リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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無駄だらけの社会保障(日経プレミアシリーズ) 日本経済新聞社編 2020年に発刊された新書ですが、本文中で使われているデータやインタビューなどの調査がコロナ禍前のもので、やや出版のタイミングが悪かったと言うしかありません。 というのも、中身は平穏な世の中において高騰し続ける医療や介護の社会保障費の実態と、それらをどうやって削減していくべきかのご立派な提言で、あのコロナ禍中のドタバタを見ていると、日本の医療・社会保障行政や医療機関はまるで頼りにはならないことが露呈してしまったわけで、その内部から実のある改革ができるとはとても思えません。 しかし本文中で繰り返し語られているように、病院は空きベッドを減らすため無理してでも入院患者を増やし、医薬品の処方箋をたっぷりと出すことで利益が得られ、経営が安定するという構造や、介護施設でもコロコロ変わる政策に合わせ補助金頼みで、医療と介護がうまく連携ができていない状況が変わらない限り、医療費の削減はいくら一般患者に「医療費削減」を求めても無理な話です。 患者は医者や病院からの提案を断ることはできないから、治療や入退院、投薬などすべては専門家の言いなりになるしかありません。つまりまずは医療機関や医者自身が大きく変わらない限り、今のままズルズルといくことになるのでしょう。 それでも一般的には何年も入居待ちと言われている要介護者が入居できる特別養護老人ホーム(特養)が、実は介護人材不足と、高い個室部屋が敬遠され、国の机上の予想との乖離があってかなり空きがあるということはこの本で知りました。 あと、本著では一切触れられていませんが、政治的な圧力団体で医者の利益代表でもある保守的で利権体質の医師会の存在が改革の大きな障壁になっていると思っていて、患者第一主義ではない現在の各種の医療業界にはびこる規制やルールなどの問題にも触れて欲しかったというのが感想です。 ★★☆ |
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あなたが消えた夜に(毎日文庫) 中村文則 本作品は2014年に毎日新聞の連載小説として掲載され、2015年に単行本、2018年に文庫化されました。 主人公は子供の頃に起きた(起こした)トラブルからトラウマに悩まされている東京郊外の警察署所属の中堅刑事と、殺人事件発生で応援にやってきた警視庁の新米刑事の女性の二人です。こういう組み合わせ、よくありますね。 その二人の刑事の掛け合いがメインですが、捜査する事件や登場人物が複雑で、読んでいても混乱します。 ましてや新聞連載小説だと、毎日切れ切れで読むことになり、時には読めない日もあったりして「これで大丈夫だったの?」と勝手に心配しました。 しかし所々で、登場人物や、事件に関わりのある人の説明が加わっていたので、なんとか路頭に迷わず最後まで読むことができました。 連続殺人事件や模倣犯といった、古くからある犯罪ミステリーですが、そこは一筋縄では終わらない著者の鋭いアイデアがちりばめられています。 また現実にはこれから殺そうとする人物を探偵会社に頼んでその居場所を突き止めてもらうとか、刑事が通りで不審者を見つけ、本人の了解もなしに持ち物のバッグの中をあらためるとか、現実的にはちょっと無理がありそうというところはともかく、当初の人間関係がガラガラと崩れ変わっていく物語は、ミステリー小説としての醍醐味は感じられました。 ★★☆ ◇著者別読書感想(中村文則) |
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木漏れ日に泳ぐ魚(文春文庫) 恩田陸 婦人公論に2006年~2007年に連載され、2007年に単行本、2010年に文庫化された長編小説です。 主人公は二人、一緒に住んでいた若い二人の男女ですが、次の日の朝には部屋の鍵を不動産会社に渡し、この部屋を出て別々の道を行くことが決まっていて、その最後の夜から始まります。 なぜ別れるのか、お互いがある殺人に関わっていたのではという疑念があり、それはどのようなことだったのか?など、読者に数々の疑問を抱かせながら二人の深夜の話し合いが淡々と進められていきます。 登場人物は少なく、わかりやすい設定ながら、徐々に明らかになってくる二人の関係性や、複雑な家族の話などが明らかになるにつれ物語の深刻さがジワジワと浸みてきます。 ただ最後はいまいちわかりにくい感じで、二度三度読んでもなにがどうした?って混乱してしまいました。著者の作品は、割とこうした読者に考えさせる終わり方をする作品が多いようです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(恩田陸) |
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ロウソクの科学(角川文庫) ファラデー 1861年と言いますから今から163年前に英国の王立研究所で行われた物理学者マイケル・ファラデーの講演をまとめたものです。 1860年~1861年頃と言うと、日本は江戸時代で桜田門外の変(1960年)、アメリカではリンカーンが大統領に就任し(1860年)し南北戦争が始まり(1961年~)、中国は清の時代で西太后の摂政政治が始まります(1861年~)。 当然、当時はまだ電灯はなく、夜の灯りと言えばガス灯かロウソクしかない時代です。また科学や化学も今の小中学生レベルの常識がまだ通用するかしないかの社会です。 そういう時代に、多くの市民や子供を集めたクリスマス講演で、ロウソクがなぜ灯るのか、火がついてどう変化するのか、なにが発生するのか、発生した気体はどういう特徴があるのか、などを様々な実験器具を用いてわかりやすく説明していきます。 現代人が読むと、「そんなこと知っているよ」という酸素や水素、窒素、炭素(二酸化炭素)の話などが中心になりますが、160年も前にそれらの役割を知っていた人は限られるでしょう。 ローソクが燃えると言うことは、その酸素や水素、窒素、炭素が関係するということで、テーマが馴染みのあるローソクにスポットを当てているのでしょう。 今、大人が読んでもその話は面白く、当時の子供達が科学をこれから勉強したいと思わせるような良い講演だったろうと思います。 ★★☆ |
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