リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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夏休み前に女性作家さんの作品を集中して読んだ「女性作家シリーズ」です。最近は買う書籍の半分以上は女性作家さんになっています。
地のはてから(上)(下)(講談社文庫) 乃南アサ
2010年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。前年2009年刊の長編小説「ニサッタ、ニサッタ」の主人公の祖母がこの小説では主人公となっています。
時代は大正時代初期、主人公の女性がまだ2歳の時に始まり、食い詰めた福島の農家の四男坊だった父親が、国の北海道移住政策にのっかって地の果て知床半島へ夜逃げ同然で移住してきます。
その主人公が、厳しい自然環境の中で、たくましく育っていく姿が印象的で、見ていませんが有名なNHKドラマ「おしん」の北海道版って感じもします。
借金を作って移住を独断で決めた父親は、まともな生活ができずにやけくそになって酒に溺れ海に転落して早くに亡くなり、本当は来たくなかったのに父親に連れられて知床へ来た母親と小さな子供二人が残され厳しい環境の中で極貧の生活が続いていきます。
成長した主人公はその後小学校をでてすぐに小樽へ子守の奉公に出されますが、その前に山の中で知り合ったアイヌのたくましい子供に恋心を抱きます。
大正時代から昭和初期の東北や北海道は、きらびやかな東京や大阪とは違い、貧しい農民ばかりが肩を寄せ合って生きているという印象で、そうした重苦しい話しが延々と続きます。
農民たちに希望はあるのか?ってことですが、ハッピーエンドで終わるドラマチックなことはなく、家に縛られ、職業選択や住まいの移動が自由にできない中で、貧困の連鎖が延々と続いていくことになり、そうした、あまり表には出てこない日本の暗い歴史を知っておくことも必要でしょう。
またアイヌ差別の問題や、貧困の中においても「お国のため」と貴重な働き手の男手を戦場へ送らなければならない農家の悲惨さなど語り尽くせない、日本の黒歴史が学べます。
★★★
◇著者別読書感想(乃南アサ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
父の戦地 (新潮文庫) 北原亞以子
著者は「深川澪通り木戸番小屋シリーズ」など数多くの小説を出され、1993年に「恋忘れ草」で直木賞を受賞された作家さんですが、2013年に故人となられています。
著者の子供というかまだ幼児だった頃、戦争が激しくなって家具職人だった父親が召集されて戦地へ赴きます。
その戦地の父親から、幼児でもわかりやすいようにと様々な絵や漫画を描いた軍事郵便(はがき)が届けられます。
その父親のはがきを紹介しながら、かすかに記憶にある父親の思い出や、母親や親戚に聞いた父親のことを綴っているエッセイ的な内容ですが、プロの作家さんにしては、同じ話が何度も何度も繰り返されたり、話しの順番(時代)が行ったり来たりして読み手からすると話の流れや関係性などがよくわからなかったりします。
また近所の○○ちゃん、親戚の○○ちゃん、いとこの○○ちゃんなどと、個人名がやたらと出てきますが、読者的には著者の交友関係など詳しくないので、そう次々と名前を出されても、、、って読んでいても話しがとっちらかっていてまったく集中できないのが残念です。
タイトルにある「父の戦地」というよりは、「私の戦地」に近い内容でした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
誰かのぬくもり (光文社文庫) 新津きよみ
2015年に文庫として発刊された短編集で、一部は連作スタイル(登場人物が重なっていたりする)です。
著者の作品は、過去に「ダブル・イニシャル」を読んでいます。数多くの作品があるのにまだ1作?という少なさです。同年齢の方の作品ですので、これからもっと頑張って読みます。
この短編集には「お守り」「誰かのぬくもり」「罪を認めてください」「思い出さずにはいられない」「骨になるまで」「秘密」「女の一生」「不惑」の8編が収録されています。
女性心理を鋭く描くサスペンススタイルが持ち味の著者ですから、短編でもそのスタイルが用いられています。
ただ、私など単純な読者が希望する起承転結が明確ではなく、「え?なにが言いたかったの?」と戸惑ってしまう、ハッキリしないものが多く、個人的にはちょっと苦手でした。
★☆☆
◇著者別読書感想(新津きよみ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
号泣する準備はできていた (新潮文庫) 江國香織
2004年の直木賞受賞作となった短篇集です。
収録作品は、「前進、もしくは前進のように思われるもの」「じゃこじゃこのビスケット」「熱帯夜」「煙草配りガール」「溝」「こまつま」「洋一も来られればよかったのにね」「住宅地」「どこでもない場所」「手」「号泣する準備はできていた」「そこなう」の12編です。
著者の作品は「神様のボート」「きらきらひかる」の二つだけを過去に読んでいますが、「犬とハモニカ」もまだ未読ですがすでに買ってあります。
女性作家さんによくある微妙?な女性心理を前面に出した小説ですが、男性には理解できないところもあり、「そういうものかぁ~」って感心するぐらいで、当たり前ですが主人公に感情移入することもなく、淡々と読むしかないという感じです。
しかし同年代以上の女性が読むと、「わかるわかる」と、女性あるあるなのでしょうね。わかりませんが。
直木賞にも、熊谷達也著「邂逅の森」のように、文庫で530ページの壮大な長編もあれば、この小説のように1編平均が20ページ程度で全部足しても230ページに満たない短篇集もあり、その候補作と選出の基準がいまいち不明です。
「第130回(2003年下半期)直木賞 選評の概要」というのがあり、それを見ても、400字詰めで12篇合計して268枚のこの作品と、1作でその7倍近い差がある同1855枚の馳星周著「生誕祭」が同列に評価されています。
もちろん、小説はその長さで優劣が決まるわけではないですが、短篇で直木賞が取れるなら、作家心理としては時間をかけて長編を書くより、インパクトのある短篇作を中心に創作する人が増えていくような気がします。
個人的には同じ時間をかけて短篇を100作読むよりも、長篇1作を読みたい派です。
この2003年下半期直木賞の、5つの候補作の中では圧倒的に審査員の評価が高いのがこの作品ですが、10人の審査員のうち、津本陽氏と宮城谷昌光氏の二人だけは評価が低くなっています。おこがましい言い方ですが、私はこの二人に感性が近いかもです。
個人的には短篇集(あるいは短編作品)は、直木賞ではなく別に評価すべきじゃないのかな?と思ってしまいます。
ちなみに、この直木賞においては、400字詰め原稿で、1~149枚が短篇、150~299枚が中篇、300枚以上が長篇とされています。
ちょっと本作品の感想と関係のない話しになってしまいました。
★☆☆
◇著者別読書感想(江國香織)
【関連リンク】
7月後半の読書 生きて帰ってきた男、震源、もらい泣き、時砂の王
7月前半の読書 宇宙を読む、夏の情婦、永遠の出口、無人島に生きる十六人、MISSING
6月後半の読書 騙し絵の檻、思い出袋、パンク侍、斬られて候、黄砂の籠城(上)(下)
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先月、7月14日、2021年上半期の. 第165回直木三十五賞が発表され、佐藤究氏の「テスカトリポカ」と、澤田瞳子氏「星落ちて、なお」が見事に受賞されました。
受賞直後には書店へ行くと、受賞作や候補作の単行本が大量に平積みされていて、ミーハーな人や流行に敏感な人はこぞって買い求めていますが、冷静沈着な私?は文庫になるまで数年待ってから手に取りますから読めるのは2~3年後でしょうか。
文庫しか読まないのを人は「貧しいからだろ?」と言いますが、半分当たっています。あとの半分は、保管場所がないので、大きな単行本はできるだけ避けて小さな文庫本にしているのと、寝っ転がって読むのに重い単行本だと手が疲れるからというのが半分です。
生憎、人より早く読みたい!流行に乗り遅れたくない!という先進性の思想は持ち合わせていません。
ということで、印税という点ではあまり著者に貢献できていないので心苦しいのですが、できるだけ読んだ本については感想などを書いて、Amazonのリンクも貼っておくということで勘弁してください。ただし結構独断的で辛口です。
あまり古い作品まで入れるのもあれですので限定しますが、1970年から2020年までの51年間に直木賞を受賞したのは126名で、作品数は133あります(2作品で受賞した場合は2作品とカウント)。
そのうち、どのぐらい読んだかな?と、下記の表の通り調べてみたところ、36作品(赤色)でした。と言うことは率にすると 36/133≒25% ということです。
第63回(1970年上半期) | 結城昌治「軍旗はためく下に」 | 渡辺淳一「光と影」 |
第64回(1970年下半期) | 豊田穣「長良川」 | |
第65回(1971年上半期) | ||
第66回(1971年下半期) | ||
第67回(1972年上半期) | 綱淵謙錠「斬」 | 井上ひさし「手鎖心中」 |
第68回(1972年下半期) | ||
第69回(1973年上半期) | 長部日出雄「津軽世去れ節」「津軽じょんから節」 | 藤沢周平「暗殺の年輪」 |
第70回(1973年下半期) | ||
第71回(1974年上半期) | 藤本義一「鬼の詩」 | |
第72回(1974年下半期) | 半村良「雨やどり」 | 井出孫六「アトラス伝説」 |
第73回(1975年上半期) | ||
第74回(1975年下半期) | 佐木隆三「復讐するは我にあり」 | |
第75回(1976年上半期) | ||
第76回(1976年下半期) | 三好京三「子育てごっこ」 | |
第77回(1977年上半期) | ||
第78回(1977年下半期) | ||
第79回(1978年上半期) | 津本陽「深重の海」 | 色川武大「離婚」 |
第80回(1978年下半期) | 宮尾登美子「一絃の琴」 | 有明夏夫「大浪花諸人往来」 |
第81回(1979年上半期) | 田中小実昌「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」 | 阿刀田高「ナポレオン狂」 |
第82回(1979年下半期) | ||
第83回(1980年上半期) | 向田邦子「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」 | 志茂田景樹「黄色い牙」 |
第84回(1980年下半期) | 中村正軌「元首の謀叛」 | |
第85回(1981年上半期) | 青島幸男「人間万事塞翁が丙午」 | |
第86回(1981年下半期) | つかこうへい「蒲田行進曲」 | 光岡明「機雷」 |
第87回(1982年上半期) | 深田祐介「炎熱商人」 | 村松友視「時代屋の女房」 |
第88回(1982年下半期) | ||
第89回(1983年上半期) | 胡桃沢耕史「黒パン俘虜記」 | |
第90回(1983年下半期) | 神吉拓郎「私生活」 | 高橋治「秘伝」 |
第91回(1984年上半期) | 連城三紀彦「恋文」 | 難波利三「てんのじ村」 |
第92回(1984年下半期) | ||
第93回(1985年上半期) | 山口洋子「演歌の虫」「老梅」 | |
第94回(1985年下半期) | 森田誠吾「魚河岸ものがたり」 | 林真理子「最終便に間に合えば」「京都まで」 |
第95回(1986年上半期) | 皆川博子「恋紅」 | |
第96回(1986年下半期) | 逢坂剛「カディスの赤い星」 | 常盤新平「遠いアメリカ」 |
第97回(1987年上半期) | 白石一郎「海狼伝」 | 山田詠美「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」 |
第98回(1987年下半期) | 阿部牧郎「それぞれの終楽章」 | |
第99回(1988年上半期) | 西木正明「凍れる瞳」「端島の女」 | 景山民夫「遠い海から来たCOO」 |
第100回(1988年下半期) | 杉本章子「東京新大橋雨中図」 | 藤堂志津子「熟れてゆく夏」 |
第101回(1989年上半期) | ねじめ正一「高円寺純情商店街」 | 笹倉明「遠い国からの殺人者」 |
第102回(1989年下半期) | 星川清司「小伝抄」 | 原尞「私が殺した少女」 |
第103回(1990年上半期) | 泡坂妻夫「蔭桔梗」 | |
第104回(1990年下半期) | 古川薫「漂泊者のアリア」 | |
第105回(1991年上半期) | 宮城谷昌光「夏姫春秋」 | 芦原すなお「青春デンデケデケデケ」 |
第106回(1991年下半期) | 高橋義夫「狼奉行」 | 高橋克彦「緋い記憶」 |
第107回(1992年上半期) | 伊集院静「受け月」 | |
第108回(1992年下半期) | 出久根達郎「佃島ふたり書房」 | |
第109回(1993年上半期) | 高村薫「マークスの山」 | 北原亞以子「恋忘れ草」 |
第110回(1993年下半期) | 佐藤雅美「恵比寿屋喜兵衛手控え」 | 大沢在昌「新宿鮫無間人形」 |
第111回(1994年上半期) | 中村彰彦「二つの山河」 | 海老沢泰久「帰郷」 |
第112回(1994年下半期) | ||
第113回(1995年上半期) | 赤瀬川隼「白球残映」 | |
第114回(1995年下半期) | 小池真理子「恋」 | 藤原伊織「テロリストのパラソル」 |
第115回(1996年上半期) | 乃南アサ「凍える牙」 | |
第116回(1996年下半期) | 坂東眞砂子「山妣」 | |
第117回(1997年上半期) | 篠田節子「女たちのジハード」 | 浅田次郎「鉄道員(ぽっぽや)」 |
第118回(1997年下半期) | ||
第119回(1998年上半期) | 車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」 | |
第120回(1998年下半期) | 宮部みゆき「理由」 | |
第121回(1999年上半期) | 佐藤賢一「王妃の離婚」 | 桐野夏生「柔らかな頬」 |
第122回(1999年下半期) | なかにし礼「長崎ぶらぶら節」 | |
第123回(2000年上半期) | 船戸与一「虹の谷の五月」 | 金城一紀「GO」 |
第124回(2000年下半期) | 山本文緒「プラナリア」 | |
第125回(2001年上半期) | 藤田宜永「愛の領分」 | 重松清「ビタミンF」 |
第126回(2001年下半期) | 山本一力「あかね空」 | 唯川恵「肩ごしの恋人」 |
第127回(2002年上半期) | 乙川優三郎「生きる」 | |
第128回(2002年下半期) | ||
第129回(2003年上半期) | 石田衣良「4TEENフォーティーン」 | 村山由佳「星々の舟」 |
第130回(2003年下半期) | 江國香織「号泣する準備はできていた」 | 京極夏彦「後巷説百物語」 |
第131回(2004年上半期) | 奥田英朗「空中ブランコ」 | 熊谷達也「邂逅の森」 |
第132回(2004年下半期) | 角田光代「対岸の彼女」 | |
第133回(2005年上半期) | 朱川湊人「花まんま」 | |
第134回(2005年下半期) | 東野圭吾「容疑者Xの献身」 | |
第135回(2006年上半期) | 三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」 | 森絵都「風に舞いあがるビニールシート」 |
第136回(2006年下半期) | ||
第137回(2007年上半期) | 松井今朝子「吉原手引草」 | |
第138回(2007年下半期) | 桜庭一樹「私の男」 | |
第139回(2008年上半期) | 井上荒野「切羽へ」 | |
第140回(2008年下半期) | 天童荒太「悼む人」 | 山本兼一「利休にたずねよ」 |
第141回(2009年上半期) | 北村薫「鷺と雪」 | |
第142回(2009年下半期) | 佐々木譲「廃墟に乞う」 | 白石一文「ほかならぬ人へ」 |
第143回(2010年上半期) | 中島京子「小さいおうち」 | |
第144回(2010年下半期) | 木内昇「漂砂のうたう」 | 道尾秀介「月と蟹」 |
第145回(2011年上半期) | 池井戸潤「下町ロケット」 | |
第146回(2011年下半期) | 葉室麟「蜩ノ記」 | |
第147回(2012年上半期) | 辻村深月「鍵のない夢を見る」 | |
第148回(2012年下半期) | 朝井リョウ「何者」 | 安部龍太郎「等伯」 |
第149回(2013年上半期) | 桜木紫乃「ホテルローヤル」 | |
第150回(2013年下半期) | 朝井まかて「恋歌」 | 姫野カオルコ「昭和の犬」 |
第151回(2014年上半期) | 黒川博行「破門」 | |
第152回(2014年下半期) | 西加奈子「サラバ!」 | |
第153回(2015年上半期) | 東山彰良「流」 | |
第154回(2015年下半期) | 青山文平「つまをめとらば」 | |
第155回(2016年上半期) | 荻原浩「海の見える理髪店」 | |
第156回(2016年下半期) | 恩田陸「蜜蜂と遠雷」 | |
第157回(2017年上半期) | 佐藤正午「月の満ち欠け」 | |
第158回(2017年下半期) | 門井慶喜「銀河鉄道の父」 | |
第159回(2018年上半期) | 島本理生「ファーストラヴ」 | |
第160回(2018年下半期) | 真藤順丈「宝島」 | |
第161回(2019年上半期) | 大島真寿美「渦妹背山婦女庭訓魂結び」 | |
第162回(2019年下半期) | 川越宗一「熱源」 | |
第163回(2020年上半期) | 馳星周「少年と犬」 | |
第164回(2020年下半期) | 西條奈加「心淋し川」 |
う~ん、意外と少ない、、、
まだ文庫化されていない2019年以降の受賞作は当然無理としても、1980年代~1990年代の受賞作はもうちょっと読んでいるかなと思ってました。
書店や、ブックオフで本を買うときは、主として著者とタイトルを見てパッと買うので、受賞作かどうかは関係ないということもあります。
荻原浩氏の作品は過去23作品を読んでいますが、2016年の受賞作「海の見える理髪店」はまだ未読ですし、恩田陸氏の小説は18作品読んでいますが、2016年の受賞作「蜜蜂と遠雷」はまだ読んでなく、9作読んでいる篠田節子氏の小説の中に1997年の受賞作「女たちのジハード」は入っていません。
これからは、評論家や先輩同業者が良いと認めたこれらの受賞作をちょっと意識しつつ買うことにします。
【関連リンク】
746 直木賞作家の前職は?
509 本屋大賞ノミネート作品について
1498 蔵書書籍3200冊のタイトル分析
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写真は文藝春秋「本の話し」より |
著作で全68冊(上下巻を2冊というようにカウントすると)、作品数としては48作品の小説やエッセイなどがあります。
これは、蔵書の全著作者別冊数では堂々1位です。ちなみに2位は、20代30代の頃に読みまくった高杉良氏の61冊、3位は中学生の頃から読んできた五木寛之氏の55冊です。
浅田次郎氏の作家デビュー作品は、「とられてたまるか!」で、1991年のことです。
その当時は、書店で見かけても、あまりピンとくるものがなく、タイトルから単に「またヤクザ者がヤクザ小説でも書いた?」ぐらいにしか思っていませんでした。えぇ見る目がなかったのです。
そのデビューから6年後の1997年に、書店に平積みされていた文庫の「日輪の遺産」(1993年単行本刊、文庫は1997年刊)を手に取り、タイトルも、また文庫の裏の紹介文を読んでも、「これは硬派?」と気がつきすぐに購入して読んだのが最初です。
この小説は泣けるし、とにかくめちゃ面白い!と気に入って、ちょうど堤真一などが出演する映画も作られていた「地下鉄(メトロ)に乗って」(吉川英治文学新人賞)を次に買って読みました。
その当時、仕事で毎日のように東京メトロ(当時は帝都高速度交通営団)丸ノ内線に乗っていて、小説の舞台を身近に感じていたということも相まって、これまた泣かされて楽しめました。
この2冊で、著者浅田次郎氏のファンになり、あとは一気呵成に読み続けました。
すると「平成の泣かせ屋」としての浅田次郎氏だけではなく、「プリズンホテルシリーズ」や「天切り松 闇がたりシリーズ」のようなユーモア、コミカル路線や、意外と日本人は知らない複雑怪奇な中国の近代史をわかりやすく描く壮大な「蒼穹の昴シリーズ」など、小説家としての器の大きさ、筆の達者さなどますますのめり込んでいきます。
そして小説の多くは映画化やテレビドラマ化がされています。基本的には私は小説を読んでから映画を見る派です。
中でも、高倉健さん主演で代表作とも言える「鉄道員(ぽっぽや)」、新選組を近藤勇でも土方歳三でも沖田総司でもなく東北の寒村から出てきた凄まじい最強の剣士を主役にした「壬生義士伝」、時任三郎と八千草薫が見事な親子を演じたロードムービー「天国までの百マイル」など、良い原作に良い映画ありを実感しました。
すでに何冊も読んだと言う人には無用かと思いますが、私が勝手に決める「浅田次郎の歩き方」としてお勧めの小説を読む順番を考慮した上で書いておきます。()内は単行本発刊年です。
まずは「鉄道員(ぽっぽや)」(1997年 直木三十五賞)と「天国までの百マイル」(1998年)は入門編としてまずはお勧めです。いずれもそれほど長くはないので、活字苦手な人でも大丈夫です。
ストレス発散のため、パッと明るく軽めのコミカル小説を読みたいなら「プリズンホテルシリーズ」(1993年~1997年)や「オー・マイ・ガアッ!」(2001年)がお勧めです。なにも考えずにゲラゲラ笑えます。
著者はピカレスクロマン(悪漢ヒーロー小説)の小説も多く、その中でもすでにシリーズで5作品ある、「天切り松 闇がたりシリーズ」の第1作目「天切り松 闇がたり」(1996年)、第2作目「天切り松 闇がたり 残侠」(1999年)を強くお勧めしておきます。
「天切り松」とは、天=屋根を破って夜中に侵入する泥棒の松(名前)という意味で、義賊の鼠小僧的な面白さがあります。
さて、ここから中・上級者?向けとなっていきますが、浅田次郎ファンならばこれだけは読まないとダメってのが「蒼穹の昴」(1996年)、「中原の虹」(2006~2007年 吉川英治文学賞)です。
「蒼穹の昴」「中原の虹」は各々文庫で4巻ありますから、ちょっと集中して読書ができる時間と覚悟が必要です。
でも心配いりません、読み始めると面白くて、仕事をさぼってでも次々と読みたくなりますので、覚悟が必要なのは読み始める前だけのことです。
ただ、中国人の名前というのはどうも似たようなものが多く、途中で混乱したり、わからなくなってしまうことがあり、私のように通勤の電車の中だけの読書だと「これって誰だっけ?」と行ったり来たりして意外と読書スピードはあがりませんでした。
次に数は少ないですが、第二次世界大戦中が舞台の小説で、「日輪の遺産」(1993年)、「終わらざる夏」(2010年)の二つは秀逸です。
どちらも実際にいた人物が小説に登場していて、そうしたリアルの中にフィクションのミステリーやドラマを肉付けていくストーリーには定評ありです。
最後に割と数多くある幕末を含めた時代物小説での中で、これだけは読んどけ!って勝手に推薦するのは、「壬生義士伝」(2000年 柴田錬三郎賞)、「五郎治殿御始末」(2003年)、「一刀斎夢録」(2011年)、「一路」(2013年)です。
「五郎治殿御始末」は短編集で、その中の「柘榴坂の仇討」は、中井貴一と阿部寛のW主演で2014年に映画化されています。
また「一刀斎夢録」は新選組の中で「人斬りの鬼」と恐れられていた斉藤一(さいとうはじめ)が、老いてから、新選組時代、その後、新政府の警察隊として戦った西南戦争の頃の話しを語っていくという内容です。
エッセイ集や他の短編集にも面白いものが多くありますが、やはり浅田次郎氏の一番の魅力は長編小説で、ぐいぐいと読者をその物語の中に引き込んでいき共感を得ていくようなストーリーです。
ここ数年は、1年に長編1作品ペースで出版されていますが、2~3年遅れて文庫本が出てくるまで待ちつつ、これからも愛読していきます。
◇著者別読書感想(浅田次郎)
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生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書) 小熊英二
大戦末期、19歳で徴兵され満州に渡り、その後すぐに敗戦でシベリアに抑留され、終戦から3年後に帰国がかなった父親の半生を、著者(社会学者)がインタビューしてまとめた新書で、2015年に発刊されています。
あとがきにも書かれていますが、この作品の特徴は、
1)戦争前、戦争中、入営、敗戦後、帰国後の10代から80代までの長期的な精緻な記録
2)士官など幹部が自分を飾り自慢げに話す内容ではなく最下層に近い一兵卒の実話
で、幼いときに母親を亡くし、小学生時代に地方の貧困家庭から、祖父母が住む東京の家に出され旧制中学の早稲田実業へ進みますが戦況が悪化し早期卒業、軍需企業の富士通信機(現富士通)へ就職するも、19歳で徴兵され満州の関東軍へ配属されます。
様々な運にも恵まれて、シベリア抑留から3年後に帰国することができますが、本書に書かれている、ドイツ軍が捕虜にしたソ連軍兵士の死亡率は6割、逆にソ連軍に捕虜にされたドイツ軍兵士の死亡率は3割、日本軍の捕虜になった英米軍捕虜の死亡率は27%という中で、ソ連軍の捕虜となった(抑留された)日本軍兵士の死亡率は10%(64万人中約6万人が死亡)という客観的な数字には驚きました。
ここでは触れられていませんが、日本軍に捕虜にされた中国人(兵)の死亡率を想像すると背筋が凍る思いです。
著者の父親も、なにかにつけて新兵イジメやストレス発散のために部下を殴るのが常態化していた日本軍に比べ、ソ連兵に殴られたのは、野菜を盗んで収容所に持ち帰ろうとして見つかったときの1回だけで、シベリア抑留はつらいが「日本軍よりソ連軍のほうがずっとマシ」という感想を述べています。
そのように、よくあるやたらと美化した戦争体験談ではなく、病気になっても肉体労働を免除されず、極限状態で厳しい環境に置かれた下層兵士たちが、帰国後には将校のように軍人恩給が支給されることもなく、共産主義思想に染まって帰って来たと噂され、仕事探しにも苦労します。
そして戦争責任があるはずの戦犯たちが、その後臆面もなく政治家になり、再軍備を進めていく日本に憂いを持ちつつ、家族のため、生きるため、戦友のために必死に働き、活動していく姿にはうたれます。
ちょっと新書としては長い(380ページ)ですが、良心を持った日本人なら読んで損はないノンフィクションだと思います。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
震源 (講談社文庫) 真保裕一
1993年に単行本、1996年に文庫化された28年前のやや古い作品で、3.11の前に書かれた火山や津波、地震など気象や海底火山などに関係した陰謀渦巻くミステリー小説です。
著者の作品は好きで、硬軟まじえて過去に結構読んでいます。
◆著者別読書感想(真保裕一)
「天魔ゆく空」「覇王の番人」など歴史小説も好きですが、この作品のようないわゆる「公務員(小役人)シリーズ」も好きです。
小役人ってなにかバカにしたような言い方に思えて好きではないので、私の中では公務員シリーズです。
タイトルと、主人公が気象庁職員といので、こりゃ石黒耀著「死都日本」や高嶋哲夫著「M8 エムエイト」のような地震か火山関連の小説だろうと読み始めましたが、裏切られました。
気象台の仕事は表にあまり出てこないのでよく知りませんでしたが、途切れることがない24時間365日の観測とシミュレーションなどを通じて、マスコミへの対応や大学など学術界との連携など、地味な仕事が日々連綿と続けられています。
その気象庁福岡気象台に勤務する主人公が、先輩が起こしたミスに自分が関わっていることを悩みますが、その後、その先輩は左遷先で誰にも理由を告げずに退職、疑念をもった主人公が調べて行くとやがて国際的な陰謀に巻き込まれていくというストーリーです。
そう言えば、「ホワイトアウト」では、いち公務員が、ひとりで巨大ダムを人質にしたテロリスト集団と対決しましたが、こちらも同様に海上保安庁や内閣情報調査室、外人スパイなどを相手に立ち回る公務員ハードボイルドと言っても良さそうです。
文庫で630ページという長編ですが、サクサク面白く読めました。
★★☆
◇著者別読書感想(真保裕一)
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もらい泣き (集英社文庫) 冲方丁
2012年に単行本、2015年に文庫化されたショートショート的なエッセイというか自分で集めたり経験した泣ける話集です。
元々は「小説すばる」で2009年から2011年にかけて連載していた30数回分をまとめたものです。
んー、、でも、どれも個人的には泣け話しではなく、様々な人の不思議?な経験談を小説家のテクニックを使って架空の話しっぽくうまくまとめた?という感じです。実話が元にはあるのでしょうけど。
最初は「怒り」をテーマに書こうと思ったそうですが、「怒り」は単純すぎて連載していくのは難しいと判断し、「泣ける話」に落ち着いたそうな。
そこで周囲の仕事する人や知り合いなどに「泣ける話」を聞いて回って、個人が特定できないよう、性別を変えたり、仕事を変えたりして文章にしたものです。
唯一楽しめたのは「爆弾発言」で登場してきた話しで、空気をまるで読まない爆弾発言をして空気をすっかり入れ換えてしまう人の話し。その爆弾発言女が最後に著者の妻だというのには泣くどころか笑ってしまいました。
やっぱり著者の作品は、「天地明察」や「光圀伝」のような歴史長編小説が好きです。
★☆☆
◇著者別読書感想(冲方丁)
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時砂の王 (ハヤカワ文庫JA) 小川一水
著者の作品を読むのは今回が初めてですが、SF小説を得意とする作家さんで2020年には「天冥の標シリーズ」で日本SF大賞、星雲賞日本長編部門を受賞されています。この「時砂の王」は2007年に出版されています。
SF小説で、地球や人類を救うため、未来の人類から、地球にETが来襲する前に、撃退する備え訴えるために人造人間メッセンジャーを過去に送り込みます。シュワちゃんの映画「ターミネーターシリーズ」みたいな感じですかね?
その人造メッセンジャーが送り込まれる時代がまだ人類が出現したばかりの紀元前だったり、卑弥呼が邪馬台国を支配する時代だったり、第二次大戦の頃だったり様々で、ちょっと混乱しがちです。
しかも、歴史を変えると、その将来も変わってしまうので、なおややこしい限り。パラドクスですね。
正史では敵対していた1940年代のドイツ軍とソ連軍が協力してETとの戦争をしていたり、大日本帝国とフランス軍がやはり協力してETを迎え撃っています。
しかし未来の戦争ではこうした人造人間、非人類同士の戦いがメインになるのだろうなと思わずにいられません。
そりゃそうです、機械ロボットであれば、設備と材料さえあればいくらでも製造できるし、食料や酸素も必要としません。なんらかの動力が補充でき、ある程度の故障の自己修復が可能であれば、完全に破壊されない限り何万年でも活動できます。
痛みや恐怖心もなく、気圧や重力で失神したりもしません。AIが発達すれば、自分で考えて冷静に自立行動や仲間との連携活動も可能です。
それを考えると、なんと人類というのはもろくて弱い存在なのかって哲学的に考えてしまったり。
あまりSFは読まないのですが、時々読むと、なかなか優れた作品も多そうです。
★★☆
【関連リンク】
7月前半の読書 宇宙を読む、夏の情婦、永遠の出口、無人島に生きる十六人、MISSING
6月後半の読書 騙し絵の檻、思い出袋、パンク侍、斬られて候、黄砂の籠城(上)(下)
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カラー版 宇宙を読む (中公新書) 谷口義明
2006年発刊の科学・技術分野の新書です。著者は東北大学理学部天文学科卒の専門家で他にも著書がいくつかあります。
天文学や星座にはあまり興味はないのですが、それでも冬の透き通った夜空に明るく拡がるオリオン座などを見ていると、諸行無常を感じたりする普通の感性を持っています。
新書では珍しく「カラー版」として、カラー写真を使って現代の技術で捕らえられた様々な星や銀河など、わかりやすく解説してくれています。
わかりやすく、と書きましたが、実は1/3ぐらいは私には理解不能でした。
というのも、天文学で使われる言葉(用語)は一種独特で、馴染みがなく、すぐにどこかへ飛んで行ってしまって覚えられません。年齢のせいもあるでしょうけど、、、
特に星やガス雲に存在している分子ガスやら、星から発せられる電磁波の波長についてどういう特性があって天文とどういう関係があるとか書かれてもちんぷんかんぷんです。
あとは、銀河の大きさ(天の川銀河の直径は10万光年)や、ひとつの銀河に含まれる星の数(天の川の場合、太陽のような恒星だけで2000億個以上)、太陽以外の恒星と地球との距離(一番近い恒星で4.3光年≒40兆km)とか、想像を遙かに超えて何千億個とか何百光年とかの値が次々と出てきて、なにかと比較できるようなものはなく(富士山の高さは東京タワー11個分とか)、イメージが作れません。
例えば太陽の寿命はおよそ100億年で、すでに46億年が経っているので、残りは50数億年で、その後は寿命が尽きて地球を含め惑星も終わると書かれていて、「そっか50億年後に地球はなくなるんだー」と、なにか焦燥感に襲われたり、「当たり前だけど何事にも終わりがあるのだなぁ」と哲学的になったり忙しいです。
でも、これは面白いです、お薦めです。知っておいてすぐ役に立つものではありませんが、大人の教養としてなかなかキラッと光るものがありそうです。星だけに。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
夏の情婦 (集英社文庫) 佐藤正午
過去に著者の作品を読んだと思ってましたが、調べると読むのはこれが初めてでした。本屋さんの棚でよく見かける名前でしたので、読んだことがあるとばかり思ってました。
そう言えば、著者の原作を元にした、1987年公開の映画「永遠の1/2」を見たことがあります。その時の記憶があったのかも知れません。
著者は私よりも二つ上のほぼ同年代の方で、「月の満ち欠け」で2017年の直木賞を受賞されています。
この作品は、「二十歳」「夏の情婦」「片恋」「傘を探す」「恋人」の5篇の短編集です。
どれも魅力的でしたが、特に「傘を探す」は予定調和的なコミカルな面があり、面白く読めました。
著者の出身地、佐世保が舞台と思われるものが多く、また大学を中退してアルバイトで生活していたりと著者自身の経験や思いを反映した作品となっています。
それにしてもどの短編の主人公も少しワルで女にもてて、「恋人」ではいかようにでもコントロールできる精力絶倫でという著者自身を反映しているとしたら羨ましい限りですが、小説ですから当然脚色はオーバー目ということなのでしょう。
著者としては1988年単行本、1993年文庫版という割と初期の作品で、変に手馴れたところはなく、一生懸命にマジメに書きました~ってところが見られる文章でした。
★★☆
◇著者別読書感想(佐藤正午)
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永遠の出口 (集英社文庫(日本)) 森絵都
著者の作品は以前「カラフル」(1998年)を読んでいます。2003年単行本、2006年文庫版発刊のこの作品は、小学3年生から高校を卒業するところまでの少女の青春物語?で、ちょっと還暦過ぎたおっさんが読むには無理がありました。
絵本作家としても活躍する著者ですから、子供の揺れ動く心理描写や淡い恋愛などはお手のものという感じですが、いったいこれはどういう人(読者層)向けに書いた小説なんだろう?とちょっと不思議に思いました。
甘酸っぱい自分の子供時代を思い浮かべてこの小説の主人公に感情移入しながら読むとしたら、20代~30代の女性かなぁと思いますが、現在50歳を超えている著者の子供時代を思い浮かべて描いていそうなので、当然携帯やスマホなんてものはないし、20代の人にはなかなか想像し難そうな青春時代です。
とすると、著者と同年代付近の女性向けなのか、う~む、よくわかりません。
タイトルは、「永遠に・・」という言葉に弱い妹が、姉からいつもからかうように「もう永遠に見られないからね」とか「永遠に食べられないから」と言われて悲しい思いをしていた子供時代から、永遠に残り続けるものはなにもないことを悟り、それでも永遠に憧れていくというファンタジー?かと思ってしまうような内容です。
主人公が高校3年生の時に、学園祭で天体ショーのガイドを務めることになり、基本的な天文の知識を学習していた時、「太陽系は50億年前にできて、50億年後には滅びる」ことを知ります。
ちょうど私も先日「宇宙を読む」を読み、同じことを知り、軽い衝撃を受けたばかりなので、なんとなく主人公がそのことで「永遠なんてないんだ」と悟ってしまうことは理解できます。
エピローグでは、高校卒業後の人生に少し触れていますが、結局はなにを言いたかった?というのはオジサンには最後までわからずじまいでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(森絵都)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
無人島に生きる十六人 (新潮文庫) 須川邦彦
最初に言っておきます。「これは凄い本を見つけた!」です。
著者の須川氏は、明治13年生まれ、商船学校を出て日露戦争、第一次世界大戦にも出征し、その後は東京高等商船学校など教育関係に従事されていた方です。
ここで書かれている話しは小説ではなく、直接遭難した関係者から話しを聞いて文章で起こした海洋ノンフィクションです。
無人島ものの小説や映画は数多くありますが、そのほとんどがフィクションやファンタジーもので、実際にそんなことはないだろうって思いますが、こうした(無人島で長期間生活後に生還)ことってあるのだなぁって感激しました。
過去に見た無人島映画の中で、特に印象に残っているのがトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」です。これはお勧めです。
個人的には夢とロマンあふれる無人島生活ものの小説や映画が大好きですが、実際の無人島生活の記録としては貴重で、しかも悲惨さはなく、希望を持って統制の取れた生活をおくり、日本人として誇らしく思える内容でした。
過去に無人島をテーマにした記事を書いています。こちらは夢やロマンではなく、実経済面での利用法提案ですけど。
無人島をもっと活用できないか? 2020/3/18(水)
さて、この本について、簡単に紹介しておくと、1941年に少年倶楽部に連載され、その後何度か書籍化されていますが、最新のものは今回手に取った2003年に発行された新潮文庫です。
今から120年前、明治32年(1899年)に海洋漁業調査中の民間の帆船龍睡丸がミッドウェー近海で座礁、沈没してしまい、近くの珊瑚礁でできた小島に乗船員全員が上陸、船から持ち出せたのはわずかな食糧と備品類だけです。
小島は細長い約4000坪(正方形なら一辺115m四方ぐらいの広さ、サッカーグラウンド2面分ぐらい)で海抜は高い場所でも4mぐらい、土地は平らで木も生えていない無人島です。
水がないと生きられないのでまず井戸を掘りますが、塩気たっぷりの水しか出ず、あとは雨を帆布で受けて集めるしかなく一番苦心します。食料は、正覚坊(青ウミガメ)や、針金で釣った魚です。
そうした中で、船長を中心にして全員が規律を守り、役割を決め、24時間見張り番を立て、様々な工夫を凝らしながら、ひたすら救助を待ちます。
と言った内容ですが、無人島生活のノウハウが満載で、実際に経験した人でないとわからないことばかりです。
さて、そのような極限状態の中で、メンバーは生き残り、無事日本に帰ってこられるのか!?って、ハッピーエンドで終わりますから安心してください。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
MISSING (角川文庫) 本多孝好
「眠りの海」「祈灯」「蝉の証」「瑠璃」「彼の棲む場所」の5編からなる短編小説集で、1999年に単行本、2001年に文庫が発刊されています。
著者の作品は、過去に「チェーン・ポイズン」(2008年刊)、「FINE DAYS」(2003年刊)「MOMENT」(2002年刊)の3冊を読んでいます。
正直言うと、あまり印象に残りにくい淡々とした文章と内容で、昨年に読んだばかりの「チェーン・ポイズン」は別として、他の2作品のことはまったく覚えていません。
人の生き様、死に様やちょっとホラー?なところもあり、そうした刺激的な話しにはまると、それなりに楽しめそうですが、自殺であれ、病気であれ、交通事故であれ、話しの中で人がすぐ死んでばかりいる小説は個人的に好きではなく、この短編もそのひとつになります。
それはともかく、著者は今は天命を知る年齢ですが、この短編集が書かれたのは20代という若さで、まだ死というものははるか遠くにあり、身近ではないことから安易に扱えるのだろうと想像しますが、あと20年もすれば変わってくるかも知れません。
ただ、最近、脂がのっている頃かと思いきや、2019年以降は新刊がないようで、ちょっと心配しています。
著者別読書感想INDEX(本多孝好)
★☆☆
【関連リンク】
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