忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/01 >>
SMTWTFS
1 23
5678 910
12131415 1617
19202122 232425
26272829 3031
Recent Entry
Recent Comment
Category
1507   1506   1505   1504   1503   1502   1501   1500   1499   1498   1497  



1812
十二月八日の幻影(光文社文庫) 直原冬明

十二月八日の幻影
1965年岡山県生まれの著者は、大学卒業後にサラリーマンや議員秘書を経験した後、2014年にこの作品で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し作家デビューした方です。

2014年にデビューしてから現在までに3作品が出版されていますが、専業作家としてはえらく少ないようです。専業ではないのかも知れません。

タイトルの12月8日と言えば昭和16年の真珠湾攻撃の開戦の日と昭和生まれならばすぐピンときますが、平成生まれ以降の人ならわからない人も多いでしょう。昭和は遠くなりにけりです。

タイトルを見てその程度の知識で読み始めましたが、主人公は海軍の軍令部特別班に所属する少佐と、故郷に錦を飾りたくて艦隊勤務を強く希望しながらもこの防諜が仕事に配属された新任少尉です。

戦前の諜報活動をテーマにした小説では、私も読みましたが柳広司著「ジョーカー・ゲーム」シリーズが有名ですが、「ジョーカー・ゲーム」シリーズが陸軍のスパイ養成機関中野学校をモデルにしているのに対し、こちらは海軍の諜報機関(と言ってもこの時点ではメンバーは二人だけ)です。

昭和16年の夏頃、日々日米関係が悪化していく中、互いの諜報活動が活発化していきます。

そんな中、海軍が12月8日にハワイの真珠湾を攻撃するという計画が英国のスパイを通じアメリカ大使館へ漏洩しているのではないかと、陸軍の諜報機関が気がつきます。

陸軍には、電気そろばんという今で言うコンピュータを大学教授が開発し、それを使ってアメリカの暗号電信文を解読してわかったことです。

まったくのフィクションですが、こうしたスリリングな展開の中で、それまでは「諜報活動など卑怯で武士道にもとる」という思想が海軍にはあり、結局は暗号をアメリカ軍に解読されてコテンパンにやられたということがわかっている中で、もしこうした優れた防諜機関が機能していればというところでしょう。

実査の歴史を下敷きにした歴史フィクション小説は好きですが、ちょっと海軍と陸軍、そして憲兵隊などが様々な垣根を越えて協力する姿など、ちょっとリアリティがなさすぎです。

どちらかと言えば、英国のスパイを主人公にして、陸海軍や憲兵隊と諜報活動で死闘を繰り広げ、「真珠湾攻撃」の重要機密をアメリカ大使に伝えたものの、信じてもらえず、、、と言ったストーリーのほうが理にかなっていそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

メーデー 極北のクライシス(二見文庫) グレーテ・ビョー

メーデー 極北のクライシス
著者はノルウェー生まれで、小説作家以外に脚本家、映画監督など多彩な活躍を見せている女性で、本作品が作家デビュー作となります。

原書の発行は2020年で、2023年に日本語訳版が出版されています。原題は「MAYDAY」で、遭難信号という意味です。

ストーリーはNATO軍の演習がノルウェーとロシアの国境近くでおこなわれ、そこでノルウェー空軍の女性パイロットとアメリカ空軍の教官が戦闘機のF-16で飛行中、ロシア空軍の戦闘機が近づき接触、F-16がロシア国内に入って墜落してしまいます。

墜落前に脱出した二人のNATOのパイロットですが、極寒のロシア領内で、墜落したNATOの戦闘機がロシア国境を越えていたことや、ロシアの町中に墜落したせいでロシア側に多大な犠牲者が出ていたことで、ロシアの特殊部隊スペナッズに追われることになります。

またロシアとNATOの関係が悪化し、第三次世界大戦の危機が迫ります。この辺りのロシアの動きは、この本が出版された2年後にロシアが「自国民を守るため」を理由に宣戦布告なくウクライナ領土に攻め入ったきな臭さとなにか似ていて、ロシア大統領の領土拡張の野望を予言していたかのようです。

日本人にはノルウェーとロシア国境の事情などほとんど知る人はいないでしょうけど、両国にまたがって親戚がいたり、同じ民族が分かれてしまっているということをこの小説で知ることができました。

また厳しい寒冷の地域に住む住人達の大変さもよく伝わりました。こうした自分の知らない知識を楽しみながら得られるのは、日本人作家の小説よりも外国、それも数多くあるアメリカや英国以外の作家の作品を読む大きなメリットです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

この青い空で君をつつもう(双葉文庫) 瀬名秀明

この青い空で君をつつもう
2016年に単行本、2020年に文庫化された青春ラブストーリー(文庫帯の記載)長編小説です。

著者の小説は過去に4作、今回が5作目ですが、1995年にデビュー以来、小説は年間1作ペースで出版(その他にノンフィクションや共著なども多数あり)されているので、現在までに小説だけでも20数作品があります。

ただ一番最初に読んだデビュー作「パラサイト・イヴ」(1995年)の印象が強く残っていて、著者のイメージは生物学的SFホラーというイメージが私の中にはあります。

しかし今回の小説は、折り紙を通じた青春ラブストーリー(但し病気で亡くなった高校の同級生との恋愛感情という変わり種ですが)で、従来のイメージが大きく変わります。

折り紙?そう、鶴や蛙、薔薇や手裏剣など様々な形を1枚の紙を折って作る折り紙です。

知りませんでしたが、「日本折紙学会」というのがあるそうで、折り紙ファンは日本だけでなく世界中に拡がっていて、新しい折り紙の研究や普及が進められているそうです。

夜中に亡くなった同級生にもらった折り紙が突然動き出すとか、ある折り方をすることで変化するなどにわかには信じがたい話が出てきますが、考えればすでに普及している形状記憶合金や形態安定シャツなど、あるきっかけで形状を変えてしまう物質があることは誰もが知っています。

それを紙に応用すれば、なにかのきっかけで折り紙が突然動き出したり、折り目に思いを込めたりすることも可能ということで面白い発想です。

正直、高校生のラブストーリーを読むにはもう歳をとりすぎていて感動も共感も得られませんので、こうした高校生が主人公の小説はできるだけ読むリストから外すようにしています。

今回はなぜかつい買ってしまいました。なぜかっていうより、久しぶりに懐かしい著者の名前を見つけたので、「BRAIN VALLEY」を読んでから12年ぶりに読みたくなったからなんですけど。

★★☆

著者別読書感想(瀬名秀明)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方(ディスカヴァー携書) 朽木誠一郎

健康を食い物にするメディアたち
著者は群馬大学医学部を卒業しながらも医者の道へはいかず、様々なメディアや編集プロダクションでライターや編集を経験し、2017年にBuzzFeed Japan Newsへ入社し医療記者として活躍し、その後の2018年に、過去に記者として経験してきたことをまとめたこの新書を出版します。

2019年には朝日新聞社へ転職していて、よく言えば身軽、悪く言えば腰の据わらないジャーナリストです。どうせならフリーで記事を書けば良いと思いますが、後ろ盾があるといろいろ便利なのでしょう。

特に本書でスポットを当てているのがDeNAの健康・医療系サイト「WELQ」の記事内容の不正確さやSEO目的に記事が乱造されていることを追求し、それが各メディアや都議会に取り上げられて大きな社会問題となったことが繰り返し書かれています。

その他にも、大手製薬会社や健康・医療系情報サイトの実名を出して事実と違う医療関連情報などの追求がなされていて、自信があるのでしょう、なかなか気骨あるジャーナリストぶりです。

そうした医療情報の誤りを指摘できるのは、医学部を出て専門的な知識があり、さらに各種メディアで記事を書いてきた経験があることから、適確な指摘や報道が可能なのでしょう。

本書にも繰り返し書かれていますが、医療は人それぞれによってなにが最適かというのは違っていて、また誰に対しても効果があるということはありません。

そして現在の医療には当然限界があり、お金に糸目を付けない高度医療が最適ということもなく、それが逆効果ということすらあり得ます。

しかし人間誰でも健康でありたい、苦しい病気を治したい、人より元気に、美しくありたいなど、様々な欲求がある限り、誤解を与える、あるいは儲けるための広告や、記事と広告の境目が曖昧な誤解や錯誤を生じさせる情報(記事など)が蔓延しています。

この本を読むと、かなり衝撃を受けることもあり、一般メディアにおける医療・健康情報はあまり信用がおけないということに気がつきます。

私自身、過去に医療系ではありませんがネットメディアで働いていたことがあるので、そういった誤情報や広告と記事の境界線といったあいまいで微妙な点の指摘はよくわかります。

★★★

【関連リンク】
 10月後半の読書 幸福寿命、ゾディアック、おもかげ、野わけ
 10月前半の読書 ヴェアヴォルフ オルデンベルグ探偵事務所録、草笛の音次郎、自分をどう愛するか<生活編>、新月譚
 9月後半の読書 老人をなめるな、パラドックス13、顔をなくした男、京の怨霊 元出雲

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ