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1656
ラプラスの魔女(角川文庫) 東野圭吾

2015年に単行本、2018年に文庫化された長編ミステリー小説です。2018年には三池崇史監督、櫻井翔、広瀬すず出演で映画が製作されています。

タイトルのラプラスとは、1700年代にフランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスによって提唱された「周囲の物理現象を見て解析できる能力があれば、極めて高い近未来の予測が可能になる」という「ラプラスの悪魔」と呼ばれる超人間的知性のことで、現代では量子学によってその可能性は否定されています。

もっと簡単に言うと、気象で言うと天気予報も近未来に起きる現象を予想していますが、スーパーコンピュータに頼らずとも空を見ただけで、次に何が起きるか、例えばその先の木に1時間後に雷が落ちるとか、どこそこの地域に雹が降ってくるとかがわかる特殊能力です。

主人公は複数いて、そうしたラプラスの悪魔の才能を得た二人の男女、地球化学の学者、元警官でラプラスの魔女を護衛する男、火山性ガスで中毒死した事故を殺人事件ではないかと疑い追う刑事など。様々な視点で描かれています。

もしそうしたラプラスの悪魔の能力を得た人間が、それを利用して完全犯罪を計画すればどうなるかということがメインの内容です。

小説や映画の世界にはしばしば超能力の持ち主が登場してきますが、そういうものにはもう飽き飽きしている人(私です)にも、この話は的確な未来予測能力ということで、なにか現実でもあり得そうでワクワクします。

私だったら、まず競馬場のパドックへ行き、次のレースでどの馬が勝つのかを予測します。下世話な話ですけど。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

幸福な王子 ワイルド童話全集(新潮文庫) オスカー・ワイルド

世界的に有名な童話「幸福な王子」の他、「ナイチンゲールとばらの花」「わがままな大男」「忠実な友達」「すばらしいロケット」「若い王」「王女の誕生日」「漁師とその魂」「星の子」の計9篇が収録されています。

童話とは言え、かなりややこしい話や解釈の自由度があり、大人が読んでも難解なものもあります。

「幸せな王子」も銅像とツバメの会話がメインですが、同様にナイチンゲール(花の種類)など植物や花火のロケット、鳥などあらゆるものに生命や意志がありそれら同士で会話ができるのが新鮮というか、でも人間との会話はできないとかで大人のリアルな感覚で読むと混乱してきます。

「幸福な王子」でもそうでしたが、ハッピーエンドで終わるものはなく、世の中の不条理とか、人の身勝手さ、傲慢、そしてけなげな花や鳥たちといった童話ですから~という感じです。

一番長い「漁師とその魂」だけはちょっと趣が違い、若い漁師が人魚に恋し、魂を失えば海の中で人魚と一緒になれると教えられ魂を分離することに成功します。

その魂だけが各地に出向き様々な経験を積んでいき、海へ行って若者に呼びかけて海から出てこさせます。私にはなにが言いたかったのか、意味がよくわかりませんでした。

残念ながら、世の中の汚いものを見過ぎて、純粋な気持ちで童話を読み、理解することができなくなってしまったようです。

そう言えば、以前に桐生操著の「本当は恐ろしいグリム童話〈2〉」を読んだとき、グリム童話ではありませんが「幸福な王子」が収録されていました。

2012年11月後半の読書(本当は恐ろしいグリム童話2)

また、偶然ですが、今年7月29日から公開されている映画「今夜、世界からこの恋が消えても」(2022年)の主題歌で、ヨルシカの「左右盲」は、昨年から続いている文学オマージュ作品のひとつで、この童話「幸福な王子」を歌詞のモチーフにしています。

他のグリム童話が、実は童話には相応しくないエログロで暴力的な表現などが満載ですが、この「幸福な王子」は、本書含めて一般的な童話では省略されている一緒に戦い生き残った婚約者がいて、今も悲しみ伏せっているのを勇気づけようとツバメに薔薇を届けてもらうなどさらに清らかな内容と言うことでした。

ただそれって本著にある「ナイチンゲールとばらの花」と混同してない?って気もします。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

忘れられた巨人(ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ

著者の作品を読むのはこれで4作目となりますが、以前に読んだ「わたしを離さないで」(2005年)を発刊した後、10年間のブランクが開き、2015年に発刊されたのがこの作品というのはあとで知りました。

2014年11月後半の読書と感想、書評(わたしを離さないで)

この長編小説のジャンルは著者の作品では珍しいファンタジーですが、子供向けの暖かなファンタジーではなく、イギリスの古代史をテーマにしたアングロサクソン人と、グレートブリテンの名の由来にもなっているブリトン人の対立がテーマとなっています。

あまり日本人には馴染みがない内容ですが、そのような英国史の物語を日系英国人(両親はともに日本人で、6歳まで長崎に在住)の著者が書くというのも面白いです。

主人公は、ブリトン人の老夫婦で、現在の村での生活に不満があり、ずっと前に出て行った息子に会うため遠出の旅に出ます。

村から一歩出ると、鬼や敵対するサクソン人、盗賊などが旅の障害となりますが、人々の記憶を失わせる原因となっている竜を敵に軍事利用されるのを防ぐためにやってきたブリトン人の騎士や、ブリトンの君主だったアーサー王に命ぜられ竜退治に執念を燃やしているブリトン人の老兵士などとともに様々な困難を乗り越えていきます。

まだ未開の土地が多かった5~6世紀の英国で、竜やら鬼やらが出てくるというところがファンタジーなんですね。5世紀と言えば日本では倭国という大和朝廷ができ、そこの代々の王がやがて天皇となっていくという時代です。

タイトルはサクソン人の騎士がその頃は多くの人種が英国で割拠している中で「昔に地中に埋められたサクソン人の巨人がやがて動き出す」と予言をしたように、やがて英国に住んでいたブリトン人やケルト人はサクソン人に駆逐されていくことになります。

まったく知らない歴史なので初めて知ることが多く、なかなか理解ができないのと、同時に新たな興味が湧いてくるのとがせめぎ合います。

しかし最後は特に話がつながるようなクライマックスなどもなく、英国料理のように評価すること自体が難しく、個人的には仲の良かった老夫婦が、なにか寂しい終わり方になっていてちょっと残念に思います。

★★☆

著者別読書感想(カズオ・イシグロ)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

献灯使(講談社文庫) 多和田葉子

1993年に「犬婿入り」で芥川賞、2003年に「容疑者の夜行列車」で谷崎潤一郎賞など数多くの賞を受賞されているドイツ在住の詩人と小説家として活躍されている方で、著書を読むのは今回が初めてです。

本著は2014年に単行本、2017年に文庫化された短・中篇小説で、「献灯使」「韋駄天どこまでも」「不死の島」「彼岸」「動物たちのバベル」の5篇が収録されています。

中でも表題の「献灯使」だけは中篇で最初にあります。しかし読み始めるとなにか不思議な世界観で、その設定が意味不明でわからず、読み進めていくのが苦痛となりました。

他の短篇を後から読むとわかりましたが、調べると「不死の島」が2012年に初出で最初、「動物たちのバベル」が2013年でその次、その他が2014年に文芸誌などで初出のもので、書かれた順で読めば小説の舞台とか状況が少しは理解した上で読めたのですが、なぜなのか不明ですが、あえて出版順とは逆の構成となっています。つまり「想像力の乏しい読者は二度、三度繰り返して読め!」ということなのかな。

それはさておき、いずれもテーマは東日本大震災や原発事故の後に書かれた悲惨な日本の未来を描いたSFで、女性の作家でSF作品を書く人は今まで少なく、意外な感じがしました。

しかし面白かったか?と聞かれると、、、この作品は私の好みではないです。折を見てまた別の作品を読んでみたいと思います。

★☆☆

【関連リンク】
 7月後半 よもつひらさか、中庭の出来事、わらの女、P・O・Sキャメルマート京洛病院店の四季
 7月前半 覘き小平次、デス・エンジェル、硝子のハンマー、老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの
 6月後半 破門、王とサーカス、アイルランドの薔薇、犬とハモニカ

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1653
よもつひらさか(集英社文庫) 今邑彩

1999年単行本、2002年に文庫化された短編小説集で、「見知らぬあなた」「ささやく鏡」「茉莉花」「時を重ねて」「ハーフ・アンド・ハーフ」「双頭の影」「家に着くまで」「夢の中へ…」「穴二つ」「遠い窓」「生まれ変わり」「よもつひらさか」の12篇が収録されています。

著者の作品は「いつもの朝に」(2006年)と「ルームメイト」(1997年)を読んでいますが、ミステリーやホラー、ファンタジー、多重人格などの精神疾患など幅広い複雑な人間関係の内容で、現実的には「ん?」と思いますが、エンタメとしては十分楽しめます。

タイトルにもなっている「よもつひらさか」は、漢字にすると「黄泉比良坂」で、古事記に出てきますが、イザナギとその妻だったイザナミが黄泉の国(死者の国)と現世の境目で起きる話で、この話は先般読んだ桐野夏生著の「女神記」にも出てくる有名な話しです。

現在の島根県松江市東出雲町揖屋に伝承地としてそれを模した場所があります。

その坂道を嫁いだ娘の家へ孫の顔をみるため歩いて向かっていた高齢男性が、坂道の入り口で道標のように建てられていた石碑をしゃがんで見ていたら立ちくらみをして、よろめいたところ穂高で登山をしてきて帰る途中という地元の男性に助けられます。

そしてその地元の男性と一緒に坂道を登っていきますが、坂道の名前の由来について聞くと、男性が言うには、坂道の最初と最後に石碑が建っていて、その間は黄泉の国とつながっているらしいこと、ひとりで歩いていると、亡くなった知人が亡霊として出てきて黄泉の国へ引き込もうとすること、子供の頃に友人が危ない目に遭ったことなど聞かされます。

亡霊はひとりで歩く人になにか食べ物や嗜好品を与えようとし、それを口にすると死んで黄泉の国へ行くことを聞かされ、高齢男性は、そう言えば坂道の入り口で立ち眩みをしたとき、男性から水筒の水を飲まされたことに気づき・・・という感じです。怖いですねぇ、、

その他、寺の天井に浮き出ているシミが双頭の怪物のように見える「双頭の影」、以前は画家と心臓病で亡くなる幼い娘が住んでいたという古い洋館に引っ越してきた父娘ですが、娘の部屋にかかっていた絵画が日によって微妙に変わっていることに気がついた娘がとった行動とは?の「遠い窓」など、なかなか怖くも楽しめるものでした。

★★☆

著者別読書感想(今邑彩)

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中庭の出来事(新潮文庫) 恩田陸

2006年に単行本、2009年に文庫化された長編ミステリー小説です。初出は2003年から2004年にかけて今はなき新潮ケータイ文庫でデジタル配信された連載小説です。

正直に言うと、1回読んだだけではなにを言いたかったのか、なにがミステリーなのか、誰が誰なのかよくわかりません。

場面が次々と変わり、現実に起きたことなのか、お芝居の中なのか混乱し、これほど複雑にする必要があるのか疑問です。

個人的には著者の作品は好きですけど、この小説に関してはちょっといただけない感じです。元はケータイ文庫として若い人向けに合わせたものかも知れませんが、逆に連載小説として途切れ途切れで読むとなおさら前後の関係がわからなくなり意味不明になってしまいそう。

内容は、劇の売れっ子脚本家がパーティーの中で毒殺されますが、その謎を中心に展開されますが、同時に、新宿の高層ビルの地下にある中庭で急死した女性、寂れた廃線の駅を夏場だけ演劇の会場として使ってそこで起きた不思議な現象などなど。

特に主人公がいないという点が誰の視点かわからず物語をわかりにくくしています。

そんなわけで、読むのが結構つらかったです。

★☆☆

著者別読書感想(恩田陸)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

わらの女(創元社推理文庫) カトリーヌ・アルレー

1924年生まれのフランスの作家さんで、数多くの推理小説を書いています。2022年時点で98歳ですがご健在のようです。

この作品は1956年に出版され、世界的なベストセラーになります。原題はフランス語で「La femme de paille」と邦題と同じ意味です。

1964年にはショーン・コネリーなどの出演で映画も作られていますが、こちらはアメリカ映画なのでタイトルは「WOMAN OF STRAW」となっています。

小説の舞台は、まだ第二次世界大戦の記憶が深く残っている1950年代のヨーロッパとアメリカです。

主人公の女性は敗戦国ドイツ出身の34歳独身女性で、家族など身内は戦争ですべて死に、孤独を埋め、貧しい生活から抜け出すために裕福な結婚相手を探しています。

新聞広告で見つけた縁談に飛びついたところ、募集したのは世界的な大富豪の秘書で、「自分の言うとおりにすればその富豪の妻になれる」「妻となってすでに高齢の大富豪がいずれ亡くなれば莫大な遺産を相続できるので自分にも分け前が欲しい」と共謀を持ちかけてきます。

貧しい生活から抜け出すためには、その秘書からの共謀計画を受けるしかなく、ことは順調に運んでいきますが、、、

文庫の解説の中でも触れられていましたが、私も読んでいて「遺産相続する相手を(犯人が)殺した場合、当然(犯人には)その相続権が無効となるが、無効となればその相続権がさらに犯人の親族へ移ることはないだろう?」と不思議に思いました。

その点は著者があとで指摘され間違いに気がついたと言うことですが、あえて修正はしないでそのまま残っています。ハッピーエンドではなく、完全犯罪を描いた作品ですが、やはり完全犯罪とは言えどこかに穴があるものです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

P・O・S キャメルマート京洛病院店の四季(ハヤカワ文庫JA) 鏑木蓮

2017年に文庫化された書き下ろし作品で、一応は長編スタイルですが、中身はいくつかのエピソードを順番に並べた連作短篇のような内容となっています。舞台は著者の出身地でもあり居住地の京都です。

タイトルのPOSとはコンビニで導入が広まった「Point Of Sales」の略で、一般的には「販売時点情報管理」のシステムを指します。

コンビニにおいて、そのPOSで得られた情報を分析すれば、「いつ何がどれだけ売れるか」がわかり、事前の仕入れや新商品の導入などに役立ちます。

主人公は、東京に本部があるコンビニチェーンの本部社員(スーパーバイザー)ですが、レギュラーというフランチャイズではない直営店の京洛病院店の臨時店長として単身赴任してきます。この直営店の成績が悪く、建て直しに送り込まれてきたという構図です。

そのコンビニのモデルは、京都府立医科大学附属病院の中に設置されているローソン 京都府立医大病院店と思われます。「徒歩5分で鴨川」に出られ、「上流に賀茂大橋が見える」と書いてあるので明らかです。

ちなみにこの病院には50年ほど前に1ヶ月ほど入院したことがあります。もちろんその時にはコンビニなどはなく、代わりに薄暗い売店があったような気がします。

コンビニの従業員が、来店客の様々なニーズと問題を解決していくという、おとぎ話のような話で、あまりリアリティはありません。また1社員の思いつきで次々とプライベート商品が即刻に作られるというのも、巨大なコンビニ組織の中ではあり得そうもありません。

それでも、似たようなエピソードなどを元に考えているのかな?と思われるところもあり、また以前NHKのドキュメント72時間で同じような病院内コンビニを撮影していたときに、小説の中でも出てくるように夜勤明けの女医さんが毎日栄養ドリンクをグビグビッとやっているシーンが出ていました。

私が数年前に人工股関節置換手術で10日間×2回入院していた時も、院内のコンビニにはよくお世話になりましたが、この小説に出てくるような24時間営業でもなく、美味しいローソンの店内コーヒーのようなものはなく残念でした。最近は大きな病院の中にはほとんどコンビニが進出しているようです。

小説では、徘徊で身元が不明の認知症患者や、ペットを使ったアニマルセラピーの話、京都らしく映画や特撮ドラマ関係者の話なども織り交ぜられて、いろいろと役立つ話があって楽しいものでした。

★★☆

著者別読書感想(鏑木蓮)

【関連リンク】
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1650
覘き小平次(角川文庫) 京極夏彦

著者の作品では「魍魎の匣」などの「百鬼夜行シリーズ」や、直木賞を受賞した「後巷説百物語」などの「巷説百物語シリーズ」などとともに有名な「江戸怪談シリーズ」の第2作目で、山本周五郎賞を受賞した長編作品です。2002年に単行本、2008年と2012年に文庫化されています。

原作は江戸時代の浮世絵師、戯作者だった山東京伝の「復讐奇談安積沼(ふくしゅうきだんあさかのぬま)」をアレンジしたモノとなっています。

「江戸怪談シリーズ」の第1作目は、「東海道四谷怪談」を元にした「嗤う伊右衛門」ですが、先日読みました。

2022年1月前半の読書と感想、書評(嗤う伊右衛門)

江戸怪談の中でこちらの原作は第1作目の原作「四谷怪談」や第3作目の原作「番町皿屋敷」ほどには有名でなく、私は知りませんでした。

江戸時代、有名な歌舞伎劇団の音羽屋で役者をしていた主人公ですが、あまりにも下手で使い物にならないと破門となり、そのあまりにも病的に貧相な外観から小さなドサ回り劇団で幽霊役者として名を馳せることとなります。

そして知らないうちにある陰謀に巻き込まれる形で青森まで公演旅行に出掛け、その帰り道で同僚などに命を狙われることになります。

タイトルは、自宅にいる時には、押し入れの中に入り、一寸五分というから5センチほどでしょうかふすまを少しだけ開け、同居している妻の姿などをジッと覘いているというところからきています。幽霊役者ということもあり、ちょっと不気味です。

知らないストーリーでしたが、ミステリー風にうまくアレンジされている風で、それなりに楽しめました。それが目的ではなさそうで、怖さはほとんどありません。

★★☆

著者別読書感想(京極夏彦)

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デス・エンジェル(新潮文庫) 久間十義

著者は1953年生まれの作家さんで、作品を読むのは今回が初めてです。この作品は、2015年に単行本、2018年に文庫版が発刊されています。

内容は知らずに読み始めましたが、病院、医療ミステリーで、病院の内実や医療や薬品の話しが詳しく出てくるので、この著者さんも久坂部羊氏や帚木蓬生氏のような医師と作家の二足のわらじの人?と思いましたがそうではありませんでした。

主人公は医学部を卒業し医師免許も取得したのち、東京郊外にある地域の拠点病院となる総合病院へ研修医として勤務することになった男性です。

内科に勤務してすぐ、担当している入院中の高齢者が深夜に病状が急変して亡くなる事態が起きます。しかしなぜか原因を追及する解剖はおこなわれず不思議に思っていたら、続いて別の高齢者がやはり突然亡くなり、調べると過去にも似たような事例が起きている事が判明します。

指導医のベテラン女医から過去の事例を含め秘密裏に調査するように指示を受け、同じ研修医で台湾から来ている研修医とともに調べて行くというストーリーです。

タイトルを注意して見ていればその謎は想像が付きますが、あまり気にしてなかったので調べが進む中でようやく犯人というか事件の目星が付きました。

2016年に発覚した31歳の看護師が複数の患者の点滴に消毒液を混ぜて殺したとされる「大口病院連続点滴中毒死事件」を彷彿させる内容で、もちろんこの作品が世に出たのは事件の前なので、事件を予見した作品として注目されました。

福祉的な医療と営利事業としての経営の間で複雑な問題を抱える病院経営や、高齢者が亡くなった場合の遺族感情、事件性のある場合は公費でまかなわれる解剖に対し、事件性が薄く、遺族の費用負担と希望でおこなわれる病理解剖が難しい理由など、多くの医療の問題点が挙げられています。

あらためて病院は怖いところという気がしてきました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

硝子のハンマー(角川文庫) 貴志祐介

著者の比較的初期の作品で2004年単行本、2007年に文庫化された長編ミステリー小説です。

この作品は短篇集含め現在5作品ある「防犯探偵・榎本シリーズ」の記念すべき最初の作品です。

そのタイトルから本書で出てくる密室殺人の謎が半分ぐらいわかってしまいそうですが、登場人物達が様々な方向へ話しを持っていくので、それは気にならず、謎が謎を呼んで貴志ワールドに没頭していくことになります。

シリーズ名にある防犯探偵とは、新宿の雑居ビルであまり儲かっていない防犯・セキュリティショップを経営している男性が、頼まれる(お金がもらえれば)と防犯コンサルタントとして現場へ出向いて活躍します。

そしてワトソン役としては、依頼主にもなる弁護士事務所に所属する若くて麗しい女性弁護士さんというお決まりのパターンです。

この作品はシリーズ一作目ですので、その防犯コンサルタントと女性弁護士が最初に出会う(仕事を依頼する)場面があり、なかなかユニークでお気に入りです。初対面で弁護士だと見抜いたワザは最後の方で謎解きされます。

主人公の趣味がビリヤードで、最後の謎解きをする時に、ひとりで突きながら殺人の方法を解き明かすシーンは、その意味はわかりますが、なんだかミステリードラマで崖の上で犯人を前に謎解きをするのと似ていて笑えました。

★★☆

著者別読書感想(貴志祐介)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの(中公新書) 増本康平

著者は神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授で専門は心理学という学者さんです。この新書は2018年に発刊されています。

老化現象のひとつに記憶力が衰えるということがあるのは常識ですが、その脳のメカニズムや各種の実験や調査データから、その中身と真実を明らかにしていきます。

こりゃ他人事ではなく、まさにいま、人の名前が出てこなかったり、ど忘れすることがよくあり、さらにこの先、認知症に怯えるもうすぐ高齢者としては興味のある話題です。

それだけにやや専門的な話も多く、掲載されるグラフや表もその詳しい説明や見方がほとんどなく、それを専門で勉強している人ならともかく、一般人が読むには意味不明なところが多すぎます。

さらに脳の機能でわからないことが多く、また個人差が相当あり、想像の部分もかなりありそうです。

つまり認知症になるかならないか?と言うと、ある遺伝子を持っている人はなりやすいとか、糖尿病など健康上に問題ある人、会話がなく社会生活が乏しい人など、一般的によく言われていることが原因らしいということですが、それでも個人差によって違う(認知症になりやすい遺伝子を持っていても、糖尿病など発症していても、アル中でも、ひとりで引きこもり生活を続けていても発症しない人はしない)ので、結局はよくわからないというのが本音でしょう。

要はそうした脳の複雑性、未知の臓器について、現在わかっていることが語られていて、予防策として世間でよく使われる「脳トレ」は意味がない(本著に理由は書かれている)とか、あまり参考になることはないかなぁというのが感想です。っていうか、読解力や基礎知識がないので、読んでもよくわかりませんでした。もうボケが進んでいるのかも。

★☆☆

【関連リンク】
 6月後半 破門、王とサーカス、アイルランドの薔薇、犬とハモニカ
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 5月後半 切羽へ、虚無回廊 I、虚無回廊 II、虚無回廊 III、ナニカアル

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1649
メジャーベースボールと日本のプロ野球の違いについては方々で語られていますが、両方を見ていて最近いくつか疑問があるのでまとめて書いておきます。

その前に、最近のメジャーの話題で驚いたのが、ストライク判定を自動化しようという動きが進められているという話です。

MLBで「ロボット球審」導入へ 大谷選手への判定などで“誤審”が取りざたされる中(テレビ朝日)
メジャーリーグのマンフレッド・コミッショナーは、2024年からボールとストライクを判定する「ロボット球審」を導入する考えを明かしました。(中略)すでに5月からマイナーリーグに試験導入されていて、問題がないか検証している

数年前からリクエストでビデオ判定が導入され、きわどい判定では審判のジャッジが覆されることがよくあり、ジャッジの信頼性に疑問が出ています。

今の技術を使えば、ストライク・ボール判定は自動化でき、その代わりに審判(主審)は球筋よりもカウント、バッターのハーフスイングや死球、投手のボーク、打撃妨害、守備妨害、フェア・ファール判定など、その他のチェックと判定に注力できます。

そして審判のストライク・ボール判定にクレームをつける打者も投手もいなくなり、ゲーム進行も早くなるでしょう。

審判員はストライク・ボール判定だけをやっているワケではないので、それをしないから審判員は不要とか、技術が落ちるとかはありません。

判定の自動化に反対する人はもちろんいるでしょうけど、審判の負担軽減や判定の公平性、審判員による判定個人差の解消など、メリットの大きさを考えると、導入は自然の流れかなと思います。

  ◇   ◇   ◇

さて、本題ですが、Rosinとは松ヤニのことで、ロジンまたはロージンと表記されますが、私は50年前にクラブ活動で野球をしていた時に馴染んだロージンバッグという言い方のほうがしっくりきます。

野球以外にもこのロージンを使った滑り止めはウェイトリフティングや体操の鉄棒や吊り輪の競技などでもよく使われています。

日本のプロ野球では、ほとんどの投手は投球前にロージンをポンポンと手ではたき、指にたっぷり付けてボールを投げます。

そしてボールから手が離れるときにそのロージンの粉がパッと飛び散るシーンが見られます。また投げる前にロージンがたっぷり付いた指に息を吹きかけて吹き飛ばすシーンもよく見られます。

但し、あまり大量に付けて投げると、ボールが一瞬見えにくくなるので、審判から注意を受けることがあります。

一方のメジャーでは、このロージンを頻繁に使う投手は稀です。日本人の投手も国内ではロージンを使っていてもメジャーへ行くとあまり使いません。

その代わりに、指をペロッとなめて唾を付け、それを滑り止めにしている選手が多いように思います。

なんだかいつも見ていて不衛生だし、指をなめるのはボールにも唾が付くのでルール的にも微妙な問題です。

メジャーでもプロ野球も公式球の表面は牛皮が使われていますが、メジャー球のほうがやや大きく滑りやすいと言われています。

本来なら滑り止めのロージンがより必要となるのはメジャーですが、なぜか実際はほとんど使われていません。

おそらくですが、メジャーで使われているロージンバッグの種類がプロ野球で使われているものと少し違っていて、あまり役に立たないのと、付けて投げた後、規制強化で審判に手をチェックをされたとき、松ヤニが指に残っていると不正投球の疑いを持たれる恐れがあり、それを避けるために付けないものと思われます。

最近はプロ野球でプレイをした外国人投手がメジャーへ戻るというパターンもあり交流が増えていますので、そうした日本のロージンなど便利グッズは知られていると思うのですが、なぜプロ野球で使っているサラサラのロージンバッグと同等品をメジャーで利用しようということにならないのか不思議です。

もっと言えば、メジャーにおいても滑りにくいプロ野球の公認球と同等のボールを使えば、投げたときに滑ってすっぽ抜け死球になることが減り、選手の安全に寄与するのではと思います。

  ◇   ◇   ◇

もうひとつは、イニングの途中でピッチャーが交代するときに、メジャーでは投球練習場が外野席近くにあることが多いのですが、そこから出てきた交代の選手は駆け足でマウンドへやってきます。

これはメジャーのルールで交代はスムーズにおこなうように決められていて、のんびりと歩いてやってくることは禁止されているからですが、見ていてもスポーツマンらしく清々しい感じがします。

ところがプロ野球では、同じく外野席スタンドの下にある練習場からリリーフ投手が出てくるときにはクルマ、いわゆるリリーフカーに乗ってやってくるケースが見られます。

現在リリーフカーを導入している球場は、横浜スタジアム、ZOZOマリンスタジアム、阪神甲子園球場の3箇所とのことです。練習場とマウンドまでが遠いことから使われているのでしょう。

しかしこのリリーフカーのスピードはめちゃ遅く、しかもフィールドの内側までは入れないので中途半端な距離だけ走ってきます。

そしてそれに乗った姿は街でよく見かけることが多い、足が弱った高齢者が乗るシニアカーというイメージです。

せっかく緊迫した試合でも、それを長く中断し、トボトボとゆっくり進むリリーフカーと、それに乗った投手は見ていて間が抜けた感じがします。

プロのスポーツマンなら、高齢者御用達のシニアカーみたいなのに乗ってモタモタ出てこず、外野からしっかり自分の足で走ってやってこい!って思いますが、どうでしょう?

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破門(角川文庫) 黒川博行

いわゆる「疫病神シリーズ」の5作目で、2014年に単行本、2016年に文庫が発刊されています。

この作品で2014年上半期の直木賞を受賞されています。こうしたコミカルな要素が含まれるヤクザ小説でシリーズ物が直木賞とは意外な感じです。

さらにこの小説を原作としたテレビドラマ(2015年)や、映画「破門 ふたりのヤクビョーガミ」(2017年)も作られています。

著者の小説は過去に「国境」と「暗礁」の2作品を読んでいますが、偶然ですがそれらも同じ「疫病神シリーズ」でした。

もちろん著者の作品はそのシリーズだけではなく、「大阪府警シリーズ」や「堀内・伊達シリーズ」、その他多くのシリーズ外作品があります。

主要な登場人物の性格や行動パターンがわかっていると、読むのがめちゃ楽です。そういう意味では気に入ったシリーズ物というのは精神的な安息が得られて貴重です。

このシリーズの主人公は、今は亡き父親がヤクザの大物だったことで、堅気の建設コンサルタントをひとりでやっていても、周囲にはいつもヤクザの影がつきまといます。

その中でもひとりのヤクザと腐れ縁で、「国境」ではそのヤクザとともに北朝鮮へ不法入国し、川を泳いで逃げるときに銃撃をうけるなど散々な目に遭います。それでその相棒とも言えるヤクザが「疫病神」というわけです。

今回も喧嘩や暴力はからっきし苦手で堅気の主人公と、これぞ任侠、ベタベタなヤクザと二人の絡みで物語は進んでいきます。

今回は、人気俳優を担いだ映画制作にヤクザの親分が大金を投資したところ、それをプロデューサーが持ち逃げをして女とともにマカオへ飛んだことがわかります。それを追いかけ二人が大阪とマカオを駆け回ります。

マカオと言えばカジノで、二人がカジノをするシーンも少しありますが、割とあっさりしていて、これは著者の性格というか好み(あまりカジノは好きでない)によるのでしょう。

映画制作の舞台裏やヤクザ組織同士の対立など、普通ではあまり知られていないうんちく的な話が出てきて、前作同様、二人の上方漫才のような掛け合いが面白く読めました。でも3作目ともなると同じようなパターンで飽きてきたかな。

今回、相棒のヤクザがあちこちで同業のヤクザと揉め、庇いきれなくなって組を破門されることになります。それがこの作品のタイトルとなっています。

その後もシリーズは続いていますので、二人の立ち位置に微妙な変化が現れているのか少し気になるところです。

★★☆

著者別読書感想(黒川博行)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

王とサーカス(創元推理文庫) 米澤穂信

2015年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。「このミステリーがすごい!」などで1位を獲得しています。

日本人が知っていそうでほとんど知られていない国のひとつにネパールがあります。この小説の舞台はネパールで、新聞記者を辞めた後、フリーライターとして旅行ガイドを書くために主人公の女性がネパールを訪れます。

そしてネパールで拠点とする安ホテルに到着してからまもなく、ネパールで国王が殺されるという事件が発生します。

この事件は事実を元にしているのか?と思って調べたところ、2001年に起きた「ネパール王族殺害事件」をモチーフとして使っているようです。

その事件は謎が多く、外出禁止令などが出され、国民の不満から暴動を生み始め、元記者だった主人公はフリーライターとしての最初の記事としてこの事件を追いかけることにします。

同じ安宿に宿泊しているのが日本人の僧侶、アメリカ人学生、インドの商人などくせ者揃いで、観光客に土産物を売って生活を支えている子供をガイド役にして取材をしていきます。

最初タイトルをみてどういう内容かはまったく想像がつきませんでした。

主人公がホテルの主のコネで国王が殺された王宮内で警備をしていたという兵士に、事件について単独インタビューをしたとき、その兵士からはなにも聞き出すことはできず、「お前はサーカスの座長だ。お前の書くものはサーカスの演し物だ。我々の王の死は、とっておきのメインイベントというわけだ」というマスメディアが「人の不幸は蜜の味」として面白おかしく報道することが多いことを皮肉を込めて言ったことからきています。

その兵士がインタビューの後に何者かによって惨殺され、直前に会っていたことが警察に知られ、主人公は警察に連行されます。

やがて疑いは晴れ、次に狙われるかもしれないと刑事がガードすることになり、その刑事と共になぜ兵士が殺されたのかを突き止めていきます。

ネパールのことを少しだけでも知れたことと、事件の意外性もあって、面白く読めました。

★★☆

著者別読書感想(米澤穂信)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

アイルランドの薔薇(光文社文庫) 石持浅海

著者の作品はこれが4作品目です。いずれも単純ですけど面白いです。

この作品は2002年に単行本、2004年に文庫化され、著者の本格的なメジャーデビュー作品(小説)です。

この作品の舞台はアイルランドで、アイルランドの研究所に提携する日本の製薬会社から派遣されている日本人研究員が殺人事件に遭遇します。

この本を読む前に読んだ「王とサーカス」が、ネパールを舞台にした小説で、日本人女性が謎解きをしましたが、今度はヨーロッパへ飛びアイルランドで同じく日本人(男性)が謎解きです。

アイルランドというと、一般的な日本人には遠くて遠い国で、英国とのテロ事件が時々クローズアップされたり、アメリカにも多く移住していて、仲間の絆が深いアイルランド系住民について語られることがあることぐらいでしょうか。

そう言えば以前見たハリソンフォードとブラッド・ピットのW主演の映画「デビル」(1997年)もアイルランドのテロリストと、アメリカに住むアイルランド系警察官の友情と対立が主題でした。

この小説を読むと、アイルランドの歴史や、テロが頻発する(した)理由、世界中にアイルランド系民族が散らばった理由など、知らなかったことがよくわかります。

そうしたアイルランドが舞台とは言え、あまりそのこと自体は重要ではなく、ストーリーとしては閉じられた空間(この作品では小規模なホテル)で起きた殺人事件の謎解きをするという内容です。

北アイルランドは英国主導のプロテスタントの国家で、カトリックが中心の南アイルランドとは長い歴史の中で双方がいがみ合い殺し合うという歴史があります。

そんな中、北アイルランドの兵士メンバー3人が偽名で宿泊する南アイルランド郊外にあるホテルに、アメリカの女子大生二人、オーストラリアのビジネスマン、日本人とアイルランド人の化学研究員が同宿しますが、翌朝に兵士メンバーのひとりが殺されます。

さらに、それとは別に、その殺された兵士を旅行中に自然死と見えるように殺して欲しいと頼まれた殺し屋の存在もあります。この殺し屋が誰なのか最後まで明らかにされませんが、ミステリー好きならすぐに誰なのかわかると思います。私はすぐにわかりました。

なかなか凝った内容で、犯人捜しの推理はことごとく外れてしまいましたが、限られた候補の中で、誰がどういう動きをしてどう発言したかなど、緻密に散りばめられていて推理を楽しめました。

★★☆

著者別読書感想(石持浅海)

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犬とハモニカ(新潮文庫) 江國香織

2012年に単行本が発刊された短篇集で、川端康成文学賞受賞作品です。2015年に文庫化されています。

短篇はそれぞれ独立した作品で、「犬とハモニカ」「寝室」「おそ夏のゆうぐれ」「ピクニック」「夕顔」「アレンテージョ」の6篇です。

離婚間近な夫婦や、不倫が終わりを告げた男性、恋人がいるものの孤独感にしたる女性、仲良く見える夫婦ながらも微妙な関係になりつつある夫婦、源氏物語の光源氏を主人公とした色恋話を現代語訳で、ポルトガル人ゲイカップルの夏休みと、なんの脈絡もなく6つの短いストーリーを楽しめます。

ただ、起承転結などないので、想像をたくましくして読まないといけないのと、読後の感想は人それぞれに分かれそうな感じです。

個人的には結末がはっきりしないものは、モヤッとした気持ちが残ってしまい苦手です。それが江國ワールドだと言ってしまえばそうなのでしょうけど、どうにも読後にスッキリとしません。

★☆☆

著者別読書感想(江國香織)

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