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危険なささやき (1983年) (ハヤカワ・ミステリ文庫) J.P.マンシェット
日本語版は1983年に発刊されたフランスの私立探偵小説というちょっと珍しいジャンルの作品です。
フランスの小説ということもあって、この小説を原作としたアラン・ドロンが制作・監督・主演をこなした同名の映画作品が1981年に作られていて、そちらのほうが一般的にはよく知られているかも知れません。
そしてこの小説の翻訳者が、フランスを舞台にした犯罪小説やミステリー小説を多く書き、また2001年に「愛の領分」で直木賞に輝いた藤田宜永氏というのも注目される点です。
小説の舞台になっているのが1970年代後半頃のフランスで、有名なシャンゼリゼや凱旋門など観光地ではなく、パリ郊外などあまり知らない場所で展開していきます。
また当然ですが、時代柄携帯電話やパソコンなど情報機器らしいものはなにもなく、昔ながらの知恵と足で情報を得て、事件に首を突っ込んでいきます。
主人公が行方不明になった女性を探そうとした途端に、殺し屋が現れ、事件から手を引くように脅されたり、依頼人と駅で待ち合わせをしたら目の前で射殺されてしまったり、さらにはガールフレンドが誘拐されてしまうという、よくわからないまま大きな陰謀に巻き込まれていきます。
派手なドンパチや暴力シーン、アクションシーンもふんだんにあり、確かに映画に向きそうなエンタメ的展開です。
書かれた時代が時代だけあって、今読むとなにか懐かしい香りがする上質なミステリー探偵小説でした。古い文庫本だけに文字のサイズが小さく、目の焦点が合いにくくなってきた高齢の身にはちょっとつらいのはやむを得ません。
★★☆
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会社の品格 (幻冬舎新書) 小笹芳央
著者は元リクで卒業してリンクアンドモチベーションを設立して活躍されている有名な方です。2007年に出版されました。
どうも私は「品格」という言葉に弱く、30数年前に新卒で入社した(営業が主体の)会社の当時の社長がよく言っていた「一流の環境にいれば一流の品格が身につき一流の営業ができる」と、当時はまだ小さい会社ながら、かなり無理をして超一流のビルの中に(小さく)事務所を構えていたことを思い出します。
で、「一流の品格」ってなんぞや?とずっと考え続けてきましたが、実は今でもよくわかっていません。品格って時と立場と環境によりますよね、たぶん。
それ故に、書籍で「品格」と名の付くものは、自然と手が動き、片っ端から買ってきて読んでいるってわけです。
「国家の品格」「男の品格」「女性の品格」「女と男の品格。」「日本人の品格」「遊びの品格」「親の品格」などなど。
で、この本は新書にありがちな著者の会社の事業PR本という側面は多々あるものの、経営者が自分では気がつかず、残念な会社となっていく気づきになるかもしれません。
うつけな経営者が「なるほど!そうか!」と手を打つかどうかはわかりませんが、著者の経営する会社に相談してみよう!と考えるかも知れません。
企業経営者が書いた新書を読むと必ずと言って良いほどそうした自社PR本となっていて、印刷部数のうち書店で販売された数よりも会社が買い取って客や見込み客に配った数のほうが多いのではないか?って思うこともありますが、物書きができる中小企業経営者にとってはそれが最善の策とも言えそうです。
この本は、そうした自社PRももちろん詰め込まれていますが、ははーんなるほどねという納得感もあり、特に目新しさはありませんが、暇つぶしの自己啓発には悪くありません。
★★☆
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男の勘ちがい (文春文庫) 南美希子
amazonが日本に法人を設立したのが1998年ですから、この本が出版された1992年にはまだ本の通販は一般的ではなかったということになります。
だから何なのだ?と言われても困りますが、1991年に設立されて急拡大中のブックオフで見つけたこの本の中身はかなり赤茶けていて、いかにも古書という感じがします。1992年と言えばわずか25年前なんですけどね。
著者は元テレ朝のアナウンサーで、この本を執筆したときは33歳とありましたから、今では還暦を超え、立派な高齢者の仲間入りをされています。今でもバラエティ番組などに時々出演されているようです。
この本が書かれた頃の世の中はまだバブルに踊っているさなかで、「車載電話付きの高級外車」や「地上げオヤジとその愛人」とか、「カルティエのリング」「アラミスを付けた男」とか懐かしいことばが満載です。今真面目に書かれているそういう時代表現を読むとなんだか皮肉を綴った漫画です。
しかし著者とはひとつ違いの同年代で、そうした時代をともに見てきただけに、笑えるに笑えません。
ちょっと今読むと時代があまりにも違いすぎて、男女とも役には立ちそうもありませんが、バブル時代の饗宴をちょっと懐かしむにはちょうど良いかもしれません。
★☆☆
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安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録 (文春文庫) 加藤廣
「信長の棺」(2005年)のスピンアウトもので2011年発刊(文庫は2013年)の短編集です。
「藤吉郎放浪記」「安土城の幽霊」「つくもなす物語」の三編からなるこの「小説は、タイトルにもある通り、「信長の棺」の戦国時代末期のそれぞれ独立した物語です。
しがない商人から時代の寵児へと駆け上がっていく秀吉=藤吉郎の身分や山の民として生まれた出自を必死に隠し、己の才能だけを頼りに信長に近づき、腹心として当時の家督制度、武家社会に真っ向立ち向かっていく姿を描いた「藤吉郎放浪記」。
信長の理不尽な命令に振り回されて悔しがる愚図で小心者の家康が、腹心の部下服部半蔵を使って信長に偽の幽霊を見せて一泡吹かせようとするものの、安土城には信長に取り憑いた本物の幽霊が先にいて、取り憑かれた幽霊を祓うために頼ったのが阿弥陀寺の住職、清玉上人だったという話しの「安土城の幽霊」。
室町時代に宋から日本へ渡り、足利義満に献上されたとされ、現在も静嘉堂文庫美術館に所蔵されている「九十九茄子〈つくもなす〉」という見事な茶器が、足利義満(金閣寺建立)→足利義政(銀閣寺建立)→山名是豊(応仁の乱)→伊佐宋雲→朝倉教景→松永久秀→足利義昭→織田信長→豊臣秀吉→有馬則頼→徳川家康→藤重藤元→岩崎弥之助(三菱グループ創設者)と数奇な運命をたどっていく話しの「つくもなす物語」。
いずれも戦国時代ファンにとってはフィクションとした「異聞」ではあるものの、なかなか面白い内容となっていて、エンタメとして楽しめます。
★★☆
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