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基本的にはニュース的な時事ネタはあまり書かないようにしていますが、昨今の企業のデータ偽装事件や不正について少し思うところがあって書いてみることにします。

まず昨年(2014年)のことですが、株式会社タカタ製のエアバックの異常破裂による事故で、けが人や死者が続出していたことを重く見て、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、装着車のリコール要請や、原因追及のためアメリカ議会の公聴会への呼び出し&制裁金が科せられました。

そうした事故が世界中で起きてもタカタの対応はなぜか鈍く、この問題は翌2015年においても沈静化することなく、今年11月には追加のリコールや追加の制裁金を科せられ、とうとうタカタ製エアバッグを今後搭載しないと公表するメーカーまで現れる事態となっています。

ホンダ、タカタ製インフレ―ター今後使用せず 日産も「失望」(ロイター)

同社においてエアバッグの売り上げは全社売上の約4割を占めている主力商品です。偽装や不正ということではありませんが、事故が起きたときの初動が遅く、しかもその対応が中途半端で、ユーザーや顧客(自動車メーカー)に対しても誠意が感じられないと批判を浴びました。

同様なケースでは2009年にトヨタの一部車種において急発進事故が多発しているという指摘を受けて、一時期トヨタは北米でこっぴどく叩かれました。

その時はすぐにトヨタの最高責任者である社長が自らアメリカで行われた公聴会に出席し、謝罪し、誠意を持った対応を約束することですぐに沈静化しました。

それと比較をすると今回のタカタの対応はあまりにも稚拙でお粗末だったと言われても仕方がありません。

そうした予期しなかった事態に対する経営陣のまずい対応で、主力商品の大幅縮小につながり、従業員の大リストラが始まることが予想されます。

二つめは、今年3月に発覚した東洋ゴム工業株式会社の免震ゴム性能データ偽装で、その後の追加調査により10月には2005年以降に製造した防振ゴムの性能データの偽装が明らかとなりました。

偽装の発覚は2年も前に子会社の従業員が性能データに疑問があることを上司に報告していたにもかかわらず、親会社の役員へそれが伝わったのが1年も経過した昨年、そしてその後も1年間あやふやの状態で放置?され、最終的に国交省へ報告したのが今年の2月になってからというていたらくです。

偽装発覚後、その問題の製品についてはすべて無償交換をおこなうということで収まりそうですが、不正発覚後公表まで2年間も要し、その間にも偽装データの製品を出荷し続け、結果損害は拡大し莫大なものとなりました。

そして一度ついてしまった不信感をぬぐいさるには今後多くの期間と労力を要しそうです。

三つめは、株式会社東芝で、今年7月に2008年度から不正会計処理があったことを公表し、2014年度の決算報告を大幅に延期、修正をおこないました。

事件が発覚したのは内部告発を受けてのことで、監視委員会検査で不適正が指摘され、第三者委員会にて調査がおこなわれました。

つまり経営者自身が何代にもわたって不正会計に関わっていたため、元経営者が中心的役割を果たしていた監査委員を勤めていたり、元経営者の子飼いの部下だった現在の経営者が、同僚や先輩を傷つけることができず、自浄作用が働かなかったいい例です。

歴代の社長が業績をよく見せようと不正に関与してきたという事件ですが、規模が大きく影響が大きいと言うだけで、企業に対して社会的な制裁は特に行われなさそうです(株主代表訴訟を免れるため?仕方なく、会社が旧経営陣を訴訟するみたいですが、結局それでは許されるはずもなく株主代表訴訟は全国規模で行われそうです)。

もし今回の東芝と同じようなことを、ポッと出の中小企業やベンチャー企業がおこなったら、見せしめ的に経営陣の逮捕や上場取り消し、ひどいときは倒産にまで追い込まれます。

しかし大企業、特にこうした名門企業には見えない特権があり、こういう犯罪行為があっても、影響が大きいからと会社が揺るぐことはありません。

なのである日突然路頭に迷いたくなければ中小企業やベンチャー企業ではなく、リスクの少ない大企業を目指すべきなのです。

四つめは、フォルクスワーゲン(Volkswagen AG)が今年9月にディーゼル車の排気ガスデータが、試験の時だけよくなる不正プログラムを使い、環境規制をクリアしていたことを明らかにしました。

さらに11月には同社グループのアウディやポルシェにも同様のプログラムが使用されていたことを追加で発表しました。

発覚した原因となったのはアメリカの環境NPOのICCT(国際クリーン交通委員会)の計測で、実走行時と試験データのあまりの差にアメリカの環境保護庁がそれを確かめて不正があったことを発表したことに始まります。

トヨタと共に北米で好調な販売を続けてきたVW社ですが、功を焦ったか、欧州よりも厳しいアメリカの環境基準対策において、ズルをしちゃったってことですが、トヨタがハイブリッドエンジンで環境対策を進めていったのに対し、欧州で広く普及しているディーゼルエンジンでアメリカのシェアを奪っていこうと馬力を駆けたところに無理があり、原因がありそうです。

あと第二次大戦で敵国だった日本とドイツのクルマが、アメリカ国内で巨大なシェアを奪っていく現状を憂いているアメリカの愛国者や保守派達が、先のトヨタの急発進やホンダ車のエアバッグ、そして今回のエンジン不正プログラムなどに過大な難癖をつけ、大きく社会問題化し、多額のペナルティを支払わせて溜飲を下げるっていう部分もあろうかと思います。

もし同じことを同盟国の英国やフランスのクルマが起こせば、ここまで大きな社会問題にしなかった可能性があります。いずれにせよ、日本やドイツの企業がアメリカで問題を起こすと保守派が騒いで火が大きくなるのは必定です。

五つ目は、まだ記憶に新しい、今年10月に横浜のマンション建設で、旭化成株式会社の子会社、旭化成建材株式会社の杭打ちデータの不正流用問題が発覚しました。追加調査により11月には杭データ偽装は過去10年間で合計300件に及び、50人の現場担当者が関与していることが判明しました。

今回不正が発覚したのは、住民がマンションの傾きを指摘し、何度も糾弾したことで横浜市などが重い腰を上げて調査して偽装が発覚したものです。

不正が見つかったマンションは、事業者は三井不動産レジデンシャルですが、建築元請けは三井住友建設、そこから工程管理や工事監督をおこなう一次下請けとして日立ハイテクノロジーズ、現場監督を担当する二次下請けが旭化成建材、さらに実際の作業を行う三次下請け業者という構造です。

やり玉に挙がっているのは二次下請けの旭化成建材とその親会社旭化成ですが、構図をみるとそれぞれに応分の責任はあるように思えますが、そこはみなさん業界上の大人の対応で、社会的な被害をできるだけ少なくするために、一番責任が重くて最下層の下請けに該当する旭化成建材をスケープゴートとして差し出したってところでしょうか。

そうすれば旭化成としても三井不動産や日立に大きな貸しを作っておくことができます。

その旭化成建材にしても、不正データ偽装が見つかった直後の会見では「偽装をした従業員を聴取したが、いい加減な性格でルーズ」と、まるで不正が個人にあったように発言していたこと。

つまり、できればこの個人の責任で収めたいという感じがありありでした。

実際は旭化成建材の中で不正に関わっていたのが50人以上、そしてくい打ち業務の別の会社でも同様の不正が発覚し、この問題は決して個人の性格などの問題ではなく、際限なく拡がっていくことになります。

以上、いずれも名門大企業が起こした不祥事の数々ですが、一般的に企業というか経営者は、社内で不正が発覚しても基本的にはまずは知らぬ存ぜぬを決め込む傾向があります。

そりゃそうです、少なくとも自分が経営者のあいだは、なにも問題はなく終わりたいと思っているからです。サラリーマン経営者の場合は特にそういう傾向が強くなります。

マスコミは広告費である程度押さえ込めても、被害者から明かな証拠を突きつけられたり、公的機関が動き始めると、もう逃げられないとして、一転下請けや現場担当者を前面に押し出して謝罪会見となります。

その身替わりの早さと、金太郎飴のような同じスタイルの謝罪会見は割と最近流行りだしたことで、現在のような危機管理術や広報戦略などなかった昔は、とことんとぼけて逃げ回るようなことも普通にありました。

謝罪会見も昔なら不正の当事者の上司、せいぜい部長と平取クラスが中心で、いわゆるスケープゴートを差し出して、それで収まるのならと考えて、できるだけ経営陣にまで累が及ばないように取りはかわれます。コンプライアンスの問題なんてそのほとんどは経営者自身の問題だってことをわかっていないようです。

上記の例で言うとタカタの謝罪が、旧式の謝罪会見のままで、たいして権限のない現場責任者をアメリカに送り込み、さらにエアバッグの被害者対応も、当初から自動車メーカーに丸投げしていたところに、信用の失墜を招いてしまった原因がありそうです。

こうしたトラブルや不祥事が起きた時こそ、企業と経営者の体質や能力が表面化しますが、まだまだ旧態依然とした会社風土が多く残っているってことや、それは日本国内だけではなく、合理的かつ先進的と思われてきたドイツ最大の名門企業でも、同様の問題を抱えているのだということがわかった1年です。

それにしてもみな大きな代償を払わされることになり、経営者ばかりでなく、従業員やその家族、取引先にまで拡がっていき、残念なことです。


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