リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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生存者ゼロ(宝島社文庫) 安生正
本書は著者のデビュー作でありながら、2012年の「このミステリーがすごい!」で大賞に輝いた作品で、ベストセラーになりました。この作品は、2013年に単行本、2014年に文庫化されました。
私は過去に著者の作品では「ゼロの迎撃」(2014年)を読んでいてこの作品が2作目です。
読んでみて思ったのは、とてもデビュー作とは思えない力作で、受賞したのも十分に頷けるものでした。ただあれこれと余計に盛り込みすぎて、やや間延びしてしまうのが残念なところです。
しかも、規模は違いますが(小説では北海道内だけで想定何十万人もの死者が出ている)、2019年末から拡がってきた新型コロナ騒動を彷彿させる内容で、先見の明というかバイオSF的にも読めます。
主人公は、自衛隊員ですが、ドンパチする現場の隊員ではなく、さる事情から内勤の陸上自衛隊の中央情報隊に配属されていて、見えない敵と戦うことになります。
国内で想定外の事件が起きると、決められない総理大臣、官房長官、厚労大臣、その他関係省庁大臣などがオロオロする中で、自衛隊と警察が盾となり奮闘しますが、なにが起きていて、なにと戦っているのかが皆目わからないというジレンマがあります。
普通ならば、映画「感染列島」(1994年)や、小松左京著の小説で映画にもなった「復活の日」(1964年)のように、人類とウイルスや細菌との戦いというのが今までのこういう場合はアルアルですが、この小説の場合はそれだけでは終わりません。そこが凄いです。ヒントは途中から出てくるヒロインが生物学者ということです。
原発事故やパンデミック、さらには台湾有事など、国の未来を大きく左右する時にこそ、総理大臣の正しいリーダーシップや有能で即座に行動できる内閣がないと、とんでもないことが起きるということがこの小説でよくわかります。
★★☆
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七つの会議(集英社文庫) 池井戸潤
著者が得意とする銀行ものではなく、中堅電機メーカーを舞台にした連作の短篇を集めたような仕組みになっています。
過去には三菱自動車のリコール隠しを小説化した「空飛ぶタイヤ」(2006年)を2010年に文庫で読みましたが、その舞台を自動車メーカーから電機メーカーに変えたような内容です。
ただし、リアルな出来事を小説にしたものとは違い、アクが強かったり、妙に魅力ある登場人物が何人もいてエンタメ小説として成功していると思います。
第1話から第8話までの短編小説風ですので、それぞれに登場人物が代わっていきます。したがってこの小説では、舞台となる大手電機メーカーソニックの子会社で、いかにも昭和にはよくあった猛烈会社の東京建電という会社が主人公と言えます。
私自身、こうしたノルマを追い求める猛烈な営業が中心の会社に長く在籍していたことから、登場人物の気持ちはよくわかります。もしギリギリのノルマ達成のため、甘い不正の誘惑があれば、普段は真正直な人でも気持ちが揺れ動くということは、その場にいる人でないとわからないかも知れません。これは会社の体質そのもので、個人に責任はないとも言えそうです。
でもそれを一時の迷いでやっちゃうと、後日会社の存続を揺るがす取り返しが付かない大事に至るというのがこの小説でもよくわかります。
★★☆
◇著者別読書感想(池井戸潤)
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遺言。(新潮新書) 養老孟司
21年前の2003年に大ベストセラーの「バカの壁」を読んで、正直言うとなにが言いたいのかよく理解できず、文系のしらけ世代の私にはきっと理解し合えない著者なのだろうと勝手に決めつけ、それ以来の著者の新書です。
さすがに20年経てば双方に歩み寄れることもあるだろうと読み始めました。
しかし、やっぱりダメでした。こうした秀才で自己本位型が強烈な人の話しにはどうもついていけませんし、理解ができません。えぇ私がバカなだけですけど。
「感覚と意識の対立」とか「同じとイコールへの収斂」、「芸術は同じからの解毒剤」など、無理矢理自分の中の複雑な考えを披露されていますが、まったく理解ができません。えぇ、私がバカなのです。
「おまえの脳みそは筋肉でできている!」と言われそうですが、確かに文化会系か体育会系か?と問われると体育会系に違いないし、文系か理系かと問われると当然文系だし、記憶力は良い方か?と問われると、まったく人の顔が覚えられない記憶力の悪さだし、そういう日本人がいるということがこうした秀才には理解できないというか、ハナから見捨てているのでしょう。
★☆☆
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名もなき少女に墓碑銘を(PHP文芸文庫) 香納諒一
著者の作品は過去には「心に雹の降りしきる」とアンソロジー「名探偵で行こう」の中の一篇「花を見る日」を読んでいます。
ストーリーは、昔刑事だった頃に2度捕まえたことのある常習空き巣犯だった男が出所して連絡してきましたが、その時は電話に出られずそれっきりになってしまいます。
その元空き巣犯だった男が多摩川に浮かんでいるのが発見され、直前に電話を入れていたと言うことで刑事が探偵を訪ねてきてその男が死んだことを知らされます。
死んだ男が娘を探していたことを知り、すでに依頼者はいないのに娘を探しているうちに、娘の母親で、男が昔結婚していた女性の複雑な家庭環境を知ることになり、事件に巻き込まれていくという流れです。事件の謎を追う探偵モノ小説は大好物で、元警察官の男臭いハードボイルドものです。
ただ日本の小説では珍しく巻頭に登場人物の一覧があるので助かりましたが、人間関係が複雑で、誰と誰が兄弟で、誰の子で、誰の孫とか混乱します。
また出生の秘密とか、出生届の問題など、あまり詳しくはないですけど、そういうことが事実上可能なのかどうかってことも気になります。
この私立探偵のシリーズは他に「熱愛」(2010年)が本書の前に出版されています。そちらも読みたくなりました。
★★☆
◇著者別読書感想(香納諒一)
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11月後半の読書 カササギ殺人事件(上)(下)、探偵は絵にならない、歩きながら考える、遠い唇
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