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先週金曜日の12月13日(金)はあまり縁起の良い日ではありませんが、年金生活の高齢者には嬉しい2ヶ月に一度の年金支払日で、今年最後の振り込みでした(通常は偶数月の15日ですが、振り込み日が土・日曜日の場合、金曜日に繰り上げされます)。

その年金については、実際に自分がもらうようになるまでは、ほとんど興味はなく、まだ勤務をしていた60歳を過ぎてからねんきん定期便というのが届くようになり(それまでにも時々届いていましたが)、当時の65歳以降に支払される想定額というのを注意して見るようになりました。多くの人はたぶん同じような感じでしょう。

その年金額ですが、新聞記事やテレビニュース、情報番組では定期便などに記載された「支払額」、しかも平均標準世帯の支払金額ばかりにスポットがあたりますが、年金生活に入ると、その「支払額」ではなく実際には「控除後振込額」が最重要となります。

夫婦で年金「22万円弱」、毎月の赤字は「3.8万円」…高齢世帯の暮らしが「年々苦しくなっている」(THE GOLD ONLINE)
65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)について見ていくと、1ヵ月あたり実収入は24万4,580円、消費支出は25万959円、非消費支出(税金や社会保険料など)は3万1,538円となっています。

上記の記事は、「だからiDeCo、新NISAで自助努力しなくちゃね」というつまらないオチですが、年金の「控除後振込額」が様々な物価高騰とステルス増税(介護保険料などのアップや、今年からは新たな増税となる森林環境税など)による支出(天引き控除)増大により目減りしているのは明らかなことです。

その前に、よく「年金支給」とか「年金受給」という言い方をしますが、支給とか受給というと、なにかお上からありがたくいただくものという印象があります。しかしその原資は自分と会社が先に支払ってきた社会保険料や税金を払い戻してもらっているに過ぎません。

もっとも形式上は賦課方式と言って現役世代が支払って高齢になった先代を年金で支えるという仕組みなので、厳密に言えば現役世代からもらっているという形ですが、支払わなかったらもらえないので、やはり自分(と勤務先)が収めた分を返してもらっていると考えても間違いではないでしょう。

さて、その年金ですが、支払額からいったいどのぐらいが控除されて、実際に振り込まれる額がいくらかを知っている(教えている)人は少ないです。

それは保険の種類(国民年金、厚生年金)、家族構成、何歳まで何年間どういう形態で働き、平均収入額、住まいの地域の住民税率など、様々な要因による年金額や税額、保険料段階(ランク)などが変わるというややこしさで、一概に「こうだ!」とは言えないからでしょう。

そこで、自分の状況を元にして仮に年金額の1ヶ月当たりの支払額が18万円(年間2百16万円)とした時の手取額をザックリと計算してみます。この年金18万円というのは夫婦の場合、夫ひとりの分で、通常はこれに妻の年金を加えたものが世帯年収となります。

さらに年金は隔月で年6回の支払ですが、所得税は年金支払と同時に年4回源泉徴収され、あとは確定申告します。住民税も同様に6、8、11、1月の年4回の支払(天引き)です。

国民健康保険と介護保険料は、年金からの天引きや納付書による支払、口座からの引き落としなどがあり、支払回数も年1回~10回まで選べます。

したがって、その条件によって年金振込額が個人によって変動しますから、単純に年間支払額や控除後の振込額を12等分しても毎月支払われる金額にはならないのと、2ヶ月分が想定通り振り込まれるわけではありません。

そのようなややこしさがあるので、なかなか理解が進まないのでしょう。

下記の表とグラフは、あくまで自分の年金や税金や保険料の控除額(率)などを元にしたザックリした試算ですが、一応の目安にはなると思います。

年金支払額(額面) 180,000 2,160,000
控除額合計 22.5% 40,583 486,994
  国民健康保険料(75歳未満) 14.9% 26,820 321,840
介護保険料 3.7% 6,660 79,920
所得税および復興特別所得税 1.3% 2,340 28,080
個人住民税県民税 0.5% 900 10,800
個人住民税市民税 2.1% 3,780 45,360
森林環境税 0.05% 83 994
振込額(手取り) 139,417 1,673,006

夫が月18万円(現役時平均年収はやや高め)の年金で、妻が月6万円の年金があれば夫婦合計月24万円です。それだけあればなんとか大丈夫!と思ってしまいますが、上記の表の控除額(月平均)合計4万円を差し引くと夫婦合計でも月20万円未満となります。

現在、電気、水道、ガス料金の公共料金だけで3万円を越えるでしょうし、その他にNHK受信料、電話、ネット回線、火災保険や生命保険などは毎月、高齢夫婦の医療費、自宅の修繕費や古くなった家電や設備の買い換えなども随時必ず発生します。

さらにマイカーを所有していれば、維持費(自動車税、重量税、保険代、定期点検費用、2年に1度の車検や修理代、ガソリンやオイル、タイヤなど消耗品)が、駐車場付きの一戸建で駐車場代は必要ないとしても小型車で年間平均30~40万円(1ヶ月に均すと2.5~3万円)ほどはかかるでしょう。EVだから安い?とは限りません。バッテリーやモーターの保守部品や修理費は世界中に普及しているガソリンエンジンの部品や修理費と比べるとずっと割高です。

世帯年収で、年金が手取り月19万円×12ヶ月=年間228万円だけでは、まともな健康で健全な生活はかなり厳しいのではないでしょうか。つまり数千万円の金融資産がある人以外の一般国民は死ぬまで働き続けろという国の方針がよくわかります。

また高齢世帯でも学費や生活費が必要な扶養者の子供がいたり、医療費や介護費が必要な親の介護が必要だったりしている人は少なくないでしょう。高額な賃貸を借りていたり、住宅ローンなどが残っていたら相当に自由にできる預貯金がないと最悪です。

生命保険文化センターの調査では、夫婦二人だけの場合、最低限必要な金額は手取りで月22万円余裕ある生活をするには月30万円ということです。

これは今のなにもかもが高騰している物価高になる以前の話しですから、現在なら最低でも24~25万円、余裕ある生活をするには月35万円というのが現実でしょう。さらに数年後には下がっていることは考えにくく、逆にもっと上がっている可能性が高そうです。

つまり、マスメディアでよく取り上げられる年金平均月額22万円(妻が専業主婦の場合)というのは、政治家や役人が言う表向きの額面の数字で、実際は多くの税金や強制的な保険などの控除で引かれ、それよりもずっと少ない年金しか支払われないということをよく理解しておく必要があります。

以前、荻原博子著の「年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」という、光明が差し込むようなタイトルの新書を読みましたが、その「年金だけで暮らせる」のは、物価が上がっていないデフレ時代にかなり生活を切り詰めた上で、1500万円ぐらいの預貯金があればという条件付きでした。世の中そんなに甘くはありません。

【関連リンク】
1776 定年本と老後本
1563 年金未納問題とFIRE
1403 年金相談会へ行ってきた

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