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懲りずにまたまた空き家の話題です。
いま「空き家」で検索をすると、全国各地の自治体などが運営する空き家バンクのサイトが星の数?ほど出てきます。役所が主導することと言えばこのように右にならえばかりで、創造力や起業家精神に欠けているとしか言えません。
いくつかの空き家バンクのサイトをのぞいてみたところ、「ど」が付きそうな田舎の築数十年の中古一軒家が数千万円とかで掲載されていたり、駅までバス便しかない地方都市の賃貸が月6万円の家賃とか、アホらしくてよくこんなの恥ずかしげもなくよく載せているなと思うようなものばかりです。
民間の不動産業者なら相手にしないような物件で、枯れ木も山の賑わいってところでしょうか。
このような全国共通の金太郎飴みたいな「上からやれと言われたから仕方なく格好だけつけてます」というような空き家バンクをやっている限り、その地方都市に未来は永遠に来ることはないでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、空き家ですが、今までは地方でその傾向は強まっていますが、今後は都市近郊のいわゆる郊外地域にまで広がってくるのは明らかな情勢です。
少子化で、跡継ぎがいない夫婦や遠くで暮らす家族しかいない高齢者が、老人ホームや介護施設などに引き取られた後、残されるのは築40年とか50年経過した古屋です。
子供など家族がいる場合なら、そうした古い空き家は価格が付けばさっさと売ってしまえばいいのですが、親は介護施設に入っていてもう住んでいなくても、親がまだ生きているあいだは思い出が詰まった家を勝手に処分するわけにもいかず、仕方なく空き家状態で放置というパターンが多いのではないでしょうか。
私の住む地域でも最近空き家がボチボチ現れてきています。
東京都心や横浜中心部まで距離にして20km、電車で1時間程度の郊外地域で、ここに引っ越してきた30年近く前は、周囲にはまだ畑や田んぼが結構あり、交通の便が割と良く、しかも土地代は比較的安いというメリットがあり、周囲には大手企業の社宅や寮、そして古い小さな工場などがいっぱい建っていました。
その社宅はというと、現在はほとんどが普通の民間マンションに建て替えられていて、小規模な工場跡地はいくつにも土地が分筆されて小規模な一軒家が建っていたりと今ではファミリー向けの住宅地となっています。
そうしたまだまだ需要がある地域でも、すでに空き家はいくつも見つかります。
総務省が公表した2013年の全国平均の空き家数は820万戸、全体の空き家率は12%ですが、野村総研の未来予測では、そこから20年後の2033年には空き家は2140万戸(2.6倍)、住宅数全体の30%(2.5倍)に達するそうです。
20年後と言えば、競ってマイホームを手にした団塊世代が80代半ば~80歳後半中盤となり、その多くが亡くなるか、介護施設等に入居、または介護に便利なケア付きマンション等に移っているかというタイミングで、団塊世代達の夢のマイホームが古い空き家になって出てくるわけです。
3軒に1軒が空き家というのは、限界集落や準限界集落ではすでに起きている事象ですが、やがて人がワサワサと多い都市部でもそれが近づいてくるというあまり考えたくない未来絵図です。
それでも日本の住宅メーカーやマンションデベロッパーは前年より着工件数を増やし売上を上げようと、必死に政治家や役所にロビー活動をおこない、テレビやチラシで派手に宣伝し、家やマンションを売りまくろうと手ぐすね引いています。
そりゃ無理ですってば。
国内にこれ以上、新築の家やファミリータイプのマンションを建てたって、そうそう売れるものではありません。ディベロッパーや建材メーカーは、売上や利益を伸ばしたいならとっとと海外へ向かうべきです。
長期トレンドで人口が減っていて、結婚する人が減り、ひとり住まいの人(基本は賃貸)が増えている現状で、中長期的に見てどうやって稼ぎ頭のファミリー向けの一戸建てや広いマンションの販売数を安定して伸ばせますか?
都市部においては、中国人富裕層や国内の少数お金持ちが買う投資用高級タワーマンションか、シングル用の安価なマンション、裕福な高齢者が古くて不便な一軒家から移り住みたいケア付きマンションのこの三つしか考えにくいでしょう。
投資用マンションも、増え過ぎて、今後それを借りてくれる裕福な人がすぐに見つかるか怪しいものです。家賃保証を唄う不動産会社も、そのビジネスモデルが危険水域に来ていると言われています。まもなくそうした高級投資用タワマンのババ抜きゲームが始まると予想されています。
以前書いた、リゾート地の古いマンションがわずか数万円で売りに出されている話しがありましたが、やがてそれがリゾート地だけでなく、周囲が空き家だらけで不用心になり、不良外国人のたまり場と化し、治安が悪化してくる都心部でも同様に売りたくても売れない物件というのが出てきてもまったく不思議ではありません。
そう考えれば、私自身は元々賃貸派ではなく持ち家派なのですが、今廃れ始めた都市郊外にマイホームを買うという選択肢はかなり冒険だと思いますね。
マイホームや不動産を買うのなら、20~30年後にその住宅の周囲がどうなっているかという目利きが重要ですが、そればかりは想定が難しいとしか言えません。
【関連リンク】
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1053 空き家問題を考える
1103 高齢者の賃貸アパート入居問題
795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用
790 空き家が増えている
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日本では「定年退職」や「リタイアメント」と言うと、残念なことですが「濡れ落ち葉族」とか「熟年離婚」、「定年認知症」など決して明るい未来という印象ではありません。
それらを反映して、多くのリタイア後に困らないようお金と生活についてのノウハウ本がいっぱい出ています。
「退職金貧乏 定年後の「お金」の話」「老後親子破産」「リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる」「金持ちリタイア・貧乏リタイア」「定年後の生活を楽しむために」「老後不安がなくなる 定年男子の流儀」「 定年後のお金と暮らし 2017」などなど。
今まさに定年を迎え、その後の嘱託契約を終えた人達は、バブル時代前の入社組で、高度成長期の猛烈社員を上司にいだき、会社に生活のすべてを依存してきたような人達です。
なので、趣味と言っても接待ゴルフとか高級クラブ通い、自前でいく安い居酒屋ぐらいしかなく、引退してどうしていいかわからないということからノウハウ本へ走るというパターンの人が多いのでしょう。
それはさておき、アメリカではこのリタイアについて日本と真逆の感覚で、「おめでたい!」という意味合いが込められています。
先日女子プロゴルファーの宮里藍ちゃんがプロ引退を決意し表明しました。
日本ではこうしたプロスポーツ選手の引退も同様でファンからは「寂しくなる」「まだ若いのにどうして?」と言う反応が強いのに対し、アメリカでも有名な宮里選手の引退については「おめでとう!」という反応です。
宮里藍が米ツアーで再出発 日米で異なる「引退」のとらえ方(ゴルフダイジェスト・オンライン)
キャリアの終止符が、新しい人生のスタートと実感できるのは米国ならでは。「日本とアメリカの文化の違いだと思う。日本では『さみしい、さみしい』という感じですけど、こっちは”Congratulation”、”So Happy for you.”と言ってくれる。その表現の違いに印象を受けました」。祝福の言葉が飛び交うのはもちろん、第一線を退いた後の宮里の未来への期待や楽しみが大きいからでもある。 |
って祝福される「引退=リタイアメント」ってなんだか素敵ですね。
日本でも引退が祝福されるようになれば良いのですが、元気なうちは労働するのが美徳であり、働き蜂と言われる日本人の特性からすれば、「身体が動くのに働かない人はダメな人」というレッテルが貼られてしまうのでしょう。
最近は日本でも極めて一部の裕福な人達が早々に引退を決め「残りの人生を楽しみたい」という人が少しずつ増えてきてはいますが、周囲を見回してもそういう人はごくわずかで、多くの人は例え裕福でこれ以上稼ぐ必要もなければ、働く必要もなく、後進のために早く道を譲ればいいのに「まだまだ」と第一線に居座る人が多くいます。
常になにかをしていないと落ち着かないのでしょうかね?
そしてその「なにか」は、決まって報酬をともなう労働ということになります。中高年者の無報酬労働は活発とは言えません。
若い人からそのような仕事や報酬に執着する高齢者を見れば「老醜をさらす」以外の何ものでもないのですが、本人はいたって意気軒昂で、「働いていないと呆ける」「若い者には負けない」「オレの経験や指導力が必要なんだ」と周囲の評価などには耳を貸すこともなく、裸の王様になっている人が、ビジネス界、スポーツ界、芸能界、政界などにも少なくありません。
もちろん年金が少なくて、生きていくために老いても働かなきゃならないという人もたくさんいるでしょうし、仕事が趣味という人もいます。
それはわかっていますが、もっと多くの富裕層が、自らの貯蓄を殖やすためではなく、若い人を育てるためにお金を使ったり、社会貢献したり、そこまでしなくとも、もっとジャブジャブとお金を使って経済を潤してくれると、どれほどの若い人が救われるかなと考えると、最近の老後の不安をあおるような一連の報道が日本経済を自ら縛り付けているような気がします。
私もいよいよ定年が近づき、ハッピーリタイアメントとなるのか、それとも「老兵は死なず、ただ去るのみ」と重い足取りでビジネス界から去って行くのか、、、はてさて。
【関連リンク】
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
828 後継者不足で廃業、倒産する企業
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
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私も今年60歳となり、勤務先の就業規則上では、次の年度末で定年を迎えることになります。もっとも他の多くの会社と同様に60歳以降の雇用延長制度があり、老齢厚生年金支給開始年齢までは嘱託として勤務を続けることを希望すれば可能となっています。
今年定年年齢に達する男性の多くは、老齢厚生年金支給開始は63歳からですので、希望をすれば63歳までの雇用延長は可能ですが、老齢基礎年金を含むフルで年金がもらえるようになるのは65歳からです。
つまり、63歳から一部年金がもらえるからと言っても、それはまさしく一部であって、普通の生活をおくるのに十分とは言えない額(現役時代に支払ってきた年金額と年数により決まります)です。
結局は、サラリーマンの場合、定年時に多額の退職金がもらえないと、少なくともフルにもらえるようになる65歳まではなにかしら収入を得続けなくては心許ない老後ということになります。
いま70歳前後に達している団塊世代はと言うと、60歳定年で、退職金と同時にフルで年金がもらえました。
この10年間の差はいったいなんだ!?と言いたいところですが、いま50代前半より若い人達は老齢厚生年金含め、年金がもらえるは65歳以降ということで(繰上げ受給制度はありますが、年金額が減額され、平均余命まで考慮したトータルで見ると損になるケースが多い)、63歳からもらえる私(現59歳)はまだマシと言われかねません。
すべては日本人の出生率の低さと平均寿命が伸びたため、こうした年金受給時期の繰下げや減額が起きてくるわけですが、私の父親の時代は55歳が定年、60歳まで嘱託で働き、60歳で仕事も辞め、年金をフルにもらって悠々自適の生活を送っていました。
人口ピラミッドも正三角形で、国内のあちこちに年金資金を使った豪華なリゾート施設やらホールが次々と建ち、そこへ天下りの役人が高給で迎えられるという年金財政が極めて裕福で砂糖に群がる蟻のごとく役人天国だった時代です。
団塊世代は、60歳で定年、60歳からフルに年金がもらえますが、その時すでに雇用延長を始めていた企業も多く、そのまま嘱託として企業で働き、同時に年金も受給してのダブルインカム(嘱託や契約社員としての報酬額月28万円以内なら年金額は下がらずフルでのダブルインカムが可能)としたり、あるいは年金受給開始を繰下げることて、もらえる年金額を増額する人も多くいました。優雅なものですね~。
さて、個人的な話しですが、私が20代だった頃、50歳ぐらいで早期引退し、体も心も健康なうちに、世界や日本中を旅して、自宅に帰るのは年の半分ぐらいと言う生活を夢見ていました。
20代の頃は世の中がバブル景気でしたから、そうした夢も決して特に贅沢なものではなかったのですが、やがてバブル崩壊とその後長く続く平成不況で、その夢もはかなく散ってしまいました。
おそらく私と同世代の人は、新入社員の入社時に「さて60歳の定年までは頑張るぞ!もしかして早期で引退できればそれもまた良し!」ぐらいの気持ちが強かったのではないかなと思います。
ちょうど私が30歳頃には、団塊世代にとっての兄貴分の大橋巨泉氏が当時56歳でセミリタイアを宣言し、そうしたかっこいい生き方に憧れていたこととも影響しました。
しかし実際には、団塊世代が通り過ぎたあとにはぺんぺん草さえ生えず、後に残された荒涼とした廃墟のような日本経済の中で翻弄され、当初の予定通り60歳で引退することは許されず、65歳まで、そしてできれば70歳まで働くことがまるで常識のように求められるようになるとは誰も思っていなかったのではないでしょうか。
その定年延長ですが、こういう記事がありました。とってもその気持ちがわかります。
定年引き上げに不満の声をもらした50代社員の心情(毎日新聞 経済プレミア)
定年引き上げは社員にもメリットがあります。今年60歳で定年を迎える男性の老齢厚生年金支給開始は63歳です。今後、年金の支給開始年齢は2年ごとに段階的に引き上げられ、最終的には65歳まで年金を受給できなくなります。多くの人が年金支給開始まで、定年前の処遇のまま何らかの仕事に就きたいと考えるでしょう。 A社長は定年規定を含む就業規則を修正し、社員を集めて新しい就業規則を説明しました。「定年を65歳にする」と発表した途端、あと2年で定年を迎えるはずだったB男さんから不満の声が上がりました。 |
このBさんの不満は「一度決めたことをやり抜けと常々子供には厳しく言ってきた。体力的に厳しくなってきたが当初から60歳の定年までは頑張ると決めていた。60歳に向けてあと3年、2年と踏ん張ってきたのに、いきなり5年間の定年延長を言われても・・・」ということです。
20代、30代の頃に、60歳から65歳に定年が変更されてもライフプランに大きな変更が起きるわけではありませんが、50代後半になってからこうした変更はインパクトがかなり大きいのです。
そうした強いインパクトを、人口が多い団塊世代や団塊ジュニア世代が受けるタイミングではなく、人口が少ない谷間の世代にぶつけてきたことに、国や政府、そして団塊世代の票が欲しい政治家が仕掛けた悪意を強く感じます。
定年の移行時期について、タイミング的に意図されたかどうかは下々の者にはわかりませんが、いま50代後半に差しかかっている私の世代にとっては、定年、年功序列賃金や終身雇用、退職金制度など当初から「聞いていたことと違う!」ということが多いのは事実です。
今はまだ切実な思いをしていませんが、2030年以降に60歳前後に達する団塊ジュニア世代達が一大勢力となり、「年金もっとよこせ!」「退職金を増やせ!」「雇用を守れ!」と声を荒げて社会を揺るがす時代が来るのではないかなと思っています。
そうした団塊ジュニア世代が声を上げれば、国も政治家も重い腰を上げざるを得なく、様々な社会保障制度の改変が実施されそうです。
今から13年後と言えば私のような今50代後半の谷間世代は70歳を越え、その年代を含めた年金額の減額とか、医療費負担増などイジメのような締め付けが行われそうな気がします。谷間世代は人口が少なく、その前後(団塊世代と団塊ジュニア世代)と比べておとなしいですからねぇ、、
わかりやすく言えば、星野仙一、山本浩二、堀内恒夫、鈴木啓示、江夏豊は団塊世代で、原辰徳、石毛宏典、岡田彰布、辻発彦、北別府学は谷間世代、そしてイチロー、松井秀喜、新庄剛志、三浦大輔、上原浩治、中村紀洋は団塊ジュニア世代ってところで、谷間世代ってその前後の強烈な個性をもった世代と比べなんかおとなしい感じがするでしょ?だからいつも損な役回りなのですよ~
【関連リンク】
1011 定年後の生活資金設計
1007 退職金の不思議
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今のシニア層の約8割が持ち家に住んでいるということなので、今のところあまり大きな問題にはなっていませんが、いずれは火を吹きそうな話しとして、「シニア層が賃貸住宅に入れなくなる」という問題があります。
もちろん今でも単身高齢者が老朽化した自宅や借家から、別の民間賃貸住宅へ引っ越しをしようとしてもなかなか借りられないという問題は起きています。
少なからずある「高齢」が理由の入居拒否(HOME'S PRESS)
貸す側、大家さんの立場になれば、単身高齢者の入居は、「孤独死して長く気がつかない状態になるのは困る」「連帯保証人や親しい親族が近くにいない」「建て替えをしたくて出て行ってもらいたくても次が決まらないので出てくれない」「手すりをつけたい、段差をなくしてほしいなど要望が多い」など、若い人と比べて多くの不利な点があります。
なので、単身高齢者の入居条件には、「近所に保証人の親族が住んでいる」「亡くなった後始末を頼める保険に加入する」など条件をつけられるケースが増えているそうです。
家族や親戚が多い人は比較的安心ですが、生涯独身を通した人、子供のいない夫婦のうちどちらかが亡くなったあと、子供はいるけど仕事の関係で遠くに住んでいる場合など、賃貸住宅を新たに借りるときは苦労しそうです。
持ち家だから安心と思っている高齢者も、それまで住んでいた老朽化した一軒家は広すぎて手入れが行き届かず、雨漏りがしたり庭は雑草だらけとなり荒れてくるのと、足腰が弱った高齢者には段差や階段が不便で数百万~1千万円以上かけてバリアフリーリフォームをしない限り、気持ちよく住み続けるというのは難しくなってきます。
そうすると持ち家のシニア層もやがてはその家を捨てて、単身者や高齢者に向いたマンションなどに引っ越しをしたいと思うようになりますが、前述のように一定の条件をクリアしなければ賃貸住宅には入居ができないということになってきます。
シニア向け分譲マンションやサービス付き高齢者向け住宅というものも最近増えてきていますが、一長一短あり、利用者の価値観や財産、家族構成、そして健康状態など様々な要件で考えることになりますが、いずれにしても持ち家があれば一生安心ということにはなりません。
すでに古い住宅の空き家があちこちで目立つようになってきましたが、いまはまだ元気な団塊世代がやがて75歳以上の後期高齢者に入ってくる2020年以降になると、加速度的にそうした古いマイホームを捨てて介護に便利なマンションやアパートに引っ越す高齢者が急増しそうです。
それを象徴するように、野村総研の試算では16年後の2033年には住宅総数7100万戸に対し、空き家が2150万戸(2013年の空き家総数は820万戸:総務省統計局)となり、空き家は現在から倍増して3軒に1軒が空き家となるそうです。
グラフ出典:野村総合研究所
目端が利く人ならば、今ならまだかろうじて値段が付く自宅は早々に売ってしまい、その売却益で終の棲家にできそうな新しいマンションを購入という動きをするのでしょう。
10数年後、郊外で周囲が空き家だらけになってから古家付きの狭い土地に値段がつくかと言うとはなはだ絶望的です。
終の棲家のマンションは、新築でも築10年以内の中古でもよくて、住環境がよく、できれば同じような高齢者が住んでいて、トイレや風呂場には段差がなく手すりがついていて、エレベータやセキュリティも完備しているというところ。
「マンションは管理を買え」は今でも鉄則で、空き家が多くてスラム化したり、不法就労者や怪しげな外国人が出入りしているようなマンションは高齢者には不向きでしょう。
耐震性が低い1980年以前に建てられたマンションは30年程度で次々と建て替えられましたが、最近のマンションであれば都度のメンテナンスは必要ながら、50年間ぐらいは問題なく使えそうです。ちなみに新耐震基準施行は1981年からですので、耐震補強済み以外のそれ以前のマンションは高齢者は買ってはいけません。
60歳で築10年(2007年築)の中古マンションを買えば、100歳頃まで建て替えの必要はなく、マンションがスラム化さえしなければ住まいの不安は払拭できそうです。
新耐震基準でありながら、大きな地震で半壊、全壊してしまうともうこれは運がなかったと言うしかありません。
あとマンションの立地は、できればスーパーやコンビニは近くにあったほうがいいでしょうけど、子育てに必要な公園や学校、通勤の便利さは、重要ではありません。
ただ住宅地は高齢化するとスーパーやコンビニもすぐに閉鎖、撤退してしまいますので、住宅地よりも大きな国道沿いとかのほうが便利かも知れません。
それに住宅を売ったお金はできるだけ老後資金に回したいので、人気の都市部や都市部周辺の高い物件ではなく、都心へ通勤するには少し遠過ぎる、都会から離れた不動産価格が安い場所へ元気なうちに移住するのが賢いやり方かもですね。そのほうが日用品や食品の値段も比較的安価です。
でも住み慣れた自宅、近所に知り合いが多く、家族との思い出が詰まっている自宅を売るという決断はなかなかできず、そうした心理的、精神的な抵抗が最大のネックとなりそうです。
【関連リンク】
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1053 空き家問題を考える
888 火事と高齢化社会の因果関係
795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用
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2015年の日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳(出典は厚労省)で、前年からそれぞれ0.29歳、0.22歳伸びています。
日本は世界で一番の長寿国と思われていますが、世界銀行(World Bank)が2016年に発表した2015年のデータでは男性は10位、女性も2位となっていて、男女総合では香港に続き第2位となっています。
またWHO世界保健統計2016年版では男女平均が83.7歳で世界1位、男性は6位、女性は1位という結果です。
長寿命の国であることは違いありません。
こうした寿命が伸びていくことは、国の隅々にまで予防医学が広まり、先端技術が浸透し、生活環境が清潔に保たれ、伝染病や風土病が拡がらず、大きな事故や天災が起きず、戦争や紛争も起きず、平和で安全な社会であることの証明ですので一般的に悪いことではないでしょう。
しかし困った問題が出てきていることも確かです。
少子化+高齢化+長寿化では高齢者が受け取る年金が最大の問題ですが、それ以外に医療費と介護費の急増も大きな問題となってきています。
国民医療費・対国内総生産・対国民所得比率推移
グラフ出典:厚生労働省
グラフを見ると明らかなように、高齢化と医療の高度化により医療費の増加が年々激しくなっています。
また医療費の他にも介護費用も2014年で9兆5783億円と前年から4.4%増加しています。2000年度は介護費は3兆6273億円でしたので14年は2.55倍に増加しています。
介護費用って基本自己負担で賄っているのでは?って思っているそこのあなた。
40歳以上になるとなけなしの給料から無慈悲に天引きされる介護保険料が使われています。
定年で仕事を辞めたからと言っても生活保護を受けていようが関係なく(所得によって差はありますが)死ぬまで介護保険料は支払い続けます。介護を一切受けない人もです。健康保険と同じようなものですね。
したがってというか介護費が増加したり、介護保険料を支払う人の数が減ってくれば自ずと1人当たりの保険料がどんどん高くなっていくと当たり前の論理です。これも健康保険料と同じです。
最近では40歳以上の支払い義務を30歳以上にしようとか少子化対策に向けた論議もされていますが、それ以上にここ20年間はさらなる高齢化と、それにともなく介護受益者の数が一気に増加しますのでその原資作りに奔走しているというのが現実です。
このまま手をこまねいていていいのでしょうか?
じゃ、なにができる?
老人や要介護者は早く死ね!?
確かに若い人の中にはそう思っている人は少なからずいるでしょう。
敗戦のなにもないところから、高度成長を遂げ、世界と戦って日本を世界の中で一流国家に引き上げてきたという自負のある老人からは「まともに税金や社会保険を支払わないニートや引きこもりや障害者の若者は死ね!」と返されるかも知れません。
いずれも人間的に、人道的にそのような罵り合いは現実的な解決にはなりません。
ここで考えるべきは、医療費も介護費もできるだけ使わないでいい方法を探っていくべきでしょう。
そんな方法があれば誰も苦労はしない!?
そうでしょうか?
寿命には何歳まで生きるかという平均寿命と、何歳まで介護に頼らずに生きられるかという健康寿命というのがあります。
2001年の平均寿命は男性が78.07歳、女性が84.93歳で、健康寿命は男性が69.40歳、女性が72.65歳でした。平均寿命と健康寿命の間には、男性で8.67歳、女性で12.28歳の差があります。
2013年は同様に平均寿命男性が80.21歳、女性が86.61歳、健康寿命が男性71.19歳、女性が74.21歳となっていて、それぞれ9.02歳、12.4歳とわずかですが12年間のあいだに健康ではない期間が拡がってきています。
暴論とのそしりを恐れず極論すれば、この介護が必要な平均寿命と健康寿命の差をどんどん縮めるようにすれば、医療費も介護費も両方抑えられるということになります。
介護が必要になった高齢者はすぐに死ねと言うのか?
ま、そう慌てずに、、、
現代の医療は高度化し、いわゆる本人の意志とは関係なく、生かされ続けている人がいます。植物状態と言う場合もあり、全国的な調査は行われていません。
ある推計データでは、高齢者だけではありませんが日本には5万人を超えると言われています。
日本では安楽死は法で禁止されていますので、医者は患者を生かすことだけを考えて延命処置をおこないます。それは高齢者の終末医療においても同じです。
もっと言えば本人が生前に延命処置を断っていたとしても、本人の意識が失われた後、患者の家族や親戚が医者に対して、できる限りの延命処置をして欲しいと願えば、意識のない本人の意志は無視され、生かし続けられることになります。医者もあとで家族から訴えられるのは嫌ですからね。
身内の人には1日でも長く生きてもらいたいという気持ちはわかりますが、まずは高齢者における終末期医療の抜本改善をおこない、目の飛び出るほど高価な生命維持、延命処置を制限する制度を作るところから始めるべきでしょう。延命処置は基本的にまだ年齢的に若くて、体力もある人に限るとか。
そうしないと患者の家族は「積極的に延命処置を頼まないとは冷たい家族だ」という周囲からのそしりを受けることになり、そうした状況から本人の意志とは関係のないところで延命処置を続けると言うことが当たり前に行われます。
そうして、生命維持装置の力で生かされ続ける高齢者を減らしていき、やがては高度医療に頼る高齢者の延命措置は恥ずかしいこと、みっともない、「死ぬときは自然に死にたい」と思える風潮を作っていくことが、現役世代だけでは負担しきれなくなってきた医療費や介護費を減らしていく最後の方法ではないかと思うわけです。
医療費や介護費の多くは高齢者ではなくこれから社会で活躍してくれる若い人や若い障害者にもっと向けられるようにして、人生の大半を使い終わった高齢者は自然の摂理に逆らわず、騒がず慌てず医療や介護に頼らず、静かに去っていく方法を受け入れるような社会にしていくのです。
日本を含めまだ安楽死や尊厳死を認めていない国は世界でも主流ですが、やがて日本と同様に超高齢者社会になっていく国々の見本となるようにこうした制度も日本が取り入れて、次世代にツケを残さない人生の終わり方の見本を作っていくべきではないかなと思います。
【関連リンク】
1013 5年生存率と余命宣告
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変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)
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