忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/05 >>
SMTWTFS
12
4567 8910
11121314 151617
18192021 222324
25262728 293031
Recent Entry
Recent Comment
Category
1526   1525   1524   1523   1522   1521  


1836
それをお金で買いますか 市場主義の限界(早川書房) マイケル・サンデル

それをお金で買いますか
2010年に出版された『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』が大ヒットし一躍世界的に有名な哲学者となった著者が2012年に出版した続編的な哲学本です。

原題は「What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets」で直訳すれば「お金で買えないもの:市場の道徳的限界」となります。日本語タイトルはややあおり気味ですが売れそうなうまいやりかたです。

過去に「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業」(2010年早川書房)を読みましたが、理解はできるが、結局どうすりゃいいの?と、私なんかは古い日本人の典型で、すぐにハッキリした回答を求めてしまいますが、そうした明確な方向や判断は示されず、「自分で考えなさい」という話なのでモヤモヤが残ったまま早々に頭の中から消し去るようになってしまいます。

現代の市場経済で、「それは道徳的にどうなの?」「法律違反ではないけど汚らわしい」というような問題点をいくつも例に出して、賛否双方の言い分を解説してくれます。

日本でも遊園地の人気アトラクションやいつも行列が絶えない人気レストランで優先的に案内されるファストパスが堂々と高額で売られています。また注目裁判の傍聴券を得るために金で雇われて並ぶのはOKで、人気コンサートのチケットを転売目的で購入して欲しい人に高額で転売する(ダフ行為)のはダメというのはどうして?すべてお金で目的を達することに変わりはないはずです。

余命数ヶ月という重病人の生命保険(死亡保険)を買い取り、生きている間に現金を手に入れられるようにする生命保険の売買(米国では普通にある)では、生命保険を購入した投資家は人の死が自分の大きな利益になるというのは是か非か?

薬物中毒やアルコール中毒の女性が出産すると高い確率で障害をもった赤ちゃんが生まれて大きな社会負担につながることから、そうした女性にかなりの一時金が支払われる代わりに避妊手術を受けるというサービスは是か非か?

などなど、面白い実例がいっぱい出てきます。

確かに市場経済で考えさせられる様々な問題提起ですが、それぞれに考え方がみな立場や人種、宗教観、年齢、所得水準などで違ってくることが多く、「これ!」という回答はなさそうです。

それにしてもこうした道徳問題を得意とする著者に、道徳などゴミくず同然の著者の国のトップ(大統領)に対してどういう感想を持っているのか聞きたいものです。

★★☆

著者別読書感想(マイケル・サンデル)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

メインテーマは殺人(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ

メインテーマは殺人
昨年に読んだ名著「カササギ殺人事件」(翻訳版2018年出版)の翌年2019年に日本語翻訳本(文庫)が出版された長編小説で、「カササギ殺人事件」と同様、2020年に「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「本格ミステリ・ベスト10」の4冠に輝いた作品です。

原題は「The Word Is Murder」で直訳すると「言葉は殺人」で、「The Word」には言葉以外に発言や命令、知らせなど様々な意味がありますが、日本語訳に付けられた「メインテーマ」という意味はなさそうです。

この作品は「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの第1作目となり、すでに続編が4作出ています。

「カササギ殺人事件」が大変面白かったので、今回は多大な期待をして読みましたが、その期待を裏切らない面白い推理小説でした。

一人称で語る主人公は本著の作家ホロヴィッツで、探偵ホームズに対してちょっと的外れな相棒のワトソン役です。その探偵ホームズ役は、刑事だった頃にあることがきっかけで辞めざるを得なかった中年男ホーソーンで、ホームズと同様に鋭い観察力の持ち主です。

その探偵役の男は警察を辞めた後も、警察上層部からその特筆すべき才能を惜しまれ、難しい事件が起きると警察顧問として協力を求められ、今回の謎多き殺人事件で声がかかり、さらにその捜査から解決までを小説にしてお互い利益を得ようと、当時多くの警察ドラマの脚本を手がけていた主人公の作家に声をかけることになります。

事件は、あるひとり住まいの裕福な老婦人が、葬儀屋を訪れるところから始まり、その葬儀屋で自分の葬儀の依頼を細かく指示したあと、その夜に自宅で何者かに絞殺されてしまいます。警察は単なる物取り強盗と判断しますが、、、、

「カササギ殺人事件」と比べると至極真っ当な探偵ミステリー小説ということになりますが、事件を追う二人の関係が名声と金で結ばれユニークで面白く、その後の続編も読みたくなりました。

★★★

著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

漱石先生ぞな、もし(文春文庫) 半藤一利

漱石先生ぞな、もし
1992年に単行本、1996年に文庫化された夏目漱石に関するエッセイ集で、1993年には続編の「続 漱石先生ぞな、もし」が出版されています。

日本のいちばん長い日」や「レイテ沖海戦」など太平洋戦争の戦記物小説が多い作家さんですが、その他のエッセイやノンフィクションなども多くあります。

タイトルに使われている夏目漱石は、著者の妻が漱石の孫という関係があり、著者の義理の祖父ということになります。それゆえ、義理の祖父のことや残した作品についてのことをいろいろ調べて書こうと思ったそうです。

漱石が残した小説や手紙、俳句などから、その時代や思想などがよくわかってそれと小説が書かれた時期を合わせると「なるほど」と思えることもありそうです。

漱石が生きた時代は、日清戦争や日英同盟、日露戦争などが起き、日本が富国強兵に力を入れ、まだ文学にはそれほど影響はなかったものの、軍部が政治にも影響を及ぼしつつある時代です。

このエッセイ集では「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「草枕」「二百十日」「三四郎」など有名な小説に関するうんちくが取り上げられています。

また「漱石」という雅号の由来や、作家の友人や門下生などの話なども面白く読めました。

ただ、夏目漱石の小説をほとんど読んでない人には、理解できないことが多く、私も漱石の小説の多くは何十年も前の中高生の頃に読んだきりで、もうすっかり記憶になく、意味がよくわからないというものも多かったです。

★★☆

著者別読書感想(半藤一利)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

何もかも憂鬱な夜に(集英社文庫) 中村文則

何もかも憂鬱な夜に
2009年に単行本、2012年に文庫化された社会問題を読者に問いかける長編小説です。

犯罪容疑者は逮捕されるとまずは警察の留置所に留置され、その後裁判で結審するまでは裁判所に近い拘置所で拘置され、裁判で実刑が決まれば刑務所へ送られることになります。3段階があるのは知りませんでした。

この小説の主人公は、親に捨てられ施設で育ち、現在はこの中間の拘置所で刑務官として勤務する男性です。

親と親の愛情を知らず世捨て人のような感情を持ちながら働いている主人公ですが、中学校卒業まで暮らした児童養護施設の施設長の暖かなサポートや、今までまるで縁がなかった音楽や書物などの芸術を教えてもらい、生きていく意味を教えてもらった恩が忘れられません。

そして自分と同じように親に捨てられ、その反動で殺人事件を起こし、遺族やマスコミから「死刑は当然」と決めつけられ、第1審の判決でも死刑を言い渡された収容者のかたくなな心を解きほどいていくようになります。

日本の死刑制度について、死刑を実施する刑務官の厳しさ、死刑の判決が世論などで左右される問題点などの社会問題を鋭く突いています。

一方では、1948年に起きた「一家四人殺傷事件」で死刑が確定したものの、1983年に無罪が確定した免田栄氏や、この小説は2012年出版なので、まだその時点では無罪が決まっていませんでしたが、1966年に起きた一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌氏の再審が実り、2023年に無実が確定し48年間の拘留から解放されたケースなど、えん罪で死刑や長期拘留となる場合があります。

無実で死刑が言い渡されるのは、これ以上ない非道なことですが、過去にはえん罪事件は数多く発生しています。

★★★

著者別読書感想(中村文則)

【関連リンク】
 4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト
 3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
 3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ