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ロバート・B・パーカーの「スペンサーシリーズ」と同様に、探偵小説のシリーズものとして長らく読んできたのが、ローレンス・ブロックの「マット・スカダー・シリーズ」とマイクル・コナリーの「ハリー・ボッシュシリーズ」です。
スペンサーはボストン、マットはニューヨーク、そしてハリーはロサンジェルスを本拠地にしたクールな探偵です。
その中の「スペンサーシリーズ」は著者のパーカーが2010年に死去したことで、一応区切りが付き、その作品はすべて読み終わっています。その後別の作家が引き続き「スペンサーシリーズ」を引き継いで書くということですが、また別のものと考えていいでしょう。
「スペンサーシリーズ」については、最後の作品を読み終えた後に、「ロバート・B・パーカー スペンサーシリーズ全巻まとめ」を書いていますので、そちらを見ていただくとして、あとの2つについて少しまとめておきたいと思います。
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酔いどれ探偵の「マット・スカダー・シリーズ」は、著者ローレンス・ブロックと小説の主人公の年齢がほぼイコールで書かれています。
第1作目が書かれた1976年「過去からの弔鐘」の時は著者(=主人公)は38歳で、2011年に発刊された17作目の「償いの報酬」の時は互いに70歳を超えていました。
もちろんその時の主人公は現役探偵から引退をしていて、酒場で友人に昔の話しを語るという展開です。したがってそろそろこれで打ち止めっぽい感じです。しかしラッキー?なことに、まだ読んでいない旧作が数冊残っていて、もう少しは楽しめそうです。
作品リストは下記の通り、邦題、原題、発刊年
01 過去からの弔鐘 Sins of the Fathers(1976)
02 冬を怖れた女 In the Midst of Death(1976)
03 1ドル銀貨の遺言 Time to Murder and Create(1977)
04 暗闇にひと突き A Stab in the Dark(1981)
05 八百万の死にざま Eight Million Ways to Die(1982) PWA賞最優秀長篇賞
06 聖なる酒場の挽歌 When the Sacred Ginmill Closes(1986)
07 慈悲深い死 Out on the Cutting Edge(1989)
08 墓場への切符 A Ticket to the Boneyard(1990)
09 墓場への切符 A Dance at the Slaughterhouse(1991) エドガー賞長編賞
10 獣たちの墓 A Walk Among the Tombstones(1992)
11 死者との誓い The Devil Knows You're Dead(1993) PWA賞最優秀長篇賞
12 死者の長い列 A Long Line of Dead Men(1994)
13 処刑宣告 Even the Wicked(1996)
14 皆殺し Everybody Dies(1998)
15 死への祈り Hope to Die(2001)
16 すべては死にゆく All the Flowers Are Dying(2005)
17 償いの報酬 A Drop of the Hard Stuff(2011)
お勧めはと聞かれると、「最初から順に読むのがいい」と答えますが、ベストの1冊は?と言われると少し迷ってしまいます。
例えばアル中でどうしようもなく酷い状態の時もあれば、すっかりアルコールから脱して深夜のパブでコーヒーを飲んでいる主人公や、引退して過去の話しを語り部のように喋る主人公まで、それぞれに雰囲気があり、また気の利いた仲間がいたりいなかったり、なかなか難しいところ。
強いて言うならスペンサーに対する相棒ホークのようで、良き味方で信頼できる相談役のようでもあるミック・バルーが好きなので、彼が準主役的に登場する11作目の「死者の長い列」や、14作目の「皆殺し」、最後の17作目「償いの報酬」などをお勧めするでしょう。
ローレンス・ブロックはこのシリーズの他、「殺し屋ケラー・シリーズ」や「泥棒バーニイ・シリーズ」などがあり、それぞれに面白いのですが、やはり代表作はこの「マット・スカダー・シリーズ」でしょう。
余談ですが、「殺し屋 ケラーシリーズ」は2011年の4作目「殺し屋 最後の仕事」で、過去最大のピンチを乗り越え、ハッピーエンドで無事終わったと思っていたのですが、今年10月に5作目の「殺し屋ケラーの帰郷」が出ていたのですね。知りませんでした。さっそく買いに行かなくっちゃ。
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そしてもうひとつのマイクル・コナリーの「ハリーボッシュシリーズ」は、ようやく過去に出版された分をすべて読み終えて、今年文庫が発刊された「ナイン・ドラゴンズ」と、まだ翻訳版が出ていない「The Drop」「The Black Box」についてはまだ未読という状態です。
こちらの作品リスト(邦題、原題、発刊年、邦訳版発刊)
1 ナイトホークス The Black Echo 1992年 1992年10月 エドガー賞処女長編賞
2 ブラック・アイス The Black Ice 1993年 1994年5月
3 ブラック・ハート The Concrete Blonde 1994年 1995年5月
4 ラスト・コヨーテ The Last Coyote 1995年 1996年6月
5 トランク・ミュージック Trunk Music 1997年 1998年6月
6 エンジェルズ・フライト Angels Flight 1999年 2001年9月 2006年1月[改題版]
7 夜より暗き闇 A Darkness More Than Night 2001年 2003年7月
8 シティ・オブ・ボーンズ City of Bones 2002年 2002年12月/2005年2月 アンソニー賞
9 暗く聖なる夜 Lost Light 2003年 2005年9月
10 天使と罪の街 The Narrows 2004年 2006年8月
11 終決者たち The Closers 2005年 2007年9月
12 エコー・パーク Echo Park 2006年 2010年4月
13 死角 オーバールック The Overlook 2007年 2010年12月
14 ナイン・ドラゴンズ Nine Dragons 2009年 2014年3月
15 The Drop 2011年
16 The Black Box 2012年
著者マイクル・コナリーはまだ若い(58歳)ので、当面はこのシリーズは続きそうです。ただシリーズ初期の頃のベトナム戦争帰りで心が刺々しく屈折した部分が最近はすっかり失せてしまい、想定年齢も高くなってきて丸くなってしまいました。
家族や恋人、そして小賢しいテクニックを使った捜査などが増えて行くにつれ、最近の動向は大きくイメチェンしたみたいで感心できません。先のマッド・スカダーの場合も後半から酒をキッパリ断って、探偵免許を取得し、素面で探偵をおこなうようになりましたが、共通するのかもしれません。
FBI捜査官だったテリー・マッケイレブが登場した6作目の「堕天使は地獄へ飛ぶ」、7作目の「夜より暗き闇」あたりから、その作風というか主人公の性格が変わってきたかなと感じるようになりました。
こちらもベストを選ぶとすると、登場編の第1作「ナイトホークス」か、殺された自分の母親の真実を追いかける4作目の「ラスト・コヨーテ」、前述のテリー・マッケイレブが登場する7作目「夜より暗き闇」あたりかな。最近新しい作品でコレというのはないかも。
そのテリー・マッケイレブが主役となり、ハリーもちょっと登場するスピンオフ「わが心臓の痛み」もいい感じでした。この小説は「ブラッド・ワーク」という原題で、クリント・イーストウッド監督・主演で2002年に映画化もされています。DVDで見ましたがなかなかいい映画でした。
主人公の名前、ヒエロムニス・ボッシュは15世紀の有名なフランドルの画家が由来で、子供の頃に殺されてしまった母親が名付けました。1作目からこの母親と名前の由来についてたびたび登場しますが、4作目の「ラスト・コヨーテ」で殺人の謎が解けてその後はあまり出てこなくなりました。
登場人物は毎回代わり、スペンサーシリーズのホークのような常連の相棒はいません。時々出てくるのは元妻でFBI捜査官だったエレノア・ウィッシュやロス市警のジェリー・エドガー、キズミン・ライダーと言ったところ。登場するたびに、異動していたり、昇進していたりして、時の流れを感じさせます。
サザエさんやスペンサーと同じく、こちらも主人公は歳をとらない感じ。さすがにスペンサーのように昔、朝鮮戦争に従軍していたという年齢ではありませんが、こちらは今から40年ほど前に終結したベトナム戦争に従軍し、帰国後警察官になったという設定で、そのままの年齢ならば少なくとも今は60歳以上にはなっているはずですが、今でも若々しい活躍ぶりです。
【関連リンク】
808 ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ
328 スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
327 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
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