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大誘拐 RAINBOW KIDS 1991年 
監督・脚本:岡本喜八 出演:北林谷栄、緒形 拳、風間トオル
天藤真氏の小説で1978年に発刊された「大誘拐」が原作です。主演の北林谷栄さんは出演当時79歳、現在もお元気のようで年齢は98歳です。

と書いていたところが、なんと4月27日にお亡くなりになったそうです。ご冥福をお祈りいたします。
 
北林谷栄さんは「ビルマの竪琴」「阿弥陀堂だより」「にあんちゃん」「黄泉がえり」などの映画や、「前略おふくろ様」のテレビドラマなどにも出演され、若い頃から老婆役を演じていた名女優に間違いありませんが、この映画の時は病み上がりということもあってか、ちょっと舌が回っていないという感じがしました。
 
この20年前に制作された映画を観て、現在との違いは意外と少なくて、仲間と連絡を取り合うときに携帯電話ではなくトランシーバだったり、クルマに付いているオーディオがカセットテープだったりするぐらいで、あまり変化は感じられません。

この1990年から2010年までの期間は、ちょうどバブル経済崩壊後の「失われた20年」ということで、日本全体が進歩せず沈滞してしまっていたせいなのでしょう。
 
小説の「大誘拐」の内容通りに忠実に描かれていて、細かなところでは「あり得ない」という部分がいくつもありますが、小説が450ページの長編なだけに、映画の120分だけでは十分に説明がしきれず、映画だけを見ると「どうして?」「なぜ?」と思うようなところがあります。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
真夏のオリオン 2009年 
監督:篠原哲雄 出演:玉木宏、北川景子
原作は池上司の「雷撃深度一九・五」ですが、内容はだいぶんと違っています。原作は内容の半分は事実を元にして書かれたそうですが、映画版では完全なフィクションです。

このあたりは脚色に太平洋戦争でのイ号潜水艦の活躍を描いた「終戦のローレライ(映画タイトルはローレライ)」の福井晴敏氏が加わりその影響が大きいのかもしれません。

あるいはもしかすると小説にあった事実(らしきこと)を描くと遺族などに迷惑をかけるので意図的に避けたのか不明です。
 
潜水艦の映画には付きものの駆逐艦との駆け引きがメインとなりますが、冒頭に日本の潜水艦がアメリカの潜水艦を魚雷で反撃して撃沈するシーンがあります。

しかし誘導魚雷ではない太平洋戦争の時代に、海中にいる潜水艦同士が魚雷を打ち合って撃沈したという歴史は過去にはほとんどなく、大西洋で英海軍がドイツ海軍のUボートを沈めたことが1回あったことは事実だそうですが、それ以外の記録はないそうです(なにかで読んだだけで確証はなし)。
 
また主演の玉木宏以下みんな髪の毛が長髪で、さらに主人公の孫にあたり、まもなく教師になろうかという女性が、超ロングの真っ赤な髪の毛であり得ない感じがしてちょっとしらけてしまいます。
 
そのようなフィクションが主となっていますが、戦闘シーンはドキドキし、狭い空気の薄い密閉空間の中で、生きるか死ぬかの極限状態で従事する若者達の苦闘がよく描かれています。

最後のほうでは、涙が出てきて止まりませんでした。終戦間際のベテランの艦長同士の壮絶な頭脳戦を描いたこの映画をアメリカ人は、どういう印象を持つのか聞いてみたい気がします。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
映画 ハゲタカ  2009年 
監督:大友啓史 出演:大森南朋、栗山千明、松田龍平
真山仁原作というか出世作の「ハゲタカ」の続編「レッドゾーン」のさらに続編と言えるものの映画化です。人気の出たテレビドラマを映画化するのは民放の常套手段ですが、NHKも民営会社NHKエンタープライズを使って人気ドラマで儲けに走ります。
 
映画は巨大な中国資本を使っての日本の技術奪取と製造業の不振、派遣労働者問題、それにリーマンブラザーズのサブプライムローン破綻などを組み合わせ、タイムリーな話題をうまく混在させた内容となっていて、それなりにうまく作られています。
 
東京の皇居近く(日比谷公園?)で、準主役が強盗に刺され、持っていた財布からお札がばらまかれると、刺された人を押しのけて、近くにいた人が皆お札に群がるというシーンがありましたが、そりゃいくらなんでもあり得ません。そこまで日本人の道徳は落ちていないでしょう。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
バベル  2006年アメリカ 
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演:ブラッド・ピット、菊地凛子
モロッコを観光中のアメリカ人夫妻が地元の子供のいたずらによりライフルで撃たれたこと。アメリカで留守番をしているその子供達と家政婦のメキシコ人。

アメリカ人観光客が撃たれたライフルをモロッコ人狩猟ガイドにプレゼントした日本人とその娘。それぞれの国で同時進行でドラマは進みます。

ただそれがどういう意味や価値があるのか理解不能で、作者は、本当はなにを言いたいのかよくわかりません。
 
映画のタイトルの「バベル」から想像すると神の怒りをかった「バベルの塔」から「言葉が通じない世の中の混乱」ということなのでしょうが、そりゃアメリカ人とモロッコ人とメキシコ人と日本人では、言葉は通じず価値観も生活も文化も違っているでしょうよ。それによってなにを伝えたいのかよくわかりません。
 
あと、菊池凛子扮する女子高生が街で気に入った男に短いスカートをたくしあげてノーパンの股間(アンダーヘア)を見せて誘惑したり、自宅で刑事相手に全裸になって全身を見せびらかすシーンが出てきますが、この場面だけをとって見れば間違いなく今度の東京都青少年健全育成条例に引っかかりそうに思います。

これがOKだというのなら、条例は有名無実のものになります。しかし芸術かぶれの知事がいる東京都はカンヌ映画祭で監督賞、菊池凛子は米映画批評会議賞新人女優賞をとっているこの映画をどういう判定を下すのか注目です。
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
トランスポーター3 アンリミテッド 2008年フランス 
監督:オリヴィエ・メガトン 製作・脚本:リュック・ベッソン 出演:ジェイソン・ステイサム
ランボーのシルヴェスター・スタローンや沈黙の戦艦のスティーヴン・セガール、007シリーズのジェームス・ボンドのような、無敵のマッチョ運転手フランク・マーティンが主人公の映画です。
 
タイトル通りこのシリーズは主人公が乗るクルマも魅力にひとつですが、1作目がBMWだったのに2作目からはスポンサーの関係からかアウディに変わります。

英国映画の007シリーズもボンドカーは当初は英国製アストンマーチンやロータスだったのが、最近はずっとドイツ製BMWになっています。

スポンサーの威力は絶大ということなのでしょう。細かい話しですが、ジュラシックパークでは園内を回るオフロードカーは小説ではトヨタランドクルーザーでしたが、映画ではスポンサーの関係かフォードエクスプローラーに変わっていました。
 
内容は1作目から段々とハチャメチャになってきましたが、3作目ではその極限に達します。

まぁ娯楽ということで、楽しめればいいと言うことなのでしょう。

自分で乗ることはない高級なクルマが多いのですが、1台1千万円を越えるクルマが次々と破壊されたり水没していくのは見ていても忍びない限りです。
 



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