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5月のDVD 2012/5/12(土)

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日輪の遺産 2011年角川映画 監督:佐々部清、出演:堺雅人、中村獅童

浅田次郎原作の「日輪の遺産 」の映画版です。小説では壮大な仕掛けがたいへん面白かったのですが、2時間の映画になるとかなりの部分を端折らざるを得ないので、ちょっと不完全燃焼かなと。しかも低予算で作ったとみえて主演級の俳優はともかく、そのほかの出演者のレベルが低く、舞台セットもお粗末な限りです。

その中でも主演の堺雅人や助演の中村獅童、八千草薫はたいへんいい味を出しています。堺雅人は「南極料理人」や「武士の家計簿」のようなコミカルな役から、この映画での陸軍少佐のようなシリアスなものまで表情豊かにうまく役を作れるのがいい感じです。ちょっと陸軍将校というには小粒で頼りない感じはしましたが。

ストーリーは太平洋戦争でマッカーサーが日本軍にフィリピンを追われたあとに残した金塊900億円(現在の貨幣価値で2千兆円)を敗戦が濃厚な日本に運び込み、進駐軍から隠してしまおうと政府が画策します。その任を命ぜられたのが堺雅人演じる真柴少佐と主計官(中尉)、その護衛役として中国戦線で負傷した曹長の三人。

計画では戦時動員されている女学生20人に山の中の洞窟の中に運び込ませ、終わったら口を封じるためにその女学生と教師に毒を飲ませて殺すことになっていたが、それはできないと上官に交渉しにいくと、ちょうどポツダム宣言受諾の反乱軍との混乱に遭ってしまいます。

やがてマッカーサーは厚木に降り立ち、フィリピンから奪われた金塊を取り戻すべき調査を始め、そしてようやく洞窟に隠してあることが判明してその洞窟に入っていきます。そこで見たものは、、、

浅田流の涙を誘う悲しいストーリーですが、先に小説を読んでいたので、映画では涙は浮かんできませんでした。

お勧め度★☆☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 2006年米 監督:ジャスティン・リン 出演:ルーカス・ブラック、千葉真一

ワイルドスピードのシリーズはややこしくて、いくつか先に出ていますが、このX3は3本目という意味ではなさそうです。サブタイトルに「TOKYO DRIFT」とあるように日本がメインの舞台となっている作品です。

この映画、ストーリーや場面設定はかなり無茶苦茶ですが、クルマファンにはたまらない一品でしょう。中でも主人公が乗るランエボ(IX)よりも、敵役や仲間が乗るフェアレディZやRX-7、シルビア(S15)などの改造車がとても決まっていてかっちょいいです。ただアメリカ人好みなのか、やたらとボディペインティングが施されていてそれだけはいただけません。

たっぷりと入っているボーナストラックを見るとわかりますが、市街地での暴走シーンは本当に都内で撮影したのかと思っていたら、街並みをしっかりロサンジェルスに作ってそこで撮影し、一部を合成したとか。いやーよくできています。

この映画はアメリカ制作映画で、主要な登場人物も多くは外国人(アメリカ、中国・韓国の俳優)で、そのあたりはせっかく日本で多くを撮影しながら日本人俳優が選ばれなかったというのはちょっと残念ですね。そういえば実写版の「頭文字<イニシャル>D THE MOVIE」もそうでしたが、なにかワケでもあるのかな。

お勧め度★★☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ヤバい経済学 2011年米 監督:アレックス・ギブニー、モーガン・スパーロック等

シカゴ大学教授の経済学者スティーヴン・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナー共著による「ヤバい経済学」が原作です。

「不動産業者が他人の家と自分の家を売る時にはなにが違う」「ルーザー(負け犬)とウィナー(勝ち馬)と名づけられた双子が送った人生とは?」「大相撲の八百長はデータで証明できた?」「勉強嫌いの高校生に成績が上がれば毎月50ドルのご褒美を与えるキケンな実験!」など収録されています。

不動産業者は他人の家を売るときには売却希望値より少し安いオファーがあれば「これはいい提案だから決めた方がいい」と顧客に言うが、自分の不動産であれば希望値になるまでじっくり待つことが多く、他人の家と自分の家では明らかに自分の家の方が高く売っていうることが統計上もハッキリしています。

これはその不動産業者が受け取るインセンティブの違いから来るもので、つまり他人の不動産を売ってもその10数パーセントが手数料で入ってくるに過ぎず、少しの割引ならそのインセンティブも極めてわずかなので、早く売ってしまいたいという意識が働き、自分の不動産なら例えわずかな値引きでもその影響が大きいからすぐには売らないということ。言われてみると当たり前なんですね。

私がよく電気量販店で経験し目にすることとして、各社とも同じような性能の製品(例えばテレビや冷蔵庫)を買う場合、店員さんのお勧めを聞くと、店員さんは実際の売れ筋や性能の優劣ではなく、どの製品がその店にとって一番利益が出るかを考えて客に勧めます。それとは知らずに買ってしまう人が多いので、店員さんはそれが普通だと思って指名買いをする客にまで店や自分の成績に一番都合がいい製品に翻そうと必死に説得してきます。これも結局はインセンティブというものが働いているのでしょう。

ま、普通に面白いけれど、いまさらねぇという思いもします。お暇ならどうぞってところかな。その点ではマイケル・ムーア監督作品のほうがもっと毒が効いていて楽しめますが、棚の配列が変わってしまってどこへいったか発見できなかったのですよ。

お勧め度★☆☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男 2011年「太平洋の奇跡」製作委員会 監督:平山秀幸 出演:竹野内豊、井上真央

太平洋戦争のDVDが2本続きますが、この作品の原作は元海兵隊員のドン・ジョーンズが書いた『タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語』。なんとベタなタイトルだろう。

要は実在した大場栄という陸軍大尉が、玉砕や自決が普通だったサイパン島で、うまく米軍の攻撃をかわしながら、民間人は早めに降伏させ、兵隊も終戦までゲリラ活動を続け、最後まで戦い抜いた実話を元にして描かれています。

原作も読みましたが、原作ではもう少し大場栄氏が英雄のように描かれていましたが、映画ではそういうエピソードを入れる時間がなかったのか、どちらかといえば迷い、部下達に言われて考え直すというような場面があり、優柔不断という印象を持ってしまいました。

玉砕にしても当初は当然と思っていて一緒に突撃するも生き残ってしまい、その後米軍の攻撃が終わった後、隠れていたところ同じように生き残った兵隊達に見つかり、ともに民間人が隠れている安全な場所へ向かいます。また自決しようとする部下の前では固まってしまい、なにも声をかけられなかったりと、当時の陸軍将校としてどうなのよと思わせる場面がありました。

お勧め度★☆☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

マネーボール 2011年米 監督:ベネット・ミラー 出演者:ブラッド・ピット

実在のオークランドアスレチックスのゼネラルマネージャービリー・ビーンがメジャーリーグの経営に新たに持ち込んだセイバーメトリクスという新たな統計学を使い手法で、ヤンキースなどお金持ち球団に対抗できることを証明した実話を元に作られています。ちなみに現在でもビリー・ビーンはアスレチックスのGMとして活躍しています。

この手法が導入されるまでのスカウトやトレードというのは、一般的に打者なら打率・打点・本塁打数・盗塁数・守備エラー数、投手ならば球速、勝率、勝利数、防御率、失点、自責点と、打者と投手に共通して性格、スター性、年俸などを元に決められることが普通です

新たな手法というのは簡単に言えば打者ならば出塁率と年俸、投手なら奪三振率と被ホームラン率と年俸だけに重点を置くことによって、正当に評価されていないイコール年棒の安い優良な選手を獲得し効率よく強いチームを作っていくというものです。

打者で言えばヒットを打つのと選球眼がよく四球を選んで塁に出るのは価値として等しいという判断になりますし、投手は味方のチームの攻撃力や守備力により勝率も失点数も変わってくるからです。確かに得点力の弱かったり、エラーが多いチームの投手っていうのはつらいですよね。

この映画を観て、メジャーリーグというのはスポーツと言うよりまったくビジネスなんだなということが実感できます。GMが電話一本でライバルチームとトレードを成立させ、選手には紙一枚を渡して明日からライバルのチームへ移ってくれと通告します。

人情や和を以て貴しとなすを意識する日本人の感情からするとなかなか理解できない面もありますが、日本人選手がメジャーへ行くことが増えていくことで、このようなスポーツビジネスが日本でも当たり前になる日がくるのかも知れません。

メジャーリーグ好きであれば見て損はない楽しめるいい映画です。

お勧め度★★☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

神様のカルテ 2011年東宝 監督:深川栄洋 出演:櫻井翔、宮崎あおい

先般小説を読んで、こりゃ見なくちゃと借りてきた新作DVDです。内容はほぼ小説通りですが、当然時間の関係で省略されている部分もあり、やはり小説のほうが細部に行き届いているなぁと思った次第です。

主演の医師にアイドルの中でも慶応卒のインテリ櫻井翔を用い、なにか雲をつかむようなボヤーとした近年の若者には珍しいタイプのいい雰囲気を醸し出しています。ただ普段から使い慣れていないことがすぐわかる夏目漱石の文体風の会話がぎこちないところがあるのは演劇などを経験したプロの俳優ではないからご愛敬か。

またぼそぼそと小声で喋るシーンが多く、これが私の年齢ではほとんど聞き取れない。これは聴力の老化が原因だと思うけど、会話が聞き取れない映画ほどつまらないものはなく、この超高齢化社会において、制作側ももうちょっと配慮してもらいたいものだ。

なので会話の場面だけボリュームを思い切り高くするのだけど、場面が変わっていきなり爆音のような効果音が鳴り響いたりして鬱陶しくてかなわない。

小説では松本城が何度か登場したけれど、本編の中には登場せず、ちょっと残念。その代わり写真のような北アルプスなど美しい自然が堪能できます。

小説ではこの原作の続編が出ているので、映画もまた次回作に期待。

お勧め度★★☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

岳 -ガク- 2011年「岳 -ガク-」製作委員会 監督:片山修 出演:小栗旬、長澤まさみ

原作は石塚真一氏の山岳救助を題材とした漫画作品です。5月のゴールデンウィーク中に多くの遭難者を出した日本アルプスですが、その山をこよなく愛し、民間ボランティアとして遭難者の救助にあたる主人公が活躍するドラマです。

なんと言っていいのか、最初はアイドルを必要以上に持ち上げた若い二人のラブラブ映画かなと思っていましたが、そうではなくそこそこに迫力のあるいい映画でした。

ただ現地ロケのシーンは見ていてもすがすがしくいいとしても、いかにも「スタジオで撮影しました」という場面が多くあり、しかも後半のクライマックスシーンではそれがほとんどで、緊迫感もなくちょっと残念。

本格的な山登りを経験したことがない私でも、一度登山をやってみたかったなぁと思える映画ですが、残念ながら右足を傷めてそれはかないません。

小栗旬、長澤まさみに興味のない人でも、この映画も見て損はないかな。

お勧め度★★☆

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

キャピタリズム~マネーは踊る 2009年米 監督:マイケル・ムーア

華氏911など皮肉たっぷり効かせたドキュメンタリー映画を制作する同監督の作品です。

この映画ではアメリカ国内で資本主義経済がいかに疲弊し破綻しているかをリーマンブラザーズの破産を始め、国から税金がつぎ込まれる巨大な金融資本と、わずかな借金で先祖代々継いできた土地を奪われ追い出されていく個人の姿などいくつもの事例を追いかけていきます。

アメリカの憲法にも「資本主義」という言葉はどこにもなく、逆に国民が等しく公平に暮らせるようにとまるで社会主義的な文言を紹介しますが、これで同監督は共産主義者というアメリカ人にとっては屈辱的なレッテルを貼られるのでしょう。でも一向に気にするふうではありませんでした。

この映画を見ていると、常にアメリカの後を追いかけてきた日本にとって他人事ではなく、およそ10~20年遅れて同じことが起きても不思議ではありません。デトロイトの広大な自動車工場の跡地に雑草が生えている姿が、そのまま日本の製造工場に置き換わることになるのでしょう。

単に変人映画監督が作った金儲けのための映画だと切り捨ててしまうのは簡単ですが、どうすれば国や権力に騙されないようにするかなど、自己防衛策として知っておくこともいいかも知れません。

お勧め度★★☆

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