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4月にシャープが台湾の鴻海精密工業に買収されて子会社化されました。多くの独自の特許を持ち、子会社含めると4万人を越す従業員を抱える大企業の海外企業の買収は複雑に思う日本人も多いと思いますが、グローバルビジネスや巨額の設備投資を見誤った経営陣にその責任の多くはあるとは言え、これも人口減少で衰退していく日本の国力の象徴なのかなと思ってしまいます。
シャープは昭和10年(1935年)の設立で、創業者の早川徳次氏が発明したシャープペンシルが社名の由来というのは有名ですが、戦後の貧しい日本の中から、国民生活の上昇と共に伸びてきた老舗の家電企業です。
ちなみにソニーの創業はシャープ創業から11年後の昭和21年(1946年)、東証への上場もシャープより2年後の1958年です。
家電業界と言えば、高度成長期には、西の松下電器産業(現パナソニック)と東のソニー、それと財閥系の日立、三菱電気、東芝、その他通信系の日本電気、富士通などが覇権を競ってきましたが、シャープも安価に独自のユニークな製品を次々と出して一定のファンがいました。
個人的にはシャープが圧倒的なシェアを独占していたNEC PC8801やPC9801に対抗して、パソコンのMZシリーズやX68000シリーズなどを出していたときは、巨人IBMに対抗するAppleのようなイメージを持っていました。
その後、パソコンでは敗れてしまいますが、携帯PDAのザウルスは現在のタブレット型PCの原型とも言える製品で、そうした新しい分野へ果敢にチャレンジする姿勢は多くのファンを獲得しました。
しかし一般家電分野においては、知名度が低く、販売網の弱さから松下や東芝、日立など大手の後塵を拝し、安さで勝負的な製品が多かったのは残念です。
1982年、私が転勤で初めてのひとり暮らしのため引越しをするとき、その時に買ったエアコン、洗濯機、冷蔵庫は値段にひかれてみなシャープ製でした。
その他では、海外出張の時に役立つと思って買った電子辞書と英会話レッスン用の携帯カセットプレーヤー、1990年代後半には出張時に便利だったモバイルのWindowsCE搭載メビウスなどを買いました。そして現在我が家には価格ではなく性能重視で購入したシャープの液晶テレビと空気清浄機があります。
シャープは1956年に東証に上場し、その後半世紀以上順調に経営をしてきましたが、特に2001年以降に国内のテレビが地上波デジタル移行にともなう爆発的な買い換え需要が起き、バカ売れしました。
躓いたきっかけが、そのバカ売れした液晶パネルにすべての経営資源を集中させ、巨額の借金をしてまで新たな工場を建設するという戦略に出たことでしょう。
それまでの他社が出さないニッチな製品と安さで勝負する普及品をうまくミックスして激しい競争の中で闘ってきたのが、液晶という大ヒットに恵まれたゆえ、それが慢心というかおごりにつながっていくことになります。
次々と最新鋭の工場が完成していく中、リーマンショックが起きて、世界的に景気が一気に冷え込みます。
そして中国や韓国などのアジアン家電製造業者の勢力が力をつけてきて、液晶ディスプレイやシャープがもう一つ得意としていた太陽光発電パネルの価格が暴落、シャープの国内工場への投資はほとんどが無駄になってしまったというのが実際の所でしょう。
1980年代から現在までの株価の推移です。
実は個人的には1990年代後半頃に、仕事でシャープ本社の中堅社員の人と話しをする機会がしばしばあり、話しをしていると、夢があって、生き生きと仕事をされていて将来性がありそうだなぁ~という感じがして、少数ですが株を900円(×1000株)ぐらいで買ったことがあります。別になにか企業秘密を教えてもらったりしたわけではなく、インサイダー取引ではありません。
買ったときの会社の土地や工場などの総資産よりも、株価の時価総額が大幅に低かったこともあり、当時はお買い得感があったのです。
そうすると、1年ぐらいの間に、2~3割株価が上がり、その時に売ってしまいましたが、バブル後でも右肩上がりの雰囲気を持っている会社でした。
ただシャープの幾人かと話しをしていて思ったのは、「技術力があればなにもしなくても売れる」的な社風が感じられたのと、1990年代には自社ビルがあり、「危機感のない大企業のサラリーマンっぽい人も多そう」ということで、独創性はあっても、たぶん創業当時にはあったであろう泥臭い販売力、汗臭い営業力、消費者に向いた企画力には欠けているのが少し気になっていました。
2000年以降の株価は1500円を行ったり来たりしていましたが、高品質で高収益の液晶テレビがバカ売れして2007年には2000円を越えることもありました。そこでリーマンショックが起き、その後は一気に奈落の底へ転落ということです。
2016年5月13日で133円、リーマンショック以前の株価2300円の17分の1まで落ちてしまい、その後復活するかどうかは鴻海精密工業の資金力とオーナー郭台銘氏の手腕に頼るしかないのでしょう。
シャープと言えば「目の付けどころがシャープでしょ。」のCMが大ヒットしたことが印象深いです。
つまりは独創性、ユニークさが持ち味だってことを象徴的に表していたのですが、一等地に自社ビルを構え、大企業病に陥ってしまい、部長以上の幹部達は社内政治や権力者へのゴマすりに奔走し、おそらく消費者の前に立って声を枯らせて宣伝したり、取引先や下請け会社に頭を下げて回るようなこともなかったでしょう。
今回の買収には様々な要因が複層的にあるでしょうけど、端的に言えば、創業者が経営理念に掲げた「いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって広く世界の文化と福祉の向上に貢献する。」を忘れた欲深い経営者達が、長期政権体制を敷いた結果とも言えるのではないでしょうか。
ユニークな家電や工業製品を持っていた三洋電機もそうですが、マニアックで好きだった企業だけに今回の件は返す返す残念です。
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