リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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黒い家 (角川ホラー文庫)
今ではすっかり売れっ子のミステリー小説家貴志祐介氏の比較的初期(1997年初出)のホラー作品です。
主人公は生命保険会社の京都支社に勤務する独身男性です。著者は元朝日生命に勤務していたことがあり、生命保険会社の様々な内部事情が散りばめられなかなか興味深いものがあります。
特にこの小説のテーマでもある保険金殺人や不正受給の方法が詳しく紹介されていて、これを読んで保険金詐欺の不正行為を思いつくという人が出てきても不思議ではありません。
そう言えば昨年2011年のNHKドラマ「ラストマネー -愛の値段-
この小説では、主人公と保険金の支払いを求める「黒い家」に住む異様な夫婦とが対決するわけですが、私は半分ぐらい読んだ時点で、この犯罪の真の主犯はこいつだなととすぐにわかってしまいました。それが誰かは読んでからのお楽しみです。
私でも推理ができるミステリーとしてはオーソドックスとも言える設定ですが、保険金を得るためなら我が子を殺したり、自分の指だけでなく腕を切り落とすなど背筋が凍るような話しで暑い夏にはもってこいの小説です。
◇著者別読書感想(貴志祐介)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
人生の大問題を図解する!
いかにも元リクの起業家が自称しそうな「知的生産研究家」とよくわからない著者紹介ですが、いまや若者からカリスマ的存在と支持され順調にビジネスを拡大しているようで結構なことです。
今の若者の気持ち惹きつけるには「こうすれば金持ちになれる」「成功者になるためにはこうしろ」と迷いなくキッパリと背中を押してあげるのが一番いいようです。
2011年12月に発刊された本書で取り上げるテーマは大きく5つあり、「お金」「英語(語学力)」「仕事」「家族」「思考力」です。
タイトルにはありますが「図解」とはちょっと言い過ぎで、一般的に公表されている各種のデータやグラフとカットイラストがところどころに差し込まれているに過ぎません。
そして気をつけなければいけないのが、よほどの自信家なのでしょう、自分の考えに多少酔ってしまっている例が見られます。
例えば「思考力」において「ビジネスには論理的思考法が必須なのでこれからは理科系能力が重要」と断言し、その代表的な人に本田宗一郎氏などを挙げています。
本田氏は現場第1の偉大な経営者だったということは間違いありませんが、それこそ中卒で丁稚奉公した苦労人で、著者が言うような数字に明るい理論派ではありません。それはもっぱら二人三脚でやってきた藤沢武夫氏の役目でした。
理数系が得意な経営者も数多くいることはわかりますが、楽天三木谷社長やユニクロの柳井正社長のように非理科系社長の活躍などの例も多く、著者の決めつけを丸ごと信用するのはいかがなものかなぁと思わなくもないです。
ま、二人とも数字に明るいというのは間違いありませんが、経営者になればそれは自然と身につくもので、もしそれが身につかない場合は、本田氏やソニーの井深のような人のそばに藤沢氏や盛田氏がいたように共同経営者が必ず現れるものです。
苦手なことは得意な人にやってもらうというのが、今も昔も普通の考え方です。
さらに日本の危機を煽る例として中国では日本の10倍もの工学系学生がいるとデータで示されても、今や世界の工場(製造業)としての地位が確立していて人口が日本の10倍以上の国と人数で比べられても別に驚くに値しません。
そういう誤解を与えてしまいそうなデータがいくつか見られますので、闇雲に信頼できません。
広範囲な知識がまだない若い人を騙すには、こうしたデータを都合よく駆使するやり方は有効な手法なのでしょう。
細かいことは置いておき、これを読むことで、若い人にとってはこれからの人生の中で、ヒントや心掛けておこうと思うことがいくつもありそうです。若いビジネスパーソンに著者が人気がある(らしい)というのもうなずけます。
これもひとつのビジネス本というか自己啓発本ということになりますが、今の若い人は「英語や中国語を学ばなければならない」し、「稼いだお金をうまく運用して老後に備えなければならない」し、「理数系の思考法を身につけて論理的な発想力を鍛えなければならない」とすると、なんだかとても余裕のない、味気なさそうな人生だろうなぁと思わないでもないです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パズル・パレス (角川文庫)
著者は2003年に発刊された「ダ・ヴィンチ・コード
その中にはすでに映画化もされ大ヒットした「天使と悪魔
世界中に拡がるコンピュータネットワークのデータを集めて分析するアメリカの機関に勤務する暗号解読スペシャリストの女性と、その恋人の言語学者が主人公で、世界を股にかけた壮大な、、、と言いたいところですが、「ダ・ヴィンチ・コード」などと比べると底が浅く荒唐無稽なドタバタ劇としか思えないのが残念です。
現在の通信では、郵送のものはもちろん、電話も盗聴されていると考えるのが普通で、それが例えデジタル暗号化されていたとしても、国レベルの専門機関にとっては解読や盗聴は容易いことです。
急速に普及が進む電子メールにおいても、暗号化することで、一般には安全と言われていますが、それは個人や一般企業レベルの話しで、国家の安全保障機密や国際謀略を企てる犯罪者やテロリストなどのレベルにおいては、隠したい利用者と、解読したい国家との間で壮絶な闘いが水面下で繰り広げられていることが想像できます。
ストーリーはアメリカの暗号解読機関に対し、日本人技術者が絶対に解けない暗号技術を開発し、それを公表されたくなければ、すべての暗号を解読し盗聴していることを世界中に公表するように迫ります。
その絶対に解けないとされる暗号技術のパスワードを求めて主人公の一人言語学者が日本人技術者がいるスペインへ派遣され追いかけることになりますが、なぜ特殊な訓練を受けたこともない一介の学者風情が、国家機密を取り扱う重要な役目にたった一人で送り込まれるのかすごく不思議でなりません。それに気がつくと、あとはだいたいの展開が見えてきてしまいます。
◇著者別読書感想(ダン・ブラウン)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
KAPPA (徳間文庫)
私と同年齢の作家柴田哲孝氏の作品では以前に「Tengu
したがってこの小説に登場した人物が、その後の「TENGU」などにも登場しています。
著者はパリダカラリーにも出場したり、アマゾン流域へ冒険したりとなかなか活動的な方で、フィクション小説以外にも多くのノンフィクション作品も出ていることでも有名です。
内容はタイトル通りの河童伝説に基づくもので、現代の茨城県にある牛久沼(龍ケ崎市)で河童らしき動物にバス釣りをやっていた男性が襲われ半身を食いちぎられて死亡するという事件が起きます。
フリーライターで何度か牛久沼へバス釣りにも来たことがある主人公がキャンピングカーでその事件の真相を探るべくやってきます。
この主人公は世界中を歩き回り、アマゾンなどへも釣りの冒険に出掛けたとのことですから、著者の分身とも言えそうです。
この河童というのは想像的動物と言うことで、全国各地にその形跡が残っていたりしますが、いわゆるオカルト的な話にはならず、いたって現実的で上質なミステリー小説に仕上がっています。
この小説の中では、単にミステリーを楽しむというだけでなく、様々な外来生物が日本へ持ち込まれることによって、日本古来からの生物が危機に瀕し、それらを昔から育て獲ることで生活していた人々を苦しめるという環境問題に大きな一石を投じた内容となっています。
「kappa」から「TENGU」といわゆるUMA(未確認動物)シリーズはその後「DANCER
◇著者別読書感想(柴田哲孝)
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カイシャデイズ (文春文庫)
この本が8作目となる山本幸久氏の小説を読むのはこれが初めてですが、読んでいるとベテラン売れっ子作家が書いたような手慣れた読みやすい文章が私に合っていてとてもいい感じです。
著者山本氏のデビュー作品は2003年に小説すばる新人賞を受賞し、その後は年間2本ぐらいのペースで小説が出ていますが、なぜかあまり書店で目にとまることがありませんでした。どの作品も高い評価を受けているようですが、対象とする読者ターゲット層が曖昧で、小説のテーマ自体が若干地味だからでしょうかね。
この小説の登場人物は都内にある内装・設備会社で働いている人達で、章立てごと営業、施工管理、設計、新人、社長、古株お局様など年齢も仕事の内容も違う主役達が次々と入れ替わり視点が変わっていきます。著者自身は学校卒業後にこういう会社の勤務経験があるので、この業界の話しはお手の物でしょう。
しかしタイトル通り、会社の日々の出来事が淡々とつづられているだけで、なにか大きな事件が起きたりもせず、また無意味に人が殺されたり、惜しまれながら若くして誰かが病死したりする最近の小説の風潮ではなく、したがって無理矢理ストーリーを盛り上げようとはせず、普通のサラリーマンの日常が積み重ねられていきます。
と、書いてしまうとなんだか平凡すぎて面白くなさそうに聞こえてしまいますが、決してそうではなく、読む側も「こういった仕事のトラブルってあるよな」とか「ここまでひどくはないけどご無体なこと言う客はどこにでもいるよな」って頷きながらも楽しく読み進めていけるって感じでしょうか。
そして場面に盛り上がりが欠ける分、それぞれ主役(語り部)になる登場人物がみんな個性的で曰く付きで、そして魅力があり、読者がそれぞれの登場人物に自分を重ね合わせることもできそうです。そしてこの会社で一緒に働く仲間として入り込めるような感じです。会社創業時に雇われ今では古参となった女性社員の章は、浅田次郎氏が描く女性のタッチになんとなく似ていたりします。
一見すると確かに地味な小説ですが、なかなかの秀作で、できればこのメンバーでシリーズ化をしてもらいたいものです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
レンタル・チルドレン (幻冬舎文庫)
山田悠介氏は1981年生まれの小説家で、2001年発表のデビュー作「リアル鬼ごっこ
ストーリーは、タイトル通りで、病気で最愛の息子を5歳で亡くしてしまい、生きる気力もなくしてしまった夫婦が、あるきっかけから知ることになった身寄りのない子供を有料でレンタルできる会社へ行きます。そして会社のデータベースで死んだ息子と生き写しにそっくりな子供を見つけます。
その子供を我が子の再来と信じ、自宅へ連れ帰ったことから様々な出来事が起きていきます。そしてなぜ息子とそっくりな子供が存在したのかなど子供レンタル会社の謎が徐々に明らかになっていきます。
ストーリーは極めてシンプルかつ内容は荒唐無稽で、特に読者をうならせるようなひねりが効かせてあるわけではありませんが、近未来SFホラーというジャンルでしょう。
この手の作品は比較的若い年代層にとってはコミックと同じような感覚で楽しく読めるのではないでしょうか。そのコミックで言えば内容は全然違いますが大ヒット作「賭博黙示録カイジ」のような、若者向けのとっ散らかったアナザーワールド的な感じが似ています。
ただこの手のストーリーは、あまりにも現実社会を知りすぎた50過ぎのおじさんが読むと、なにか薄気味悪さだけを感じ、読んでいて楽しい小説ではありません。それならばいっそクローン技術の社会問題テーマとして20年も前に書かれた帚木蓬生氏の「臓器農場
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
影法師 (講談社文庫)
2010年に単行本で発刊され、この6月に文庫化されたばかりの著者初めて?の時代小説です。
「百田氏と浅田次郎氏の作品の共通点は?」と、問いかけをすると、おそらくはどちらも「ストーリーで読者を泣かせる」と言うのが私の答えなのですが、浅田次郎氏の場合は主に女性的な涙、百田氏のそれは男性的な涙という点に違いがあります。
もっとも先日読んだ百田氏の「モンスター
「影法師」の主人公は最下級武士の出で、子供の頃まだ幼い妹を守るため上位武士に逆らった父親が主人公の目の前で斬られてしまい、その後なにかと上位武士との確執が生まれていきます。
そして当時は厳格な身分制度があるため下級武士の子が上級武士を超えて出世することはできませんが、努力を積み重ね、そして様々な幸運にも恵まれ、やがて藩主からも認められるようになり異例の出世を果たします。
その順調に見えた主人公の飛躍には、主人公が考えもしなかった子供時代からの親友の助けがあったことが後になってから判明していきます。そのサポートが本書タイトルの「影法師」となっているものと思われます。
「永遠の0」では深い家族愛を貫くための自己犠牲を描きましたが、こちらは男の友情と藩のため大きなことを成すための自己犠牲を描いていると言っていいでしょう。そのため家族を持つ身としては「永遠の0」には泣けましたが、こちらの友情に関しては年を取りすぎたせいか感動はすれども泣けるようなところまではいきません。
おそらくは時代劇映画にふさわしいストーリーでもあるので、きっとそのうち「永遠の0
◇著者別読書感想(百田尚樹)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あたりまえだけどなかなかできない 51歳からのルール (アスカビジネス)
2010年5月に発刊されたこの本は、31年のあいだ三井物産やホリプロ、リンスステーションなど大中小の企業に勤めてきた著者が、サラリーマンを卒業してから書かれたものです。
副題にもなっていますが、50代というのは人生の最終第4コーナーであると同時に、老後に向かう残りの人生の第1コーナーであるという言葉にビビッときました。
でも著者はさすがに早稲田卒で物産に入り海外駐在経験をし、転職後も企業の役員を務め、定年を待たずに新たに起業をしてと、普通のサラリーマンからするとエリート街道をまっしぐらに進んでいる人生で、そういう人の考え方に共感し合えるはずがないじゃんという思いも正直あります。ま、しかし人の50代の生き方を知ることは悪いことではないので読み始めました。
やたらと司馬遼太郎の「坂の上の雲
内容は見開き2ページ分がひとつのテーマとなっていて、それが100あります。それだけに文章は極めて簡潔にまとめられていてわかりやすく、しかも自慢して偉ぶったり、過去の仕事を自慢するようなところがまったくなく、逆に昔の自分の行動を卑下しすぎてるのではと思うぐらい低姿勢に書かれています。たぶん著者と会って話しをすると、すごくいい人なんだろうなと想像ができます。
そして100もテーマがあるので、その中のいくつかには自分が至らなかったなと反省する箇所が発見できたり、耳が痛い話しだなと考えさせられるテーマがあったりします。
ただ人それぞれ考え方や価値観が違って当たり前なので「この著者とは家族に対する考え方が私とはちょっと違うなぁ」と感じたり、上記の読書の趣向が違っていますが、親しい知人と飲みながら軽い議論をしているようの感じで読めて、それなりに楽しむことができます。
読む側が勝手に気に入りそうな章を選んで読めばいいことですが、100話も無理して詰め込まず、この中から特に厳選した50話ぐらいが今のスピード時代にはちょうどよかったかもです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
バケツ
今年47歳になった著者北島行徳氏のことはこの本を買って初めて知りました。今回の7月後半の読書では百田氏以外はすべて初モノという珍しい結果です。
かなり前に「障害者プロレス
この本のタイトルの「バケツ」とは主人公が勤務する児童養護施設で出会った軽度の知的障害をもった盗癖のある少年のあだ名です。
この少年は母親が子供を捨てて失踪後に、穴が開いたバケツに自分の着替えを入れてこの養護施設に送られてきたことからそういうあだ名がついています。
またこの養護施設では普通に体罰がおこなわれていて、少年の背中にはひどい傷がついています。そのような境遇にありながら、明るく前向きに生きようとするバケツに主人公は深く関わっていきます。
養護施設では18歳以上は留まることはできず、肉親は姉がいるものの、男性と暮らしていて引き取ることはできないと言われ、仕方なく主人公が自分で少年を引き取って世話をすることになります。この点について縁戚関係もない人が顔見知りというだけで障害者を引き取り同居するというのは実際あり得るのかよくわかりません。
もしそのようなことができると、本書の中でも出てきますが福祉事務所から「障害者を食い物にしてピンハネしている」と思われても仕方ありませんし、さらなる虐待や強制労働、脱法行為などが起きても不思議ではありません。おそらく著者は障害者の雇用の実態に詳しいので「いろいろ反論もあるだろうけど現実はこうなんだよ」ということを書かれているのかも知れません。
主人公は養護施設を辞め、バケツを引き取って一緒に生活をしていきます。そして一緒に仕事をするために最初は自分もよく通っていてノウハウを持っている日焼けサロンの経営を始め、次に無認可保育園、さらに高齢者向けの便利屋サービス業まで始めますので、なんとすごいバイタリティです。
子供の頃から気が弱いことを気に病んで、ボディビルディングを始め、マッチョな身体になったものの、気の弱さは大人になっても変わらないという主人公ですが、なかなかどうして、こう次々に事業を立ち上げるなど、普通の若者には考えられないバイタリティの塊と言えます。その主人公があこがれる幼なじみの年上のダンス教師との関係もキラッと光っていてとてもいい小説です。
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鎮火報 (双葉文庫)
日明恩(たちもり めぐみ)氏は1967年生まれで、2002年に「それでも、警官は微笑う」でデビューしたミステリー作家さんで、この鎮火報は、第二作目であり、その後シリーズ化される「Fire's Outシリーズ」の第一作目となります。
主人公は今どきの若者で、手っ取り早く楽して終身雇用の公務員になれると消防士になった大山雄大20歳です。読み始めてしばらくすると、先般読んだ「あぽやん
ところで「鎮火報(ちんかほう)」ってなによ?と最初は知りませんでした。火事現場へ向かう際にはサイレンと激しく連打する鐘を鳴らして走りますが、消火作業が終わり(鎮火)、署に戻るときに鳴らすゆったりとした鐘の合図とのことだそうです。
そういえばサイレンは鳴らさず、鐘だけをゆっくりと鳴らして走っている消防車を何度か見掛けたことがありますが、あれがそうだったのですね。
警察ものの小説は星の数ほどありますが、消防ものは意外と少なく、あってもハイパーレスキュー(消防救助機動部隊)のようなスーパーヒーローものが多く、下町にある普通の消防署とそこの最下層の署員を描いたものは滅多に見かけません。
ストーリーは、不法滞在外国人が住むアパートに入国管理局と警察の手入れが入るとそのあとになぜかその住まいが放火されることが連続し、そのことに主人公やその仲間が気づきます。
そして誰がどうやってという謎を解き明かしていきます。主人公含め登場人物がなかなか魅力的で、それがシリーズ化されるポイントでしょう。
シリーズ第2弾は2年後の2005年に「埋み火
ただ今は不況で署員採用の競争率は高く、あらためて活動のPRをする必要もないので、難しいのかもしれません。
◇著者別読書感想(日明恩)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
無理(文春文庫)
直木賞作家奥田英朗氏の小説はお気に入りなので、文庫化されたものはほとんどは読んでいます。「サウスバウンド
この「無理」は単行本が2009年に刊行され、文庫化されるまで3年かかり、2012年6月にやっと登場しました。
ビジネス的なことがあるのもわかりますが、お願いですからもう少し文庫化までの期間を短縮してくれないでしょうかね?
その小説の舞台になるのは日本中どこにでもありそうな雪が多い地方の一都市。
日本の地方都市はどこも似たり寄ったりとなってしまい、昔あった商店街はシャッターが降り、少し離れた国道沿いに大きな駐車場をもったショッピングセンターや郊外のパチンコ店が繁盛しているという構図です。
そういえば少し前に読んだ楡周平氏の「プラチナタウン」も同じような廃れて高齢化が激しい寒冷な地方都市が舞台でしたが、こちらは誘拐、殺人、政治家と土木業者の癒着、主婦売春など犯罪絡みでもっと暗い世界が拡がっていきます。
さらには今年になって急速に話題が拡がった生活保護の不正受給の問題や、遠い昔の感となってしまいましたが、怪しい教祖が主宰する新興宗教教団など話題性もたっぷりです。
主人公は複数いて、市役所で生活保護の申請を受け付ける公務員、新興宗教にのめり込む離婚した中年女性、引きこもりのゲームオタクに誘拐された女子高生、元暴走族リーダーで現在は高齢者相手に不要な商品を売りつけるセールスマン、親の後を継いで市会議員となった二世議員とそれぞれに全然違った個性、立場、職業でありながら、狭い地方都市の中でそれが複雑に絡み合っていくことになります。
現代日本の貧しい地方都市問題と、その中で暮らす人々の縮図がギュッと1冊にまとめられたような小説で、都会に住んでいるとわからないことが多く、社会を学ぶのにもいい本です。
◇著者別読書感想(奥田英朗)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「捨てる!」技術 (宝島社新書)
最近ではやましたひでこ氏が提唱する断捨離
ま、ゴミ屋敷と言われる家が方々にあり、部屋の中がモノであふれ、それを片付けられない人が男女ともに相当数いることがわかってきたので、このようなノウハウ本もよく売れるのでしょう。
私の世代(1950年代生まれ)は子供の頃はまだ物不足の時代で、親たちはそれこそデパートの包装紙や紙袋は綺麗に折りたたみ再利用したり、電気製品が壊れても、一部の部品はまだ使えるとのことで新しい製品を買った後も大事に残してあったりしたものです。
そういう親の姿を見てきたので、私もなかなか目の前のモノが捨てられません。
その「またなにかに使えるだろう」「よくわからないからとりあえずとっておこう」「家族の誰かが読むだろう」「捨て方がわからないから後でまとめて捨てよう」と思っているうちにどんどん不要なモノが溜まってしまうという本書の指摘はグサグサと胸に刺さってきます。
捨てるための極意として本書では「3年間一度も使わなければそれは不要」としていますが、私が以前読んだ本ではそれが「1年間使わなかったモノ」だったので、1年ではちょっとなぁと思っていたので適度に緩くていい感じです。
そうすれば暖冬のため一度も使わなかったダウンや厚いソックスを1年使わなかったからと捨ててしまうこともなくいいかなと。でも結局は1年使わな買ったモノはたいがい3年経っても使わなかったというものが多いのも事実なんですけどね。
そうして身の回りを見ると、いくらでも捨てられるものが出てきますが、ただ年を重ねると、趣味的なものが相当に溜まり、それを簡単に処分するのはできず、代わりに別のモノを差し出すという「身代わり廃棄」という実態もあったりします。
その他では、誰もが大事そうに段ボールに詰めて持っている自分の子供の頃の写真(アルバムやネガフィルム)は、そういえば自分以外の誰も見たがるわけもなく、ネガとともにアルバムを処分してしまってもいいかなと思ってきました。
もしどうしても置いておきたいならば、73才になるキャスターの森本毅郎氏のように、写真やネガは必要なものはデータとしてCD-ROMに焼き、あとは全部捨てたとテレビで言っていましたが、それが正解のようです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
男の品格 (PHP文庫)
著者の川北義則氏は1935年生まれでジャーナリストからエッセイストの王道を歩いてきた方で、「大人の「男と女」のつきあい方
私も読みましたが藤原正彦氏の大ベストセラー「国家の品格
この「男の品格」(2006年)もそのうちのひとつとなるでしょうが、他にも「女性の品格
さて内容ですが、タイトルでイメージするよりはもっとずっと軽いもので、著者が考える日本人男性が持つべき精神と、他の著名人の発言をもとに「その通り!」と断じていく繰り返しです。
中でも直木賞作家の伊集院静氏が書いたとされる「男の品性とは目の前にあるものを取りに行かないこと」という言葉にはちょっとドキッとさせられたりします。
そういえば通勤時、空いた席があれば真っ先に取りに行ったり、宴会で出された旨そうな料理に真っ先に食らいついたりと、品性のないことをよくやってしまっています。
それには股関節が痛むので電車ではできれば座りたいという自然な願望や、長い行列ができる前にさっさと空いているあいだに料理を取っておこうという理由があるにしても、はたから見ると決して感心できるようなことではないでしょう。反省しきりの部分もあります。
しかし一方では他に流されず「ひんしゅくを買う大人になろう」とか矛盾するようなことも書かれています。ひんしゅくを買ったらそりゃダメでしょう。いったいどっちなんだよ!とちょっと言いたい。
また「恋愛は不倫こそが面白い」というような不道徳なところや、「男たるもの飲み物でストローを使ってチューチュー飲むな」など?な部分もかいま見られますが、それは著者の感性なのでなんとも言えません。
同様に著者の思想、思いこみ、価値観がちょい上から目線でやってくるので、迷える指示待ちな弱気な中年男に対して物言うスタイルは、読む人によっては「なにをえらそうに」と腹が立ってしまうかもしれません。
したがって残念ながらAmazonの読者評価はかなり低いものとなってしまっていますが、人に言われて初めて気がつくということもありますし、中年以降になると人からあれこれ指摘されることも少なくなりますので、そういう人が一度謙虚になって読むのにはちょうどいいかもしれません。私の評価は結構高めです。
◇著者別読書感想(川北義則)
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いつもの朝に(集英社文庫)
今邑彩(いまむらあや)氏は1955年生まれというから私と年齢の近い推理小説家です。作品を読むのは今回が初めてです。
この「いつもの朝に」は2006年に発刊され、2009年に文庫化された作品で、主人公は絵描きの母親と暮らす中学生(兄弟)で、ふとしたきっかけから自分たちの出生にまつわる忌まわしい過去と謎を知ることになり、その謎を追いかけていくことになります。
プロローグに出てくる母親が描いた絵画作品に必ず描かれている顔のないのっぺらぼうの小さな男の子の姿と、一家の絵の中に出てくる「へのへのもへじ」で描かれた両親や姉の顔。その理由がこの小説のストーリーの柱として、徐々に明らかとなっていきます。
人が死んだ、殺されたというのが大半の推理小説の中にあって、特段この小説に出てくるような悲惨な出来事が小説に描かれることは珍しくありませんが、それにしても子供が大きくなるまで、それらのことが一切知らされず、また気がつかずにいるということは現実的には珍しいことです。
そして、子育てをしてきた私にとっては手にとるようにわかるのですが、普通の中学生が自分の生い立ちを調べるため、親に内緒で泊まりがけの旅行へ出掛けますが、その行き先を騙してなんてことは、実現的には不可能でしょう。
また小説では他人の子供を戸籍上わからないように養子ではなく嫡男として届け出をしたようなことが書かれていましたが、病院で産まれた子供を、母親が出産と同時に亡くなったからと言っても、赤の他人の子供として証明してくれる医者がいるとはとうてい思えません。バレたら医師資格の取り上げだけでなく関係者全員が犯罪者として罰せられることになります。
ま、そのようないくつかの矛盾や、あり得ない設定が所々に目立ちますが、本来なら重苦しく暗くなりがちな内容であるに関わらず、主人公が二人の明るい中学生ということもあり、そうはならずに、家族の絆や血筋というものを考えさせられる小説です。
◇著者別読書感想(今邑彩)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ビリー・ミリガンと23の棺 (ダニエル・キイス文庫)
解離性同一性障害(多重人格)者で現在も健在なビリー・ミリガン氏は、作家ダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン
ビリー・ミリガン氏は、1955年生まれで、子供の頃に義父から性的虐待を受けており、その頃から多重人格が形成されたようです。そして大人になってからはいくつもの重大な事件を引き起こし、刑務所にも入れられていますが、その都度ころころと人格が変わるため、割と早くから解離性同一性障害と一部の学者には認定されました。
しかしこの本の出来事が書かれている時代(1980年代半ば)は、現在ほどはまだこの病気がよく知られていなかったのと、学者以外の例えば刑務所の刑務官や介護人、裁判所の法律家、政治家などには「信用できない」「俺は騙されない」などと長く疑い続けられます。
彼の人格は種類が多いのが特徴的で、他の人格のことは一切わからないビリー(基本的人格)、8歳のデイヴィッド、14歳のダニー、縄抜けの名人トミー、唯一タバコを吸うアレン、犯罪を好むケヴィン、レズビアンのアダラナ(女性人格)、イギリス訛りのアーサー、暴力的なレイゲン、失読症のクリスティーン(女性人格)、ユダヤ教徒のサミュエルなど合計23人の人格を持っていることが判明しています。
この23の棺では、精神病と診断されながらも、よき理解者と引き離され、引き起こした事件の凶悪性と、政治的な理由によりその治療設備が十分とは言えない曰く付きの刑務所へと移されてからのことが細かく書かれています。
起きた事実を微に入り細に入り文章に起こすのは、記録としてはいいのでしょうけど、こういう読み物にはどうも合いません。というのもビリー自身に他に22の人格があり、収容される場所により担当医や所長、介護人がいて、法廷では検事や裁判官、弁護士がいて、さらに同じ入院仲間がいるわけで、登場人物が多すぎて混乱の極みです。
さらには複数の治療薬の名称が出てきて、それがどういう効果を及ぼすかなど、いちいち細かく知っておく必要があるとは思えず、そういった名前や固有名詞だらけで多くの行が埋まってしまっています。
なので、この本を読んでいると、まるで聖書か哲学書のように、数分で強力な睡魔が襲うことになり、ちょっとどうかなと思った次第です。
もっともこの本は小説ではなく、一人の解離性同一性障害者の苦難の記録として、起承転結や場面を盛り上げるような必要もなく、淡々としたものだと最初から理解しておくべきなのでしょう。
ダニエル・キイスが書いた本では、フィクションの小説でデビュー作「アルジャーノンに花束を
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)
松永和紀(まつなが わき)氏は元毎日新聞社の記者で、その時は主として科学分野を担当されてきた方です。その後フリーとなってからも科学分野のライターとして活躍されています。
この2007年に発刊された「メディア・バイアス」は、2008年に海堂尊氏などと並び「科学ジャーナリスト賞2008」を受賞されています。と言っても極めて狭い世界の話しですから、関係者以外知っている人はほとんどいないわけで、私もWikipediaでこの賞のことは初めて知りました。
2011年の原発事故で、多くの「とんでも科学者」「とんでも評論家」「とんでも政治家」が世間を賑わしましたが、著者はもっと早くから特段自分の役にも立たない「とんでも科学」を糾弾してきています。そfれには著者自身が新米で新聞記者になり、いきなり知識もない中で科学の記事を書いてきたという反省もあるのでしょう。
内容はテレビの情報番組でよくある「○○を食べると癌にならない」などの健康情報の嘘や間違った情報を平気で垂れ流すマスメディアへの批判などです。新聞や雑誌、週刊誌でも毎度よくやっていることですけどね。それと添加物と天然物とどちらが本当は安全なのか?など身近な疑問を紹介していきます。
食品添加物に関して「健康へのリスクは確率論で測る」的なことが書かれていますが、それはまさに昨年から言われ続けてきた原発の安全神話と同じところがあります。
しかし科学者と違って普通の人は「嫌なモノは例え確率が極端に低くても嫌だ」という自然な気持ちや感情があることを忘れてはいけません。したがって食品添加物を極力減らした物がより受け入れられるという市場経済を無視して語ることはできません。
新書にふさわしい「世の中の常識は科学者の非常識」みたいな内容ですが、食品添加物にしてもマイナスイオンにしても、遺伝子操作大豆にしても、どの(いつの)情報が正しいかなんては先になってみないとわからないことが多く、研究が発表されているから正しい(はず)なんてことは誰にも決めつけることはできないというのが読んでみての感想です。
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大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)
誰しもいつかは迎えることになる往生。その死への旅をどうすれば人間らしく尊厳をもって向かえることができるかを老人ホームの医師でもあり、市民グループ「自分の死を考える集い」を主宰する中村仁一氏が現場で経験したことから書いたものです。
タイトルが刺激的で、当然他の医者や医師会などからは反発を招き、様々な反論や批判を浴びることになるというのも本人は承知の上です。
基本的にこの本では高齢者の老衰死を扱っているので、まだ若い人へのメッセージではありません。
なので「手術すればまだ治る可能性があるのだから」「できるだけのことをして一命を取りとめるべき」と言った批判は無意味です。
著者はもう高齢で引退間近な医者なので、誰に気兼ねをすることもなく、そして今更ながらキャリアに傷がつくわけでもなく、どこまでが真実で事実であるかは読み手に任せるとして、本音で言いたい放題で、なかなか面白い本です。
著者がこの本で伝えたいのは、
1)誰にも寿命はあるので、高齢者に対し医療で無理に数日長引かせるような延命療法はやめよう
2)医者だからといって万能ではないので大きな期待を寄せるのはよそう
3)癌は痛くて苦しむものばかりではなく、治療をやめれば痛みはなくなり死ぬ直前まで好きなことをして過ごせる場合も多い
4)病院で検査して病巣が発見されると、穏やかな老衰で死ねず、可能な限りの延命策が施される
5)元々動物が本能として持っている死期を察する能力を取り戻そう(機械や薬で生かされるのはやめよう)
などです。
それ以外にも、死期が近づいたと思ったら、それなりの準備をし、家族にも心の準備をしてもらうという内容が書かれています。先月人気司会者みのもんた氏の奥様が亡くなり、喪主の告別式の挨拶で「妻の喪服を娘が着られるように仕立て直しがしてあった」という話しにジーンときましたが、本書にも「癌で死ぬのは事前に余命がわかり、それまで様々な死ぬ準備ができていいことだ」と書かれています。
誤解されないように補足しておくと、3)4)はよく「検査で癌が見つかったときはすでに手遅れだった」ということがありますが、これからもわかるように、癌の発生だけで我慢できない痛みを感じることは少なく、痛むのは手遅れなのに延命措置だけで放射線や強力な薬で癌を攻撃をするからです。そういう治療をしないと癌による痛みは最期まで少ないということです。
放射線治療や、劇物薬品によって癌も一時的には小さくなるかも知れないけど、同時に体力も奪われ、多少長生きできたとしてもベッドでチューブだらけにされ、寝たままで過ごすしかありません。
それならば悪あがきはやめて「手遅れなら一切の治療はやめ、今まで通りに身体が動く状態で残りの寿命を有意義に過ごし、残された余命を楽しむのもいいのでは」ということです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さよなら渓谷 (新潮文庫)
著者の吉田修一氏は、2002年「パレード
最初の部分には、ちょうどこの作品を書いていただろう2006年に起きた秋田連続児童殺害事件の、我が子を殺しておきながら被害者の母親を装い、マスコミに追いかけ回されたあげく逮捕されるという事件をヒントに作られています。
また、犯人と被害者の心的相互依存症、ストックホルム症候群のような男女の関係も出てきたりと、ありきたりとは言え、ミステリー仕立てで登場人物の心理描写が巧みです。
誰しもちょっとした気の迷いや勢いで重大な犯罪を犯してしまう可能性があります。この小説の登場人物には大学生時代に羽目を外しすぎて、名門野球部の仲間と女子高生を寮に連れ込み、酔った勢いで乱暴を働いてしまうという取り返しのつかない凶悪犯罪を起こしてしまいます。これも現実に起きた事件を下敷きにしているようです。
都会で生活していると、満員電車で足を踏んだ肩がぶつかったで喧嘩がちょくちょく起きます。最初は口げんかで済んでいても、それがちょっとした一言やきっかけで、殴り合いになったり、ナイフで刺されたり、ホームから突き落とされたりというようなことが起きます。
多くの場合、先に手を出して相手に怪我をさせたほうが、傷害罪などに問われることになり、当然前科がつきます。
厳しい勤務先なら懲戒解雇され、転職しようにも賞罰ありの前科持ちを喜んで採用してくれる会社など多くありません。一時の怒りでふとしたことからそうなってしまうと、今まで築いてきた安寧な人生が狂ってしまうことになってしまいます。
◇著者別読書感想(吉田修一)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
拡がる環 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
原題は「The Widening Gyre」で「拡がる輪」でほぼそのままの直訳です。1983年の作品(日本語版1984年)で、スペンサーシリーズ10作目の作品です。
物語はアメリカ上院議員選挙に絡みその立候補者に頼まれ、妻のスキャンダルに関連しての依頼です。
そのスキャンダルはおそらくライバルの政敵が仕掛けてきたと推測されますが、そのやり方がスペンサーにはどうも納得がいかず、おなじみの新聞社や警察署の友人の協力を得て、その政敵である下院議員に近づいていきます。
終盤にさしかかり、珍しくギャングに撃たれてしまいますが、軽傷で済み、その後は相棒ホークの力を借りて、問題を無事に解決していきます。
この作品では、スペンサーと離れて暮らすことになった恋人スーザンとのやりとりや、18歳に成長したポール・ジョコミンとの人生についての会話など、事件以外のスペンサーの考え方、生き方などが描かれています。
そのあたりがハードボイルドを期待しているとちょっとうざっぽく思えますが、その後に続くスーザンが男を作ってロスへ旅立ったり、独り立ちしてスターになっていくポールなどとの関係の原点になるのかもしれません。
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
モンスター (幻冬舎文庫)
この「モンスター」は百田尚樹氏メジャーデビュー後5作品目で2010年に発刊された作品です(文庫化は2012年4月)。同氏のデビュー作「永遠の0
その後の作品「ボックス!
著者の作品の中では、すでに「ボックス!
この小説はなかなか映画化は難しそうな内容で、バケモンと言われたきたブルドッグのような顔の少女が、家族からも追い出され、身体を売って自力でお金を作り、それで整形手術を繰り返し、世間を見返していくというストーリーです。
小説ならまだしも、映画にすると、顔の変化は特種メークでいくらでも変えることができるでしょうけど、偽善的な社会、特にフェミニスト団体から猛抗議を受けてしまいそうな内容です。
韓国では整形外科が普通におこなわれていて、別に珍しくないと聞きますが、日本ではまだそれへの抵抗感や反発が強いのと、風俗で働いてお金を稼ぎ、整形手術につぎ込むという、決して誉められたやり方でない方法を美化し推奨してしまう恐れもあります。
流行のテレビ局タイアップ式の映画化は難しいものの、独立プロが手がけるというのは話題性があって可能性はあるかもしれません。
細かなことを言えば、例え顔はすっかり変えることができたとしても、戸籍やパスポート、健康保険、納税申告、銀行口座などが簡単に偽名でおこなえるはずはなく、小説のように年齢や氏名を変えて、まったく別人になりすまして裏社会ではなく表舞台で生活するというのは現実的には難しいでしょう。
それにこれはなんとなくですが、整形手術を何度も繰り返すと遠目だとわからなくても、間近でじっくり見るとなんとなくわかってしまいます。
誰よりも大金をつぎ込み、世界でもトップクラスの整形外科医が施術したであろうマイケル・ジャクソンですら、あの顔の不自然さやホルモン注射から時間が経った時の崩れ方は半端なく異常でした。
でも女性(特に不美人と自分で思っている)にとっては、お金とチャンスがあれば、顔を変えてみたい願望はきっとあるのでしょう。
そしてなにかのきっかけで軽く一カ所の手術をして成功すれば、今度は別のところと際限なくそのスパイラルにはまっていくこともあるのでしょう。男にはあまりわからない世界ですが。
登場人物の中に、主人公と同じく風俗で働く女性(整形済み)が、風俗を辞めて田舎の実家に帰るときには、また元の顔に戻して普通の結婚をすると言っていたのには「なるほどなぁ」と妙に感心してしまいました。
下手に風俗やAVで顔が売れてしまうと、その後もずっと影響してしまうので、そういうこともあるのでしょうね。
◇著者別読書感想(百田尚樹)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
モダンタイムス(講談社文庫)
伊坂幸太郎氏の小説は10冊以上読んだお気に入りの作家さんです。この作品は2005年に発刊された「魔王
「魔王」は文庫化された2008年に読みましたが、4年が経ちすっかり内容を忘れていましたので、少し復習してから読むべきだったかも知れません。
でもそれを知らなくても特に困ることはありません。
内容は主人公のシステムエンジニアが先輩が途中で放り出した謎の改修作業を引き継ぐことになり、そこから起きる様々な顛末です。
しかし100年後にも日本人のシステムエンジニアがパソコンに向かって仕事しているとはちょっと思えないのですが、そこは本来SF作家ではない伊坂氏の限界もあるのでしょう。
ちなみにパソコンと呼べるマシンが登場して今年で38年。その間の進歩はみなさんご存じの通りで、それがあと100年経つとどういうものに進化するかは想像でしかありませんが、少なくとも現在のパソコンという概念は消え、まったく違ったモノへと変わっていることでしょう。
ま、そういう細かなところはさておき、主人公以外の登場人物がみな魅力的です。そういえば伊坂氏の初期の作品「陽気なギャングが地球を回す
◇著者別読書感想(伊坂幸太郎)
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