リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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沼地の記憶 (文春文庫)
今年64歳になったアメリカの作家さんで、「死の記憶」「夏草の記憶」「緋色の記憶
この「沼地の記憶」はよく売れた記憶シリーズの再来を期して名付けられたのか不明ですが、日本では2010年に刊行されています。内容は過去のシリーズなどとも共通して、暗くて重い歴史を開くことによって、現代に悲劇が起きることになります。
アメリカの過去の歴史は日本やヨーロッパなどと比べると遙かに短く、国ができたのはわずか235年前です。その短い歴史の中にも、奴隷制度、南北間の格差、そして移民が持ち込んだ階級制度などにより、数世代に渡る勝ち組と負け組が存在し続けます。
勝ち組の教師が、負け組が多く通う高校で教鞭をとり、その中に殺人犯と思われる父親をもつ生徒に優れた文才を見出し、それを開花させようと努力をしていきますが、結果的にはそれが仇となってしまいます。その過去の出来事を年老いた教師が語るという構成です。
何度か途中で予防線的に語られる話の内容から、もっと強烈で衝撃的な結末を予想していたのですが、それはなく、なにか普通に終わってしまいました。ま、いくらフィクションだと言っても、よくある荒唐無稽なものよりは現実的で私にとっては納得感があります。
◇著者別読書感想(トマス・H・クック)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はちまん(角川文庫)
著者の内田康夫氏についてはwikipediaに「西村京太郎、山村美紗とともに、旅情ミステリー作家の代表的人物として知られる。代表作に『浅見光彦シリーズ』『岡部警部シリーズ』『信濃のコロンボシリーズ』など。」とあります。御歳76歳で、1981年に第1作を上梓されているので今年で作家歴30年というベテラン作家さんです。私は7年ぐらい前に「氷雪の殺人
今回は、そのタイトルにひかれ、全国にその名のつく神社が数多くあり、自宅の近所にもある八幡神社のことについて、多少雑学のネタになるかなと思って読み始めました。
さすがに紀行小説の名手だけあって、長野、秋田、熊本、高知、呉の街が次々と出てきます。その立役者には主人公の女性カメラマンとその婚約者、そして内田氏の小説には欠かせない、謎解きの名手で数々のミステリーで主人公となっているルポライターの浅見光彦が全国を駆けめぐります。
また実在する八幡神社も、有名な宇佐、石清水、鶴岡の八幡宮ではなく、地方にある無名の八幡神社が次々と登場してきます。物語の途中で、政治家と土建屋が結託する場面がありますが、そこだけはなにか唐突すぎて多少違和感があります。しかし巨悪の犯罪が絡むストーリー展開上やむを得ないのでしょう。
八幡神社の歴史や謂われ、神仏習合、日本人の歴史認識から文科省管轄のサッカーくじ問題などまで含め、雑学を知るためにも十分に楽しめる小説です。
登場する実在の八幡神社(リンク先は公式サイトがない場合、個人または企業サイトです)
小内八幡神社(長野県中野市)
亀山神社(亀山八幡宮)(広島県呉市)
久礼八幡宮(高知県中土佐町)
千田聖母八幡宮(熊本県山鹿市)
◇著者別読書感想(内田康夫)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
若者殺しの時代
作品を読んでいると、団塊世代に対してフツフツと沸いている怨念というかよからぬ一家言がありそうで、そうなると私と歳が近そうだなぁと思ってましたが、同学年の人でした。ただ堀井氏は勉強が大好きらしく大学(早稲田)に7年も在籍していたので、アルバイトではなくプロの社会人として勤めに出たのは私が3年先輩ということになります。おまけに出身は同じく関西で、近いところで共に少年時代をおくっていました。
なので、道理で、70年代のバブル前、80年代後半のバブル全盛期、90年のバブル後のことが集中して書かれているはずです。私も著者もお金はないけど暇とやる気と体力だけは人一倍あるという青春時代をその頃に過ごしていたからです。最初タイトルからすると「現在の若者の育ってきたこの20年間の環境をあれやこれやと検証し、大人達から搾取されているな」というものを想定していただけに、あれまという感じです。
タイトルは無理矢理あとでこじつけたような気がしますが(タイトルありきで書いたものとは違う印象)、要は団塊世代が先陣を切り、若者文化を開花させ、それをやがてビジネスへと変えてしまう戦略を創りだし、それに次の世代(我々)はよくわからないまま勢いで乗っかってしまい(多少いい思いをして)、やがてペンペン草も生えない焼け野原をその次の世代や今の若者へ引き継いだと、わかりやすく縮めるとそんな感じの本です。
著者は「ホリイのずんずん調査」というコラムを長く週刊文春に書いていたこともあるフリーライター氏ですが、フリーライターの多くは元出版社に所属していた文学少年少女という人が多い中、大学卒業後いきなりフリーでライターを始めるというまったく怖いもの知らずの人のようです。最近の雑誌、週刊誌等を含む活字不況の中で、どうやって食っているのでしょうか、他人事ながら同郷&同世代なのでちょいと心配になってきます。
ちなみに私の若い頃(20代独身時代)の象徴と言えばディスコやユーミンではなく、ホイチョイプロダクションでした。彼らの作る映画や雑誌に連載していたコラムが私の聖書となっていました。そして今でもその頃の名残として、TAG社に買収される前のホイヤーの腕時計と、レンタルDVD屋の会員になるときぐらいしか役に立たない小型一級船舶操縦免許があります。
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悼む人(文春文庫)
天童氏は1986年にデビューし、2年に1作品程度の寡作で有名な作家です。この「悼む人」はデビュー後8作目にして直木賞(2009年)を受賞した作品で、タイトルや表紙デザイン通りに不気味で重いテーマを扱っています。
主人公の男性は、子供の頃のふとしたトラウマから、死によって忘れられていく哀れさを引きずり、親友の若くしての死やボランティア活動で子供の不治の病に接し、突然勤めていた会社を辞めて、見知らぬ人の死をひとりひとり尋ね、それを悼むために全国放浪の旅を始めます。
その悼む人(主人公)と偶然に交錯した不幸な生い立ちから再婚後ある事情で夫を刺し刑務所から出てきた女性や、癌に冒され余命があとわずかという主人公の母親、人間の嫌な部分をほじくり出しては、えげつない記事を書いてきた週刊誌のルポライターなどが、この主人公の悼む姿と行動に深く共感と影響を受けていきます。
読んでいるあいだ中、ずっしりと重いテーマを頭上に乗せられた気分になり、読むスピードもあがりませんでした。しかし、こういう人間や家族というものを考えさせられる小説も時にはいいものです。
◇著者別読書感想(天童荒太)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
森見登美彦氏のデビュー作品「太陽の塔」を読み、なんだか著者に親近感を感じましたが、それは森見氏が関西出身で、京都で大学生活をおくるという私と共通の体験(同じ大学ではないが)をしていたことに大きな要因があるでしょう。
それはまた「鴨川ホルモー」などの著作で知られる万城目学氏とも共通します。ただ年齢は私より森見氏や万城目氏のほうがずっと若く、20年以上も離れています。私にとって森見氏の「太陽の塔」はあくまで1970年に開催された万博会場の中に立つシンボルとしての思い入れですが、氏のそれはデートで行く公園のシンボルになっていたことに、その世代の違いを感じます。
この本は「太陽の塔」とはまた大きく違い、どちらかと言えばすでに商品化されていますがコミックやアニメに近いものがあり、若い人にはたぶん面白おかしく読めるのでしょうが、すでに50代に入った私には全然面白くもなんともないなぁって感じです。
本屋大賞でノミネートされていた本なので期待をしていましたが、何度か途中で読むのをやめようかと思うぐらい、ちょっと残念な気持ちです。森見氏の本では2007年発刊の「有頂天家族」も既に購入済みなので、そちらに期待することにしましょう。いま手元には20冊ぐらいの未読の本があり、日々衝動買いや知人にもらったりすることもあるので、それがいつ読めるかはわかりませんが。
内容は京都大学とその周辺で起きるドタバタを、ユニークな京大生の女性とその女性にあこがれる大学の先輩とが巻き起こすファンタジーコメディです。
◇著者別読書感想(森見登美彦)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
街場のメディア論 (光文社新書)
この「待場の・・・」新書はシリーズ化されていて、このシリーズは大学での講義を元に書き起こされたものだと前書きにあります。したがって内容的には大学生向けなのですが、読んでみるといやいやレジャー気分で登校している大学生などにはもったいない、たいへん中身が濃くて興味を喚起されるものです。
同様にマスメディアを批判した佐々木俊尚氏の「2011年 新聞・テレビ消滅」とは違い、システム的なものではなく、メディアの中にこそ問題が堆積していることを学生向けにわかりやすく解説していきます。この点はジャーナリストと学者との違いを感じるところですが、私にはこの街場のメディア論のほうが納得感を強く得られました。
この内田樹氏は、著作権についても他の多くの学者や著作権者、出版社とは違った考えを持っておられ、氏の書いたものは、事前の断りや、出典の記載など必要なく、自由に引用でも盗用でも使ってくださいという考え方です。全然別の機会に、ある有名作家氏がTwitterで「私は書き下ろし小説が多いので、新刊本をすぐに図書館で買われ貸し出しされるときつい」という意味の書き込みがありましたが、それにもまったく反する考え方をこの本で述べています。
まぁ、両者の言い分はそれぞれに理解できますが、少なくともWebに上げたものは、無償、引用や個人の利用は自由というのは私も大いに賛成です。内田氏のように盗用して勝手に別人の名前で発表してもOKとは言いませんが。
地震学者であり、いち早く原発事故による放射能汚染地図を公開してきた早川氏もTwitterで「日経のWebサイトはコピーペーストができないようになっている。報道機関としてあるまじき行為で、所詮金儲けしか考えていないのだろう」と発言されていましたが、まったくその通りで、そういう体質が近いうちに崩壊する前兆なのだろうと思います。
◇著者別読書感想(内田樹)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
千年樹 (集英社文庫)
私とほぼ同年齢の現代小説を主とする作家さんで、テーマが多岐にわたり、その内容は深く、私は刊行された小説(20数冊)の文庫になったものはほとんどは読んでいます。特に印象に残っているのは「オロロ畑でつかまえて」「誘拐ラプソディー」「神様からひと言」「僕たちの戦争」「明日の記憶」などです。
この千年樹は、大きな樹齢千年と言われる樫木を中心とし、その拡がる枝葉のように様々な年代で様々な人が死と生を積み重ねていく姿を連作形式で書かれたものです。
時代は千年前の平安時代から始まり最後は現代ですが、中間は、江戸時代や、昭和でも太平洋戦争の時代や現代などを行ったり来たりします。時代が次々に飛びますので、しっかりと記憶して読んでいないと、後でその関係性がわからなくなったり(まったく関係ないことも多い)します。この手法は荻原氏の新しい試みなのでしょうか、今までの小説のように軽くサラッと読んでいると混乱をきたします。
それにしても荻原浩氏はここ最近何度も直木賞候補に挙がりながらも、あと一歩のところで逃し、ちょっと気の毒なところがあります。しかし同じく私が贔屓にしている佐々木譲氏も昨年に60歳で直木賞を受賞されましたので、荻原氏も間違いなく数年のうちには受賞され、受賞後のインタビューで感想を聞かれたときには「待ち疲れました」と言ってもらいたいものです。
◇著者別読書感想(荻原浩)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
この通称「ツレうつ」を原作とした実写映画が10月に公開されると言うことと、前からタイトルが気になっていて読んでみました。いや、読むというのは正確ではないかもしれません、基本漫画なのですが、イラストエッセイという新しいジャンルの出版物のようです。でもやっぱり私の感覚では漫画です。
この本がヒットしたため、まとめた続編なども出ていますが、ま、柳のドジョウで、営業的にはどうだったのでしょうか。
絵は特徴的で、上手いとはとても言い難いのですが、なかなか味はあります。鬱という難解な病気に対してなにか愛着すら沸いてきそうなエッセイで、それは見事に当たったと思います。
うつ病は誰でも罹る可能性のある心の風邪とも言われていますが、私の身近にも過去に患った人が複数います。この病気は一見ではわかりにくいので、病気のことを知らないと冗談と思ってかわいそうな事を言ってしまったり、逆に知ってしまったあとは、とても気を遣うことになります。
うつ病というのが一般的に社会で認知されてきたのはここ10数年ぐらいで、それまでは、急に出社しなくなり、「怠け病」とか言われていた時期が長くありました。私も直属の部下に、今思えばうつ病だと思うのですが、その頃は「急に休んでばかりでけしからん、もう面倒をみきれない」とか叱ったことがあり、その後大いに反省しました。
この本では、ドキュメンタリー風にバリバリのスーパーサラリーマンだった夫(映画では堺雅人)が、突然うつに罹ってしまい、「朝起き上がれない」「満員電車に怖くて乗れない」「悪いことばかり考える」「自殺を考える」などの症状を、売れないフリーの漫画家の妻(映画では宮崎あおい)と一緒に数年かけて、数々の難局を乗り越えていく姿が面白おかしく描かれています。
その中には「うつの本に載っている症状とは違うぞ」「やってはいけないという常識もケースバイケース」など、わかりやすく治癒までの経験談が説明がされていて、絵本のように2~30分もあれば一冊が読めてしまいます。
ちなみに堺雅人と宮﨑あおいの夫婦役はNHK大河ドラマの「篤姫」以来となり、それを楽しみにしている人も多いとか。
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八月十五日の開戦 (角川文庫)
太平洋戦争(大東亜戦争)までは、樺太の半分、千島列島の全部は日本の領土として国際的に認められていたことを知る人も少なくなっているでしょう。また戦争末期には、アメリカ、英国、中国などと講和するため、日本と中立条約を結んでいたソ連に仲介を依頼していたわけですが、そのソ連はというと、それには応ぜず、逆に終戦間際になって一方的に条約を破棄し、それまで日本が攻め込んでいた満州や、領土としていた千島列島へ武力を用いて攻め込んできました。
この本では、ポツダム宣言受諾で放心状態にあり混乱していた大本営は頼りにならず、今までは米国のアリューシャン諸島から攻撃される可能性のあった千島列島や樺太、北海道の守備隊が、終戦後にも関わらず、ソ連の暴挙とも言える侵攻を食い止めるべく孤軍奮闘する姿がフィクションを交えドキュメンタリー風に描かれています。
ドイツ機甲師団を打ち破り圧倒的に強力なソ連軍と、食料も武器も兵員も乏しく、先には手を出せない降伏後の守備隊ですが、その防人となったのは、国民から各戦場で日本が負けたことを隠すため、撤退したあと、辺境の地に追いやられていたノモンハンやビルマ、ミッドウェイ、ガダルカナルなどの生き残り達です。
本来なら8月15日をもって任務は解かれ、本土へ帰還できるはずでしたが、このソ連参戦のため、北海道までを一気に占領される可能性があり、それを食い止めるため、死を覚悟して今まで以上に厳しい戦いをせざるを得なかった千島の守備隊の苦悩がよくわかります。
しかしそのような一度地獄を見てきた強者が揃っていたことが幸いし、千島列島を足がかりにして、一気に北海道に上陸するつもりだったソ連軍を、カムチャッカ半島からほど近い千島列島の最初の島「占守島」に釘付けにします。結局この終戦後の戦闘で戦死したのは、詳細な記録はないものの、日本側600名、ソ連側3000名にのぼったとされています。
小説では、その終戦後の数日間、ソ連軍を北海道の手前で食い止めている間に、連合国の責任者マッカーサーに密使を送り、ユダヤ人虐殺をアメリカ政府が荷担したという証拠を持ち出して、それとひき替えにソ連の攻撃をやめさせるべく提案します。
ほとんど語られることのないこの終戦後のつらくはかない戦闘ですが、昨年、浅田次郎氏が「終わらざる夏
◇著者別読書感想(池上司)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
犯罪小説家 (双葉文庫)
先日読んだ「つばさものがたり
作家とその映画化に向けた世界を書いていますので、著者としては勝手知ったる自分の庭での物語なので、一瞬手抜きか?と思いましたが、それなりに面白く構成されていると思いました。この作品も映画化(映像化)を視野に入れているなという気もしますが、たぶん数年のうちにはきっと実現するのでしょう。
内容は、ミステリーの賞に輝いた小説家が主人公で、その原作を元にして映画化の話しが持ち上がります。そしてその脚本、監督、主演を人気絶頂の脚本家でもありマルチタレントの男に依頼することが決まりますが、その男がなにかと主人公の作家にまとわりついてきます。
小説の内容とはまったく関係がないと思われた、集団自殺サイトを運営していた美人管理人の美しい自殺と、この賞を取った小説の裏に隠された内容に、ただひとりだけ気がつき、残されたサイト運営幹部の謎と行方を追いかけ、最後のクライマックスまでドキドキさせられることになります。
やたらとその自殺サイトの話しや、そこで交わされた書き込みが克明に出てきますので、ちょっと薄気味悪く、全体が暗いトーンになってしまっているのは気になりますが、現代の暗部をうまく取り込んでいるとも言えます。ただ本当に自殺願望のある人は読まない方がいいでしょう。
◇著者別読書感想(雫井脩介)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
プリズム (創元推理文庫)
1993年に「慟哭
この小説はではミステリー小説としては日本で珍しい新しい試みがされています。そのネタばらしはさすがにできませんが、ちょっと意味合いは違うものの、私は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い浮かべました。
直前に読んだ雫井脩介氏の「犯罪小説家」は直球のミステリー小説ですが、それともなにか通ずるものがあり、続けて読むのは混乱を招きちょっとよくなかったかなぁとちと反省も。
タイトルのプリズムとはいきなり死んで登場する女性ヒロインが、様々な見る角度によって妖しい光を発していることを指しているのだろうと思いますが、私にはその死んだ女性の周辺にいた人達が、様々な角度で死因や犯人を考察していくことを指してプリズムというタイトルなのかなと感じました。
あらすじは、美しい独身の小学校女性教員が、ある日自分の部屋で亡くなっていて、それが事故なのか、他殺なのか不明で、容疑者と考えられる人は何人もいるけれど、いずれも決定的な証拠はなく、教え子の小学生、女性教員の同僚、死んだ女性の元恋人、そして不倫相手などその周辺の人達が、それぞれに疑われながらも自分で推理をしていくというものです。
◇著者別読書感想(貫井徳郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)
著者は変わった名前(ペンネーム)だな思ったらしっかり覆面作家とのことです(wikiより)。先般読んだ2002年デビューの坂木司氏もそうでしたが、2000年前後は覆面にすることでなにかメリットがあったのでしょうかね?
実名でアピールし、サイン会、講演会、テレビコメンテーターなど幅広く商機を拡げていくほうが、売り出し中の作家としては望ましいのではと思うのですが。
ま、芸者作家、茶坊主作家、太鼓持ち作家にはなりたかねぇとお高くとまるのもひとつの見識ではありますが。
今回の本のタイトルにも使われている「邪馬台国」を扱った小説は数々ありますが、私は高木彬光氏の「邪馬台国の秘密」ぐらいしか読んでなく、テーマ的にはあまり関心はなかったのですが、今から40年近く前に書かれた「邪馬台国の秘密
ちなみに近所の大型書店では「ここまでわかった!邪馬台国
そんな、なにも先入観なく読み始めましたが、この文庫はタイトル名にもなった「邪馬台国の謎解き」だけでなく、下記のように、現在の常識や謎を、新宿にあるバーの常連さんのひとりが解き明かし覆していくという短編でした。
その概略は、
・聖徳太子は実在しなかった
・お釈迦様は悟りをひらかなかった
・邪馬台国は東北にあった
・明智光秀は謀反人ではなかった
・倒幕の黒幕は幕府側の勝海舟?
などです。
ちょっと考察に甘いところがあるんじゃないのか?都合のいい部分だけ抜き出して解釈してないか?と思うところもありますが、しかし現在の通説や常識を、軽いノリで次々と覆していくスリリングで無駄のないテンポの良さは読んでいてもスッキリします。
これらの元ネタは文庫の後書きにありますが、著者自身の発想ではなく、ある別人の解釈を元にして、著者が小説化したものです。
そういうことをちゃんと明示しているところは、論文や小説などで盗作疑惑や著作権問題がこじれることが多い中で誠実さを感じます。
本書の中に出てくる解釈では、「日本書紀はいくつか流れのある天皇家の中でも勝ち組の一派が書かせたものなので、負け組のことについての記述は曖昧で信用がおけない(聖徳太子の実在しない)」とか、また地図上の方角について、目の前に方角の誰でもわかる太陽がありながら「当時の公文書に北と南を間違えて記載をする(邪馬台国は東北にあった)」というのは、にわかには信じがたいように思います。
本来なら短編のそれぞれの項目が、大きなテーマでもあり、そのテーマだけで上・中・下巻の長編小説になりそうですが、それを短編としてサクッとまとめてしまうところがなんともこころ憎いなと思います。
せっかくですから、当然予想されるそれぞれの反論や通説の根拠となっている様々な証拠に対して、また今回、通説を覆した推察に対する反論も加え、もっと深く掘り下げた小説にしてみてはどうでしょう。
高木彬光氏の「成吉思汗の秘密
ちょうど、いまは歴史に興味を持つ若い女性(歴女)と、仕事を辞め暇を持てあまして歴史書を読みふけり遺跡の見学に大挙押しかけている団塊世代がいますので、この歴史ブームをうまくつかむことができれば、このようなテーマは大ヒットすると思います。
ま、いずれにしても、この推理小説は軽くできていますので、満員の通勤電車の中で集中して読むのには、最適な小説でした。
◇著者別読書感想(鯨統一郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書)
新書ほど中身に当たり外れの多い出版物はないという持論ですが、数年前からの新書ブームでタイトルに過激な表現を使うことが当たり前になってきています。
私の場合、数多く読みたいので、新刊書を単行本で買うことはあまりなく、単行本の中から評判のよかったものだけが文庫化されるのを待ち、さらにその中から読みたいものを選んで購入していますから、そう大きな当たり外れはありません。
しかし新書というのは、以前ならロングセラーになる学術系だったり、ハウツーものがメインだったりしたのが、最近では誰でもお手軽に出版できて、それこそタイトルで勝負、一発屋狙いの「スポーツ新聞」的な軽くてどうも信用の置けない書籍となっています。
前置きが長くなりましたが、この『「若者はかわいそう」論のウソ』はタイトルは過激で、最初手に取ったときは心配だったのですが、読み始めて中身もそれなりにあり、なかなか面白く読むことができました。
著者は元リクルートで自分では人材雇用問題のエキスパートのように自慢されてますが、人材ビジネスの中心で20年以上関わってきた私からすればやや底の浅い、人材出版編集者兼ジャーナリストという感じがします。それがいいとか悪いと言っているのではありません、念のため。
で、この新書では、著者の好き嫌いがハッキリしていて、どうも好きではない人が書いたベストセラーに対し、意図的な誤魔化しや誤解を生じされる書き方などを徹底的に糾弾し、それに同調するマスメディアをも非難しています。このあたりの切れ味は、さすが元リクの元編集者と言えるでしょう。
さらに、今後日本の雇用はどうすればいいかという点についても持論を展開し、関連する有名人との対談を収録されていますが、その著者の考える今後の雇用対策の章については、残念ながらその意見に同調する人はあまりいないでしょうし、実現可能性は日本が中国に侵略され24番目の省になるより低そうなので、あまり参考にはなりません。
冗談で書いているならともかく、実現可能性がまったくない意味のないプランをいくつ出しても紙の無駄になるだけです。
それはともかく、前半部分は、久々に新書の中で面白いものに出会った爽快感があり、それだけでも読む価値は十分にあると思います。最近の新書では「国家の品格
それにしても最近の新書という新書は、統計データを元にして「ハイ一丁上がり」とばかりに一冊にまとめる(同書はそれだけではありませんが)のが、最近やたらと流行しています。「統計は使い方によってどうにでもなる」という考え方を持つ私にとっては、今の新書ブームは単に胡散臭く思えて仕方がないのです。
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数学的にありえない(文春文庫)
神経症を患っている天才的な若い数学者が賭博のポーカーの最中にその病気が発症してしまい、そのため大きな借金を背負うこととなり、それから逃れるためにあれやこれやと考えていると、やはり神経を病んで精神病院に入っていた双子の兄が退院してやってくるは、政府の謎の科学技術研究所やFBI、CIA、北朝鮮のスパイが起こす事件に巻き込まれて追われることになるわで、てんやわんやの1週間を描いたミステリー小説です。
数学者ということで、確率で博打や意志決定をしていくわけですが、さらにその上をいく特殊な能力「ラプラスの魔」別名「集合的無意識」が目覚め、少しずつ未来が予測できるようになっていきます。このあたりはなぜそうなるのか様々な理論が展開されますが、あまり知らないことばかりなので、素人には説得力がないのがちょいと残念なところです。数学者が読むとどう思うのか聞いてみたい気もします。
そして確率と未来予知を利用して、主人公は博打で借金を返済することに成功しますが、その特殊能力をもし自在に操れるようになれば、それはノーベル賞もの、国家ならば軍事目的などに大いに有効ですから、学者もスパイも必死になってそのサンプル(=主人公)を追いかけることになります。
実在する特殊な能力と言うと、映画レインマンで「サヴァン症候群」という常人では考えられない抜群の記憶力を持つ自閉症患者の役をダスティン・ホフマンが好演しましたが、あれにも記憶力による確率をもちいてカジノで大勝ちするシーンがありました。アメリカ人が考える特殊能力は、すぐに楽して金儲けと連想させるのがいかにもお国柄です。この小説もアメリカ人の大好きな「人生はいつもギャンブルだ」と言ってもいいでしょう。
著者のアダム・ファウアーはこの長編ミステリーがデビュー作ということで、大学で統計学を専攻した後、40歳までサラリーマンを続け、2005年にこの作品を上梓したとのことです。この小説が世界中で大ヒットしましたので、たぶんシリーズ化されて続編も出てくるのでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
青空の卵 (創元推理文庫)
2002年に発表された坂木司氏のデビュー作です。著者は北村薫のデビュー当初と同じような覆面作家で、年齢や性別すら公表されていません。小説の内容からすると北村薫氏と同様に男性で、年齢は40代前後ぐらいかなと思いますが、案外全然間違っているのかもしれません。家庭の主婦や女子大生だったら意外性があって面白いのですが、それはないでしょう。
作品はその後シリーズ化される「ひきこもり探偵」とその親友が主人公で、警察が絡むような大きな事件ではなく、ささやかな疑問や謎を抜群の洞察力と推理で解いていくという、初期の赤川次郎、東野圭吾的な青春推理探偵小説です。
二人の主人公のうち謎を解くシャーロック・ホームズにあたるのが、複雑な家庭環境で育ち、高校卒業後はひとり暮らしで、部屋にずっとこもったままソフト開発の仕事をしている精神的に不安定な男性で、もうひとりの事件や謎を持ち込んでくるワトソンにあたるのが、その男の親友で、せめて時々は部屋から外出させようと、買い物や事件の調査に引っ張り出し、代わりに料理をご馳走してもらう男性です。
いくつかの中篇をまとめて一冊となっていますが、他の中篇に出てきた登場人物が、後に出てきたりしますので、まとめてひとつの物語と言えなくもありません。
このような推理探偵小説は世界中に星の数ほどあるだけに、差別化するのが難しいと思いますが、著者自身が好きだという横溝正史のような、文章に飾りや難しい言い回しのないストレートな文章と展開が特徴で、読後もスッキリした気分になれます。このあたりはたぶん読書経験の少ない若い人にもうけるように書いているのかなと思います。
本書に登場する謎とは、「駅前でジッと立ち続けていて決して喋らない少年」や、「歌舞伎役者に送りつけられる不気味な謎の品々」だったり、「若い男性に対し無差別に嫌がらせをする謎の女性ストーカー」だったりと、決して大きな事件や犯罪ではないけれど、なにか不審な出来事です。
◇著者別読書感想(坂木司)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昔日(ハヤカワ・ミステリ文庫)
昨年亡くなったロバート・B・パーカー氏の作品の中で、スペンサーシリーズとしてはラスト4にあたる2007年に出された小説(日本語版は2008年)です。まだシリーズ35冊(文庫発刊済み)の中で読んでないのが10冊ほどあるので、ブックオフへ行った際には必ず棚をチェックしています。しかしこのシリーズはほとんどブックオフに出てこないのですが、なにかワケでもあるのでしょううか。
今まで行った書店の中では、このスペンサーシリーズが一番多く置いてあったのは、丸善丸の内本店ですが、そこでもシリーズの8割ぐらいしかなかったように記憶しています。保管場所に困らないAmazonでも全部が在庫としては持っていないので、シリーズ全部揃えるのはたいへんな苦労です。そのうちまだ文庫として未発刊分のものを含め、38冊全部が箱詰めされて発売されるかもしれませんね。熱烈なファン以外「誰が買うねん、そんないっぱい」とも思いますが。
さて物語は、お馴染みの相棒ホークと、ガンマンのヴィニー・モリス、西海岸から応援に駆けつけたメキシコ系のチョヨが揃い、なかなか表面化してこない殺人集団を自らがそのターゲットとなって探していきます。
ちなみにスペンサーもホークも最高のガンマンと認める二人、ヴィニー・モリスの活躍は「拡がる環
題名は、妻の浮気調査を依頼してきた旦那が、その証拠を得た後に、夫婦とも何者かに殺されてしまったことから、その夫婦の復讐に燃え、さらに昔、スペンサーから離れていった恋人スーザンの心変わりが、今回の妻の浮気を心配する旦那の気持ちにシンクロして、それが関連づけられているのだと思われます。
著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
下流社会 第2章 なぜ男は女に“負けた"のか (光文社新書)
2005年に80万部の大ベストセラーとなった「下流社会 新たな階層集団の出現
1万人の成人男性アンケートから、様々な傾向や分析をまとめた本ですが、対面調査ではなく謝礼に釣られて簡単に集められるネットユーザーに対しておこなったアンケートで、一冊の新書がポンと作れるなんて安易と言えば安易な気もします。それもこれも先に80万部のベストセラーがあればこそでしょう。
内容は、年収別、職業別、年齢別、既婚か未婚、親と同居とひとり住まいなど様々な切り口を変えてマーケティング的な分析がなされていますが、とりたてて興味深い内容ではありません。
唯一、気になったのは、ニートの収入がそこそこあり(60%が無収入だが残りは収入あり)、著者はオークションやアフィリエイトなどで収入を得ているのでは?と分析していますが、それはとても信じがたいところです。生活にも満足し(これは自分の好きなことだけやっているのでわかります)、自分を中流や上流と思っている人の割合が正社員で働いている人並みだっていうことです。
まずもってオークションやアフィリエイトで平均して月に十万円程度稼ぐなんてことは、セミプロでないと無理でしょうし、それをプロとしてやっているならニートとは言えません。たまたま副業でうまくいって月10万円稼ぐ人はいるかも知れませんが、それを何ヶ月も何年も続けられるのはやっぱりプロでしょう。
本来ニートの収入の多くは親や兄弟からの支援だと思いますが、この調査にあるニートは、実は自宅で、ソフト開発、ゲームなどのテスト、オンライントレードやFX、あるいはそのアドバイスなど、実際は在宅でなんらかの仕事をやっている人がかなり含まれているのではないかと想像します。そう考えないと年収数百万円のニートってどうなのよ?って思います。
◇著者別読書感想(三浦展)
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つばさものがたり (角川文庫) 雫井 脩介
著者の雫井脩介氏は、映画にもなった「犯人に告ぐ
ストーリーは、家族に期待されいつかは実家のある地元で洋菓子店を開きたいと思い、東京で修行をしていた女性主人公が、その家族の夢を果たすため地元に帰り洋菓子店を始めます。
しかし主人公自身重い病に罹り、店もうまくいきません。そこに主人公の兄のちょっと風変わりな小学生の息子との交流が始まり、その息子だけが見える天使見習い中の友だちから様々なアドバイスを受け、病気と闘いながら家族の夢だった店を成功へと導いていきます。
天使の世界も厳しいようで、天使になるためには試験があり、しっかりと飛べないと、妖精となり森に住むことになり、人の住む街の中には住めません。天使が多く集まるところでは店も繁盛しますが、羽根を休めるところがない場所では閑古鳥が鳴きます。
なぜか入れ替わり立ち替わりいろんな店が入居しても、すぐにつぶれてしまう場所というのは確かにありますね。
パーティー会場などでふと一瞬会話が途絶えシーンとする瞬間がありますが、そのことを「天使が通り過ぎた」とか言い、シャンパンを抜くときの音のことを「天使の拍手」と言ったりもします。
昔のサントリーの宣伝に出てきましたが、発酵させるために樽詰めしたワインやウィスキーを数年後に開けると少し量が減っていることを「天使への分け前」と言ったりし、昔から天使はそこいら中にいるそうです。タイトルになっている「つばさ」はその天使の翼のことです。
◇著者別読書感想(雫井脩介)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
白い声 (新潮文庫)
スペインと金沢が舞台の2002年に発表された伊集院静氏の恋愛小説です。小説の中にはいくつものスペインの都市の名前が出てきますが、普通の日本人でスペインの形すら思い描ける人は少ないのではないでしょうか。私も位置はわかるものの、地名を聞いてもそれがどこにあるのかはさっぱりわかりません。
ストーリーは、親の仕事の都合でスペインで生まれ育った日本人のヒロイン(もちろん絶世の美女)が、子供の頃事故に遭ったとき偶然救ってくれた日本人男性と、思いがけず金沢の街で出合い、恋に落ちていくというストーリーですが、この日本人男性はかなりの悪で、ヒロインが事故に遭ったのも、その男が警察から追われてクルマで逃亡している際に、轢かれそうになって崖から転落したもので、読者はそれがわかっているので、なぜそんな男に惚れるのか?と疑問符だらけで読み進めることになります。
そして健気にもヒロインは、どこまでも逃げる男を追いかけて、心身共に最後まで尽くしていくという、ま、男の身勝手さとあらゆる妄想が生み出す男冥利に尽きる内容ですが、ありえねぇ、、、。
しかも著者は女性読者が多い作家さんですから、こういう小説が一部の熱狂的な女性読者には受けるのでしょう。よくわかりませんが。最後になってそれほどまでにダメ男を追い求めるのには、なにかワケがあったのか?と期待を持たせますが、結局よくわからないまま終わります。う~(うめき声)
男の視点でもって、徹底的に「尽くす女」と自己中心的な「ワル男」を自由奔放に書けば、こういうものになるのでしょうが、しかし「男は本質的にこういう事を求めているのか?」と女性方々に誤解されてしまうのもちょっとどうかなと思ってしまいます。ま、誤解するわけないかな。
スペインのしかも田舎へのんびりと旅行する際のガイドブックにするにはいいのかも知れません。そして小説のように運命的な出会いがあなたを待っているかもしれません。ふへぇ~(ため息)
◇著者別読書感想(伊集院静)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
黒蜥蜴と怪人二十面相 (角川ホラー文庫)
江戸川乱歩と言えば日本人なら誰でも知っている作家と思いきや、最近の若い人にはあまり知られていないかもしれません。1894年というから今から117年前に生まれ、1965年に亡くなった主に推理小説や怪奇小説を大衆や子供向けに書いていた人です。
名前はもちろんペンネームで、アメリカの世界的に有名な推理小説家エドガー・アラン・ポーに由来しています。
作品の多くは太平洋戦争以前に書かれたものが多く、軍事色の強い暗い世相の中で数少ない娯楽としての小説が大衆や子供達に大いに受けたのでしょう。
中でも「黒蜥蜴」は抑圧された世相に逆らうかのようなきらびやかな上流社会とエロスの薫りが漂います。おそらく大衆文学として当時はこれがギリギリのラインだったのではないかなと思われます。
今回の「黒蜥蜴と怪人二十面相」は別々の二つの作品を1冊にまとめて出版されたもので、「黒蜥蜴」は1934年に雑誌に連載され、その後有名になる探偵明智小五郎が初めて登場した作品として有名です。
この作品は歌劇や映画、テレビドラマで何度か上演上映や放送がされましたが、その内容は原作から大幅に変わっていたそうです。私は観たことがありません。
もう一つの「怪人二十面相」は有名になりつつあった明智探偵の好敵手として登場させたもので、やはり戦前の2.26事件の起きた1936年に「少年倶楽部」に連載されました。
その後戦後の1960年代まで多くの作品の中で明智探偵、小林少年(少年探偵団)と怪人二十面相の知恵比べが繰り広げられます。
wikiに書いてありましたが、最初は「怪盗二十面相」だったのを少年向けに「盗」という言葉は教育上よくないだろということで「怪人」となったということです。
これらの小説が戦前に書かれたことを考えると、この悪役の怪人や黒蜥蜴は日本を苦しめる欧米列強で、それに敢然と立ち向かう明智探偵の知恵と、少年探偵団の奉仕的な活躍が、帝国とその国民という図式のように思えてきます。
そのような政治的、軍事的な発意昂揚の要素を含んでいたかどうかはわかりませんが、当時の出版物の厳しい検閲や、紙を含め物資不足の中で、無事に出版できたと言うことは、そのような要素が含まれていたと想像できます。
ちなみに2008年に「K-20 怪人二十面相・伝
なかなかよくできていて面白かったのですが、その後、続編の話しは聞こえてこないところからすると興行的には失敗だったのでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
反逆する風景 (講談社文庫)
「赤い橋の下のぬるい水
実は私は「赤い橋の下のぬるい水」や「ゆで卵
辺見氏は元々共同通信社の記者として世界中を旅し取材やレポートを書いていましたので、エッセイには事欠きません。
読んでいると、辺見氏の出身は3.11大震災で大きな被害を受けた石巻市で、その美しい海のことなどが書かれています。またウクライナへ行ったときは、事故後数年経ったチェルノブイリから3km地点の無人と化した廃墟の中に入り、放射能測定器で放射能レベルを測り、人類がくり返し犯す誤りを暗示している場面もあります。
エッセイの寄せ集めですから、あまりそれぞれの文章につながりはありませんが、全体を通して流れているタイトルにもなっている「反逆」精神をかいま見ることができます。
それはジャーナリストでも大新聞社ではなく海外にひとりで取材に出て行く一匹狼に近い通信社出身ということもあるのでしょう。
その世界を歩いて見てきた貧困や死に至る病気、飢えで死んでいく子供、環境破壊などに焦点をあて、官憲の圧力に屈せず、精力的にその実態を配信してきたという自負が感じられます。
でも日本にいるとそのようなことは余りにも遠くかけ離れていて、むなしい気分にさせられる厭世的なところもちらほらとあったりします。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チャイルド44 (新潮文庫)
ずっと大きな書店に平積みがされていたので、人気があるのだなと思って見ていましたが、今回読んでみて初めて書いた小説とは思えないほど、よくできたミステリー冒険小説というべきか、なかなか深いストーリーで驚きました。著者はまだ32歳の英国人です。
小説の舞台はスターリン体制の末期、社会主義国家としてひた走り、強制移住や集団農場がおこなわれ、国民の暴発を防ぐためナショナリズムを高めていた1950年代のソビエト連邦で、主人公はそのソ連邦の中でも絶大なる権力を持つ国家保安局(その後のKGB)で勤務する若き元軍人です。
舞台と主人公だけを見ると、西側の作品によくある、軍事スパイもので最後は無事に亡命を果たしてハッピーエンドと思ってしまうのですが、その期待?は完全に裏切られます。
あくまで当時のソ連国内で共産主義を厳しく守る上で、想像を絶する国民への統制と、役人の度を超した行動基準に則った生活、そしてその中にも密やかな家族愛が展開されます。
やがて主人公は元同僚に罠にはめられて地方へ左遷されてしまいますが、そこからプライドと意地ををかけた命がけの行動が始まります。
ただクライマックスの罠にはめた元同僚との対決場面は、やむを得ないと思うものの、あっけなく終わりちょっと物足りなさを感じました。
ロシア系の名前は覚えにくく、小説を読むときにはいつも登場人物に混乱をきたすことがあるのですが、今回は登場人物が少なくて、なんとかこんがらないで済みました。映画化も予定されているそうで、恐怖政治が支配する暗黒のソ連が再現されるのが今から楽しみです。
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