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写真はイメージ
自動車を保有していると、修理や定期検査、車検などで必ずお世話になるのが自動車整備士(以下整備士)の方です。

ディーラー(販売店)へ持ち込む場合は、担当営業だけに話しをして、直接整備士やサービス担当の人と話しをする機会はあまりないかも知れませんが、修理や点検、車検の明細書や記録簿には必ず整備士さんの名前と捺印があります。

国家資格の自動車整備士の資格を持つ整備士は2020年時点で約33万4千人です。それとは別に資格を持たない自動車整備の工員が6万5千人います。職場はいずれも自動車整備工場や、自動車販売会社(ディーラー等)がほとんどです。

日本自動車整備振興会連合会の「自動車特定整備業実態調査結果」から、総整備売上(億円)、事業場(工場)数、整備要員数(人)、整備士数(人)、保有車両数(千台)の7年間の推移を抜き出しました。整備要員(人)は整備士と工員を合わせた数です。

総整備
売上(億円)
事業場
(工場)数
整備要員
数(人)
整 備 士
数 ( 人 )
保有車両
数(千台)
2015年 55,133 92,160 401,001 339,999 80,670
2016年 53,944 92,061 400,713 334,655 80,901
2017年 54,875 92,001 399,717 336,360 81,260
2018年 55,295 91,883 399,374 338,438 81,563
2019年 56,216 91,605 399,135 336,897 81,789
2020年 56,561 91,533 399,218 339,593 81,850

この中から、保有車両台数と整備士人数のここ7年間の推移をわかりやすくグラフにして見ました。



自動車の保有数は微増していますが、整備士の数は横ばいからやや減少しています。

自動車整備は単に効率を上げれば生産性が上がるというものではなく、逆に整備士不足になると丁寧なメンテナンスができず、不良箇所を見落としたり、資格のない工員に点検や重要箇所の修理を任せていたりすると、故障やそれにともなう事故が増えることが予想されます。

こうした問題はなかなか表面には出てこない問題ですが、昨年2021年にはトヨタディーラーでの不正車検が発覚しました。

トヨタのおひざ元で「不正車検5000台」の衝撃(東洋経済)
今回の不正は2020年12月、中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚した。プラザ豊橋では、排ガスの一酸化炭素濃度やスピードメーターの誤差、サイドブレーキの制動力などに関する点検・検査を省いて基準適合証を交付したり、実際に検査したかのような虚偽の整備記録を作成したりしていた。
不正に関与した整備士は中部運輸局の監査に対し、「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという。

圧倒的なシェアを持ち、稼ぎまくっている(はずの)トヨタ販売店でこれですから、こうしたことが他のディーラーや整備工場で起きていないと誰も断言できないでしょう。

次に、整備要員人数と平均年齢の推移をグラフにしました。整備要員人数は、整備士資格者と、資格はないけど車両整備に関わる工員の合計です。



見てわかるとおり、整備要員は微減ですが減少傾向にあり、整備要員の平均年齢はここ5年間上昇しています。

多くの経験を積み熟練した整備士さんは非常に頼りになりますが、それが若い人へ伝えられていかないことに危機感を覚えます。

トラックドライバーやタクシーの高齢化問題が、高齢者ドライバーの大きな事故が起きる度に議論されますが、自動車整備士についてもそろそろ議論する時期に来ているかも知れません。

需要はあるのにそこで働く人の高齢化が進むのは、農業や長距離トラックドライバーと同様に若い人にとって魅力ある職場ではないと言うことです。魅力の中にはワークライフバランスと収入面が大きなウェイトを占めます。

上記の元データには整備要員の平均年収が記載されていましたが、平均で約400万円ディーラー勤務で約470万円です。

日本の給与所得者の平均年収は2020年度で433万1000円(平均年齢は46.8歳)ですから、整備要員(2020年平均年齢50.2歳)はそれを下回ります。

これは国家資格を持つ整備士(整備要員の85%が整備士)、しかも平均年齢50歳の人にとってはちょっと残念な年収で、それを知った若い人が積極的にその業界に入ってくるはずがありません。

ひとつだけ朗報なのは、女性整備士がわずかながら増えていることで、今後3K職場から少しずつ変わっていくことが期待できます。ただし2020年時点で女性整備士の割合はまだ全体の3%という少なさです。

最近の自動車整備は、油にまみれてという仕事がまだ多いですが、電子機器を測定・調整したりアップデートしたりというハイテク分野の仕事が増えています。EV化や自動運転が進めばさらにそうした電子機器の取り扱いが増えるでしょう。

そうなれば、自動車整備士の仕事も専門性が高くなり、収入もシステムエンジニア並みかそれ以上が保証されるようになっていくと、若い人や女性が今までより積極的に参入できるかも知れません。

クルマのユーザーにとっては維持費があまり高騰するのは困りますが、安全のために必要なお金は惜しまないと、納得するしかありません。

【関連リンク】
1524 2020年自動車(メーカー別、ブランド別、輸入車)販売台数

1241 自動車のリサイクルと部品共通化 前編

1124 国内自動車販売台数や耐用年数推移など



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