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世界の書籍三大ベストセラーは「聖書」、マルクスの「資本論」、サン・テグジュペリの「星の王子さま」と塩澤実信著「ベストセラーの風景」には書かれていますが、「コーラン」や「毛主席語録」は推定では聖書に次ぐ数十億冊が出版されているそうです。

無料で配布されることもある宗教本や政治本はベストセラーとは言えないという理屈であれば、上記のベストセラーからも「聖書」を外さなければなりません。

その世界のベストセラー本は果たして日本でも売れているのだろうか?と思って調べてみました。出典はWikipedia(2013年3月20日時点)を基本としていますが、調査年度や調査方法等にばらつきがあり、中には発行元が自主的に発表している信用のおけないデータも混じっているのでその点はあしからず。

聖書など宗教や思想、政治関連書籍および漫画は除き、単一本での発行部数で多かったとされる書籍ベスト10は、

(1)チャールズ・ディケンズ著「二都物語」 2億部
(2)J・R・R・トールキン著「指輪物語」 1億5000万部
(3)曹雪芹著「紅楼夢」 1億部
(4)J・R・R・トールキン著「ホビットの冒険」 1億部
(5)アガサ・クリスティ著「そして誰もいなくなった」 1億部


(6)パウロ・コエーリョ著「アルケミスト - 夢を旅した少年」 1億部
(7)C・S・ルイス「ライオンと魔女」 8500万部
(8)ヘンリー・ライダー・ハガード「洞窟の女王」 8300万部
(9)アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子さま」 8000万部
(10)ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」 8000万部
  ※部数は推定(以下同)


とされています。この中で読んだのは「星の王子さま」「そして誰もいなくなった」と「ダ・ヴィンチ・コード」だけです。たぶん平均的な50代日本人とほぼ一致しているのではないでしょうか。

日本人が書いたベストセラーでは、太宰治著「人間失格」と村上春樹著「ノルウェイの森」が共に1200万部となっています。

「ノルウェイの森」などは多国語に訳されてはいますが、やはり日本語の壁は厚いようです。

日本国内では50万部もでれば大ベストセラーですが、人口が日本の10倍の中国では50万部ぐらいでは果たしてどうでしょうか。人口が10倍でも熱心な読者人口も10倍いるかどうかはわかりませんが。

シリーズもの、あるいは定期刊行される書籍の累計ベストセラーは、

(1)J・K・ローリング著「ハリー・ポッターシリーズ」 4億5000万部
(2)R・L・スタイン著「グースパンプス」 3億5000万部
(3)E・S・ガードナー著「弁護士ペリーメイスン」 3億部
(4)スタン&ジャン・ベレンスティン「ベレンスティン・ベアーズ」 2億6000万部
(5)子供向けゲームブック「きみならどうする?」 2億5000万部

などとなっていますが、1位の「ハリー・ポッターシリーズ」は私も数巻読みましたが、それ以外は日本ではあまり知られていません。「グースバンプス」は今でもそこそこ売れていたりするのでしょうかね?

さて日本の書籍(シリーズもの累計)では、

(1)吉川英治著「宮本武蔵」 1億2000万部
(2)細木数子著「細木数子の六星占術あなたの運命」 9300万部
(3)池田大作著「人間革命/新・人間革命」 4000万部
(4)山岡荘八著「徳川家康」 3000万部

などとなっています。おそらく累計だと1億部はいっているはずのJTB時刻表などはカウントされないのですね。定期刊行物なのに。

「宮本武蔵」全8巻は読みましたが、元々は太平洋戦争前の1930年代に新聞連載小説として連載され、その後単行本や文庫になっています。

映画化やドラマ化でも定番の作品ですが、最近の若い人には同作品を原作としたコミック「バガボンド」のほうがよく知られているのでしょう。

8巻計1億2000万部が売れたと言うことは、単純計算すると、(発売開始後80年近く経っていることを考慮しなければ)全国民の8人に1人が8巻すべてを買ったか、赤ちゃん含め全国民が一人1巻を持っているという計算になりますから想像するとものすごい数です。

余談ですが、この吉川武蔵は巌流島の決闘で終わります。巌流島の決闘以降を描いた小山勝清著「それからの武蔵(全6巻)」も意外と知られていない武蔵の晩年が描がかれていて面白かったです。

細木数子氏の占い本(シリーズ)がこれほど売れていたとは驚きです。私は読んだことはありませんが、占い本として9300万部というのはギネス記録に認定されているそうです。

これだけ売れるともう完全に左うちわの印税生活でしょう。1冊552円として著者に入る印税が1割の55.2円×9300万部=51億3千万円ですからね。ホントか?

「人間革命/新・人間革命」は創価学会第2代会長・戸田城聖、第3代会長山本伸一の半生を描いたノンフィクション大河小説とのことですが、私は読んでいませんのでなんとも、、、実際に書いた人にはそれ相応の謝礼がちゃんと渡っているのかが唯一の関心事です。

4位の山岡荘八著の「徳川家康」(全26巻)とランク外の吉川英治著「新書太閤記」(全11巻)の超長編小説は、そのうちいつか読もうと思いつつ、まだ実現できていません。

仕事を引退してからか、大病を患い長期療養するなど、暇な時間がたっぷりとできてからゆっくりと味わうことになりそうです。

次に日本がお得意分野と思われる漫画作品(シリーズ累計)で見るとどうなるでしょうか?

世界の漫画(シリーズ含む)発行部数ランキング

(1)「クラシックス・イラストレイテッド」アルバート・ルイス・カンター作 10億部
(2)「X-メン」 マーベル・コミック作 5億部
(3)「タンタンの冒険旅行」エルジェ作 3億5000万部
(4)「アステリックス」ルネ・ゴシニ(原作)、アルベール・ユデルゾ(作画) 3億5000万部
(5)「ラッキー・ルーク」ルネ・ゴシニ(原作)、モリス(作画) 3億部
(6)「ピーナッツ」チャールズ・M・シュルツ作 3億部

と、意外にも上位6位に日本漫画は出てきません。やはりここにも日本語の壁があるのでしょうか。

が、しかし7位以下は、

(7)「ONE PIECE」 尾田栄一郎作 2億8000万
(8)「ドラゴンボール」 鳥山明作 2億3000万
(9)「キャプテン・アメリカ」 マーベル・コミック作 2億1000万
(10)「スーパーマン」 DCコミック作 2億
(11)「ゴルゴ13」 さいとう・たかを作 2億

と、ようやくお馴染みの作品が登場してきます。

今後の活躍次第ですが、まだ連載中の「ONE PIECE」や「ゴルゴ13」などは十分ベスト5入りの可能性もありそうです。ドラゴンボールは連載は終わっていますが今なお人気は高く、日本はもちろん海外でも人気があります。

もうひとつ意外に思ったのは、アニメの世界では圧倒的に強いウォルト・ディズニーものがないこと。コミックから早く抜け出して映画やテレビのアニメへとシフトしたせいでしょうか。

あと下記を見てもわかりますが女性漫画(ベルバラとかガラスの仮面、花より男子とか)の販売数は意外と伸びていません。

11位以降、日本の漫画だけを抜粋すると、

 ブラック・ジャック 手塚治虫作 1億7600万部
 ドラえもん 藤子・F・不二雄作 1億7000万部
 こちら葛飾区亀有公園前派出所 秋本治作 1億5527万部
 名探偵コナン 青山剛昌作 1億4000万部
 NARUTO -ナルト- 岸本斉史作 1億2650万部
 SLAM DUNK 井上雄彦作 1億1897万部
 美味しんぼ 雁屋哲(原作)、花咲アキラ(作画) 1億1120万部
 鉄腕アトム 手塚治虫作 1億部
 タッチ あだち充作 1億部
 北斗の拳 武論尊(原作)、原哲夫(作画) 1億部
 金田一少年の事件簿 天樹征丸(原案・原作)、金成陽三郎(原作)、さとうふみや(作画) 9000万部
 サザエさん 長谷川町子作 8600万部
 キャプテン翼 高橋陽一作 8000万部
 はじめの一歩 森川ジョージ作 7550万部

となり、13作品がシリーズで1億部を超えています。シリーズものの日本の小説で1億部を超えているのは「宮本武蔵」だけですから、やはり漫画の人気はさすがと言えます。

もう何十年間も若者の読書離れが言われ続けていますが、要は難しい文学や哲学、ビジネス書から漫画本へ移行しただけではないのか?とちょっと思ったり。

私はといえば、上記の漫画の中ではブラック・ジャックは昨年の夏休みに全巻一気読みしましたが、あとは読んでいないか1~2巻程度を喫茶店で暇つぶしで読んだぐらいです。

子供の頃は漫画よりもアニメが好きであまり漫画本を読んだ記憶はありません。今も小説と比べるとやっぱり小説をとってしまいます。


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アリアドネの弾丸(上)(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 海堂尊

チーム・バチスタの栄光」から始まる東城大学医学部付属病院シリーズ(不定愁訴外来 田口公平シリーズ)の第5弾作品で2010年(文庫は2012年)の発刊です。

現役医師が医療を扱った作品を書くというのは過去にも例が多く、それは医師になる人というのは、多彩な才能をもった人が多いということなのでしょうか、森鴎外や手塚治虫をはじめとして渡辺淳一氏、帚木蓬生氏など、最近では「神様のカルテ」で夏川草介氏も大ヒットを飛ばしています。

医療の世界というのはまだまだ学閥や師弟関係が重要視される閉鎖的で保守的な世界ですが、海堂氏は小説の中で厚労省との関係、製薬や医療機器会社との癒着、医療事故の責任問題など多くの話題を提供してきました。

しかし現実の社会において、つい行き過ぎたところもあり、Ai(エーアイ:死亡時画像診断)の理解促進に力を注ぐあまりに東大教授から訴えられ名誉毀損で敗訴しています。

古い慣習にとらわれない医療界の中では異端児とも言える医師ですが、そう言う人達が、硬直化しているように見える医療の現場を少しずつ変えていくのかも知れません。

物語は、主人公田口公平医師が病院長に呼び出され「エーアイセンター長」に任命されたところから始まります。

このエーアイセンター、その運用主導権を巡って診療側と警察など司法側が激しく主導権を巡り争っていて、その混乱必至の中へほりこまれるという構図です。

なぜ司法が死亡時画像診断において主導権を得たいのかというと、原因が明らかでない死亡者所見は、9割は司法の検死官の状況判断、1割だけ司法解剖をおこない、警察と法医学側がすべての権限を握っていました。

しかし最近流行し始めたDNA鑑定など新技術により、誤認逮捕だったことが明らかになる例が出てきたり、死亡原因が後に問題になってきたりして警察の自信と信頼が揺らいできています。

もし原因が不明の死亡者全員分のエーアイを実施しておけば、後々問題になったときの証拠として利用できると同時に、不可解な死因や警察が捜査上隠しておきたい場合でも、隠蔽されることなく診療側が行えば公正にオープンにできるということです。

そこで診療側主導で導入されてしまうと、今後司法捜査がやりにくくなるのではという危惧があり、その運用を司法側で押さえておき、あわよくばつぶしてしまおうという目論見があるからです(もちろん小説です)。

一方では診療界としては、本当の死因を究明しデータを蓄積することで医療の発展につながります。また遺族のことを考えると、原因が特定されていなくとも現状ではわずか1割しか解剖されず、証拠も残さないまま葬られてしまうケースをなくし、絶対的な権力を握る司法の暴走を食い止めることができると考えています。

このシリーズのオールスターキャストとまではいかないものの、田口公平と同級生の島津吾郎、火喰い鳥厚労省の白鳥圭輔、医師資格と弁護士資格も持つ才媛姫宮、元碧翠院桜宮病院医師だった桜宮小百合など過去のシリーズや、シリーズ外からもチラッと登場する場面もあって楽しめます。

著者別読書感想(海堂尊)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

パルテノン (実業之日本社文庫) 柳広司

トーキョー・プリズン」(2006年)「ジョーカー・ゲーム」(2008年)で完全にブレークした柳広司氏のこの作品は、それらの発表前、2004年に刊行、2010年に文庫化された古代ギリシアを舞台にした小説で、プロローグでも触れられていますが、柳氏が若い頃にギリシアをひとりで訪れた時この構想を考えついて一気に書き上げたもののようです。

巻末の解説で宮部みゆき氏も書いていますが、この著者柳氏の作品は、様々な時代をまるで見てきたかのように小説の中で再現して見せます。「トーキョー・プリズン」は終戦直後、「ザビエルの首」は400年前の戦国時代、そしてこの「パルテノン」は紀元前4世紀のギリシアと、その歴史考察力と創造力は見事です。

物語は「巫女」「テミストクレス案」「パルテノン」の三つの物語にわかれていて、書かれた時期は別々のようですが、それぞれに少しずつ関係する連作ともいえるものです。

時は紀元前5世紀から4世紀にかけてのギリシアの話しで、三度にわたるペルシア軍が襲ってくるペルシア戦争と、その後栄華を極めた都市アテナイ(首都アテネの古名)が誇るパルテノン神殿の建築、アテナイとスパルタの内戦などを中心とした歴史ストーリーで、いずれにしても日本人には馴染みの薄いギリシア古代史が、相当脚色されているとはいえ面白く読むことができます。

著者も脂がのった40代半ば、まだ大きな賞には恵まれていませんが(「ジョーカー・ゲーム」で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞は受賞されていますが)、近いうちにきっと大物を釣り上げるそうなのは間違いないでしょうから、ますます楽しみな作家さんです。

著者別読書感想(柳広司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ニライカナイの語り部―作家六波羅一輝の推理 (中公文庫) 鯨統一郎

2008年に発表、2010年に文庫化された「作家六波羅一輝シリーズ」の二作目です。同シリーズ第1作目の「白骨の語り部 - 作家六波羅一輝の推理」と第3作目「京都・陰陽師の殺人―作家六波羅一輝の推理」はテレ朝系土曜ワイド劇場でそれぞれ2010年と2012年にドラマ化がされていますのでそちらを先に見て知った方も多いのではないでしょうか。

物語の主人公はデビュー作こそヒットしたものの、次作がなかなか書けずに出版界からも忘れ去られそうになっているミステリー作家で(決して著者そのものを反映しているというわけではないでしょう)、このシリーズは筆者お得意の歴史もの+西村京太郎氏や内田康夫氏らが得意とする紀行ものを合わせた推理小説と言っていいでしょう。

「ニライカナイ」という言葉、普通の関東在住関西人にとっては初めて聞く言葉で、Wikipediaによると「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。」「遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。」とのことで、よくわかりませんが、なんとなくロマンがありそうです。

その伝承が残る地域にリゾート施設を作ろうとする人と、建設に反対をする住人の対立があります。主人公達がその地に取材に訪れたあと、関係者が何者かに殺害されるという事件が起き、「ニライカナイ」の伝承とリゾート施設建設に絡む利権を暴き出し、主人公の作家と相棒の新人編集者が謎を解いていくこととなります。

物語の中には、ジュースの中の氷を紙ナプキンで釣り上げる方法やスパムメールの語源など、ストーリーとは関係がないうんちく話しが盛り込まれていて、そういうところもこの作者の作品ならではの楽しみ方です。特にデビュー作「邪馬台国はどこですか?」は一番のお勧めです。

著者別読書感想(鯨統一郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

そして、警官は奔る (講談社文庫) 日明恩

昨年読んだ「鎮火報」が、たいへん面白かった日明恩(たちもりめぐみ)氏の作品で、2004年(文庫は2008年)発刊されています。あとで知りましたが、この作品はシリーズ化されていてこの本が第2作目です。シリーズ1作目は「それでも、警官は微笑う」が2002年に発刊されています。

しまったなと思うのは、登場人物などその1作目からの流れに関係すると思われることが結構でてきますので、この2作目から読むとなにのことを言っているのか意味不明の箇所がいくつかあります。

シリーズものの場合、どれから読んでも影響がない作品もありますが、そういうところを気をつけて読まなければいけませんね。

寡黙な警視庁蒲田署の刑事武本と、武本を慕う元部下で現在は退官している潮崎の二人を主人公としたこの作品は、外国人の不法滞在とその子供達がテーマとなっています。

おそらくシリーズ1作目でなにかが起きて警視庁を退官してしまったらしい潮崎が、この作品では国家I種試験に合格し、いわゆるキャリアとして警察庁入庁をほぼ決めてから先輩武本の前に現れます。ところがこのコンビがどうして生まれてどういう関係なのかは2作目から読むとわかりません。つまり1作目から読み直せということなのかしら。

多くの警察物小説にも共通しますが、警察内部のことが詳しく書かれていて、よく調べたなと感心します。特に女性作家でこのような男の刑事を主役とする小説を書いている人は少ないでしょう。

ちなみに国家I種試験でキャリアの道を歩むのと、通常、高卒・大卒で巡査から入るのとでどれだけの差があるかというと、I種合格者が入庁し7年経つと自動的に階級で言うと上から5番目の警視になります。

大学卒業と同時に22歳で入庁すれば29歳で一般的に各地の警察署長に多い警視の階級になれるわけです。

一方でもっとも下の9番目の階級で巡査から入れば警視まで上がるのは難しく(キャリアも含め警察官全体のわずか2.5%)、しかも順調に昇任したとしても45歳以上となります。

実務能力があろうとなかろうと関係なく、入るときに大きな格差があるわけです。

読み進めていると、堂場瞬一氏の警察小説「刑事・鳴沢了シリーズ」と雰囲気が共通するところがあります。同シリーズは全部を読みましたが、いま思うと昇進や権力には興味がなく、勧善懲悪、クールだが心の中は温かいと理想に近い刑事で、ちょっと現実的にはあり得ねぇと思ったり。

正直に言うと「鎮火報」の主人公のような軽いノリの軽快なストーリーを期待していたのですが全然違っていて、どちらが本当の日明恩氏の作風なのかよくわからなくなりました。

まぁ両方っていう答えなのでしょうけれど。

しかしこの手の刑事を主人公とした小説は数多くあり、デビュー作からのシリーズとは言え、厳しく言えばこの作者のものでなければならない特徴も理由も特に見つけられません。それゆえにこの作者には刑事以外を主人公とした作品を強く望みたいところです。

著者別読書感想(日明恩)


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対岸の彼女 (文春文庫) 角田光代

2004年に発刊(文庫は2007年)された直木賞受賞作品です。小説のスタイルとしては二人の主人公がいて、そのうちのひとりは高校生だった頃と現在、もうひとりの主人公は現在だけで、それぞれの視点で過去と現在が交互にいったりきたりします。

女子高生の葵は中学校時代からどうも同級生同士の人間関係に不安があり、横浜の中学校ではいじめに遭い、高校へ進学するときには両親に頼み、母親の実家がある群馬県の高校へ入学することにします。そこで魚子(ななこ)といういたってマイペースな同級生と知り合い、親友になっていきます。

その葵は東京の大学卒業後に旅行会社を起業しますが、新規事業として家庭向けの清掃サービスを立ち上げるため従業員を募集します。その従業員に応募してきたのが来たのがもうひとりの主人公小夜子です。

小夜子は結婚してまだ小さな子供を抱えていますが、同じような子供を抱える母親同士のつき合いなど人間関係が苦手で、それが子供にも影響していくことを日々恐れています。

夫や姑の反対を押し切って、清掃の仕事を覚え、開拓していきますが、やがて葵との関係に亀裂が入り始めます。

女性の感性で書かれているので、なかなか男、特に古い男には理解しがたい感覚のところが多々ありますが、そういうものなのかぁとあらためて結婚した女性の悩みを知ることにも。

主人公二人ともいつうつ病になってもおかしくなさそうな、よく言えば繊細、悪く言えば神経質っぽいところで、読み進めていくのが重くつらかったりしますが、最後の展開で救われた思いをしました。

著者別読書感想(角田光代)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

発火点 (講談社文庫) 真保裕一

真保氏の作品は過去に数多くを読んでいますが、テーマとする幅が広く、また想定される読者層にも偏ったものではなく、しかも長編が多いので読み応えを感じます。この「発火点」も560ページを超える長編です。

デビュー作の「連鎖」は公務員を、「ボーダーライン」ではロサンゼルスの日系人探偵、映画にもなった「ホワイトアウト」はダムの運転員を、「奇跡の人」は脳死から復活した記憶喪失の男、「奪取」は偽札作り、「朽ちた樹々の枝の下で」は森林作業員を、「黄金の島」ではベトナム難民と日本のヤクザを、「アマルフィ」では外交官をと、バラエティにとんでいて、どの作品をどこから読んでも飽きません。私にとっては「読みたい本がないときの真保頼み」となっています。

「発火点」は2002年に初出(文庫は2005年)の小説です。主人公は21歳の若者で過去に父親を父親の幼なじみに殺されるという過去を持っています。

その父親を失った経緯や理由が、本文中ではずっとチラみせだけで、なかなか本題に入ってこないので、ちょっとイラっときてしまいます。

ストーリーは家を出てアルバイトを転々としすさんだ生活をおくる現在と、父親が殺された12歳の頃の話しが行ったり来たりするのは上記角田光代氏の「対岸の彼女」と同じような構成です。

著者自身、高校を卒業後、志望していた企業に落ち、その後多くの仕事を転々とした経験があり、21歳の鬱積した青春をおくっている主人公には、著者のその頃の思いや考え方が反映されているのかなと勝手に判断しています。と書いたあとで文庫の「あとがき」を読んだらそのようなことが書かれていました。

著者別読書感想(真保裕一)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

泥棒は詩を口ずさむ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ローレンス・ブロック

初出は1979年というからかなり前に書かれた作品(文庫は1994年刊ですが現在は廃刊?)です。著者ローレンス・ブロックはチャンドラー、パーカー亡き後、私が認める数少ない読ませるハードボイルダーですが、この作品は欠かさず読むアル中探偵「マット・スカダー・シリーズ」や切手収集が趣味の殺し屋「ケラーシリーズ」ではなく、コメディタッチで軽めの「泥棒バーニイ・シリーズ」の3番目の作品です。

古書店「バーネガット書店」を営む天才的泥棒のバーニーは、来店客から稀覯本を高価で手に入れたいが、それがいまどこにあるかということを聞かされます。

つまり彼が泥棒だということを知っていて、高額を支払うから盗んできてほしいと頼まれるわけです。

高性能なセキュリティをかいくぐり、無事大富豪の家に忍び込み、他の宝石や現金には一切手をつけず、その稀覯本を手に入れますが、その後、いざ引き渡しをするところで見事に騙され、稀覯本は奪われてしまいます。

おまけに薬で眠らされている間に拳銃を握らされ、銃殺された死体と一緒に置き去りにされているところに警察官が押しかけてくるという絶体絶命のピンチに陥ります。

ま、ちょっと設定には無理がありすぎるのと、コメディと絡めながら妙に推理小説っぽく書かれているのがちょっとどうかと思いますが、元々推理小説家というジャンルではないので仕方がないかなと。

なぜ「マット・スカダーシリーズ」が大ヒットして、こちらのシリーズがイマイチなのかがわかる作品でもあります。このシリーズを読むのはこれで2冊目ですが、もういいかな。

ちなみにマット・スカダーシリーズでは「八百万の死にざま」「死者との誓い」、殺し屋ケラーシリーズでは短編連作の「殺し屋」と長編「殺しのリスト」がお勧めです。

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蛇行する川のほとり (集英社文庫) 恩田陸

同著作は2002年に初出、2007年に文庫化された小説です。恩田陸氏の小説は過去に14作品を読んでいますが、どの作品も取り上げるテーマが固定していなく、創造性が豊かで、読んでいてグイグイと引き込まれる内容にはいつも驚かされます。

恩田氏の小説は意外と映画化された作品は少なく「木曜組曲 (2002年)」「夜のピクニック (2006年)」だけなのですが、その理由のひとつとして同氏の小説では複雑な人間関係や心理描写が多いのと、気持ちよくハッピーエンドで終わるわけではなく、読者に考えをゆだねてしまう終わり方をすることも多く、エンタメとしての映像化が難しいのかも知れません。

また主人公が中高生だったりするので、そのような心理描写を表現できる演技力に優れた若い役者がなかなかいないということもあるかも知れません。その点大人のミステリーだった「木曜組曲」は、浅丘ルリ子、鈴木京香、原田美枝子などベテラン女優を揃えることで深みのある人間ドラマがうまく成立しています。

この「蛇行する川のほとり」は人気作品の「六番目の小夜子」や「夜のピクニック」と同様、主人公が高校生の小説です

。最初はそうとは知らずに買ってきて、読み始めてから50半ばのジジイが読んで面白いのかな?と疑いながら読み進めていくと、高校生にしては知的で気が利き出来過ぎの人達ばかりで、ありえねぇと思いつつも結構面白く読ませていただきました。

あらすじは、蛇行する川のほとりに立つ古い家にまつわる話しです、以上。ミステリーなので内容を書くわけにはいかないので、、、しかし出来過ぎの高校生ばかりと思っていたら、小学生の頃にはもっと出来過ぎだったとはいやはや最後に驚かされてしまいます。

著者別読書感想(恩田陸)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

盗まれた貴婦人〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 ロバート・B・パーカー

私立探偵スペンサーシリーズ38作目の作品で、日本ではこの作品と遺作となる39作目の「春嵐」はパーカーの死後に発刊されました。

この小説にはいつもお馴染みの相棒ホークやその他友人のガンマンが登場してこない珍しい作品です。それだけに派手なアクションシーンはないかと思っていたら、いきなりプロの傭兵らに命を狙われることになり、二度も死にかけます。

愛犬パールの直感や、偶然が重なり怪我もなく助かるところはかなりご都合主義のところがありますが、主人公ですから仕方がありませせん。

いつもならホークやヴィニーなど腕のいい相棒に背中を守られて読者も安心して読めるのですが、今回は州警察のヒーリィ、ボストン市警のマーティン・クワーク、フランク・ベルソンや検察にいるお友達の助けを借りながら、基本自己解決で頑張ります。

それは私立探偵としてのプライドをめちゃくちゃにされたことによります。

美術館から盗まれた小鳥と貴婦人を描いた絵画を取り戻すため、美術館の顧問を務める大学教授から、犯人から要求があった金と絵画の受け渡し時の護衛を引き受けたスペンサーですが、なすすべもなく目の前で教授は爆殺されてしまいます。

殺された教授の周辺を調べていくと、教授自身のスキャンダルや保険金、大物弁護士、それに元アウシュビッツで殺されたユダヤ人とその末裔のグループなどが浮かび上がってきます。

そうした藪を突いていると、殺し屋が現れ、スペンサーの捜査の方向が間違っていないことを確信していきます。

もうこの調査スタイルは水戸黄門の印籠のようで特に変わりはありませんが、なぜ相手側がリスクがあり、手のかかる殺害方法をとるのか?とか、たまたま関係者を尾行をした時に限り黒幕と思われる男が一緒にいるのか?とか、オランダ美術に詳しい人を探していたら偶然知り合った愛犬仲間が紹介してくれたりとか、あまりにもうまく出来過ぎているな?と思わなくもありません。

こういう小説はスピード感が重要なので、あまり細かなことにこだわるよりもスイスイいくのがいいのでしょうね。

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

星月夜 伊集院静

30年に及ぶ作家生活で初めての推理小説というこの作品は2011年に発刊されています。つまり東日本大震災が執筆中に起きていて、小説の中にはわずかながらずっと昔に津波で亡くなった家族の話しが出てきますが、その津波のイメージを入れたように思われます。

出版社のサイトにこの本について筆者のインタビューが公開されています。

初の推理小説で人の哀しみを描く(文藝春秋サイト)

その中にあらすじっぽい話しが書かれていますので、ここでは省略して感想だけを書くことにします。

著者の作品は、今までに直木賞を受賞した「受け月」を始め、12作品を読んでいて割とお気に入りの作家さんです。

特になにか特徴があるかと言うと、実はあまりなく、読んでいると宮本輝氏、五木寛之氏、白川道氏などの作品とあまり区別がつかず、複数の小説を並行して読んでいるとこれは誰の作品だったっけと時々わからなくなるときもあります。

しかし「海峡―海峡幼年篇」「春雷―海峡・少年篇」「岬へ 海峡・青春篇」の三部作は、在日韓国人二世だった自伝的作品ですが、もっとも内容が濃く感動させられる小説でした。

やはり自分が歩いてきた道をベースにして描くのと、空想や創造力だけで描くのでは著者の思い入れが違ってきます。

そういう自伝的作品を超える作品を創り出せるかが一流の作家の証となるのでしょう。

著者の作品の中では珍しい警察官や鑑識官を主人公としたこの作品は、冒頭のインタビューにもあるとおり、岩手から東京に出てきた若い女性と島根の老人が、なぜ殺されて一緒に東京湾に沈められたかを一歩一歩調べて行くというミステリー仕立ての小説です。

そのストーリーやプロットは最初に小樽で身元不明の死体が上がり、その謎を定年退職した刑事が必死に追いかける白川道氏の作品「最も遠い銀河 」ともよく似ていますが、「星月夜」のほうが話しの設定に無理がなく、より洗練されているように感じます。

その「最も遠い銀河」は先日テレ朝の開局55周年記念ドラマとして放送されていましたね。なんとなくタイトルも両方共通しているところがあるのが不思議です。

著者別読書感想(伊集院静)

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ワシントンハイツの旋風 (講談社文庫) 山本一力

直木賞をとった作品「あかね空」は「昨年私が読んだ小説ベスト1」を獲得しましたが、その影響もあって著者の作品をもっと読んでみたいと探していました。

元々は「あかね空」をはじめとする時代小説が多い著者ですが、その中にあって異色とも言えるこの作品を選んでみました。この小説は2003年に発刊された、昭和の高度成長期を生き抜いてきた自伝的小説です。

中学生だった主人公は母親と妹と3人で暮らしていましたが、生活が苦しく仕事がない高知を出て東京に出ようということになります。

転校したくなかった主人公は、母妹が上京した後もひとりで高知に留まりますが、居候先での扱いに嫌気がさし、後を追いかけて東京へ向かいます。

その際友人達とストリップ劇場へ行ったり、上京途中乗り継ぎの長い待ち時間の際に、食堂の女主人に色目を使われたりとなかなかの早熟です。その後も数多くの女性を泣かせていきます。

五木寛之氏の「青春の門」や、花村萬月氏の「百万遍 」などもそうですが、自伝小説を書くと、やたらにモテる男を書きたくなる傾向があるのでしょうかね。ま、淡々とした味気ない日々をつづっても売れる小説にはなりませんからそういうものなのでしょう。

上京してさっそく住み込みで新聞配達をおこないながら学校へ通うことになります。その頃、東京は東京オリンピック開催がもう目の前でその景気に沸いています。

住み込みで働いているそばに、綺麗な芝生に囲まれたアメリカ軍が接収して建てた住宅や宿舎があり、それがタイトルになっている「ワシントンハイツ」です。

もちろん正式名ではなく、そう呼ばれていたというだけです。そのワシントンハイツ一帯は東京オリンピック前に返還され、宿舎を改装して選手村として利用されていました。

そのワシントンハイツに毎日新聞配達をすることで、中に住むアメリカ人とも仲良くなり、会話も正しい発音でマスターしていきます。そのことが後の人生で大きく役立ちます。

実は私が新入社員で入社した際の研修が、その元ワシントンハイツがあった「国立オリンピック記念青少年総合センター」で行われ、二泊三日で宿泊したことがあります。

30年前の当時はまだオリンピックの選手村当時の建物で、かなり老朽化した施設でしたが、部屋やベッドのサイズがすべて大きいのに驚いたことを覚えています。現在はすべて新しくなっていてその面影はありません。

高校を卒業するまでは新聞配達を続け、卒業してからメーカーに勤めますが、すぐに嫌になり、つき合っていた女性が気を利かせて応募してくれた近畿日本ツーリストへ転職します。時は1970年の大阪万博の少し前で、国内旅行が盛り上がりはじめうまくその潮流にのったわけですね。

近ツリでは万博の国内旅行で成果を上げ、役員に見込まれアメリカへの添乗員も命ぜられ順調に出世をしていきます。その間も同じ社内の複数の女性と関係を持ちともし事実に基づいていたとしたらなかなか楽しい人生を送られたようです。

中高年以上の人が読むと懐かしい風景があちこちに出てくる楽しい小説に仕上がっています。

著者別読書感想(山本一力)

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神様のカルテ2 (小学館文庫) 夏川草介

2009年に発売された「神様のカルテ」は新人デビュー作品にもかかわらず高い評価を受け、2010年には本屋大賞第2位となりベストセラーとなりました。著者夏川草介氏は現役の医師でその体験などをうまく織り交ぜながら地方にある24時間365日受け入れ可能な総合病院の若い医師とその妻の姿を描いています。2011年公開の映画も大ヒットし、主演の櫻井翔とその妻役宮崎あおいがまずまずいい味を出していました。

この「神様のカルテ2」はその続編で、別々に読んでもさほど問題はありませんが、できれば順番通りに読むことをお勧めします。

内容は、松本市にある最後の砦と言われている総合病院に主人公栗原一止の医学生時代の同級生で非常に優秀だった医師が同じ病院へ赴任してくるところから始まります。そういうところは、やはり医師でありながら作家の海堂尊氏の「田口・白鳥シリーズ」の小説を想像してしまいますが、同じ医師が書く小説だけあって、医療の問題点をあぶり出すところなど似ているところもあります。

そのエリート街道まっしぐらだった同級生が実家のある松本へ幼い子供を連れて帰ってきた話しと、主人公が慕って師と仰いでいた古参の医者が倒れてしまい、精密検査をすると思いがけず重篤で「負け戦」の闘いを余儀なくされる話しが中心としつつ、妻や共同住宅に新しく入ってきた学生なども含め話しが展開していきます。

おそらくこちらも映画化はされるのでしょうけど、小説の中では「神様のカルテ」よりも信州や近郊の四季折々の風景がたくさん出てきそうで、今から楽しみです。そして「神様のカルテ 3」もすでに単行本は刊行されています。文庫本になるのが待ち遠しいです。

著者別読書感想(夏川草介)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

東京セブンローズ (文春文庫) 上・下 井上ひさし

井上ひさし氏(2010年没)は数多くの小説や童話、随筆、戯曲などを残し、直木賞、谷崎潤一郎賞、菊池寛賞、日本SF大賞、日本芸術院賞、日本レコード大賞や文化功労者顕彰まで受けた多彩な才人ですが、なんと言っても私の年代で一番有名なのは「ひょっこりひょうたん島」の原作(共作)者ということではないでしょうか。

「東京セブンローズ」は単行本として1999年に発刊され(文庫は2002年刊)ましたが、書かれた時期は1982年から1999年まで17年間に渡って(途中中断もあったそうだが)季刊誌に掲載された小説です。

舞台は終戦近い昭和20年4月から1年間、東京都の根津(東大や上野公園も近い下町っぽい文教地区)に住んでいる団扇屋の主人が書いた日記という体裁をとっています。

この日記は当時のままを再現するためか正字正かなで書かれていますので、若い人には読むのにちょっと苦労するかも知れません。私の世代だと、特にそういう教育は受けていませんが、なんとかギリギリ読むことができます。書けといわれても絶対に書けませんが。

正字正かなとは例えば本文から引用すると「帝國ホテルを三階まで登ったところで、自分はさう結論を出した。<301>と眞鍮製洋數字の貼り付けてある扉をコツコツ叩きながら文子が訊いたから、かう答えた」「天皇が神ぢやないとわかってゐたのなら、はつきりさういへばいいんだ」「彼らはいづれも學徒出陣組で、命拾ひをして復員し、元の大學に戻ったが、たちまち生活難に陥った」「發表文や聲明文にたくさん漢字を竝べて有難味を出さうとしたんでせう」という感じです。

話しは、戦中戦後の物資不足で苦心する庶民の姿、その中でたくましく生活をしていく姿など、この時代の庶民の暮らしがよくわかってたいへん興味深いです。苦労を知らず、アメリカと絶望的な戦争をしたことすら知らない小・中学生用に教科書として使うといいかもしれません。

この小説のテーマは日本語で、終戦後のアメリカ占領軍が、世界一複雑で悪魔の言語と称する日本語の改革に着手し始め、漢字を廃止しすべてカナに、そしてローマ字へと移行させようと画策しますが、それに抵抗する日本人達という流れになっていきます。久しぶりに長編小説の醍醐味を味わいました。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

鄙の記憶 (角川文庫) 内田康夫

お馴染みの浅見光彦シリーズのミステリー小説で、文庫は2006年に発刊されています。この浅見光彦シリーズというのは、小説ですでに119話、それ以外に紀行文・随筆まであり、探偵小説界のゴルゴ13と言ってもいいかもしれません。

面白いのはこれだけの小説(原作)であればテレビに映画に引っ張りだこかと思いますが、テレビでは「火曜サスペンス」を始め数多く原作となっているものの、映画で製作されたのは「天河伝説殺人事件」ぐらいです。テレビドラマになると、そのキー局によって主役の浅見光彦を演じる役者が違い、ある時は国広富之だったり、水谷豊だったり、沢村一樹だったりします。内容が映画よりも2時間ドラマ(実質90分間)向きなのでしょうかね。

あまりよく知らない人のために書いておくと、主人公の浅見光彦はフリーのルポライターで、普段は旅行雑誌に記事を書いたり、政治家の提灯記事を書いたりしていますが、なにか事件が起きると冴えわたる嗅覚を生かし、次々と難題を解き明かしていくという素人探偵です。

また事件は日本各地で起き、一種、観光案内というか紀行もの小説とも言えます。多くの場合は人に頼まれ、仕方なく事件に首を突っ込むことになりますが、いつも現地の警察から余計なことをするなと反発を受けます。そして後になって、実の兄が全国の警察署を統括している警察庁の刑事局長だということが判明し、警察の態度がコロッと一変するというのもいつものオチというか流れです。

この作品はまず最初に静岡にある寸又峡(すまたきょう)で起きた自殺か事故か事件かよくわからない遺体が発見されるところからスタートし、その後、舞台が秋田県の大曲へと移っていきます。途中まで準主役かなと思っていた、定年間近の地方の新聞社通信部員もやがて死体で発見され、その通信部員と寸又峡で捜査を共にした浅見光彦が乗り出していくことになります。

この本を読んで静岡と言えば伊豆半島や清水、浜名湖など海岸線へはよく行くものの、大井川鐵道沿線や寸又峡の南アルプス直下の地域には今まで縁がなく行く機会がなかったので、今度折を見て行ってみたくなりました。

ちなみにこの小説の中でも会話に出てきますが、寸又峡で起きた戦後史に残る大事件として、1968年に起きた金嬉老事件があります。55歳以上の人なら誰もが知っている事件で、猟銃で脅し人質をとり旅館に88時間立てこもった劇場型凶悪犯罪のハシリとなった事件です。その籠城の舞台となったふじみや旅館はその後長く営業していましたが、ここ最近の不況が影響したのか観光客減少で昨年1月に廃業したようです。

著者別読書感想(内田康夫)

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