リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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少し旧聞になりますが、9月の有効求人倍率は0.55倍、完全失業率は5.0%と厚労省から発表されました。どちらもわずかながら改善方向に向かっているという統計データですが、実感としては、逆に悪くなってきているような気もします。気のせいだったらいいのですが。
過去に厚労省の発表する完全失業率の統計データはあまり正確なものではないというようなことを書きましたが、役所批判ばかりしていても仕方がないので、今回は年代別、地域別、男女別と言った統計データを元に失業率、失業者数の推移を見ることにします。
まず、私の勝手な思い込みと想像からすると、
(1)地方の失業率は都市部に比べると高い
(2)失業者の数は圧倒的に都市部のほうが多い
(3)特に一極集中が進み、首都圏だけで全国の1/3ぐらいの失業者を抱えている
(4)若い人は非正規・正規を問わなければ仕事には就きやすいので失業率は低い
(非正規でも勤務していれば失業者のカウントにはならない)
(5)中高年者は会社のリストラや倒産で一度退職をすると再就職が難しく失業率は高い
(6)男女別では不況時は女性は就職をあきらめ結婚や家事手伝いへ向かい失業率は男性より低くなる
ですが、当たっているか、外れているか検証していきます。
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地域別 失業者・失業率推移グラフ(クリックで拡大します)
この20年間の地域別失業率(%)をみると
(%) |
北海道 | 東北 | 南関東 | 北関東/ 甲信 |
北陸 | 東海 | 近畿 | 中国/ 四国 |
九州/ 沖縄 |
1990年 | 3.0 | 1.9 | 2.2 | 1.4 | 1.4 | 1.5 | 2.5 | 2.0 | 2.7 |
2000年 | 5.6 | 4.4 | 4.9 | 3.7 | 3.6 | 3.8 | 5.9 | 4.1 | 5.4 |
2010年 | 5.2 | 5.6 | 5.2 | 4.7 | 4.1 | 4.2 | 5.8 | 4.4 | 5.5 |
全国的にまんべんなく上昇しています。中でも大幅な上昇なのが、東北(+3.7%)、近畿(+3.3%)、北関東/甲信(+3.3%)、南関東(+3.0%)、九州・沖縄(+2.8%)です。
おや、大阪を含む近畿や、東京を含む南関東の悪化がベスト5に入っていてひどいようです。つまりこの20年間の推移では、比較的地方より都市部の失業率が高くなったということですね。したがって(1)の「地方の失業率は都市部に比べると高い」は×間違いのようです。
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失業者数2010年(万人)
北海道 | 東北 | 南関東 | 北関東/ 甲信 |
北陸 | 東海 | 近畿 | 中国/ 四国 |
九州/ 沖縄 |
|
2010年 | 14 | 27 | 98 | 25 | 12 | 34 | 60 | 26 | 40 |
南関東98万人+東海34万人+近畿60万人=192万人(全体の57%)
完全失業者の全体総数334万人のうち192万人(57%)が工業地帯を有する東名阪の都市部ということで、全人口比率の56%よりわずかだけ高くなっています。
やはり失業者数は都市部に多いとも言えますが、これは各地域の人口比や勤務先の多さからすると当然のことで、逆に地方の142万人の失業者数という大きさにも驚かされます。
(2)「失業者の数は圧倒的に都市部のほうが多い」の「圧倒的」と言えるかどうかは微妙なところで△。
首都圏≒南関東とすると、首都圏の失業者98万名は全体の29%(南関東の全人口比率は27%)にあたり、1/3には届きませんが人口比率よりは少し高めになっています。
(3)「特に一極集中が進んでいるので、首都圏だけで全国の1/3ぐらいの失業者を抱えているのでは」は僅差なのでこちらも△。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
次に年代別失業者数、男女別の失業率をみていきましょう。
年代別失業者数推移(クリックで拡大します)
年代別失業者数(万人)の最新データでは、
(万人) |
15~24歳 | 25~34歳 | 35~44歳 | 45~54歳 | 55~64歳 |
2010年 | 51 | 82 | 70 | 53 | 64 |
となっていて、比較的若い年代の25~34歳の完全失業者が飛び抜けて多くなっています。様々な理由や統計の取り方にもややクセがありますので、一概には言えませんが、これが最近ちまたでよく言われている「若年層の雇用対策を!」に根拠となっているに違いありません。
ちなみに、派遣でもアルバイトでもパートでも仕事をしている人や、仕事探しをあきらめて家事手伝いや学校へ通って勉強をしている人は完全失業者にカウントされません。
したがって、
(4)「若い人は非正規・正規を問わなければ仕事には就きやすいので失業率は低い(非正規でも勤務していれば失業者のカウントにはならない)」は間違いで、2000年頃から急激に25~34歳の若年層の失業者数が増えてしまい、今まではずっと安定していた35~44歳の中堅層の失業者まで上昇傾向にあります。
そしてこのもっとも高い25~34歳の失業者の層が、やがて上の年代に移っていくことにより、さらに35歳以上の中堅層の失業者数が高まっていく危険があると言えます。
(5)「中高年者は会社のリストラや倒産で余儀なく一度退職をすると再就職が難しく失業率は高い」は、確かに55歳以上の年代の失業者数はここ4年間連続して増加していますが、45~54歳の年代の失業者数は比較的少なく、必ずしも他の年代と比べて高いとは言えないので間違いです。
統計では取られていませんが、もし「再就職までにかかった期間」というのを取ると、この世代は目立って長期になるのではないかと推測します。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
男女別失業者数推移(クリックで拡大します)
男女別失業者数推移(万名)
男性 | 女性 | 差 | |
1990年 | 74 | 56 | 18 |
2010年 | 196 | 124 | 72 |
+122 | +68 |
(6)「男女では不況時は女性は就職をあきらめて結婚や家事手伝いなどへ向かい失業率は男性より低くなる」は理由は定かではありませんが、1990年では失業者数の男女差は18万人とそれほど大きくなかったものの、2010年では72万人と差は4倍に拡大しています。
特に2009年までは男女ともほぼ同じ傾向を示していますが、2010年は男女が反対(男性の失業者が増え、女性は減る)に動くという、過去には例がない異常な状況を示しています。
そのひとつには、厳しい就職活動や厳しい労働環境に見切りを付けた女性が、就職以外の行動に出ているのではないでしょうか。かろうじて(6)は正解。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
結果、
(1)地方の失業率は都市部に比べると高い→×
(2)失業者の数は圧倒的に都市部のほうが多い→△
(3)特に一極集中が進んでいるので、首都圏だけで全国の1/3ぐらいの失業者を抱えているのでは→△
(4)若い人は非正規・正規を問わなければ仕事には就きやすいので失業率は低い(非正規でも勤務していれば失業者のカウントにはならない)→×
(5)中高年者は会社のリストラや倒産で余儀なく一度退職をすると再就職が難しく失業率は高い→×
(6)男女では不況時は女性は就職をあきらめて結婚や家事手伝いなどへ向かい失業率は男性より低くなる→○
1勝、3敗、2引き分け、、、惨敗な結果でした。
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