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久しく最近の雇用状況の話しを書いていなかったので、集中して書いてみます。

まずは国の発表する統計数値からです。

月別の完全失業率の過去推移グラフです。


90年代までのバブル景気から徐々に高まってきた失業率ですが、リーマンショックの影響で急激に上昇しますが、その後民主党政権に代わってからゆっくりと回復し、現在に至っています。あ、いや別に民主党政権だから下がったとは必ずしも言えませんが。

80年代頃に「経済は一流、政治は二流」とよく言われていましたが、日本の場合、「政治が経済を動かす」のではなく、「経済が政治を動かしている」と言っても過言ではありません。

つまり雇用情勢は、政治よりも経済の力が圧倒的に大きな役割を果たします。ただその頼みの経済も世界の中では二流以下に成り下がりつつあることは周知のことです。

失業率を男女別で見ると、以前は男性と女性で失業率に大きな差はありませんでしたが、2000年代以降は男女で差がはっきりと出てくるようになり、男性の失業率が高くなっています。

完全失業率は、わかりやすく言えば、職安で失業保険給付を受けている人と、すでに失業保険給付の期間は切れたけど、しつこく職安で仕事を探している人の数を足した数(求職者数)を、15歳以上の労働力人口(学生やリタイアした人を除く)で割った割合のことです。(職安での求職者÷15歳以上人口)

一応はこの国の発表は信頼が置けるものとされていますが、これしか統計に出てくる数値はないので、信用するしかありません。

しかし例えば、本来は正社員職に就きたくてもなかなか見つからず、仕方なく正社員の就職活動をあきらめてアルバイトやパートでしのいでいる人、職安に頼らず自力や民間紹介会社だけで仕事を探している人、また職安で求職者の登録をせず、いい仕事が見つかるまで家事手伝いや家業の手伝いをしている人などは、統計上では失業者とされませんが、それらの人の中には実質的な失業者も多く含まれるでしょう。

したがって完全失業率は、職安で求職している人が減れば自動的に下がることになり、例えば職安が「求職者を求職者でなくするキャンペーン」を全国的に展開すれば一気に下がっていくことにもなります。

どういうことかと言えば、本来は求職者が正社員志望であっても、失業者を減らすために非正規社員の仕事を強く勧めてそれに就かせたり、職安での求職活動をあきらめさせればいいのです。

そうした恣意的な操作が可能である統計数値だと言うことを承知した上で、こうした国の統計を眺めておくことは問題ありません。

次は、月別の有効求人倍率の推移です。



バブル景気以降、求人倍率が1.0を超える(求職者より求人数が多い)年は少ないですが、ようやく2014年になってパートを含む求人倍率は1.0を超えるようになってきました。

有効求人倍率は、職安に送られてくる求人数を職安で求職をする人の数で割ったもので、求人数と求職数が同じであれば1.0、求人数が2倍あれば2.0となります。1.0を下回れば、求職者1名に対して求人が1件以下ということで就職が厳しくなります。

しかしよく考えてみると、完全失業率と同様、この時代に職安だけで就職活動をする人が全体の何割ぐらいいるのかと言うとはなはだ疑問が残ります。

失業保険を受給するためには職安を通して求職活動をしなければなりませんが、それ以外の人はなにも職安で無駄な時間と労力をかけずに、他の就職活動をおこなっているでしょう。

また求人をする企業も、無料だからといって、あてにできない職安へ求人を出すより、電話一本で営業マンが飛んでやってきて採用決定率もいい民間の就職情報サイトや求人誌、新聞折込などを使うのではないでしょうか。

しかしそうした人の求人数や求職数は、国の統計では反映されませんので、どこまでが実態を現しているかは不明な点が多くあります。

それに職安へ集まる求人の内容は、求人広告や紹介事業会社の案件と比べると大きな違いがあり、例えばフルコミッションのような仕事だったり、賃金が最低賃金並に低い上に、休日や夜間勤務もある仕事だったり、特殊技能や経験が必要だったりと、無料だからとりあえず載せておけ的な求人が多く、いくら求人数があっても、本当にこれで応募者がいるの?って思うようなものが数多く含まれています。

雇用統計データの基礎データはそうした実態とは少しずれた大雑把なものですが、労働力人口や就業者数のデータは、国勢調査などの人口統計と労働保険加入者のこともあり、割と正確なものが取れているはずです。

15歳以上人口、20~65歳人口、65歳以上人口の推移



一般的には日本の人口減少は2005年から始まっていると言われますが、実質的に労働力となる20~65歳の人口は1999年から減少に転じています。

国が定めている労働力人口とは15歳以上で上限はなく、働いて収入を得ている人すべてとなります(実際は各年齢人口に労働参加率を掛け合わせて計算)ので、20歳以下の未成年者や65歳以上の高齢者も、条件が該当すれば労働力人口に加わることになります。

実質的な労働力が減少し始めて15年が経過するのに、まだ日本の労働力がそれほど逼迫していないのは、景気低迷による企業の採用低下や、開発・生産拠点等の海外移転による製造業労働者数の減少や配置転換、それと今まで働いていなかった、例えば専業主婦や家事手伝い、定年後の高齢者という人が働きに出るようになったりして、労働者不足に陥っていないことが理由と考えられます。

しかしニュースなどでも伝えているように、一部の業種、例えば建築関連、介護関連、販売や飲食のサービス関連ではすでに人不足は深刻となってきています。

これらは言うまでもなく、東日本大震災の復興事業や、東京オリンピック関連、高齢者住宅リフォーム需要などの建設建築需要の急速な高まり、高齢者の増加による医療・介護需要の増加、仕事が厳しい割に低賃金だったり、自分のキャリアパスにはならない単純作業のサービス業などの人員不足が顕著になってきているからです。

また不足している職種の多くは高齢者ではなかなか勤まらない体力や筋力、スピード(軽いフットワーク)が必要とされるものが多いですね。

国や学識経験者は、労働力不足を補うために、外国人労働者の活用や、女性の参画推進など、様々な手を考えていますが、長期的に見た場合、内需はますます縮小していき、しかもテクノロジーの発達により労働力の削減、業務効率のアップが進んでいくわけで、あまりそこのところにお金やリスクをかけなくてもいいのかなぁって思います。

もし雇用でお金をかけるのならば、付け焼き刃的なものではなく、世界トップクラスの日本の技術をさらに進めていくための国立共同研究機関の設立、世界から最高の頭脳を集めた最先端医療・バイオ研究機関、医療・介護ロボット開発投資、あとは東京一極集中を解消するため、国の行政機関や政府機関の地方移転促進などにより、新たな雇用促進と、地方インフラの有効活用、海外から頭脳と資産の移転を計ったほうがいいのではないかと考えます。


【関連リンク】
807 労働人口と非労働人口推移と完全失業率
707 ハローワークは非正規職員のおかげで回っている
705 有効求人倍率と完全失業率から推測する未来
577 ハローワークを頼りにしていいのか?
498 失業率推移ではなく失業者数推移でみると



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862
現在の日本の最低賃金は、最低賃金法により、地域別(都道府県単位)と特定の産業別で定められています。

平成26年度地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

その中から地域別最低賃金の低いところと高いところだけを抜き出してみました。



四国や沖縄、九州、東北は全体的に低く、大都市圏は高いというのがよくわかります。特に東京、神奈川が抜きんでて高くなっているのが特徴的です。また同じ東北でも震災需要が高いと思われる太平洋側の地域のほうがやや高めとなっています。全国の加重平均は764円(2013年度)です。

さらに都道府県ごとに一部の業種(鉄工業、小売業等)で別途最低賃金が定められていますが、面白いことに、地域別最低賃金が低い地域ではその特定産業の最低賃金は高く設定されていて、逆に東京など地域別最低賃金の高いところでは、特定産業の最低賃金は低く設定されています。
(例)
沖縄 地域別最低賃金664円→新聞業768円、糖類製造業693円
東京 地域別最低賃金888円→出版業857円、各種商品小売業792円

この一部業種の別途定められている最低賃金については、なにか調べるといろいろと問題が出てきそうな気がします。つまりその地域で特定の業種について大企業のごり押しが強いとか、大物地方議員と特定業種との癒着があるとか。

最低賃金について、他の国ではどうなっているのでしょう?

最低賃金が法律等で定められている国もあればない国もあります。ドイツのように2015年から施行される国もありますが、先進国は概ねなにかしらの規制ができているようです。

平均賃金に対する最低賃金の割合(OECD2012年)では、各国とも共通の金額(例えばUSドル)で比較するのは、国によって物価も違い、毎日為替レートで変動しますので比較しにくく、それぞれの国の平均賃金に対する最低賃金の割合で比較しています。



日本は世界平均37.9%より低い33.3%(平均賃金に対する最低賃金の割合)です。アメリカはもっと低く27.2%というのは意外ですが、考えてみると移民国家アメリカでは英語が話せない人も多く、都市部から遠く離れた広大な農場や牧場で、単なる肉体労働だけを提供する労働者も多いのでそういうことになるのかなと推測します。

ちなみに、2014年9月の為替レートで比べると、フランスの最低賃金は9.43ユーロ(約1305円)、英国は6.31ポンド(約1095円)、ドイツは8.5ユーロ※(1176円)、カナダは10カナダドル(975円)、オーストラリアは15.96AUドル(1560円)という水準です。ヨーロッパやオセアニアでは金額ベースで見ても日本(764円)よりはずっと高かそうです。
※ドイツは2015年から適用

また上記には出てこない、スイスやスウェーデン、フィンランド、シンガポールなど、最低賃金の定めがない国もあります。

で、国内の話しに戻り、この最低賃金を「上げよう」、「いやそのままでいい」という両論があり、それぞれに主張が入り乱れています。

最低賃金を「上げよう」とする根拠は、「正社員労働者との賃金格差を縮める」「低賃金では生活保護支給額との逆転現象、またはその差が少なく、労働意志をなくす(低賃金で働くより生活保護で暮らすほうが得)」「多く給料を支払えば、それだけ可処分所得が増えて景気を押し上げる」などがあり、逆に「上げるのは反対」という人の主張は、「最低賃金が上がれば企業は人を雇わなくなり失業率が上がる」「企業の人件費負担が大きくなると商品やサービス価格に跳ね返り物価が上がる」「コスト上昇で生産品の国際競争力が失われる」など。

ま、学者さんならば、難しい理論をかざして、そのどちらかの主張をする人がいるでしょう。

でも実際にはどうなのよ?

実は世界中でこれという回答も事例も見つかっていないようで、それは導入する時期や、国によって失業率も違えば経済状況も常に変化するので、こうすればこうなるという定性的な解答は出ないのです。

つまり、失業率や有効求人倍率など雇用状況は、その時々の経済状況、先の見通し、優遇税制、移民政策、人口構成など様々な要因で変わってきますので、それらの状況が複雑に絡み合ってくるからです。

景気の問題にしても、経済が調子いいから雇用が増え賃金もアップなのか、雇用が増え、賃金がアップするからそれが消費や投資に回って経済が好転するのか、鶏が先か卵が先かという問題でもあります。

特に企業の正社員雇用政策は短期間ではなく何十年と先を見た長期間を視野に入れて採用をおこないます。それと基本的には短期間で雇う非正規雇用とは大きく違う点です。そして一般的に最低賃金に引っかかってくるのは一部の業種を除いて非正規雇用のケースが大半でしょう。

なので、最低賃金によって正社員の長期雇用政策がぶれるということは考えにくく、企業にとっては短期的な需給バランスの調整弁として使う非正規雇用のコストに影響すると言えるでしょう。

それならば、多少最低賃金を上げたからといって、企業の利益を圧迫するというほどの影響は受けないのではないか、もし大きく圧迫すると言うのならば、それは非正規社員の使い方を間違っているか、正社員と非正規社員(パートとか)の割合がおかしいのではないか?と考えられます。

外食や小売り(スーパーなど)では正社員比率が全体の10%以下という極端なところもありますが、そういう企業には恒常的に必要な労働者の多くを低額の非正規で雇うという考え方をあらためる必要があるのと、もし最低賃金を上げることで、正社員の賃金との逆転現象が起きるようならば、それは正社員の賃金が低すぎるとも言えるので、とっとと値上げでも経営者一族の特権を減らすか何でもして正当な最低賃金の水準にすることが求められるのではないかと、私は考えます。

人件費を抑えてライバル同士が低価格競争で消耗戦を繰り広げる不毛な経営手法はいずれ破綻するものです。国際的な水準よりも低い最低賃金に守られてどうにか経営が成り立つというのは経営者の甘えであり、怠慢です。

ただ最低賃金で除外すべきは、弱者といわれる高齢者や障害者の雇用を促進するためと、戦略的な特殊な職種に対しては、現在すでにあるように、各自治体で特別措置を作ればいいのではないでしょうか。


【関連リンク】
804 高齢就業者と非正規雇用
717 非正規から正規雇用への転換策
707 ハローワークは非正規職員のおかげで回っている
660 40~50歳代プチ高所得者がハマる罠
541 厳しさ続く非正規雇用



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830
最近よく新聞の折込チラシに入っているので、流行ってきているなと感じていた宅配弁当の話しですが、少し前にワタミの子会社で宅配弁当事業を運営しているワタミタクショクのアルバイトの話しが記事に出ていました。

その内容はというと、

主に高齢者の自宅に弁当を宅配するこの仕事は業務委託で、軒数による出来高制。1日約50軒を回り、週5日で月収は8万~10万円になる。(中略)雨の日も1日10kmを電動アシスト自転車で配達している。

常識的に考えると、自転車に50軒分を一度には積めそうもないので、何度も取りに戻るという手間と時間がかかりそうです。

また、上記と少し条件が異なりますが、ワタミタクショクの求人広告では「弁当のお届けスタッフ 完全出来高制 平日報酬例:1日30軒、月20日で95,000円」というのがありますので、配達地域(配達先が割と1箇所に固まっているとかいないとか)や配達形態(クルマorバイクor自転車など)によって条件等に差があるのかも知れません。

仮に記事に出ていた方の話しを元にすると、
月収90,000円÷50軒÷20日=1軒あたり90円の配達料と考えることができます。
求人広告通りだとすれば
月収95,000円÷30軒÷20日=1軒あたり158円の配達料になります。
結構大きな差ですが、どっちが現実なのかはわかりません。

ちょっと不審に思うのは、契約先の50軒に配達するにはどれだけの時間がかかるかは、契約先のほとんどがひとつの団地内に固まっている場合と、1軒1軒が遠く離れている場合とで大きく違ってくるでしょうけど、勝手に想像すると平均して10分に1軒配達できたとしても1時間に6軒、50軒分だとなんと8時間と少しかかってしまうことになります。

まさか夕食の弁当を夕食時から8時間も前(つまり午前中)に届けるわけにもいかないでしょうから、毎日50軒の配達っていうのは、前述のように1箇所に集中して固まっているところ以外はちょっと無理なような気がします。それも「自転車で」となっていますので、2~3回お弁当を取りに戻る時間を考えると、とても信じられない数字に思えます。

求人広告にあるように30軒の場合だと1軒の配達に仮に10分とすれば5時間(30÷6軒)で、まぁ、午後からの配達でもそれなりに終わらせることが可能です。

ただ、これも配達先がある程度固まっているところでないと、平均して10分に1軒回るのはかなりキツイのではと思います。

郵便やチラシのポスティングのようにポストに入れておくだけではなく、呼び鈴を鳴らし、高齢者がゆっくりと出てきてドアを開け、手渡すだけでも数分はかかりそうです。

ひとまずこれらを基準にして時給に換算してみると、
1軒90円×50軒=4500円日給 4500円÷8.3時間=542円ということになります。
求人広告の条件だと、
1軒158円×30軒=4,740円日給、配達に仮に5時間かかると仮定すれば時給は948円となります。
どうもこちらのほうがまだ現実的っぽいですね。

法で定められた東京都の最低賃金(平成25年度)は869円ですから、もし雇用関係にあれば、それより低いか同等の労賃に加えて車両経費の負担と事故や配達先不在による再配達など、その他のリスクを負うことになりかねません。これだけを見ると「やっちゃられねぇ!」というブラックな仕事に見えます。

この内容から「やっぱりワタミは真っ黒だ!」というステレオタイプな声がネットでは上がりましたが、確かに配達するための経費(自前のクルマや燃料代、保険料など)を考えると、決して主たる収入源としておこなう仕事ではなさそうです。

しかしちょっとしたアルバイトや、特に引退して年金生活の元気な高齢者には、考え方によってはそれほど悪い仕事でもなさそうな気がします。

一般的な宅配便の荷物を集荷場から各住宅まで運ぶ仕事も、上記ワタミタクショクと同様個人委託しているケースがありますが、調べてみると比較的都市部の郊外地域で、完全出来高制の場合、大きさや重量によっても差があるようですが、通常は1個100円~130円ぐらいが標準のようです。もちろん配達に使うクルマ、燃料代等はすべて個人持ちです。

宅配弁当と宅配便ではなにが違うかと言えば、上記のワタミの場合、基本的に宅配弁当は月契約ですから、毎日運ぶのは同じ家で、したがって配達するルートも決まっています。

また運ぶのは保冷剤を入れた発泡スチロール製の箱に入れたお弁当だけで、お弁当は各家にせいぜい1個か2個でしょうから、手持ちでの配達は片手でも持てる軽くて小さなものと考えられます。

一方の宅配便は毎日運ぶ場所は様々で、土地勘がないと1軒の家を探すのに時間を要したり(表札のない家、不在の家が最近は多い)、土地勘がないと順序よく配達ができないので、行ったり来たりして無駄な時間と労力がかかります。

そして一般的に宅配便の場合、運ぶものは書類のような軽くて小さなものもあれば、それこそ箱入りのミネラルウォーターのような重量物、家電製品やパソコンなど重いうえに大事に扱わなければならない精密機器というものまで様々あり、それらをエレベーターがない(あるいは保守点検中の)マンションの3~4階の部屋まで運ばなければならないことも当然あるでしょう。

多少は大きさや重量で配達料金にも差が付けられ、運送業者も多少は配慮してくれるのかもしれませんが、料金の問題ではなく、体力のない高齢者や女性には宅配便はちょっと厳しそうな気がします。

ワタミタクショクの場合、1軒配達90円(求人広告の場合158円)がブラックで、一般的な宅配貨物1個120円が普通なのか、どちらも実際に体験したわけではないのでなんとも言えませんが、想像するに、専業主婦やリタイアした高齢者のアルバイトとして考えるなら、ワタミの宅配弁当もそんなに悪くはないのかなぁって思います。

もうひとつ、チラシのポスティングの求人広告を見ると、やはり場所や条件にもよるのでしょうけど、1ポスト配布で3~5円だそうです。1ポストあたり4円として時給で500円分を稼ごうとすると1時間に125軒のポストにチラシを配布しなければなりません。これは1分で約2軒への配布に相当します。

大きなマンションなど集合住宅だとそれも可能でしょうが、そう言うところは管理人がいて勝手なポスティングを断られてしまいそうです。私が以前住んでいたマンションでは管理人さんがいる時間帯は全部断っていました。

一戸建ての住宅地でのポスティングだと、頑張ってもせいぜい1分で1軒がいいところではないでしょうか。

そうすると4円×60=240円が時給となります。それと比べると決してワタミタクショクの仕事が悪い条件とは言えませんね。

あとワタミタクショクの場合、最初は既存の地域の契約先をそのまま引き継ぐそうですが、その与えられた地域で配達と同時にポスティングや勧誘(セールス)をして新規顧客を開拓していく努力を求められます。

これについて「最初に営業活動を含むなんて知らなかったヒドイ!」っていう人もいますが、そうでもしないと契約が減っていくだけで収入も減ってしまうことになり、そういうことは民間企業なら、どこでも当たり前にやっていることで私に言わせれば非難するに値しません。

その新規獲得件数にノルマが課せられたりするとちょっと問題でしょうけど。

問題があるとすれば、雇用契約ではなく委託契約ですから、タクショクも宅配も配達するクルマやバイクは自前で用意し、自動車保険は通常の「日常・レジャー使用」から割高な「業務使用」に変更しなければ、事故が起きたときに保険が支払われないという事態が考えられます。これは困ったものですね。

また事故や違反金は当然個人の責任ですから、配達中に駐車違反など取られると、クルマの違反金ならそれだけで1週間分の収入が吹っ飛んでしまうということになります。

かと言ってコインパーキングに入れて数百円支払ったらその日は赤字ってってことにもなりかねませんから駐車違反の取り締まりが厳しい都市部ではつらいところです。

自分から希望できるかどうかは不明ですが、ワタミタクショクの場合、配達地域によっては、自転車や原付バイクで回れるというところもあるようで、そういう地域と条件なら、経費は最小限に抑えられ、しかも駐車違反で反則金が取られる心配もほとんどなく、おまけに自転車ならいい運動になり健康にもいいときています。雨の日や、台風、雪など荒れた天気の時はつらいでしょうけどね。

こうした地域配達拠点から住宅まで配達をするラストワンマイルの仕事は、ネット通販を利用する人が増え、さらには外に出られない要介護の高齢者が増えていくにつれ、これからもっと盛んになっていくでしょう。

70年代に作られた古い団地では、エレベータがないところも多く、足の弱った高齢者がますます外出しなくなり、こうした宅配を求める人が増えていると聞きます。

ただ現状のような委託元(販売会社)ごとにおこなう分散委託形式が、将来労働力不足が深刻になってきた時、どうするのか?を考えると、今後は例えば地域に根ざしたコンビニやスーパー、新聞配達所、郵便局、宅配ピザ屋、雑貨屋、道の駅などの中からどこかに各種宅配物のエリア集約拠点として定め、そこに勤務するパート・アルバイトが、手の空いた時間に、例えば宅配物とお弁当とネットで当日注文された野菜や日用品をまとめて配達するという集約同梱型配送の形態になっていくのではないかと思っています。

これからそうしたことがいろいろと試行錯誤されていくことでしょう。高齢化と人口減で経営が苦しい地方のスーパーなどは、そうした事業に乗り出すチャンスかもしれません。


【関連リンク】
719 道の駅は次の段階へ進めるか
709 Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか
702 アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?
653 小売ビジネスはどこへいくのか
465 ネット通販にはまりそう、というかすでにはまっている
318 送料無料の通販ビジネスモデルとは?

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804
あえて調べるまでもなく日本の労働者(就業者)の高齢化が進んでいますが、総務省から発表されている労働力調査の年代別就業者数を見るとよくわかります。

年代別就業者数グラフ(総務省労働力調査)


赤い線の15~24歳までの若年層の就業者数の減少は、進学率の向上による影響もあるでしょうけど、もうひとつの大きな要因である少子化の波をうけて1992年頃から一気に下がり続けています。

逆に、65歳以上の高齢就業者数は1970年はわずか231万人だったのに対し、2013年は636万人と2.7倍に増えています。1970年代時の高齢者は戦争で亡くなった方も多く、そうした少ない事情もあるでしょうけど、その後は年々元気な高齢者が増え、高齢者が働ける環境が整ってきているということなのでしょう。

就業者全体の数が2013年は6311万人ですから、65歳以上の高齢就業者だけですでに10%を超えています。働いている人の1割以上が65歳以上の高齢者だということですね。

私の父親(大正8年生まれ)が現役バリバリで働いていた1970年代は、企業や役所の定年が55歳が普通で、貯金と退職金で年金が出るまでの間は食いつなぐか、60歳までは嘱託として働き、60歳で年金をもらいその後は悠々自適の生活でしたが、日本人の平均寿命が延びるのに合わせて年金支給が遅れ現役生活が長くなっていきます。

またグラフの中で各年代推移の最高値に達している点を「オレンジ色の○でマーキング」しましたが、これは人口の中でもっとも多い団塊世代がその年代で働いていたことがわかるポイントです。

また「黒い▲マーク」は団塊ジュニア世代で、現在40代前半に達していることがこの山になっていることでわかります。

こうした高齢者の就業者が増えているということを念頭に置いて、次に正規と非正規社員の推移について調べてみます。

テレビを見ているとキャスターやコメンテーターがわけ知り顔で「若者の非正規社員が増えている」「非正規が増えると非婚や年金未納など社会的な問題が起きる」と言います。

NHKですらニュースで「非正規社員の急増」と大見出しを出すだけで、その中身の真実については語りません。

非正規社員(らしい人が)が増えてきているのは、確かに実感としてもありますが、しかし「若者の非正規増」については前から疑問があり、今回同じ総務省統計局の労働調査から調べてみることにします。

ちょっと見づらいですが、2002年から2013年の年代別正規・非正規社員数の推移を表したグラフです。



このグラフをみると、非正規社員数が増える傾向にある年代は、35~44歳、55~64歳、65歳以上で、あとは横ばいか逆に下がっています。

35~44歳の働き盛りの年代に非正規社員が増えているのは問題ですが、この年代の特徴はここ5年ほどは団塊ジュニアという大きな塊が推移していて総数で増えていることで、それは正規社員数も同時に大きく増えていることからもわかります。

またこの年代は出産を終えて再び(非正規で)働き出そうという女性が多いのも特徴です。

つまり、労働人口の中に占める非正規社員が増えている最大の要因は、55~65歳と65歳以上の年代層に限られると言っても過言ではないということです。

特に民間企業ではまだ60歳定年のところが多く、60歳になると一度退職をして契約社員とか嘱託で再雇用されるケースがほとんどです。それらは正規ではなく非正規雇用となるので、この年代の非正規雇用が大きく増えてきているわけです。

人数では、団塊世代や団塊ジュニア世代という突出している数値があるのでわかりにくいということもあるでしょう。

そこで全雇用者(役員や個人事業者は除く)の中に各年代別に正規と非正規社員がどのぐらいの割合(%)を占めて推移しているかというグラフが下記です。率ですから人口構成の人数が多い少ないはほとんど関係ありません。



特に下の非正規雇用の年代別推移を見るとわかりますが、赤い線の15~24歳と、こげ茶色の25~34歳の比較的若い層の非正規雇用(率)はいずれも下がってきています。逆に45歳以上の年代の非正規社員(率)は大きく増えてきています。

つまり「若者の非正規社員が増えている」というのはまったくの誤りで、もし非正規社員増の問題を議論するなら、まず60歳以上の高齢者向けの対策、次に、30代後半以降の出産後の女性が非正規ではなく正規社員として復帰できる環境整備などが先でしょう。

もちろん60歳過ぎても転勤や残業、休日出勤まである正社員として目一杯働きたいと言う人ばかりではないでしょうし、出産後に子育てや親の介護をしながら残業や地方への出張もある正社員として復帰したいと願う女性ばかりでもないでしょう。

こうした統計数字はちょっと見誤ると、180度違った感想や意見を持ってしまうこともよくあり、またマスメディアはより刺激的な内容であればあるほど注目を浴び、視聴率が取れるので、それに都合の悪いことは伝えず、単に「非正規社員が増えている!さぁたいへんだぁ!」と視聴者や読者を煽り続けているわけです。


【関連リンク】
717 非正規から正規雇用への転換策
707 ハローワークは非正規職員のおかげで回っている
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
574 仕事を引退する時、貯蓄はいくら必要か
546 年金受給年齢の引き上げと高齢者雇用


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782
終身雇用が壊れだしたのは1990年代頃からで、大手企業においてリストラの名を借りた実質的な指名解雇がおこなわれてきましたが、考えてみると中小企業ではそれ以前からずっと業績不振やワンマン社長の好き嫌いなど環境や感情の趣くまま、従業員解雇なんて普通におこなわれていました。

それは大企業たる新聞社やテレビ局において身近なものではなく、記事や番組で取り上げられることがなかっただけのことで、いざ大企業でもリストラがおこなわれるようになって始めて「これは危険だ」と取り上げられるようになってきました。

それはさておき、私(56歳)以上の人達のほとんどは、新入社員の頃、日本の代表的な雇用スタイルで高度成長を支えてきたとされる、終身雇用、年功序列が当たり前で、それが壊れるなんて信じていませんでした。

そして、新卒後の数年で会社を辞めて転職など、まるで人生の落伍者のように見られていましたし、20代の中途採用市場も極めて小さく、もしどうしても転職するならベテランの域に達した30代で、それも三顧の礼を尽くし誘ってくれるところがあってというのが普通だったように思います。

しかし私が新卒入社してから10年ぐらい経つと、新入社員(ちょうどバブル入社組)で入ってきた若者が平気で次々転職するようになり、時代が変わったと実感したモノでした。

しかしその時に転職した若者が入った会社は、より小さな企業ばかりで、それで成功したかというと微妙な感じがします。小さな企業はダメと言っているのではなく、できることやれることがさらに小さくなってしまう可能性が高いのです。

転職の場合、なにを持って「成功」か「失敗」かという明確な基準がありません。人材紹介会社の場合は、「成功」=「転職できた」、「失敗」=「転職できなかった」の二つの基準でハッキリしているのですが、求職者にとっては転職できたからすべて成功だったかというと必ずしもそうではありません。

例えば「転職して給料や待遇が上がり、就業時間は短くなり、仕事には成長性があり」となればほぼ「成功」と言ってもいいのでしょうけど、「給料は上がったが、めちゃくちゃに働かされ、身体を壊したり、家族との時間がなくなった」では、果たして転職成功と言えるのでしょうか?

「希望する企業ではなく給料は下がり将来性があるとは言えない仕事だけど、ワークライフバランスがとてもうまくまわり毎日充実している」となった場合、これも人の価値観によっては「転職成功」と言えるでしょう。

もっと言えば、30代で転職した場合、その後まだ30年以上働き続けるわけですので、その会社が将来どうなるか?という長期的な観点でも「成功」「失敗」が違ってきます。

私が新卒の時に会社説明会で回ったある中堅商社は、その時はとても私など無理とすぐにあきらめたほどの盛況ぶりでしたが、私が別の会社に入社して5年目に研修を兼ねて香港へ渡ったときに、ちょうどその中堅商社が倒産したことを知りました。

そういった会社がどう転ぶかは誰もわからないリスクを軽減するには、自らが会社に頼り切らないで、自分のスキルを磨き、難易度の高い経験を積むに限るわけですが、同時に信頼できる人間関係を構築しておくのがベターな選択でしょう。

案外自分のスキルや経験を必要とする仕事や業界って狭いもので、転職するとなにかしら昔の知り合いとつながっていたりするものです。

転職活動の際に、複数の応募者と競争することは普通にあり、その時の面接で、「その方なら勉強会で知り合ってよく知っていますよ」と面接者と共通の知人がいることが判明したり、「○○さんならいま当社の関連企業にいますよ」とか、不思議な縁に出会うことがあります。

そういうつながりがあり、しかもその知人から「彼なら採用して大丈夫」というお墨付きがもらえれば、これ以上の推薦状はありません。

そこで転職をするのに最適な年齢は?というと、以前から企業が一番求めているのは20代後半~30代前半で大手、中堅企業でしっかり業務経験を積んできた人達ということになるでしょう。

ただ、現在は若手の転職者が少なくなり、逆に30代後半~40代の転職希望者の増加で、転職平均年齢が上がってきているそうです。

転職者の平均年齢は31.0歳 高年齢層の転職者増により5年で2歳プラス(インテリジェンス調査)
人材サービス大手インテリジェンスによると、転職者の平均年齢は2008年に29・2歳だったが、13年には31・0歳と2歳上昇した。年齢別でも35歳以上の転職者の割合が08年の10%から13年には23%まで増えており、ミドル世代の転職が盛んになっていることがうかがえる。

少し前なら40代以降の転職はリスクが多く、よほどのハイパフォーマーや自信家以外は難しいと言われていましたが、最近はそうでもなくなってきているようです。

それとも転職したくてしたわけではなく、早期退職制度や転職支援制度で半強制的に追い出された人が、やむにやまれず転職をしているせいなのかも知れません。そこのところは、この調査からはハッキリとは読み取れません。

ただ職種別では、「30代以上の割合が最も多いのは「技術系(建築/土木)」の73.6%で、次いで、「技術系(機械/電気)」(63.9%)、「技術系(IT/通信)」(61.3%)が続きます。」とありますので、大手製造業などが大量に実施してきた工場閉鎖や海外移転のための大リストラの影響で技術系中高年者の転職希望が増えている可能性があります。

特に1971年~1974年に生まれた団塊ジュニア世代が40~43歳となり、この年齢ともなれば大手企業でも管理職に就く年代ですが、どこの企業でもこうした年代のポストが不足しているように思えます。技術系職においても同様です。

そう考えると、転職平均年齢(適齢期ではなく)は、この数の多い団塊ジュニア世代が牽引していると言えなくもなく、当面はその団塊ジュニア世代の年齢とともに上がり続けることになるのでしょう。

では転職適齢期はと言えば、考え方としては数の多い団塊ジュニア世代と対抗して勝てるのは若さか経験かということですので、今すぐならば「若さ」の20代~30代前半までか、「経験」の50代前半ということになるでしょうか。ただ50代での転職は、今も昔も超難関なことには変わりなく、即戦力&人脈しかありません。

私もあと4年で定年がやってきます。雇用延長の義務化から、数年の雇用延長はお情けでやってくれるでしょうけど、果たしてそれにすがるか、それともまた別の新しい仕事人生を切り開くか早々に考えなければなりません。


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