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サイコパス(文春新書) 中野信子

サイコパス
テレビのコメンテーターとしてよく見かけることが多い、脳科学者の著者が2016年に出版した新書です。

私には元財務官僚で弁護士、同じようにテレビのコメンテーターとしても活躍している山口真由氏と見分けがつかないことが時々あります。頭の良いインテリ女性は似てくるものか、それとも単に私がボケてきているのかも。

私もそうですが、一般的にサイコパスというと、小説や映画で有名な「羊たちの沈黙」などに出ていたハンニバル・レクターのような「知能レベルが高く凶悪犯罪を良心の呵責もなく平然とやってのける人」というイメージを持ちますが、この著作を読むと決してそうとばかりは言えなさそうです。

例えば、詳細な検査もしてない状態で現代の人を名指しで「この人はサイコパシー(精神病質)」と決めつけることはできないでしょうけど、過去の偉人と言われる人でも、その日常的なふるまいや、対人関係、異性関係、言動、周囲の人の話しなどから、ある程度はサイコパシーが特定できるようです。

事例としては快楽のために単独で連続殺人事件を起こしたような人や、事件は起こしていなくても突出したプレゼン能力や人を魅了する対人コミュニケーション能力などで、多くの他人を引きつける魅力がある人などです(他にも諸々条件があります)。

つまりサイコパスと言っても、イコール凶悪犯罪者という意味ではなく、人類が進化してきた中である一定の必要とされる能力の持ち主、つまり危険を顧みず見知らぬ場所へ進んで冒険し、先頭に立って敵と戦い、多くの仲間をまとめ上げたりする極めて特殊な役割がありました。

ただ同時に反社会的で、スリルを求め、自分を攻撃する(自分の利益を阻害する)相手には容赦がなく、被害を受けた他人の心を思いやることができないという性質も持ち合わせています。また現代の裁判で犯罪が起きた理由をすべて他人のせいにするのも特徴です。

本著ではサイコパスと思われるのは日本で言えば織田信長、中国の毛沢東、オーストリアのマリア・テレサ、アメリカのJ・F・ケネディやスティーブ・ジョブズなどが挙げられています。

その他、実名には上がっていませんが、サイコパスが多く含まれる職業として、最高経営者(ワンマン経営者)や政治家、弁護士、外科医、トレーダーなどです。逆に言えばそのような職業にはサイコパスが向いているとも言えそうです。

世界各国の精神科医や脳科学者などがサイコパスの特徴や見分け方、治療方法について研究をしていますが、日本ではあまり聞いたことがなく、どちらかと言えば欧米人特有の問題という意識がありました。

サイコパス性のある人の発生率はやはり欧米に多いようですが、アジア圏はそれよりは少ないながら人口の1%ほどにはサイコパシーとみられる病質があることがわかっているそうです。

弁説爽やかで人たらし、人間としての魅力はあるけれど、自己利益のためには手段を選ばず、他人の痛みや苦悩は理解できず関心がないなど、サイコパスの条件をいくつか挙げていくと、「あぁ、あの人、、、」と誰でも数人が思い当たるでしょう。それだけ身近に感じられるようになったのが本書です。

★★☆

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高慢と偏見(上)(下)(ちくま文庫) ジェイン・オースティン

高慢と偏見
著者は1775年生まれ、1917年に死没した英国の作家さんです。自身が生きた18世紀から19世紀初頭の英国の中流家庭の風景と、華麗ながらも鼻持ちならない貴族社会を風刺したような小説を多く書いています。近代英国文学として非常に価値の高い作品とされています。

著者が生きた時代は英国で産業革命(石炭を利用したエネルギー革命)が発生した時代とほぼ同じですが、まだその恩恵は高価な産業機械などに限られていて、貴族でも移動は自動車などはまだなく、乗馬や馬車という時代です。

時代は違いますが谷崎潤一郎の「細雪」の英国ヴァージョンっていう感じで、細雪は4姉妹、こちらは5姉妹の恋愛物語とも言えます。

本著は著者が20~21歳の頃、1796年から1797年に書かれたもので、その時は出版を断られましたが、その後手直しをして1813年(38歳頃)に出版されたものです。とても20歳の女性が書いたと思えないほどの熟練さが感じられる物語です。

過去に3度、1940年、2004年、2005年に映画化され、1995年にBBCでドラマ化、日本では2012年に宝塚でミュージカル化、そして2009年には望月玲子によってコミック化もされています。

タイトルは原題が「Pride and Prejudice」で、ほぼ直訳です。

その「高慢」は、働かないことが美徳である裕福な貴族達の振る舞いを指し、そうした貴族と付き合う中で生じた主人公女性の貴族に対する偏見のふたつをうまく取り上げています。

最初はタイトルから難しそうな小説かな?と勝手に想像していましたが、全然そう言うことはなく、どこにでもよくいそうな噂話や痴話話などが大好きな女性達が中心で、当時の未婚女性達はお金持ちでできれば身分の高い男性に見初められることが最大の目的で(今もあまり変わりないけど)、舞踏会やお茶会などには着飾っていそいそ出掛けていく風景が目に浮かびます。

若い女性からみた英国の貴族社会と、紆余曲折を乗り越えてハッピーエンドに向かっていくという、当時の女性達にはたまらない魅力ある小説だったと思います。

ただ著者自身は一生結婚することがなかった人生でした。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

少女(双葉文庫) 湊かなえ

少女
2009年に単行本、2012年に文庫化された書き下ろし長編ミステリー小説ですが、淡々と進んでいく中で著者らしく最後に衝撃?のラストが用意されていました。

2016年には三島有紀子監督、本田翼、山本美月、真剣佑などの出演で映画が公開されています。

主人公の二人の女子高生が、転校生から友人が自殺をしてその死体を見たという話から、自分も知っている人が亡くなるところを見てみたいという欲求が強くなります。

ひとりは学校から補講として命じられた高級老人ホームの手伝いへ、ひとりはボランティアで話聞かせをするため病院へ行き小児科の入院患者と接するようになります。

いろんなところでそれぞれにつながっていて、内容的にリアリティにはまったく欠けますが、話としては面白く、よくできた物語として読むことになります。

外から見ていると、いつもつるんでいて自主性が乏しそうにみえる若い女性が、主人公達のように、ひとりで様々な行動を自主的に起こすというのが最近の人?っていうのはなにかモヤモヤします。

いずれにしても最近の女子高生のことなんかさっぱり理解不能なオヤジには、どこか違う時代と世界の話みたいで、読んでいて気恥ずかしささえ感じました。

★★☆

著者別読書感想(湊かなえ)

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寝ぼけ署長(新潮文庫) 山本周五郎

寝ぼけ署長
主に時代小説や歴史ものが多いという印象の著者の作品ですが、本著は終戦間もない1948年に出版された連作ミステリーで、主人公は警察署長ですが、事件の謎を解く探偵ものの小説と言っても良いでしょう。

収録作品は、1946年から1947年に小説雑誌に連載された「中央銀行三十万円紛失事件」、「海南氏恐喝事件」、「一粒の真珠」、「新生座事件」、「眼の中の砂」、「夜毎十二時」、「毛骨屋(けぼねや)親分」、「十目十指」、「我が歌終る」、「最後の挨拶」の10篇です。

地方の警察署署長として赴任してきた、いつも寝ぼけ眼で、仕事のないときには机でうたた寝をしていることから周囲からは「寝ぼけ署長」と呼ばれています。

主人公はその警察署長ですが、語り手はその署長の秘書?なのか同じ警察官舎に住んでいるワトソン役とも言える人物です。

様々な事件や問題が持ち込まれますが、犯罪者に対しても人情味ある解決策をとる場合もあれば、権力を笠に着た悪人に対しては、根回しをした上で脅しのような圧力をかけます。見かけの寝ぼけ署長とは違い、事件が起きるとなかなか爽快な内容です。

こうした見かけ上は「デキる人」と比べて平凡かそれ以下な雰囲気でも、事件を見事に解決するという意外性を見せてくれるのは、「刑事コロンボ」など以外にもよく使われる手ですが、この時代(1946~1947年)だと同じ1946年に登場した横溝正史著の金田一耕助シリーズ第1作目「本陣殺人事件」と同時です。

内容は、お金の単位に「銭」や、貧民長屋などが出てきて、時代を感じますが、発想が面白く楽しく読めます。

★★☆

著者別読書感想(山本周五郎)

【関連リンク】
 3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
 2月後半の読書 女ともだち、始まりはジ・エンド、もう過去はいらない、ユタと不思議な仲間たち
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1829

短劇(光文社文庫) 坂木司

短劇
2008年に単行本、2011年に文庫化された短篇よりも短いショートショートの小説集です。

収録作品は、「カフェラテのない日」、「目撃者」、「雨やどり」、「幸福な密室」、「MM」、「迷子」、「ケーキ登場」、「ほどけないにもほどかある」、「最後」、「しつこい油」、「最後の別れ」、「恐いのは」、「変わった趣味」、「穴を掘る」、「最先端」、「肉を拾う」、「ゴミ掃除」、「物件案内」、「壁」、「試写会」、「ビル業務」、「並列歩行」、「カミサマ」、「秘祭」、「眠り姫」、「いて」のそれぞれ独立している26篇です。

ショートショートと言えば、オー・ヘンリーやサキ、星新一、小松左京、筒井康隆などの作品を過去に読みましたが、著者のあふれ出るアイデアというか発想力、構成力が試されます。

名手と言われる人はまったく畑違いの長編小説を書いても名手です。というか逆(長編が巧い人はショートショートも巧み)かも知れません。そして短篇が巧いからショートショートも巧いかというと決してそうではないような気がします。それだけに短い文章でひとつの物語を完結させてオチまでつけるのは難しそうです。

著者の小説は今まで連作短篇ばかりを読んできましたが、このショートショートはそれぞれにユニークな内容で面白く読めました。現代的なものが多いですが、SF的なものやホラーのようなものまで多彩です。

個人的に好きなのは「最後の別れ」で、離島で戦争をしていて両軍の最後のひとりの兵士が生き残り、どうやら世界は滅亡したらしいことがわかります。ふたりは争いをやめ、ひとりがやがて訪れる「孤独」と「絶望」のうち「絶望」を避ける方法を提案して実行します。

ちょっとした時間の隅間にサクッと読めるので、電車移動などが多い人に向いています。

★★☆

著者別読書感想(坂木司)

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神秘(上)(下)(講談社文庫) 白石一文

神秘
2012年から2013年にかけて毎日新聞の夕刊に連載された長編小説で、2014年に単行本、2016年に文庫化されました。

主人公は講談社と思われる大手出版社で働く中年男性で、10年以上前に書かれたこともあり、主人公の年齢設定が私とほぼ同じ(著者とも近い)で、昭和から平成にかけてがむしゃらに働いてきたことを想起させる内容でした。

ただ内容は、平凡なリタイアをした私とは大きく違い、主人公は役員に登用された働き盛りに、いきなり末期の膵臓癌で余命1年と医者に宣告されます。

しかも5年前にそれまで20数年続けてきた結婚生活に終止符をうち離婚しています。独身という気ままさもあり、余命1年にできることをやってみようと、昔不思議な電話をもらったことがある女性を探しに神戸へ行くことにします。

自分の身に起きたことにはすべて理由があり、出会いや別れも必然のことだと徐々にわかっていきます。そのあたりのストーリーが壮大でかなり長いうえに、細切れの新聞連載小説ということもあって何度も説明が繰り返されることもありちょっと間延びした印象もあります。

それでも余命1年と宣告された主人公に起きる壮大な人間関係の輪が徐々に明らかになっていく様子はスピチュアル的要素もありながらドラマチックでたいへん面白かったです。

それと掲載された毎日新聞社で働く記者や、販売店がちゃっかり登場する著者のサービスもありました。そういう意味では、小説を書いていく中で主人公が勤務する出版社の仕事や小説を掲載する新聞社については下調べの手間を省いた感じもします。

★★★

著者別読書感想(白石一文)

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つやのよる(新潮文庫) 井上荒野

つやのよる
短編小説が多い作家さんですが、こちらは2010年に単行本、2012年に文庫化された長編小説です。

2013年にはこの小説を原作とした映画「つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語」というタイトルの映画が公開されています。

その映画の出演者は阿部寛、小泉今日子 、荻野目慶子、野波麻帆、高橋ひとみ、風吹ジュン、真木よう子、大竹しのぶと昭和生まれにとっては馴染みの女優陣がいっぱい出演しています。見ていませんけど。

本来なら主人公となるであろう艶(つや)という名前の女性が癌のため余命がわずかとなって、その夫が過去に艶と関係があった何人もの男性に「余命わずか」と知らせます。

その連絡を受けた艶との過去の思い出を秘めている男達のさらに周囲にいる妻や恋人など女達が様々な化学反応を起こすという話です。したがって艶という女性が表に出てくることはなく、その過去の行動や周囲が勝手に思いを巡らせて動いているという内容です。

女性の感情をうまく表現しているのでしょうけど、年配の男の私にはとても感情移入ができず、話もさっぱり頭に入ってきません。

第1章から第6章までは語り手が女性で、最終章の第7章だけ艶の夫で妻と子を置いて駆け落ち同然で出て行った男性が語り手です。その最終章だけはかろうじて理解できました。

★☆☆

著者別読書感想(井上荒野)

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いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件(角川文庫) 大崎善生

いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件
2016年に野性時代に連載され、2016年に単行本、2019年に文庫化された凶悪犯罪ノンフィクション作品です。

タイトルにあるように2007年に名古屋で起きたネットの闇サイトで知り合った3人が、路上を歩いていた見知らぬ女性を拉致し金品を奪い殺害するという衝撃的な事件で、闇サイトが公に初めて表面に登場してきた事件でした。

当時は「闇の職業安定所」というアングラサイトで仲間を集め、様々な犯罪がおこなわれていましたが、そうしたものがいろいろと形を変えて現在でもとくりゅう(匿名・流動型犯罪グループ)の裏バイトを集める手法として使われてきています。

殺害された女性は、31歳の真面目で囲碁が趣味の派遣社員で、幼児の時に父親を亡くして母と子のふたりで夢を持って暮らしていました。

帰宅途中の自宅まであと少しという夜道で男3人に拉致され、20数キロ離れた場所で包丁を突きつけキャッシュカードの暗証番号を聞かれます。そして暗証番号を答えたあと、犯人達に殺害されてしまいます。

犯人のうちひとりが自首したことで事件が発覚し、加害者の3人の男は捕まりますが、裁判では、殺害したのがひとりだけなら極刑にはできないという永山基準という判例の壁があり、納得いかない遺族たちの戦いが始まります。

私もこの事件が起きた2007年には関東に住んでいましたが、拉致事件が起きた場所(名古屋市千種区)のすぐ近くに1年ほど住んでいたことがあり、「近くに星野仙一氏の家もあったあのような閑静な住宅地でどうして?」と気になっていました。

その事件を被害者側の立場で取材したノンフィクションで、被害者の両親や被害者の子供の頃から社会人になってからのことなどとともに、事件の詳細が書かれています。

それにしても取り調べや裁判で被告が証言ででてきたことであろう、おぞましい殺害時の詳細な状況が繰り返し何度も何度も出てきてちょっと過剰演出しすぎかも。

また事件とはなんの関係もない被害者が生まれる前の両親や親戚のことについて長々と書くよりも、三人の加害者がこうした残虐な行動を起こすようになった背景を掘り下げることや、警察がマスコミの後手に回わり、被害者遺族に対する対応がまずかったことはもっと突っ込んで欲しかったです。加害者側は単に極悪非道の悪人だというだけではどうも片手落ちのような気がします。

同じ凶悪殺人事件のノンフィクションでも、調査報道のプロでもあるジャーナリストの清水潔氏が書いた犯罪ノンフィクション「桶川ストーカー殺人事件-遺言」は様々な関係者の背景が詳しく調べられていて、さらに非協力的で、頑として対応の悪さを認めようとしない埼玉県警と対立しながらも真実を貫いていました。

★★☆

著者別読書感想(大崎善生)

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1827
女ともだち(講談社文庫) 真梨幸子

女ともだち
今から19年前、2006年に単行本が出版され、2012年に文庫化された長編ミステリー小説です。2006年と言えばライブドアの堀江氏が逮捕され、唯一活況だったITバブルも弾けて、長引く不況が生活にも忍び寄っていた頃です。

東京郊外に突然建った高層マンションで起きる二人の女性が殺害されるという事件を中心に、その二人の女性の過去や友人関係が明らかになっていき、さらに容疑者として逮捕された男性が拘置所内で自殺するという混迷を迎えます。

主人公は探偵役になっているフリーのライターの女性で、雑誌にノンフィクションを売り込むため殺された二人の女性の関係者に会って取材をして回ります。

殺されたひとりの女性には、1997年に起きた東電OL殺人事件をモチーフにした、適齢期を逃したエリートキャリアウーマンが裏の顔を持っていたという流れで、女性の心理にグサッと刺さる?内面描写が多く、男性読者にとってはなかなか理解しがたい複雑なものがあります。

著者は現在還暦を過ぎていますが、この小説が書かれた時はまだ40代のバリバリ働く世代でしたので、そうした同世代の女性の日々の生活や心理描写は得意分野だったのでしょう。うまく描けています。

★★☆

著者別読書感想(真梨幸子)

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始まりはジ・エンド(双葉文庫) 新津きよみ

始まりはジ・エンド
2019年から2020年にWEBマガジンに連載されていた短篇小説集で、2020年に文庫で出版されました。WEB向けの小説と言うこともあってか、シンプルで軽快なストーリーで読みやすかったです。

収録作品は「絶縁」「永久に」「引き際」「余命」「陰のコレクター」「彼女のステージ」「死ぬまでにしてほしい五つのこと」の7篇です。

いずれも主人公は中年の女性で、日常や暗い心理描写が多く、この本の直前に読んでいた真梨幸子著「女ともだち」と中身は全然違うものの、どちらも女性心理の見にくいところをえぐり出すような内容だっただけに、読んでいて中身が混乱してきました。

ま、しかし登場人物の女性達のよく喋ること喋ること。たまに出てくる男性はというと頼りないかわがままかで、ほとんど喋る間もなく固まっていたりしています。

お勧めなのは最後の短篇「死ぬまでにしてほしい五つのこと」で、姉と妹の関係で、妹は結婚していますが末期の子宮癌に罹り余命がいくばくもない中、独身を通してきた姉に4つの依頼を口頭で依頼し、そして5つめの依頼を死後1ヶ月後に読んで欲しいと手紙を託されます。

妹の死期が迫る前の依頼を聞いて、あちこちへ出向き、望みを叶えていく姉の姿と、幸せではなかった妹の深謀遠慮とが、きっと幼いときから仲が良かったであろう姉妹の様子が描かれていて面白かったです。そしてオチはやっぱり「女は怖い」です。

あと著者の実家の父親は開業医ということもあり、多少の知識がある医療や薬についての話しが重要なところで良く出てきます。お得意分野ってことでしょう。

著者の小説は長篇と短篇両方読みましたが、この小説は人の生と死を描いたものが多く、ちょっと怖い犯罪ホラー要素のあるものから、亡くなってもほのぼのとした話まであり、バラエティに富んでいて良かったです。

★★☆

著者別読書感想(新津きよみ)

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もう過去はいらない(創元推理文庫) ダニエル・フリードマン

もう過去はいらない
2023年に読んだ「もう年はとれない」(2012年)が面白かったので、その続編を読みました。2014年に米国で出版後、2015年に日本語の翻訳版が発刊されています。

アメリカでは若い移民が多く、日本ほどは高齢化社会というわけではありませんが、それでもこうした主人公が88歳という小説は、今の日本の社会情勢を反映しているようでもあり、面白く読めます。

この高齢の主人公はテネシー州メンフィスで公民権運動が盛んだった時代に刑事をしていたユダヤ系移民で、現在はアメリカ人の平均寿命を大きく超えた高齢に加えて、前作で受けた銃創で介護付きグループホームに夫婦揃って移り、リハビリ生活を送っている毎日です。歩行器がないと歩けず、トイレにも介護が必要という状態です。

そんなヨボヨボの高齢者の前に、同世代のユダヤ人で、刑事時代に接触があったアウシュビッツの生き残りの銀行強盗を生業としてきた伝説の男が40年ぶりに現れ、「ある組織から追われていて、まもなく殺される」「できれば救って欲しい」「もし殺されたら相手を徹底的にやっつけて欲しい」と頼まれます。

うさんくささを感じ、「すでに警察は昔に退職していて、元犯罪者を救うことなどできない」と一度は断りますが、何度も頼まれ、警察へ自首して過去の罪を認めれば保護プログラムに入れるよう進言しても良いと返答します。

そして自首するため信用のおける刑事を紹介し、その刑事と引き合わせますが、その直後に何者かに襲撃されて元銀行強盗は連れ去られてしまいます。

元々思うように身体が動かない上に、襲撃された際に負った怪我で満身創痍になりながらも、目の前で自首した男が連れ去られた事件を追うことになります。

最後のひねりは先に想像がつきましたが、前作に続き、とっても面白く読めたので、続編の「もう耳は貸さない」も読んでみたくなりました。

★★☆

著者別読書感想(ダニエル・フリードマン)

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ユタと不思議な仲間たち(新潮文庫) 三浦哲郎

ユタと不思議な仲間たち
1971年に発刊された児童用童話ですが、原作がNHKのテレビドラマや劇団四季のミュージカルに取り上げられ、1984年にはあらためて大人向けに文庫化されロングセラーになっています。

元が児童文学だけに、読みやすく内容もシンプルで、サン・テグジュペリやコエーリョ、宮沢賢治の小説を読むような感じです。

1910年に出版された柳田国男著の「遠野物語」にも登場しますが、伝説的な妖怪、座敷童(ざしきわらし)の話です。一般的に座敷童が住む家は繁栄するという言い伝えがありますが、この小説ではちょっと違った設定です。

タイトルの「ユタ」はキリストを裏切った「ユダ」ではなく、勇太という名前の小学6年生が「ユタ」とニックネームで呼ばれています。勇太はタンカーの船長の父親が海で亡くなり東京の学校から母親の実家がある東北の村にやってきます。

東京から来た子供ということで、なかなか地元の村の子とは仲良くなれず、いつもひとりぼっちですが、そこで出会うことになるのが「不思議な仲間」の9人の座敷童達です。

座敷童達には悲しい過去があり、いずれも生まれてまもなく口減らしで親に殺された過去があり、そうした過去の歴史も教わったり、自分で調べてわかっていきます。

そして座敷童と遊んでいるうちに、だんだん村の子と変わらない体力や考え方に変わっていき、学校でも友達ができていきます。

しかしやがて、座敷童が住み着いていた旅館の離れが火事に遭い、、、

「モヤシ」と呼ばれていた都会育ちのて少年が座敷童のおかげでたくましく成長していくという話と、人生の出会いと別れを前向きに描いたこれぞ児童文学というものでした。

★★☆

著者別読書感想(三浦哲郎)


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1825
明日の食卓(角川文庫) 椰月美智子

明日の食卓
2016年に単行本、2019年に文庫化された、ちょっと怖い児童虐待や家庭内DVなどを扱った小説です。

2021年には同名のタイトルで瀬々敬久監督、菅野美穂、高畑充希、尾野真千子などの出演で映画化もされています。ちょうど公開がコロナ禍の中で、PR活動もできずちょっと不運でした。

主人公は同じ「ユウ」と読む名前の小学3年生の息子がいるまったく関係のない3人の母親達です。

その母親は、ひとりは専業主婦で、会社勤めの夫や学校では優秀な長男、同じ敷地に住む義理の母とも問題なく暮らしています。

ふたりめは、在宅でフリーライターの仕事をしながら小学3年生と1年生のやんちゃな兄弟と、プライドが高く仕事が少なくなってきたフリーのカメラマンの夫と暮らしています。

三人目は、シングルマザーで、朝と夜には近所のコンビニ、昼間は化粧品会社の工場で働く小学3年生の母親です。

小説の本文の前のプロローグに、母親が子供を痛めつける壮絶なシーンが出てきて、果たしてこれら3人の母親にいったいなにが起きたのか?という前振りになっています。

3人の母親を中心にしたドラマがそれぞれに展開していきますが、こうした小説に登場する夫達と言えば、だいたい影の薄い情けない小心者と決まっていますが、その通りの展開です。

私が子供だった60年前とは違い、今は様々な苦労や問題があるのだなぁと思いつつ、現代の親達は自分自身の兄弟や親戚が少ないせいか、子育ての要領や母親としての自覚が少ないのかなぁと思ったり。

昔は上流家庭でもなければ、母親はなにかしら働いていて、子供はほったらかしか兄弟や近所の人達に育ててもらったようなところがありました。

この小説を読んでいると、なにか今は両親と子供の関係は大人と子供の関係ではなく、まるで友人同士みたいな印象があり、親に対しての尊敬や憧れ、信頼などみじんもなくなっているように思えてきます。

★★☆

著者別読書感想(椰月美智子)

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悪貨(講談社文庫) 島田雅彦

悪貨
2010年に単行本、2013年に文庫化された小説で、「講談社百周年記念書き下ろし100冊」として企画された作品です。2014年には黒木メイサや及川光博が出演するテレビドラマが製作されています。

著者の小説は過去4作品を読んでいますが、それらとは毛色の違うクライムノベルの作品でちょっと驚きました。

タイトルの「悪貨」とは、「品質が悪い貨幣」のことですが、ここでは巧な偽札を使って日本経済を混乱させる悪人と、その悪人を子供の頃に救い、その金を善意の寄付と信じて運営してきた貧困者救済組織で新たな自主経済圏を日本国内に作っていこうとする男などを中心とした内容です。

その中に、明らかに偽札とわかる百万円が見つかり、その供給元として中国の黒社会が関係していることがわかり、警視庁の女性刑事が潜入捜査員として深い闇の中に入っていくことになります。映画ではその女性刑事が主役のような感じです。

偽札と言っても国家レベルの経済力と施設、職人が揃えば本物と誰も見分けがつかないレベルのモノが作れるということです。

紙幣の紙ですら、同じ木材を育て、その木材を漉いて紙を作り、すかしをいれてと気の遠くなる話しですが、考えれば戦争が起きると、国家レベルで偽札を作り、ばらまいて相手国の経済を混乱させるというのが半ば常套手段にもなっていました。

現代では電子マネーが増えてきてはいますが、紙幣が一掃されるということは考えにくく、逆に偽札で電子マネーに換金してしまえばロンダリングしやすくなり、偽札の多い貨幣は世界中で信頼を失い、国家の経済危機へとつながります。

昨年日本でも新紙幣が発行されましたが、偽札の流通を止めるには、こうしたよりセキュリティ性のある新札への切り替えをよくおこなうことですが、これが頻繁だと偽札発券機の更新や自販機の入れ替えなど逆に国内外で信用をなくしてしまうというジレンマもあるでしょう。

なかなか考えさせられるエンタメ小説でした。

★★☆

著者別読書感想(島田雅彦)

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罪の轍(新潮文庫) 奥田英朗

罪の轍
過去に読んだ著者の小説の中では1964年の東京オリンピック開催直前のごちゃごちゃした東京を舞台とした「オリンピックの身代金」が一番好きですが、それと同時期の犯罪小説で、2019年単行本、2022年に文庫化されました。

子供の頃に親の虐待で子供の頃の記憶を失い、大きな音や子供の頃のことを思い出すと突然失神する精神的障害をもつ北海道礼文島の出身で空き巣の常習犯が、仕事仲間にはめられて島にいられなくなり東京に出てきて犯罪に巻き込まれていくというストーリーです。

私は東京オリンピックが開催された時はまだ小学生でしたが、その頃の記憶は残っていて、町へ出ると傷痍軍人らしき手や足の片方がない人が物乞いをしていたり、都市部以外はまだ舗装路が少なく車が通るとすごいほこりが舞い上がるような時代を思い出します。

小説の中に出てくる主人公の刑事がおこなう事件の捜査も、警察無線や携帯電話、防犯カメラもない中で、事件の捜査は今から考えると極めてアナログで、聞き込み捜査が中心の人海戦術と、刑事がそれぞれ抱えている情報屋や親しいヤクザからネタを集めていきます。

そうした捜査方法は今とは大違いですが、官僚組織としての警察は、体育会系のノリの上意下達で、地域ごとの縦割りのシマ意識が強く、幹部は常に保身を優先するというのは今とまったく変わりがないのが笑えます。

しかしこの時代を描いた小説は、郷愁が呼び起こされ、私にとっては懐かしいと共に共感できる楽しいものです。

★★★

著者別読書感想(奥田英朗)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

冷たい太陽(光文社文庫) 鯨統一郎

冷たい太陽
2014年単行本、2016年に文庫化されています。著者の小説は読みやすくライトな連作短篇が多いのですが、これは以前読んだ「努力しないで作家になる方法」と同じ長編小説です。

しかしこちらは誘拐ミステリー仕立てになっていて、決してただでは終わらない、著者独特の大どんでん返しの作品でした。

誘拐を描いた小説は、天藤真著「大誘拐」(1978年)、荻原浩著「誘拐ラプソディー」(2001年)、雫井脩介著「犯人に告ぐ」(2003年~)など、日本の著名な小説だけでもざっと100作品以上ありそうです。

誘拐映画でもっとも有名な黒澤明監督・脚本作品「天国と地獄」の原作は日本の小説ではなく、有名なアメリカ人推理作家エド・マクベイン著の「キングの身代金」(1959年)で、洋の東西問わず誘拐事件は小説のネタとしてよく使われます。

ストーリーを書くと最初からネタバレになってしまうので書きませんが、誘拐ではもっともリスクが高く、犯人を捕まえやすいのが、身代金の引き渡し時ということはよく知られていますが、多くの小説ではその手段に工夫が見られます。

この作品では誘拐事件が起きて、5千万円の身代金の5千万円で「冷たい太陽」と名付けられたダイヤモンドを買い、それを公園に置いた伝書鳩にとなかなかユニークな指示がなされます。

読んでみてのお楽しみですが、誘拐の裏に隠された謎はきっと誰もが騙されるでしょう。

ただ、私は読んでいて序盤にいくつかの違和感があり、その違和感が後になって「なるほど」と理解することができました。

★★☆

著者別読書感想(鯨統一郎)

【関連リンク】
 1月後半の読書 たのしい知識、風をつかまえて、燃える男、アメリカの夜、最愛
 1月前半の読書 世界の終わり、あるいは始まり、世界でいちばん透きとおった物語、クズリ ある殺し屋の伝説、向こうの果て
 12月後半の読書 指名手配、白い遠景、時効を待つ女、歴史のミカタ

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1824
毎年恒例となっている2024年の1年間に読んだ書籍の中で、「これはお勧め!」という分野別の1冊を紹介します。2013年から始めて今回で11回目となります。

私が読むのは新刊書や単行本ではなく、発刊された年代は問わず、基本は新書か文庫の書籍です。したがって中には戦前の作品もあれば、2022年頃の比較的新しいものまで含まれます。

まずこの11年間、読んだ作品数(表とグラフ)と冊数(表のみ)の推移です。1作品で上・下巻など複数の冊数がある場合、1作品2冊というカウントになります。

新書
ノンフィク

冊数 海外
小説
冊数 日本
小説
冊数 作品
数計
冊数計 月間
冊数
2013年 86 98 8.2
2014年 26 26 13 17 62 70 101 101 8.4
2015年 17 17 12 65 94 107 8.9
2016年 14 14 12 16 65 79 91 109 9.1
2017年 26 26 16 21 62 70 104 117 9.8
2018年 26 26 9 13 64 71 99 110 9.2
2019年 29 29 8 9 71 77 108 115 9.6
2020年 29 30 14 19 51 56 94 105 8.8
2021年 22 22 13 21 58 69 93 112 9.3
2022年 11 11 15 16 73 80 99 107 8.9
2023年 16 16 17 27 63 67 96 110 9.2
2024年 24 24 14 17 58 60 96 101 8.4


読書種類別作品数推移グラフ
読書種類別作品数推移グラフ

 作品数    冊数    月間平均冊数
2013年 86 98 8.2
2014年 101 101 8.4
2015年 94 107 8.9
2016年 91 109 9.1
2017年 104 117 9.8
2018年 99 110 9.2
2019年 108 115 9.6
2020年 94 105 8.8
2021年 93 112 9.3
2022年 99 107 8.9
2023年 96 110 9.2
2024年 96 101 8.4

まだ仕事が現役だった頃の2020年までと、2021年以降で比べると、暇な時間が増えるので読書量も増加するかな?と思っていましたが、そうはならず、横ばいが続いています。

一番の理由は年齢と共に視力と集中力が落ちてきて、長時間読書をするのがだんだんツラくなってきました。とりあえず老化を原因としておきます。

40代までなら、休日などにぶっ続けで5~6時間読書することは苦でもなかったのに、今は1~2時間で目がしょぼしょぼとつらくなり、集中力も途切れてきます。なかなかまとめて一気に読むということができなくなりました。

読書自体は好きなので大きく数が減ることはなくても、今後増えることはたぶんなく、徐々に減っていくだろうと思っています。かといってオーディオブックを聞くにはまだ抵抗感があります。

書籍の種類別は、ポリシーとしてできるだけジャンルを決めず、新書やノンフィクション、海外小説、日本の小説を織り交ぜて読むようにしています。ただ現役時代にはビジネス関連書も読みましたが、リタイアしてからは興味がなくなってほとんど読まなくなりました。

この11年間の合計ジャンル別作品数の割合は、新書/ノンフィクション/ビジネスをひとまとめにして22%、海外小説が13%、日本小説が64%となっています。どうしても容易に安く手に入る日本の小説が多くなります。

2024年は新書/ノンフィクションが24作品(25%)24冊、海外小説が14作品(15%)17冊、日本小説が58作品(60%)60冊となっていて合計96作品101冊、月間平均8.4冊となりました。

前年(2023年)と比べると、新書/ノンフィクションが+8作品+8冊、海外小説が△3作品△10冊、日本小説は△5作品△7冊となっていて、合計では作品数は同数ですが、冊数では△9冊となりました。

  ◇   ◇   ◇

さて、2024年のジャンル別ベスト書籍の発表です。

まず新書/ノンフィクション部門です。

新書/ノンフィクションは24作品(24冊)読みました。

その中からベスト候補作としては、

・健康を食い物にするメディアたち 朽木誠一郎
・日本史の内幕 戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで 磯田道史
・おとなの教養3 池上彰
・アウトサイダー 陰謀の中の人生 フレデリック・フォーサイス
・ロウソクの科学 ファラデー
・ゾディアック ロバート・グレイアウミス

の6作です。

その中からベストは、、、、、、

アウトサイダー 陰謀の中の人生」 フレデリック・フォーサイス著

に決定です!パチパチパチパチパチ

アウトサイダー
感想は、「3月後半の読書と感想、書評(アウトサイダー 陰謀の中の人生)

元々ベテランのミリオンセラー作家ですから文章を書くのがうまいのは当たり前ですが、人気作家になるまでの激動の自分の半生が半端なく面白かったです。

ただ、自伝でもあるので、都合の悪いところや悪評のあるところには触れずに、自分の英雄伝のようになっているのは仕方がないところで、話半分というか客観的な評判や事実とは違うと差し引いて読まないといけないでしょう。

これは日経新聞で、政治家や実業家などが連載で自分の半生を書く「私の履歴書」でも同じで、知らない人が読むと「この人は聖人君子か?」と思ってしまいそうになりますが、灰色や腹黒いところにはあえて触れず、事実はかなり異なっているというのがもっぱらです。

それでも、当時英国と敵対していた東ドイツにいる諜報員へ頼まれて届け物をするシーンなどは、小説さながらの緊迫した筆力でドキドキが止まりませんでした。

評判になっていた「ロウソクの科学」や、稀代の凶悪未解決連続殺人事件をジャーナリストが追ったノンフィクション「ゾディアック」なども悪くはなかったですが、ちょっとベストとは違うかなって感じです。

  ◇   ◇   ◇

次は海外小説部門です。

海外小説は、14作品17冊読みました。

その中から2024年ベスト書籍の候補は、

・指名手配 ロバート・クレイス
・カササギ殺人事件(上)(下) アンソニー・ホロヴィッツ
・石を積む人 エドワード・ムーニー・Jr.
・四つの署名 コナン・ドイル
・25時 デイヴィッド・ベニオフ

の5作品です。

但し★3を付けた作品は、上の2作品だけで、下3つの作品は★2でした。2024年は海外小説が不作の年(って読んだのが2024年だったというだけですが)で残念でした。

海外小説のベスト書籍は、、、、

カササギ殺人事件」アンソニー・ホロヴィッツ著に決定です!パチパチパチパチパチ

カササギ殺人事件
感想は、「11月後半の読書と感想、書評(カササギ殺人事件)

指名手配」も捨てがたい作品ですが、いかにも都合良く作られた設定がやや鼻につき、日本で映画も作られた「石を積む人」もたいへん面白く読めましたが主人公にいまいち共感できませんでした。

「カササギ殺人事件」は、上下巻にまたがり長くて途中だれてしまいそうでしたが、それを差し引いても小説の主要な登場人物のひとりの作家が書いた長編小説を、そのまま小説の中に取り込んでしまうという驚愕の推理小説で、そのような奇想天外な手法に敬意を表しこれを2024年のベストとしました。

たまたまですが、1月に読んだ杉井光著「世界でいちばん透きとおった物語」の中に、小説の様々なレトリックとしてこの「カササギ殺人事件」がひとつのモデルとして登場し驚きました。

2025年はもう少し海外小説を増やして候補作を充実させようと思っています。

  ◇   ◇   ◇

最後に読んだ作品が一番多い日本の小説です。

候補作は、

・おもかげ 浅田次郎
・森へ還れ コロナからの警告 山田博愛
・砂上 桜木紫乃
・ふなうた 短篇集モザイクII 三浦哲郎
・総員起シ 吉村昭
・検事の本懐 柚月裕子
・雪の階(上)(下) 奥泉光

の7作品で、最後の作品だけ★2ですが、あとは最大の評価★3です。

この中からベストの1作を選ぶとすると、、、、、、、

森へ還れ コロナからの警告」山田博愛著に決定です!パチパチパチパチパチ

森へ還れ
感想は「9月前半の読書と感想、書評(森へ還れ コロナからの警告)

今回はこの日本小説の審査がもっとも悩みました。

2024年は新型コロナから完全に脱して日常が戻った年でもあり、すでにパンデミックはどこか遠くへいってしまった感がありますが、2020年当時の逼迫した社会を忘却の彼方にしてはならないと思っています。

病院や学校、職場、飲食店、様々なイベントなどの社会構造が大きく変わるきっかけとなり、サプライチェーン、エッセンシャルワーカー、リモート学習、ヴァーチャルイベント、在宅リモート勤務など、多くの局面で変革と忍耐、柔軟性が求められた数年間でした。

そうしたコロナ騒動をテーマにし、地方の中山間地で開業している医師の著者自身が小説の主人公となり、コロナ騒動を冷静に客観的にとらえ、「なぜヒノキの産地ではコロナ患者が極めて少ないのか?」という不思議な体験に基づいて様々な研究施設に情報提供するなど奮闘します。

この小説を読んだ後には、やはり都会は高齢者にとっては便利ではあるけれど危険極まりなく、自然が多い中で暮らすのが最良かなと思えてきます。

ちょっと思い込みが過ぎるとも言えますが、世界中が藁にもすがりたい時期があったことも確かで、あくまで小説としてとらえれば興味深く読めました。

小説としての質からいえばベテラン専業作家の浅田次郎著「おもかげ」や、奥泉光著「雪の階」、三浦哲郎著「ふなうた 短篇集モザイクII」のほうがずっと優れているのは当然ですが、様々なコロナ騒動を描いた小説がすでにいくつも出てきている中、そしてこれからも出てくると思いますが、いち早く文庫で読めたことも高評価のひとつです。

  ◇   ◇   ◇

そして日本小説の次点は「総員起シ」吉村昭著を選びます。

これは著者が丁寧に様々な関係者に取材をして、曖昧になっていた戦中に起きた事件や事故などの話しがメインの短篇集で、著者が戦後何十年経ち、事件や事故の証言者が次々と故人となっていくことに憂慮し、急ぎ調べて書き上げたものと思われます。

総員起シ
感想は「2月後半の読書と感想、書評(総員起シ)

戦争中に起きた事故や事件などは、メディアへの規制もあり、どさくさに紛れ、軍は秘密主義に凝り固まり、当時は目撃者や関係者は口を固く閉ざし、新聞やテレビなどマスメディアの使命はまったく果たされませんでした。

したがって残されている資料が少ない中、関係者を探し出して、口の重い高齢老人から話しを聞き出すのは本当に大変な作業だったでしょう。

そうした日本の暗黒の歴史の一部に光をあてて、掘り出したのがこの小説です。ただ小説という形態にはなっていますが、中身はほぼノンフィクションで、伝聞や記憶違いも考慮し、あるいは著者の想像も含めていることから小説という形態を取らざるを得なかったのでしょう。。

こうした史実に則った様々な話しを小説として出すことが、愚かだった当時の権力者と、罪のない一般庶民や召集令状1枚で無残な最期を遂げざるを得なかった兵士達の無念に少しでも報いるものだろうと思いました。

  ◇   ◇   ◇

年々、老化による集中力の低下や、視力の減退を感じていて、今後読書量が従来より増えることはなさそうです。

同時に自宅にたまって置き場所がなくなってきた書籍の処分もそろそろ始めないと、家族に迷惑をかけてしまいそうです。

読書好きな知人に「そういう悩みはないか?」と聞くと、「読み終わったら売れるものは売って、売れないものはすぐ捨てる」という人が一番多いのですが、私はどうにも貧乏性なのか、書籍を捨てるということに抵抗があってできません。

段ボールに詰めてブックオフに送れば、「買い取れるものだけ買い取り、あとは処分してくれる」という方法があるのを知りましたが、それも本が不憫に思えてまだ実行できずにいます。所有欲が強いせいかも知れません。

ちなみにもし全部の蔵書を段ボール(2リットルペットボトル6本用)に詰めようとしたら、40~50箱ぐらいにはなりそうです。

32年前に今の家に引っ越しをしてきた当時、すでに蔵書は千冊を超えていて、10数箱もあるメチャ重い段ボール箱を2階まで運んでいた引っ越し業者の若い兄ちゃんがかなりへばって怒った顔をしていました。

今、もしこのまま引っ越しを頼むと、かなりの割り増し料金を取られそうで恐ろしい限りです。

さてさてどうしたものか、、、

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