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夏の庭―The Friends (新潮文庫) 湯本香樹実(かずみ)

この本は著者のデビュー作で1992年(文庫は1994年)に発刊され、1994年には相米慎二監督、三國連太郎などの出演で映画(夏の庭-The Friends-)も制作されています。

小学3年生の男の子3人が、死んだ人をみてみたいという興味本位で、今にも死にそうだと噂されている1人住まいの老人を家の外から観察するところから始まります。

そうした少年達が主人公の流れから、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」みたいなものかなって思いながら読み進めました。また重松清氏の小説にもこうした小学生が主人公の冒険譚もよくありますね。

やがて少年達と老人とがうち解けることができ、一緒に庭の草むしりをして花を植えたり、壊れた家を修復したりしつつ心から理解し合える関係となっていきます。そして老人から様々な話しを聞くことになります。

老人が婚約者を置いて太平洋戦争へ出征したこと。南方の島で飢餓に苦しめられる中、逃げ出した住民を殺してしまったこと。そのことを引きずり帰国してからもその婚約者の元には帰れなかったこと、など。

なるほど、児童文学でもあり、翻訳されて世界十数カ国で出版されたという作品らしく、なかなか情緒あるいい作品に仕上がっています。映画ではストーリーが原作とだいぶんと違っているようです。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

マリアビートル (角川文庫) 伊坂幸太郎

この小説は2007年に文庫化されすぐに読んだけど、なにがなんだかよくわからなかった小説「グラスホッパー」(2004年)の続編で、2010年に単行本、2013年に文庫化されています。

さすがに8年前に読んだ記憶は老化という以上に後から後から上書きされてきて消耗が激しくほとんど覚えてきませんが、鯨や蝉などあだ名を持つ変わった殺し屋などが出てくる突拍子もないストーリーで、著者の「陽気なギャングが地球を回す」や「死神の精度」などと同様、妙にクセになりそうな予感はありました。

今年(2015年)の秋にはその前作「グラスホッパー」の映画(出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介など)が公開されるそうで、それがうまくいくとこの続編「マリアビートル」もいずれ制作されるのでしょう。

こちらの内容は、東京駅を出て盛岡へ向かう東北新幹線の中で、誘拐から人質を助け出して連れ戻す途中の殺し屋や、その殺し屋から身代金の入ったトランクを盗もうとするいつも不運でツキがない殺し屋、自分の息子に重傷を負わせた少年をつけ狙うアル中の元殺し屋など様々な目的をもった人達が繰り広げるコメディタッチのやや含まれるミステリー小説仕立てとなっています。

新幹線の車内という密室の中で、次々と殺人が起きたり、殺し屋同士がにらみ合ったりと、ま、現実にはありえねぇ息が詰まりそうな展開が延々と続きます。しかし最後の最後で登場する引退した伝説の殺し屋なんていうのが物語をびしっと引き締めてくれます。

タイトルが初めて目にする単語だったのでなにかと不思議でしたが、主人公でもある男の名前七尾から連想して天道虫と呼ばれるツキのない殺し屋と、そのテントウムシの中でもナナホシテントウムシが英語圏では聖母マリアを連想させるとして「Ladybird」「LadyBeetle」と呼ばれているそうで、それからの引用だと思われます。

著者別読書感想(伊坂幸太郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫) 樋口毅宏

この作品は著者のデビュー作で、2009年単行本、2012年に文庫化されています。前から読みたいと思っていましたが、今回ようやく2010年刊の「民宿雪国」と合わせて買ってきました。

東京都内で長く働いていますが、この小説の舞台である雑司ヶ谷(ぞうしがや)付近には行ったことがなく、どこなんだろう?ってずっと思ってましたが、なんとなく地名が下町っぽい雰囲気なので、小説の内容も劇団ひとり著「陰日向に咲く 」的な内容をイメージしていましたが、大きく裏切られることに。

ちなみに雑司ヶ谷は東京都豊島区にあり、池袋の近く、ジョン万次郎や小泉八雲、夏目漱石、永井荷風など多くの有名人の墓がある雑司ヶ谷霊園や、法明寺鬼子母神堂などが有名なところだそうです。

内容は戦前から雑司ヶ谷地域を牛耳っている新興宗教の教祖の孫が主人公です。中国へ人身売買された子供を捜しに行き、そのまま5年間生死不明だった主人公が生まれ故郷の雑司ヶ谷に戻ってきます。

そしてそこで起きる縄張り争いや、教祖から命令された事故の捜査など、しっちゃかめっちゃかな展開となっていきます。途中でアホらしくなって投げ出しそうになりましたが、グッとこらえて最後まで読みました。

ま、こういうのもアリなんでしょうけど、雑司ヶ谷で素朴に暮らしている住人にとってはえらい迷惑な話しでしょう。

著者別読書感想(樋口毅宏)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ドミノ (角川文庫) 恩田陸

2001年単行本、2004年文庫化されたミステリー小説です。著者の作品は数えたところ過去16作品を読んでいますが、多作な作家さん故、まだまだ未読の作品が多く楽しみにしています。

ここ5回ほど直木賞にノミネートされながら惜しいところで逃していますが、もう時間の問題でしょう。こうした多作の作家さんが大きな賞をとると、書店は大規模な受賞記念フェアを開いて過去の作品も大々的に売れるので喜ばれそうです。

この作品は、東京駅を舞台にして、様々な目的で集まってきた縁もゆかりもない人達が、ドミノ現象のように一気に動き出して崩れ落ちることで、双方向に関わってしまうという、上の「マリアビートル」にも少し似た展開のミステリー小説です。

登場人物は、東京駅前にあり契約目標達成に焦っている生命保険会社の人達や、趣味の俳句で集まった定年退職した元刑事達、手製爆弾を仕掛けようとする過激派、付き合っている女性と別れようと画策している青年実業家、子供タレントのオーディション帰りの親子、元暴走族で今はピザの配達屋をやっているヤンキー、東京を舞台にした映画を作ろうと東京ステーションホテルに宿泊中のアメリカ人監督、大学のミステリー研究サークルの面々など同時進行で多くの主役達がドタバタ劇を繰り広げることになります。

そうした、元々は関係しない人達が、偶然という必然?で、東京駅の魔力に吸い寄せられ、そして大きな事件が勃発します。

最後のクライマックスは、それまでの仕掛けがワクワクさせられるものだった割に、アッサリとしたもので、ちょっとガクッときましたが、なかなかお気楽に楽しめる小説です。

私は通勤電車の中の短い時間で細切れで読み進めましたが、場面や主人公が次々と変わるだけに、落ち着いた場所で、一気に読み進めるほうがいい小説だと思います。

著者別読書感想(恩田陸)


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 2月後半の読書 和菓子のアン、リフレはヤバい、屍者の帝国、三匹のオッサン
 2月前半の読書 赤猫異聞、殺人鬼フジコの衝動、モップガール、 「意識高い系」という病
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901
和菓子のアン (光文社文庫) 坂木 司

著者の作品はデビュー作「青空の卵」(2002年)や「ワーキング・ホリデー」(2007年)を読みました。いずれも面白かったので、この作品にも大きな期待を込めて読みました。

この作品は2010年単行本、2012年に文庫化された連作短編小説で、「和菓子のアン」「一年に一度のデート」「萩と牡丹」「甘露家」「辻占の行方」の5編が収められています。

すぐにでもテレビドラマ化できそうな内容で、太めでパッとしない高卒したばかりの若い女の子がデパ地下の和菓子屋さんでアルバイトを始め、そこで店長や同僚からいろいろな和菓子のうんちくや成り立ちを教えられ、また様々な客との接客を通じて成長していく姿を描いています。

タイトルは2014年のNHK連続ドラマの「花子とアン」からではなく、和菓子といえばアンコで、そこから同僚に付けられたニックネームということです。

真保裕一、新野剛志、荻原浩、柴崎友香、三浦しをん、有川浩の各氏などがよく描くいわゆる「お仕事小説」のひとつとも言えますが、ごく身近なところにある和菓子店という点に興味が惹かれます。

例えば「洋菓子はあんなに華やかなのに和菓子はなぜ地味なのか」、「同じものでも季節や場所によって名前が変わる」、「新暦と旧暦双方に必要な季節菓子」、「温度や湿度管理が必要な和菓子」など役に立つネタも豊富です。

最後の解説にくどく書かれている通り「これまで洋菓子派だった人も必ずや、地味だけど滋味掬すべき味わいがある和菓子の魅力に開眼すること確実。美味しくってためになる、本書は多幸感に満ちた物語」だと思います。

あー水無月と桜もち(道明寺タイプの)食いてー!

著者別読書感想(坂木司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

リフレはヤバい (ディスカヴァー携書) 小幡績

2013年1月刊ですので2年前の新書と言うことになります。負け惜しみで言うと、こうした本は発刊から少し経ってから読む方が、その内容に信憑性があるのかどうかがリアルにわかったりするのでいいかも知れません。

著者は東大を首席で卒業し大蔵省、その後アメリカへ留学という超のつくエリートさんで、負け惜しみで言うとハッキリ言って大嫌いなタイプです。

好き嫌いはともかく、発刊当時にはこの本は騒がれました。

たいして偏差値が高くないお金持ちの坊ちゃま専用の私立大学卒で、アメリカへの大学留学も1年で中退して帰ってきた安倍総理が選挙で大勝ちし旗を振る人気沸騰中のアベノミクス政策の根幹を揺さぶる内容が、東大→大蔵省→ハーバード大の超のつくエリートさんが書いたものですから。

今回アベノミクスが目指しているリフレ政策というのは

(1)インフレターゲットを作り
(2)マネーの大量供給をおこない
(3)「インフレ上昇期待」を働きかけ
(4)日銀法改正をおこなう

というものですが、著者は「日本の経済に必要なのは構造改革である」「財政政策・金融政策で解決するものではない」というのが主張で、リフレ政策について様々な問題点と批判が書かれています。

特に最近は円安が進んだことで、トヨタやホンダ、パナソニックなど大手製造業(海外輸出がメインでドルで商売している事業)が大儲けをしていて景気がいい話しがよく出てきますが、まさにその問題点についても書かれていて、また株価上昇では経済がよくならない理由についても書かれています。

例えばインフレになっても賃金が上がらないというのは、上記のような大企業以外の9割以上の人が勤める中小零細企業の内情は厳しく、まさに昨年2014年は物価上昇を考慮した実質賃金では前年比2.5%減というリーマンショック後の2009年に匹敵する酷い状態です。

政府や政治家が言う賃金上昇も大企業や公務員に限定されていて、その他の多くはますます貧乏になっていっています。

逆に円高でこそ国富が増大し、ドル思考で戦略を考えるべきと、もっともな話しが続きます。

まだ鈍い私の頭の中ではちゃんと整理できていませんが、いちいちもっともな話しで、経済や外国為替等に明るくなくても、説得力あるわかりやすい内容で、2年前に大きなショックを与えたことがわかります。

しかし今ではこの本の主張がすっかり忘れられてしまった感があるのは残念というか、日本人の楽観的忘却思考がまた発揮されているのかなと思ってみたり。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

屍者の帝国 伊藤計劃×円城塔

2007年に「虐殺器官」でデビューし、その後「ハーモニー」発表直後の2009年に34歳で亡くなった伊藤計劃が、次作として書き残したプロローグを元に、よきライバルでもあり作家デビュー同期生の円城塔が本編を書き起こした作品で2014年7月(文庫版は11月)に発刊されました。

ちょっとややこしそうな設定ですが、読み始めるともう止まりません。多少は世界の名作シリーズの知識がないとその面白さが一部失われてしまうのかもしれませんが、気にしないで読むことも可能です。ただしグロが苦手な人は読むのがつらいかも知れません。

ネタバレも甚だしいですが、おおまかなあらすじを書いておきます。あらすじを知っているからと言っても、この本の楽しみが少しでも奪われるなんてことは絶対にないのでご安心ください。

時は19世紀終盤、英国の若き医師ジョン・ワトソン(アーサー・コナン・ドイル著の「シャーロック・ホームズ」の相棒)は政府の秘密機関(表向きはユニバーサル貿易で責任者はMというからイアン・フレミング著の「007ジェームズボンド」の世界です)に呼び出されます。

ヴィクター・フランケンシュタインにより実用化された死者を電気で蘇らせる技術、つまり死体をフランケンシュタイン化(メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン 」)することに成功し、世界はその「生きる屍者」を増産することで、単純労働や兵隊など使役として使うようになっています。

当時は大英帝国と帝政ロシアで世界の覇権を争っていた時代で、その代理戦争としてアフガニスタンで戦争(1878年~1881年)が起きています。

その英国が統治しているインドの隣国アフガニスタンで、生者と変わりない動きをする新種の屍者がいるらしいと言うことで、ブラム・ストーカー著の「吸血鬼ドラキュラ」で吸血鬼ハンターとして登場するヴァン・ヘルシング教授から教えも受けたワトソンが密命を帯びて派遣されます。

インドではリットン伯爵(実在したインドの総督)の庇護をうけ、元アメリカ大統領で、退任後は民間軍事企業ピンカートン社にいるユリシーズ・グラント(これも実在)や、レット・バトラー(マーガレット・ミッチェル著の「風と共に去りぬ」)やミス・ハダリー(ヴィリエ・ド・リラダン著の「未来のイヴ」)らと接触、屍者製造の基礎研究資料が流出したロシア帝国の技術者などとともに、新型屍者の製造がおこなわれているアフガニスタンの奥地へ向かいます。

そこで新種の屍者の帝国を作っていたアレクセイ・カラマーゾフ(ドストエフスキー著の「カラマーゾフの兄弟」の三男)が、シベリア流刑から救い出した兄のドミートリイ・カラマーゾフを屍者として生き返らせて一緒に住んでいます。そしてワトソンを待っていたと言い、知っているすべての話しをして、その後屍者化する霊素導入を自分におこない自殺します。

天才科学者ヴィクター・フランケンシュタインが生み出した最初の屍者「The One」と呼ばれる最初に作られたフランケンシュタインと屍者を作るにあたって重要なことが書かれている「ヴィクターの手記」が日本に渡ったという情報を得て、鎖国を解いて間もない明治時代の日本へワトソンらが向かいます。

グラントなどは富国強兵に力を入れている日本で、「The One」をおびき寄せるため、明治天皇とグラントとの会見(1879年に実際におこなわれている)の場を作るが失敗。その責任を英国になすりつけようとレット・バトラー、ハダリーのコンビがワトソンを罠にかけます。

罠を見破り切り抜けたワトソンはレット・バトラーが所属しているピンカートン社の船に同乗し、アメリカプロヴィデンスへ渡り、いよいよ「The One」と対決します。The Oneは自らを「種の起源」で有名なチャールズ・ダーウィン名乗ります。密かに後を付けてきていたルナ協会の手で「The One」捕獲に成功、英国に戻るため、ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」に登場するノーチラス号が登場。

ふぅ疲れた。そしていよいよクライマックスへ突入していきます。あとは読んでね。

しかし円城塔氏もとんでもない壮大な小説をよく引き継いで書いたものだと感心します。故人もきっと多少は戸惑いつつも喜んでいることでしょう。

著者別読書感想(伊藤計劃)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

三匹のおっさん (文春文庫) 有川浩

2009年に単行本、2012年に文春文庫と2015年に新潮文庫で発刊されています。

すでに第2弾の「三匹のおっさん ふたたび」も発刊され、昨年2014年には北大路欣也や泉谷しげる出演でテレビドラマ化もされていました。

連作短編形式で書かれているので、テレビの連続ドラマには最適っぽい感じです。

要はこれ、団塊世代の多くが還暦を迎えた今から6年ほど前に、その団塊世代のリタイア後にスポットを充てた団塊世代ウケする還暦ヒーロー物ですね。

と思っていたら、団塊ヒーローの孫や子供の恋愛などもうまく折り込み、青春熱中ど真ん中ドラマもうまく混ざっているので、若い人が読んでも十分に楽しめそうな内容です。

そうでないとどうしても重松清氏の団塊ヒーロー小説っぽく「昔はよかった」「今でも俺たちは元気だぞ」的なやや暗めの話しで終わってしまいますからね。

内容はサラリーマンを60歳定年で引退したり、飲食店の経営を息子に譲り渡したりして暇ができた昔の悪ガキ仲間3人が、夜回りをしたり、困った人を助けたりすると言うストーリーで、それに妻や孫、娘などが関わってくるという勧善懲悪物語です。

特にこれといった特徴はありませんが、暇つぶしにはちょうどいいライトな連作短編形式の小説です。若い人にとかく邪魔者扱いされる中高年者の気持ちや感覚を少しでも知ってもらえるといいですね。

著者別読書感想(有川浩)


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赤猫異聞 (新潮文庫) 浅田次郎

単行本は2012年、文庫版が2014年12月に発刊されました。文庫が出るとなにも考えずすぐ買ってしまう浅田次郎氏の長編時代劇です。

赤猫とは元々は「赤猫を這わす」ということから火付けや放火を意味する江戸時代からある隠語のようですが、それが転じて火事を意味することも多いようです。

ちょうど10年前、2005年に読んだ重松清著「疾走」の中では、主人公の兄の放火犯を「赤犬」と呼び、その家族を村八分にする土地の話しが書かれていたのを思い出しましたが、地域によって猫だったり犬だったりするのでしょう。

昔から「喧嘩と火事は江戸の華」と言われるぐらいに、江戸ではしばしば大きな火事に見舞われています。

そして、今で言う刑務所、江戸時代は牢屋敷と呼ばれていましたが、そこに閉じこめられていた罪人も、その大火が近くまで迫ってきた時には、一時的に解き放ちがおこなわれることがあります。

物語の時代は慶応から明治に変わり、その元年の暮れも押し詰まった頃、ちょうど江戸の牢屋敷で不可解な斬首の刑が実行されようとしていた時に、半鐘が鳴り響きます。火事が起き火が迫ってきたことから、牢につながれていた罪人達の解き放ちが実行されます。

その中でも重罪人と言われているのが「客分で招かれていた地場の親分に裏切られ、賭場の全責任をかぶらされた信州無宿繁松」、「旗本の次男で新政府の役人相手に夜な夜な辻斬りをしていた岩瀬七之丞」、「悪党の与力にうまく利用された末に捨てられた夜鷹の元締めで江戸三美人の白魚のお仙」の3人です。

解き放ちの際にこの重罪の3人だけは後々面倒だから大火事のどさくさに紛れて切って捨てようとした同心仲間を信義にもとると説得し、「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者は死罪、三人とも戻れば全員が無罪、全員が戻らなければ牢屋の鍵役同心が切腹」という妙な条件を付けて解き放されることに決まります。

そして、時代は平和な明治に飛んで、その三人や番人から解き放ち後に起きた不思議な出来事を伝聞として書き残すため、役人が聴き取りに回るというストーリーです。

こういうストーリーは黒澤映画にもなった芥川龍之介の「藪の中」で使われたものと同様の流れですが、最後に「種明かし」と「浅田流泣かせ処」が用意万端整えられています。

とっても面白かったです。おそらく「壬生義士伝」同様、そのうち映画化が企画されるのではと思います。

著者別読書感想(浅田次郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫) 真梨幸子

2008年に単行本、2011年に文庫化された大ヒットしたミステリー小説です。最初はタイトルから受ける印象は、山田宗樹著の「嫌われ松子の一生」みたいな話しかなぁと思っていましたが、読んでいる途中には百田尚樹著の「モンスター」にも似ているか?と感じたり、過去に読んだいろんな作品が頭の中をよぎります。

ネットではこの小説の仕掛けについて喧喧囂囂と議論や感想が述べられていますが、私も最後まで読んだ後、ちゃんと内容が理解できていませんでした。

ネットでのネタ晴らしを読んで「あーそうなのか」ってわかったぐらいです。頭がよくて勘のいい人ばかりじゃないのだから、そんなにややこしい仕掛けにしなくてもいいのになっていう感想です。

最初からどうも凝りすぎていて途中でどうなっているのかスッキリしないまま読み進めていくことになりますが、こうした最後まで読んだあと、再び最初の話しを読み返して考えないと気がつかないというマニアックな内容がいいと言う人がいるのでしょうかね。

内容はとにかく、自分の都合で簡単に人を殺して、証拠隠滅のため解体したり、子供を虐待して死なせたりと、やたらと殺しやいじめのシーンが平板に出てくる後味の悪い小説です。

ま、ミステリー小説の中で殺人が起きるのは半ば常識ですが、それにしてもちょっとやり過ぎの感があって、あまりにも非現実的なホラー色、カルト色満載で、どこか未知の世界の出来事って感じですが、そういうのがたまらなく好きっていうマニアがいても、小説の世界ならば別に不思議ではありません。私個人的にはもういいですけれど。

著者別読書感想(真梨幸子)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

モップガール (小学館文庫) 加藤実秋

2007年に単行本、2009年に文庫化された小説で、その後シリーズ化され2012年には続編の「モップガール2 事件現場掃除人」が発刊されています。

また2007年には小説と設定が少し違っているようですが、北川景子主演でテレビドラマ化もされています(見たことありません)。

元々はテレビドラマ化をする目的で書かれたということで、登場人物、ストーリーともわかりやすくというか単純に描かれています。

内容はアルバイト募集の広告を見て、清掃会社で働くことになった主人公の若い女性は、仕事をしてみてビックリ、事件や事故の生々しい現場の後を掃除するいわゆる特殊清掃もおこなっている会社です。

次々人が殺される「殺人鬼フジコの衝動」のあとにまた生々しい殺人現場の小説かい!って思わなくもないですが、たまたま山積みにされた中から手に取ったのがそれというだけで、他意はありません。

作品は連続テレビドラマ化に便利なように、連作短編形式で、主人公の女性が特殊な各清掃現場で、突然体調に異変が起き、五感に直接訴えかけられ、それが事件の謎や真相を暴き出すという単純な流れです。

なので最初の1話を読んだ後は、その変形バージョンの繰り返しに過ぎず、やや興味も落ちてしまうのが難点かな。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー (ベスト新書) 常見陽平

著者は典型的な元リクっぽい感じで、頭はいいのだろうけど、理屈が多くて好きには慣れないタイプの人だなと思っていましたが、面白そうなタイトルにひかれて読んでみました。

著者も自ら20代の頃は「意識高い系(笑)」だったと述べていて、その経験を元に、アラフォーになった現在(出版は2012年)振り返ってみて感じたことが書かれています。

Amazonのこの新書の書評では散々なことを書かれていますが、私は読んでみて意外?とすんなり納得のいくところも多々あり、バラエティ番組をボーとみているかのように楽しく面白く読めました。著者もプチ炎上商法をうまく利用されているそうなので、賛否両論あるのは承知の上のことでしょう。

私のような団塊世代と団塊ジュニア世代に挟まれたいわゆる「しらけ世代(笑)」にとっては、団塊世代に散々いいように使われ、振り回されたあげく、今度は団塊ジュニア世代から突き上げられたり、中途半端とバカにされてきて、その両世代には恨み神髄というか、気持ちは分かり合えないものと自覚しています。

著者はその団塊ジュニアど真ん中な人で、団塊世代の中にも少なからずいた自意識過剰気味なリーダー的存在と、文字通り親子そっくり似ていると言わざるを得ません。

いや、著作がつまらないというのではなく、人間的な暖かさがないというか、上から目線で下々を嘲笑している感じが、常に引け目や負い目を感じている人(私)にとっては、なんだか身につまされる思いがするのです。

内容は、「意識高い系(笑)」の若者の時代的な変化や生態を面白おかしくまとめたもので、一緒になって「あるある」と嘲笑した向きには著者と一体感がもてるのではと思われます。


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893
殺し屋ケラーの帰郷 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) ローレンス・ブロック

殺し屋 Hit Man」(1998)、「殺しのリスト Hit List」(2000)、「殺しのパレード Hit Parade」(2006)、「殺し屋 最後の仕事 Hit and Run」(2008)に次ぐシリーズ5作目の短編で、2014年11月に出版(翻訳版)されました。

同シリーズは2作目と4作目が長編ですが、その4作目「殺し屋 最後の仕事」では、大統領候補殺害の容疑をかけられ、全米に指名手配されるという罠にはめられたものの、その窮地をしのぎ、手をさしのべてくれた女性と結婚し、子供ができて、家のリフォーム会社を立ち上げ、ハッピーエンドでこのシリーズも終わったかのように見えましたが、この続編が出ていました。

この作品は1作目、3作目と同様の連作短編で、「ケラー・イン・ダラス」、「ケラーの帰郷」、「海辺のケラー」、「ケラーの副業」、「ケラーの義務」からなっています。

ハリケーンカトリーナによる住宅被害拡大で順調にいっていたリフォーム会社は、全米を揺るがしたサブプライムローン問題によって住宅バブルがはじけてしまい、ケリーは一気に失業状態になります。

と、そこへ殺人の委託を受ける昔の仲間ドットから電話がかかってきます。「また始めようと思うのだけど、あなたに知らせないわけにはいかないでしょ?」と。

ま、流れは以前と変わりありませんが、今までのようになにも悩みなくクールだった殺し屋も、今は妻と子を抱え、本業の共同経営者との関係もあり、その葛藤が加わります。

また仕事が暇になったらなったで、切手収集の趣味もさらに高じ、そのオークションの模様なども本作品では詳細に取り上げられたりと、マンネリ化を防ぐためか?なかなか努力の痕跡が見られます。

しかし切手の趣味は奥が深すぎて、興味がない素人読者には理解しがたく、なんだか著者の思い入れだけが空回りしているかなって感じられます。

著者別読書感想(ローレンス・ブロック)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

模倣犯(新潮文庫) (1)~(5) 宮部みゆき

2001年に単行本、2005年に文庫化された長編小説です。

2002年には森田芳光監督、中居正広主演で映画化もされましたが、著者はどうもその出来には満足していなかったようです。

ま、アイドルが主演する映画になにを期待するかでしょう。

なんといっても文庫本にして5巻、2500ページを超える大作だけに、わずか2時間の映画にそれだけのエッセンスを入れ込むのは誰がやっても難しいところです。

いっそ映画も3作6時間ぐらいで作ればよかったかも知れません。客は激減したでしょうけど。

登場人物ひとりひとりに対する背景や心情が念入りに、そう必要以上に念入りに、書き込まれていて、それがやや鬱陶しく感じられるかも知れません。

私は途中からどうでもよさそうな箇所はすっ飛ばして読みました。そうしないと、いつまでもどうでもいい著者の登場人物への思い入れに付き合わされることになります。

内容は連続誘拐事件を扱ったミステリー小説で、その内容は大きく3部に分かれています。

1部は若い女性の行方不明事件とその関係者と思われる遺体遺棄事件が勃発し、被害者やその遺族、犯人を捕まえようとする警察側が主体となって描かれます。そして犯人がエスカレートしていきます。

第2部は今度は犯人側の心理や、事件に至る背景、その関係者などが詳細に書きつらねられます。つまり謎だった犯人や動機などは早々に明かされていきます。

第3部では被害者、警察、ジャーナリスト、犯人、犯人の知人、遺族、加害者の家族など、過去に出てきたオールスターキャストが揃います。要はこのクライマックスに向けて第1部と第2部では淡々と仕込まれてきたという感じです。

とにかく長いです。大河小説や人の一生を描くように何十年と経過するようなものではなく、わずか数ヶ月~半年の出来事なのにです。集中して読むには目も肩も凝りました。

著者からすれば犯罪小説の歴史に残る壮大な人間模様を創り上げてきたのでしょうけど、ちょっと行き過ぎ感があります。

で、面白かったか?と聞かれればストーリーとしては面白かったです。同じ内容で文庫2冊にまとめてもらえれば、もっと面白かったでしょう。

著者別読書感想(宮部みゆき)

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羊の目 (文春文庫) 伊集院静

最近著者の作品で目に付くのは女性が主人公で甘ったるい恋愛ものが多く、食傷し少し敬遠気味でしたが、「これぞ待っていました!」といえる、人間味あふれるハードボイルド的な小説で、2008年単行本、2010年に文庫化されました。

侠客と言うと「ヤクザとどう違う?」とか「昔のギャンブラーでしょ?」とか言われそうですが、正式には「強きを挫き、弱きを助ける事を旨とした任侠を建前とした渡世人の総称」(wikipedia)ということで、江戸時代から昭和初期頃までに流行った伊達で粋な男の生き方を具現化した言葉です。

世知辛い自己中の今の世の中ではすでに死語となっていますが、実在した人物としては会津小鉄、国定忠治、清水次郎長など、フィクションでは木枯らし紋次郎などが侠客と言えます。

昨年亡くなった高倉健さんがデビュー初期の頃に演じていた役もそれに近いものがありそうです。

その侠客、任侠の世界とハードボイルドを描いたのがこの作品で、まだ日本が貧しかった戦前に生まれ、夜鷹だった母親に捨てられた子が成長し、育ててくれた親を命を賭けて守り抜くことを唯一の生き甲斐とし、汚れ仕事を引き受け、殺人罪で刑務所にもつながれ、戦後のヤクザの縄張り争いに巻き込まれます。

そしてその親にも裏切られ、果てはアメリカへ逃げたあとも地元のマフィアと血を血で洗う戦いに発展するという壮大な男の生き様を描いています。

ちょっと話しが時代を一気に飛び過ぎるきらいがありますが、それだけスピード感があって、430ページはあっという間に読む終わるなかなかワクワクする面白い小説でした。

著者別読書感想(伊集院静)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) マイクル・コナリー

ボッシュシリーズの8作目で2002年の作品で日本語版は2005年に発刊されています。530ページを超える長編で、起承転結が丁寧に書き込まれていて、私にとってはこれぐらいがちょうどいい長さです。

ストーリーはロス郊外の住宅地の森の中から、近くの住人の犬が人間の骨を加えて戻ってきたことから20年前に起きた殺人事件が明らかになってきます。

20年前の骨の特定について、その行方不明者が簡単に判明するところは都合良く端折りすぎって気もしますが、その発見された骨によって、近隣に住む前科がある住人が自殺に追い込まれ、また別で捜査に当たっていた警察官が犠牲となります。

概ねこのシリーズはそうですが、主人公(ボッシュ刑事)の過去のいきさつを知らなくても、単独でも十分に読み応えがあり、楽しめます。それで面白いと思えば、過去にさかのぼってみるもよし、さかのぼらずに新しい巻を読むもよしです。

この8作目ではボッシュは離婚後の1人住まいで、事件現場で知り合った、既婚の新人女性パトロール警官に一目惚れをしてしまいます。

そして会ってすぐに自宅へ連れ込み、やがては警察署中に知れ渡るという軽率で妙な行動を起こします。

強いヒーローを描くのに疲れたのか、ちょっと色気を出したかったのか、不明ですが、その女性警察官が変な死に方をすることで、事件はボッシュの活躍で無事に解決しても精神的に重い荷物を背負うことになり、最後はロス市警を自主的に退職することになります。

著者別読書感想(マイクル・コナリー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書) 浅川 芳裕

著者の浅川氏は1974年生まれの雑誌「農業経営者」の副編集長で、株式会社農業技術通信社の専務取締役です。

いわゆる農業ジャーナリストといったところでしょうか。この本は2010年に発刊されていますが、その後もこの手の本を出しておられ、2012年には続編とも言える「TPPで日本は世界一の農業大国になる」が発刊されています。

普通、記者やライターとして農業行政について書く場合、農林水産省やJA(農協)の発表することをそのまま書くことで楽もできるし、お金も得られるというものです。

この著者はタイトルを見てわかるように、真っ向そうした機関や組織を糾弾し、過去から延々と続けられている既得権益などに舌鋒鋭く批判をしていて、「おいおい、そこまで言っていいのか?」ってちょっと心配になったりします。

例えば、日本の農業は中国、アメリカ、インド、ブラジルに次いで世界第5位の生産額があり、先進国の中ではトップランクであるに関わらず、世界でも日本しか使わないカロリーベースの自給率を無理矢理官僚が算出して、自給率が30数パーセントしかないというのはナンセンスとしています。

自給率をカロリーベースに変更したのはそのほうが自給率が低く見えるからだそうです。

国が使うカロリーベースでの算出でおかしいのは、カロリーが低い野菜や果物は低くなりいくら作っても数字には反映されないことや、期限切れや食べ残しで破棄されている大量の食品も自給率が低くなるよう分母に含まれ実態とはかけ離れていることです。

カロリーベースではなく、国際標準である生産額ベースで自給率を見るべきだと至極まっとうな意見です。

なぜそういうことになっているかと言えば、食料自給率が低いと日本国民に植え付けることで危機感を煽り、農水省はその対策予算として多くの税金を得て、それが天下り先の機関に回り、傘下のJAや農家に補助金という形で回る仕組みが維持できるからと書かれています。

国際標準の生産額ベースで見ると日本の農業の自給率は決して低くなく、プロ農家の健全な育成にとって邪魔になっているだけの農水省や、票が欲しいがために主たる収入は農業以外という兼業農家にまで補助金を回そうとする政治家を厳しく糾弾しています

常識に考えてもいま米が余って減反政策などをおこなわれていますが、減反した農地でなにも作らず放置しておけば国から補助金がもらえ、その土地を市場のニーズに合わせて有効活用しようとすると補助金がもらえないという変な仕組みになっています。

つまり片一方では自給率を上げないように補助金(税金)がばらまかれているわけです。

そして農水省が「自給率を上げよう」と訴える広報宣伝費(もちろん税金)は何億円にも及び、それが広告代理店の電通を通じてマスコミにばらまかれ、新聞やテレビはそれで黙らされてしまい、大本営発表のカロリーベースの自給率を根拠に危機感を煽る手伝いをしています。そしてそれは小学生が使う検定済みの教科書にまで及んでいます。

とにかくこの本を読むと、農水省や政治家(この本では当時民主党政権だったため民主党への批判が強いですが自民党も同じです)への怒りが沸々とわいてくるのは間違いありません。

ブラックボックス化された農林水産業について、知らなかったことも多く、騙されていたってことがわかります。

この本一冊では巨大な利権構造を崩すまでには及ばないでしょうけど、やる気をなくす国の補助金などに頼らず、品質と生産性を上げ、世界と渡り合える農業を志す組織的な農業法人や農業だけで生活を支えるプロ農家も増えてきているそうで、少しホッとさせられます。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ボトルネック (新潮文庫) 米澤 穂信

著者は2001年にデビューした若手の推理小説作家で、この本が8冊目の長編小説となり2006年に単行本、2009年に文庫が発刊されています。

私はこの著者の作品を読むのは今回が初めてですが、9作目の作品「インシテミル」(2007年刊)が原作となり、数年前に「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」というタイトルで映画化されているのは知っていました。

どちらかと言えば、若者向けのライトな小説がお得意ジャンルらしく、本書も主人公は高校生、舞台は北陸の金沢で、事故で亡くなった恋人を偲び、その事故が起きた場所へ行ったときに、突然恋人が生きたままいる別の次元へ移ってしまうパラレルワールドもので、突飛押しもないはちゃめちゃなお気楽設定です。

ま、なんというのでしょうか、自分の高校生の頃と比べるとあまりにもその落差があり(もちろん小説の主人公のほうがずっと知性があり物知りで大人)、テレビドラマなんかでもよく出てくる「大人がかなわない都合よくたいへんよくできた子供」って感じがして、当然のごとく感情移入も懐かしさもなく、ふ~んって感じ。

本離れと言われる中・高校生にちょっとでも興味を持ってもらうために、こうした小説があるのは否定しませんが、中高生の感性を引きずったままの大人以外の大人が読むには少し無理がありそうです。

著者別読書感想(米澤穂信)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

銀の匙 (岩波文庫) 中勘助

著者は1885年(明治18年)生まれの詩人で、お金を得るために仕方なく書いたというのが本作品とのことです。本作品は元々夏目漱石の推薦で朝日新聞に連載小説として掲載され、1921年(大正10年)に出版されたものです。

内容は著者の自伝的回想録に近いもので、身体が弱く病弱だった幼年~少年時代の思い出を、元々は詩人である著者が、美しい日本語を使って書いています。

主人公が生まれたときは難産で母親の具合が悪く、幼児の頃ずと伯母に育てられていました。

主人公も病弱だったため友達が出来ずに、いつも近所の子供らにいじめられてばかりです。それ故に育ての親の伯母とは深い絆で結ばれていてその様子が叙情的に描かれます。

タイトルの銀の匙(さじ)は、幼児の頃、箪笥の引き出しをあけて、中をひっくり返してみたら、中から銀の匙が出てきて、それをなにか不思議に懐かしさを覚え、母親に頼んで自分のものにします。

そして大人になった今でも大切にその銀の匙を持っています。その銀の匙は、まだ物心が付かない赤ちゃんだった頃に、当時少しでも健康になるようにと漢方薬を飲むときに使われたものでした。

私はなにも事前知識がなくこの本を買って来て読みましたが、最後の解説などを読むと、この古典に近い小説は現代では失われつつある美しい日本語文章の最高のサンプルと言えるものだそうで、ところどころに古い言葉など意味がわからないところもありますが、読後はなにかまっとうな日本語に久しぶりに触れたような清々しい気分になれます。


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