リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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捨てない生きかた(マガジンハウス新書) 五木寛之
確かに高齢になるほど昔の物不足の記憶や、家庭でも学校でも教え込まれて身体に染みついている「モノは大事に長く使う」という思想があります。
前期とは言え高齢者に入っている私も、子供の頃からの習性で、買い物をしたときにもらった大きな紙袋や、通販で送ってきた外箱の段ボール箱などなかなか捨てられません。あとは購入した書籍を捨てたり売ったりすることもできず、部屋には3千冊を超える書籍が山になっています。
したがって、この「捨てない生き方」は、概ね60代以上の、まだ日本が貧しい時代を経験してきた人にとっては普通の考え方で、そのうまい理由付けを著者がいろいろとしてくれているわけです。
したがって、この思想は私にとってはよく理解ができるし、実際に実践している生き方でもあります。
しかし効率的で合理的な生き方や、コスパ重視が尊重される今の風潮の中で生きている若い人達には、こうした過去の役に立たない遺物を大事にするという考え方や、使わないモノを長く所有していることの意義についてなかなか賛同は得られなさそうです。
その辺りはやはり世代間格差があるように思えるのと、家電一つとっても昔のように修理すれば30年50年が普通に使えたものが、今はそれこそ耐久性や満足できる性能が期待できるのは5年とか10年ぐらいで、海外生産でブラックボックス化されていて修理もできない製品が多く「捨てざるを得ない生き方」となっています。
「5年で陳腐化するなら借りれば良いか」ってことです。
あとは、著者のようにガラクタでもいっぱいためておける広い家に住んでいるとそれが可能でも、地方から都会に出てきて狭い住居に住んでいると、やはり「捨てざるを得ない生き方」を選ぶことになります。これは所得格差の問題でもありそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(五木寛之)
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森へ還れ コロナからの警告(文芸社セレクション) 山田博愛
2019年暮れ頃から中国で広がり始めた新型コロナウイルス感染者は、2020年には日本の各所でも感染者が増え始め、直前まで元気だった有名人がそれによって急逝したことで一気に恐ろしい病気と認知されるようになります。
主人公は、著者と同様(というか分身)、岐阜の中山間地で開業する医師で、都会で拡がるコロナ感染者がなぜか岐阜の中山間地ではいつまで経っても感染者は現れず、もしかするとこの地域の森には新型コロナウイルスの感染力を弱めるなにかがあるのではないか?と考え始めます。
岐阜の美濃と飛騨の境あたりの山はヒノキの産地で、同じく台湾ヒノキの産地でもある台湾でも感染者が少ないのはなにか共通する点があるのではと仮説を立てていきます。
そしてヒノキの成分を調べてもらうために大学へ依頼したり、テレビに出演したときにその「根拠はないけれど」と前置きをしながらも、仮説を披露して話題になっていきます。
果たして、その仮説は証明されるのか?ってところがクライマックスへとつながっていきますが、やや話は飛躍し、スピチュアルな展開になっていきますが、これも小説だからと許されるのでしょう。
結局は、新型コロナに対する特効薬や、感染防止の決定打というものは未だに開発されていませんが、様々な研究や、この小説の主人公のように、わずかな可能性であってもそれを突き詰めていく人が何人も出てくるからこそ、細菌の一種アオカビからペニシリンなど抗生物質を発見したフレミングなど人類の救世主が出てくるものです。
かなり実際に起きたことを元にして書かれているようで、面白く読めました。
★★★
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みんなで一人旅(集英社文庫) 遠藤彩見
本著は2020年に文庫書き下ろし作品として出版された短篇小説集で、旅と著者がお得意の食をうまくミックスした内容のものが多いです。
短篇は「男二人は聖地を目指す」「みんなで一人旅」「癒やしのホテル」「空飛ぶ修行」「氷上のカウントダウン」「誰も行きたがらない旅」「幸せへのフライトマップ」の7編でそれぞれ独立した作品です。
文庫のタイトルにもなっている「みんなで一人旅」は、一人旅の客を集めた海外ツアーの話しで、個人的には私は気楽で自由な一人旅が好きで子育てが終わってからはいつもそうしているのですが、この小説では「一人旅」はあまり前向きとは言えないなにか事情があって一人旅にせざるを得ない寂しい雰囲気があるのがやや不満なところです。
一人旅が好きなのでこのタイトルに惹かれて買ったのに、それが短篇の一つだとあとから知ってややガックリしました。
その他では、通常は「マイル修行」とも言われる目的地ではなく、上級会員になるためマイルを貯めるために飛行機に乗り続ける「空飛ぶ修行」など、昨今の数円のポイントのために何十枚もポイントカードを財布の中やスマホに持っている浅ましい日本人の姿と重なって笑えます。
★★☆
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その青の、その先の、(幻冬舎文庫) 椰月美智子
今回の作品は2013年に単行本、2016年に文庫化された青春群像というか高校生男女を中心とする柔らかな物語です。
主人公の女子高生の彼氏が大きなバイクに乗っているということだったので、「これはきっと事故を起こして亡くなるのだろう?」と想像していましたが、半分あたって半分外れ、亡くなるという最悪の事態は免れました。
自分が高校生だった時には、スポーツ万能でイケメン、読者の推薦で女性週刊誌にも取り上げられたことがある同級生がバイク事故で卒業間近に亡くなったことがあり、それを思い出しました。今も昔もティーンのバイク事故は多いので容易に想像ができました。
かと言って悲しい物語ではなく、主人公やその友人達は前向きにそれぞれの道を生きていくという爽やかな内容で、やはり若者向けのキラキラした青春小説だなぁというのが感想です。還暦過ぎたオッサンが読むにはまぶしすぎます。
★★☆
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