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最近はどうかわかりませんが、営業の仕事に就いている人には、常連としている馴染みの喫茶店があるのも珍しいことではありません。かくいう私も20~30代の頃は外勤営業が主たる仕事だったので、常連にしていた喫茶店がありました。

営業マンにとって居心地のいい喫茶店と言うと、

1)あまり混まない
2)知った人が来ない
3)週刊誌やスポーツ新聞がある
4)軽食が食べられる
5)椅子がゆったりしている
6)長居しても嫌がられない


などでしょうか。

今流行っているスターバックスやドトールのようなセルフ式ではなく、午前中に行けばモーニングサービス、午後に行けばカレーやナポリタン、サンドウィッチなどの軽食が食べられるという昔ながらの喫茶店が好みです。

喫茶店でくつろいでいる時間は結局仕事をサボっている?と言われると、まったくその通りなのですが、少し言い訳をすれば、昼休み時間や就業時間以外も顧客の都合で働いたり、移動のため食事もできない時がある代わりに、仕事が暇なときや、体調がすぐれないとき、外が大雨でモチベーション下がりまくりのときは勤務時間中でも休憩したり、リフレッシュするのは致し方がありません。もちろんそればかりでは困りますが。

20、30年前ならそうしたビジネスマンが数多く集う喫茶店が駅前やオフィス街の中にたくさんありましたが、現在は上記のスタバやターリーズ、シャノアール、ドトールなどセルフ式のお洒落なカフェチェーン店が増えてきて客をとられてしまったことや、オフィス街に進出してきたコンビニやファストフード店の低価格コーヒーの影響もあって今や絶滅危惧種扱いです。

料飲主体売上と喫茶店の売上推移グラフ(出典:公益財団法人食の安全・安心財団)

※料飲主体とは喫茶、居酒屋、料亭、ビアホール、バーなどで、レストランとは違い飲みものが主体の事業

喫茶店の売り上げは、1982年の1兆7396億円をピークとして、1992年は1兆4833億円、2002年は1兆1446億円、2012年には1兆197億円と最盛期の6割近くまで下がってきています。

ビアホールや居酒屋などを含めた料飲主体全体でも、喫茶店より少し時期が遅れていますが下がっていて、料飲主体事業の需要自体が減少傾向になっています。

喫茶店の店舗数は1996年に10万2千店舗あったものが、10年後の2006年には8万1千店舗へと20%以上減少しています(総務省統計局「事業所統計調査報告書」より)。直近のデータはありませんが、おそらく1980年代のピーク時の半分を切っていると思われます。

一方では国内のスターバックスの店舗は1996年にわずか5店舗からスタートし、10年後の2006年には686店舗、ドトールも1996年には500店舗だったものが2006年には1000店舗を超えています。

これだけ大手チェーンのカフェ(統計上は喫茶店)が増えている中で、喫茶店総数は減少しているわけですから、チェーン店以外の古くからあった喫茶店の減少は想像以上で過激に進んでいると思われます。

もう都会の中ではスポーツ新聞や週刊誌を読みながらゆっくりモーニングセットを食べられる喫茶店は、なかなか見つからないのかも知れません。

どうして1980年代から急速に喫茶店の数が減少してきたのでしょうか?

私の想像ですが、80年代中盤頃からバブルの影響で都会にある喫茶店の家賃が高騰してきたのに、わずか200~300円のコーヒーで、長時間ひとりの客に場所を占有されてしまう極めて効率の悪いビジネスモデルが成立しなくなってきたのではないでしょうか。

その証拠のひとつに喫茶店オーナーが、自宅の一部や所有しているビルの中でやっている賃貸費用のかからない(昔ながらの)喫茶店はまだしぶとく生き残っているところがいくつもあります。

バブルの土地や家賃高騰でふくれあがった店舗の家賃を支払って旧来形式の儲からない喫茶店をやっていくのは厳しい時代になったのでしょう。

それともうひとつ、1990年頃まではまだ若く、よく喫茶店を利用した団塊世代達が、2000年頃にはみんな管理職となり、外へ出掛ける機会も減り、したがって利用回数が減り、そして2000年代後半頃からは順次引退してしまったことで利用者の減少につながったと考えられます。

増えている大手カフェチェーンの戦略は、セルフ式で、持ち帰りメニューを充実させ、店内のレイアウトもあまりゆっくりと長居をさせないように明るく落ち着かない作りにしてあり、客の回転率を上げる工夫がされています。しかしそれがまた流行に敏感な若い人や時間に追われて忙しい人には向いているようです。

昔ながらの薄暗い喫茶店にいるのは中年高年オヤジが多く、お洒落なカフェの若い客層とは明らかに違っています。次の若い人達を旧来の喫茶店へうまく取り込めなかったのも敗因のひとつでしょう。

回転率を上げる工夫がされているセルフ型カフェの逆を張って、「長居上等!」「どうぞごゆっくり」と頑張っている銀座ルノアールやコメダ珈琲のチェーンは、座ればウェーターやウェートレスがお冷やとおしぼりを持ってきてくれる従来の喫茶店のいいところを取り入れていますが、飲み物以外に利益率の高い軽食を充実させることで、客単価を上げる工夫がなされています。

ちょっと小腹が空いたとサンドイッチと飲み物を頼めばそれだけで軽く千円は超えちゃいます。

また私を含め旧人類が好んだ、目立たない場所にあって、部屋の中は照明を少し落として薄暗く、なんとなく今までの人生に苦労をしてきたようなマスターがいて、古いジャズやクラッシックが静かに流れていて、スポーツ紙全紙と多種類の週刊誌などが無造作に棚に置かれ、タバコの煙が充満し、常連さんがたむろしているような喫茶店では今の若者には受け入れらそうもありません。

私が昔よく通ったオフィス街の喫茶店へは、近くを通ったときなどに懐かしくてつい寄ってみますが、店舗はあってもすでに喫茶店でなくなっているか、建物自体が建て替えられてしまって跡形もなかったりしているのがほとんどで、統計上の減少が大いにうなずけるところです。


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