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ロバート・B・パーカー(Robert Brown Parker)は1932年アメリカ生まれの小説家で、2010年1月に77歳で亡くなるまで、数多くの小説を残しました。

中でもデビュー作で、スペンサーシリーズ1作目となる「ゴッドウルフの行方 (The Godwulf Manuscript)」(1973年)※以来、40年で39作品(1作品は邦訳版なし)にのぼる私立探偵スペンサーシリーズは著者の代表作であり、多くのファンを獲得しています。
※邦訳版の早川書房からは3作目の「失投」が1作目よりも先に発刊されているようです

私がパーカーの小説にはまるきっかけになったのは、それまで愛読していたレイモンド・チャンドラー(1888年~1959年)の小説をすべて読み終わり、さて次はと思っていたら、チャンドラーが執筆途中で亡くなり未完だった「プードル・スプリングス物語」(1990年邦訳版発刊)を、パーカーがあとを引き継いで完成させたものを読んでからです。

また同じくチャンドラーの「大いなる眠り」の続編としてパーカーが書いた、私立探偵フィリップ・マーローを主人公とした「夢を見るかもしれない」(1992年)にもすぐ食いつきました。

したがって70年代、80年代からの純粋なパーカーファンからすると、90年代になってようやくチャンドラーから流れてきた”にわかファン”と言われても仕方がないわけですが、パーカー自身もチャンドラーには大きく影響を受けていたのは間違いなく、チャンドラーのファンがその後パーカーファンとなるのはごく自然な流れと言えるでしょう。

余談ですがパーカー同様にチャンドラーを信奉するマイクル・コナリーの「ヒエロムニス(ハリー)・ボッシュシリーズ」や、日本の小説家原りょう氏の「私立探偵沢崎シリーズ」も欠かさず読んでいます。

もうひとつ余談ですが、個人的な感想として、パーカーの師とも言えるレイモンド・チャンドラーですが、ほぼ同年代にイギリスで活躍した作家で「007シリーズ」が代表作のイアン・フレミングとも似ているところがあるように思えます。

イアン・フレミングのほうが10数年後のデビューですから、チャンドラーの影響を受けたと言えるかも知れません。

なんとなくですが、フィリップ・マーローとジェームズ・ボンド(映画ではなく小説のです)、そしてスペンサーが似ているんですよねぇ。

そのパーカーの遺作となった「春嵐」(2011年)は、一昨年2012年に日本でも発刊され、これでパーカーが書いたスペンサーシリーズが幕を下ろしました(未翻訳1作除く)。

40年間の長きに渡り、偉大なるマンネリにも負けず書き続けてきたことは賞賛すべきことで、これからもチャンドラーやダシール・ハメットとはまたちょっと違った形でハードボイルド小説の大御所として歴史に名を残していくことになるのでしょう。

パーカーより6歳若いローレンス・ブロックが書く、同じく私立探偵の「マット・スカダーシリーズ」はパーカーのスペンサーから遅れること3年の1976年に初登場してから、著者や読者と同様に年々歳を重ね、最近の作品では、仕事を引退して昔のことを思い出す好好爺的雰囲気を漂わせていますが、スペンサーシリーズは年齢にはほとんど触れず、いつまでも若々しい姿のままで終わりました。

せっかくこのシリーズ全作を読み終えたので、なにか備忘録的にまとめて残しておこうと考えて、別ページでユニークな文庫のカバー表紙(1~23作目は辰巳四郎氏のデザイン)と、カバー裏の紹介文をまとめておきました。

邦訳版のタイトルには邦訳版の、英語の原題には原書のペーパーバック版またはKindle版へのリンクを付けておきました。これから読もうと思っている人の参考になれば嬉しいです。

◆スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著一覧

日本の文庫本のカバーは海外のペーパーバック版とはまったく違った装丁で、特に初期のものはとてもユニークかつ印象的です。

ただし再版されたカバーはまた別の装丁が使われているようで、どの版を買うかでカバーが変わりそうです。

上記のリンク先に表紙の写真をまとめた私の持っている全巻は、文庫の初版または初版に近いカバーだと思います。

パーカーには、このスペンサーシリーズ以外にも、前述のフィリップ・マーローを主人公とした作品や、警察署長 ジェッシイ・ストーンシリーズ、女性私立探偵サニー・ランドルシリーズ、その他単発の作品があり、その中のいくつかは読みましたが、どうしてもスペンサーシリーズに思い入れが強く、それだけの構成となっています。

あとできれば、上記の余談にも書いたとおり、すべて揃っているハズのチャンドラーの作品とフレミングの作品も一緒に並べておいてもいいかもですね。それはまた折を見て。

スペンサーシリーズの古い作品は大型書店やAmazonにも在庫がないものが結構あります。それに残念ながら一部の人気作品以外はもう再版されることもないのでしょう。

こだわりと言えるかも知れませんが、私はできるだけ古書ではない本を買いたかったので、丸善本店や紀伊国屋本店、八重洲ブックセンターなど大手書店の近くへ行く用事がある時は、まだ読んでいないタイトルをメモっておき、見つかれば小躍りしながら買ったものです。

なのでこのシリーズは読んだ時期が発行順ではなく、かなり前後しました。10年ほど前の話しですが、リアル店舗でこのシリーズが一番充実していたのは、当時できたばかりの丸の内オアゾの丸善丸の内本店でした。

今はジュンク堂やリブロの池袋本店、ブックファースト新宿店など比較的新しい大型書店もあるのでどうかわかりません。

書店やAmazonで買った(古書ではない)本は、新しい本なのに、たぶんもう何年もずっと在庫だったか書棚に置かれたままだったらしく、まるで古本のようにカバーの色や紙の色も変色しているものが何冊もありました。

書店の棚ならわかりますが、Amazonから送られてきたものを見ると「え、これが新品?」と不安に思うこともありました。きっと長くどこかの書棚に置かれていて、それが回り回ってAmazonの倉庫へやってきたのでしょうね。

これを機会に出版元の早川書房から新装丁版で38冊をまとめたセット版が出てくるといいなと思いましたが、こうした地味なファンにしか売れない書籍は制作・流通コストがほとんどかからない電子書籍への移行時期でもあり、その可能性はとても低そうです。

かくいう私も新たにもう1セット買うかと聞かれても、部屋の中はすでに本で埋まっていて、飾っておける場所もないのでたぶん買わないでしょう。

◆スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著一覧


【関連リンク】
1782 イアン・フレミング著「007ジェームズ・ボンドシリーズ」全巻まとめ
327 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー

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戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA) 神林長平

この小説は今から35年も前の1979年に「SFマガジン」に掲載され、その後1983年まで連載された連作短編小説で、1984年に文庫本として発刊されました。

その後1999年に続編の「グッドラック―戦闘妖精・雪風」が単行本として発刊されるときにあらためて「戦闘妖精・雪風〈改〉」として多少修正が加えられ再文庫化されたものです。

まだ詳細は不明ですが、これを原作とした実写版の映画「YUKIKAZE」がハリウッドで製作されているそうで、主演はトム・クルーズという話しが1年前にありました。

原作(この本)では主人公は偵察機雪風のパイロットで日本人の深井零(ふかいれい)中尉ですが、ハリウッドへ行くとそのあたりは地球を救うのはいつもアメリカ人というお約束のパターンに変えられてしまうのでしょうかね。

主人公の愛機が最新鋭の「スーパー・シルフ」という戦術戦闘電子偵察機で、この3番機の愛称が「雪風」です。

その愛称を付けたのは主人公の友人で、日本通のイギリス人上官。もちろん名称の由来は圧倒的不利な状況の太平洋戦争で激しい戦闘に16回出撃して16度ともほとんど無傷で帰ってきた奇跡と言える日本海軍の駆逐艦名からです。

ストーリーの背景をすごく大雑把に言えば、謎の異性体ジャムが地球に襲来し、地球側も国を越えて共同で防衛軍を組織し、押し返しているという状況。

その反撃する防衛軍の組織にブーメラン戦隊と呼ばれる最新の戦闘機でありながら敵の情報を得るだけで、例え目の前で仲間が敵機にやられていても援護ぜず帰ってくるという冷酷無比な特殊偵察部隊にいるのが主人公です。

ブーメランのように必ず帰ってくるというのが激しい戦闘に参加しても必ず帰還した駆逐艦雪風になぞられています。

本書が出た1979年頃と言えば、まだパソコンはマニア以外には普及していない時代ですが、小説ではやがて来るであろう「コンピューター(人工知能)対人間」という未来の世界をうまく描いています。

それは人間がコンピューターを扱っていると思っていたら、コンピュータは人間の知識を超えてさらに進化していき、やがてコンピュータが「人間は間違うものだ」ということを学び、勝手なことをしてしまうという、「2001年宇宙の旅」(アーサー・C・クラーク著)や、最近読んだ中では「アイの物語」(山本弘著)などでも書かれていたことと似ています。

確かに人間の寿命なんて長くてもせいぜい100年程度しかありませんが、人工知能を育てていけば、1000年でも1万年でも連続した活動ができ、しかも知識の蓄積と移行が簡単にできますので、時間や環境など生命維持という制限がある人間にはできない作業は今後機械((コンピュータ)に任せるという可能性が高くなるでしょう。

そう考えると未来の戦争は、人間同士の争いではなく、コンピュータで制御された機械同士が戦うという時代がやってくるのかも知れません。そしてそこのところにSF的要素として、現代に生きる人間がもっとも興味のあるところでしょう。

この最初の連作短編では、

00 FAF・特殊戦隊
01 妖精の舞う空
02 騎士の価値を問うな
03 不可知戦域
04 インディアン・サマー
05 フェアリイ・冬
06 全系統異常なし
07 戦闘妖精
08 スーパーフェニックス

の9編と雪風の概説からなります。

著者別読書感想(神林長平)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA) 神林長平

戦闘妖精・雪風(改)の続編にあたる作品で1999年に単行本、2001年に文庫本が刊行されています。

あと、まだ未読ですが、その後の作品として2009年に「アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 」(文庫は2011年)があります。

前作と同様、SFマガジンに掲載された短編をまとめたもので、物語の背景は基本的に前作と変わりがなく、それはすでに書きましたので省略します。

前作の最後で愛機のスーパーシルフ雪風が異星体ジャムに撃墜され、その直前に雪風から脱出した主人公は重傷を負い植物人間状態で救出されますが、その後復活し、やがて新しい最新型の無人偵察機と交流を始め、再び偵察活動とジャムとの戦いに臨むことになります。

収められている各短編のタイトルは下記の通りです。

00 FAF特殊戦から来た手紙
01 ショック・ウエーヴ
02 戦士の休暇
03 戦闘復帰
04 戦闘意識
05 戦略偵察・第一段階
06 戦略偵察・第二段階
07 戦意再考
08 グッドラック

前作で出てきた最初の雪風が撃墜される直前に新型の偵察機に人工知能データのすべてを送ったため、新しい雪風は主人公が育て上げてきたノウハウや知識のすべてを受け継いでいるという設定です。

この小説では未来の戦争においてひ弱な人体は不必要なものとされ、日々膨大な量の最新情報を得て処理される中央コンピュータとネットワークで結ばれている人工知能により制御された戦闘マシンが最前線に投入されるという構図です。

確かに重力や加速度、衝撃に対し極めて弱く、間違いを犯しやすい人間が乗って操縦するよりも、人は乗らずに機械の限界性能をフルに使って行動する方が兵器としてはずっと合理的です。

現実の社会でも無人偵察機や無人車両の実戦配備が進められていますが、未来の戦争の姿は確実にそうなっていくのかも知れません。

そう考えると未来にはヤマトやガンダムのような人が乗って戦う兵器というのは、過去の兵器の形式を引きずったままの姿で、よく考えると旧式っぽくてあり得なさそうです。

もうひとつどうしても疑問に思えるのが、他の多くのSFでもそうなのですが、地球までやってきて攻め入るだけの高度な知性と技術力を持った異星人の戦闘機や母艦が、人間や人間が作った戦闘機と対等のレベルにしかないのか。

普通に考えればはるかに進んだ戦略兵器やシステムをもっているはずで、とうていかなうはずがないというのが実際でしょう。言ってみれば槍や剣で武装した18世紀の軍隊と、21世紀の軍隊が戦うようなものでハナから勝負になりません。

それにもし人間がはるか宇宙に飛び出して資源開発や食料生産のため他の星に植民地を拡げようと考えたとき、その活動はやはり寿命の短い生物が担うのではなく、メンテさえすれば何百年間でも稼働する人工知能をもった機械に任されることになるのでしょう。

もし地球制服をたくらむ知性体があったとして、それはこの小説で書かれているように、目に見える戦闘機や兵器類はあってもそれを操る異星人など生物の実体はどこにもなく、どこかにコントロールしている人工知能体だけが存在しているということになり、他のSF小説の多くにあるような異星人がいきなり人間の前にやってくることはなさそうです。

そうした未来の戦争の姿と、そうした中においての人間の存在価値を、創造力豊かに描いたのがこのシリーズかなと思います。

著者別読書感想(神林長平)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

春嵐〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 ロバート・B・パーカー

2010年に亡くなった著者の最後の作品で、2012年に邦訳の文庫が発刊されています。ボストンの私立探偵スペンサーシリーズは40年間続き39作品、このシリーズを読むのもこれが38作目(1作は邦訳版なし)で最後となります。

今回は前作同様に準レギュラーだった相棒ホークが旅行中ということで登場しないぐらいで、内容的には従来のものと特に変わったことはなく、著者としてはまだまだスペンサーシリーズを書きたかったんだろうなと思えてきます。

老いてタフな探偵から引退するスペンサーを描く気はなかったと見えます。

ストーリーは、ある映画俳優が宿泊していたホテルの部屋で、若い女性が絞殺された状態で発見され、当然その俳優が疑われます。

スペンサーの知り合いの刑事がやってきて、どうも不明な点が多く、興味本位のマスコミは俳優へのバッシングを続ける中、なにか引っかかるということで調査を頼まれ、俳優を守りたい映画制作会社と弁護士を通して調査を引き受けることになります。

この作品ではもうひとりの主役がいます。それは殺人容疑者のかかる映画俳優のボディガードを勤めていたものの、スペンサーにこてんぱんに痛めつけられたことでクビとなり、スペンサーの元へ弟子入り?することになったアメリカ先住民(インディアン)の男ゼブロン・シックスキル(通称Z)です。

今までクワークやホークをはじめとして多くのタフガイを仲間にしてきましたが、今回新たな仲間入りをすることになったZは残念ながら最初で最後の登場となってしまいました。

とは言え、スペンサーシリーズは別の作家が後を引き継いで書くらしいので、それらの作品にはまたホークもZも登場することになるのでしょう。

007シリーズのジェームズ・ボンドが原作者イアン・フレミング亡き後、すでに何作も作られているような感じでしょうか。

最近のアメリカでのエンタティメントでは出演者の人種構成にとても過敏で、映画やドラマ、コマーシャルフィルムなどを見ても、昔のように白人ばかりが出てくるというのは皆無で、例え白人が主役でも、必ず人種構成比を考慮しアフリカ系や先住民系、南米系、東洋系などのマイノリティを混ぜることが求められています。

それに配慮したかどうかは不明ですが、このシリーズではアフリカ系のホークがほぼレギュラーで登場し、その他にもスペイン系(メキシコ系)や東洋系(主に中華レストランですか)の人物がよく登場してきます。それが今回ではアメリカ先住民ということなのでしょう。

名作だった「初秋」で両親からほとんど捨てられた状態の少年ポールに対し、愛情と強い生き方を教えたように、家庭や友人に恵まれず、クスリと酒浸りになっていたZに、立ち直るきっかけとして強い意志と立ち向かう力を時間をかけて教えていきます。なんとなく初期の頃の作品初秋をもう一度読み返したくなりました。

ロバート・B・パーカーの最後の小説「春嵐」のエンディング、つまり筆者が死ぬ直前に書いたこの小説の最後はこのように締められています。

ボストンに戻ると、スウェットに着替え、清潔な服とひげ剃り道具をジムバックに入れて、ハーバー・ヘルス・クラブに出かけた。
ウェイトを挙げた。

スピードバッグを打った。
全身汗をかき、シャツに染みこむまでサンドバッグを打った。
それからスチームルームに入り、長いこと座っていた。
出たあとシャワーを浴び、ひげを剃って、清潔な服を着た。
クラブから出たときにはまだ雨が降っていた。
が、西のほうでは少し弱まっているようにも見えた。
ケンブリッジのあたり、スーザンが住んでいるところだ。

雨が上がれば、世界はおそらく私のように、すっかり洗い清められたように見えるのだろう。
清潔さが幻想であるのはまずまちがいない。
よくて束の間の思いこみだ。
けれども、それを言えば、人生の大半はたとえ話だ。

私は車に乗って、西へ向かった。

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

徹底解析!! Facebookというビジネス (洋泉社MOOK)

マイクロソフト、アップル、Google、Amazonなどアメリカ発のITやネット系の巨大ビジネスはいくつもありますが、その中でも大学生が起業して一躍巨大ビジネスとなったFacebookについて、アメリカと日本において両面からみたビジネスや将来性を○人のジャーナリスト達が取材し書いたもので、一種雑誌のようなような書籍です。

発刊は2012年で、こうした本の寿命は短く、すでに内容は一部陳腐化し始めていますが、映画「ソーシャル・ネットワーク」では描かれない、大きなビジネスとして立ち上がって以降のフェイスブック社のことが書かれていて、それなりに面白く読めました。

と言ってもよくありそうな創業者マーク・ザッカーバーグの成功物語や提灯本ではなく、他のSNSとの考え方の違い、なぜ実名主義にこだわったのか、格差社会としてみるSNS、このビジネスの限界や弱点はなにかなど、様々な切り口でFacebookを斬っています。

いずれにしてもやがて成長が鈍化し、なにかをきっかけとしてユーザーが一斉に他のサービスへ移ってしまえば崩壊の道しかない競争の激しいビジネスですが、その中にあってもグローバルで見ると一番期待度が高いとされているのは2年前も今も変わりません。

テーマと筆者は下記の通り

【PART1 フェイスブックを解き明かす】
筆者 山路達也

【PART2 在米リポート SNSバブルの功罪】
アメリカで発生中のSNS上場バブル 勝者と敗者を分けるものとは? 筆者 飯塚真紀子
フェイスブックが変えた、政治とジャーナリズム 筆者 加藤靖子

【PART3 フェイスブックは世界をどう変える?】
インタビュー 中川淳一郎、濱野智史、舛田淳、西田宗千佳

【PART4 フェイスブックの危険な落とし穴】
筆者 山田順

【PART5 ビジネス活用での手ごたえ】
企業がフェイスブックを活用するということ 筆者 大山貴弘
ソーシャルメディアを分析することで、何が分かるか 執筆 今田智仁

どういうときにこれを読むといいのか?と聞かれると、ちょっと答えに詰まりそうです。

Facebookというビジネスに(SNS本来ではなく)興味があれば、あまり深くは掘り下げられていないけど、ザックリとよくまとめられているので時間の節約になりますよって感じかな。

私は個人的にPART4の「フェイスブックの危険な落とし穴」が面白く読めました。こうしたネットのサービスはいつまでも最初できた頃と同じスタイルで運営されることは滅多になく、日々機能やビジネスモデル(収益構造)が変わっていきます。

そうした中でビジネスとして一番注目されるのが個人情報や行動履歴というプライバシィに関わるもので、いつ何時その情報がどういう目的かわからないまま使われ、そして他の企業に売り飛ばされてしまうかというリスクは常についてくるということです。

もっともそれらの個人情報で企業が魅力と考えるものは、購買力のある資産家や有名人、強い権限を持つエグゼクティブなどのごく一部であって、その他大部分の一般人の個人情報なんて、十把一絡げのバルクとしての価値しかありませんけどね。

【関連リンク】
 3月前半の読書 三千枚の金貨、「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト、下町ロケット、ふたたびの恋
 2月後半の読書 神様のカルテ3、卵をめぐる祖父の戦争、シューカツ、迷惑メールやって良いこと悪いこと
 2月前半の読書 北帰行、天地明察(上)(下)、微笑む人、ジェノサイド(上)(下)

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三千枚の金貨(光文社文庫)(上)(下) 宮本輝
 
2010年に単行本が発刊、2013年に文庫化された長編小説です。著者の作品はライトで、また国内外問わず様々なところを旅する紀行もの的な要素が含まれる小説も多く、旅をした気分になれるので割と気に入っていてよく読みます。

数えてみると全部で30冊あり、上・下巻を合わせて1編、その他ダブって買ったものを除外すると23冊(編)を読んだことになります。

もちろん実際にはその何倍かの小説が出ていますので、熱烈なファンからするとその程度でファンと言うのはおこがましいと非難されそうで名乗っていません。

この小説ではいきなりなんの脈絡もなく主人公がシルクロードの砂漠の旅から返ってきたその足で、馴染みのバーへ寄ったところから始まります。

その旅の情景は後々詳しく語られています。おそらく創造だけで書けそうもない細かなデテールを含んでいますので、実際に取材旅行へ行って著者自身が体験されたことも含んでいるのでしょう。

個人旅行では見たり聞いたりしたことを身近な人に喋ることはあっても、なかなか人に読ませる文章にはしないものですが、作家さんが行く旅は取材旅行であるなしに関わらず、その時の情景や感動をうまく文章に表現しなければならず、そうしたものも一種の慣れか特技をお持ちなのでしょう。

ストーリーはその旅をした砂漠の旅の話し・・・ではなく、主人公が5年前に病気で入院したときに、同じく入院中で余命少ない謎の初老男性から聞かされた「和歌山にある見事な桜の木の下に1億円相当のメイプルリーフ金貨3000枚を埋めた」という話しを思い出し、半ば冗談で仕事仲間に話したところ、探し出そうということになります。

と、同時に「亡くなる前にその男性と主人公が長く話し込んでいた」という情報を得て、目つきの鋭いお供を連れた男が面会にやって来ます。つまり信じてはいなかった埋められた金貨を他にも探しているグループがあるとわかります。

こうした宝探し物語というのは一種男のロマンで、昔から宝を積んだ沈没船や徳川埋蔵金、山下財宝など、海外にもエジプトの古代埋蔵金やキリストの遺骸や聖杯など数限りなく噂や偽の古文書などが存在しています。

インディジョーンズの各シリーズや人気アニメONE PEACE、人気映画パイレーツオフカリビアンなどの海賊も財宝探しが主たる目的の話しです。

そして知り合いから手に入れた謎の男の探偵会社の調査報告書を元に、金貨が埋められた場所を探すことになります。

その調査報告書はとても探偵が書いたとは思えない内容で、例えば「釣り忍」の詳細などうんちく話しがたっぷり書かれているとかはご愛敬ですが、その男の正体と壮絶な過去が徐々に顕わになってくるところが最大の山場になります。

著者別読書感想(宮本輝)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書) 酒井穣

フリービット株式会社 非常勤取締役(人材戦略研究所・所長)、特定非営利活動法人NPOカタリバ 理事、株式会社 BOLBOP 代表取締役など多くの肩書きを持つ著者ですが、経歴は一貫してなく、よく言えば時代の波に乗りながら柔軟性があり、悪く言えば場当たり的に利を求めて動いてきたという印象が強い方です。でもそれだけに先見性と頭脳は飛び抜けていい方なのでしょう。

人材育成法は正解やルールがあるわけではないので、古くから言われてきて今もってしても明確な手法が確立できていません。

それは業種やその時の景気、経営方針や立場や性格など無限の関連するパターンが存在するからに他なりません。

しかし人材コンサルタントと自称するからにはなんらかの実績や経歴を並べておかなければなりませんので、得てしてそういう職種の人の経歴は、権威志向のやたらと長いだけの落ち着きがないつまらないものとなります。

新書にありがちなこうした釣りのタイトルもありきたりで、ずいぶん前に買っておいたものの、読もうかどうか迷っていたのですが、最初の数ページを読んでみると「分かり切った当たり前のことがとても慎重に書かれて」いて、つまらないテレビのバラエティを見るぐらいなら、といった感じで、そのまま全部読み切りました。

要は、高度成長期に見られた「OJT研修=ほったらかし」から、「優秀な社員が会社に残ってもらうための研修」をしなければならないということで、その手法や効果が論理的にかつ自己満足いっぱいで書かれているところを除き悪くはありません。

しかし本人はこの道一本というオーソリティではないので、どうしても他人が調べたデータや述べた言葉ばかりを羅列した構成になってしまい、せっかく優秀そうなこの著者の本音はなかなか知ることができません。

それとできればもっと世代別の特性やライフ(恋愛・結婚・子供・住宅ローン・親の介護・定年・老後など)を考慮した企業研修なんかも取り入れると、また違った観点で面白かったのになと感じた次第です。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

下町ロケット (小学館文庫) 池井戸潤

もう10年も前に出た半沢直樹シリーズ「オレたちバブル入行組」(2004年)、「オレたち花のバブル組」(2008年)がテレビドラマになって大ブレークした作家さんですが、もちろんそれ以前に作家としての実力も十分備わっていて「空飛ぶタイヤ」(2006年)、NHKでドラマ化された「鉄の骨」(2010年吉川英治文学新人賞受賞)など順風満帆で、この「下町ロケット」(2010年、文庫は2013年)では2011年直木賞を受賞しています。

私もデビュー作「果つる底なき」(1998年)以降、著者のほとんどの作品を読んでいます。2000年頃まではビジネス小説といえば城山三郎氏、源氏鶏太氏、梶山季之氏、清水一行氏、高杉良氏、山田智彦氏などが主流で、それを好んで読んできましたが、こうした新しい現代のビジネス小説の書き手が増えてきて喜ばしい限りです。

但しビジネス小説というのは割とパターンが決まっていて、ナイスミドルの主人公が巨大企業の悪や権力を振りかざす傲慢な上層部、接待、裏金、官製談合、融資停止、敵対的買収、理不尽なクレーム、利権政治家や官僚達の介入などに押しつぶされそうになりながらも、果敢に戦って一矢を報いるというもので、個人的には飽きてきたかなという感じもあります。

しかし想定している読者層は、主人公に自分を重ね合わせて現実のモヤモヤを少しでも吹き飛ばしたいと思っている30代~40代の中堅ビジネスマンということでしょうから、そうした水戸黄門的ワンパターンで正解なのでしょう。漫画の島耕作シリーズもこの流れでうまくいった例ですね。

昨年亡くなった山崎豊子氏も「華麗なる一族」や「沈まぬ太陽」でビジネスの現場を描くことが多かったのですが、企業に限らず幅広い社会全般をとらえ、著者の思いや願い、社会意義などが語られ、単なる勝った負けたのビジネス小説ではなく社会派小説と言われた所以ではないかと思います。

著者も「空飛ぶタイヤ」では、実際に起きた三菱自動車の欠陥車が引き起こした死亡事故をモチーフに、巨大自動車メーカーとその系列銀行の傲慢さと内部腐敗をえぐり出しましたが、これはまだデビュー間もない時期でもあり、そこまで書いて大丈夫か?と並半端な決断ではできなかったのではないでしょうか。実際に出版後に映像化されるまでには様々な妨害工作などもあったのではないかと思われます。

著者別読書感想(池井戸潤)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ふたたびの恋 (文春文庫) 野沢尚

人気脚本家としても脚光を浴びていた著者ですが、2004年に自殺して亡くなりました。その亡くなる1年前の2003年に単行本が発刊され、2006年に文庫化された3編+αの中編小説集です。

昨年読んだ著者の1996年の作品「恋愛時代」はお互いに好意をもったままだけど、別れてしまった男女の切ない恋愛がテーマでしたが、脚本家らしく映像がすぐ目に浮かびそうなわかりやすいストーリー展開がなかなか面白く読めました。それだけに44歳という作家としてはまだ若手の部類で自ら世を去ったのは残念でなりません。

この小説の1編の主人公としても出てきますが、テレビドラマの脚本家として、売れだすと次々と仕事が舞い込んでくる反面、一度視聴率が取れなくなると一気に仕事を失ったり、あるいは自分の作家、脚本家としてのプライドやこだわりと、作品監督やプロデューサー、果ては出演者との意見の食い違いなど、心の葛藤や多くのストレスがあったのではないかと思われます。

一つめの作品はテレビドラマ脚本家が主人公で、弟子だった女性と関係を持つようになり、その女性が若手脚本家として成功して独り立ちするようになった頃、自分は視聴率が取れなくなり自然と別れ、ひとりすさんだ生活をしていたところ、偶然同じリゾートホテルに泊まることになる「ふたたび恋」、二つめは高校生の息子の同級生に淡い「恋」をしてしまう中年女性が主人公の「恋のきずな」、そして三つめは最愛のひとり息子を交通事故で亡くし、その後妻とも別れ、アル中になり仕事にも身が入らなくなった料理人が立ち直るきっかけとなるのは?という「さようならを言う恋」。

中でも最後の「さようならを言う恋」は現実的には起こりそうもないことですが、別れた妻や雇ってくれたお弁当屋の経営者と言った主人公をとりまく人達がすごく「いい人」ばかりで、人生捨てたモンじゃないとほっこりさせてくれます。男から見た女の理想像でしょうかね。

収録されている+αの「陽は沈み、陽は昇る」は、未完に終わった中編小説の詳細なプロットです。プロットとはいえ読むと十分に内容や場面がわかり、ぜひ完成版を読んでみたかったなと思わせるものでした。

許されるのなら同じ脚本家で小説を書いている高野和明氏に「共著」としてそれを完成してもらいたいものです。そういうのはチャンドラー、マイケル・クライトン、伊藤計劃などの未完の原稿を、別の作家が完成させたという例はいくつもあります。

著者別読書感想(野沢尚)


【関連リンク】
 2月後半の読書 神様のカルテ3、卵をめぐる祖父の戦争、シューカツ、迷惑メールやって良いこと悪いこと
 2月前半の読書 北帰行、天地明察、微笑む人、ジェノサイド
 1月後半の読書 二人静、ザビエルの首、真夜中の男、殺し屋 最後の仕事

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797
神様のカルテ 3 (小学館文庫) 夏川草介

松本市に実在している365日24時間オープンの地域基幹病院をモデルとし、そこの病院に勤務する若い内科医が主人公の小説です。

前作「神様のカルテ」(2009年)、「神様のカルテ2」(2010年)ともかなりハイレベルで満足度が高く、今回の3作目(2011年)も2014年2月に文庫化されたと同時に買ってきて読みました。ちなみに著者は現役の内科医です。

この小説のいいところは、人間関係や医療の話しだけでなく、実在する美しい信州の名所旧跡がところどころに登場し、紀行もの小説としても読めることにあります。それと今回は長野産のリンゴの品種もいろいろと出てきたりします。そのうち著者は長野県から表彰されるかも知れません。

原作は映画化もされ第1作目は櫻井翔、宮崎あおい主演で2011年に公開、第2作目は今月21日から公開されますが、上記の美しい自然や名所がうまく物語のアクセントになっていることを期待しています。

ただこの3作目はまだ映画化されるかどうかわかりませんが、もしされるとなると心配なことがひとつあります。

主人公の妻役でプロ写真家という設定の宮崎あおい。彼女はオリンパスのカメラのCMに出ていて映画の中でも1作目ではオリンパスの(当時の)最高峰モデルカメラOM-4を使っていましたが、この原作3作目では主人公が妻にドイツ製の高級カメラ「ライカM9-P」をプレゼントされ、大喜びするというシーンがあります。

果たしてそのスポンサー(映画にスポンサードしているかは不明)に背を向ける場面は使えるのでしょうか?しかしM9-Pってすでに生産終了していますが、当時定価81万9千円ですって、めちゃ高なんですねぇ。

宮崎あおいを全面的にイメージガールとして使っているオリンパスとしては困るでしょうねぇ。ここでスポンサーや映画監督の太っ腹なところを見せられるか、著者がオリンパスと脚本家、映画監督に放った意地悪な矢のような気もします。

物語はさすがに3作目となるとちょっとマンネリ気味になってきましたが、地域医療に尽くす医者や看護師達、松本に暮らす人々、前編で亡くなった内科医の代わりにやってきた風変わりなベテラン女医、同期で仲のいい外科医が大学病院へ異動、主人公が住む昔は旅館だったシェアハウス「御嶽荘」の面々との変わらぬやりとりなど、主人公の周りで起きる日々の出来事が綴られています。

今回の3では、真夏の7月におこなわれる「深志神社の天神祭」、12月下旬から2月にかけておこなわれる松本市の隣の上田市鹿教湯温泉の「氷灯ろう夢祈願」、同じく寒い冬におこなわれる「国宝松本城 氷彫フェスティバル」、風光明媚な場所にあり由緒のある長野県大町市の「国宝 仁科神明宮」などが登場します。どこも一度は実際に足を運んで見に行きたいなと思わせるものです。

そして第1作目で悲しい別れをした「御嶽荘」に住む通称「学士殿」がこの3作目で、本当の学士殿となって再び御嶽荘に戻ってきたのは、唐突でもあり、最後に心が温まるという設定です。

著者別読書感想(夏川草介)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)  デイヴィッド ベニオフ

2010年に単行本、2011年に文庫化され、Twitterで評判の高かった作品として名前が挙がっていた作品です。この著者はデビュー作「25時」という小説が2002年に映画化され有名になりましたが、これもたいへんユニークな作品でいずれ読みたいと思っています。

物語は風変わりなタイトル通りの内容で、主人公の祖父がソ連に住んでいた時に、ドイツ人を二人殺したことがあると知り、その時の話しを聞かせてくれと頼み、祖父が今まで決して明かさなかった過去を孫に聞かせるというものです。

主人公の祖父はソ連の第二の都市レニングラード(現サンクトペテルブルク)出身で、少年時代に第二次世界大戦が始まり、街はドイツ軍から攻撃を受けて包囲されました。

これが後に有名となる「レニングラード包囲戦」で、およそ900日(2年4ヶ月)の間、食料など支援物資が届かない窮乏の中、餓死者など100万人とも言われる多くの犠牲を払いながらも堪え忍びました。

そこで来襲するドイツの爆撃機などの監視をしていた少年時代の祖父は、同じ少年少女の仲間達とパラシュートで降下してくるすでに事切れたドイツ兵を見つけ、そのドイツ兵が持っていた装備を略奪していたところ、運悪く警備中の兵士に見つかり、少年だけが逃げ遅れて捕まり、残忍非道で有名なソビエトの秘密警察へ連行されます。

そこで少年は所属している連隊から離れ、女の家に遊びに行っていたところを捕まり、少年と同じように秘密警察へ連行された若いソ連兵と出会います。

略奪行為と軍からの脱走ですので、通常ならばすぐに銃殺されてもおかしくないところ、二人とも秘密警察の大佐から呼び出され「来週、娘の結婚式に豪華なケーキを作りたいのだが卵がないのでそれを調達してくれば許してやる」という話しになり、独ソが互いににらみ合っているさなか二人は卵探しの旅に出るというストーリーです。

前述のように街はドイツ軍に包囲されていて、まともな食料がない中で、二人の卵探しは難航します。食料は配給制となっていて、闇でなんの肉かわからないようなものが売られている状態です。人肉喰いはいても卵などはどこにもなく、二人は仕方なく戦前までは養鶏場があったドイツ軍の占領地域へと入っていきます。

そしてドイツ軍が接収した農家に若い女性が囲われる売春宿があり、そこで起きた脱走を試みた女性の無惨な最期の話しを聞いて、怒りに燃えた二人は無謀にも拳銃一丁でドイツ兵と戦おうと待ちかまえていたところ、ドイツ軍に抵抗するパルチザンの狙撃兵が売春宿にやってきたドイツ兵を先に射殺します。

そのパルチザンと一緒にドイツ軍の追っ手から逃げようとしますが、やがて追い詰められ、ドイツ軍の捕虜となり、さらに卵は無事に手にはいるのか!?っていうのが最大の見せ場で、まぁ祖父は生き延びているわけですから、結果は見えているものの、その過程を十分に楽しめる話しです。

そして物語の最初からつながっている一番最後のオチにグッときます。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

シューカツ! (文春文庫) 石田衣良

2008年に単行本、2011年に文庫化されたタイトル通り大学生の就職活動にまつわる真面目なライトノベルです。

早稲田大学と思われる大学の3年生6人が、人気が高く競争率の高いマスコミ企業へ入社するため就活チームを組んで、様々なノウハウを提供しながら取り組む姿を描いています。

大学生がこれを読んだからといって、就職活動がうまくいくというものではないでしょうけど、おそらくこれはもう就職活動が終わった人に対しては、「現在の就職活動ってこんな感じになっているんだ」と学生の苦悩を伝え、これから就職活動をする人には、「みんなが不安に押しつぶされそうになりながら必死にもがいている。

あなただけが苦しんでいるわけではないよ」と気持ちを楽にさせる意味合いがあるのかなぁと。

ただこの小説に登場してくるのは、私立でも一流といわれる大学で、しかも友人達にも恵まれ、部活やアルバイトなど青春を明るく謳歌している人達ばかりで、目指す目標も一段と高く、そうではない多くの一般の人には、読んでいると頭に来たり、あきらめが先に立ったりしてあまり参考にはならないかなぁと。

しかしこれに出てくる優秀な学生達が目指すのが、今や凋落激しいマスコミ業界(テレビ局や出版社、新聞社)っていうのは、なんだか違和感がありありなのですが、それでもなぜか学生には今(書かれた2008年当時)も大人気なんですね。

入社できたとしても、一番自由に本領が発揮できる二十年後に、それらの業界がどうなっているかを考えたことがあるのか?ってマスコミを目指す人に聞いてみたい気がします。

もちろん卒業後最初に就職するのは大企業に越したことはありませんが、この小説を二十年後にブックオフで見つけて読んだ若い人から、「へぇ、あの頃の学生って出版社やテレビ局にあこがれていたんだ。笑えるね」って言われている可能性が高いように思います。

いまから30年ぐらい前には就職人気企業で常にトップクラスだった航空会社や家電メーカーが、やがて倒産したり、何度も繰り返して社員を退職させる大リストラをおこなっているように、企業は栄枯盛衰していくものです。

せめてひとりぐらいは、現在の不人気業界ながら、自分が一番活躍できる30年後のことを考えると、この業界に入っておくのがベストという気骨のあるギャンブラーキャラがいてもよさそうに思いながら読んでいたら、最後の最後で、就活メンバーの中で一番有能な男性が大手新聞社の内定を蹴って、いきなりフリーで仕事をしていこうと決断するのは、いかにも早稲田の学生らしいなぁとちょっと見直しました。やっぱそうでなくっちゃね。

著者別読書感想(石田衣良)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

迷惑メールやって良いこと悪いこと 須藤慎一

パソコンやスマホでは欠かせない電子メールですが、その送られてくるメールには数多くのスパム(迷惑メール)が含まれています。そしてそれにはいくつもの罠や仕掛けが施されているというごく当たり前のリテラシー教育本です。

ネットの初心者にとっては決して当たり前ではないのかもしれませんのでこういう解説書も必要なのでしょう。とは言え、本の中身はネット中級者以上向けの言葉で書かれていますので、内容と文章表現がちょっとアンバランスな気もします。

騙されちゃいけないと頭ではわかっていながらも、それでも騙される人が後を絶たないオレオレ詐欺の例を見るまでもなく、「怪しいメールに返事を出さない」ということがわかっていても、知人の名前や有名芸能人の名前でメールが送られてくると、すっかり信用してしまうような人がいるわけで、騙す方と騙されないようにする側との知恵比べはいたちごっこで、今後も永遠に続いていくのでしょう。

ある程度のIT知識を持っている人ならあえて読む必要はないぐらいの話しですが、現在よくある騙しのテクニックがいくつも書かれているので、どういう人が騙されやすいのか、自分の親や子供にどう注意をしておけばいいのかなど参考にはなります。

迷惑メールがなくならないのは、それに引っかかる人が確実にいるからで、あとはその引っかけ率を高めていくというのがオレオレ詐欺が巧妙化していくのと同様、迷惑メール送信者が知恵を絞って考えることです。それをもっと善良なことで社会のためになることに使ってくれるといいのですが。

その内容には、なにかに当選したというような「美味しい話し」だけでなく、「生まれたばかりの子供に心臓移植が必要で助けて欲しい」というような人の同情や社会貢献につけ込むようなものまであるようです。

あとメールアドレスだけでなく、趣味や年齢、性別などの個人情報を入手すれば、より適確なスパムを送ることが出来、そのためには、豪華賞品が当たる懸賞などを利用して、そこに様々な個人情報を入力をさせるケースが多いと言うことです。

まるで大手企業が新商品紹介のためにやっているかのように見せかけたプレゼントやモニター企画にはこの不況時にはつい引っかかってしまいそうです。

有名企業が運営する懸賞だと安心していたら、そこに入力した個人情報は、別の企業へ提供することが小さく書かれていたなど、よくあるパターンです。そして賞品が当たらないというのも、先日懸賞品の水増しが明らかになった有名中堅出版社の例があるように決して珍しくはありません。

とにかく、怪しいメールは開かない、知らないサイトには登録しない、必要に応じてメールアドレスを使い分ける(フリーのメールアドレスを取っておき、重要なところ以外はそれを使い、迷惑メールが増えたらメールごと削除してしまうとか)など、初心者向けのポイントがわかりやすく書かれていました。


【関連リンク】
 2月前半の読書 北帰行、天地明察(上)(下)、微笑む人、ジェノサイド(上)(下)
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793
北帰行 (角川文庫) 佐々木譲

廃墟に乞う」(2009年)で直木賞を受賞したその翌年2010年にこの小説の単行本を発刊、2012年に文庫化された長編小説です。ジャンルはお得意の警察ものや歴史ものではなく、現代のハードボイルド作品です。

主人公は旅行会社から独立をして、たったひとりで旅行代理店や海外からの旅行者のアテンドをやっている男性で、ロシアから来た女性のアテンドをしたために、大きな事件に巻き込まれてしまいます。

そのアテンドをした旅行客は、数週間前にヤクザに殺された出稼ぎにきていた女性の姉で、殺された妹の復讐のためロシアンマフィアから送り込まれた殺し屋という設定です。ちょっと「007ロシアから愛を込めて」を思い出してしまいます。

実際的にはどうも現実感がなく、さらにこの主人公は自分が運転手となってアテンドをした女性が、自分の目の前でヤクザの組事務所を襲った後も、逃走に手を貸し、その際に怪我をしたロシア女性に哀れみの感情さえ持ってしまいます。したがって警察に通報することもせず、ヤクザからの追跡から逃げ回る結果となり、飛躍しすぎていて、とうてい考えられないアホなことを始めます。わずかばかりのアテンド費用で命張ってどうするよ。

その結果、警察からもヤクザを殺した女の共犯者として追われ、偶然顔見知りだったヤクザからは脅され、実家の家族にまで被害が及ぶことになります。いくらハードボイルドでも、ボディガードを頼まれたわけでもなく、自ら墓穴を掘っていく姿が情けないやら哀れだったり。

ちょっとそういうことで、内容的には東京-新潟-稚内というロードムービー的な要素を持つ面白そうなハードボイルド逃避行小説ながら、エンタメ要素を無理矢理詰め込んだせいで、設定にかなり無理があり、同氏の作品にしてはやっつけ仕事っぽくてイマイチかなぁというのが感想です。

著者別読書感想(佐々木譲)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

天地明察 (角川文庫)(上)(下) 冲方丁

2009年に発刊され吉川英治文学新人賞や第7回本屋大賞を受賞し、直木賞にもノミネートされた長編時代小説で、映画やドラマに引っ張りだこの岡田准一主演で2012年に映画化もされ人気を博した出世作です。

主人公は江戸城に勤める囲碁棋士で、算術に強くやがて天文暦学者になる安井算哲(渋川春海)という実在の人物で、知る人ぞ知るというユニークな人生を歩んだ人物にうまくスポットライトをあてたのはさすがと言えます。

春海は、徳川4代目家綱から5代目綱吉の時代に活躍し、それまで日本で利用されていた800年も前に唐からもたらされた宣明暦を、緻密な観測と中国と日本の位置からくる違いを計算し、新しい和暦(貞享暦)を初めて作りました。

暦の基本形を作るのはいまは国立天文台ですが、当時は主に祈祷師や神社などが中国の暦を元に勝手に作っていて、地域によっては1年が数日違っていたりすることもあったとか。

今でも旧暦という太陰暦は特に占いや年中行事などではよく使われていますが、当時もやはり暦と占いや年中行事は切っても切れない関係にあったようです。また各地の有名神社が独自の暦を発行することで、大きな収益を得ていたと言うこともあるようです。

様々な妨害や、伝統や権威と戦い様々なプレッシャーにも負けず、粘り強く日本の暦を新しく変えた主人公の成功物語と言ったところでしょうか。

余談になりますが、日本初の和暦となった貞享暦は、その後宝暦暦、寛政暦、天保暦と変わっていき、ついに明治5年11月9日(西暦1872年12月9日)には世界標準となっていたグレゴリオ暦(新暦)へと変更されます。

この新暦への変更時は、年末まであと2ヶ月近くあると思っていた国民が、いきなりあと3週間で年が改まると聞かされ、そこで起きる様々なドタバタは小説や、映画、落語などでもよく出てきます。

著者別読書感想(冲方丁)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

微笑む人 貫井徳郎

2012年に単行本が発刊された小説で、まだ文庫は出ていません。Twitterでなにかと話題が多かったこの作品ですが、私はなにも予備知識を持たないまま読みました。

小説はある突拍子もない事件を取材した小説家の語りで始まります。最初は貫井氏本人が取材したノンフィクションか?と思いましたが、そうではありません。

事件とは川に遊びに来ていた家族の幼い子供と妻が溺れて亡くなるという悲惨な出来事が起きますが、それはただの事故ではなく、目撃者と火葬直前だった遺体から発見された証拠から、一緒に現場にいて救急車を呼んだ夫の殺人事件だったということが後に判明します。

しかし犯行を認めたものの、殺害の犯行理由が「自宅の本の置き場がなくて」という信じがたい理由だったことや、犯人をよく知る人に聞くと誰もが「絶対に信じられない」と口を揃える好人物なのです。

取材を進めていくと、過去にこの男の周辺では謎の多い事故が起きていることが徐々にわかってきます。しかし、もしそれらが男の周到な殺人だったとしても、妻や子供の犯行と同様、犯行の動機がまったく想像がつきません。

そのように、取材で次々と出てくる犯人とされる不思議な男の感覚が、ふわふわというかジワジワと漂ってきて、気味悪さでいっぱいになってきます。

さらに男の子供の頃の話しまでさかのぼっていきますが、やはりそこでも虚言癖がある同級生との関係など、さらに謎が深まっていくことになります。

このような周囲から見ると信じ難い犯行動機が存在していても、決して不思議ではないということや、誰もが口を揃えて「いい人」「優秀なエリート」という犯人をあえて登場させることに著者はこだわったようで、今までのミステリー小説の常識や、事前に伏線を敷かれた謎が、スパッと解明される明快なミステリー小説に一石を投じたということかも知れません。

それだけに著者も期待はしていないでしょうけど、エンタメ映画やテレビドラマには不向きで、一種の最後まで科学的な謎が解明できないホラー小説を読んでいるという感覚に近かったかもしれません。

著者別読書感想(貫井徳郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ジェノサイド (角川文庫)(上)(下) 高野和明

5年ほど前に「13階段」(2001年)という著者のデビュー作となる小説を読んで、この人はストーリーテラーとして一流だと感じましたが、その著者の最新作がこの「ジェノサイド」(2011年、文庫2013年)です。2011年の直木賞にもノミネートされた小説ですが、その時は池井戸潤氏の「下町ロケット」に持っていかれました。

タイトルのジェノサイドとは一般的に「大量虐殺」という意味で使われていますが、それは物理的な数のことを指すのではなく、「特定の集団等の抹消行為」をいい、ナチスのユダヤ人虐殺のホロコーストやルワンダで起きた内戦による民族同士の大量虐殺などがそれに認定されています。

タイトルからすれば悲惨で暗そうなストーリーに思えますが、舞台が日本、アメリカ、イラン、コンゴなど場面は次々と変わっていき、前半部分はある種フレデリック・フォーサイスの国際陰謀小説を読んでいるかのような錯覚を覚えます。後半はまたちょっと毛色が違って、瀬名秀明著の「BRAIN VALLEY 」など先端医療サスペンスの様相を呈してきます。

主人公は二人いて、ひとりは日本の大学で薬学部で創薬を研究している大学院生、もうひとりは子供が難病にかかっているためその巨額の治療費を稼ぐため、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレーを辞めて今は民間軍事企業で傭兵として働くアメリカ人です。

大学院生の父親は日本の大学でウイルス研究をおこなっていましたが、ある日突然亡くなります。その亡くなった父親から自動送信で謎のメールが息子宛に届き、それが発端となり父親が表沙汰にしていなかった研究を知ることになります。

この小説では国際陰謀小説ではよくありがちな権力欲にまみれたアメリカ大統領とその取り巻き一味が悪者で、好戦的で私腹を肥やすことに目がない権力者達が、世界一の軍事力、諜報力、政治力を使って陰謀に手を染めていくという構図です。

そうした壮大な国家権力に振り回されながら、日本人の大学院生は韓国人の留学生の協力を得て新薬開発に乗り出すことになり、元特殊部隊の傭兵も他の傭兵や元CIAなどの力を借りて、殺されるはずだった新生物を救いだし、証拠隠しのために自分たちも抹殺されることを知り、果敢に立ち向かっていくというエンタテーメントとしてはうまい仕上がりになっています。

ジェノサイドというタイトルの言葉は、この小説の中に時々出てきますが、タイトルとして適当かどうかは個人的に疑問があり、どちらかと言えば内容的にはエヴォリューション(Evolution)が妥当かなと思っています。

話しが壮大なだけに、日本で映画化はかなり難しそうですが、いっそハリウッドが「エイリアン 」や「ブレードランナー 」「ブラックホーク・ダウン 」などを手掛けたリドリー・スコット監督を起用して制作すると興味あるものができそうな気がします。ただその場合はきっと、原作とは違いアメリカ政府が悪者にはなりませんね。

著者別読書感想(高野和明)


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