な感性の持ち主や、経験と知識や知恵で若手の目標となっていたり、サポートをしてくれる人もたくさんいます。多くはそういう人だと信じたい気持ちです。
しかしこんなことが最近実際にありました。
平日の午前中に近所をウォーキングしていると、暇を持て余していそうな高齢者をよく目にします。住宅地の中を歩いている私に大きな声でなにか文句を言ってくる高齢者がいて、近寄って話を聞いてみると、家の前にクルマが駐車されていて、私をその車の持ち主と決めつけて文句を言っていました。
確かにその道を歩いていたのは私だけでしたが、なんの根拠もなく、見知らぬ他人にいきなり怒声をあげ怒り出すのはまともな判断が出来ない老害病そのものだと思いました。
余裕のある資産がなく生活費を稼ぐために働く高齢者は、基本的にはビジネス上で老害の範疇ではなく、問題はないですが、いま若手から不満に思われる老害とは、もう十分にお金も名誉もありながら、70歳を過ぎても権力の座に座り続け、利権や役得をむさぼったり、フィクサーのように現役の人たちに様々な影響を及ぼしたり、将来ある若手に譲るべきところを自覚の有無を問わず邪魔をしている人たちです。
私は小心者なので、63歳で「老害」と言われる前に(既に言われていたかも)、さっさとビジネスからリタイアして引っ込みましたが、現在は定年延長や年金支給の後ろ倒しなどが議論されていて、今後社会の中にはますます高齢者があふれていくでしょうから、ことあるたびに成田氏のような過激な発言が出てくる気がします。
誰もが年を取り、やがては老害と呼ばれる年齢になっていき、本人だけはそう思ってないという気の重い話です。
【関連リンク】
1503 地域別100歳以上の高齢者数
1644 生活保護申請・受給者は増えているのか?
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令和4年(2022年)版「高齢社会白書」が内閣府から出ましたので、概要を少し抜き出して感想を述べてみたいと思います。
まず2021年10月1日現在、総人口1億2,550万人に対し、65歳以上人口は3,621万人で、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.9%、総人口の3.4人にひとりが高齢者となりました。
高齢化率がピーク近くを迎える31年後の2053年頃には総人口が1億人を切り、高齢化率が38%を超え、総人口の2.6人にひとりが65歳以上となる予測があります。
なにか考えるだけで恐ろしい気もしますが、2021年時点ですでに秋田県で高齢化率38.1%、高知県で35.9%となっていますので、そうした地域をよく見れば20~30年後の東京や大阪の姿が見えてきそうです。
23年後の2045年の予測では、一番高齢化率が低い(若々しい)地域は東京都で30.7%、その次が沖縄県31.4%です。逆に高齢化率が高いのが秋田県で唯一50%を超えて50.1%です。秋田県ではまもなく総人口の半分以上が65歳以上になるようです。
逆手にとれば、若い人が秋田県へ移住すれば、特に体力や集中力、最先端知識がいる仕事では引く手あまたとなり、難関国公立大学へも楽々入学できそうです。でもそこへ移住して、高齢者向けの「オレオレ詐欺が入れ食い状態だ!」というのはお勧めしません。
◇ ◇ ◇
平均寿命は、2019年時点で、男性が81.41歳、女性が87.45歳で、2010年から男性で1.86年、女性で1.15年長くなっています。
同様に日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、2019年は男性が72.68年、女性が75.38年で、2010年から男性で2.26年、女性で1.76年それぞれ長くなっています。
平均寿命の伸びよりも健康寿命の伸び率が上回っていることは、医療費や介護費の増加に歯止めをかけ、国民の健康志向が高まっているとも言え、良いことではないでしょうか。
但し、要介護者数は10年前から75歳以上を中心に約186万人も増えています。
さらに2020年以降は新型コロナの影響で、特に高齢者の重症者が多かったことや、医療が逼迫したことで、高齢者の病気、特に慢性病に対し十分な対応ができなかった影響が今後統計に出てくるかも知れません。
◇ ◇ ◇
高齢者の就業率の推移は、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75歳以上では、10年前の2011年の就業率と比較して、2021年の就業率はそれぞれ14.4ポイント、14.1ポイント、9.8ポイント、2.1ポイント伸びています。
65歳以上で収入をともなう仕事(農林水産業や自営業、パートなど含む)をしている人の割合は、30.2%で、その内訳は男性が39.8%、女性が21.3%です。逆に言えば、65歳以上では働いていない人が働いている人の倍近くいると言うことです。
65歳以上の高齢者で、親しくしている友人や知人がいると答えた人は79.6%で、男女別では男性が76.4%、女性が82.4%となっています。やはり近隣や地域の中でつきあいが多く、一般的にコミュニケーション能力が高い女性のほうが高くなっています。男性は長く限られた世界で仕事をし、リタイアすると急に友人が減ってしまうということも多そうです。
65歳以上の高齢者が情報機器の利用内容は、
「インターネットで情報を集めたり、ショッピングをする」 23.7%
「SNS(Facebook、Twitter、LINE、Instagramなど)を利用する」 13.1%
「パソコンの電子メールで家族・友人などと連絡をとる」 12.2
「情報機器を使わない」 17.0%
となっていて男女差はあまりありません。わかってはいましたが、高齢者の情報機器の利用は相変わらず少ない感じです。
75歳以上で見ると、「情報機器を使わない」が男性25.1%、女性29.8%と高くなります。
この世代は、中年になって以降にパソコンが普及し始め、高年者になってから携帯やスマホが普及したので、それらを仕事で使う機会があまりなかったことによります。
嫌でも使わざるを得なかった人を除き、情報機器を使わなくとも支障がなければその後に学ぼうというモチベーションは起きなかったでしょう。
それでも75歳以上の男性で4人に3人、女性で3人に2人は情報機器を使っていますので、その人達は、中高年以降に新たなことを覚えるため努力をされたのだと思います。
正直言うと、こうした頑として情報機器を避けたい人達がここ最近までこの国を長く支配してきたので、国や地方や政府の情報化が大きく遅れ、世界の中でもIT後進国となってしまいました。
各地の保健所がコロナ対応で、FAXを使って手書きのコロナ感染者数などを報告している姿が世界中で笑いものになっていたのは記憶に新しいところです。
今の子供達は、物心が付いた時にはスマホが身近にあり、仕事でも情報機器を当たり前に使うので、今後は一気に変わっていく気もしますが、現在はこの情報機器を使わない巨大な団塊層以上の17%の人のために、どれほど立派で便利なシステムを構築しても、旧来からのアナログのやり方と共存せざるを得ないというジレンマがあります。
総務省の「通信利用動向調査」によると、2020年のインターネットの利用者率(過去1年以内に利用したかどうか)は、20代では98.5%に対し、60代は82.7%、70代は59.6%、80代は25.6%です。やはり75歳あたりを境に情報機器の利用に大きな差が付いているようです。
◇ ◇ ◇
最後に、最近盛んに報道されることが多い高齢者が運転する自動車死亡事故についてです。
おそらく日本人なら「高齢者が起こす自動車死亡事故が急増している」と思っているでしょうけど、統計データからは、75歳以上の運転者が起こした死亡事故を、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数(運転者の年代層別でみた死亡事故件数)で見ると減少傾向にあります。
運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、2010年は75歳以上が12.7人だったのが2021年には5.7人、80歳以上は2010年が18.2人だったのが2021年は8.2人とそれぞれ半分以下に減少しています。
75歳以上の免許保有者は2010年が131万人、2021年が262万人と倍増しているので、10万人当たりの事故件数だけで見ると誤りますので、発生件数で比較すると、2010年は207件だったのが2021年は132件と半分には至りませんがやはり下がっています。
2021年は新型コロナの影響で、死亡事故全体が下がったことや、高齢者の外出が減ったことを勘案しても割合は減少傾向にあります。
いずれにしても「高齢者ドライバーの事故が急増」はマスコミが作り上げた印象操作に過ぎないということです。
今日のところはここまで。
また機会(と言うかモチベーションが)があれば分析して続編を書いてみたいと思います。
【関連リンク】
1059 高齢社会白書(平成28年度版)
967 平成27年度高齢社会白書を読む
780 あらためて高齢社会白書を概観してみる
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このブログでも過去に書いたことがある「限界集落」についてですが、その後どのようになっているのか調べてみました。
調べると、過去2回、9年前の2013年と、4年前の2018年に書いていました。
地方が限界集落化していく 2013/5/11(土)
過疎と限界集落の行方とコンパクトシティ 2018/3/24(土)
今回の元データ、「過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査報告書」(令和2年、総務省 地域力創造グループ 過疎対策室、調査時期:令和元年9月11日~令和元年11月29日)
を元にしてその概要を少し書いておきます。
まず過疎集落についてですが、過疎法(過疎地域自立促進特別措置法)により過疎地域に指定された地域のことで、市町村単位ではありません。
2022年5月時点で市町村数は1,724ありますが、その市町村からさらに区分けした現存する(居住者のいる)全集落数は調査時点で76,710集落あり、その中の49,341(64.3%)集落が過疎集落と言われています。
前回調査の4年前(2016年)は、過疎集落数が46,831(61.9%)集落だったので、4年間で2,510集落が新たに増加しています。
都市部に住んでいると、集落の6割以上が過疎という実感は感じにくいですが、旅で地方へ行くと、シャッター通りや、放置された田畑、空き家、神社などを見かけることがあります。
前回調査時点で過疎地域であった集落数は 0.6%(349 集落)減少しています。その内訳は、消滅(無人化)した集落(139 集落)や集落再編により減少した集落(327 集落)のほか、新たに誕生した集落(74 集落)等ということです。
過疎集落の中で住民の半数以上が65歳以上の集落(いわゆる高齢化率50%超え)は20,372集落あり、過疎集落全体の32.2%(4年前は22.1%)を占めます。その中には住民全員が65歳以上(高齢化率100%)の集落が956集落(1.5%)あります。
地域別では、住民の半数以上が65歳以上の集落の割合が中国圏と四国圏では40%を超えています。
同じく過疎集落において住人の半数以上が75歳以上である集落の割合は3,676集落で割合は5.8%、住民全員が75歳以上の集落は339集落で0.5%となっています。
都会でも高齢化率が3割に近づきつつあるとか言ってますが、すでに高齢化率100%の集落が国内に千近くもある(そのうち339集落は75歳以上だけの集落)とは驚くしかありません。
集落住民全員が75歳以上の集落(339集落)のほとんどが10人未満・10世帯未満の基礎集落で、約6割が集落機能の維持が困難な状況とされています。そりゃそうでしょうね。
それでも、こういう意見を述べている学者さんがいます。
限界集落の真実―過疎の村は消えるか?(2019年、首都大学東京都市教養学部准教授山下祐介)
私は「消えた」とされる集落を調べてみました。しかし高齢化が理由で消えた集落はありませんでした。消えた真相は、戦後開拓がうまくいかなかった、災害移転、ダム建設に伴う移転などであり、本当の意味で高齢化が理由で消えた集落は探してもないというのが私の結論です。 |
どうなんでしょうね。
つまるところ、出て行く一方で、財産を守り、新たなことを始める新しい血が入らず、開拓がうまくいかなかったのも、インフラを新しく更新し災害を未然に防いだり、復旧させることができなかったのは住民の高齢化が一番の原因と思いますが、どうなのでしょう。
今後10年以内に消滅(無人化)する可能性がある集落は454集落0.7%(4年前515集落)で、いずれ消滅(無人化)すると予測されている集落は2,744集落4.3%(4年前2,697集落)です。
地方ブロック別でみると、今後「10 年以内に消滅」あるいは「いずれ消滅」と予測されている集落の割合が最も高いのは四国圏です。
前回調査時に「10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されていた集落の中の508集落が、今回調査までの4年間で実際に消滅(無人化)したのは47集落(9.3%)でした。
地方ブロック別でみると、北陸圏で多く、10年以内に消滅すると予測された集落の3割近くが消滅しています。
前回調査時に「10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されながら現在も存続している集落の8割以上は、10人未満・10世帯未満の小規模集落で、いずれにしても今後数年以内には消滅する可能性が高いと思われます。
過疎集落の生活サービス機能の特徴としては、 公民館や集会所は33.2%の集落に、商店・スーパーは21.8%、、駅やバス停は53.5%の集落にある一方、病院・診療所やガソリンスタンド、郵便局、ATM、デイサービスセンター、小学校、幼稚園・保育所等がある集落は1割に満たない状況です。
コンビニや駅はもちろん、各種の病院やATMなどがすべて徒歩圏にあるという都会育ちには考えられないことでしょう。
ザクッと概要だけを抜き出しましたが、毎年国内では、茨城県や山口県の県民全人口に相当する60万人以上が減少しているので、地方の集落が毎年数百消えていくのは仕方がないことだと思います。
同じように寒村と言っても岐阜県の白川村のように、なにも努力をしなければとっくに消えていたような山深き中の集落が、今では世界遺産に指定され、国内はもとより世界中から観光客を集め、若い人の移住者が増えるという成功を収めた集落もあります。
いずれにしても、人口減少が続く日本において、その集落を生かすも殺すも、そこに住む人達の能力と努力次第で、集落を出て行った子供達や、ましてや政治や役所の力をあてにしていてはダメなのでしょう。
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1089 プチ移住という選択
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私の住む地域は都市部郊外地域で、30年前に引っ越してきたときには大きな道路から少し入れば田畑など農園も拡がる割とのんびりした地域でした。
写真:日産ライフケアビークル |
そして気がつくと、自宅の周囲には多くのデイサービス(通所介護)事業所ができています。
Googleマップで自宅周辺の「デイサービス」を検索するとおよそ半径1kmほどの中に15箇所のデイサービス事業所が見つかりました。
同条件で検索するとコンビニはもう少し多くて20箇所ありますが、コンビニは駅周辺に集中しているのに対し、デイサービス事業所は地域全体に広がっています。
平日、朝にウォーキングをしていると、ディサービスの送迎車ばかりが目立ちます。住宅地の中を走るクルマは宅配便のクルマかディサービスのクルマどちらかです。
そのディサービスですが、中でなにがおこなわれているのか?というのはあまり知られていません。
規模や設備などによっても違うそうですが、ディサービスの目的は「(要介護者が)自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図る」だそうです。
つまり、
1.機能維持・向上
2.日常生活のお世話
3.機能訓練
4.孤立感の解消
5.家族の(身体的/精神的)負担軽減
結構アレもコレもと欲張りな目的です。
要介護者に認定されると、介護保険の範囲でディサービスを利用できるわけですが、当然ながら利用者側から様々な意見があります。
例えば、「はてな」にディサービスについて投稿されていたコメントを一部抜粋して引用すると、
「ボランティアでデイサービスに行ったときに、利用者の方に「みんなが好きでここにいるんじゃない」と言われた」
「デイサービスは個人の部屋が無いしまわりがガヤガヤしてるのが苦手な人は逃げ場が無いからキツい」
「塗り絵とか子どもの遊びみたいのさせられる。ばかみたいって祖母も嫌がってる。人によって「尊厳が傷つけられた」と感じる基準違うから難しい。」
「デイサービスは利用者の世代が60代から100代と幅広く、性別も趣味も障害もバラバラの人々が一堂に会するから。これを解決する手段はない」
これらの意見はいずれも介護現場の近くにいる関係者か要介護者の家族の話しばかりで、ディサービスを利用している要介護者本人の意見ではありません。
影響力がある多くのフォロワーを持つ要介護者が、TwitterなどSNSで利用者の本音を発信するようになるのは、まだあと数年はかかりそうです。
◇ ◇ ◇
NHKスペシャルでも放送されましたが、認知症診療の第一人者だった精神科医の長谷川和夫さんが認知症に罹り、社会に認知症の理解を進めていく活動をされていましたが、今年の11月に亡くなられました。
その長谷川医師が自ら提唱したディサービスへ自分が介護される立場になって通所した時のことについてこのようなことを語っています。
「認知症の第一人者が認知症になった」(NHK)
家族の負担を減らし、認知症の人の精神機能を活発化させ、利用者が一緒に楽しめる場所の重要性を訴え続けてきた。 しかし、この日、利用者全員で行うゲームに参加した長谷川さんに笑顔はなかった。 「医者のときは『デイサービスに行ったらどうですか?』って、そういうことしか言えなかったよね。少なくとも、介護している家族の負担を軽くするためには非常に良いだろうくらいな、素朴な考えしか持っていなかったよ。『今日は何がしたいんですか?したくないですか?』っていうことから出発してもらいたい。ひとりぼっちなんだ、俺。あそこに行っても。」(長谷川さん) |
確かに負担が大きい要介護者を抱えた家族にとってディサービスは大きなメリットには違いありませんが、肝心の要介護者本人にとっては「行きたい場所ではない」となっているケースがあるようです。
特に高齢者や認知症患者は新しい対人関係が苦手な人が多く、個室がなく、全員で一緒になにか(童謡を歌ったり折り紙したり)をやらされるとか、不満がたまる人もいるでしょう。集団生活が苦手な私もたぶん合いそうもないです。
最近は、高齢者の趣味嗜好にできるだけ合わせた行事や活動、レクリエーションを取り入れているところもありますが、まだまだそういうのは例外的で、多くは「危険がなく安全第一で」「できるだけ全員一緒に」「少数の介護者で管理が可能な」ことに限定されるのでしょう。
障害の程度や機能の違い、性別や年齢、趣味趣向など幅広い要介護者を相手にしますので、たいへんだとは思いますが、これから自己主張が特に強い団塊世代がその対象となって一気に増えていきますので、様々な問題やトラブルが起きそうで心配です。
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写真はUR都市機構から |
その小説では、多摩ニュータウンと思われる郊外の団地に住んでいる団塊世代と思われる男性が定年退職後に活気が失われ変わりゆくニュータウンの中で奮闘する姿が描かれています。
また今読んでいる垣谷美雨著の「ニュータウンは黄昏れて」は2013年に単行本が発刊されましたが、タイトル通り、最寄り駅からバスで5分、住民の高齢化のため昼間までも人通りがない5階建団地が10棟、エレベータなし、都心から1時間のやはり多摩っぽいニュータウンの団地(豊ヶ丘団地?)が舞台となっています。
それらの70年代の高度成長期に作られたニュータウン団地も、50年が経ち次々と建て替えられていますが、駅の近くでないと資産価値もあまり高いとは言えません。
特にニュータウンというのは丘陵地帯に作られたものが多く、また5階建でもエレベーターがなかったり、買い物にはクルマが必要だったりして足腰が弱った高齢者が日々生活するには厳しいものがあります。
ただ周辺には自然が多く、敷地は広くゆったりとってあり、自動車道路と歩道が明確に区分されていて、広い公園が計画的に作られているので、若い夫婦が子育てするのには良いところです。
ところが賃貸物件については、空き部屋が増加傾向にあるのに、急増するひとり住まいの高齢者が借りられないという状態が続いています。
テレビでやっていましたが、
・不動産会社で賃貸アパートを申し込んでも年齢だけで大家に断られる
・開業医で仕事も収入も確かな人でも高齢者のひとり住まいと言うことで断られる
・最近は独身者の場合、年齢が下がってきて40代でも年齢を理由に断られるケースもある
・およそ家主の7割が単身高齢者の入居を断っている
・国交省主導のセーフネット住宅は登録数こそ多いが実態は空室率3%未満という少なさで意味を成さない
など
確かに大家さんの立場に立つと、高齢者の単身者は孤独死や認知症発症による火事の心配や近所トラブルなどリスクが高いとされています。
また、賃貸の場合、孤独死や自殺などが起きた部屋や同じアパートに新しく入居する人に対し、その「心理的瑕疵」の事実を伝える重要事項の説明が義務化されています。そういう物件に進んで入居したいと思う人は多くはないでしょう。
そしてその「心理的瑕疵」の多くは、賃貸の場合、事故が起きてから2~3年間という長きにわたり課せられるので、大家さんとしては死活問題になってきます。
別の番組(NHKクローズアップ現代)では、なんと孤独死や部屋で自殺などがあった事故物件の売買を専門に扱う「成仏不動産」というなんとも言えない社名の代表が、やはり増えている高齢者の孤独死の問題を話していました。
まもなく世帯数の増加も頭打ち(国立社会保障・人口問題研究所の報告では2023年がピークと推計)となりこれからは減少していくことになり、空き家も2020年には876万戸にのぼり総住宅数の約14%を占めています。
賃貸の借り手はこれから急速に減っていくのに、高齢者だと言うだけで入居できないというのはなにか矛盾しているように思えます。
つまり、家主は固定資産税や相続税対策のために賃貸住宅を建てただけで、やっかいな高齢単身者に貸すぐらいなら空室が続いても構わないということなのかも知れません。
ウォーキング中に気がつきますが、農地だったところに次々単身者用っぽいマンションが建ちますが、完成後も住人の気配(洗濯物や自転車、カーテン、ゴミなど)が感じられず、ほとんどの部屋の窓には雨戸が閉まったままというところがあります。
なんとまぁ、空き室は多いのに、入居できなくて困っているというミスマッチな住宅事情ですねぇ、、、
テレビでは、R65不動産という高齢者限定の賃貸住宅をメインに仲介している会社の社長が出ていましたが、時代に合っていて狙いは良いのですが、わがままな双方(借りる方も貸すほうも高齢者が多い)の希望に合わせるのに苦心している感じがしました。
自治体によっては、入居者の見守りサービス(照明が24時間点灯しない場合に警備会社に連絡等)の費用を補助し、家主が安心して貸せるようにするなど対策をおこなっていますが、「入居者死亡保険」については特に話が出ていませんでした。
この通称「孤独死保険」は、葬儀費用や部屋のクリーニング、遺品整理、空室期間の家賃補填まで、条件次第ですべてが対象となるので、家主にとっては身寄りのない単身高齢者でも、死後の空室による機会損失や孤独死の風評被害を最小限に抑えることができて有効だと思います。
しかしイマイチ普及しないのは、その保険料を高齢者の場合だけ家賃に上乗せするということが二重価格になるのでできず、保険料もフルに加入すれば一室当たり月2~3万円(月額家賃の2~3割増し?)は余分に必要で、それをすべての部屋の家賃に上乗せすれば市場競争力がなくなってしまうことを懸念しているのかなと思います。
ここは国や自治体が、入居者も家主も使いづらい補助金制度の「セーフネット住宅」なんかすぐにやめ、民間の「見守りサービス」と「孤独死保険」をセットにして、増え続ける空き家に単身高齢者がすぐに入れるようにすべきではないでしょうか。
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