リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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ふと思ったのですが、学生時代に飲食店や販売店でアルバイトを始めると、まず教わるのが「元気な挨拶」と「丁寧な言葉遣い」ではないかと思います。
この経験は最近はあまり流行らないのかもしれませんが、学生時代にとても重要なことではないでしょうか。あるいは体育会系の運動クラブに入ると、先輩から徹底して挨拶や先輩に対するマナーを叩き込まれますがそれも同様です。
私の場合は学生時代の最初の1年半は体育会系クラブで活動、その後はアルバイトに明け暮れる毎日を送っていましたが、学生時代のアルバイトと言えば、中には喋らず黙々とするような仕事もありますが、比較的多いのはお客さん相手の仕事です。
私の経験で言えばマクドナルド(厨房)、自動車部品(配達&営業)、出版(広告取り)、書店の出張教科書販売、竹材販売店が飲食または客相手の仕事で、土木工事、観光ホテル部屋掃除、漬け物仕込みは黙々とおこなう仕事でした。
客商売の基本は元気な挨拶、ハキハキとした会話、清潔な身だしなみ、客に対しての敬意です。また客商売でない仕事でも、目上の社会人である従業員とかわす挨拶や会話は、学生同士間のそれとは違って、教えられることがいっぱいあります。
ちなみに竹材店の仕事では葬儀屋や葬儀場への竹細工の納入が多かったので、元気いっぱいに挨拶というわけにはいきませんでしたが。
いずれにしても卒業して社会に出る前に、そのようなアルバイトや上下に厳しいクラブを経験していると、当然のこととして「挨拶はハッキリと元気よく」「人の話しをちゃんと相手の目を見て聞く」「目上の人や客に対しては敬意を持つ」ことが身体に染みつくことになります。
社会人になっても「挨拶がちゃんとできない」、「会話はボソボソとなにを言っているかよくわからない」、「すぐに人を見くだす」、「年長者や上長に対して敬意をいだかない」という人が最近特に多いように感じますが、たぶんそういう人は、若いときに正しい挨拶やマナーを身体で覚えるようなことをしていないのではないでしょうか。
例えば一人っ子で両親から「アルバイトなどしなくてもいい」と決めつけられていたり、よく知っている人ばかりでさして社会勉強にはならない「親の仕事(家業など)を手伝えばいい」と言われてきた人にそういう人が多そうな気がします。偏見かも知れませんが。
よくそうした挨拶もロクにできない人が社会人になれたものだと感心しますが、おそらくは社会人になるため、仕方なしに挨拶やマナーをマニュアル本で付け焼き刃で身に付け、会社に入ってしまえば、すぐ忘れてしまったのでしょう。
また工場勤務や一部の技術系職種などには、接客やコミュニケーションをほとんど必要としない仕事もありますので、入社の時にはそういうマナーを要求されなかったということかも知れません。
しかし円高と国内需要減少のダブルパンチで、今後ますます製造業やコミュニケーション(=日本語会話)を必要としない仕事は、海外へ出て行ってしまうことになります。
ということは、まともに社会人としてのコミュニケーションができないと、日本では働き場がなくなってしまうということでもあります。
そのような時代の趨勢を考えると、若いときに、見知らぬ相手に対して、大きな声で「いらっしゃいませ!」「こんにちは!」「おはようございます!」「ありがとうございました」とちゃんと発声ができ、物知りの社会人に対して尊敬の念を持って笑顔で接することができるかが、いかに重要なことかを強く感じるのです。
紀元前数千年前の遺跡に「最近の若い奴らはなってない」という意味の文字が書かれていたというのはホントかどうか調べてもわからないので確信はないですが有名な話しで、古代ギリシアの哲学者プラトンも「国家」の中で「最近の若者は楽なほうへいき、年長者の言うことを聞かない」と書いているとか(これも未確認)で、私もそういうことをやたらとぼやきたくなる年齢になったということなのでしょう。
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先日朝日新聞の記事にもなっていましたが、いま、小中高校教員の高齢化がかなり進んでいて様々な懸念がでてきているようです。学校教員というと、一見すると経験豊富で、信頼のおけるベテランが良さそうにも思えますが、必ずしもそうとも言えません。
例えば、教員も20代、30代、40代とそれぞれに世代による感性や、教育に対する想い、それぞれの教育制度で育ってきた環境の違い、それに子供の視線に立って接することができるかなども当然違ってきます。特に小中高生ならば、両親や祖父母みたいな人でなく、もっと年齢の近い兄貴や先輩といった教員のほうがずっと相談もしやすいでしょう。
またその他にも教員の高齢化で一番心配されているのが、体力的な面で、元気盛りの小中高校生と一緒になって遊んだり、課外活動をおこなうことが難しくなり、そうなると当然子供と先生の距離は遠ざかる一方となってしまいます。
なぜこのような教員の高齢化が顕著になってきたかと言うと、ひとつには1970年代生まれの団塊ジュニア達の受け入れにあたり、1980年前後に大量に教員を増やしていったことに起因すると言われています。その1980年前後に22~3歳で大量に奉職した教員が2011年現在50歳代になってきているわけです。
文部科学省平成22年度学校教員統計調査より
また教員の世界というのは、他の民間企業とは大きく違い、異業種への転職や子会社への出向、個人事業の開業、結婚退職などの自然減はほとんどありません。
さらに私立を除き多くは公務員ですから、例え仕事ができなくても不向きとわかってもリストラはなく、女性の場合、これは企業も見習うべき素晴らしいことなのですが、結婚・出産したあと、元の職場に復帰することは、一般の企業と比べるとはるかに容易です。
文部科学省平成22年度学校教員統計調査より
教員の数と言うのは本来なら出生数と深く関わってくるべきものですが、団塊ジュニアのような突出した数年間のために、日教組の言いなりで数を一気に増やし、その後、生徒数は年々減少していくのがわかっていながら、なにも手を打たず雇い続けてきたというツケが回ってきたと言うことです。
そのツケは、覇気のない自分の祖父母に近い年齢の教師ばかりに指導される子供達と、そのせいで非常に狭き門となる教員への就職を目指す若い人達が払うことになります。
中高年教員が多いということで、上記に書いた懸念以外に、若手の教員が採用されない、数少ない若手教員が次の世代の教員を見守り育てることができない、職員室の中は中高年の教員が多数を占め若手教員の意見や主張が通らない、力仕事や体力が必要な仕事(体育系の授業や部活顧問)は少ない若手教師に押しつけられ掛け持ちで担当せざるを得ないなどと、この問題は意外と根深そうです。
特に情熱をもって教員になった新任教員も、すべてを知りつくし、やる気も熱意もなく、あとはただ定年まで何事もなく過ごしたい高齢教員が何事にも大きな抵抗となり、つぶされていくというのが実態ではないでしょうか。
IT先進国では主流になりつつある電子教科書も日本で一向に進まないのは、そういう新しいものに抵抗感を持つ高齢教員が障害になっているでしょう。
大多数を占める彼らはあと数年で引退できるので、今さら新しいことなどやりたくないわけです。当然リーダーたる校長や教頭も、元々は高齢教員と同僚で同じ高齢者ですから、若手教員とベテラン教員の意見が対立した場合、どちらに荷担するかはあきらかです。
日本の未来を築いていく上で、子供達の教育はとても重要です。これに反対する人はいないでしょう。
しかし、ゆとり教育やレジャー化する高等教育など多くの失敗を繰り返し、若手教員の質が落ちてきたと言われる中、できるだけ早く、10年20年先を見た教育制度を作っていくために、誰かが日教組や高齢の教員達に鈴をつける役目を果たさなければ、未来は暗いとしか思えません。
10年待てばその突出した高齢教員の多くが次々リタイアしていくと思われますが、65歳までの定年延長などもあり、それをいつまでも待っていられません。
そこでいくつか提言です。
例えば、55歳になれば、教頭か校長(企業で言うと執行役員か取締役以上)になれなかった人は、退職して他(塾とか予備校とか)へいってもらうか、残るなら契約の補助教員として週3~4日程度のパート勤務(給料カット)に就くかを選択してもらうという手が考えられます。
補助教員の場合、兼職も可能で、例えば特別補修などを有償でおこなうなど、下がった給料の補填もアイデアをみんなで出しておこないます。
校長や教頭も単なる太鼓持ちや要領の良さだけで長く居続けられても困るので、毎年保護者からの信任投票をもらうこととし、それが評価となり、評価の悪い校長や教頭はクビか、または教員へ降格してもらう(55歳以下の場合)とします。
そうすることで、教員も教頭も校長もみんな緊張感をもった仕事をすることになり、競争原理も働くというものです。民間企業ならどこも当然おこなっていることです。
そして高齢教員のカットした分で、若手の教員を増員すると同時に、教育の中に新しい風を吹き込むため、社会経験のある中高年者や外国人を同じ補助教員として採用し、ビジネス経験がない教員に交じって、現実社会の仕組みや、効率や利益を求めるビジネス的発想、人にうまく伝えるプレゼンテーション、そして正しい発音の外国語などを子供達に教えていくことがすごく重要だと思います。
ちなみに外国語はなにも英語ばかりではありません。今日本のビジネス社会で最も求められる外国語は中国語ですし、将来的にはベトナム語やインドネシア語、アラビア語というのも重要になってくるでしょう。
中学生が数カ国語で挨拶や簡単な道案内ができる程度でいいので喋れたら、その子の将来にとってどれほど有意義なこととなるでしょうか。
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八月十五日の開戦 (角川文庫) 池上司
太平洋戦争(大東亜戦争)までは、樺太の半分、千島列島の全部は日本の領土として国際的に認められていたことを知る人も少なくなっているでしょう。また戦争末期には、アメリカ、英国、中国などと講和するため、日本と中立条約を結んでいたソ連に仲介を依頼していたわけですが、そのソ連はというと、それには応ぜず、逆に終戦間際になって一方的に条約を破棄し、それまで日本が攻め込んでいた満州や、領土としていた千島列島へ武力を用いて攻め込んできました。
この本では、ポツダム宣言受諾で放心状態にあり混乱していた大本営は頼りにならず、今までは米国のアリューシャン諸島から攻撃される可能性のあった千島列島や樺太、北海道の守備隊が、終戦後にも関わらず、ソ連の暴挙とも言える侵攻を食い止めるべく孤軍奮闘する姿がフィクションを交えドキュメンタリー風に描かれています。
ドイツ機甲師団を打ち破り圧倒的に強力なソ連軍と、食料も武器も兵員も乏しく、先には手を出せない降伏後の守備隊ですが、その防人となったのは、国民から各戦場で日本が負けたことを隠すため、撤退したあと、辺境の地に追いやられていたノモンハンやビルマ、ミッドウェイ、ガダルカナルなどの生き残り達です。
本来なら8月15日をもって任務は解かれ、本土へ帰還できるはずでしたが、このソ連参戦のため、北海道までを一気に占領される可能性があり、それを食い止めるため、死を覚悟して今まで以上に厳しい戦いをせざるを得なかった千島の守備隊の苦悩がよくわかります。
しかしそのような一度地獄を見てきた強者が揃っていたことが幸いし、千島列島を足がかりにして、一気に北海道に上陸するつもりだったソ連軍を、カムチャッカ半島からほど近い千島列島の最初の島「占守島」に釘付けにします。結局この終戦後の戦闘で戦死したのは、詳細な記録はないものの、日本側600名、ソ連側3000名にのぼったとされています。
小説では、その終戦後の数日間、ソ連軍を北海道の手前で食い止めている間に、連合国の責任者マッカーサーに密使を送り、ユダヤ人虐殺をアメリカ政府が荷担したという証拠を持ち出して、それとひき替えにソ連の攻撃をやめさせるべく提案します。
ほとんど語られることのないこの終戦後のつらくはかない戦闘ですが、昨年、浅田次郎氏が「終わらざる夏」でも描いています。まだ読んでいないので中身は知りませんが、超人気作家の小説ですから、今年上映される「日輪の遺産」と同様、おそらくこれもいずれは映画化されることになるのでしょう。
◇著者別読書感想(池上司)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
犯罪小説家 (双葉文庫) 雫井脩介
先日読んだ「つばさものがたり」や「犯人に告ぐ 」などの作品で人気沸騰中の作家さんの2008年に出版された作品です。
作家とその映画化に向けた世界を書いていますので、著者としては勝手知ったる自分の庭での物語なので、一瞬手抜きか?と思いましたが、それなりに面白く構成されていると思いました。この作品も映画化(映像化)を視野に入れているなという気もしますが、たぶん数年のうちにはきっと実現するのでしょう。
内容は、ミステリーの賞に輝いた小説家が主人公で、その原作を元にして映画化の話しが持ち上がります。そしてその脚本、監督、主演を人気絶頂の脚本家でもありマルチタレントの男に依頼することが決まりますが、その男がなにかと主人公の作家にまとわりついてきます。
小説の内容とはまったく関係がないと思われた、集団自殺サイトを運営していた美人管理人の美しい自殺と、この賞を取った小説の裏に隠された内容に、ただひとりだけ気がつき、残されたサイト運営幹部の謎と行方を追いかけ、最後のクライマックスまでドキドキさせられることになります。
やたらとその自殺サイトの話しや、そこで交わされた書き込みが克明に出てきますので、ちょっと薄気味悪く、全体が暗いトーンになってしまっているのは気になりますが、現代の暗部をうまく取り込んでいるとも言えます。ただ本当に自殺願望のある人は読まない方がいいでしょう。
◇著者別読書感想(雫井脩介)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
プリズム (創元推理文庫) 貫井徳郎
1993年に「慟哭」で衝撃的なデビューを果たした貫井徳郎氏の、1999年に書かれた小説です。「慟哭」はずっと以前に読みましたが、とても新人作家とは思えない、その内容と構成に驚かされました。その後は「悪党たちは千里を走る」など何冊か読みましたが、どれもよく練り上げられた内容で面白く読みました。
この小説はではミステリー小説としては日本で珍しい新しい試みがされています。そのネタばらしはさすがにできませんが、ちょっと意味合いは違うものの、私は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い浮かべました。
直前に読んだ雫井脩介氏の「犯罪小説家」は直球のミステリー小説ですが、それともなにか通ずるものがあり、続けて読むのは混乱を招きちょっとよくなかったかなぁとちと反省も。
タイトルのプリズムとはいきなり死んで登場する女性ヒロインが、様々な見る角度によって妖しい光を発していることを指しているのだろうと思いますが、私にはその死んだ女性の周辺にいた人達が、様々な角度で死因や犯人を考察していくことを指してプリズムというタイトルなのかなと感じました。
あらすじは、美しい独身の小学校女性教員が、ある日自分の部屋で亡くなっていて、それが事故なのか、他殺なのか不明で、容疑者と考えられる人は何人もいるけれど、いずれも決定的な証拠はなく、教え子の小学生、女性教員の同僚、死んだ女性の元恋人、そして不倫相手などその周辺の人達が、それぞれに疑われながらも自分で推理をしていくというものです。
◇著者別読書感想(貫井徳郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫) 鯨 統一郎
著者は変わった名前(ペンネーム)だな思ったらしっかり覆面作家とのことです(wikiより)。先般読んだ2002年デビューの坂木司氏もそうでしたが、2000年前後は覆面にすることでなにかメリットがあったのでしょうかね?
実名でアピールし、サイン会、講演会、テレビコメンテーターなど幅広く商機を拡げていくほうが、売り出し中の作家としては望ましいのではと思うのですが。
ま、芸者作家、茶坊主作家、太鼓持ち作家にはなりたかねぇとお高くとまるのもひとつの見識ではありますが。
今回の本のタイトルにも使われている「邪馬台国」を扱った小説は数々ありますが、私は高木彬光氏の「邪馬台国の秘密」ぐらいしか読んでなく、テーマ的にはあまり関心はなかったのですが、今から40年近く前に書かれた「邪馬台国の秘密」以降にも新しい発見や新説が登場していますので、最近ではどのような説が一般的になっているのか、知っておくのもいいかなという軽い気持ちで読み始めました。
ちなみに近所の大型書店では「ここまでわかった!邪馬台国」が平積みされていて、これも近いうちに読んでみたいなと思っていますが、これは全国にある邪馬台国の候補地の紹介みたいな感じで、小説としての謎解きの面白さは当然ありません。
そんな、なにも先入観なく読み始めましたが、この文庫はタイトル名にもなった「邪馬台国の謎解き」だけでなく、下記のように、現在の常識や謎を、新宿にあるバーの常連さんのひとりが解き明かし覆していくという短編でした。
その概略は、
・聖徳太子は実在しなかった
・お釈迦様は悟りをひらかなかった
・邪馬台国は東北にあった
・明智光秀は謀反人ではなかった
・倒幕の黒幕は幕府側の勝海舟?
などです。
ちょっと考察に甘いところがあるんじゃないのか?都合のいい部分だけ抜き出して解釈してないか?と思うところもありますが、しかし現在の通説や常識を、軽いノリで次々と覆していくスリリングで無駄のないテンポの良さは読んでいてもスッキリします。
これらの元ネタは文庫の後書きにありますが、著者自身の発想ではなく、ある別人の解釈を元にして、著者が小説化したものです。
そういうことをちゃんと明示しているところは、論文や小説などで盗作疑惑や著作権問題がこじれることが多い中で誠実さを感じます。
本書の中に出てくる解釈では、「日本書紀はいくつか流れのある天皇家の中でも勝ち組の一派が書かせたものなので、負け組のことについての記述は曖昧で信用がおけない(聖徳太子の実在しない)」とか、また地図上の方角について、目の前に方角の誰でもわかる太陽がありながら「当時の公文書に北と南を間違えて記載をする(邪馬台国は東北にあった)」というのは、にわかには信じがたいように思います。
本来なら短編のそれぞれの項目が、大きなテーマでもあり、そのテーマだけで上・中・下巻の長編小説になりそうですが、それを短編としてサクッとまとめてしまうところがなんともこころ憎いなと思います。
せっかくですから、当然予想されるそれぞれの反論や通説の根拠となっている様々な証拠に対して、また今回、通説を覆した推察に対する反論も加え、もっと深く掘り下げた小説にしてみてはどうでしょう。
高木彬光氏の「成吉思汗の秘密」では「義経は成吉思汗ではない」という論拠からスタートさせ、最終的にはその論拠をことごとくつぶしていくというストーリーでしたが、歴史物はそうやって見ていくと説得力が増すように思います。
ちょうど、いまは歴史に興味を持つ若い女性(歴女)と、仕事を辞め暇を持てあまして歴史書を読みふけり遺跡の見学に大挙押しかけている団塊世代がいますので、この歴史ブームをうまくつかむことができれば、このようなテーマは大ヒットすると思います。
ま、いずれにしても、この推理小説は軽くできていますので、満員の通勤電車の中で集中して読むのには、最適な小説でした。
◇著者別読書感想(鯨統一郎)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「若者はかわいそう」論のウソ (扶桑社新書) 海老原嗣生
新書ほど中身に当たり外れの多い出版物はないという持論ですが、数年前からの新書ブームでタイトルに過激な表現を使うことが当たり前になってきています。
私の場合、数多く読みたいので、新刊書を単行本で買うことはあまりなく、単行本の中から評判のよかったものだけが文庫化されるのを待ち、さらにその中から読みたいものを選んで購入していますから、そう大きな当たり外れはありません。
しかし新書というのは、以前ならロングセラーになる学術系だったり、ハウツーものがメインだったりしたのが、最近では誰でもお手軽に出版できて、それこそタイトルで勝負、一発屋狙いの「スポーツ新聞」的な軽くてどうも信用の置けない書籍となっています。
前置きが長くなりましたが、この『「若者はかわいそう」論のウソ』はタイトルは過激で、最初手に取ったときは心配だったのですが、読み始めて中身もそれなりにあり、なかなか面白く読むことができました。
著者は元リクルートで自分では人材雇用問題のエキスパートのように自慢されてますが、人材ビジネスの中心で20年以上関わってきた私からすればやや底の浅い、人材出版編集者兼ジャーナリストという感じがします。それがいいとか悪いと言っているのではありません、念のため。
で、この新書では、著者の好き嫌いがハッキリしていて、どうも好きではない人が書いたベストセラーに対し、意図的な誤魔化しや誤解を生じされる書き方などを徹底的に糾弾し、それに同調するマスメディアをも非難しています。このあたりの切れ味は、さすが元リクの元編集者と言えるでしょう。
さらに、今後日本の雇用はどうすればいいかという点についても持論を展開し、関連する有名人との対談を収録されていますが、その著者の考える今後の雇用対策の章については、残念ながらその意見に同調する人はあまりいないでしょうし、実現可能性は日本が中国に侵略され24番目の省になるより低そうなので、あまり参考にはなりません。
冗談で書いているならともかく、実現可能性がまったくない意味のないプランをいくつ出しても紙の無駄になるだけです。
それはともかく、前半部分は、久々に新書の中で面白いものに出会った爽快感があり、それだけでも読む価値は十分にあると思います。最近の新書では「国家の品格」や「デフレの正体」「偽善エコロジー」などは別格として、それらに次いで、読んでよかったと思えるものでした。
それにしても最近の新書という新書は、統計データを元にして「ハイ一丁上がり」とばかりに一冊にまとめる(同書はそれだけではありませんが)のが、最近やたらと流行しています。「統計は使い方によってどうにでもなる」という考え方を持つ私にとっては、今の新書ブームは単に胡散臭く思えて仕方がないのです。
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525
日本では有名なFacebookや、まだあまり有名ではないLinkedin(リンクトイン)、Google+などSNS(ソーシャルネットワークサービス)は、海外では転職する際のツールとしてよく使われています。
そのようなSNSは、登録する際には実名主義が特徴で、過去の経歴や特技なども一緒に書かれることが多いので、それを見た優秀な人を探すヘッドハンターや企業の採用担当者から、一度会ってみたいというアプローチがあり、興味があれば転職へ進むという流れです。積極的に自分を売り込み転職しキャリアと給料を上げていくという欧米的な発想では最適化もしれません。
日本ではと言うと、ブログやSNSの多くはまだ匿名にするのが主となっていて、一部の実名で書いている人は、よりよい条件の転職を考えているサラリーマン達ではなく、その多くは事業PRを兼ねた経営者であったり、半ば営業活動の一環としての個人事業者だったり、せいぜい比較的自由度の高い外資系IT企業の勤務者だったりします。最近ではIT系のベンチャー企業の社員が、実名を出すケースは増えてきています。
一般的に日本の社会では、表だって勤務先(キャリア)を含め、実名でブログを書くことは、勤務先から歓迎されることはなく(社名を出すのを原則禁止しているところもある)、もしその会社で長く働きたいのであれば、実名を公表するのは躊躇するでしょう。
つまり現在の日本においてそのようなSNSに「実名+勤務先名や過去のキャリア」を含めて書くということは、イコール「宣伝」か「転職」となかば公言しているようなものとされ、海外のように「私はこういう人となりだから、私の発言にはそれなりに信憑性があるのですよ」「こういう趣味や興味をもっているので同好の仲間と情報交換したい」という目的だとは思ってくれません。
それに今回の東電や花王の一件でわかるように、特定の企業に勤務していることがわかると、もしその企業になにかあったときには、自分が直接関係していなくても、ブログが炎上するのを覚悟しなければなりません。また自分の個人的な発言が、その勤務先の発言と勝手に解釈されてしまい炎上することもままあります。日本では欧米のように勤務先と個が完全に切り離されているのではなく、深くつながっているように見られてしまうことに原因があります。
一方では大学生が就職活動を行う際に、自分のFacebookを公開することで、他の大学生と差別化をし、就職に有利に運ぼうとする動きがあります。こちらは自己PRが目的なので、基本実名で公開します。しかし書き込んだ内容により、逆効果もあるわけで、誰もに勧められるものではないでしょう。
例えば学生時代に海外ボランティアをずっとやっていて、その模様だけを書いているのであれば特に問題はありませんが、ボランティアを通じて政治への不満や、外国人差別につながるような言動があると不適切でしょうし、他の学生との軽い会話で「興味があるのは食品業界」とか書いておきながら、IT企業を受けに行ったら、例えそれを書いたのが1年以上前であっても「節操ない人」「本心は食品でITは滑り止め?」と人事の人には思われてしまうでしょう。
例え本人にしてみれば大人びた立派な主張をしていると思っても、そのSNSやブログに政治、宗教などの個人の信条や他人、企業、国、政府などへの強烈な批判や皮肉、過去や現在勤務している会社の仕事内容、就職活動の様子などが書かれているなら、普通の就職・転職活動に有利とは思えませんし、逆効果だと思います。
特に日本の企業の採用担当者は想像を遙かに超える極めて保守的です。経営者がいくら「当社はベンチャー企業なので、学歴や経験は問わず、既定の枠に収まらない個性的で元気あふれる人が欲しい」と言っても、先に人事担当者が「学歴や経験は問わず、既定の枠に収まらない個性的な人」は書類審査で先に弾いてしまいます。SNSを使って採用をおこなっているという会社もありますが、それは多くの場合は、経費節減と話題作りであって、本来の採用の主流ではないでしょう。
そのようなSNSを活用して転職がスムーズにいくのは「外資系などのプロの雇われ経営者」、「書籍を複数出版しある程度公に著名な人」、「業界で有名なトップクラスの技術者」ぐらいなものです。そういう人なら、仕事のことや、個人の信条や、過去に起きた事例などを実名で書いても例外的に問題にはなりません。会社の組織を超える個を持っているからです。でもそれは極めて特殊な人達です。
あと、SNSを運営している会社に転職を希望しているなら、当然そういうものを使い倒していることがアピールポイントになります。ただこれもそこで書かれている内容があまりにも常軌を脱していたり、内容が過激で公開することができず「いえ、使っていません」と言えば、それだけで怪しまれてアウトになりそうですから難しいですね。
SNSにおいて実名か匿名かの論争があちこちで起きていますが、日本においては双方に意見はすれ違い、かみ合いません。要は「一般的に日本では実名で書くと損をすることが多いので、匿名が主になっている」のだと思います。逆に欧米のように「実名で書く方が得である」となれば、日本でもこぞってSNSやブログは実名に変わっていくのではないでしょうか。
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あくまで私の勝手な想像で、たいした根拠も実現する可能性もありませんが、ぼろくそに言われながら、どうせここまで引っ張ってきたのですから、後世に「あれは見事な作戦だった」と言わしめる、起死回生策をうってみてはどうでしょうかね。(おふざけ9割です)
まず通例のこととして、首相が交代するとしばらくは期待感を込めて内閣支持率が大きく上がります。同時にその内閣の元になっている政党の支持率も一般的には引きずられて上がることになります。過去8人の新首相が作った最初の内閣支持率は平均すると57%で、首相交代直前の内閣支持率平均は25%と1/2以下に落ち込みます。
さらに、前の首相に人気がないとか、不祥事や責任を取って辞めるときは、支持率は大きく下がりますが、新しい首相=新内閣にかわった途端、支持率は元へ戻ります。そして内閣末期の落ち込んだ支持率が低ければ低いほど、新しい内閣の支持率はより大きな反動(揺れ戻し)で高くなる傾向にあります。
現状の国民に不人気な菅内閣のままで解散総選挙をおこなえば、民主党は大敗することが見えていますのでそれはありえません。また首相のクビをすげ替えて、今後衆議院の任期まで継続したところで、一部は大震災の影響もありますが、最初の公約をことごとく撤回してきた状況の中で、そのうち国民も忘れてまた支持率が好転するかもと期待するのはあまりにも楽観的すぎです。
一方野党ですが、これもまたなにも代わり映えせず、本当に期待できるのか?という疑念も湧きます。しかしもし民主党がこのまま淡々と1年以上解散せずにやり過ごしていけば、さすがに野党も次の選挙に向けて大きく組織改革を進めていくことが可能です。その選挙準備は原発や予算や震災復興に追われる与党民主党より、ずっと精緻におこなえるでしょう。
そこで、民主党の起死回生案です。
解散はおこなわないとくり返し言ってきた菅総理は、どうにか退任条件としていた3法案を通すことができ、8月下旬、遅くとも9月には勇退が決まるでしょう。それから民主党で代表選がおこなわれ、遅くとも10月には次の総理大臣が決まります。それが野田佳彦氏でも前原誠司氏でも馬淵澄夫氏でも川端達夫氏でも小沢鋭仁氏でもその他の人でもたいした違いはありません。
そして、新内閣がスタートしてからまもなく民主党として譲れない法案(東電破綻処理でも郵政法案でも議員大幅削減でもなんでも構わない)を野党に突きつけます。当然また野党は反対の大合唱でしょう。すでに民主党は重要な法案や予算を通すために、民主党のマニフェストの大部分を撤回または凍結して追い詰められていますから、野党もここぞとばかりに攻めてきます。
特に脱原発を強力に進める法案は、元々原発推進派の多いというか自民党の7割の議員が東電OB含む企業、団体からの原発マネーを受けているので、送発電事業分離や全量買い取りを含む新エネルギー関連法案もそう簡単には通してくれません。法案を通してくれないのなら、最後の手段として大義名分はできちゃいます。
そこで新首相に変わってまだ1カ月以内のまだ内閣支持率が高いであろう11月に「脱原発・議員大幅削減解散」を抜き打ちでおこないます。菅さんは解散はやらないと言ってましたが新首相は言ってません。11月中旬解散で12月初旬に投開票か、遅くとも1月松の内解散です。これは野党が組織だって選挙の準備ができない抜き打ちでないと勝ち目はありません。
解散の大義名分は「ねじれ現象で法案制定が進まず、原発事故で苦しむ国民の救済と今後のエネルギー政策」と「(国民は誰も反対しないであろう)衆参国会議員の大幅削減をおこない将来の増税前にまずは身を削る覚悟」とし、「民主党は脱原発、それに異を唱える候補は原発推進派」「議員削減は民主党しかできない、自公時代は増やす一方」を大きくアピールをするのです。そうアノ時の「郵政解散」と同じようにです。
総合的な政策論争にしてしまうと、子供手当の失敗、高速道路無料化の失敗、普天間基地移転の失敗など、もはや旧自民党政権の尻ぬぐいばかりとは言ってられなくなりましたので、そういった部分は争点にはせず、とにかく「いま日本は世界をリードして脱原発、新エネルギー路線へと大きく舵を切ります」「そのためにまず身を削ります」とそれだけを強調していくのです。
もっと言えば新首相の街頭演説では「私の考えに反対する人は例え民主党内でも原発推進派、議員の削減反対派と見なす」ぐらいのことを強弁に言い続けます。それが国民には頼もしいリーダーシップと思われるでしょう。同時に当面選挙がない参議院においても脱原発派と擁護派に分ける工作をおこない、ねじれを解消するために民主党同調者を増やしていく努力をしなければなりません。
多くの国民にとって、原発事故問題がいま健康に生きていく上では一番重要な問題となっています。増税や年金の問題は、例え自民党でもその他の野党でも、格別な名案があるわけでなく、もはやどうすることもできないところまできていますので、それらについてはどこが政権与党をとっても政策に大きな違いはありません。
違うのは原発の今後と新エネルギー策と議員定数大幅削減ですから、そこだけに集中し、抜き打ちなので、敵がもたついているあいだに、先に世論を味方につけてしまえば、前回ほどの圧勝はないでしょうが、何もしないでただ敗北を待つよりはいいのではないかと思います。ま、そんなうまくいくわけはありませんし、もとより参議院でねじれているのが最悪ですね。
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