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幕末紀 宇和島銃士伝(光文社文庫) 柴田哲孝
著者の小説は、主に現代のハードボイルドタッチの小説が多かったですが、今回初めて江戸時代の小説と言うことで、しかもそれが著者自身の家系に関係するものというのが新鮮です。
伊達家が当主というと独眼竜伊達政宗の仙台藩が思い浮かびますが、正宗の側室の子で後を継げなかった伊達の庶子伊達秀宗が大坂冬の陣で手柄を上げ、徳川家康に宇和島藩を与えられ、その後明治の廃藩置県まで伊達家の代々世継ぎが四国宇和島を治めていたということです。
著者の先祖は、元々仙台の伊達家の弓組の重鎮でしたが、伊達秀宗が宇和島へ移ったときにともに移った武士でした。弓組はやがて幕末に近づき鉄砲組(部隊)に変化していきます。
幕末の頃は薩摩藩第11代藩主島津斉彬や土佐藩第15代藩主山内豊信(容堂)とともに幕末の四賢侯と言われていた伊達宗城が宇和島藩主で、著者の高祖父柴田快太郎が仕えていた頃の話になります。
この柴田快太郎は当時の日記や手紙など文書が多く残されているものの謎多き人らしく、坂本龍馬が土佐藩を脱藩した時期とほぼ同じ頃に宇和島藩を脱藩したかと思えば、江戸や京都で起きた様々な出来事や情勢を、藩主へ報告していたことがわかっていて、さらに常識では考えられない柴田家の墓が藩主伊達家の墓所の一角に作られているなどの謎があります。
脱藩と言えば、敵前逃亡と同じで普通は藩に捕らえられれば打ち首は必至の重罪ですが、その後もなにかと宇和島藩のために尽くしていることから、表向きは脱藩ということにして、その実は藩命の密偵として江戸や京都で自由に動き回っていたのでは?ということです。
それにしても、桜田門外の変や、坂本龍馬の脱藩、寺田屋事件、池田屋事件、蛤御門の変など幕末の多くの事件や騒動が主人公の目前で次々と起こり、西郷隆盛や五代友厚、勝海舟、高杉晋作、近藤勇、グラバーなどとも交流があったとされる内容にはちょっとひいてしまいます。
幕末の有名人と言えば上記の人達、勢いのあった勢力は薩摩藩や長州藩、土佐藩などですが、四国の小藩だった宇和島藩の動きや、一歩引いた地方から見た幕末の激しい攻防戦はまた違った見方ができて面白いです。
さらに、黒船のペリーや長崎で手広く商売をしていたスコットランドの商人グラバーなどから、フリー・メイソンの支配という謎かけもあり、ダイナミックな時代小説となっています。
★★★
◇著者別読書感想(柴田哲孝)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
大還暦 人生に年齢の「壁」はない(ちくま新書) 島田裕巳
本文の中にも何度も「詳しくは○○(著者の既刊書)に書いているが、…」という、この著書自体が過去の自著作品の広告にもなっているようです。新書の場合はそういうケースが多いですが、これほど何度も出てくると読んでいて不快です。
その代わりに、事件を起こす前のオウム真理教を擁護したり、教祖を自分の講演会に呼んで学生に紹介したことで勤めていた大学をクビになったりしたことも正直に本著で伝えていることは評価できます。ご本人にとってはさぞかし大きな出来事だったのでしょうけど、一般読者はそんな昔のことは興味も関心もないのでどうでも良いことですけど。
それはさておき、大還暦とは、還暦が60年(歳)ならその倍を生きたとして120年(歳)を大還暦と呼ぶ風習があり、それが最近の長寿命化で、現実的になってきていること、そういう社会変化で起きていることなどがわかりやすく説明されています。
例えば、戦後にお墓を建てることがブームになったものの、今は墓じまいが急増していることから、もうお墓が必要ではなくなってきている現状や、それに合わせたゼロ葬(火葬後に遺骨をもらわない)システムを著者自身が提案されたりしています。
いろいろツッコミどころはありますが、著者自身のお考えなのでそれは良いとして、本文の「はじめに」に、「幸若舞の敦盛にある人間五〇年、下天のうちを比ぶれば…」を引き合いに出して「この時代の認識では、人間の寿命は五〇年とされていたわけです」と書かれていますが、これは現代の解釈では当然の誤りです。人の寿命を現しているのではなく天界の1日が人間界の50年という意味です。
また、終盤には出雲大社の本殿西側(本殿の正面は南側)に遙拝所が設けられていることに対し「なぜ、西側からなのでしょうか。」と書いておきながら、その意味は書かれてなく意味不明な説明が後にダラダラ続けられています。
正解はお茶の間のクイズ番組でもよく出てきて簡単な問題で、著者も当然知っているのだと思いますが、「本殿の正面は南向きですが、御祭神の大国主大神は西向きに座っているから」です。
敦盛の中に出てくる「人間五〇年」の実際の意味や、なぜ出雲大社本殿の西側に遙拝所が設けられているかはちょっと調べれば誰でも簡単にわかることですが、著者はなぜかそれをしない、また編集者や校正者はなにも言わないのが不思議です。
そのような明らかな間違いや誤解が出てくると、この著者の話は話半分で読むのがよいのかなと思えてしまい残念に思うところです。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
殺しのライン(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ
シリーズ第1作目の「メインテーマは殺人」(2017年)はすでに読みましたが、第2作目の「その裁きは死」(2018年)はまだ読んでいません。
それぞれ事件は独立したものなので、どれから読んでも問題はないですが、徐々に寡黙なパートナー(元刑事)の謎がわかってくることなど、できれば最初から読んだ方が面白く読めそうです。
今回も難事件に二人で挑み、その事件を小説には向きそうもない面白みのない解決で終わりそうなところ、実はという展開です。
ストーリーは、有名な作家などを呼び、講演会など様々なイベントを開催する文芸フェスが英国領の離島「オルダニー島」でおこなわれることとなり、二人で参加することになります。
そうした本のPR活動にはまったく興味のないパートナーの元刑事は断るだろうと思っていたら、意外に乗り気なことに驚きます。
その理由は、元刑事が事故の責任をとって警察を退職するきっかけとなった元犯罪者がその島に住んでいるからです。
元犯罪者は護送中に階段から転落し大怪我をしましたが、刑事がその男を突き落としたのではないかと噂されています。
そうした一癖も二癖もある登場人物が10名ほどいる中で、隔離された離島で殺人事件が相次ぎ発生し、いったい誰がどういう方法で殺したのか?という犯人当て推理小説です。
ヒントはところどころに散りばめられていますが、そう簡単に真犯人にはたどり着けそうもありません。
私からのヒントとしては、こうした犯人当ての場合、もっとも犯人らしくない登場人物が一番怪しいということが常道だということです。
★★★
◇著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
この国のかたち(1)(文春文庫) 司馬遼太郎
これらのエッセイは雑誌文藝春秋に連載されていて、この(1)が単行本にまとめられたのが1990年、文庫版は1993年に出版されています。その後もこのエッセイは、第6巻(1996年)まで続きます。
著者はいわゆる戦中派の方で、陸軍の戦車部隊で満州国境付近で国境警備をしていましたが、戦況が悪化しつつある時に本土決戦のために内地に呼び戻された直後に、満州国境で日本軍がソ連軍にコテンパンにやられたノモンハン事件が起きます。偶然とは言え命拾いされています。
本当なら、そうした経験をもとにした太平洋戦争、中でも満州戦線などの小説を一番に書きそうなところ、著者の思いとしては敗戦の昭和20年までの昭和時代の日本人は狂っていたとしか思えない時代と解釈していて、その時代の話題や人物は著者の作品には登場してきません。
したがって著者の興味は、日本人の性格をよく表しているという戦国時代や江戸時代、明治時代の人物や事件に集中しています。
またその時代の日本人の肉体的精神的な根幹となっている古代中国や朝鮮半島などにも興味が広がっていった作家さんです。
ただ、雑誌連載という形式から、同じ話が何度も繰り返されることがよくあります。1冊にまとめたときには、そうした部分はカットするとか編集すれば良いのですが、そのまま載っているので、「またその話か・・・」というところがあり、そうしたところは出版社の編集の方でうまく処理してもらいたいものです。
著者の著書の多くに共通する深いテーマがわかる、この本のあとがきに書かれていた話を転載しておきます。
「終戦の放送をきいたあと、なんとおろかな国にうまれたことかとおもった。(むかしは、そうではなかったのではないか)と、おもったりした。むかしというのは、鎌倉のころや、室町、戦国のころのことである。やがて、ごくあたらしい江戸期や明治時代のことなども考えた。いくら考えても、昭和の軍人たちのように、国家そのものを賭けものにして賭場にほうりこむようなことをやったひとびとがいたようにはおもえなかった。」
★★☆
◇著者別読書感想(司馬遼太郎)
【関連リンク】
2月前半の読書 騙し絵の檻、日本のタブー3.0、日御子(上)(下)、この闇と光
1月後半の読書 マーチ博士の四人の息子、美食探偵、嵐が丘、こちら横浜市港湾局みなと振興課です
1月前半の読書 貴族探偵、ナオミとカナコ、日本のこころ、阿修羅のごとく
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騙し絵の檻(創元推理文庫) ジル・マゴーン
中でも「犯人当てミステリー」が有名で、本書もそれに該当します。本書の原題は「THE STALKING HORSE」で、巻末の解説によると「漁師が獲物に近づくために身を隠す馬のことで、転じて口実やみせかけという意味」があるそうです。ただそれが犯人当てのヒントになるということはありません。
その特徴は、殺人事件が起き、誰が真犯人でも不思議ではない状況で、ひとりひとりのアリバイや人間関係を小出しにしていき、最後にその容疑者全員の中で、事件の謎解きと犯人を名指しするというお馴染みのものです。
謎を解くいわゆる探偵役は、2件の殺人で無実の罪を着せられ、16年間の刑務所収監の後に仮出所してきた男性です。
同様の日本の小説ではもう少しわかりやすい人間関係や容疑者の性格が語られますが、なかなか露わにならない複雑な人間関係とか、ちょっとイライラしたりします。それも著者の作戦ということなのでしょう。
名著という評判ですが、最後の謎解きで初めて知ることもあり、なんだかなぁというのが感想です。
★☆☆
実は、情けないことに5年前の2021年にこの小説を読んでいました。読み終わってリストの整理してから気がつくという、「老化もここまできたか!」と思わせられることになりました。
感想も評価も下記に書いています。評価は今回の読後よりも高かったみたいですが、6年後にまったく覚えていないということは、内容にインパクトがなく印象が薄かったのでしょう。言い訳ですが。
「2021年6月後半の読書と感想、書評(騙し絵の檻)」
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
日本のタブー3.0(宝島新書) 望月衣塑子、鈴木智彦、西島信彦、鳥集徹、他
そのサブタイトル通り、あまりマスメディアが深く追求しないテーマ、新型コロナワクチンと製薬マネー、官房機密費、内閣情報調査室、太陽光発電やIRカジノ利権、山口組分裂抗争、工藤會総裁の死刑判決、出入国在留管理庁の闇、脱炭素社会の罠、格差社会、死刑制度などについて、それぞれの記者やジャーナリスト、ライターが解説し問題提起をしてくれます。
もちろん、そのライターやジャーナリストが信じて書いている内容や考え方がすべて世の中の常識、社会正義なのかどうかは?で、それを判断するのは結局読者に委ねられているのだと思います。
というのも、エビデンスとして引用されている記事や情報の出先の多くが「事情通」とか「関係者」で、出典先も日刊ゲンダイだったり週刊実話だったりして、どこまで信頼性のある話しなのかほとんどわからないという感じです。
情報源の秘匿はジャーナリストや記者がもっとも大事にすることですが、逆に言えば、信頼できない情報や噂話でも、それがさも真実であるかのように、センセーショナルに書くこともできます。
また真実を知っていても、それを書くと仕事を奪われたり、自分や情報提供者の命さえ危うくする可能性があれば、あえて論点をずらした書き方やわざと違った内容でゆがめることもあるでしょう。
そうしたことをよく理解した上で、それぞれの章を読むと、俯瞰的にいまなにが日本の社会で起きているのか?というのがぼんやりと見えてきます。
★★☆
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日御子(上)(下)(講談社文庫) 帚木蓬生
そういうことから、著者の作品は医療に関連する内容のものが多いですが、今回の小説は医療とはまったく関係がなく、タイトルから想像できるように、1~3世紀頃、九州北部にあったとされる倭国(日本)が舞台です。2012年に単行本、2014年に文庫化されています。
九州北部にあった国々が独立した行政を敷いていて、それらをまとめて倭国と称していた時代、那国(奴国)で代々朝鮮半島や漢(中国)との交易のため通訳をしている一族が主人公で、漢の都洛陽へ使者を送る際に同行し、光武帝と面会、金印を返礼品として持ち帰ります。
時代は進み、隣の伊都国に征服され那国から伊都国へ仕えるようになった漢に渡った通訳の孫が成長して再び通訳として漢に渡ることになります。
その孫の子の女性が弥摩大国(邪馬台国)の通訳一族に乞われて嫁に入り、その子が国王の長女「日御子」(卑弥呼)に仕える巫女として働きます。
その頃の倭国全体が戦乱状態が長く続き、国土は荒廃し、交易などもできない状態でしたが、賢明な日御子が、各国に休戦の使者を送り、戦乱の世の中を鎮めることに成功します。
邪馬台国の九州説か近畿説かという議論はさておき、当時まだ会話以外の日本語(書き言葉)がない日本で、「邪馬台国」「狗奴国(くなこく)」「卑弥呼」「奴国(なこく)」など、口頭で聞いた音を、後進国の倭(日本)をさげすんでいた漢や魏の役人が、それを卑しい漢字(中国語)に当てはめて記録したという話しが出てきますが、確かにそういうこともあったでしょう。これは納得のいく解釈です。
今でこそ、中国と日本の関係は微妙で一部の日本人には驕りも見られますが、当時は先進国で大国だった漢や魏に対し、ひたすら中国皇帝にひれ伏し、命がけで日本から使節を送っていたことがあった歴史を日本人は知っておくべきでしょう。
そうすれば、中国人のDNAには、倭(日本)という地図にも載らないような小さく野蛮な後進国に、東アジアで大きな顔をされたくないという古くから脈々と伝えられてきたものが深く刻まれているのもわかります。
★★★
◇著者別読書感想(帚木蓬生)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
この闇と光(角川文庫) 服部まゆみ
3年前に「一八八八切り裂きジャック」(1996年)を読んでいて、この作家はとても才能豊かな方で只者ではないと感じました。
ただすでに著者は2007年に58歳の若さで亡くなっています。まだ未読の9作品(アンソロジー除く)もぜひ読んでみようと思っています。
◇2023年1月前半の読書と感想、書評(一八八八切り裂きジャック)
なんの予備知識もなく最初この小説を読み進めていくと、戦乱が続く中世ヨーロッパの小国を舞台にした話かと思っていたら、全然違っていて、自動車やテレビ、録音機なども次々登場しアレレ??となりました。
というのは、主人公の王女レイラは、他国からの侵略で、城を追われ、別荘に軟禁されている目の不自由な幼い少女で、文庫の表紙にもそれらしい少女が描かれていますから、そんな第一印象を持ってしまいます。すっかりはめられてしまいました。
そのオチはというともちろんここでは書きませんが、次々と出てくる古典小説、西洋美術、クラシック音楽など、いかにも王族が好みそうな上流階級の趣味がこれでもかと出てきます。
中でもつい先日読んだ「嵐が丘」の主人公ヒースクリフの話がこの小説の会話にも出てきて、こうした古典の名作はちゃんと読んでおかないと何を言っているのかよくわからないなぁと思った次第です。
それが終盤にガラッと変わってしまいますが、それまでがやたらと長く、ちょっとイライラさせられます。
でもその終盤からクライマックスにかけての話の展開を読めば、伏線と言うにはどうかと思いますが、今までの話はなんだったの?という驚愕の内容に変わっていくところが絶品でした。
★★☆
◇著者別読書感想(服部まゆみ)
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マーチ博士の四人の息子(ハヤカワ文庫) ブリジット・オペール
推理サスペンス小説ですが、ホラーの要素もありなかなか楽しめます。
主人公は、アメリカの裕福な家でメイドとして働いている独身の女性で、過去に犯罪で刑務所に収監された経験があり、現在も別の犯罪で警察に追われているという感情移入ができそうもない人物です。
その主人公が働く家には、医者の主人、その妻、4人の子供(4つ子)が住んでいますが、その子供のひとりが書いたと思われる日記を偶然見つけ、それを読むと、過去に何人もの殺人を犯し、今後も次のターゲットが書かれています。そしてそのターゲットとされた女性が殺されたり、事故に見せかけて亡くなったりします。
その殺人犯の日記と、メイドの日記がずっと繰り返され、やがてはお互いの存在が判明し、やりとりをするようになりますが、その殺人犯が4人の子供のうち誰なのかはずっとわかりません。
この双方の日記でのやりとりが長く、ダラダラと延々と続くのが結構つらく、読み飛ばさずにはいられません。
こういう小説なので、単純に4人の息子のうちの誰かが犯人だったというオチにはならないと思っていて、あれこれ自分で想像してみましたが、突拍子もないエピローグで、いずれも外れてしまいました。
そりゃそうです、一度も登場してこない人物が犯人なんてそれは反則技でしょう。
それにしても、最終的に事件が解決する要因が、主人公が刑務所に入っていた時の習慣の「あること」からというのは秀逸でした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
美食探偵(角川文庫) 火坂雅志
その中でも珍しい明治時代を背景にした探偵小説で、2000年に単行本、2003年に文庫化された長編小説です。
主人公は、報知新聞社の編集長で、またグルメ情報「食道楽」などを書いている作家にして、謎を解き明かす素人探偵です。
連作短篇集形式になっていて、「海から来た女」、「薄荷(はっか)屋敷」、「消えた大隈」、「冬の鶉(うずら)」、「滄浪閣(そうろうかく)異聞」の5篇が収録されています。
それぞれの短篇は、明治時代に実在していた建物が舞台となっていて、「大磯の禱龍館(とうりゅうかん)」、「横浜のグランドホテル」、「築地メトロポールホテル」、「箱根離宮」、「伊藤博文邸、滄浪閣」が登場し、親切にも当時の写真が掲載されています。
余談ですが、それらの中で唯一知っていそうなグランドホテルは横浜にあるクラシックホテル、ニューグランドが名前を変えたそれかなと思っていましたが。グランドホテルは1923年(大正12年)の関東大震災で倒壊したため廃業していました。ただその同じ場所に別の法人が外国人向けの高級ホテルとしてニューグランドを建てたということです。
こうした学校では習わない明治時代の話しは、内容はフィクションとは言え、その中に事実も散りばめられたこうした小説で知ることが多く、雑学ですがたいへん面白く興味がわきます。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
嵐が丘(角川文庫) E・ブロンテ
Heights(ハイツ)は、日本では場所は問わずチープな集合住宅の名称によく使われていますが、本来は、丘など高台にある大きな一軒家の屋敷に付けられる名称で、本著では主人公達が住む屋敷がワザリング・ハイツ(意訳:嵐が丘)と呼ばれています。
作品は1847年(日本では江戸時代)に最初に出版された長編小説で、著者のエミリー・ブロンテは、1818年イギリスのヨークシャー生まれで、28歳で本作品を刊行後、わずか1年経った1848年に病死します。本作品が高く評価されるようになったのは著者の死後のことです。
「リア王」「白鯨」とともに、英米文学では三大悲劇とされています。また1939年から今年2026年まで8回映画化されています。その中の1992年公開の映画では坂本龍一が音楽を担当しています。
英国の田舎町にある大地主が住む二つの大きな屋敷があり、そこが主な舞台となります。その屋敷のひとつはいつも強風にあおられていて、Wuthering Heights(嵐が丘)と呼ばれています。
物語はその屋敷に住む家族3代にわたる大叙事詩で、180年前に書かれただけに、現代の感覚からすると相当時代を感じます。180年前と言えば、日本は江戸後期で、まだペリー来航の前で、鎖国中でした。
内容は、恋愛などもありますが、その多くは差別や裏切り、病気、謀略など暗くて重い話しが多く、最後には少し救われますが、悲劇だけに読み進めていくのが結構つらく重苦しいです。
そして子供の頃に孤児だったのを救ってもらい育ててもらったにも関わらず、恨みを持ち、恩知らずの性格破綻している嫌なヤツ(主人公のひとり)を中心に物語は回っていくので、出版当初は評価が低かった理由もわかります。
この小説が最初に邦訳版で出版されたのは昭和32年(1957年)で、今回読んだ文庫改訳版の初版は昭和38年(1963年)版(平成8年改版41版)です。
したがって昭和38年当時の言葉遣いがそのまま残されていて、現代では差別用語として使われない言葉「きちがい」「こじき」「つんぼ」が何度も出てきたり、裕福な地主の若い娘さんが「よござんす」とか、英国のお嬢様が着るドレスのことを「着物」という翻訳にちょっと目が点になってしまいます。
増版するときに、出版社は訳者の許可(翻訳者は亡くなってますのでその権利継承者)は必要でしょうけど、どうして現代風に最低限の修正をしないのか不思議です。他の新潮社版や講談社版などではもう少し現代風の訳になっているのでしょう。
それにしても、英国の3世代にわたる大河小説で、久々に何冊かに及ぶような大作を読んだ気分になりました(この角川文庫は本文500ページ)。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
こちら横浜市港湾局みなと振興課です(文春文庫) 真保裕一
タイトルから著者の過去の作品にも多くある公務員を主人公にした「お仕事小説」?と思って読みましたが、それに間違いはありませんでした。
実際の横浜市には港湾局はありますが、「みなと振興課」という部署はありませんが、似た「賑わい振興課」というのがあります。それがモデルなのか不明ですが、創作なのでしょう。
主人公は横浜市の港湾局に勤めるヒラの事務職女性と、新たに配属されてやってきた国立大卒のエリート男性の2名で、仕事に絡む中で問題が発生しますが、その不思議な謎の原因を突き止め、穏便に済ませ表面化しないように苦心します。
また本来なら横浜市の局の中でも出世コースではない港湾局に国立大卒エリートが配属された謎(事実かどうかは不明であくまでフィクションです)についても徐々に明らかとなっていきます。
やがて戦前に外国人が多く住み商売などをおこなっていた横浜の歴史や、シアトルへの定期航路で活躍していた氷川丸についてなど、様々な横浜の一面が見られて面白かったです。
そう言えば、先日読んだ火坂雅志著の「美食探偵」も舞台となった時代は違いますが、横浜や大磯などの歴史がテーマとなっていて、意図していませんが、なぜか続きます。
★★☆
◇著者別読書感想(真保裕一)
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1874
2012年から続けている毎年恒例のリス天管理人が独断で選ぶ年間BEST書籍大賞の発表です。パチパチパチ
選考についてあらためて書いておくと、管理人が2025年の1年間に読んだ書籍の中から選びますが、読む書籍のほとんどは諸般の都合上、何年も前に発刊された古いものが多く、新刊本はほぼ入っていません。
ジャンルは、新書やビジネス、エッセイ、ノンフィクションなどの部門(以下「新書」でくくってます)、海外小説部門、国内小説部門の3つに分けてそれぞれ大賞を選びます。
2025年は作品数で97作品、冊数では109冊を読みました。1作品で上巻、下巻等に分かれているものがあるので冊数は増えます。
| 新書/ノン フィクション |
冊数 | 海外小説 | 冊数 | 日本小説 | 冊数 | 作品数 | 冊数 | 月間平 均冊数 |
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| 2013年 | 86 | 98 | 8.2 | ||||||
| 2014年 | 26 | 26 | 13 | 17 | 62 | 70 | 101 | 101 | 8.4 |
| 2015年 | 17 | 17 | 12 | 65 | 94 | 107 | 8.9 | ||
| 2016年 | 14 | 14 | 12 | 16 | 65 | 79 | 91 | 109 | 9.1 |
| 2017年 | 26 | 26 | 16 | 21 | 62 | 70 | 104 | 117 | 9.8 |
| 2018年 | 26 | 26 | 9 | 13 | 64 | 71 | 99 | 110 | 9.2 |
| 2019年 | 29 | 29 | 8 | 9 | 71 | 77 | 108 | 115 | 9.6 |
| 2020年 | 29 | 30 | 14 | 19 | 51 | 56 | 94 | 105 | 8.8 |
| 2021年 | 22 | 22 | 13 | 21 | 58 | 69 | 93 | 112 | 9.3 |
| 2022年 | 11 | 11 | 15 | 16 | 73 | 80 | 99 | 107 | 8.9 |
| 2023年 | 16 | 16 | 17 | 27 | 63 | 67 | 96 | 110 | 9.2 |
| 2024年 | 24 | 24 | 14 | 17 | 58 | 60 | 96 | 101 | 8.4 |
| 2025年 | 23 | 23 | 17 | 24 | 57 | 62 | 97 | 109 | 9.1 |
前年の2024年と比較すると、作品数で1作品、冊数では8冊増えました。年々視力と集中力が弱ってきていますが、なんとかこの趣味は順調に推移しています。
ジャンル別では、新書などはマイナス1作品(冊)、海外小説はプラス3作品、7冊、国内小説はマイナス1作品、プラス3冊という結果で、海外小説がやや増えましたが、全体的には昨年と似ています。
◇ ◇ ◇
それではいよいよ各ジャンルの大賞の発表です!
まずは新書、ビジネス、エッセイ、ノンフィクション部門です。
読んだ作品数は23作品(23冊)で、その中から候補作としては、
・夜明けの雷鳴 医師高松凌雲 吉村昭
・歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ 磯田道史
・サイコパス 中野信子
・いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件 大崎善生
・たのしい知識 ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代 高橋源一郎
この5作から、、、
夜明けの雷鳴 医師高松凌雲(文春文庫) 吉村昭著 に決定です!
「6月後半の読書と感想、書評(夜明けの雷鳴 医師高松凌雲)」
あまり有名ではありませんが(この本を読むまで知りませんでした)、幕末の動乱時期から明治にかけて、実在した医師、高松凌雲を描いた歴史小説です。
徳川慶喜の奥詰医師を務めていたことから戊辰戦争では旧幕府軍に合流し、箱館戦争の時には敵味方問わず戦傷者を収容する病院を作りその後赤十字の元となる組織を作った人です。
2025年は歴史学者の磯田道史氏の新書を5冊読みました。いずれも面白く読めましたが、今回は惜しくも大賞には及びませんでした。2020年には「無私の日本人」で大賞に輝いています。
また、中野信子著「サイコパス」は、世界の特異なリーダー達の行動や考え方を理解するのに大いに役立ちます。
それを元ネタにしたブログも書いています。
◇サイコパスたちの宴 2025/11/22(土)
そういうリーダーばかりが跋扈してきた世界がこれからどうなっていくかは不安でしかありませんが、きっとそのうち大きな揺り戻しがやってくることをジッと待つしかないのでしょう。
◇ ◇ ◇
次に海外小説部門です。2025年は17作品、24冊の海外小説を読んでいます。
なぜか海外小説は上下巻に分かれている長編が多いです。1作品当たりの値段を上げるための出版社の作戦かも知れません。
今回の海外小説には、高評価とする★3が17作中5作(29%)もありました。こうした高評価の割合が高いのは珍しいです。
・潔白の法則(上)(下) マイクル・コナリー
・高慢と偏見(上)(下) ジェイン・オースティン
・続高慢と偏見 エマ・テナント
・メインテーマは殺人 アンソニー・ホロヴィッツ
・十五少年漂流記 ヴェルヌ
1813年に出版された「高慢と偏見」や、1888年に出版された「十五少年漂流記」もあり、2020年に出版された「潔白の法則」までかなり年代的には幅広い選択ですが、この5作品はいずれもお勧めできる作品です。
これらの候補の中で、どうしても甲乙付け難く、特別に2作を大賞とします。
大賞は、
高慢と偏見(上)(下)(ちくま文庫) ジェイン・オースティン著
メインテーマは殺人(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ著
まぁ、過去の評価や評判からすれば、無難な選考と言われるとその通りですが、選ぶ側(私)もいたって凡人なので、仕方がないのです。
感想は、
3月後半の読書と感想、書評(高慢と偏見)
4月後半の読書と感想、書評(メインテーマは殺人)
感想は上記リンク先を読んでいただくとして、両方とも結構ボリュームがあり、さらに登場人物が多くて慣れるまでは苦労します。
しかし中程ぐらいまでくると、あとは要領がわかり、面白くなってきてスイスイと読めますので、前半は我慢して理解しながらじっくり読み進めることをお勧めします。
「十五少年漂流記」は小学生だった頃にところどころに絵が入った簡易な児童書版を読んだ記憶がありますが、内容はすっかり忘れていて、今回ちゃんとした小説を読んであらためてその内容がよくわかりました。
無人島小説は好きでよく読みますが、これはリアリティさはなく、やっぱり児童向けのおとぎ話だなと思います。
◇ ◇ ◇
最後は読書数としてはもっとも多い日本の小説部門です。57作品、62冊読みましたが、高評価★3が点いた作品は10作品(18%)ありました。
海外小説の29%には及びませんが、これも比較的高評価な作品の割合が多かったなという印象です。最近評価が甘くなってきたのかも知れません。
その中でもさらに高評価な作品を選んだ大賞候補作は、
・世界でいちばん透きとおった物語 杉井光
・ジヴェルニーの食卓 原田マハ
・果しなき流れの果に 小松左京
・罪の轍 奥田英朗
・何もかも憂鬱な夜に 中村文則
の5作品です。
超絶技法の小説「世界でいちばん透きとおった物語」(2023年)、印象派の誕生と著者独特の感性が生きる「ジヴェルニーの食卓」(2013年)、SF小説の古典的名作「果しなき流れの果に」(1966年)、一級品のクライムサスペンス「罪の轍」(2019年)、死刑制度への問題を突きつける「何もかも憂鬱な夜に」(2009年)と、世に出た時期はそれぞれ違いますがいずれも読み応えのある秀作です。
その中から、大賞に選んだのは、、、、、
ドコドコドコドコドコ、パァーン!
ジヴェルニーの食卓(集英社文庫) 原田マハ著に決定です!!
![]() |
感想は、
7月後半の読書と感想、書評(ジヴェルニーの食卓)
同様に西洋画の巨匠をテーマにした小説「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」も良かったですが、今回の短篇集では印象派の巨匠となる画家達の若く貧しい中で必死に生きる姿が生き生きと描かれています。
西洋画に詳しくない人(私)でもわかりやすく、画家達への興味が次々とわいて湧き出してきます。
そして惜しくも次点となった作品、「罪の轍」(2019年)奥田英朗著を特別賞としておきます。
感想は、
2月前半の読書と感想、書評(罪の轍)
親からの虐待を受け、超絶貧困状態で、仲間と思っていた仕事仲間に罪を着せられ、北海道の離島から逃げ出した精神的に不安定な男の物語です。
昨年は、海外小説と国内小説の両方で私にとって多くの名作と出会うことができました。
今年も多くの名作に出会えることを願ってやみません。あー楽しみだ。
【過去のベスト書籍】
1824 リス天管理人が2024年に読んだベスト書籍
1767 リス天管理人が2023年に読んだベスト書籍
1692 リス天管理人が2022年に読んだベスト書籍
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
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1873
貴族探偵(集英社文庫) 麻耶雄嵩
収録作は、「ウィーンの森の物語」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「こうもり」「加速度円舞曲」「春の声」 の5篇で、いずれも単独の殺人事件です。
よくわからないですが、なんでも「やんごとなき」貴族の探偵(名刺にも貴族探偵という記載しかない)が殺人事件現場に居合わせ、警察の上から圧力をかけて、現場の捜査に加わり、貴族探偵の使用人達(執事やメイド、自家用車の運転手)が、推理し、犯人を名指しして事件解決に至るというものです。
ちなみに日本ではすでに皇族を除いて貴族や華族という制度はなくなっていますので、あえて貴族というのは皇族ということなのでしょう。
主人公の貴族探偵自身は、「そういうつまらないことは雇っている使用人の仕事」とばかりに、関係者の聞き取りや事件現場の検証などには一切加わりません。
探偵小説の中には、アガサ・クリスティ著の「ミス・マープルシリーズ」のような、自身で調査などはおこなわず、状況を誰かに聞いただけで推理をし、事件を解決する「安楽椅子探偵」というジャンルがありますが、本作の場合は、事件を解決するのは貴族探偵と名乗っている本人ではなく、その探偵の使用人達で、それとも違っていて笑えます。
そうした背景はともかく、事件のトリックについては、それぞれなかなか凝っていて、謎解き探偵小説として十分に楽しめるものでした。
★★☆
◇著者別読書感想(麻耶雄崇)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ナオミとカナコ(幻冬舎文庫) 奥田英朗
2016年にはフジテレビが同名タイトルでテレビドラマを製作しています。主演の二人は広末涼子と内田有紀で、いかにも心の奥底に闇を抱えた女性という感じです。
内容は、夫からDV被害を受けている女性と、その親友の女性が夫の殺害計画を立て実行します。勤め先の金を横領して失踪したように見せかけますが、そこは素人の犯罪で、様々なミスが後になってから露わになっていきます。
犯行に至るまで、犯行時、犯行後の二人の主人公の心理描写がとにかく重苦しくて、気楽に読むにはつらすぎます。精神的に健全なときに読むことをお勧めします。
著者の小説には直木賞に輝いた「空中ブランコ」(2004年)のようなコミカルなライトなものもあれば、「オリンピックの身代金」(2008年)や「罪の轍」(2019年)のような重苦しいクライムサスペンス小説の2種類があり、この小説は後者になります。
果たして犯罪に手を染めた二人の女性は逃げ切ることができるのか?というストーリーですが、その展開にドキドキさせられます。
★★☆
◇著者別読書感想(奥田英朗)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
日本のこころ(文春文庫) 平岩弓枝
著書の中でも有名なのは、1959年、27歳の時に直木賞を受賞した「鏨師(タガネシ)」や、NHKの朝ドラの原作にもなった「旅路」、30年以上続く「御宿かわせみシリーズ」、テレビドラマになった「肝っ玉かあさんシリーズ」などです。またエッセイも多く残っています。
本著はそのエッセイの中でも最晩年の2019年から2021年頃に「オール讀物」に書かれたものと、1974年に神田明神でおこなわれた講演会から抜粋したもので構成され、亡くなった後の2024年に文庫本として発刊されています。
エッセイの中には、直木賞を受賞する前の駆け出しの頃から、受賞後に怖くて仕事を断ることができずかなり無理をして書きまくった話し、生まれが渋谷区の代々木八幡という神社のひとり娘で、戦争中には疎開したり、近所に友達がいなくて犬を飼ってもらったりしていた子供の頃の話し、文学の師匠、長谷川伸氏に師事した経緯や、そこで先輩の伊東昌輝と知り合って結婚した話しなど興味深く読めました。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
阿修羅のごとく(文春文庫) 向田邦子
著者の小説は、やはりNHKドラマの脚本から著者自身で小説化した「あ・うん」を23年前に読んで以来です。
テレビドラマは、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュン、加藤治子などの出演で、NHKの土曜ドラマとして4回放送されました。八千草薫48歳、風吹ジュン27歳の頃のドラマです。
その後2003年には森田芳光監督、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子などの出演で映画化されています。
上に書いたそれぞれ4人の出演者はいずれも主人公の四姉妹役で、この四姉妹の両親、夫、恋人、愛人などが複雑に絡み合いながら人間の愛憎を描いています。
さらに、Netflixで2025年に是枝裕和監督、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すずの出演で連続ドラマが作られています。時代が変わっても、人間の愛憎劇は変わりがないということです。
それにしても、テレビ向けに極端な脚色がしてあり、四姉妹とも心の奥に闇があり、あちらこちらに、妬みや嫉妬、愛人や不倫などてんこ盛りで、世の中の満たされない女性達にきっとウケたことでしょう。
それに対して、登場する男性陣は、いずれも寡黙だったり、気弱で引っ込み思案だったりしてまったく精彩がありません。
その数少ない男性役として、1979年のドラマでは気弱な性格ながら興信所の探偵で、その後、四姉妹の中ではもっとも貞操観念が強い三女の恋人役に、すでにダウン・タウン・ブギウギ・バンドで活躍中の当時33歳の宇崎竜童が出ているのが興味あるところですが、私は見ていません。
★★☆
【関連リンク】
12月後半の読書 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史、容疑者、教会堂の殺人、その先の道消える
12月前半の読書 帰還、探偵の流儀、眠り姫(上)(下)
11月後半の読書 クロイドン発12時30分、流人道中記、2035年の世界地図、歴史とは靴である
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