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永遠の仔 (幻冬舎文庫) (1)再会 (2)秘密 (3)告白 (4)抱擁 (5)言葉 天童荒太

1960年生まれの天童荒太氏の作品は、先に2008年の直木賞受賞作「悼む人」を読んでいます。

この「永遠の仔」は1999年の作品で、日本推理作家協会賞とこのミステリーがすごい!国内1位を受賞していますが、それよりも2000年に中谷美紀主演でテレビドラマ化され、それを知っている方が多いのではないでしょうか。

小説のスタイルとしては主人公3人の少年少女時代と、17年後の現在とが行き来していきます。

その3人の子供はいずれも親から虐待を受けていて、そのせいで精神的に障害があります。

四国の病院で一時期ともに暮らしていたその少年と少女には、それぞれの秘密を共有する仲間となりますが、ある事件をきっかけにしてその後は連絡を絶ちます。

そして17年後、大人になった3人は川崎市の総合病院看護師、個人事務所を構える弁護士、神奈川県警の刑事としてそれぞれ会うこともなく働いていましたが、看護師の弟を自分の弁護士事務所で採用したことから、その関係が再びつながっていくことになります。

親からの虐待を受けて苦しむ子供や、障害を持つ少年少女が主人公の小説の場合、読み進めるにつれなんとも重苦しい雰囲気になるものが多く、この小説もその例外ではありません。

単行本で上下巻、文庫本だと5巻に渡る長い小説ですが、読み進めていくのがつらくなるほど息苦しさを感じてきます。

そして四方八方に張り巡らされた多くの謎の糸が、じれったいほどなかなか明らかにならず、なぜ?どうして?とその長さを感じなくなるほど読むことに集中したくなります。

そのあたりはいかに読者に飽きさせないテクニックを感じます。テレビで言えば、次回を見ないとその謎がわからないもどかしさを各回の最後に出すようなものでしょう。

このようなスタイルで、子供が犯す過去の犯罪に、読者が肩入れしてしまいそうな小説としては、松本清張の「砂の器」を思い出します。あれも暗くて重い小説でした。

それと雫井脩介氏の「犯人に告ぐ」がそうでしたが、小説の舞台となるのが、地元の川崎市ということもあり、なんとなく身近に感じました。

著者別読書感想(天童荒太)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

eの悲劇 (講談社文庫)  幸田真音

幸田真音氏の経済小説は割と好きで「マネー・ハッキング」1996年、「傷―邦銀崩壊」1998年、「日本国債」2000年、「凛冽の宙」2002年、「代行返上」2004年、「タックス・シェルター」2006年、などを読んできました。

で、この「eの悲劇」2001年ですが、毎度情けないことに文庫になってまもなく2004年5月に購入していて既読でした。道理でどこかで聞いたことのある話しだなと頭の片隅で思いながらも、最後まで既読とは知らずに読みふけりました。

記憶障害なのか、あぁ情けない。幸田氏も本のタイトルより著者名だけつい買ってしまう作家さんなのでこういうことがしばしば起きます。

内容は、短編連作の小説で、元腕利きの金融トレーダーだった中年男が、ある部下のミスをかばって辞職に追いやられてしまい、現在は金融界から足を洗って警備会社で警備の職に就いています。

その現場で起きる様々な出来事や事件に絡んで、過去の人脈や知識が生かされて、活躍をすると言ったものです。

連作の最後の短編では、昔勤務していたことのある銀行の金庫の中に取り残されてしまい、それを開けるためのパスワードを外に伝えるため、モールス信号を使うところなどは、金融とはまったく関係のないことですが、なかなか凝った味のある設定です。

モールス信号なんてもう誰も知らないとだろうと思っていたら、意外なところで使われていたり勉強している人がいるものです。

著者別読書感想(幸田真音)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

真紅の歓び (ハヤカワ・ミステリ文庫)  ロバート・B・パーカー

1989年初出の作品で、日本語の文庫化がされたのは1995年、探偵スペンサーシリーズでは15作目になる作品です。

パーカーの作品では珍しく、通常は「私」が語る一人称が多い中で、この小説では犯人と思わしき人物が淡々と独り言のように語っているところがあります。

その犯人とスペンサーの推理が最初は遠いところにあるものの、徐々に近づいていき、最後には交わっていくところがなんともスリルがあって楽しめます(実際は犯人自らから近づいていったのですが)。

内容は、黒人の中年女性が惨殺される事件がボストンで相次ぎ、ボストン市警のクワークに頼まれてスペンサーも犯人捜しを始めます。

そして別のよく似た事件が起き、その犯人が捕まりますが、クワークもスペンサーも犯人は別にいることを確信します。しかし連続殺人事件を早く決着したい人達の妨害を受けながら、引き続き真犯人捜しを続けることになります。

タイトルは、犯人が警察やスペンサーに対する挑戦状を突きつけ、さらに女性を殺した現場に真っ赤な薔薇を残していくという、快楽殺人に通じるところからきているのでしょう。

このシリーズの中には、殺し屋に狙われ命からがらということも多い中、この作品ではそのような場面はなく、そして最後はあっけない幕切れとなり、悪役がサイコっぽい異常者だとしてもどうも小粒すぎて、相棒ホークが活躍するシーンもなく、やや全体に物足りなさを感じます。

この作品では派手なアクションではなく、恋人スーザンとの知的でエロチックな会話や、スーザンの精神科医としての専門性を生かした犯人の行動分析などに重点を置いた楽しみ方をするのが正しいのかも知れません。

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

プラチナタウン (祥伝社文庫)  楡周平

正直言ってこのような中高年者が会社から追われ、見返してやろうと捨て身で奮闘する小説やドラマがとても好きです。

まず似た境遇で理解しやすく感情移入がしやすいのと、最初このようなつらい目に遭うと、最後は概ねハッピーエンドで終わると想像ができるからです。

私と同い年の楡周平氏はデビュー作「Cの福音」(1996年)以来、私は内容について無条件で購入する作家さんの1人です。

文庫化された本はほぼすべて読んでいますが、今回も例外なくワクワクドキドキの面白さでした。

元々犯罪絡みや暗黒街の世界をリアルに描く作家さんでしたが、2000年前後からは企業小説やコミカルなものまで幅を拡げた作品を発表されています。

今回の作品は民間企業と地方の役場という事業に関しては対照的な取り組みや考え方を前面に出し、苦難に立ち向かう主人公を応援しながら元気が出てくる内容となっています。

ストーリーは、宮城の農村出身ながら一流商社へ入り、順調に部長まで昇進してきた50歳超の主人公が、ある些細なつまずきにより、上司からおそらく復帰の見込みがない左遷を言い渡されます。

時を同じくして、出身地の町役場に勤めている中学校の同級生から「次期町長選挙に出てくれないか」と依頼されます。

その町というのが、地方によくありそうな公共事業で箱ものばかりを作り、その維持費用や地方交付税の削減により大きな財政赤字を抱え、数年後には夕張市のように財政再建団体に入ってしまう寸前のひどい状況です。結果、誰も町長選挙に出る人はなく、この町出身の主人公に白羽の矢が立ったわけです。

当然、そんな町に戻る気はなかったものの、酔った勢いでOKしてしまい、それが地元新聞にも掲載されるまでになって、後に引けなくなってしまいます。

他に立候補もなく、当選を果たした主人公を待ち受けているのは、町の大きな借金だけでなく、やる気のない公務員と利権にめざとい町議会議員です。

そういった環境の中で、真っ当な営利ビジネスの最前線で闘ってきた主人公がこの地方都市をプラチナタウンにするまでの苦難のドラマです。

日本社会は待ったなしに高齢者の生き甲斐や健康、介護、医療などの問題を解決していかなければなりません。

現在都市部に多くある民間の高齢者施設、いわゆる老人ホームはビジネスホテルのような狭く貧相な部屋か、億の単位が必要な高級な場所かの二通りに限られています。

さらに賃金が安いせいで常に介護士不足が続き、十分な介護が受けられません。この小説ではそれら問題を解決するひとつの方法を示しているものです。

著者別読書感想(楡周平)

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592
いまから10年ぐらい前に、歩いていると時々右足に違和感というか痛みを感じるようになり、その頃はさほど気にならなかったものの、その後次第に痛みが大きくなり、時には右足が思うように前に進まなくなり、しばらく痛みをこらえるため立ち止まってしまうような時がありました。

これはさすがに足の異常だと思い、もうすでに故人となっている母親が長く慢性関節リウマチに苦しんでいたことを思い出し、まずはリウマチ科のある近所の内科クリニックへ。そこでは、血液検査が中心で、オマケ的に関節痛をやわらげるという薬剤を足に注入してくれました。それがいまから8年前2004年のことです。

血液検査の結果は、リウマチではなく、整形外科の分野だろうという話しで、次に近所の整形外科へ。そこではまずレントゲンで足と股関節を撮影し、診断してもらいましたが、異常は見つからないとのことで、「筋肉痛でしょう」ぐらいのアホな診断。「5年間もずっと筋肉痛が続くわけねーだろ」と思いましたが、プライドの高そうな医者になにを言っても無駄だろうと、不信感だけがつのってしまいました。

その後は民間療法のカイロプラクティックへ1年半ぐらい通いました。初めのころは施術後しばらくのあいだ痛みが消えて、ようやく治るのか?と一瞬希望を持ちましたが、1~2週間に1回ぐらい通って半年ぐらい経つと、施術後1~2日経つともう痛みが出てしまうようになり、さらに施術方法をアクチベーターから覚えたての気功へと、なんの相談もなく一方的に変えられたこともあり、効果が期待できず行かなくなりました。

実はこの頃はまだ足の関節の痛みとずっと信じていました。なので、診察も足や膝を中心に検査するので、誤った判断をされてしまったと考えています。

今ではハッキリと「変形性股関節症」またはその一種でもある「股関節唇損傷」が原因だろうと自己診断していますが、そのきっかけは松本人志の「股関節唇損傷」のニュースをみて、その症状や、普通のレントゲン検査ではわからない病気であることを知り様々な文献やネットで調べた結果です。

前置きが長くなりましたが、世の中にはこのような肉体や精神に抱える爆弾というか不調個所をかかえている人は、決して少なくないということです。

自分が若く元気だった時には、そういう肉体的なハンデを持った人の気持ちや行動に対してまったく関心がなく、気もつきませんでしたが、いざ自分がそうなると、少しずつですがわかってくることがあります。

目に見えるハンデキャップがある人は、未だ対策は十分とは言えませんが、少なくとも周囲の人にアピールができます。

しかし身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などを持っているいないにかかわらず、一見するとなにも問題がなさそうに見えるハンデキャップを持つ人が、この社会には実は相当数いるだろうということは、自分に置き換えてみると容易に想像ができるようになりました。

これは自分にハンデキャップができて初めてわかることです。

例えば高齢者や車いすの人が信号のない場所で横断できず困っていたら、誰かが助けようとします。また電車のシルバーシートの前に高齢者や松葉杖の人が行くと概ね席を譲ってくれます(寝たふりする人も多いですが)。

しかし一見すると健常者に見える状態だとしたら、もちろん誰も積極的には助けてくれません。それどころか、痛む足を必死にかばいながらも階段や狭い通路でモタモタしていると、後ろから邪魔だとばかりに平気で突き飛ばされてしまいます。

また満員電車の中では弱者の論理など通用するわけもないので、人のことなど構っていられず、押され引っ張られもたれかかられするのが普通です。自分も若いときにはたぶんそうだったなとあらためて深く反省です。

「そういうハンデがあるなら満員の電車に乗らず、時差出勤して空いている電車に乗ればいい」とか「エスカレーターで歩く人のために右側を空けるのと同様、歩くのが遅い人は邪魔にならない隅っこを歩け」というのは強者の勝手な論理で、現実の社会生活の中ではそれらが難しいことも強者(健常者)には理解ができません。

例えば私のように調子がいいときは真っ直ぐ歩く分には普通に動けるのですが、日によって痛みがひどいときがあり、その時はゆっくりとしか歩けなかったり、電車の中ではつり革などにつかまっていないとちょっとでも押されると痛む片足では支えきれない場合があります。

そんな中途半端な人にまで、国や勤務先が全面的にサポートしてくれるわけもなく、したがって普通の健常者とまったく同じ生活をおくらなければならないというのが現実です。

1年前に起きた東日本大震災の時は、自宅までの20kmは絶対に歩けないと自覚していたので、半分会社に泊まるつもりで電車が動くのを待っていました。

深夜2時前には地下鉄と私鉄の両方が動きだしたことがわかり、それで帰宅することができました。こう言う非常時の時もハンデを持っている人は、健常者に置いてきぼりを食いそうです。

心身ともになにも異常がなく、そして死ぬまでその状態が続くかというと誰にもその保証はありません。というかその状態がずっと続くことのほうが稀と言えるでしょう。自分の親や祖父母をよく見ていればそれは明らかです。

しかしこの社会の仕組みはそういったハンデのある人にとっては生きにくく、活動しにくい世の中であることは間違いありません。

大きな予算を取って現金をばらまいたり、箱ものにお金をつぎ込むようなことはしなくていいので、子供のころから福祉教育を通じ、弱者への接し方を含め、サポートの訓練をおこなっていかないと、今後超高齢化を迎える中で、ハンデキャップを持つ多くの人が健常者から邪魔者扱いされ、それが高じていくと弱者に対する虐待や暴力、ひったくりなどの犯罪増加、被害を受けた弱者が精神的に追い詰められた末の自殺など、悲劇の連鎖を生む社会へと変わってしまいそうです。



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591
1970年、今から40年前は日本人の年間就労時間は2,250時間程度でしたが、2010年OECD調べによると1,733時間とかなり減り、アメリカの1,778時間を抜き、英国の1,647にも近づいてきましたが、それでもドイツの1,419時間、フランスの1,562時間などと比較するとまだまだ大きな開きはあります。

40年前の年間就労時間2250時間というと、平日と土曜日に9時から18時まで8時間労働すればだいたい2250時間になります。当時は土曜日は半ドン(午前中のみ勤務)の会社もありましたが、まだフルタイム勤務の多いところがほとんどでした。今の若い人にはまったく想像もできないことでしょう。

私は1980年4月に当時のベンチャー企業に就職しましたが、この時は超大手企業以外はまだ毎土曜日は普通に出勤日で、私の入社した会社も土曜日はすべてフルタイムの出勤でした。

入社数年後にまず第2土曜日が休日となり、その後第2、4土曜日のほぼ隔週土曜日休み(第5土曜日があると出勤し連続出勤)となり、入社4~5年目ぐらいでようやく完全週休二日制に変わったと記憶しています。

したがって当時は会社の始業時間は9時でしたが、実際には8時から始まる会議から、終わりは9~10時頃まで土曜日を含め働いていましたから、3日間の夏休みなどを除いても、年間総労働時間は4000時間を超えていました(残業代はなくすべてサービス残業扱い)。

当時のボーナスを含めた年収を総労働時間で割ると学生時代に働いていたバイト代より安かったことを覚えています。

現在の年間就労時間平均1733時間は、平日だけ7.5時間を働けばだいたいそれに達します。

いずれにしてもこの就労時間には残業時間が反映されていないようですが、日本の場合、90年代頃まではサービス残業が当たり前、その後は裁量労働やみなし労働などという言葉に置き換えて実質的なサービス残業が営々と継続し推奨されています。

ドイツの年間就労時間1419時間についてその詳細はわからないので、推定すると、12カ月で割ると月平均118時間。1日7時間労働だとすると月間17日程度の勤務となり、土日曜日以外に毎月3~4日はお休みということになります。あるいは夏休みやクリスマスにまとめて2週間ぐらい休むのかも知れませんね。

国内の企業に勤務する人の有給休暇の付与数と取得数を1984年から2010年の推移でグラフ化してみました。(データ出典総務省就労条件総合調査(2012年1月25日)2000年はデータなし)
yukyuu.jpg

有給休暇の付与数は2003年頃をピークにその後は横ばいが続いていますが、取得数も様々な要因があって取得しにくいのか、バブル崩壊後の1995年をピークに最近は横ばい状態が続いています。

有給休暇の付与数が増えれば、それだけ取得数も多くなるのかというと、そういう相関関係だけではなさそうです。

2011年の有給休暇の年間付与日数平均は17.9日年間取得日数平均は8.6日ですが、勤務している業種によって大きな開きがあります。

有給休暇の取得数が多い業種は、電気・ガス・熱供給・水道業(14.8日)、鉱業,採石業,砂利採取業(10.9日)、情報通信業(10.7日)、製造業(9.8日)、学術研究,専門・技術サービス業(9.6日)となっています。

逆に取得数が少ない業種は、宿泊業,飲食サービス業(5.2日)、医療,福祉(6.1日)、卸売業,小売業(6.4日)、建設業(6.7日)、教育,学習支援業(6.8日)などです。

公共事業に近く、しかも比較的規模が大きそうな電気・ガス・水道業や、鉱業、情報通信、製造業などは有給取得が容易で、零細事業が多く、しかも人手不足気味の宿泊・飲食業、医療・福祉、小売業、塾などの学習支援業は有給休暇が取得しにくいという構図が見えてきます。

日本は祝日が他の多くの国と比べると多く、単純に有給休暇の取得数だけで国際比較するとミスリードする恐れがあります。

しかしそれにしても有給取得率が平均で48%程度(2011年)というのは、せっかく与えられた権利に関わらず、将来の成長のために自ら学習することや、頭をリフレッシュして心身共に健康を保つこと、家族との団らん、子育て、友人との交友などの多くの機会を失ってしまっているのではないでしょうか。

そういう私も昨年は有給休暇としては6日の取得で、まさに上記の平均取得数以下でしたが。


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590
もう何十年も前から繰り返し「家を買うか借りるか」の不毛な議論が続けられています。

なぜ不毛かと言えばそれって人の考え方、つまり既婚・未婚、未婚だったら結婚の時期、生活パターン、仕事内容と勤務地、会社規模と収入レベル、会社の福利制度(住宅財形など)、金利の未来予測、住宅ローン減税の大きさ、子供(予定)数、両親とその資産や住居地、生活将来設計など、様々な要因、条件が異なり、それらを無視して論ずることができないからです。

逆に言えば、そういった様々な条件を無視して「借りるべき」「買うべき」と決めつける人、自称ファイナンシャルプランナーに多いですが、そういう人の言うことはまったく信用がおけないと言うことです。

でも、この話し面白いので(爆)、一度この件を私なりに独断と偏見で考察してみることにします。

前提としては、都市部に勤務する30代の夫婦+子供二人の標準世帯が都市部近郊地域に住む場合と仮定し、その夫婦の両親がどこに住んでいるか、兄弟はいるのか、また両親の介護の必要性や資産(持ち家)の有る無しなどのことは一切考慮しません。

【家を借りる派の多い主張】
・転勤があるかも知れず、住む場所が一定ではないので買うのは無駄
・20年も30年も重い住宅ローンに縛られてしまうのは嫌
・この時代20~30年も現在と同等以上の収入が維持できるかわからない
・賃貸だと生活環境や隣人などが気に入らなくなれば気軽に引っ越しができて便利
・持ち家だと天災で家が壊れると借金だけが残る
・賃貸なら生活や収入レベルに応じて住み替えができるので効率的
・木造で30年、鉄筋でも50年で大幅な修繕や建て替えが必要となり意外とお金がかかる
・賃貸物件は比較的交通の便がいい場所に多くある
・町内会やマンション管理組合の役員など面倒なことが回避できる(場合がある)
・将来は介護のため実家や、その近くへ気軽に引っ越すことができる

【家を買う派の多い主張】
・改築や増築、リフォームが生活に合わせて自由にできる
・家賃とさほど変わらない月々のローン返済で将来資産となる
・老後には資産売却して小さな家または高齢者施設へ移ることができる
・住宅ローン減税が受けられる(平成24年に新築居住開始で最大300万円)
・一般的に分譲住宅用の建築材や設備は賃貸用と比べ優れている
・賃貸の場合、住み替えるたびに紹介手数料や保証人が必要で面倒
・子供の学校や地域活動のことを考えると1個所に落ち着きたい
・持ち家だと世間的に信用が得られる
・子供に安い相続税で資産を残すことができる
・自分の家があることで精神的に余裕ができる

それぞれにメリット、デメリットがありますね。

基本的には借りている人は買うことのデメリットを強調し、買った人はその逆と言ってもいいでしょう。つまり自分の判断の正当性を主張したい、間違っていなかったと安心したいということなのでしょう。

20080614_00.jpgよく購入する場合に「投下資本の回収」という点で判断する人がいますが、それは人に貸し出したり転売する目的の投資物件の場合で、ずっと住み続けることが前提であるなら、土地代は固定資産税に影響するから、価値が上がるより下がってくれたほうがいいという解釈もあり、あまり意味のない判断です。

また「毎月の家賃支払いと同額で家が買える!」という不動産会社の常套句には当然まやかしがあって、取得するときの税金や手数料、マンションなら毎月別途支払うことになる共益費や修繕積立金、その他にも固定資産税、損害保険料など持ち家には多額の附帯コストが住宅ローン返済とは別に必要です。

それに住宅ローンが変動金利の場合、将来インフレになると利子分が膨れあがる可能性もあります。

上記と逆のパターンで「持ち家は固定資産税が毎月かかり、その他修繕費などもかさむ」と一見正しそうに見えて実は間違っていることを言う人がいます。

賃貸だって当然固定資産税や修繕費はかかっているわけで、それを大家が代わりに、そしておそらく手数料分をしっかり上乗せして家賃として徴収し代わりに支払っているだけのことです。

だから「賃貸なら税金や修繕費を払わなくて済む」は大きな勘違いです。

買った住宅が「30年も経つともう資産価値はない」と言い切る専門家もいますが、それはその不動産の場所やメンテナンス状況によって違ってきます。

都市部から遠く離れた郊外で周辺が新たな開発もされなければ、確かにほとんど値がつかなくなることもあるでしょうけれど、逆のことも当然あります。

つまり居住している30年のあいだに、新しく整備された道路ができ、近くに地下鉄の駅が完成したり、近所にあった工場跡地に大きなショッピングモールができたりして、住環境がよくなり、資産価値が以前より上がる可能性だってあります。

あるファイナンシャルプランナーの試算では、同じ場所に、30年ローンで買った場合と、ずっと賃貸で借りた場合を比べると、支払総額で比べると、「賃貸の人のほうが約2千万円の得になるから借りたほうがいい」という結論が書かれていました。

賃貸住宅の方が持ち家より30年で2000万円トクと専門家断言

しかしこの計算では上記の「30年経てば資産価値はなし」が根本にあるようで、買った住宅の資産はカウントされていないようす。

30年後にその資産がもし2千万円以上の価値があれば、買ったほうが得と言うことが抜け落ちています。

今どきの新築マンションが(普通のメンテナンスがおこなわれていれば)30年で売れないほどボロくなることはまずありませんし、一軒家なら家屋に価値はなくても、土地は当然資産価値があるでしょう。

もっと言うと住宅ローンのように否応なく毎月自動的に引き落としがされるお金と、賃貸住まいで、積立定期預金などのように、その気になればいつでも取り崩すことができる預金を比較すると、賃貸の人が30年後の老後のために、毎月家賃を支払いながら、それ以外に現金で最低でも2千万円をコツコツ積み立てようとストイックに割り切れるのかというとそれも疑問です。

おそらく住宅ローンを払い続けた人も賃貸の人も、最終的な貯金額はそれほど変わらない(つまり賃貸の人は可処分所得に多少余裕があるが、その分海外旅行や子供の学費などで贅沢する)のではないでしょうか。なので「家を買わない=住宅ローン-家賃分の貯金が貯まる」と必ずしも言えないのです。

私の考えを言えば、投機的な意味ではなく、そこに長く住むことを前提として、それこそ定期預金のつもりで、気に入った物件があれば買ってもいいのではと思っています。

但し今のタイミングで家を買うのには以下の条件があります。

 1)最初はマンションでもいいけれど子供がいる場合は最終的には土地付き一戸建て住宅を買う
 2)頭金は20%以上を支払う(4千万円の家で800万円の頭金)
 3)ローンは定年前の50代で終わるようにして固定金利
 4)月々の支払い額は給料手取りの1/3以内
 5)当面は転職や遠くへ転勤する可能性はない

です。それが無理なら分相応だと思って買わないか、物件のレベルを下げたほうがいいでしょう。

マンションと一戸建てを比べるとこれも生活スタイルなどによって違ってくるでしょうけれど、マイカーがあるなら郊外でも月1万円以上する駐車場代が不要となり、洗車も自宅でできる一戸建てを購入したほうがずっとお得な感じがします。

20110409_00.jpg頭金をできるだけ多く払うのは、少しでも利子負担を減らすこと以外に、万が一数年後に家を売り払うような事態が起きた時に、住宅ローンの残高が売却価格を上回らないようにするためです。

それでも地価が急落してしまうと、住宅ローン残債と家の価値の逆転現象が起きますが、それは誰も想像ができないので、その時はあきらめるしかありません。

逆に買った後に人気エリアとなり、急騰することだってあり得ます。その時は買った値段より高く売って、別の場所にもっと広い住宅に買い替えることも可能です。

ローン期間を定年(60歳)までに終えるようにしておくのは、こちらもローン返済途中で万が一のこと(失業とか給料の大幅減)が起きた場合、銀行と交渉して、ローン支払い期間を5~10年延長し、月々の支払い額を減らすことができる安全策です。つまり目一杯ギリギリ状態で買ってはいけないと言うことです。

給料手取額の1/3を毎月住宅ローンで返済していくのは実際にはかなり厳しく、特に子供の教育費がかかる年齢(40代~50代前半)で、給料がさほど上がっていないと、お金のかかる私立校に通わせることが難しくなります。できれば夫婦の手取り合計の1/4以下で収まる支払いに収めるようにしたいものです。

また年間12カ月均等払いにするか、ボーナス月に割り増しで支払うようにするかは、それぞれ会社の給料支払い条件にも関係しますが、景気や業績に大きく左右されるボーナスをあまりあてにするより、12カ月均等にし、もし毎月の収支が赤字で貯金に手をつけたら、次のボーナスでその埋め合わせをするぐらいの考えがいいのではないでしょうか。

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589
以前、「股関節唇損傷?」と「股関節唇損傷についての続編」でブログを書きましたが、同じように原因不明の足痛や股関節痛で困っている人にいい本を見つけたので紹介しておきます。

ちなみに私の場合、最初足に痛みを感じるようになったのは10年少し前のことで、それからずっと重心が右側にかかると足、特に膝や太腿に痛みを感じていました。股関節に原因があるとわかったのは割と最近で、調べると股関節付近にある痛みを発する神経は下へ続いているので、最初の痛みは股関節からではなくもっと下の膝や太腿に感じる場合があることがわかりました。なので、原因不明で足や膝が痛いと思っている人の多くには実は股関節に異常ありというケースがあるということです。

股関節の痛み―変形性股関節症の治療がよくわかる (別冊NHKきょうの健康)
総監修杉山肇(神奈川リハビリテーション病院部長)
発行日2012年3月25日第1刷発行 NHK出版 1048円+税

【表紙写真】
20120320_1.jpg【amazonの紹介文】
股関節の痛みの多くは変形性股関節症という病気が原因です。変形性股関節症は50歳以上の女性に多く、進行する前に医療機関を受診し、生活改善や運動、手術といった治療の選択肢を狭めないことが重要です。イラストを多用し、変形性股関節症について見やすく詳しく解説された、ほかにはない一冊です。

【目次】
PART1 なぜ股関節が痛むのか(東京医科歯科大学講師神野哲也)
PART2 変形性股関節症とはどんな病気か(横浜市立大学准教授稲葉裕)
PART3 医療機関を受診しよう(金沢大学付属病院准教授加畑多文)
PART4 痛みを取り、進行を抑える保存療法(神奈川リハビリテーション病院理学療法士辻融枝、福島県立医科大学准教授青田恵郎ほか)
PART5 痛みの原因を取り除く手術療法(九州大学大学院准教授中島康晴、大阪大学大学院准教授西村孝ほか)

図解と写真を多用していて素人にもわかりやすく書かれています。後半のストレッチ法の解説がやたらと多いのがちょっと気になるところですが。

それで概要が少しわかったら、その後どうすればいいの?という問いに対しては、

 (1)まずは自己診断しないで病院へ行って診療を受けましょう
 (2)痛みをやわらげたり筋力をつけるために軽いストレッチをおこないましょう

ということかな。

【中身写真】
20120320_2.jpgこういう家庭の医学で不満なのは、どこの病院(または医者)へかかるとちゃんとした診察が受けられるか?ということが、意図的に一切書かれないことです。具体的な病院名や医師でなくても、こういう専門科のある病院とか、こういう先端医療機器を備えているところとかだけでもいいので教えてくれると参考にできるんですけどね。

私の場合で恐縮ですが、リウマチ科のある内科や整形外科、健康診断時の老医師、その後は民間療法のカイロへ行きましたが、その都度症状を伝え、血液検査(内科)、レントゲン(整形外科)などおこないましたが、そのいずれでも股関節に原因がありそうだとは指摘されませんでした。まったくこの世はヤブ医者ばかりです。

いまは日本医師会の方針で、まずは腕がよかろうと悪かろうと自宅に近い診療所や個人病院へかかり、そこで手に負えなければ大病院へ紹介するというルールが決められていて、著者も医者でありたいならそれに逆らうことができません。

また一方では「立派な本を書いてる人がいる病院や、有名人が推薦する病院ならきっと診察は正確で手術も信頼できる」と誤解を与えてしまうことを防止する意味もあるかもしれません。特にテレビのバラエティ番組によく出てくるような医者って本業に身が入ってなくて信用がおけません。お金がすべての医者なんでしょう。

一番いいのは、同じような症状で診察や手術を受けた人の話しをたくさん聞いて、その中から信頼のおけそうな病院や医師を選ぶことです。ただネット上の口コミは、同じ病院でもいいという評判もあれば悪いという評価も混在し、あまり信用ができません。その精度と信頼性が上がっていけばすごく便利に使えそうですが、逆にそれを利用して儲けようとする「ネット口コミ業者」も出てくるでしょうから痛し痒しってとこです。

さらに実際は通院ができるかどうか場所の問題や、大病院の場合には医師を指名することはできないので、評判のいい医師がいる病院だからと言って、主治医にその先生が当たるかどうかは運次第という面があります。

そういうことを考えると、一般庶民はまずは近所の病院へいって、そこから紹介をしてもらって大病院へいく流れしかやっぱり方法はないのかも知れません。

※2016年人工股関節置換手術をおこないました

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)初診編
変形性股関節症の人工股関節全置換手術(2)手術前検査編
変形性股関節症の人工股関節全置換手術(3)入院手術編
変形性股関節症の人工股関節全置換手術(4)リハビリ、退院編


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