忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/07 >>
SMTWTFS
12 345
6789 101112
13141516 171819
20212223 242526
27282930 31
Recent Entry
Recent Comment
Category
76   77   78   79   80   81   82   83   84   85   86  

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


502
「非国民」のすすめ (ちくま文庫) 斎藤貴男

著者は私と1歳違い(私のほうが1年上)ですが、本を読んでいると、考え方がしっかりとしていて、昔の頑固おやじタイプな印象を受け、後で年齢を知って驚きました。

元々は新聞や雑誌、週刊誌の記者を務め、現在はフリージャーナリストとして活躍されている方です。

この本は2004年に出版されたもので、当時言論やプライバシーの危機だと叫ばれていた「コンビニや街角の監視カメラ設置」「自衛隊海外派遣と言論封鎖」「差別問題と階層」「住民基本台帳」「個人情報保護法」「MMR混合ワクチン問題」などを取り上げ、様々な証拠やインタビューから、政府、政治家、省庁、業界団体、マスコミに対して辛辣な批判を展開しています。

また決して自己満足の批判だけでなく、それぞれの問題に対し「支配されたがる人々」「無関心な人々」に対しても批判し、警鐘を鳴らしています。

著者はこの本以外にも数多くの書物を出していますが、2009年以降は新刊がなく、なにかあったのかなとちょっと心配なところです。私と一歳違いと言えば、まだ50歳代前半で物書きにとっては脂がのっている時期だと思います。

この本では、様々な雑誌や週刊誌などで書いた過去の記事やルポをまとめて1冊の本にしたような体裁です。そのため、強調をしたいからなのか、単に話しが重なってしまったのかわかりませんが、くり返し何度も同じ問題点指摘やフレーズが出てきます。

最初から1冊の本として書き下ろしたものであれば、もっとうまく組み立てられたのでしょうが、寄せ集めという感じはゆがめません。

一般の大手マスコミでは報道されない、深く突っ込んだ取材と、各種のデータを元にした論理展開は、同氏が専門紙や週刊誌記者を経験していたからできることでしょう。

その批判の節々で出てくる、政治家、特にサラブレッドの二世議員に対する猛烈な個人批判については、著者が若いときに苦労した過去にその影響があるのかも知れません。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫) 佐藤優

2005年に同氏が初めて書いた書籍です。その後お得意のソ連邦が崩壊した「自壊する帝国 (新潮文庫)」や自分を裏切った元職場を書いた「外務省ハレンチ物語 (徳間文庫)」など多数の本があります。最近紀伊國屋書店へ行くと、いずれの本も未だに目立つ場所に平積みされていたのには驚きました。ロングセラーなんですね。

ご存じの方も多いと思いますが、佐藤優氏は外務省勤務時代に、鈴木宗男衆議院議員とともに、対ロシア関係において出過ぎたまねをしたということで、小泉政権、外務省、マスコミから集中砲火を浴び、スケープゴート的にその表舞台から一度は消されてしまった人です。

現状はと言えば、2009年に最高裁で上告を棄却され、背任と偽計業務妨害の罪で4年間の執行猶予期間中の身分です。

この本は、佐藤氏が今までになにをやってきて、その結果なぜ逮捕され、国策捜査の名の下に罪を着せられてきたかという、本人の自叙伝でもあり弁解録です。

特に500余日も収監されていた東京拘置所での生活や、特捜部検事とのやりとりは、話半分としても読み応えがあります。

しかし本書の中には実名で「○○はこう言った」「○○は小心者で性格はこうだ」というようなことを平気で書いていますので、名誉毀損や、仕事の話しなどは守秘義務違反にならないのかとヒヤヒヤします。

確かにこの本に書かれた通りのいきさつがすべて真実であれば、佐藤氏が本当に罪として罰せられるほどのことかと思ってしまいますが、裁判での口述書など以外は、本人が書いた一方的な内容なので、いずれも話半分ぐらいにして読み進めていく必要があります。

その中には自分の仕事は国家にとって「すごく重要で、特別なんだ」という度を超した自負や思い込み、そして自分の行動を意識的に美化していると思われる箇所が多くみられ、相反する相手側から見ると、その行動や判断の善悪は180度逆転することになるでしょう。

ちょうど鬼籍に入る寸前の政治家や経済人が、日経朝刊の「私の履歴書」で、自分の過去の行動や決断を最大限に美化し、誇張して書くのと同質の匂いが感じられます。

以前読んだロシア語の通訳者で有名な、また多くの辛辣な書評を書いてきた米原万里の著書で、佐藤氏や佐藤氏の著作が何度も登場し、「素晴らしい人」「最高の出来」ということが書かれていたので、今回興味を持って読んだ次第です。

米原氏とは同じロシアつながりで、しかも両氏とも国家機密に触れる同志的な親しい友人だった(米原氏は故人)のでしょう。

結構ボリュームのある本で、退屈だと嫌だなと思っていましたが、うまく過去の歴史や事件ごとにまとめられており、飽きさせない読み物となっています。

ソ連邦の崩壊や、ロシアになってからの北方領土返還交渉、対ロシア外交の過程など、一般には知られることのない政治家の考え方がよくわかります。

その後も一向に解決しそうもない北方領土問題ですが、この本ではムネオハウス事件をきっかけにし、より一層難しくなってきたように読み取れます。

しかしそれは相手(ロシア)にしてみれば、鈴木宗男氏やインテリジェンスに優れた役人がどれだけ頑張ろうと、日本各地に大規模な米軍が駐留し、中国人民解放軍が急速に増強して力を付けてきている中で、そのロシア側の最前線緩衝地域となる北方領土を敵側にホイホイと返還するほど国際政治は甘くないでしょう。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

グロテスク(文春文庫) 上・下 桐野夏生

最近小説や映画で話題をさらった湊かなえ著の「告白 (双葉文庫)」を数年前に先取りしていた小説です。

このような一人称で複数の登場人物が過去に起きた出来事をそれぞれの視点で語っていくスタイルはいくつもありますが、代表的なものとして芥川龍之介の「藪の中 (講談社文庫)」(映画のタイトルは羅生門)がもっとも有名でしょう。

ストーリーの中には、1997年に起きた「東京電力OL殺人事件」や「オーム事件」などが、登場人物のモチーフとして一部に使われており、39歳の慶応大学出身のエリート総合職女性が、渋谷のホテル街で日々売春を続け、不法滞在の若い外国人に殺害されるまでの経緯などが書かれています。

ただし、それはあくまで、サブ的なもので、本筋は、日本で生まれたスイス人ハーフの姉妹とその学友達の確執と転落がテーマです。

まず姉の告白から始まり、次に姉とは子供の頃から仲の悪かった妹の日記、さらには姉の同級生(殺害されたエリートOL)を殺害した不法就労外国人の調書、殺された同級生の日記へと続いていきます。

人間関係、特に女同士のドロドロとした関係が延々と続いていきますので、あまり体調のよくないときに読むと、精神的に落ち込んでいく可能性がありますので、やや注意かもしれません。なにか著者の比較的新しい作品「東京島」とも共通する、女性心理のいやらしいところをむき出しにした作品です。

著者別読書感想(桐野夏生)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

小説 サブプライム 世界を破滅させた人間たち (集英社文庫) 落合信彦

2009年に単行本が刊行された本ですが、最初はタイトルもよく見ずにお得意のノンフィクションかと思って読み始めたら完全に小説でした。

読み進めていくと服部真澄の小説だったっけ?と思うほど、アメリカ金融界に通じた内容の小説ですが、元々著者はその方面に強いということをすっかり忘れていました。最近はちょいイメージが違っていましたからね。

おそらく翻訳本やつまらないハウツー本も含むと150冊ぐらいの本を出しているであろう落合信彦氏の小説を読むのはホント久しぶりで、独特の雰囲気を持つ著者は好き嫌いが分かれるでしょうけれど、小説では彼の人脈や情報力でしか得られない裏話などが散りばめられていて私は嫌いじゃありません。

内容はタイトルにあるとおり、リーマンショックでアメリカの金融バブルが弾けてしまうまでを、LTCMの興亡、エンロン事件、9.11世界貿易センターテロ事件などウォール街の周辺で実際に起きた事件や、実在する機関や企業が複雑に絡み合いながら、その中で奮闘する優秀な日本人金融マンが主人公として描かれ、やがて破滅の2007年へと向かっていきます。

タイトルからすると金融専門用語が飛び交い、読むのに苦労するかな?と最初思いましたが、それは全くの杞憂で、大人の恋愛あり、FBIの無能ぶりあり、新宿の小さなバーの話しがありと、スラスラと軽く読めます。



リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR

[PR]

Amazonタイムセール

ホーム&キッチンの売れ筋ランキング 

枕・抱き枕の売れ筋ランキング

旅行用品の売れ筋ランキング


ミラーレス一眼の売れ筋ランキング 

空気清浄機 タイムセール

掃除機の売れ筋ランキング

ペット用品の売れ筋ランキング


497
ドキュメンタリー小説「深海の使者」吉村昭著を読み終えて、過去に潜水艦を題材にしていたり、主要な場面に潜水艦が登場したりした小説や映画、コミックやアニメで読んだり見たものはどれほどあったかなと思って調べてみました。

割と最近に「終戦のローレライ」福井晴敏著と、その映画版「ローレライ」があります。ドイツがフランスから接収した連装の主砲を持つ架空の潜水艦を日本が譲り受け、さらにそれに人間特殊兵器を積み、終戦近く、撃沈されるのを覚悟の上で浮上し、広島長崎の後さらに東京へ原爆投下をするためにテニアン飛行場を飛び立つB-29爆撃機を潜水艦の主砲で撃ち落とすという奇想天外なストーリーでそこそこ楽しめました。

yasukuni20100327_046.jpg

またそれとほぼ同時期に映画で「出口のない海」、テレビドラマで「僕たちの戦争」において、同じ回天という魚雷を改造した特攻兵器を扱ったものです。

この2つは人気作家の横山秀夫氏と荻原浩氏の各小説で、映画やテレビで見る前に先に読んでいて、あとで映画化やドラマ化を知りました。

回天の実物は靖国神社の遊就館(博物館)に展示されていますが、そのすぐ横に置いてある魚雷とほぼ同じ大きさで、まさに鋼鉄の棺桶です。

2009年公開の映画「真夏のオリオン」の原作は、池上司著「雷撃深度一九・五」という実話を元にした小説で、内容はだいぶんと変えられていますが、終戦近く劣勢に立たされながらも伊号潜水艦がアメリカ駆逐艦と激しい攻防を描いたものです。

古い映画や小説では、ソ連が開発した新型推進装置を持つ最新鋭原子力潜水艦レッド・オクトーバーとともに艦長がアメリカへ亡命しようとするトム・クランシーの小説「レッド・オクトーバーを追え」が、小説・映画とも秀作です。

ちなみにこの映画では、潜水艦では当たり前にある迫力ある海中での戦闘シーンがありますが、撮影は水は一滴も使わなかったという、特殊効果だけで制作されています。

他の小説では池上司著の「無音潜航」は、自衛隊が誇る静かなディーゼル潜水艦対中国の艦船が一発触発の状態になるという内容で、尖閣諸島問題でお互いに譲れない緊張状態を早くから警告し、さらに今後このような事態がいつ起きても不思議ではないと思いました。

映画になるといっぱいありすぎて、もうすっかり内容も忘れてしまっているものも多いのですが、その中では、ドイツの誇るUボートとアメリカの駆逐艦との心理戦や駆け引きが見ものだった「眼下の敵」や、日本の駆逐艦対アメリカ潜水艦の闘いを描く「深く静かに潜航せよ」も、後者は日本がやられてしまう側なので複雑な思いながら緊張する場面の多いいい映画でした。

最近に見た「渚にて」は古い白黒映画ですが、核戦争によって放射能に汚染された地球において、南半球のオーストラリアとアメリカの潜水艦のみが生き残っているという設定で、東西冷戦下の核兵器開発競争時代を皮肉った秀作でした。

やがてオーストラリアへも放射能が忍び寄ってくることがわかり、アメリカ原潜が選んだ道は、どうせ放射能にやられて死ぬなら故郷に帰ってという、重い選択がなされます。

Uboat7C.jpg

「Uボート」は西ドイツ(当時)が制作した大作映画で、アカデミー賞6部門にノミネートされる実績を残しました。

この映画では、多くの武勲をあげたことでなにかと英雄視されがちなUボートですが、乗組員にとっては海に浮かぶ棺桶と同じで、非情で過酷でとても厳しいものであったことを訴えかけ、しかも最後はあっけなく悲しい結末となるものです。

日本でも英雄や特攻隊員を賞賛するものではなく、そういった一乗組員の目線で潜水艦映画を作ってもらいたいものです。

「1941」は若き頃のスピルバーグ監督の映画で、太平洋戦争初期(1941年)、真珠湾を攻撃したあとアメリカ本土にも日本が攻めてくるという危機感をコミカルに描いたものですが、その中に三船敏郎が艦長役で潜水艦に乗ってアメリカまでやってきて、サンタモニカにある有名な桟橋を攻撃し、観覧車を破壊するシーンが笑えました。

「K19」はソ連の原子力潜水艦の原子炉が火災に遭い、それを消火するために、多量の放射能を浴びながらも必死で格闘する実話を元にした潜水艦映画です。

消火活動中の乗組員の姿は、見るに忍びない悲惨極まりない状態ですが、どうにか消火でき、無事に帰港することができます。

そして数年後に艦長の下に乗組員が集まった時には、その多くは無事元気な姿で再会を喜び合うという最後にホッと安心できた映画でした。

この映画を思い浮かべると、福島で必死に放射能漏れを食い止めようとしている人達とダブってしまいます。

下記に映画の潜水艦艦長役の一覧を書きましたが、潜水艦の艦長というのは、当然主役でもありますが、それにしても日米ともトップクラスの役者が演じているのには驚きます。

i400.jpg

コミックの「あかつき戦闘隊」は、故園田光慶氏が少年サンデーに連載していた漫画ですが、戦時中の人間関係の描写もリアルで、絵もうまく楽しめました。

主人公は戦闘機パイロットですが、決してヒーローではなく、次々と仲間が死んでいき、最後には主人公も撃墜され亡くなります。

物語の終盤では潜水艦(伊号)との関わりが増え、その中に格納していた戦闘機(水上機ではなく)を飛び立たせるなど、今思うとあり得ない設定もありましたが、小学生当時(1969年)はワクワクして読んでいたことを思い出します。

潜水艦を扱ったものでまだ読んでいない小説や、見ていない映画もありますが、小学生の頃はいくつもの潜水艦のプラモデルを作ってお風呂で遊んでいました。

なぜそれほどに潜水艦が好きかというと、その理由は自分でも不明です。

ちなみに会社のパソコンでは、スケジュールされた会議などの時間が来たときに画面のPOPアップと音声で知らせる機能を付けていますが、その時の音声にはソナーの発信音(本物)を採用しています。


■潜水艦を扱った小説で読んだ一覧
レッド・オクトーバーを追え トム・クランシー

無音潜航 池上司

雷撃深度一九・五 池上司

終戦のローレライ 福井晴敏

新紺碧の艦隊 超潜出撃須佐之男号・風雲南東太平洋 荒巻義雄

深海の使者 吉村昭

出口のない海 横山秀夫

僕たちの戦争 荻原浩


■潜水艦を扱った映画、DVD、TVで観た一覧
眼下の敵 1957年米 駆逐艦艦長役:ロバート・ミッチャム

深く静かに潜航せよ 1958年米 潜水艦艦長役:クラーク・ゲーブル

渚にて 1959年 米 潜水艦艦長役役:グレゴリー・ペック

海底大戦争 スティングレイ 1964年英 人形劇

原子力潜水艦浮上せず 1978年米 潜水艦艦長役:チャールトン・ヘストン

1941 1979年米 潜水艦艦長役:三船敏郎

復活の日 1980年東宝 潜水艦艦長役:チャック・コナーズ

Uボート 1981年独 潜水艦艦長役:ユルゲン・プロホノフ

レッド・オクトーバーを追え 1990年米 潜水艦艦長役:ショーン・コネリー

クリムゾン・タイド 1995年 米 潜水艦艦長役:ジーン・ハックマン

K19 2002年米・英・独・加 潜水艦艦長役:ハリソン・フォード

Uボート最後の決断 2003年米 潜水艦艦長役:ウィリアム・H・メイシー

ローレライ 2005年東宝 潜水艦艦長役:役所広司

出口のない海 2006年松竹 潜水艦艦長役:香川照之

僕たちの戦争 2006年TBS 回天乗組員:森山未來

真夏のオリオン 2009年東宝 潜水艦艦長役:玉木宏


■潜水艦を扱ったコミック・アニメで読んだ一覧
沈黙の艦隊 かわぐちかいじ

サブマリン707 小澤さとる

あかつき戦闘隊 園田光慶



リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX


[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


494
太平洋戦争中に遠く離れた日独伊の三国同盟国いわゆる枢軸国同士で人的交流や技術供与、資源融通などをおこなうべく、様々な方法が考えられていました。
 
まず空路ですが、長距離輸送機を使い、ドイツから最短距離で、当時日本が支配をしていた満州まで一直線に飛んでくるのが一番手っ取り早く、制空権が確保できているあいだは、それがもっとも現実的だったのですが、ドイツとソビエトは戦争状態、日本とソビエトは不可侵条約を結んでいたことから、そのソビエトの上空を通過することは、ソビエトに日本が利敵行為をしたと見なされ、太平洋で手一杯のところに後ろのソ連からも攻められてはたまらないと、その案は日本側の強い反対で何度も却下されました。
 
空路では遠回りになりますがドイツ~イタリア~トルコ~シンガポール経由の南周りという方法もありましたが、こちらは英国が制空権を持つインド上空を通過する必要があり、リスクが大きく、また距離も長くなるのでほとんど実行されることはありませんでした。

一度日本がキ77という試作機でチャレンジしましたが、インド洋上空で行方不明となり、おそらく撃墜されたと思われます。
 
陸路はもっと難しく、実質的には中立条約を結んでいるソ連のシベリア鉄道を使う以外には方法はなく、そのシベリア鉄道もドイツと激しい戦争をしている中で、ソ連の日本人に対する監視は厳しく、ドイツとの交流を図れるルートではありません。
 
最後に残されたのが海路ですが、はやりインド洋には英国部隊が、大西洋に入ると英国やアメリカの部隊が待ちかまえており、それらを突破するには、無線を封鎖し、見つからないように海底に潜むことが出来る潜水艦しかありません。
 
潜水艦と言えば一般的には深く潜ったまま遠くまで航行ができるものと思われがちですが、それは戦後に登場した電力も酸素も海中にいながら作ることが出来る原子力潜水艦からです。

当時の潜水艦は他の艦船と同様海上に浮び、ディーゼルエンジンで発電をしながら航行します。

もし敵船や敵の航空機を発見したらすぐに潜って息をひそめ、電池でスクリューを駆動し、敵艦に攻撃ができるようならば攻撃をする、あるいは潜ったまま待ち伏せをして攻撃をするというのが普通の戦い方です。
 
つまり潜水艦でドイツを目指すというのは、日本の基地があったマレーシアやシンガポールから潜ったままアフリカ大陸をまわって2万キロの旅をするのではなく、通常の船のように海上を進み、敵の哨戒地域では夜だけ航行し、昼間はできるだけ潜って隠れているという長旅です。
 
海面ギリギリまで浮上し、潜ったままで艦内に外気を取り入れたり、動力源の電池を充電するためディーゼルエンジンを使うシュノーケル装置が付くのは、もう終戦に近い頃の話しです。この技術も戦争中にドイツから教わったもののようです。
 
前置きが長くなりましたが、そのようなたいへん難しい任務を実行した潜水艦乗りや、関係者に取材をして書き上げた実話のドキュメンタリーです。
 
ドイツの潜水艦と言えば有名なUボートですが、日本海軍の潜水艦は大型艦は「伊号」中型艦が「呂号」、小型艦が「波号」といろは順で区分され、それぞれに番号が付きます。Uボートは日本のように広大な太平洋で長期間作戦行動をする必要はなく、したがって大きさで言えば呂号クラスの中型の大きさになります。
 
日本の潜水艦技術は世界的に見ても決して劣っているわけではなく、特に「伊号」の中にはアメリカ本土の空襲を計画して攻撃用水上機が4機積める潜水空母と言えるようなものまでありました。
 
しかし攻撃力では連合国に勝っていても防御能力では他の日本の兵器と同様遅れていて、相手よりも早く敵を発見することができるレーダー技術は、決定的な差がありました。

これは日本軍にとって「攻撃は最大の防御なり」「先制必勝」精神で、攻撃兵器には多額の予算がつくものの、防御兵器については予算が付かないという結果です。

しかし潜水艦にとっては、敵が気づく前に潜行して隠れないと攻撃されてしまいますので、防御のためのレーダー技術の優劣が、生死を分ける一面を持っています。
 
ドイツから日本へ持ち帰るものはその最新レーダーや、ジェット戦闘機の設計図、4連装機関銃、精密工作機械などで、あとはドイツ留学中の技官など。

逆に日本や東南アジアからドイツへ運ぶのは錫、ゴム、金などの南方の天然資源が中心です。この交換する物品の差に、当時の日本と世界の技術格差にあらためて驚かされます。
 
当然ながらすべての航海がうまくいくわけではなく、最初に往復を成功させた伊号潜水艦は、実効支配していたシンガポール湾で、英国が撤退する際にばらまいていった機雷に蝕雷、沈没してしまったり、戦局が悪化するに従い、航海途中で発見されてインド洋や大西洋で撃沈するものが増えます。往復を終え日本本土までもう少しという南シナ海で、米潜水艦に待ち伏せされて沈没した艦もあります。
 
いよいよドイツ降伏が近くなり、Uボートが連合国に接収される前に、日本の要請でそれを日本へ運ぶためドイツ人乗組員が大西洋を南下していた際、ドイツ降伏の知らせが無電で入り、結局そのUボートは降伏しアメリカへ向かうことになります。

しかしそのUボートに同乗していた日本の技師は「生きて虜囚の辱を受けず」と、ドイツ語で艦長宛に丁寧なお礼の遺書を残し、艦内で自決する場面などはとてもつらい歴史のひとつです。

著者別読書感想(吉村昭)
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
「顔に降りかかる雨」は1993年に著者が初めてミステリー小説を書き、それがいきなり第39回江戸川乱歩賞を受賞し一躍その名を有名にした記念碑的な作品といえます。

私は著者の作品は過去に「水の眠り 灰の夢」と最近「東京島」を読んでいますが、特にこれといった特徴はない作品だなと思っていました。「OUT(1997年)」や直木賞を受賞した「柔らかな頬(1999年)」と着実に人気作家として駆け上がってきました。
 
しかしこのメジャーになる前の作品は、なかなかどうしてまだ新人の時に書いたと思えないほどできのよい作品だと思います。私が小説の中ではもっとも好きなジャンルである探偵ものの要素が含まれているためそう思うのかも知れません。
 
内容は夫を自殺で失い絶望の中にいた女性が、ある日突然大金を持って行方不明になった友人を、事件に巻き込まれながら探すというストーリーです。ちなみにこの主人公の女性は、その後シリーズ化されていくつかの小説に登場するようです。
 
今から18~9年前に書かれた小説ですから、様々な環境や行動様式に現在とはいろいろと違う点があるのが、読んでいてなかなか面白いです。

携帯電話は、まだ一部のビジネスマンぐらいしか持っていない時代で、FAXが頻繁に活用されていたり、個人情報保護にはさほどうるさくない時代でしたので、マンション管理人が容易に住人のことを喋ったり、部屋の鍵を貸したりします(それはいつの時代でもちょっとダメだろと思いますが)。

探偵も今の世の中になって、個人情報を調べるのはきっと大変になっているのでしょうけど、逆にネットで簡単に調べることができる場合もあるので、便利さと不便さはいってこいなのかも知れません。
 
最近の小説に多い複雑で怪奇であり得ないストーリーではなく、非常にシンプルで、女性作家らしく、安易な妄想がしばしば挟まれつつで、私はこういうシンプルな内容は嫌いじゃありません。

著者別読書感想(桐野夏生)
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
超氷河期に突入している就職活動で、JR東海、NTTDoCoMo、伊藤忠商事、東京海上日動火災保険など有名どころの大企業から内定をもらった人達の就職活動、特に事前準備や面接、インターンシップなどの経験談をインタビュー形式でまとめたものです。
 
これから就活へと踏み出す人には多少参考になるとは思いますが「要は企業それぞれに採用ポリシィがあり、就活する学生にもそれぞれ特徴や個性があるので、特に必勝パターンというものはない」というのが結論でしょう。あるとすれば、そのような大手企業には、学校ブランド(トップ5ぐらい)や海外生活経験が役立つことぐらいでしょう。
 
内定をもらった人の話しで必ずと言っていいほどよく出てくるのは「この会社の面接は他社と違って…」「ここの会社の人は他の会社の人と比べてずっと熱く…」という言葉があります。内定をもらい、入社した途端、インタビューを受けるときには、すっかりその会社の広報パーソンになりきっています。
 
これを読む学生さんが誤解してはいけない点として、このインタビューに登場する人達は、一般内定者の中から無作為に選ばれたわけではなく、企業が学生に向けて、その企業にとって一番宣伝になると思う人達を選び、質問される内容もその回答も準備された人達であると言うことをお忘れなく。だからまるで企業の広報担当者のような回答に終始することになります。
 
当然インタビュー中は、すぐそばに切れ者の人事担当者が控え、質問や回答に予定外のものがないか目を光らせ、原稿になってからも、自ら手を入れていると想像が出来ます。

したがって内容はすべてに当たり障りがなく、その企業のことや面接を過大に評価し、上記の「この会社は他社と違い…」という、誉め言葉ばかりの表現ばかりになってしまうわけです。そこのところを間違えなければ、いつ頃、なにを、どうやって、様々な難関をクリアしたのかなどは、右も左もわからない学生にとっては参考になることもあるでしょう。
 
これも何人もの人がインタビューで言っていましたが「入社して長く働きたいので、面接で自分を偽ったり、よく見せようとテクニックに走っても、あとで困るのは結局自分だ」というのは、まさにその通りです。

ところが現実的には、学生がうまく企業側を騙すなんてことは、まず不可能で(できると思っているならそれは単純な思い上がりというもの)、逆に企業側が学生を騙すケースの方がはるかに簡単で多いと言うことを知っておく必要があります。




リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
リストラ天国 日記(BLOG)

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


488

様々な経済書がある中で「少子高齢化」という言い方がよくされていますが、著者は「少子化と高齢化とは別物の事象であり、子供さえ増やせば高齢化が防げるという誤解が蔓延している」と書き、さらにこの「少子高齢化という言葉を使う識者やこの言葉が使われる論説は信用しない」とまでバッサリと切り明快です。私も過去に何度もこの言葉を使ってきましたので反省しなくちゃいけません。
 
著者の藻谷浩介氏(46歳)は山口県出身で東大卒業後、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)に入行、現在も日本政策投資銀行地域振興部参事役の根っからのバンカーで地域エコノミストです。ちょうどこの4月に朝日新聞社が立ち上げた「ニッポン前へ委員会」の委員に委嘱されましたので、今後朝日新聞紙上でも論説などを読むことができそうです。
 
著者が指摘する日本経済の長期的な不況とデフレは単なる少子高齢化ではなく「生産年齢人口の減少」であると言い、いままではGDPや失業率など「率」で見てきた数字を「実数」の生産年齢人口、完全失業者数などで見るべきとしています。

そしてこの事態は何十年も前からわかっていたことで、その生産年齢の減少を1人あたりの生産効率をあげることや外国人労働者で埋め合わせることができると考えた学者や経済人を批判しています。
 
ただいま日本に近いアジア各国はこれからしばらくのあいだは生産年齢人口の増加が見込まれ、日本の高度成長期と同様活況をおびることとなるので、それらをスイスやイタリアのように観光やブランドを盛り上げてうまく利用していくべきとまとめています。

頭ではぼんやりと理解していたつもりでも、こうハッキリと事実と根拠を指摘してもらえるとガーンと頭を殴られたような感じがします。20年前に読みたかったところです。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 


将棋について興味のない人は読んでもさっぱり理解できない本です。伝統あるプロ棋士の世界に今から25年前、わずか15歳でデビューし、その後ずっと将棋界のトップで活躍した羽生善治名人のことは多くの国民にに知られていますが、なにがそれほど凄いのかはやはり将棋をこよなく愛する人でなければわからないところです。
 
その羽生名人の対局や棋譜を見ながら、羽生世代、その前の世代、後の世代などを比較していきますが、羽生名人へのインタビューや過去の言葉からその強さと凄みをあぶり出していきます。と、いうことで、本の内容については、私のレベルでは棋譜を追うのに必死で、特に感想もなにもありません。
 
私と将棋の関わりですが、将棋を一番よくやったのは小学生の頃で、最初は4つ離れた兄に教わり、兄に勝ちたい一心で、必死に将棋のノウハウ本や故大山康晴15世名人の書いた本などを読み、毎週日曜日の午前中に教育テレビでやっていた将棋対局を興味を持って見ていました。
 
その時に初歩的な定跡をいくつか覚えたものの、その後、中学生以降は滅多にしなくなり、最近は何十年もやっていません。子供に教えてやるべきだったかと反省ですが、子供は小さいときからもっぱら携帯ゲーム機に夢中なので、将棋のような動きに乏しい割に、頭をたいへん使う奥深いゲームにはなかなか興味を示さなかっただろうというのも事実でしょう。
 
いつだったか社会人になり立ての頃に、将棋にはまっている先輩がいて、嫌がる私と無理矢理に対局をすることになりました。当時は体育会系風貌の私に、そういう将棋の経験があるなんてまったく想像できない油断もあり、私にコテンパンにやられて愕然として落ち込んだのを思い出します。その後何度も何度も誘われてヘキヘキしました。
 
そんなウ~ンと昔の知識だけですので、この本を読んでもその対局中継のポイントや世代による違いなんてものはまったくわかりませんが、なにか小学生の頃に一生懸命に櫓やミノの効率的な作り方、相手の陣の崩し方を研究してきた頃を懐かしく思い出します。
 
世界中に将棋と似た対戦ゲームは数々ありますが、将棋にしかないルールがあり、それは相手の駒を取ったらそれを今度は自分の駒として使えるというルールです。このルールがより一層ゲームの展開を複雑にしていて、ずっと防戦一方で負け寸前だったのが、相手から奪った駒を使って一気呵成に相手を追い詰め逆転するなんてことがアマチュア将棋ではよくあります。
 
確かに日本では戦国時代までの戦争では敵の大将の首さえ取れば、生き残った家臣達まで皆殺しとせず、逆に有能な武士や参謀は味方につけて重用する場面がよくありました。そういうところから来ているのかどうかは知りませんが、敵将以外は打ち取れば(生け捕りにして)、その後は味方として働いてもらうという発想はとてもよくできています。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
著者伊藤計劃(いとう けいかく)は2009年3月20日に34歳という短い生涯を終えてしまった作家です。書いた長編小説は「虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)」「メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)」とこの「ハーモニー」の三冊だけですが、いずれもクセがあるものの強烈なインパクトのある作品ゆえ多くのディープなファンがいます。
 
また「伊藤計劃:第弐位相」という自身のブログは2009年1月7日の記述で最後となっていますが、その中にも早く退院して見たいDVD?が紹介されており、旅立つ前に見ることができたのか気にかかるところです。そしてこの作品「ハーモニー」を書き始めたのは2008年8月29日のブログで「第一稿上げた」と書かれています。
 
すでにデビュー作の「虐殺器官」は読んでいますが、読んだときのなんというべきか、新鮮さと緻密なプロットがこの本でも伝わってきます。

このようにして徐々に読者を拡げていき、文章もテーマもこなれていって数年後には大ヒット作を世に出し、映画化もされていくのが期待される人気作家の流れですが、それを望むことができないとは残念至極です。
 
ストーリーは、21世紀も終わりの近い世界で、SFではよくある健康至上が蔓延し、テクノロジーが精神世界にまで達しています。

様々な技術が進化した中で、100年前(つまり現在)から残り続けているものもあり、例えばガソリンで動く機械や鉛玉を発射する拳銃が骨董品としてではなく現役で出てくるのにはちょっと違和感を感じたりします。

ま、それらの未来予想については私が生きているあいだに知ることはなさそうですが。

著者別読書感想(伊藤計劃)
 



リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
リストラ天国 日記(BLOG)

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


484
ドーン (講談社文庫) 平野啓一郎

近未来のSF小説ですが、その設定はかなり近くて今から20数年後の2036年頃となっています。それだけに現在のテクノロジーの延長線上にある新しいサービスや、近々起こると想定されている災害などが盛り込まれていてなかなかリアル感があります。
 
主人公は外科医出身の日本人宇宙飛行士でJAXAからNASAへ出向し無事火星探査から帰ってきた日本人と、もうひとり、アメリカの大統領選挙において不利な闘いを強いられている地味な民主党の候補をPRする広告会社のアメリカ人です。
 
その日本人宇宙飛行士は、外科医だった頃、東京で起きた大地震のため、幼児だった自分の子供を亡くしていますが、なにか先月に起きた東日本大震災を彷彿させるものがあります。もちろんこの小説のほうがずっと先に書かれています。
 
ストーリーは大きく分けて2つのことが同時に進行します。ひとつは火星探査の長い旅のあいだに起きたとんでもない話し。もうひとつが、アメリカ大統領選に絡み、火星着陸を無事成功させたことを政治的に利用しようとする与党共和党の弱点となる「混迷する東アフリカ」への軍事介入問題です。
 
この小説でも、先月読んだ「KATANA」と同様、2000年代のブッシュ大統領時代から始まったアメリカの軍隊や軍備の民間企業へのアウトソーシング化が触れられており、その行き着く先は?というのが焦点になっています。
 
日本人の作家が描くアメリカとアメリカ人をメインに配置したSFといえば、以前読んだ伊藤計劃著「虐殺器官」や、SFではないですが前述の服部真澄著「KATANA」がそれに近いものと言えます。そして結末も意外と似たようなところがあります。
 
20数年後の話しですから、生活などはそう大きく違うところはありませんが、ネット上で誰でもが創作することができる「Wikiノベル」、街角や店内に設置されている数多くの監視カメラをネットワーク化して利用する顔認識システム「散影」、顔の整形手術がより進み、いくつもの顔を持つことができる「可塑整形」など、現代のテクノロジーやシステムなどが進化した想像というか予想図が描かれています。
 
ちょっと面白かったのは、『…とりわけ昨年50周年記念として《ウィー・アー・ザ・ワールド》のリメイクの制作に参加した民主党支持のミュージシャンたちが、《ウィー・アー・ザ・ワールド アゲイン》コンサートに参加してからは、その差は顕著なものとなった。ライヴで放送されたこのステージでは、87歳で闘病中のブルース・スプリングスティーンが車椅子で登場し、…』なんていうのが出てきてニヤリとさせられます。1949年生まれのブルース・スプリングスティーンが2025年まで無事生きていられるかは微妙って感じでしょう。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
前作「怪しいお仕事!」の続編で、前作と同様買ったのではなく会社の書棚にあったので暇つぶしに借りてきました。

北尾トロ氏はフリーのライターで、面白そうなネタを週刊誌などに持ち込んで、それを自ら体験してそのレポートを書くというスタイルが多そうです。
 
出版は2006年ですから5年ほど前の文庫ですが、実際に体験して書いたのはさらにその2~3年前というところでしょう。
 
この書で実際に体験したり、関係者にインタビューした危ないお仕事とは、
・万引きバスター
・私立探偵
・警察マニア
・超能力開発セミナー講師
・フーゾク専門不動産屋
・ダッチワイフ製造業者
・新聞拡張団
などです。
 
読んで面白かったのは、新聞拡張団に実際に応募し、体験したレポートです。あとはテレビなどで時々レポートされたり、お笑い芸人が突撃レポートしたり、あるいは社会問題として事件が起きたりしますので、その仕事の内容はだいたい想像ができます。
 
その新聞拡張員というのは、その販売地区の配達員が昼間の暇な時間に営業として回っているのかと思っていたらどうもそうではないようです。

もちろん配達員が営業しているケースもあるでしょうが「新聞拡張団」とあるように、全国にいくつもの拡張員を束ねている組織があって、各地の系列販売店からの依頼でその地区を回わり、片っ端から家を訪ねていく拡販専門部隊です。ベテランとなると月80万円近い収入の人もいるようです。
 
北尾氏はそのひとつのグループにアルバイトとして入社し、完全歩合制で契約を取っていく体験レポートを書くというものです。

レポートの中にその仕組みが書かれていましたが、どう考えても拡張団へ支払う費用は月々2~3千円の新聞代ではペイしませんが、それにはちゃんと裏がありました。
 
ただ近年は特に若い人(共働きの夫婦も)は、あまり新聞を取らないので、この拡張員という仕事も末路をたどっているのだろうなと思ってしまいます。
 
私も時々自宅へ来る拡張員と話しをすることがありますが、人気プロ野球チームのチケットやビール券、洗剤をチラチラと見せながら、お試しで1ヶ月だけでも購読しませんか?という営業で、それはそれで案外コロッと「じゃぁ1カ月だけ」とか言う人もいるのでしょう。
 
あいにく私はパリーグのファンで、家ではアルコールは飲まず、洗濯は家人がやってくれるので、そのようなありきたりのサービスではまったく食指が動きませんでした。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
美丘 (角川文庫) 石田衣良

日本テレビ系列で昨年放送されたドラマの原作小説で、よくあるパターンのお涙ちょうだい不治の病の少女との純愛小説で、片山恭一氏の「世界の中心で、愛をさけぶ」が地方の高校生カップルだったのに対し、こちらは都会の大学生カップルで、より大人の恋愛風景に振ってあるという感じです。
 
ま、それ以外にあまり感想も解説もありません。 

著者別読書感想(石田衣良)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
アフガンの男 (角川文庫) 上・下 フレデリック・フォーサイス

ジェフリー・アーチャーと同様、当たり外れのない英国の作家です。ただ作品数は少なく、でも寝る間を惜しんで一気に読みたくなる作品を書いてくれます。

ちなみに私はフォーサイスの本(翻訳本)はすべて読んでいますが、その半数は文庫ではなく単行本です。文庫になるまで待てなかったという意味です。
 
古くは実在した元ナチ高官の秘密組織を追い詰める「オデッサ・ファイル」や、映画で大ブレークした「ジャッカルの日」など、戦争、諜報、暗殺、政治、東西冷戦などに鋭く切り込み、徹底した取材と緻密なストーリーで読む人を引きつけます。
 
1996年に突然断筆宣言をして長くその作品を読むことができませんでしたが、8年後の2004年に「アヴェンジャー」など数作品を次々と発表、この「アフガンの男」は2008年に発刊され今年2011年に文庫化されたものです。
 
ストーリーはSIS(英国特殊部隊)を引退して、英国の田舎で古い農家を買い取り、余生を過ごすためゆっくりと自分で直していこうとしていたマイク・マーティン元大佐が、中東での戦闘などを買われ、しかもアフガン人の特徴を有していることから、オサマ・ビンラディンらが率いるアルカイダに潜入し、9.11に続く、謎の大規模テロの情報を掴んでいくというものです。
 
このマイク・マーティンという主人公、もちろん実在の人ではありませんが、どこかで聞いたような記憶がありました。読後に真山仁氏の解説文を読むと、同作家の小説「神の拳」(1994年)に登場していることが書かれていました。

この小説の舞台はやはり中東で、サダム・フセイン率いるイラクがクエート侵攻をおこない、対する多国籍軍に多大な被害を及ぼすであろう新兵器「神の拳」を探り出して撃退するまでのストーリーで、非常に読み応えがありました。
 
相変わらずストーリーの切れ味は抜群なのですが、中東、アラブ界隈の地名や人名はとにかく覚えにくく、当然それに加えて米英両国のスパイマスター、中東問題専門家、コーラン研究家などが加わりますので、作中にはカタカナばかりが羅列されることになります。

逆に読むなら一気に読んでしまわないと、あいだを置くと、誰と誰がどうだったのかがこんがらがってしまうということになります。
 
ハリウッド映画のようにすべてがハッピーエンドで終わるというものではありません。そして国際的には不合法な身代わりの不法入国でスパイ活動をするわけですから、その功績を表だって顕彰できるはずもなく、事実を知っているわずかな人達の思いと、改装中で残されたままの農家が、最後にジワリと涙を誘うことになります。

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)




リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
リストラ天国 日記(BLOG)
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ