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1829

短劇(光文社文庫) 坂木司

短劇
2008年に単行本、2011年に文庫化された短篇よりも短いショートショートの小説集です。

収録作品は、「カフェラテのない日」、「目撃者」、「雨やどり」、「幸福な密室」、「MM」、「迷子」、「ケーキ登場」、「ほどけないにもほどかある」、「最後」、「しつこい油」、「最後の別れ」、「恐いのは」、「変わった趣味」、「穴を掘る」、「最先端」、「肉を拾う」、「ゴミ掃除」、「物件案内」、「壁」、「試写会」、「ビル業務」、「並列歩行」、「カミサマ」、「秘祭」、「眠り姫」、「いて」のそれぞれ独立している26篇です。

ショートショートと言えば、オー・ヘンリーやサキ、星新一、小松左京、筒井康隆などの作品を過去に読みましたが、著者のあふれ出るアイデアというか発想力、構成力が試されます。

名手と言われる人はまったく畑違いの長編小説を書いても名手です。というか逆(長編が巧い人はショートショートも巧み)かも知れません。そして短篇が巧いからショートショートも巧いかというと決してそうではないような気がします。それだけに短い文章でひとつの物語を完結させてオチまでつけるのは難しそうです。

著者の小説は今まで連作短篇ばかりを読んできましたが、このショートショートはそれぞれにユニークな内容で面白く読めました。現代的なものが多いですが、SF的なものやホラーのようなものまで多彩です。

個人的に好きなのは「最後の別れ」で、離島で戦争をしていて両軍の最後のひとりの兵士が生き残り、どうやら世界は滅亡したらしいことがわかります。ふたりは争いをやめ、ひとりがやがて訪れる「孤独」と「絶望」のうち「絶望」を避ける方法を提案して実行します。

ちょっとした時間の隅間にサクッと読めるので、電車移動などが多い人に向いています。

★★☆

著者別読書感想(坂木司)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

神秘(上)(下)(講談社文庫) 白石一文

神秘
2012年から2013年にかけて毎日新聞の夕刊に連載された長編小説で、2014年に単行本、2016年に文庫化されました。

主人公は講談社と思われる大手出版社で働く中年男性で、10年以上前に書かれたこともあり、主人公の年齢設定が私とほぼ同じ(著者とも近い)で、昭和から平成にかけてがむしゃらに働いてきたことを想起させる内容でした。

ただ内容は、平凡なリタイアをした私とは大きく違い、主人公は役員に登用された働き盛りに、いきなり末期の膵臓癌で余命1年と医者に宣告されます。

しかも5年前にそれまで20数年続けてきた結婚生活に終止符をうち離婚しています。独身という気ままさもあり、余命1年にできることをやってみようと、昔不思議な電話をもらったことがある女性を探しに神戸へ行くことにします。

自分の身に起きたことにはすべて理由があり、出会いや別れも必然のことだと徐々にわかっていきます。そのあたりのストーリーが壮大でかなり長いうえに、細切れの新聞連載小説ということもあって何度も説明が繰り返されることもありちょっと間延びした印象もあります。

それでも余命1年と宣告された主人公に起きる壮大な人間関係の輪が徐々に明らかになっていく様子はスピチュアル的要素もありながらドラマチックでたいへん面白かったです。

それと掲載された毎日新聞社で働く記者や、販売店がちゃっかり登場する著者のサービスもありました。そういう意味では、小説を書いていく中で主人公が勤務する出版社の仕事や小説を掲載する新聞社については下調べの手間を省いた感じもします。

★★★

著者別読書感想(白石一文)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

つやのよる(新潮文庫) 井上荒野

つやのよる
短編小説が多い作家さんですが、こちらは2010年に単行本、2012年に文庫化された長編小説です。

2013年にはこの小説を原作とした映画「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」というタイトルの映画が公開されています。

その映画の出演者は阿部寛、小泉今日子 、荻野目慶子、野波麻帆、高橋ひとみ、風吹ジュン、真木よう子、大竹しのぶと昭和生まれにとっては馴染みの女優陣がいっぱい出演しています。見ていませんけど。

本来なら主人公となるであろう艶(つや)という名前の女性が癌のため余命がわずかとなって、その夫が過去に艶と関係があった何人もの男性に「余命わずか」と知らせます。

その連絡を受けた艶との過去の思い出を秘めている男達のさらに周囲にいる妻や恋人など女達が様々な化学反応を起こすという話です。したがって艶という女性が表に出てくることはなく、その過去の行動や周囲が勝手に思いを巡らせて動いているという内容です。

女性の感情をうまく表現しているのでしょうけど、年配の男の私にはとても感情移入ができず、話もさっぱり頭に入ってきません。

第1章から第6章までは語り手が女性で、最終章の第7章だけ艶の夫で妻と子を置いて駆け落ち同然で出て行った男性が語り手です。その最終章だけはかろうじて理解できました。

★☆☆

著者別読書感想(井上荒野)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件(角川文庫) 大崎善生

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件
2016年に野性時代に連載され、2016年に単行本、2019年に文庫化された凶悪犯罪ノンフィクション作品です。

タイトルにあるように2007年に名古屋で起きたネットの闇サイトで知り合った3人が、路上を歩いていた見知らぬ女性を拉致し金品を奪い殺害するという衝撃的な事件で、闇サイトが公に初めて表面に登場してきた事件でした。

当時は「闇の職業安定所」というアングラサイトで仲間を集め、様々な犯罪がおこなわれていましたが、そうしたものがいろいろと形を変えて現在でもとくりゅう(匿名・流動型犯罪グループ)の裏バイトを集める手法として使われてきています。

殺害された女性は、31歳の真面目で囲碁が趣味の派遣社員で、幼児の時に父親を亡くして母と子のふたりで夢を持って暮らしていました。

帰宅途中の自宅まであと少しという夜道で男3人に拉致され、20数キロ離れた場所で包丁を突きつけキャッシュカードの暗証番号を聞かれます。そして暗証番号を答えたあと、犯人達に殺害されてしまいます。

犯人のうちひとりが自首したことで事件が発覚し、加害者の3人の男は捕まりますが、裁判では、殺害したのがひとりだけなら極刑にはできないという永山基準という判例の壁があり、納得いかない遺族たちの戦いが始まります。

私もこの事件が起きた2007年には関東に住んでいましたが、拉致事件が起きた場所(名古屋市千種区)のすぐ近くに1年ほど住んでいたことがあり、「近くに星野仙一氏の家もあったあのような閑静な住宅地でどうして?」と気になっていました。

その事件を被害者側の立場で取材したノンフィクションで、被害者の両親や被害者の子供の頃から社会人になってからのことなどとともに、事件の詳細が書かれています。

それにしても取り調べや裁判で被告が証言ででてきたことであろう、おぞましい殺害時の詳細な状況が繰り返し何度も何度も出てきてちょっと過剰演出しすぎかも。

また事件とはなんの関係もない被害者が生まれる前の両親や親戚のことについて長々と書くよりも、三人の加害者がこうした残虐な行動を起こすようになった背景を掘り下げることや、警察がマスコミの後手に回わり、被害者遺族に対する対応がまずかったことはもっと突っ込んで欲しかったです。加害者側は単に極悪非道の悪人だというだけではどうも片手落ちのような気がします。

同じ凶悪殺人事件のノンフィクションでも、調査報道のプロでもあるジャーナリストの清水潔氏が書いた犯罪ノンフィクション「桶川ストーカー殺人事件-遺言」は様々な関係者の背景が詳しく調べられていて、さらに非協力的で、頑として対応の悪さを認めようとしない埼玉県警と対立しながらも真実を貫いていました。

★★☆

著者別読書感想(大崎善生)

【関連リンク】
 2月後半の読書 女ともだち、始まりはジ・エンド、もう過去はいらない、ユタと不思議な仲間たち
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1827
女ともだち(講談社文庫) 真梨幸子

女ともだち
今から19年前、2006年に単行本が出版され、2012年に文庫化された長編ミステリー小説です。2006年と言えばライブドアの堀江氏が逮捕され、唯一活況だったITバブルも弾けて、長引く不況が生活にも忍び寄っていた頃です。

東京郊外に突然建った高層マンションで起きる二人の女性が殺害されるという事件を中心に、その二人の女性の過去や友人関係が明らかになっていき、さらに容疑者として逮捕された男性が拘置所内で自殺するという混迷を迎えます。

主人公は探偵役になっているフリーのライターの女性で、雑誌にノンフィクションを売り込むため殺された二人の女性の関係者に会って取材をして回ります。

殺されたひとりの女性には、1997年に起きた東電OL殺人事件をモチーフにした、適齢期を逃したエリートキャリアウーマンが裏の顔を持っていたという流れで、女性の心理にグサッと刺さる?内面描写が多く、男性読者にとってはなかなか理解しがたい複雑なものがあります。

著者は現在還暦を過ぎていますが、この小説が書かれた時はまだ40代のバリバリ働く世代でしたので、そうした同世代の女性の日々の生活や心理描写は得意分野だったのでしょう。うまく描けています。

★★☆

著者別読書感想(真梨幸子)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

始まりはジ・エンド(双葉文庫) 新津きよみ

始まりはジ・エンド
2019年から2020年にWEBマガジンに連載されていた短篇小説集で、2020年に文庫で出版されました。WEB向けの小説と言うこともあってか、シンプルで軽快なストーリーで読みやすかったです。

収録作品は「絶縁」「永久に」「引き際」「余命」「陰のコレクター」「彼女のステージ」「死ぬまでにしてほしい五つのこと」の7篇です。

いずれも主人公は中年の女性で、日常や暗い心理描写が多く、この本の直前に読んでいた真梨幸子著「女ともだち」と中身は全然違うものの、どちらも女性心理の見にくいところをえぐり出すような内容だっただけに、読んでいて中身が混乱してきました。

ま、しかし登場人物の女性達のよく喋ること喋ること。たまに出てくる男性はというと頼りないかわがままかで、ほとんど喋る間もなく固まっていたりしています。

お勧めなのは最後の短篇「死ぬまでにしてほしい五つのこと」で、姉と妹の関係で、妹は結婚していますが末期の子宮癌に罹り余命がいくばくもない中、独身を通してきた姉に4つの依頼を口頭で依頼し、そして5つめの依頼を死後1ヶ月後に読んで欲しいと手紙を託されます。

妹の死期が迫る前の依頼を聞いて、あちこちへ出向き、望みを叶えていく姉の姿と、幸せではなかった妹の深謀遠慮とが、きっと幼いときから仲が良かったであろう姉妹の様子が描かれていて面白かったです。そしてオチはやっぱり「女は怖い」です。

あと著者の実家の父親は開業医ということもあり、多少の知識がある医療や薬についての話しが重要なところで良く出てきます。お得意分野ってことでしょう。

著者の小説は長篇と短篇両方読みましたが、この小説は人の生と死を描いたものが多く、ちょっと怖い犯罪ホラー要素のあるものから、亡くなってもほのぼのとした話まであり、バラエティに富んでいて良かったです。

★★☆

著者別読書感想(新津きよみ)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

もう過去はいらない(創元推理文庫) ダニエル・フリードマン

もう過去はいらない
2023年に読んだ「もう年はとれない」(2012年)が面白かったので、その続編を読みました。2014年に米国で出版後、2015年に日本語の翻訳版が発刊されています。

アメリカでは若い移民が多く、日本ほどは高齢化社会というわけではありませんが、それでもこうした主人公が88歳という小説は、今の日本の社会情勢を反映しているようでもあり、面白く読めます。

この高齢の主人公はテネシー州メンフィスで公民権運動が盛んだった時代に刑事をしていたユダヤ系移民で、現在はアメリカ人の平均寿命を大きく超えた高齢に加えて、前作で受けた銃創で介護付きグループホームに夫婦揃って移り、リハビリ生活を送っている毎日です。歩行器がないと歩けず、トイレにも介護が必要という状態です。

そんなヨボヨボの高齢者の前に、同世代のユダヤ人で、刑事時代に接触があったアウシュビッツの生き残りの銀行強盗を生業としてきた伝説の男が40年ぶりに現れ、「ある組織から追われていて、まもなく殺される」「できれば救って欲しい」「もし殺されたら相手を徹底的にやっつけて欲しい」と頼まれます。

うさんくささを感じ、「すでに警察は昔に退職していて、元犯罪者を救うことなどできない」と一度は断りますが、何度も頼まれ、警察へ自首して過去の罪を認めれば保護プログラムに入れるよう進言しても良いと返答します。

そして自首するため信用のおける刑事を紹介し、その刑事と引き合わせますが、その直後に何者かに襲撃されて元銀行強盗は連れ去られてしまいます。

元々思うように身体が動かない上に、襲撃された際に負った怪我で満身創痍になりながらも、目の前で自首した男が連れ去られた事件を追うことになります。

最後のひねりは先に想像がつきましたが、前作に続き、とっても面白く読めたので、続編の「もう耳は貸さない」も読んでみたくなりました。

★★☆

著者別読書感想(ダニエル・フリードマン)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ユタと不思議な仲間たち(新潮文庫) 三浦哲郎

ユタと不思議な仲間たち
1971年に発刊された児童用童話ですが、原作がNHKのテレビドラマや劇団四季のミュージカルに取り上げられ、1984年にはあらためて大人向けに文庫化されロングセラーになっています。

元が児童文学だけに、読みやすく内容もシンプルで、サン・テグジュペリやコエーリョ、宮沢賢治の小説を読むような感じです。

1910年に出版された柳田国男著の「遠野物語」にも登場しますが、伝説的な妖怪、座敷童(ざしきわらし)の話です。一般的に座敷童が住む家は繁栄するという言い伝えがありますが、この小説ではちょっと違った設定です。

タイトルの「ユタ」はキリストを裏切った「ユダ」ではなく、勇太という名前の小学6年生が「ユタ」とニックネームで呼ばれています。勇太はタンカーの船長の父親が海で亡くなり東京の学校から母親の実家がある東北の村にやってきます。

東京から来た子供ということで、なかなか地元の村の子とは仲良くなれず、いつもひとりぼっちですが、そこで出会うことになるのが「不思議な仲間」の9人の座敷童達です。

座敷童達には悲しい過去があり、いずれも生まれてまもなく口減らしで親に殺された過去があり、そうした過去の歴史も教わったり、自分で調べてわかっていきます。

そして座敷童と遊んでいるうちに、だんだん村の子と変わらない体力や考え方に変わっていき、学校でも友達ができていきます。

しかしやがて、座敷童が住み着いていた旅館の離れが火事に遭い、、、

「モヤシ」と呼ばれていた都会育ちのて少年が座敷童のおかげでたくましく成長していくという話と、人生の出会いと別れを前向きに描いたこれぞ児童文学というものでした。

★★☆

著者別読書感想(三浦哲郎)


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1825
明日の食卓(角川文庫) 椰月美智子

明日の食卓
2016年に単行本、2019年に文庫化された、ちょっと怖い児童虐待や家庭内DVなどを扱った小説です。

2021年には同名のタイトルで瀬々敬久監督、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子などの出演で映画化もされています。ちょうど公開がコロナ禍の中で、PR活動もできずちょっと不運でした。

主人公は同じ「ユウ」と読む名前の小学3年生の息子がいるまったく関係のない3人の母親達です。

その母親は、ひとりは専業主婦で、会社勤めの夫や学校では優秀な長男、同じ敷地に住む義理の母とも問題なく暮らしています。

ふたりめは、在宅でフリーライターの仕事をしながら小学3年生と1年生のやんちゃな兄弟と、プライドが高く仕事が少なくなってきたフリーのカメラマンの夫と暮らしています。

三人目は、シングルマザーで、朝と夜には近所のコンビニ、昼間は化粧品会社の工場で働く小学3年生の母親です。

小説の本文の前のプロローグに、母親が子供を痛めつける壮絶なシーンが出てきて、果たしてこれら3人の母親にいったいなにが起きたのか?という前振りになっています。

3人の母親を中心にしたドラマがそれぞれに展開していきますが、こうした小説に登場する夫達と言えば、だいたい影の薄い情けない小心者と決まっていますが、その通りの展開です。

私が子供だった60年前とは違い、今は様々な苦労や問題があるのだなぁと思いつつ、現代の親達は自分自身の兄弟や親戚が少ないせいか、子育ての要領や母親としての自覚が少ないのかなぁと思ったり。

昔は上流家庭でもなければ、母親はなにかしら働いていて、子供はほったらかしか兄弟や近所の人達に育ててもらったようなところがありました。

この小説を読んでいると、なにか今は両親と子供の関係は大人と子供の関係ではなく、まるで友人同士みたいな印象があり、親に対しての尊敬や憧れ、信頼などみじんもなくなっているように思えてきます。

★★☆

著者別読書感想(椰月美智子)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

悪貨(講談社文庫) 島田雅彦

悪貨
2010年に単行本、2013年に文庫化された小説で、「講談社百周年記念書き下ろし100冊」として企画された作品です。2014年には黒木メイサや及川光博が出演するテレビドラマが製作されています。

著者の小説は過去4作品を読んでいますが、それらとは毛色の違うクライムノベルの作品でちょっと驚きました。

タイトルの「悪貨」とは、「品質が悪い貨幣」のことですが、ここでは巧な偽札を使って日本経済を混乱させる悪人と、その悪人を子供の頃に救い、その金を善意の寄付と信じて運営してきた貧困者救済組織で新たな自主経済圏を日本国内に作っていこうとする男などを中心とした内容です。

その中に、明らかに偽札とわかる百万円が見つかり、その供給元として中国の黒社会が関係していることがわかり、警視庁の女性刑事が潜入捜査員として深い闇の中に入っていくことになります。映画ではその女性刑事が主役のような感じです。

偽札と言っても国家レベルの経済力と施設、職人が揃えば本物と誰も見分けがつかないレベルのモノが作れるということです。

紙幣の紙ですら、同じ木材を育て、その木材を漉いて紙を作り、すかしをいれてと気の遠くなる話しですが、考えれば戦争が起きると、国家レベルで偽札を作り、ばらまいて相手国の経済を混乱させるというのが半ば常套手段にもなっていました。

現代では電子マネーが増えてきてはいますが、紙幣が一掃されるということは考えにくく、逆に偽札で電子マネーに換金してしまえばロンダリングしやすくなり、偽札の多い貨幣は世界中で信頼を失い、国家の経済危機へとつながります。

昨年日本でも新紙幣が発行されましたが、偽札の流通を止めるには、こうしたよりセキュリティ性のある新札への切り替えをよくおこなうことですが、これが頻繁だと偽札発券機の更新や自販機の入れ替えなど逆に国内外で信用をなくしてしまうというジレンマもあるでしょう。

なかなか考えさせられるエンタメ小説でした。

★★☆

著者別読書感想(島田雅彦)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

罪の轍(新潮文庫) 奥田英朗

罪の轍
過去に読んだ著者の小説の中では1964年の東京オリンピック開催直前のごちゃごちゃした東京を舞台とした「オリンピックの身代金」が一番好きですが、それと同時期の犯罪小説で、2019年単行本、2022年に文庫化されました。

子供の頃に親の虐待で子供の頃の記憶を失い、大きな音や子供の頃のことを思い出すと突然失神する精神的障害をもつ北海道礼文島の出身で空き巣の常習犯が、仕事仲間にはめられて島にいられなくなり東京に出てきて犯罪に巻き込まれていくというストーリーです。

私は東京オリンピックが開催された時はまだ小学生でしたが、その頃の記憶は残っていて、町へ出ると傷痍軍人らしき手や足の片方がない人が物乞いをしていたり、都市部以外はまだ舗装路が少なく車が通るとすごいほこりが舞い上がるような時代を思い出します。

小説の中に出てくる主人公の刑事がおこなう事件の捜査も、警察無線や携帯電話、防犯カメラもない中で、事件の捜査は今から考えると極めてアナログで、聞き込み捜査が中心の人海戦術と、刑事がそれぞれ抱えている情報屋や親しいヤクザからネタを集めていきます。

そうした捜査方法は今とは大違いですが、官僚組織としての警察は、体育会系のノリの上意下達で、地域ごとの縦割りのシマ意識が強く、幹部は常に保身を優先するというのは今とまったく変わりがないのが笑えます。

しかしこの時代を描いた小説は、郷愁が呼び起こされ、私にとっては懐かしいと共に共感できる楽しいものです。

★★★

著者別読書感想(奥田英朗)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

冷たい太陽(光文社文庫) 鯨統一郎

冷たい太陽
2014年単行本、2016年に文庫化されています。著者の小説は読みやすくライトな連作短篇が多いのですが、これは以前読んだ「努力しないで作家になる方法」と同じ長編小説です。

しかしこちらは誘拐ミステリー仕立てになっていて、決してただでは終わらない、著者独特の大どんでん返しの作品でした。

誘拐を描いた小説は、天藤真著「大誘拐」(1978年)、荻原浩著「誘拐ラプソディー」(2001年)、雫井脩介著「犯人に告ぐ」(2003年~)など、日本の著名な小説だけでもざっと100作品以上ありそうです。

誘拐映画でもっとも有名な黒澤明監督・脚本作品「天国と地獄」の原作は日本の小説ではなく、有名なアメリカ人推理作家エド・マクベイン著の「キングの身代金」(1959年)で、洋の東西問わず誘拐事件は小説のネタとしてよく使われます。

ストーリーを書くと最初からネタバレになってしまうので書きませんが、誘拐ではもっともリスクが高く、犯人を捕まえやすいのが、身代金の引き渡し時ということはよく知られていますが、多くの小説ではその手段に工夫が見られます。

この作品では誘拐事件が起きて、5千万円の身代金の5千万円で「冷たい太陽」と名付けられたダイヤモンドを買い、それを公園に置いた伝書鳩にとなかなかユニークな指示がなされます。

読んでみてのお楽しみですが、誘拐の裏に隠された謎はきっと誰もが騙されるでしょう。

ただ、私は読んでいて序盤にいくつかの違和感があり、その違和感が後になって「なるほど」と理解することができました。

★★☆

著者別読書感想(鯨統一郎)

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1824
毎年恒例となっている2024年の1年間に読んだ書籍の中で、「これはお勧め!」という分野別の1冊を紹介します。2013年から始めて今回で11回目となります。

私が読むのは新刊書や単行本ではなく、発刊された年代は問わず、基本は新書か文庫の書籍です。したがって中には戦前の作品もあれば、2022年頃の比較的新しいものまで含まれます。

まずこの11年間、読んだ作品数(表とグラフ)と冊数(表のみ)の推移です。1作品で上・下巻など複数の冊数がある場合、1作品2冊というカウントになります。

新書
ノンフィク

冊数 海外
小説
冊数 日本
小説
冊数 作品
数計
冊数計 月間
冊数
2013年 86 98 8.2
2014年 26 26 13 17 62 70 101 101 8.4
2015年 17 17 12 65 94 107 8.9
2016年 14 14 12 16 65 79 91 109 9.1
2017年 26 26 16 21 62 70 104 117 9.8
2018年 26 26 9 13 64 71 99 110 9.2
2019年 29 29 8 9 71 77 108 115 9.6
2020年 29 30 14 19 51 56 94 105 8.8
2021年 22 22 13 21 58 69 93 112 9.3
2022年 11 11 15 16 73 80 99 107 8.9
2023年 16 16 17 27 63 67 96 110 9.2
2024年 24 24 14 17 58 60 96 101 8.4


読書種類別作品数推移グラフ
読書種類別作品数推移グラフ

 作品数    冊数    月間平均冊数
2013年 86 98 8.2
2014年 101 101 8.4
2015年 94 107 8.9
2016年 91 109 9.1
2017年 104 117 9.8
2018年 99 110 9.2
2019年 108 115 9.6
2020年 94 105 8.8
2021年 93 112 9.3
2022年 99 107 8.9
2023年 96 110 9.2
2024年 96 101 8.4

まだ仕事が現役だった頃の2020年までと、2021年以降で比べると、暇な時間が増えるので読書量も増加するかな?と思っていましたが、そうはならず、横ばいが続いています。

一番の理由は年齢と共に視力と集中力が落ちてきて、長時間読書をするのがだんだんツラくなってきました。とりあえず老化を原因としておきます。

40代までなら、休日などにぶっ続けで5~6時間読書することは苦でもなかったのに、今は1~2時間で目がしょぼしょぼとつらくなり、集中力も途切れてきます。なかなかまとめて一気に読むということができなくなりました。

読書自体は好きなので大きく数が減ることはなくても、今後増えることはたぶんなく、徐々に減っていくだろうと思っています。かといってオーディオブックを聞くにはまだ抵抗感があります。

書籍の種類別は、ポリシーとしてできるだけジャンルを決めず、新書やノンフィクション、海外小説、日本の小説を織り交ぜて読むようにしています。ただ現役時代にはビジネス関連書も読みましたが、リタイアしてからは興味がなくなってほとんど読まなくなりました。

この11年間の合計ジャンル別作品数の割合は、新書/ノンフィクション/ビジネスをひとまとめにして22%、海外小説が13%、日本小説が64%となっています。どうしても容易に安く手に入る日本の小説が多くなります。

2024年は新書/ノンフィクションが24作品(25%)24冊、海外小説が14作品(15%)17冊、日本小説が58作品(60%)60冊となっていて合計96作品101冊、月間平均8.4冊となりました。

前年(2023年)と比べると、新書/ノンフィクションが+8作品+8冊、海外小説が△3作品△10冊、日本小説は△5作品△7冊となっていて、合計では作品数は同数ですが、冊数では△9冊となりました。

  ◇   ◇   ◇

さて、2024年のジャンル別ベスト書籍の発表です。

まず新書/ノンフィクション部門です。

新書/ノンフィクションは24作品(24冊)読みました。

その中からベスト候補作としては、

・健康を食い物にするメディアたち 朽木誠一郎
・日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで 磯田道史
・おとなの教養3 池上彰
・アウトサイダー 陰謀の中の人生 フレデリック・フォーサイス
・ロウソクの科学 ファラデー
・ゾディアック ロバート・グレイアウミス

の6作です。

その中からベストは、、、、、、

アウトサイダー 陰謀の中の人生」 フレデリック・フォーサイス著

に決定です!パチパチパチパチパチ

アウトサイダー
感想は、「3月後半の読書と感想、書評(アウトサイダー 陰謀の中の人生)

元々ベテランのミリオンセラー作家ですから文章を書くのがうまいのは当たり前ですが、人気作家になるまでの激動の自分の半生が半端なく面白かったです。

ただ、自伝でもあるので、都合の悪いところや悪評のあるところには触れずに、自分の英雄伝のようになっているのは仕方がないところで、話半分というか客観的な評判や事実とは違うと差し引いて読まないといけないでしょう。

これは日経新聞で、政治家や実業家などが連載で自分の半生を書く「私の履歴書」でも同じで、知らない人が読むと「この人は聖人君子か?」と思ってしまいそうになりますが、灰色や腹黒いところにはあえて触れず、事実はかなり異なっているというのがもっぱらです。

それでも、当時英国と敵対していた東ドイツにいる諜報員へ頼まれて届け物をするシーンなどは、小説さながらの緊迫した筆力でドキドキが止まりませんでした。

評判になっていた「ロウソクの科学」や、稀代の凶悪未解決連続殺人事件をジャーナリストが追ったノンフィクション「ゾディアック」なども悪くはなかったですが、ちょっとベストとは違うかなって感じです。

  ◇   ◇   ◇

次は海外小説部門です。

海外小説は、14作品17冊読みました。

その中から2024年ベスト書籍の候補は、

・指名手配 ロバート・クレイス
・カササギ殺人事件(上)(下) アンソニー・ホロヴィッツ
・石を積む人 エドワード・ムーニー・Jr.
・四つの署名 コナン・ドイル
・25時 デイヴィッド・ベニオフ

の5作品です。

但し★3を付けた作品は、上の2作品だけで、下3つの作品は★2でした。2024年は海外小説が不作の年(って読んだのが2024年だったというだけですが)で残念でした。

海外小説のベスト書籍は、、、、

カササギ殺人事件」アンソニー・ホロヴィッツ著に決定です!パチパチパチパチパチ

カササギ殺人事件
感想は、「11月後半の読書と感想、書評(カササギ殺人事件)

指名手配」も捨てがたい作品ですが、いかにも都合良く作られた設定がやや鼻につき、日本で映画も作られた「石を積む人」もたいへん面白く読めましたが主人公にいまいち共感できませんでした。

「カササギ殺人事件」は、上下巻にまたがり長くて途中だれてしまいそうでしたが、それを差し引いても小説の主要な登場人物のひとりの作家が書いた長編小説を、そのまま小説の中に取り込んでしまうという驚愕の推理小説で、そのような奇想天外な手法に敬意を表しこれを2024年のベストとしました。

たまたまですが、1月に読んだ杉井光著「世界でいちばん透きとおった物語」の中に、小説の様々なレトリックとしてこの「カササギ殺人事件」がひとつのモデルとして登場し驚きました。

2025年はもう少し海外小説を増やして候補作を充実させようと思っています。

  ◇   ◇   ◇

最後に読んだ作品が一番多い日本の小説です。

候補作は、

・おもかげ 浅田次郎
・森へ還れ コロナからの警告 山田博愛
・砂上 桜木紫乃
・ふなうた 短篇集モザイクII 三浦哲郎
・総員起シ 吉村昭
・検事の本懐 柚月裕子
・雪の階(上)(下) 奥泉光

の7作品で、最後の作品だけ★2ですが、あとは最大の評価★3です。

この中からベストの1作を選ぶとすると、、、、、、、

森へ還れ コロナからの警告」山田博愛著に決定です!パチパチパチパチパチ

森へ還れ
感想は「9月前半の読書と感想、書評(森へ還れ コロナからの警告)

今回はこの日本小説の審査がもっとも悩みました。

2024年は新型コロナから完全に脱して日常が戻った年でもあり、すでにパンデミックはどこか遠くへいってしまった感がありますが、2020年当時の逼迫した社会を忘却の彼方にしてはならないと思っています。

病院や学校、職場、飲食店、様々なイベントなどの社会構造が大きく変わるきっかけとなり、サプライチェーン、エッセンシャルワーカー、リモート学習、ヴァーチャルイベント、在宅リモート勤務など、多くの局面で変革と忍耐、柔軟性が求められた数年間でした。

そうしたコロナ騒動をテーマにし、地方の中山間地で開業している医師の著者自身が小説の主人公となり、コロナ騒動を冷静に客観的にとらえ、「なぜヒノキの産地ではコロナ患者が極めて少ないのか?」という不思議な体験に基づいて様々な研究施設に情報提供するなど奮闘します。

この小説を読んだ後には、やはり都会は高齢者にとっては便利ではあるけれど危険極まりなく、自然が多い中で暮らすのが最良かなと思えてきます。

ちょっと思い込みが過ぎるとも言えますが、世界中が藁にもすがりたい時期があったことも確かで、あくまで小説としてとらえれば興味深く読めました。

小説としての質からいえばベテラン専業作家の浅田次郎著「おもかげ」や、奥泉光著「雪の階」、三浦哲郎著「ふなうた 短篇集モザイクII」のほうがずっと優れているのは当然ですが、様々なコロナ騒動を描いた小説がすでにいくつも出てきている中、そしてこれからも出てくると思いますが、いち早く文庫で読めたことも高評価のひとつです。

  ◇   ◇   ◇

そして日本小説の次点は「総員起シ」吉村昭著を選びます。

これは著者が丁寧に様々な関係者に取材をして、曖昧になっていた戦中に起きた事件や事故などの話しがメインの短篇集で、著者が戦後何十年経ち、事件や事故の証言者が次々と故人となっていくことに憂慮し、急ぎ調べて書き上げたものと思われます。

総員起シ
感想は「2月後半の読書と感想、書評(総員起シ)

戦争中に起きた事故や事件などは、メディアへの規制もあり、どさくさに紛れ、軍は秘密主義に凝り固まり、当時は目撃者や関係者は口を固く閉ざし、新聞やテレビなどマスメディアの使命はまったく果たされませんでした。

したがって残されている資料が少ない中、関係者を探し出して、口の重い高齢老人から話しを聞き出すのは本当に大変な作業だったでしょう。

そうした日本の暗黒の歴史の一部に光をあてて、掘り出したのがこの小説です。ただ小説という形態にはなっていますが、中身はほぼノンフィクションで、伝聞や記憶違いも考慮し、あるいは著者の想像も含めていることから小説という形態を取らざるを得なかったのでしょう。。

こうした史実に則った様々な話しを小説として出すことが、愚かだった当時の権力者と、罪のない一般庶民や召集令状1枚で無残な最期を遂げざるを得なかった兵士達の無念に少しでも報いるものだろうと思いました。

  ◇   ◇   ◇

年々、老化による集中力の低下や、視力の減退を感じていて、今後読書量が従来より増えることはなさそうです。

同時に自宅にたまって置き場所がなくなってきた書籍の処分もそろそろ始めないと、家族に迷惑をかけてしまいそうです。

読書好きな知人に「そういう悩みはないか?」と聞くと、「読み終わったら売れるものは売って、売れないものはすぐ捨てる」という人が一番多いのですが、私はどうにも貧乏性なのか、書籍を捨てるということに抵抗があってできません。

段ボールに詰めてブックオフに送れば、「買い取れるものだけ買い取り、あとは処分してくれる」という方法があるのを知りましたが、それも本が不憫に思えてまだ実行できずにいます。所有欲が強いせいかも知れません。

ちなみにもし全部の蔵書を段ボール(2リットルペットボトル6本用)に詰めようとしたら、40~50箱ぐらいにはなりそうです。

32年前に今の家に引っ越しをしてきた当時、すでに蔵書は千冊を超えていて、10数箱もあるメチャ重い段ボール箱を2階まで運んでいた引っ越し業者の若い兄ちゃんがかなりへばって怒った顔をしていました。

今、もしこのまま引っ越しを頼むと、かなりの割り増し料金を取られそうで恐ろしい限りです。

さてさてどうしたものか、、、

【関連リンク】
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たのしい知識 ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代(朝日新書) 高橋源一郎

たのしい知識
2020年に出版されたエッセイ集で、朝日新聞出版からの発刊なので、てっきり朝日新聞に連載されたものかと勝手に思っていましたが、そうではなく小説雑誌で2019年から2020年にかけて連載されたものだそうです。

道理で毎日朝日新聞には目を通していますが気がつかないはずです。もっともやや左に傾いていると言われながらも内容が中立を善とする大手新聞社には過激とも言える内容が含まれているので納得です。

著者の出版物では過去に「君が代は千代に八千代に」と「ぼくらの民主主義なんだぜ」の2作品を読んでいます。

団塊世代の行動派インテリの必修科目である学生運動に傾倒(凶器準備集合罪で逮捕・収監経験あり)していた方で、そうした思想が文章の節々に感じられます。

本著の内容は、「天皇と憲法」「汝の隣人(韓国)」「新型コロナ」の大きく3つのテーマがあります。

憲法の前文についての説明や他国の憲法との比較についてはよく理解ができました。

日本国憲法の「前文」は抽象的なことしか書かれてなくよくわかりません。そこで、強いていうなら「天皇のことに触れた憲法1条から戦争放棄の9条までが実質的な前文と考えられる」という主張には異論も出そうですが、なるほどと納得します。

多くの日本人が「憲法は占領国のアメリカに押しつけられたモノだから独自の自主憲法に改正すべき」という主張をされますが、本当に押しつけられた「だけ」のものなのか、憲法学者によっても意見が分かれるそうです。いずれにしても最終的にそれを承認して公布したのは天皇陛下と日本政府です。

著者は当然護憲派と思っていましたが、内容を読むとそうではなく、ハッキリと前文で天皇の役割や国民主権、戦争放棄と自国防衛について記載をするべきと、改憲派と言っても良いでしょう。一般的な保守改憲派とは改憲の趣旨は違っていそうですが。

二番目の「隣人」とは韓国のことで、その歴史、特に戦前にハングルを禁止され母国語を強制的に奪われた韓国人作家の苦悩と、詩人の茨木のり子氏(故人)の著書からの話です。

三番目は「新型コロナウイルス」が蔓延し始めてきた2020年7月頃までの話で、世の中がガラリと変わっていく姿を作家らしく少し距離を置いて客観的な視点で、自身の経験を元にした内容です。

全体的には、著者の考え方がよくわかるもので、説明や解釈もよく理解できます。ただ著者は若き頃の権力に対する反骨精神が、未だにしっかりと根っこに残っている方だということは理解しておかなければなりません。

★★☆

著者別読書感想(高橋源一郎)

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風をつかまえて(文春文庫) 高嶋哲夫

風をつかまえて
2009年に単行本、2011年に文庫化された小説です。著者の小説を読むのはデビュー作「イントゥルーダー」含め、これで8作品目となります。著書は30作品以上あるので、その1/3も読めてませんが、これからも読みたい作家さんでもあります。

本著は北海道で国産風力発電に挑戦する家族の物語ですが、従業員3名の町工場が先行する欧州の大企業に対抗して手がけるという話にはちょっとリアリティがなくムリ目な感じがします。

風力発電は、欧州では進んでいます(EUは2023年電力の20%が風力発電由来で、日本は約1%)が、国内では自然エネルギーの中では出遅れています。これは単に技術力がないとかの問題ではなく、国の政策で自然エネルギーで発電した電力の買い取り金額が日本は低く抑えられているため採算化しにくい面があってのことです。

本著が出版された2009年頃は1,700基ほどだった風力発電基数は、13年後の2022年には2,600基へと少しずつは増えていますが、世界の中では中国が40%を越えているのに対し日本はわずか0.5%という普及率にとどまっています。

狭い国土と海に囲まれた日本にふさわしいのは、洋上風力発電ですが、工事が可能な遠浅の海が少ない日本列島沿岸を考えると最近できた浮体式洋上発電ということになりそうで、まだ様々な課題が多そうです。

太陽光発電もすでにパネルのほとんどは海外製になってしまい、風力発電も海外製の性能が高くて国産品は競争力がなく、日本製が優位な自然エネルギーは地熱発電装置ぐらいなので、国策として規制を緩和したり設置や買い取り価格に税金を投入すべき自然エネルギー事業は地熱発電ぐらいなのかも知れません。

わずかな希望としては、フィルムのような軽くて曲がる太陽光パネルの開発や、浮体式洋上発電の装置などの純国産技術も出てきているので、そうした日本の伝統である「応用技術」で競争することが可能かも知れません。本著が書かれた2009年当時ならともかく、いまさら風力発電の国産化では話題にもなりそうもありません。

★★☆

著者別読書感想(高嶋哲夫)

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燃える男(集英社文庫) A.J.クィネル

燃える男
1940年英国生まれの著者はすでに故人ですが、この作品は1980年に出版されたデビュー作で、原題はそのまま「Man on Fire」です。1987年と2004年にはこの作品を原作とした映画が制作されています。

元外人部隊で傭兵だった主人公が窮地に追い込まれたら、たいがいこうなるだろうなぁというストーリーで、読み応えはありましたが、特に目新しさや意外なひねりはなく、淡々と復讐を遂げてハッピーエンドで終わります。

ひねりはないと書きましたが、主人公がボディガードをしていた娘が誘拐され殺されたのは、実は裏があったということが最後にわかるのは、一応クライマックスのひねりのようなものとなっています。

その中でもいちばん楽しめたのは、小説の舞台がマルタ(共和国)やイタリアのナポリ、シチリアといったあまり馴染みがなかった場所で、そうした美しい島々や都市がよく描かれていて、想像の中だけでも美しい景色が堪能できたのは嬉しかったです。

イタリアマフィアのゴッドファーザーの生みの親のイタリア南部地域で組織的なマフィアのボス達に敢然と立ち向かっていく孤高の元傭兵というスタイルで、悪人達を片っ端から殺しまくるというよく見かけるダークヒーローものでした。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

アメリカの夜(講談社文庫) 阿部和重

アメリカの夜
1994年の作品で著者のデビュー作となります。著者は日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業したということもあり、映画にまつわる小説です。

秋分の日生まれの主人公は、語り手の別人格の男性で、映画学校で学びながら、渋谷の西武百貨店の中にあった芸術、文化の複合施設シードホールでアルバイトをしています。

美術展などの時は、監視員として1日中会場で座っているだけのバイトですが、その際に慣例で本を読んでいても構わなかったところ、ある日を境に「読書禁止」を社員から通達され、「小春日和の時代が終わった」と憤慨する感性の持ち主です。

バイト仲間には同じく映画学校で学んでいる同窓生が多く、それぞれの個性や趣向の違いから映画論が飛び交います。

とにかく、大正時代ぐらいの純文学によくあったような、語り手が一方的に映画論や人間関係を訥々と語っていくだけのスタイルなので、ストーリーを追うというより、語り手の頭の中をのぞき見るという、読書好きな人でないとなかなか好きにはなれないでしょう。

ま、それも小説を読むひとつの醍醐味ではあるわけですけど。

タイトルの「アメリカの夜」はフランソワ・トリュフォー監督の1973年公開のフランス映画のタイトルからとっています。

この映画の特徴は、現在のドラマや映画では普通によく使われている昼間に撮影したシーンを暗くして夜の風景とする疑似夜景のテクニックで、ハリウッド映画から普及したため「アメリカの夜」と名付けられたようです。

映画の話しは、かなりマニアックでほとんどついていけませんでした。

★☆☆

著者別読書感想(阿部和重)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

最愛(文春文庫) 真保裕一

最愛
2007年に単行本、2010年に文庫化された長編ミステリー小説です。タイトルからするとラブストーリーに思えましたが、数多くの名作を書いている著者の作品ですからそこから大いにひねってあります。

主人公は地方の小児科医で大学病院へ派遣されている独身男性。ある日警察から「姉が東京で撃たれ重体で入院した」と電話がかかり、急ぎ病院へ向かいます。

両親を早くに亡くして姉とは違う親戚に預けられて育った複雑な家庭環境で、長年姉の消息も知らずにいた主人公ですが、どうして暴力団の街金の事務所で銃撃されることになったのかを調べていくというストーリーです。

よく知らなかった波瀾万丈な女(姉)の半生を様々な関係者から話を聞いていく姿は、山田宗樹著「嫌われ松子の一生」(2003年)を思い出しました。

しかし最後に判明する小児科医となった最大の理由については、動機としてまた倫理的に考えて早く忘れたいことだろうと思い、ちょっと情緒的過ぎて無理があるかなぁと個人的な見解です。

★★☆

著者別読書感想(真保裕一)


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