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書籍裏表紙の筆者紹介のところに自分のことを『某有名私立大学を経て、いわゆる「勝ち組」職場の事務職として勤務。…』と書いてあるのには大笑いしました。

多くの場合この紹介文は著者が自分で書いたり、少なくとも誰かが書いてくれたものを自分でチェックするわけですが、このような紹介文を自分で書いたり認めたりするような人は、うぬぼれが強く、自尊心旺盛で、傲慢で一般的には信用しないほうが良さそうです。
 
書いてあることは至極まっとうなことばかりですが、たった数百人の面接経験からこうだと決めつけてみたり、Aさん、Bさんといくつも事例が出てきますが、その多くは自分で都合よく作っているなぁって感じを受けてしまいます。

新書を書き下ろすにあたり、ヒントはその経験から出てきたものが多いのでしょうが、事例で書かれている内容は、よりシンプルにデフォルメしたものだろうと思います。
 
また「解雇規制を緩和することで企業が中途採用や解雇が気楽にできるようにすべし」というようなことが書かれていますが、まったく馬鹿な話しです。

これはつまり欧米のように失業率を今の5%から10~20%以上にするための方策を述べているに過ぎず、そういうことをすればほとんどの企業は安い給料で元気に働く若者以外必要とせず、決して健康とは言えず、子供の進学や住宅などで一番お金が必要な(高給な)中高年者はほとんど失業です。
 
百歩譲って解雇規制を緩和するならば、企業が欲しい年齢層20~30歳までだけを対象とし、31歳以上は現状の規制をさらに強化するぐらいにするべきでしょう。

30歳までならまだ転職するのに中高年者よりは不自由しませんし、いろいろ経験して自分になにが向いているかを考え、やり直すこともできる年齢だからです。
 
ネット上では「ブラック企業」「ブラック会社」と検索が多く「ブラック会社&○○」(○○は実際の企業名)で検索をされる人がもの凄い数になっています。
 
というのも、以前に私が書いたブログで学生の「人気企業ランキング」を書いたものがあり、その同じ記事の中に、たまたま偶然ですが「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の映画の話しを入れたところ、その人気企業ランキングに出てくる企業名とブラック会社の二つのキーワードで検索が大量に来ていたことがわかりました。この本もそのような時流に合わせた一過性のものだろうと推測しています。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
私と同年代の作家さんで、すでに「空中ブランコ」で直木賞、「オリンピックの身代」で吉川英治文学賞など大きな賞をすでにいくつも取っています。

この短編集の作品も柴田錬三郎賞を受賞されています。私は受賞作品以外に映画にもなった「サウスバウンド」や「真夜中のマーチ」「東京物語」がお勧めです。
 
ほぼ同年代で1950年代生まれの荻原浩氏や盛田隆二氏より少しだけ若い作家さんですが、上記のように多くの賞を取っているのにはどういう理由があるのか不明です。扱うテーマが広く、機を見るに敏な作家さんなのかも知れません。
 
淡々と過ぎていく日々の生活や夫婦の姿が当たり前のようで当たり前でなく描かれているこの短編集は、奥田英朗氏の作品としては珍しい気がしますが、その中に光るエピソードやユーモアが散りばめられていてちょっとした空き時間にちょっと読むのに適しています。
 
私はちょうどワールドカップ期間中だったので、ハーフタイムの時間や、キックオフまでの待ち時間に読んでいましたが、このような短編集の場合は区切りやすくて便利です。

ただ、実際の初出は知らないのですが、いかにも女性向け雑誌か月間文芸誌の読み切り小説っぽさが伺えます。

著者別読書感想(奥田英朗)
 
   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
エコー・パーク (講談社文庫) (上)(下) マイクル・コナリー

長らく待っていました、ロス市警に復帰したハリーボッシュシリーズの最新刊(文庫)です。

1992年に「ナイトホークス」で登場して以来、シリーズの11作目となります。個人的にはロバートBパーカーが亡くなり、スペンサーシリーズが遺作(未読)を残して終了してしまったので、今後はコナリーのこのハリー・ボッシュシリーズに期待したいところです。
 
主人公のボッシュ刑事は一度ロス市警を退職したあと、再び刑事になったという変わった経歴を持ちますが、この作品では前に刑事だった時に担当し、未解決に終わってしまった女性の行方不明事件が、13年後に新たな展開で動き出すと言うところから始まります。
 
タイトルに使われ、小説の舞台となるエコーパーク(Ecoh park)はロサンジェルスのダウンタウンにあるドジャースタジアム近くに実在している大きな公園です。

ちょうど東京ドームそばにある小石川後楽園と言ったところでしょうか。ロスに詳しい方なら割と知っているのではないでしょうか。

著者別読書感想(マイクル・コナリー)
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
この本は2002年に既読なのですが、今年6月に続編となる「名残り火―てのひらの闇〈2〉」の文庫版が刊行され、それを読む前に前作のおさらいをしておこうと、書棚から引っ張り出してきました。

ちなみに藤原伊織氏はすでに亡くなっておられ、「名残り火―てのひらの闇〈2〉」が遺作のようです。
 
前作を8年前に読んだ内容はすっかり抜け落ちていて、読み始めても最後のネタバレをしないのは、うれしいような困ったような複雑な気持ちです。

これじゃ、新しい本を次々と買うより、蔵書している本を片っ端から読んだ方が経済的かつ効率的かもしれません。
 
小説の主人公は20年間勤続している飲料メーカーのサラリーマンですが、出自はやくざの組長の息子だったという設定です。

同じような設定をこれとは別の日本のハードボイルド小説で読んだ記憶がありますが、それがなんだったか忘れました。

ただしサラリーマン金太郎のような「できるスーパーサラリーマン」ではなく、冒頭のシーンでは、酔いつぶれて道路で寝ていると、朝方の雨で目が覚めるというさえないくたびれた中年です。
 
ヤクザの世界から抜け出して、リストラの早期退職に応募して20年間のサラリーマン生活に終止符を打とうとしたとたん、今まで縁がなかったヤクザとまた関わりがでてきた、、、というストーリーですが、読み応えは十分あります。

著者別読書感想(藤原伊織)



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404
6月後半はサッカーワールドカップ南アフリカ大会で熱戦を繰り広げたことで読書の時間が大幅に減少してしまいました。

通勤時も寝不足がたたって集中できずぼんやりとしている時間が多かったように思います。ま、4年に一度のことですからお祭りですから梅雨空を吹き飛ばして楽しみましょう。
 
最も遠い銀河 (幻冬舎文庫) 白川道 1巻 冬・2巻 春・3巻 夏・4巻 秋


2009年7月に刊行された長編小説の文庫版です。単行本では上下巻2冊でしたが、文庫本になると1巻から4巻までの4冊に。

単行本2冊で3570円で、文庫本4冊で2910円。その差は660円です。私のように満員電車の中で小さくなって読まざるを得ないのでなければ単行本で買う方が魅力ありそうです。
 
病葉流れて 」、「朽ちた花びら―病葉流れて〈2〉 」、「崩れる日なにおもう―病葉流れて〈3〉(幻冬舎文庫) 」のシリーズが、白川氏の自伝的要素を含んだ長編小説に対し、白川氏お得意の麻雀、競輪、株式投資の話しはまったくなく、彼にとっては新境地と言ってもいい新しい世界を描いているのがこの作品です。
 
舞台は北海道の小樽と東京の2ヶ所で、ガンに冒され余命幾ばくもない北海道警の元刑事と、極貧の中から苦労の末ようやく大きなチャンスをつかんだ新鋭気鋭の建築デザイナーの二人が主人公です。
 
この小説を読んでいると、現在の成功を守るため犯した犯罪を必死に隠そうとする主人公と、その過去を暴き主人公の生い立ちや苦悩に感情移入しつつも追い詰めていく刑事という森村誠一氏の名作「砂の器 」「人間の証明(角川文庫) 」などを思い出します。
 
しかし森村氏の作品が、やむを得なく殺人を犯した主人公を追い詰めていく刑事に対し、こちらは殺人よりずっとずっと軽い病死した恋人の死体遺棄という犯罪に、リタイヤした刑事が手弁当でそこまで執着して追い詰められるものか?また犯人側も身近な親友や婚約者まで巻き込み混乱させて、ついには死者まで出すことになってしまい、そこまでして隠し通さなくてはいけないような重大な犯罪か?という現実感がイマイチわかないのが残念です。
 
身寄りのない病死した恋人をその遺言通りに故郷の海に沈めたことは犯罪には違いないですが、学校の先生や法務関係の仕事に従事しているわけでもなく、建築デザイナーという才能がすべての世界で、世間の評判が一気に落ちてしまい再起不能になるとは考えられません。逆に近年まれに見る美しいエピソードとして有名人になりそうな気がします。
 
あまりにも偶然の出来事が頻発するのは、ま、小説を盛り上げていくために仕方がないと思いますが、前述の犯罪の重大さを含め、もう少しリアリティさがあったほうが、興ざめすることなく泣かせられるのではと思います。

そう考えるといつも泣かせる小説をサラッと書く浅田次郎氏はたいした作家なのだとあらためて思ったりして。
 
この小説は森村誠一氏の小説と同様、映画化されると、感動と涙を誘うそれなりに面白いものになると思います。

著者別読書感想(白川道)
 
   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
ノンストップ! (文春文庫) サイモン・カーニック

原題は「RELENTLES」で「過酷な」とか「容赦ない」という意味の形容詞ですが、日本ではあまり一般的でない言葉なので「ノンストップ」という単純明快なタイトルに変更されたのでしょう。

ただ、それが作者の本来意図することであるかはまた別の問題で、出版社側の「売りやすさ」が優先されたような気がします。
 
文庫で440ページの中長編小説ですが、その事件が起きて解決するまではわずかに2日間。その2日間に様々な出来事がこれでもかというぐらい主人公を襲い続けます。
 
親友から4年ぶりにかかってきた電話から聞こえてきたのは、その親友が何者かに襲われていて、自分の住所を白状しているところから始まり、心配になって妻の職場へ行くと、いきなり覆面した男に殺されかけ、その場から命からがら逃げ出して、保護してもらえると思った警察では殺人犯人扱いされ、なんとか誤解を解いて釈放されると、今度はまた別の男に銃で脅されて誘拐されることにと次々に。
 
こういった小説では最後は家族や妻との絆が深まってというラストが多いのですが、この小説では妻の不倫や同性愛などが次々と暴露されていき、よりややこしくなっていきます。もうまったく踏んだり蹴ったりの主人公には同情してやみません。
 
登場人物の中では小説にはよくある話しですが、愛する妻を失ってしまった影ある刑事、国家犯罪対策局警部補マイク・ボルトが魅力的です。 

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#6月6日にパソコンが故障したために更新が遅れました。
 
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amazonのキンドルやアップルのiPadなど電子書籍を使える環境がようやく整いつつあります。その電子書籍が当たり前になる前の現状の複雑な仕組みや過去からの流れをわかりやすく解説されています。

佐々木氏は「2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)」の著者で、持論の「プラットフォームを制する者がビジネスを制す」の基本的考え方をここでも披露されています。
 
佐々木氏は先日ブログ上で孫正義氏の「光の道」構想に「もっと先にやることがあるのでは?」と異論を突きつけていましたが、根っからのジャーナリストらしく「過激なタイトルで気を引きつけ、中身は当たり障りなくほどほどに」という感じでしょうか。

このあたりはネットメディアとはたいへん相性がよく、その点は時代の寵児とも言えるのかも知れません。
 
本のタイトルにもなった「電子書籍」ですが、この本も最初は期間限定でしたが、たった100円でこの書籍をダウンロードすることができました。

個人的にはまだスマートフォンやiPadなど電子リーダーを持っていないので買えませんでしたが、内容はともかくその価格にはもの凄くインパクトがあったと思います。

しかしそれを知った後では書籍(1,155円)を高く感じてしまいなかなか買えないのですよね。なので同僚に借りて読みました。
 
この電子書籍の分野でもやはり日本の会社(出版社、メーカー等)は完全に出遅れていて、普及するとしても美味しい部分はアメリカの会社に独占されてしまいそうです。

もはや日本の企業には打つ手なしでしょうか?その点を佐々木氏には具体的に「いまなにをするべきか」、「それをするとどうなるか」を書いてもらいたかったと思いますが、やはりジャーナリストにそこまで求めるのは酷というものでしょう。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

蒼穹のかなたへ (文春文庫) 上・下 ロバート・ゴダード

1998年4月に購入し、100ページほど読んだところで断念。理由は登場人物や地名が一気に出てきてごっちゃになって混乱してしまい途中で断念したと記憶しています。

でも今回は心して最初からゆっくり読み直したところ、それほど難解でなかったので、きっと1998年当時は気持ち的に余裕がなかった時期だったのかもしれません。
 
ストーリーは、英国で仕事がうまくいかず逃げ出した中年男性が、ギリシャで別荘管理人をやっていたところに、知り合いの若い女性が尋ねてきて、一人で喜んでいるとその女性がなにも言わず失踪してしまい、その男性に嫌疑がかかってしまうという始まりで、その後はロンドン、チューリッヒ、アテネとその女性捜しの旅が始まるというものです。
 
その失踪した女性が残したのが、アテネ国立考古学博物館にある紀元前に作られたブロンズ像「アプロディーテ」と「シレノス」の二枚の絵はがきと、現像に出したままになっていた24枚の写真で、これらが失踪の鍵を解くヒントになり、女性が自分に助けを求めているのでは?と思う中年男性が哀れを誘います。
 
そのキーとなるはずだった、二つの彫刻(有名らしいがもちろん知らなかった)をちょっと調べてみました。時々小説を読んでいる最中に、地図を調べてみたり、歴史を調べてみたりしますがその一環です。
 
写真:アプロディーテ(左)とシレノス(右) アテネ国立考古学博物館
aphrodite_silenos.jpg
 
それにしても、この彫像は両方ともちゃんとした由緒ある芸術作品なのですが、さすがにこのシレノスの像の写真が失踪現場にあり「若い女性が持っていた」というシチュエーションは、思わずちょっと引いてしまいそうな感じです。

それからこのブログの管理者からも削除されてしまうかもしれません。一応ちゃんとした芸術なんです。絵はがきでも普通に売っている芸術作品なんですよ、一応。
 
失踪後に女性が残していったこれらの絵はがきのせいで、主人公の男性はギリシャの警察から「お前がレイプして殺したのに違いない」と責められます。

まぁそう誤解されても不思議ではありません。まったく罪作りな女性です。

著者別読書感想(ロバート・ゴダード)
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

再び佐々木俊尚氏の本です。

だって会社の本棚に置いてあったのでついつい。
ま、それなりにそれなりにというのが感想です。

フリーでオフィスを構えずライターやコンサルなどをやっている人なら読んで損のない内容かな。

私のような根っからのサラリーマンにはまったく無用でした。もちろん佐々木氏のファンや自慢話をたっぷりと読みたいならばぜひお勧めです。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

文庫版だと冬・春・夏・秋と4巻もあります。現在はまだ夏に入ったところなので、感想は次回6月下旬の読書の時に。

著者別読書感想(白川道)
 
 

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392
レディ・ジョーカー (新潮文庫) 上・中・下 高村薫
 
高村薫氏の小説は「黄金を抱いて翔べ」以降「神の火」「リヴィエラを撃て(新潮文庫)」「マークスの山(講談社文庫)」「照柿」「地を這う虫」などハズレなしで面白く、この1997年に単行本が刊行された「レディ・ジョーカー」も文庫化されるのを長く長く待ち望んでいました。


先に2004年に映画ができて上映されていましたが、観ると小説の面白さが半減するなと思って我慢し、それからさらに6年(単行本から13年!)経ってようやく文庫版が刊行されました。
 
滅多なことでは単行本は買わない文庫ファンの私としては、このようなベストセラーの非常に遅い文庫化は出版社の都合なのでしょうけど、残念に思います。

2000年頃にBOOK-OFFで中古の単行本も見つけたのですが、満員電車の中で読むには重すぎて、また程度もあまりよくなかったのであきらめました。おそらく売れに売れている村上春樹の「 1Q84 」も、文庫化はずっと先なんでしょうね。

今年から大ブレークしている電子書籍になれば、単行本も文庫本もなくなるので、そのような出版社が高い単行本を売りたいからというせこいやり方は自然となくなりますね。
 
内容は、企業恐喝犯罪を核に犯人、企業、警察の三つの視点で話が進んでいきます。上・中・下とかなり長い小説で、やや中だるみもありますが、登場人物はそれほど多くなく人間心理や企業論理、それと警察組織の動きが緻密に描かれている力作です。

でも果たしてこの内容で1000ページも越える必要があったのかはちょっと?です。
 
同じように大企業の苦悩と犯罪を扱った長編小説に池井戸潤著「空飛ぶタイヤ(講談社文庫)」がありますが、「空飛ぶタイヤ」が実際に起きた企業犯罪(自動車のリコール隠し)に対し、「レディ・ジョーカー」は1984~5年に起きたグリコ・森永事件がヒントになっているようです。

いずれにしても小説で描かれる大企業は、そこにいる個人個人は善人であったとしても、企業論理が優先される組織には自浄能力はなく、汚いものだというメッセージです。昨年映画化されて大ヒットした山崎豊子著の「沈まぬ太陽(新潮文庫)」もまさにそうでしたね。
 
しかし「空飛ぶタイヤ」や「沈まぬ太陽」には三菱自動車工業や日本航空という実際にモデルがありましたが、この「レディ・ジョーカー」のたまたまモデルとなってしまった「ラガーが主力の日本最大のビール会社」にしてみると、身に覚えのない疑惑やよからぬ風評が降りかかってしまう可能性があります。

さらにこの作品をヒントにした類似の恐喝事件が起きないとも言えず、迷惑な話しだろうなと、企業人としてはちょっと気の毒に思ってしまいます。今のところ大人のキリンビールが著者や出版社を訴えたという話しは聞こえません。
 
あとこのタイトルにもなっている「ジョーカー」は、一般的にあまりいい意味で使われることはないのですが、それが身体障害者のことを指していたり、日本に古くから存在している「被差別部落」出身者の採用差別の問題が絡んでいたり、またひたすら身内の犯罪を隠蔽しようとする警察組織とか、著者が意識をしてかどうかはわかりませんが、ある意味現代社会のタブーに問題提起した小説と言えるかも知れません。

著者別読書感想(高村薫)


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384
神々の指紋 (角川文庫) (上)(下) グラハム・ハンコック

1996年に日本で刊行される(英国では1995年)やベストセラーになったこの本のことはよく覚えている人も多いと思います。私もその頃に「世界不思議発見」でも取り上げられたことをよく覚えています。

しかし現在はもっぱら「トンデモ本」として「事実の歪曲」、「事実誤認」、「無茶苦茶な推論」などとされまったくその信頼性はないと言われています。
 
実はこの本は文庫になってまもなく購入したのですが、最初のうちは結構難解で小説のようにストーリーがあるわけではなく、南米の古代文明の歴史と遺跡の分析が淡々と続きます。なので、途中で苦しくなり読むのを断念して10年以上も放置していました。
 
ま、それはともかく、内容は古代マヤ文明、インカ帝国、エジプト文明など、現在の技術でも難しい土木工事や進んだ航海術、太陽の惑星運動や星座の位置の観測能力などを見ると、それらの文明よりも遙か昔、およそ紀元前1万年に、非常に高度な文明があり、その文明が何かにより滅びるときが来て、その技術の一部が各地に伝わったものではないかという推測を順番に証明していきます。
 
先日DVDで観た映画2012やノウイングに出てきましたが、それは古代マヤ文明では星座の動きや地球が太陽を周回していることを理解しており、独自のカレンダーを持っていて、そのカレンダーには2012年12月までしか日付がないことから、地球に大災害が起きてほとんどの人類が死滅するのではと言われています。本書ではそのことにも触れています。
 
つまり地球は何万年という単位で過去に3回壊滅状態に陥ったが、その都度初期化された新たな文明が起き、次に壊滅を迎えるのが2012年12月だということです。

もし人類がまもなく死滅するともしわかったとしたら、残された期間でなにをするかと言えば、昔ここには進んだ文明があったことを証明する遺跡を残してなにかを伝えようとするだろうということで、南米やエジプトに現代の建築工学でも不可能に思える大建築物を残したと推定しています。
 
結局は、その高度な文明があったのは、現在の分厚い氷の下にある南極大陸で、元々は温暖な緯度にあった大陸が、およそ1万数千年前に大きな地殻変動で南極の位置へ移動してしまい、同時に地球規模での大洪水で文明は滅びてしまったが、一部の生き延びた文明人が、地中海周辺や南米大陸へ流れ着き(あるいは自らの意志で海を渡り)、その高度な知識と文明を伝え残したのではないかというのが結論になります。
 
作者はジャーナリストですが、そもそも考古学というのは、そのほとんどが推論で、目の前にある数少ない遺跡などの証拠は、その目的も建造方法も謎だらけというのが実際のところのようです。

なので、どのように推論するかは学者であれ、ジャーナリストであれ勝手なのですが、読者はそう言った推論に使われる様々な証拠やデータを直接に見たり分析することはできないので、こうだと言い切られると信じざるを得なかったりします。
 
特に学者の場合、通常は権威のある先輩学者に逆らえなかったり、派閥によって他の派閥の推論を絶対に認めなかったりして、新しい理論や研究が阻害されてしまうということがよくあります。

学者がこのような発表をすれば、まず学会にはいられなくなるでしょうし、それこそ精神異常者扱いでしょう。
 
今後さらに新たな遺跡が発見されたり、残された意味が解析できたり、それこそ南極大陸の地表が詳細に分析できるようになれば、もっといろいろな発見があるのかも知れません。
 
もし今後エジプトや南米のペルーやメキシコへ行く機会があれば、事前にこの本を読んでおくことで、いろいろと事前の勉強にはなるでしょう。

しかし謎だらけのイエス・キリストの話しは今からたった2000年前の話ですが、エジプトの大ピラミッドやスフィンクスが建設されたのが、本書で書かれているように今から12000年以上前だとすると、やはりトンデモない話しに思えますが、本書を読むと妙に説得力があります。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 
 
著者の紹介欄を見て、同じ年齢だということがわかりました。道理で書かれているテーマと意見が私の思いを綴ってきた日記と近いはずです。

もちろん本書はプロが書いていますので、読みやすく説得力のある文章でしかもよくまとめられています。
 
ただ、同年齢と言っても楡氏は小学校の時からずっと弁当持参だったと書いてますが、当時は全国的に公立小学校は給食だったはずです。

地域によって多少の違いはあるでしょうけど、まずくて臭う脱脂粉乳や三角形の牛乳パック(その前は牛乳瓶)、鯨肉の甘露煮、唯一好きだったカレー風味シチュー、味気ないマーガリン、いつも代わり映えがしないカスカスの食パンなど覚えています。もしかすると楡氏はリッチな私立の小学校だったのでしょうかね?
 
しかし読んでいるとどうも私と同世代の不満不平を並べあげつらっているだけという気がしてなりません。

もちろん不満とともに筆者なりの解決法やアイデアも提案されていますが、練りに練られたものと言うよりはジャストアイデアとしか思えないのが残念です。

いや、それでもなにも解決策を考えないで文句ばかり言っている最近の軽薄な評論家やジャーナリストよりはずっといいのですが。
 
楡氏の著作を知ったのは友人に勧められて読んだデビュー作の「Cの福音 」(1996年刊)からです。この本は単行本で、後は文庫本になってからほとんどすべて買って読んでいます。

「Cの福音」では当時はインターネットメールが普及する直前の時期で、パソコン通信を使っての犯罪ネットワークがポイントとなっていました。

1996年当時私はすでにインターネットメールアカウントを持っていましたが、それまでは私もNiftyサーブを使ってメールやBBSに参加していましたので、さっそくそれらを使った犯罪小説ができたと驚いたものです。それからするとこの今の世界は万感の思いがします。

著者別読書感想(楡周平)
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
陰陽師・土御門典明が活躍する妖怪退治の小説です。って書いたらそれで終わっちゃってしまうので、もう少し感想を書くと、文庫本は1997年に発売された少し古いもので、この本も長く本棚にしまい込んでいた途中で断念した本です。

なぜ断念したかは記憶にないのですが、240ページの比較的短い小説で、別に難解ではなく、読みづらいわけでもなく、ただ荒唐無稽なだけです。
 
陰陽師と言うと平安時代に活躍した安倍晴明が有名で小説や映画にもよく出てきますし、京都には安倍晴明を奉っている清明神社まであります。

土御門家はその安倍晴明の末裔ですが、この小説の登場人物は実在の人物ではなく架空の人物のようです。
 
主人公の祖父が語った羅城門に住む鬼の退治など所々に京都らしさが出てきますが、土御門(つちみかど)家と言えば応仁の乱を避けて、とっとと若狭へ逃げだしていた、ちょっと根性なしのようで、京都ではイマイチ人気がありません。



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紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
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