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43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の真相(新潮文庫) 石井光太
2012年に出版されたノンフィクション「遺体:震災、津波の果てに」を原作とした西田敏行が主演した映画「遺体 明日への十日間」が2013年に公開され、本もよく売れていた印象があります。
本著は、2015年に川崎市の多摩川で起きた川崎中1男子生徒殺害事件をルポしたノンフィクションです。タイトルの「43回」とは、殺された中3の少年が友人だった3人にカッターナイフで切りつけられた数を表しています。
当時は同じ川崎市に住んでいることもあり、新聞で読んだぐらいでしたが、その時の印象としては、「不登校で家に寄りつかなかった不良少年が、仲間だった年上の不良少年達を怒らせてリンチを受け殺されてしまった」「川崎市では珍しくない家庭的に恵まれないフィリピン人とのハーフの不良少年たちが仲間割れしての犯行」というものでした。
しかしこのノンフィクションを読むと、話は単純ではなく、もっと複雑な家庭状況や、不良仲間同士の関係性、主犯とされた加害少年の異常な性格や飲酒癖などが掘り下げられています。
ただ残念なことに、主な取材先は離婚後遠く離れた場所で暮らしていた被害者の父親がメインで、被害者少年と一緒に暮らしていた母親や兄妹には話がまったく聞けていなく、本文中にエクスキューズされていましたが一方的な内容の偏りはあります。
また同級生や事件には関わっていない知人の不良少年などにはインタビューができていますが、まだ精神的に幼い未成年のためか、話に信憑性や正確性に乏しい印象があります。中には話が聞きたいなら金を出せという少年もいたようです。
裁判の結果、主犯の少年は9年以上13年以下という判決が出ましたので、2015年から収監されていたため、従犯の二人はもう社会に復帰していて、主犯だった少年も早ければすでに、いずれにしても間もなく社会に復帰してくる頃と思われます。
被害者遺族の気持ちは計り知れないですが、まだまだ長い加害者達のこれからの人生がどういうものになっていくのか、気になるところです。
★★☆
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汝の名(中公文庫) 明野照葉
本著は2003年に単行本、2007年に文庫化、2020年に新装文庫化され、これを原作として2022年にテレビドラマ化されています。
内容は有吉佐和子著「悪女について」や、貫井徳郎著「新月譚」などを見るまでもなく小説やドラマでテーマとなることが多い、女性主人公が肉体や才能を最大限に生かしてのし上がっていくというものです。
働かない同棲男に見切りをつけ、名前を変えて肉体や才能を使って勝ち組エリートを目指していきますが、他の小説と違うのは、主人公が姉妹と称して同居している見かけも思考も対照的な二人いるという点です。
ひとりは美貌と抜群のスタイルで、それで得たスポンサーの協力でタレント派遣会社の経営者です。
もうひとりの主人公は地味で目立たない勤務していた製薬会社を辞め、もうひとりの主人公(タレント派遣会社社長)の高級マンションに同居し家事全般を担っています。
ひとりの主人公が元製薬会社にいたということで、これは薬物犯罪ものだなぁとすぐ想像はつきましたが、その通りの展開です。
仲が良かった二人の関係が、あるエリート男性の出現で崩れていくというのは現実でもよくありそうです。特に女性同士でルームシェアをしている場合、この小説と同様、二人の関係はいとも簡単に崩れていくことは大いにありそうです。
女性の心理描写が多く、高齢のオッサンが読んでも「そんなものか」ぐらいにしか感じませんが、極端な発想の裏表をネチネチ見せられ続けると、面白いと言うより煩わしく思ってしまうのは昭和の人間だからでしょう。
★★☆
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ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻(文春文庫) P・G・ウッドハウス
今回の作品は1920年代頃に英国で出版されたものの中から抜粋し、2005年に日本語版として出版した単行本「P・G・ウッドハウス選集 ジーヴズの事件簿」(原題:The Casebook of Jeeves)を、2011年に文庫化する時に、1巻を2巻に分冊したうちの1巻です。
連作短篇集で、時代背景は著者が生きていた時代、20世紀初頭のロンドンで、才智優れたジーヴズという名の執事と、主人たるバーティという名の軽薄な独身貴族青年とのあいだで起きる軽快なユーモア小説です。
収録作品は、「ジーヴズの初仕事」、「ジーヴズの春」、「ロヴィルの怪事件」、「ジーヴズとグロソップ一家」、「ジーヴズと駆け出し俳優」、「同志ビンゴ」、「バーティ君の変心」の7篇です。
分冊されたもう片方は、「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」ですが、もう読みたいとは思わないかなというのが感想です。
短篇のユーモア小説ではブラックユーモアのサキ著の短篇集が好きですが、こちらは笑えないつまらない子供向けの漫画でも読むような感じで私には合いませんでした。
★☆☆
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シクラメンと、見えない密室(光文社文庫) 柄刀一
連作短篇集で、収録作品は「傷とアネモネ」、「遠隔殺人とハシバミの葉」、「シクラメンと、見えない密室」、「クリスマス・ローズの返礼」、「オークの枝に、誰かいる」、「おとぎり草と、背後の闇」、「夾竹桃の遺言」の7篇です。
いずれもカフェのママさんとその娘の二人が、相談に訪れた客や、遭遇した事件、事故などで、推理を駆使して難解な事件を解決していくというもので、連作短篇と言うこともあり、内容は軽く、サクッと読むのに適しています。
タイトルからもわかるように、花や樹木の植物をキーとして、その花言葉や由来、伝説などを駆使し、殺人事件や、自殺未遂の謎など、ミステリーを解いていくという変化球のストーリーがなかなか楽しいです。
草木を使った薬学に詳しく、古い知識に詳しく、まるで何百年も前から生き続けているような西洋風の魔女というものが、現代の日本に蘇れば、案外、普通のカフェで店主(ママさん)をやっていたりするという想像も面白い発想です。
★★☆
◇著者別読書感想(柄刀一)
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ゴースト(朝日文庫) 中島京子
著者は1964年生まれ、2003年に「FUTON」で作家デビューされ、2010年には「小さいおうち」で直木賞を受賞されています。
各短篇は各個別の小説で、いずれもゴースト(幽霊)がモチーフとなっていますが、中にはゴーストライターのような幽霊とは言い難いものまで含まれています。
一番良かったのは「ミシンの履歴」で、戦前から酷使されてきたミシンが主人公で、その時々の女性達がそのひとつのミシンをよりどころに生活していく姿が目に浮かんできます。
というのも、私がまだ幼かった頃には、足踏みミシンが2台自宅にあって、父親も母親もそれを自在に使えたことや、そのミシンで衣服を縫ってもらったりしたことをかすかに覚えています。
あの無骨ながらも凜々しく思った蛇の目だったかシンガーだったか忘れましたが、足踏みミシンが、あの当時の女性が内職をして生活の糧を得る方法だった時代を思い出しました。
★★☆
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3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
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