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TSUTAYAと言えば個人的にはまれにレンタルDVD映画を借りに行くしか使うことはありませんが、世の中的には書店(新刊、中古)、CD、Tポイントカードなど幅広く展開していて、特にエンタメ大好きな若い人にとってはお馴染みのブランドとなっています。
個人的にはポイント制は嫌いなので、Tポイントを勧めてくるサービスには嫌悪感を持っていて、それを運営するTSUTAYAや運営会社CCCにもあまりいい印象は持っていません。
そのTSUTAYAが運営委託をする公営の図書館「武雄市図書館」は従来にない斬新な発想で利用者を大きく増やし一躍有名になりました。2番目の公立図書館「神奈川県海老名市立図書館」では選書が不適切だったりと疑問を持つ人もいますが、概ね順調にスタートしているようです。
小牧市の図書館の運営委託では、市民団体の反対が強く撤回されてしまいましたが、別にいちローカルで反対されたことを気にする必要はないと思います。どこにでも新しいことに拒絶反応を示す人は必ずいるもので、賛成する人と反対する人のその声が多少大きいか小さいかのわずかな違いの差です。
図書館は、図書館法第2条において「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」と定義されています。
その中で国立図書館(国立国会図書館)、都道府県や市町村、公立学校が運営する公立図書館、私企業や私立学校、団体が運営する私立図書館などに分類されています。
公立図書館や学校図書館の運営を外部の私企業にアウトソーシングするようになってきたのは比較的最近のことで、1990年代中盤ぐらいからです。
年功序列で自動的に給料が上がっていく公務員が運営にあたるより、経費節減効果はもちろん、住民サービスの向上を考えれば、民間へ外部委託するのは時代の趨勢とも言えます。
まだ全面的に運営を外部に委託しているのは、2007年で1%に満たない数ですが、今後一気に増えていくでしょう。
上記のTSUTAYAが2012年に公立図書館の運営に進出するまでは、公立図書館の運営全体を外部委託すると言えば概ね図書館流通センターが独占していました。
その他にはシダックス関連のシダックス大新東ヒューマンサービスという人材派遣会社などが受注しています。いち早く事業化を成功させ、狙い所がよかったのですね。
株式会社図書館流通センターの母体は大日本印刷(DNP)、丸善、日本出版販売(日販)などで、図書館向けや学校向け書籍の販売から始まり、やがて図書館の運営まで関わるようになってきたというのが大まかな沿革です。
この書籍販売、出版、流通、印刷業界は複雑なところがあり、私もあまり詳しくはないのですが、いろいろと過去のしがらみや系列など絡み合っていて旧態依然としたところがあります。
著作者が書いたものは、まず出版社で編集、装丁され、印刷会社で印刷、製本されます。その製品となった本は取次店を通じて二次取次店や書店に配布され、それから図書館や学校などに納品されていきます。
著者-編集・装丁-印刷-取次-1次取次-2次取次-書店-読者という流れから、今後電子ブックが当たり前になると、それらの複雑な流通がかなり端折られ、著者-編集・電子ブック化-読者となります。すでに携帯小説などでありそうですが、著者-読者というケースも出てくるでしょう。
そうした流通の複雑さや、旧態依然とした利権構造をまずは図書館の運営受託というところからTSUTAYAは壊し始めています。そして当然ながら今までの既得権益を壊されたくない人達が、マスメディアなどを使ってTSUTAYA叩きを必死におこなっています。
TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由(東洋経済)
ま、過去からの慣習を踏襲し大事にしたいという気持ちもわからないではありませんが、私は様々な新しい試みで時代と共に変化していくことも重要だと思っています。
言葉や表記だってどんどん変化していっているではありませんか。日本十進分類法(NDC)も重要とは思う反面、これらは利用者を中心に考えられたのではなく、管理側の都合による分類で決して一般利用者にとっては優しくありません。
公立図書館は誰のためにあるの?って考えると、国会図書館のような文化資料を保管しておく機能を持っているところは別として、町営や市営図書館クラスにおいては子供を含め利用者が一番使いやすい、探しやすい、利用しやすいことを最優先すべき事項でしょう。
以前、ソフトバンクが鳴かず飛ばずで赤字を垂れ流していたボーダフォンから携帯電話事業を買い取って事業を始めたときに、それまで元公営企業同士だったドコモとKDDIが携帯電話の高値維持政策が壊される危機を感じ、一斉にソフトバンクを叩き、マスメディアを総動員して悪評を流したのと同じ構造です。出る杭は打たれるのは常です。
しかしTSUTAYAもソフトバンクもその後の結果を見れば、事業として成果を出しており、多くの人に役だっていることは明かで、社名だけで拒絶反応を示す人は除き、今では事業進出に疑問を言う人は少ないでしょう。
アイデアを駆使して競合する会社が多いほどいい競争ができるのであって、従来のように天下り官僚ばかりの大会社が独占してしまうと決していいサービスは生まれてきません。
図書館流通センターは2大取次大手のうちのひとつ日販、大日本印刷系列ですので、本来ならば後発のTSUTAYAはもうひとつの大手取次トーハンや凸版印刷、紀伊國屋書店などと組んで、図書館受託事業をやるべきだったかも知れません。でもそうしなかったのは旧態依然とした大企業と組むのを良しとしなかったのかも知れません。
今はまだ、様々なメディアでTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社は叩かれ続けていますが、やがて多くの利用者から評価されてくると、そのうち誰もなにも言わなくなるでしょう。もし評価されないとそのうち切られるだけ自業自得でしょう。
いずれにしても書籍の電子化が進んでくるにつれ、今までの書籍の製作や流通ルートが大きく変わってくることは間違いなく、旧体制を壊し、利用者にとってより便利にしてくれるのは、業界にいる人ではなく、TSUTAYAやソフトバンクのような一見すると破壊者とも思える(そのようにメディアから喧伝される)人達なのでしょう。
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