リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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1836
それをお金で買いますか 市場主義の限界(早川書房) マイケル・サンデル
原題は「What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets」で直訳すれば「お金で買えないもの:市場の道徳的限界」となります。日本語タイトルはややあおり気味ですが売れそうなうまいやりかたです。
過去に「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業」(2010年早川書房)を読みましたが、理解はできるが、結局どうすりゃいいの?と、私なんかは古い日本人の典型で、すぐにハッキリした回答を求めてしまいますが、そうした明確な方向や判断は示されず、「自分で考えなさい」という話なのでモヤモヤが残ったまま早々に頭の中から消し去るようになってしまいます。
現代の市場経済で、「それは道徳的にどうなの?」「法律違反ではないけど汚らわしい」というような問題点をいくつも例に出して、賛否双方の言い分を解説してくれます。
日本でも遊園地の人気アトラクションやいつも行列が絶えない人気レストランで優先的に案内されるファストパスが堂々と高額で売られています。また注目裁判の傍聴券を得るために金で雇われて並ぶのはOKで、人気コンサートのチケットを転売目的で購入して欲しい人に高額で転売する(ダフ行為)のはダメというのはどうして?すべてお金で目的を達することに変わりはないはずです。
余命数ヶ月という重病人の生命保険(死亡保険)を買い取り、生きている間に現金を手に入れられるようにする生命保険の売買(米国では普通にある)では、生命保険を購入した投資家は人の死が自分の大きな利益になるというのは是か非か?
薬物中毒やアルコール中毒の女性が出産すると高い確率で障害をもった赤ちゃんが生まれて大きな社会負担につながることから、そうした女性にかなりの一時金が支払われる代わりに避妊手術を受けるというサービスは是か非か?
などなど、面白い実例がいっぱい出てきます。
確かに市場経済で考えさせられる様々な問題提起ですが、それぞれに考え方がみな立場や人種、宗教観、年齢、所得水準などで違ってくることが多く、「これ!」という回答はなさそうです。
それにしてもこうした道徳問題を得意とする著者に、道徳などゴミくず同然の著者の国のトップ(大統領)に対してどういう感想を持っているのか聞きたいものです。
★★☆
◇著者別読書感想(マイケル・サンデル)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
メインテーマは殺人(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ
原題は「The Word Is Murder」で直訳すると「言葉は殺人」で、「The Word」には言葉以外に発言や命令、知らせなど様々な意味がありますが、日本語訳に付けられた「メインテーマ」という意味はなさそうです。
この作品は「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの第1作目となり、すでに続編が4作出ています。
「カササギ殺人事件」が大変面白かったので、今回は多大な期待をして読みましたが、その期待を裏切らない面白い推理小説でした。
一人称で語る主人公は本著の作家ホロヴィッツで、探偵ホームズに対してちょっと的外れな相棒のワトソン役です。その探偵ホームズ役は、刑事だった頃にあることがきっかけで辞めざるを得なかった中年男ホーソーンで、ホームズと同様に鋭い観察力の持ち主です。
その探偵役の男は警察を辞めた後も、警察上層部からその特筆すべき才能を惜しまれ、難しい事件が起きると警察顧問として協力を求められ、今回の謎多き殺人事件で声がかかり、さらにその捜査から解決までを小説にしてお互い利益を得ようと、当時多くの警察ドラマの脚本を手がけていた主人公の作家に声をかけることになります。
事件は、あるひとり住まいの裕福な老婦人が、葬儀屋を訪れるところから始まり、その葬儀屋で自分の葬儀の依頼を細かく指示したあと、その夜に自宅で何者かに絞殺されてしまいます。警察は単なる物取り強盗と判断しますが、、、、
「カササギ殺人事件」と比べると至極真っ当な探偵ミステリー小説ということになりますが、事件を追う二人の関係が名声と金で結ばれユニークで面白く、その後の続編も読みたくなりました。
★★★
◇著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
漱石先生ぞな、もし(文春文庫) 半藤一利
「日本のいちばん長い日」や「レイテ沖海戦」など太平洋戦争の戦記物小説が多い作家さんですが、その他のエッセイやノンフィクションなども多くあります。
タイトルに使われている夏目漱石は、著者の妻が漱石の孫という関係があり、著者の義理の祖父ということになります。それゆえ、義理の祖父のことや残した作品についてのことをいろいろ調べて書こうと思ったそうです。
漱石が残した小説や手紙、俳句などから、その時代や思想などがよくわかってそれと小説が書かれた時期を合わせると「なるほど」と思えることもありそうです。
漱石が生きた時代は、日清戦争や日英同盟、日露戦争などが起き、日本が富国強兵に力を入れ、まだ文学にはそれほど影響はなかったものの、軍部が政治にも影響を及ぼしつつある時代です。
このエッセイ集では「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「草枕」「二百十日」「三四郎」など有名な小説に関するうんちくが取り上げられています。
また「漱石」という雅号の由来や、作家の友人や門下生などの話なども面白く読めました。
ただ、夏目漱石の小説をほとんど読んでない人には、理解できないことが多く、私も漱石の小説の多くは何十年も前の中高生の頃に読んだきりで、もうすっかり記憶になく、意味がよくわからないというものも多かったです。
★★☆
◇著者別読書感想(半藤一利)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
何もかも憂鬱な夜に(集英社文庫) 中村文則
犯罪容疑者は逮捕されるとまずは警察の留置所に留置され、その後裁判で結審するまでは裁判所に近い拘置所で拘置され、裁判で実刑が決まれば刑務所へ送られることになります。3段階があるのは知りませんでした。
この小説の主人公は、親に捨てられ施設で育ち、現在はこの中間の拘置所で刑務官として勤務する男性です。
親と親の愛情を知らず世捨て人のような感情を持ちながら働いている主人公ですが、中学校卒業まで暮らした児童養護施設の施設長の暖かなサポートや、今までまるで縁がなかった音楽や書物などの芸術を教えてもらい、生きていく意味を教えてもらった恩が忘れられません。
そして自分と同じように親に捨てられ、その反動で殺人事件を起こし、遺族やマスコミから「死刑は当然」と決めつけられ、第1審の判決でも死刑を言い渡された収容者のかたくなな心を解きほどいていくようになります。
日本の死刑制度について、死刑を実施する刑務官の厳しさ、死刑の判決が世論などで左右される問題点などの社会問題を鋭く突いています。
一方では、1948年に起きた「一家四人殺傷事件」で死刑が確定したものの、1983年に無罪が確定した免田栄氏や、この小説は2012年出版なので、まだその時点では無罪が決まっていませんでしたが、1966年に起きた一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌氏の再審が実り、2023年に無実が確定し48年間の拘留から解放されたケースなど、えん罪で死刑や長期拘留となる場合があります。
無実で死刑が言い渡されるのは、これ以上ない非道なことですが、過去にはえん罪事件は数多く発生しています。
★★★
◇著者別読書感想(中村文則)
【関連リンク】
4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト
3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
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1834
43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の真相(新潮文庫) 石井光太
2012年に出版されたノンフィクション「遺体:震災、津波の果てに」を原作とした西田敏行が主演した映画「遺体 明日への十日間」が2013年に公開され、本もよく売れていた印象があります。
本著は、2015年に川崎市の多摩川で起きた川崎中1男子生徒殺害事件をルポしたノンフィクションです。タイトルの「43回」とは、殺された中3の少年が友人だった3人にカッターナイフで切りつけられた数を表しています。
当時は同じ川崎市に住んでいることもあり、新聞で読んだぐらいでしたが、その時の印象としては、「不登校で家に寄りつかなかった不良少年が、仲間だった年上の不良少年達を怒らせてリンチを受け殺されてしまった」「川崎市では珍しくない家庭的に恵まれないフィリピン人とのハーフの不良少年たちが仲間割れしての犯行」というものでした。
しかしこのノンフィクションを読むと、話は単純ではなく、もっと複雑な家庭状況や、不良仲間同士の関係性、主犯とされた加害少年の異常な性格や飲酒癖などが掘り下げられています。
ただ残念なことに、主な取材先は離婚後遠く離れた場所で暮らしていた被害者の父親がメインで、被害者少年と一緒に暮らしていた母親や兄妹には話がまったく聞けていなく、本文中にエクスキューズされていましたが一方的な内容の偏りはあります。
また同級生や事件には関わっていない知人の不良少年などにはインタビューができていますが、まだ精神的に幼い未成年のためか、話に信憑性や正確性に乏しい印象があります。中には話が聞きたいなら金を出せという少年もいたようです。
裁判の結果、主犯の少年は9年以上13年以下という判決が出ましたので、2015年から収監されていたため、従犯の二人はもう社会に復帰していて、主犯だった少年も早ければすでに、いずれにしても間もなく社会に復帰してくる頃と思われます。
被害者遺族の気持ちは計り知れないですが、まだまだ長い加害者達のこれからの人生がどういうものになっていくのか、気になるところです。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
汝の名(中公文庫) 明野照葉
本著は2003年に単行本、2007年に文庫化、2020年に新装文庫化され、これを原作として2022年にテレビドラマ化されています。
内容は有吉佐和子著「悪女について」や、貫井徳郎著「新月譚」などを見るまでもなく小説やドラマでテーマとなることが多い、女性主人公が肉体や才能を最大限に生かしてのし上がっていくというものです。
働かない同棲男に見切りをつけ、名前を変えて肉体や才能を使って勝ち組エリートを目指していきますが、他の小説と違うのは、主人公が姉妹と称して同居している見かけも思考も対照的な二人いるという点です。
ひとりは美貌と抜群のスタイルで、それで得たスポンサーの協力でタレント派遣会社の経営者です。
もうひとりの主人公は地味で目立たない勤務していた製薬会社を辞め、もうひとりの主人公(タレント派遣会社社長)の高級マンションに同居し家事全般を担っています。
ひとりの主人公が元製薬会社にいたということで、これは薬物犯罪ものだなぁとすぐ想像はつきましたが、その通りの展開です。
仲が良かった二人の関係が、あるエリート男性の出現で崩れていくというのは現実でもよくありそうです。特に女性同士でルームシェアをしている場合、この小説と同様、二人の関係はいとも簡単に崩れていくことは大いにありそうです。
女性の心理描写が多く、高齢のオッサンが読んでも「そんなものか」ぐらいにしか感じませんが、極端な発想の裏表をネチネチ見せられ続けると、面白いと言うより煩わしく思ってしまうのは昭和の人間だからでしょう。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻(文春文庫) P・G・ウッドハウス
今回の作品は1920年代頃に英国で出版されたものの中から抜粋し、2005年に日本語版として出版した単行本「P・G・ウッドハウス選集 ジーヴズの事件簿」(原題:The Casebook of Jeeves)を、2011年に文庫化する時に、1巻を2巻に分冊したうちの1巻です。
連作短篇集で、時代背景は著者が生きていた時代、20世紀初頭のロンドンで、才智優れたジーヴズという名の執事と、主人たるバーティという名の軽薄な独身貴族青年とのあいだで起きる軽快なユーモア小説です。
収録作品は、「ジーヴズの初仕事」、「ジーヴズの春」、「ロヴィルの怪事件」、「ジーヴズとグロソップ一家」、「ジーヴズと駆け出し俳優」、「同志ビンゴ」、「バーティ君の変心」の7篇です。
分冊されたもう片方は、「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」ですが、もう読みたいとは思わないかなというのが感想です。
短篇のユーモア小説ではブラックユーモアのサキ著の短篇集が好きですが、こちらは笑えないつまらない子供向けの漫画でも読むような感じで私には合いませんでした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
シクラメンと、見えない密室(光文社文庫) 柄刀一
連作短篇集で、収録作品は「傷とアネモネ」、「遠隔殺人とハシバミの葉」、「シクラメンと、見えない密室」、「クリスマス・ローズの返礼」、「オークの枝に、誰かいる」、「おとぎり草と、背後の闇」、「夾竹桃の遺言」の7篇です。
いずれもカフェのママさんとその娘の二人が、相談に訪れた客や、遭遇した事件、事故などで、推理を駆使して難解な事件を解決していくというもので、連作短篇と言うこともあり、内容は軽く、サクッと読むのに適しています。
タイトルからもわかるように、花や樹木の植物をキーとして、その花言葉や由来、伝説などを駆使し、殺人事件や、自殺未遂の謎など、ミステリーを解いていくという変化球のストーリーがなかなか楽しいです。
草木を使った薬学に詳しく、古い知識に詳しく、まるで何百年も前から生き続けているような西洋風の魔女というものが、現代の日本に蘇れば、案外、普通のカフェで店主(ママさん)をやっていたりするという想像も面白い発想です。
★★☆
◇著者別読書感想(柄刀一)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ゴースト(朝日文庫) 中島京子
著者は1964年生まれ、2003年に「FUTON」で作家デビューされ、2010年には「小さいおうち」で直木賞を受賞されています。
各短篇は各個別の小説で、いずれもゴースト(幽霊)がモチーフとなっていますが、中にはゴーストライターのような幽霊とは言い難いものまで含まれています。
一番良かったのは「ミシンの履歴」で、戦前から酷使されてきたミシンが主人公で、その時々の女性達がそのひとつのミシンをよりどころに生活していく姿が目に浮かんできます。
というのも、私がまだ幼かった頃には、足踏みミシンが2台自宅にあって、父親も母親もそれを自在に使えたことや、そのミシンで衣服を縫ってもらったりしたことをかすかに覚えています。
あの無骨ながらも凜々しく思った蛇の目だったかシンガーだったか忘れましたが、足踏みミシンが、あの当時の女性が内職をして生活の糧を得る方法だった時代を思い出しました。
★★☆
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3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
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1832
サイコパス(文春新書) 中野信子
私には元財務官僚で弁護士、同じようにテレビのコメンテーターとしても活躍している山口真由氏と見分けがつかないことが時々あります。頭の良いインテリ女性は似てくるものか、それとも単に私がボケてきているのかも。
私もそうですが、一般的にサイコパスというと、小説や映画で有名な「羊たちの沈黙」などに出ていたハンニバル・レクターのような「知能レベルが高く凶悪犯罪を良心の呵責もなく平然とやってのける人」というイメージを持ちますが、この著作を読むと決してそうとばかりは言えなさそうです。
例えば、詳細な検査もしてない状態で現代の人を名指しで「この人はサイコパシー(精神病質)」と決めつけることはできないでしょうけど、過去の偉人と言われる人でも、その日常的なふるまいや、対人関係、異性関係、言動、周囲の人の話しなどから、ある程度はサイコパシーが特定できるようです。
事例としては快楽のために単独で連続殺人事件を起こしたような人や、事件は起こしていなくても突出したプレゼン能力や人を魅了する対人コミュニケーション能力などで、多くの他人を引きつける魅力がある人などです(他にも諸々条件があります)。
つまりサイコパスと言っても、イコール凶悪犯罪者という意味ではなく、人類が進化してきた中である一定の必要とされる能力の持ち主、つまり危険を顧みず見知らぬ場所へ進んで冒険し、先頭に立って敵と戦い、多くの仲間をまとめ上げたりする極めて特殊な役割がありました。
ただ同時に反社会的で、スリルを求め、自分を攻撃する(自分の利益を阻害する)相手には容赦がなく、被害を受けた他人の心を思いやることができないという性質も持ち合わせています。また現代の裁判で犯罪が起きた理由をすべて他人のせいにするのも特徴です。
本著ではサイコパスと思われるのは日本で言えば織田信長、中国の毛沢東、オーストリアのマリア・テレサ、アメリカのJ・F・ケネディやスティーブ・ジョブズなどが挙げられています。
その他、実名には上がっていませんが、サイコパスが多く含まれる職業として、最高経営者(ワンマン経営者)や政治家、弁護士、外科医、トレーダーなどです。逆に言えばそのような職業にはサイコパスが向いているとも言えそうです。
世界各国の精神科医や脳科学者などがサイコパスの特徴や見分け方、治療方法について研究をしていますが、日本ではあまり聞いたことがなく、どちらかと言えば欧米人特有の問題という意識がありました。
サイコパス性のある人の発生率はやはり欧米に多いようですが、アジア圏はそれよりは少ないながら人口の1%ほどにはサイコパシーとみられる病質があることがわかっているそうです。
弁説爽やかで人たらし、人間としての魅力はあるけれど、自己利益のためには手段を選ばず、他人の痛みや苦悩は理解できず関心がないなど、サイコパスの条件をいくつか挙げていくと、「あぁ、あの人、、、」と誰でも数人が思い当たるでしょう。それだけ身近に感じられるようになったのが本書です。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
高慢と偏見(上)(下)(ちくま文庫) ジェイン・オースティン
著者が生きた時代は英国で産業革命(石炭を利用したエネルギー革命)が発生した時代とほぼ同じですが、まだその恩恵は高価な産業機械などに限られていて、貴族でも移動は自動車などはまだなく、乗馬や馬車という時代です。
時代は違いますが谷崎潤一郎の「細雪」の英国ヴァージョンっていう感じで、細雪は4姉妹、こちらは5姉妹の恋愛物語とも言えます。
本著は著者が20~21歳の頃、1796年から1797年に書かれたもので、その時は出版を断られましたが、その後手直しをして1813年(38歳頃)に出版されたものです。とても20歳の女性が書いたと思えないほどの熟練さが感じられる物語です。
過去に3度、1940年、2004年、2005年に映画化され、1995年にBBCでドラマ化、日本では2012年に宝塚でミュージカル化、そして2009年には望月玲子によってコミック化もされています。
タイトルは原題が「Pride and Prejudice」で、ほぼ直訳です。
その「高慢」は、働かないことが美徳である裕福な貴族達の振る舞いを指し、そうした貴族と付き合う中で生じた主人公女性の貴族に対する偏見のふたつをうまく取り上げています。
最初はタイトルから難しそうな小説かな?と勝手に想像していましたが、全然そう言うことはなく、どこにでもよくいそうな噂話や痴話話などが大好きな女性達が中心で、当時の未婚女性達はお金持ちでできれば身分の高い男性に見初められることが最大の目的で(今もあまり変わりないけど)、舞踏会やお茶会などには着飾っていそいそ出掛けていく風景が目に浮かびます。
若い女性からみた英国の貴族社会と、紆余曲折を乗り越えてハッピーエンドに向かっていくという、当時の女性達にはたまらない魅力ある小説だったと思います。
ただ著者自身は一生結婚することがなかった人生でした。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
少女(双葉文庫) 湊かなえ
2016年には三島有紀子監督、本田翼、山本美月、真剣佑などの出演で映画が公開されています。
主人公の二人の女子高生が、転校生から友人が自殺をしてその死体を見たという話から、自分も知っている人が亡くなるところを見てみたいという欲求が強くなります。
ひとりは学校から補講として命じられた高級老人ホームの手伝いへ、ひとりはボランティアで話聞かせをするため病院へ行き小児科の入院患者と接するようになります。
いろんなところでそれぞれにつながっていて、内容的にリアリティにはまったく欠けますが、話としては面白く、よくできた物語として読むことになります。
外から見ていると、いつもつるんでいて自主性が乏しそうにみえる若い女性が、主人公達のように、ひとりで様々な行動を自主的に起こすというのが最近の人?っていうのはなにかモヤモヤします。
いずれにしても最近の女子高生のことなんかさっぱり理解不能なオヤジには、どこか違う時代と世界の話みたいで、読んでいて気恥ずかしささえ感じました。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
寝ぼけ署長(新潮文庫) 山本周五郎
収録作品は、1946年から1947年に小説雑誌に連載された「中央銀行三十万円紛失事件」、「海南氏恐喝事件」、「一粒の真珠」、「新生座事件」、「眼の中の砂」、「夜毎十二時」、「毛骨屋(けぼねや)親分」、「十目十指」、「我が歌終る」、「最後の挨拶」の10篇です。
地方の警察署署長として赴任してきた、いつも寝ぼけ眼で、仕事のないときには机でうたた寝をしていることから周囲からは「寝ぼけ署長」と呼ばれています。
主人公はその警察署長ですが、語り手はその署長の秘書?なのか同じ警察官舎に住んでいるワトソン役とも言える人物です。
様々な事件や問題が持ち込まれますが、犯罪者に対しても人情味ある解決策をとる場合もあれば、権力を笠に着た悪人に対しては、根回しをした上で脅しのような圧力をかけます。見かけの寝ぼけ署長とは違い、事件が起きるとなかなか爽快な内容です。
こうした見かけ上は「デキる人」と比べて平凡かそれ以下な雰囲気でも、事件を見事に解決するという意外性を見せてくれるのは、「刑事コロンボ」など以外にもよく使われる手ですが、この時代(1946~1947年)だと同じ1946年に登場した横溝正史著の金田一耕助シリーズ第1作目「本陣殺人事件」と同時です。
内容は、お金の単位に「銭」や、貧民長屋などが出てきて、時代を感じますが、発想が面白く楽しく読めます。
★★☆
◇著者別読書感想(山本周五郎)
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3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
2月後半の読書 女ともだち、始まりはジ・エンド、もう過去はいらない、ユタと不思議な仲間たち
2月前半の読書 明日の食卓、悪貨、罪の轍、冷たい太陽
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ハヤカワ・ミステリー 創元推理文庫 新潮文庫 講談社文庫 角川文庫 集英社文庫 岩波文庫 |
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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
1829
短劇(光文社文庫) 坂木司
収録作品は、「カフェラテのない日」、「目撃者」、「雨やどり」、「幸福な密室」、「MM」、「迷子」、「ケーキ登場」、「ほどけないにもほどかある」、「最後」、「しつこい油」、「最後の別れ」、「恐いのは」、「変わった趣味」、「穴を掘る」、「最先端」、「肉を拾う」、「ゴミ掃除」、「物件案内」、「壁」、「試写会」、「ビル業務」、「並列歩行」、「カミサマ」、「秘祭」、「眠り姫」、「いて」のそれぞれ独立している26篇です。
ショートショートと言えば、オー・ヘンリーやサキ、星新一、小松左京、筒井康隆などの作品を過去に読みましたが、著者のあふれ出るアイデアというか発想力、構成力が試されます。
名手と言われる人はまったく畑違いの長編小説を書いても名手です。というか逆(長編が巧い人はショートショートも巧み)かも知れません。そして短篇が巧いからショートショートも巧いかというと決してそうではないような気がします。それだけに短い文章でひとつの物語を完結させてオチまでつけるのは難しそうです。
著者の小説は今まで連作短篇ばかりを読んできましたが、このショートショートはそれぞれにユニークな内容で面白く読めました。現代的なものが多いですが、SF的なものやホラーのようなものまで多彩です。
個人的に好きなのは「最後の別れ」で、離島で戦争をしていて両軍の最後のひとりの兵士が生き残り、どうやら世界は滅亡したらしいことがわかります。ふたりは争いをやめ、ひとりがやがて訪れる「孤独」と「絶望」のうち「絶望」を避ける方法を提案して実行します。
ちょっとした時間の隅間にサクッと読めるので、電車移動などが多い人に向いています。
★★☆
◇著者別読書感想(坂木司)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
神秘(上)(下)(講談社文庫) 白石一文
主人公は講談社と思われる大手出版社で働く中年男性で、10年以上前に書かれたこともあり、主人公の年齢設定が私とほぼ同じ(著者とも近い)で、昭和から平成にかけてがむしゃらに働いてきたことを想起させる内容でした。
ただ内容は、平凡なリタイアをした私とは大きく違い、主人公は役員に登用された働き盛りに、いきなり末期の膵臓癌で余命1年と医者に宣告されます。
しかも5年前にそれまで20数年続けてきた結婚生活に終止符をうち離婚しています。独身という気ままさもあり、余命1年にできることをやってみようと、昔不思議な電話をもらったことがある女性を探しに神戸へ行くことにします。
自分の身に起きたことにはすべて理由があり、出会いや別れも必然のことだと徐々にわかっていきます。そのあたりのストーリーが壮大でかなり長いうえに、細切れの新聞連載小説ということもあって何度も説明が繰り返されることもありちょっと間延びした印象もあります。
それでも余命1年と宣告された主人公に起きる壮大な人間関係の輪が徐々に明らかになっていく様子はスピチュアル的要素もありながらドラマチックでたいへん面白かったです。
それと掲載された毎日新聞社で働く記者や、販売店がちゃっかり登場する著者のサービスもありました。そういう意味では、小説を書いていく中で主人公が勤務する出版社の仕事や小説を掲載する新聞社については下調べの手間を省いた感じもします。
★★★
◇著者別読書感想(白石一文)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
つやのよる(新潮文庫) 井上荒野
2013年にはこの小説を原作とした映画「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」というタイトルの映画が公開されています。
その映画の出演者は阿部寛、小泉今日子 、荻野目慶子、野波麻帆、高橋ひとみ、風吹ジュン、真木よう子、大竹しのぶと昭和生まれにとっては馴染みの女優陣がいっぱい出演しています。見ていませんけど。
本来なら主人公となるであろう艶(つや)という名前の女性が癌のため余命がわずかとなって、その夫が過去に艶と関係があった何人もの男性に「余命わずか」と知らせます。
その連絡を受けた艶との過去の思い出を秘めている男達のさらに周囲にいる妻や恋人など女達が様々な化学反応を起こすという話です。したがって艶という女性が表に出てくることはなく、その過去の行動や周囲が勝手に思いを巡らせて動いているという内容です。
女性の感情をうまく表現しているのでしょうけど、年配の男の私にはとても感情移入ができず、話もさっぱり頭に入ってきません。
第1章から第6章までは語り手が女性で、最終章の第7章だけ艶の夫で妻と子を置いて駆け落ち同然で出て行った男性が語り手です。その最終章だけはかろうじて理解できました。
★☆☆
◇著者別読書感想(井上荒野)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件(角川文庫) 大崎善生
タイトルにあるように2007年に名古屋で起きたネットの闇サイトで知り合った3人が、路上を歩いていた見知らぬ女性を拉致し金品を奪い殺害するという衝撃的な事件で、闇サイトが公に初めて表面に登場してきた事件でした。
当時は「闇の職業安定所」というアングラサイトで仲間を集め、様々な犯罪がおこなわれていましたが、そうしたものがいろいろと形を変えて現在でもとくりゅう(匿名・流動型犯罪グループ)の裏バイトを集める手法として使われてきています。
殺害された女性は、31歳の真面目で囲碁が趣味の派遣社員で、幼児の時に父親を亡くして母と子のふたりで夢を持って暮らしていました。
帰宅途中の自宅まであと少しという夜道で男3人に拉致され、20数キロ離れた場所で包丁を突きつけキャッシュカードの暗証番号を聞かれます。そして暗証番号を答えたあと、犯人達に殺害されてしまいます。
犯人のうちひとりが自首したことで事件が発覚し、加害者の3人の男は捕まりますが、裁判では、殺害したのがひとりだけなら極刑にはできないという永山基準という判例の壁があり、納得いかない遺族たちの戦いが始まります。
私もこの事件が起きた2007年には関東に住んでいましたが、拉致事件が起きた場所(名古屋市千種区)のすぐ近くに1年ほど住んでいたことがあり、「近くに星野仙一氏の家もあったあのような閑静な住宅地でどうして?」と気になっていました。
その事件を被害者側の立場で取材したノンフィクションで、被害者の両親や被害者の子供の頃から社会人になってからのことなどとともに、事件の詳細が書かれています。
それにしても取り調べや裁判で被告が証言ででてきたことであろう、おぞましい殺害時の詳細な状況が繰り返し何度も何度も出てきてちょっと過剰演出しすぎかも。
また事件とはなんの関係もない被害者が生まれる前の両親や親戚のことについて長々と書くよりも、三人の加害者がこうした残虐な行動を起こすようになった背景を掘り下げることや、警察がマスコミの後手に回わり、被害者遺族に対する対応がまずかったことはもっと突っ込んで欲しかったです。加害者側は単に極悪非道の悪人だというだけではどうも片手落ちのような気がします。
同じ凶悪殺人事件のノンフィクションでも、調査報道のプロでもあるジャーナリストの清水潔氏が書いた犯罪ノンフィクション「桶川ストーカー殺人事件-遺言」は様々な関係者の背景が詳しく調べられていて、さらに非協力的で、頑として対応の悪さを認めようとしない埼玉県警と対立しながらも真実を貫いていました。
★★☆
◇著者別読書感想(大崎善生)
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女ともだち(講談社文庫) 真梨幸子
東京郊外に突然建った高層マンションで起きる二人の女性が殺害されるという事件を中心に、その二人の女性の過去や友人関係が明らかになっていき、さらに容疑者として逮捕された男性が拘置所内で自殺するという混迷を迎えます。
主人公は探偵役になっているフリーのライターの女性で、雑誌にノンフィクションを売り込むため殺された二人の女性の関係者に会って取材をして回ります。
殺されたひとりの女性には、1997年に起きた東電OL殺人事件をモチーフにした、適齢期を逃したエリートキャリアウーマンが裏の顔を持っていたという流れで、女性の心理にグサッと刺さる?内面描写が多く、男性読者にとってはなかなか理解しがたい複雑なものがあります。
著者は現在還暦を過ぎていますが、この小説が書かれた時はまだ40代のバリバリ働く世代でしたので、そうした同世代の女性の日々の生活や心理描写は得意分野だったのでしょう。うまく描けています。
★★☆
◇著者別読書感想(真梨幸子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
始まりはジ・エンド(双葉文庫) 新津きよみ
収録作品は「絶縁」「永久に」「引き際」「余命」「陰のコレクター」「彼女のステージ」「死ぬまでにしてほしい五つのこと」の7篇です。
いずれも主人公は中年の女性で、日常や暗い心理描写が多く、この本の直前に読んでいた真梨幸子著「女ともだち」と中身は全然違うものの、どちらも女性心理の見にくいところをえぐり出すような内容だっただけに、読んでいて中身が混乱してきました。
ま、しかし登場人物の女性達のよく喋ること喋ること。たまに出てくる男性はというと頼りないかわがままかで、ほとんど喋る間もなく固まっていたりしています。
お勧めなのは最後の短篇「死ぬまでにしてほしい五つのこと」で、姉と妹の関係で、妹は結婚していますが末期の子宮癌に罹り余命がいくばくもない中、独身を通してきた姉に4つの依頼を口頭で依頼し、そして5つめの依頼を死後1ヶ月後に読んで欲しいと手紙を託されます。
妹の死期が迫る前の依頼を聞いて、あちこちへ出向き、望みを叶えていく姉の姿と、幸せではなかった妹の深謀遠慮とが、きっと幼いときから仲が良かったであろう姉妹の様子が描かれていて面白かったです。そしてオチはやっぱり「女は怖い」です。
あと著者の実家の父親は開業医ということもあり、多少の知識がある医療や薬についての話しが重要なところで良く出てきます。お得意分野ってことでしょう。
著者の小説は長篇と短篇両方読みましたが、この小説は人の生と死を描いたものが多く、ちょっと怖い犯罪ホラー要素のあるものから、亡くなってもほのぼのとした話まであり、バラエティに富んでいて良かったです。
★★☆
◇著者別読書感想(新津きよみ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
もう過去はいらない(創元推理文庫) ダニエル・フリードマン
アメリカでは若い移民が多く、日本ほどは高齢化社会というわけではありませんが、それでもこうした主人公が88歳という小説は、今の日本の社会情勢を反映しているようでもあり、面白く読めます。
この高齢の主人公はテネシー州メンフィスで公民権運動が盛んだった時代に刑事をしていたユダヤ系移民で、現在はアメリカ人の平均寿命を大きく超えた高齢に加えて、前作で受けた銃創で介護付きグループホームに夫婦揃って移り、リハビリ生活を送っている毎日です。歩行器がないと歩けず、トイレにも介護が必要という状態です。
そんなヨボヨボの高齢者の前に、同世代のユダヤ人で、刑事時代に接触があったアウシュビッツの生き残りの銀行強盗を生業としてきた伝説の男が40年ぶりに現れ、「ある組織から追われていて、まもなく殺される」「できれば救って欲しい」「もし殺されたら相手を徹底的にやっつけて欲しい」と頼まれます。
うさんくささを感じ、「すでに警察は昔に退職していて、元犯罪者を救うことなどできない」と一度は断りますが、何度も頼まれ、警察へ自首して過去の罪を認めれば保護プログラムに入れるよう進言しても良いと返答します。
そして自首するため信用のおける刑事を紹介し、その刑事と引き合わせますが、その直後に何者かに襲撃されて元銀行強盗は連れ去られてしまいます。
元々思うように身体が動かない上に、襲撃された際に負った怪我で満身創痍になりながらも、目の前で自首した男が連れ去られた事件を追うことになります。
最後のひねりは先に想像がつきましたが、前作に続き、とっても面白く読めたので、続編の「もう耳は貸さない」も読んでみたくなりました。
★★☆
◇著者別読書感想(ダニエル・フリードマン)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ユタと不思議な仲間たち(新潮文庫) 三浦哲郎
元が児童文学だけに、読みやすく内容もシンプルで、サン・テグジュペリやコエーリョ、宮沢賢治の小説を読むような感じです。
1910年に出版された柳田国男著の「遠野物語」にも登場しますが、伝説的な妖怪、座敷童(ざしきわらし)の話です。一般的に座敷童が住む家は繁栄するという言い伝えがありますが、この小説ではちょっと違った設定です。
タイトルの「ユタ」はキリストを裏切った「ユダ」ではなく、勇太という名前の小学6年生が「ユタ」とニックネームで呼ばれています。勇太はタンカーの船長の父親が海で亡くなり東京の学校から母親の実家がある東北の村にやってきます。
東京から来た子供ということで、なかなか地元の村の子とは仲良くなれず、いつもひとりぼっちですが、そこで出会うことになるのが「不思議な仲間」の9人の座敷童達です。
座敷童達には悲しい過去があり、いずれも生まれてまもなく口減らしで親に殺された過去があり、そうした過去の歴史も教わったり、自分で調べてわかっていきます。
そして座敷童と遊んでいるうちに、だんだん村の子と変わらない体力や考え方に変わっていき、学校でも友達ができていきます。
しかしやがて、座敷童が住み着いていた旅館の離れが火事に遭い、、、
「モヤシ」と呼ばれていた都会育ちのて少年が座敷童のおかげでたくましく成長していくという話と、人生の出会いと別れを前向きに描いたこれぞ児童文学というものでした。
★★☆
◇著者別読書感想(三浦哲郎)
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