リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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湿地 (創元推理文庫)
2000年に著者の地元アイスランドで発刊され、日本語の翻訳版は2012年に発刊された長編ミステリー「エーレンデュル警部シリーズ」の第3作目です。
但し、シリーズ第1作と第2作は日本語の翻訳版は出ていないようですから、国内ではこれがシリーズ第1作目となります。
著者の出身地でもあり、小説の舞台となるアイスランドって?日本人にはあまり馴染みがない国ですが、2018年のサッカーW杯ロシア大会に初出場し、人口わずか35万人という小国でありながら、強豪国のアルゼンチンと引き分けるなど大健闘したことで記憶にある方も多いのではないでしょうか。
また首都のレイキャビクという名前は意外とよく知られていて、日本と同様に水産業が盛んな地域で、観光では北極にも近くオーロラを見に行く人達が多く集まるところです。
そのアイスランドで老人が殺されるという殺人事件が起きますが、単純な物取りのような雑な犯行のようにも見えますが、犯人が書いて置いていったものと思われる謎の書き置きがあったことで、主人公の警部が殺された老人の過去を調べていきます。
その地道な捜査が結構退屈で、ダラダラとした文章が続きますが、特に驚愕の展開というのではなく、次第に過去の出来事が次第に判明し、犯人と犯行に至った理由が明らかになっていきます。
タイトルは、殺害された老人が住んでいたアパートが以前は湿地帯で、行方不明となっている老人の古い仲間がその地下に埋められているに違いないというところから、老人の過去が明らかになっていくきっかけとなり、その象徴として名付けられたのかなと思います。
警察小説と言えばアメリカかイギリス、せいぜいフランスぐらいしか思いつきませんが、アイスランドという地域の特性や、捜査方法などの違いなども楽しめ、広い世界を堪能できて楽しめます。
でもハッキリ言って、原書の原文が元々長ったらしいのか、翻訳がまずいのかわかりませんが、もっと簡潔に書いてくれ!って思いました。この内容の話しなら390ページある文庫本の1/3のページは容易に削れそうな気がします。
★★☆
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偶然のチカラ (集英社新書 412C)
2007年発刊の新書です。内容がとても宗教的というか「こう理解するべきだ」みたいな教えが多いなと思っていたら、著者が宗教人類学者さんなのですね。
学者先生に多い、上から目線で、教義を教えてやるというスタイルにはやや反感を覚えてしまいますが、内容もあまり役には立ちそうもなく、どうでも良さそうな話しが多いので、軽い気持ちで読み流していけるので苦にはなりません。
数学論で確率は計算ができますが、生活の中で起きる偶然とは、必ずしも確率と同じではありません。
そこが、この本を書いたのが数学者ではなく宗教学者さんなのかな?と思ってしまいました。
ストレスがかかる日々の仕事や生活において、こうした偶然のチカラを理解しておくのと、イライラしたり悩むのとでは、その先の健康状態が大きく変わってきそうというのが私の感想と結論です。
★☆☆
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よるのふくらみ (新潮文庫)
女性らしい視点で書かれた男女3人の人間ドラマで、2014年単行本、2016年文庫化された連作短編小説です。
著者の本では、過去に「ふがいない僕は空を見た」(2010年)と「晴天の迷いクジラ」(2012年)を読んでいます。
1012 3月後半の読書と感想、書評「晴天の迷いクジラ」
931 6月前半の読書と感想、書評「ふがいない僕は空を見た」
主人公は幼なじみと同棲中の若い女性ですが、その同棲相手の弟が仲の良かった同級生でもあり、男女の関係でややこしくなっています。
女性視点で小説を書くと、一般的に登場人物の男性に対しては辛辣で、どうしようもない男達が書かれることが多いのですが、この小説に出てくる男性は思いやりもあり、イジメに立ち向かい、ちゃんと正社員で働き、コミ障害でもなく、両親とも仲が良く、と女性からすれば憧れの良い男性に描かれています。
逆に女性の主人公が、表向きとは違い、内面的な苦悩で心理的に破綻が見られていて、そういったところが女性読者にはウケそうな気がします。
本作品と同様に、結婚前の女性心理を描く小説というのが多いのも、読者に同年代の同じような悩みを持つ人が多いのでしょうか、その内面まではオジサンには理解できないしよくわかりません。
★★☆
◇著者別読書感想(窪美澄)
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転々 (新潮文庫)
1999年に単行本、2002年と2005年に文庫化された長編小説です。著者の本は2001年に「理由はいらない」の1作だけを過去に読んでいます。
そしてこの作品は2007年にはオダギリジョーと三浦友和主演で映画が制作されています。
小説の中の二人の主人公のイメージと、役者さんのイメージがどうも合わない気もしますが、見ていないのでなんともです。
タイトルから想像できるように、目的地まで右往左往しながら、東京の街を転々と歩き回るというストーリーです。
映画では「イージー・ライダー」(1968年)や「ペーパー・ムーン」(1973年)、「あなたへ」(2012年)などロードムービーというのがよくありますが、当然小説でもそういう流れのものはたくさんあります。最近読んだ中で記憶に残っているのはローレンス・ブロック著「盲目の預言者」が面白かったかな。
3月前半の読書と感想、書評 2018/3/14(水)「盲目の預言者」
主人公は、大学を休学中で、アルバイト先のストリップ劇場の踊り子と恋に落ち、一緒に逃げようとしますが失敗し、闇金の借金に追われている中で、その借金取りの男からある提案を持ちかけられます。
「目的地まで一緒に歩くのに同行してくれたら100万円支払う」というもので、その理由などが歩きながら話しをしていく中で徐々に明らかになっていくというロードドラマです。
現実には絶対にありそうもないリアリティのカケラもないストーリーですが、それだけに自由な発想で奇想天外なことが次々と待ち受けていて、それなりに楽しめます。
こうした突拍子もない発想力の源泉はどこからやってくるのでしょうかね。
★★☆
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遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫)
読んですぐに感想を書けば良かったものの、少し間が空いてしまい、内容があまりにも薄味でサラッと流れて言ってしまったたため、ほとんど記憶に残っていないというのが本音のところです。
初出は単行本で2009年、文庫版は2012年に発刊されています。主に若い女性向けと思える、ほんわかする(らしい)12編の短編集です。著者の作品を読むのはこれが初めてです。
起承転結とか、刺激的なドラマ性とかはなく、ただ淡々と女性の深層心理を表現しているのかなぁという感じで、デビューから実質2作品目の本著は、その後の著者の活躍を見ると、この作品で多くの働く女性に共感を持たれたのではないかなと思います。
著者に対してなんの偏見も恨みもありませんが、60過ぎの昭和なオッサンが読むのにはあまりに不適でした。とにかく覚えちゃいないので、感想もへったくれもありません。申し訳ない。
★☆☆
【関連リンク】
6月前半の読書 不死身の特攻兵、友情、あなたにもできる悪いこと、山女日記、アルトリ岬
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不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)
著者は私と1年違いの生まれで同世代の劇作家、演出家として有名な方で、バラエティ番組などでも時々見かけますが、こうした硬派な本を書いているとは知りませんでした。
この新書は2017年に発刊され、その後2018年には「不死身の特攻兵 生キトシ生ケル者タチヘ」と改題したマンガも出版されています。
私の世代が子供の頃はというと、まだ太平洋戦争の事柄についてまだ色濃く様々な形で残っていました。自分の祖父母や両親、親戚で、戦争と関わっていない人はいなかった時代です。
例えばテレビでは「ゼロ戦黒雲隊」、その映画版「零戦黒雲一家」や「東宝8.15シリーズ」、漫画では「紫電改のタカ」など、小学生の子供が美化された戦争ドラマやコミックをよく見ていたものです。
プラモデルも、B29やコルセア、ムスタングなど当時の大人からすれば憎々しい敵機ですが、そのスマートさや合理性の塊のユニークさで作りがいがありました。
なので、著者を含む我々の世代以上は、内容がやや不正確で偏向しているのはさておき、太平洋戦争における事象にはかなり敏感で、この著者が深く興味を覚える気持ちもわかります。
前置きが長くなりましたが、タイトルの「不死身の特攻兵 軍神」とは、陸軍のパイロット佐々木友次氏のことで、陸軍として初の特攻攻撃を含む9回の自爆特攻を命ぜられながら、生きて帰還してきたという強者の話です。
しかしよく読むと9回特攻攻撃で敵と交戦したわけではなく、あるときは味方の支援戦闘機が反転したので敵前で一緒に反転して帰ってきたり、雲が多く敵が見つからずに帰ってきたり、機体の調子が悪く飛べなかったりを含み、9回の命令を受けたということです。
ま、それでも強運の持ち主で、実際に米艦に爆弾を落としたこともある強者には違いありません。
結局このパイロットは戦争を生き抜き、2016年92歳の天寿を全うされます。
この元特攻パイロットへのインタビューを中心に書かれていますが、その部分は全体の2割程度、その他は、他の文献からの引用と著者の意見や感想、推測が重ねられています。
インタビューの迫力と比べると、引用、意見の部分は著者の憶測や感想でしかなく、ちょっと退屈なのが残念でした。
★★☆
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友情 (新潮文庫)
この小説は著者が34歳の時、1919年(大正8年)に大阪毎日新聞に連載され、1920年に単行本となったものです。
1919年頃と言うと、日本では同年に終結した第一次世界大戦で戦勝国となり、戦争景気が盛り上がった時期でもあり、また国際的な立場も高まってきた頃ですが、同時に軍部が国内で力を増していく途上です。
そうした世情の中でも新聞連載小説では今も昔も恋愛ものが主流のようで、その例に漏れずこの小説も恋愛をベースにした男性の熱き友情と、女性が絡んで破綻するという物語です。
ストーリーはシンプルで、すぐに映画化もできそうですが、未だにそれができた様子はなさそうです。大正ロマンを重ね合わせると、良い映像になると思うのですけどね、、、
テレビドラマとしては42年前の1977年に寺尾聰主演のテレビ銀河小説(NHK)として制作、放送されたようです。私がまだバイトで忙しかった学生時代のことで、当然見ていません。
主人公は23歳の大卒の脚本家で、著者自身の若い時のことをベースにして書いたものとされています。
主人公は自堕落な生活をおくっていながら、友人の妹に一目惚れしてしまい、気持ちの中ではもう自分の妻になるのはこの人しかいないと決め、何度も友人の家へ遊びに行き、きっかけを作ろうとしますが、なかなかうまくいきません。
そのことを別の親友に話しをするものの、その親友はその女性と会っても冷ややかな対応をします。ところが逆に女性は、主人公よりもその親友に惹かれていきます。
そうこうしていると、その親友が突然ヨーロッパへ長期間行くと言い出し、それによって女性の想いが断ち切られ、自分に好意が向くのではないかと身勝手にも期待します。
そして女性に付き合って欲しいと手紙を書いたものの、体よく断られてしまい、しかもその女性が知人の新婚旅行に同伴し、ヨーロッパへ行くと決めます。もちろんヨーロッパで生活している親友と会うためにです。
たいへん仲が良く、お互いに信頼し合っていた男同士の友情が、ひとりの女性が入ることで、見事に壊れてしまうと言うはかない悲恋物語ですが、身勝手でさしたる優れた才能もない主人公に対し、哀れみや同情は起きません。
短い小説ですので、中高生が読書感想文に選んで書くのには適している感じですが、主人公男性の心の葛藤をどう表現するかが、感想文の評価のキモとなりそうで、難しいところです。
★★☆
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あなたにもできる悪いこと (講談社文庫)
1999年に「素晴らしい一日」でデビュー(単行本は2001年刊)した御年66歳の立派な高齢者に域に達している女性作家さんの作品です。今回初めて読ませていただきました。この小説は2006年単行本、2009年に文庫化されています。
著者は変わった名前と思ったらアメリカの小説家「アン・タイラー」の名前をもじって付けたペンネームで「たいら あすこ」と読むそうです。姓と名に間がないと「へいあん としこ」とかで覚えてしまいそうです。
内容は連作の短編という形式で、口八丁な主人公の中年男性が詐欺や脅迫すれすれの様々な仕事をしていくというなんてことはない物語。
口八丁手八丁の悪人が主人公でコメディタッチというと伊坂幸太郎著の「陽気なギャングシリーズ」やローレンス・ブロックの「泥棒探偵バーニイシリーズ」などを思い浮かびますが、それらまでには遠く及ばない感じです。
ただ女性作家らしく、男性の主人公より、脇役で出てくる女性の心理や行動がとてもリアルで、またぶっ飛んでもいたりして、男性が読むと女性恐怖症に一歩近づくことができそうです。
どうせなら、男性を手玉に取るそうしたぶっ飛んだ女性や悪女を主人公にした短編でも書けばもっと面白くなったかもしれません。
★☆☆
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山女日記 (幻冬舎文庫)
著者の趣味でもあった山岳登山の連作短編小説で、2012年から2013年にかけて文芸誌に連載された「妙高山」「火打山」「槍ヶ岳」「利尻山」「白馬岳」金時山」「トンガリロ」「カラフェスに行こう」を1冊に収録し、2014年単行本、2016年文庫が発刊されています。
主人公は短編ごとに変わってきますが、前に出てきた人物が、あとの作品でもちょい役として出てきたりします。
2016年~2017年には工藤夕貴などが主演して、この原作を元にしたNHK BSプレミアムの「プレミアムドラマ」が制作、放送されています。ただし登場人物などを見る限り、内容は小説とずいぶん違っているような感じです。
最近読んだ同じような山ガールをテーマにした小説では、書いたのは男性ですが、北村薫著「八月の六日間」が、非日常感があふれる例えば登山に慣れた人が歩きながら栄養を補給するため、長い羊羹をかじりながら歩くシーンなど、たいへん興味深くて面白かったです。
こちらの小説では、主人公は毎回変わりますが、だいたいは30歳前後の女性で、若い頃には山岳部や同好会で少しは経験があり、しばらくブランクがあったものの、再び戻ってきたというような方が多いです。これは著者自らをモデルにしているのでしょう。
私も山登りではなく単なるウォーキングですが、ほぼ毎日1時間ぐらいは歩いています。歩くとこの小説の中でも出てきますが、いろいろと自分や人のことをあれこれと想像したり、考えることができて面白いのです。
これが騒がしい電車の中だったり、クルマを運転していたりでは、とても考えたり思いついたりしませんが、単純に足を右左と進めていくだけの単純な運動中だと、脳がその単純作業以外のことをやりたがるのか、悩んでいたことで名案が思い浮かんだり、様々なアイデアが次々と浮かんできます。
今はウォーキングのモチベーションは、それに尽きると言っても良いぐらいに、こんがらがった頭脳がリセットされ、気持ちよくなりますから、きっと登山やトレッキングにはまる人も、違った環境に身を置いてそうした気分をもっと味わいたいという本能からきているのでは?と思っています。
登山そのものは、そこでなにか大きな事故や事件でも起きない限り、淡々と静かに登っていくだけで、あまり小説の題材にはなりにくいものです。
それを小説に仕上げるには、無理矢理に我が身を振り返ったり、他人や家族のことを考えたりして、膨らませていくしかなく、その苦労がうかがえます。
でもやっぱり登山は自分で味わって初めて楽しめたり達成感を味わえるのであって、人の感想や体験を聞いたり、読んでも、退屈以外のなにものでもありません。
それだけに、自分も登山をしてその感覚を味わいに行ってみようか?という気持ちには少しなります。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
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アルトリ岬 (PHP文芸文庫)
2008年に単行本、2011年に文庫化された長編小説で、著者自身が自己啓発セラピストとして活動されていることもあり、いわゆるカウンセリング小説というジャンルになるものです。
かといって、なにか押しつけがましいところや、「こうあるべき」みたいな指導書やHOW TO本ではないので、気楽に読めて楽しめます。
この著者の作品では昨年「失われたミカドの秘紋―エルサレムからヤマトへ「漢字」がすべてを語りだす!」とやたらと長い題名、副題の小説を読んでいます。これはなかなか面白かった小説でした。
3月前半の読書と感想、書評 2018/3/14(水)「失われたミカドの秘紋」
主人公は、気弱であまりやる気がない中年男性で、仕事がリストラに遭い、派手好きで浪費家の妻との関係も悪くなり、二人の子供も不登校だったり非行に走ったりして、どん底に落ちています。
当たると評判の占い師にお告げをうけて、家族を捨てひとりで北海道に渡りやり直そうと就職します。
そこへ借金取りから逃げるように家族がやってきて、また元の険悪なムードに満たされてきますが、不登校の子供が、偶然海岸で知り合った年配の男性と犬に癒やされていき、その後、家族全員がその男性のアドバイス(カウンセリング)を受けるようになっていき、変わっていくというのがあらすじです。
カウンセリングが本業でもある著者からすれば、家庭の不和も、ちょっとしたきっかけや他人のアドバイスで良くなっていくということを知っていて、そうした例を小説にまとめたという感じなのでしょう。
政治家や芸能人、評論家の過激な発言や、ネット上で吹き荒れる非難、炎上など、これだけストレスがたまる世の中ですから、こうした素朴で最強の「愛情」を気づかせてくれるカウンセリング本は、小説としての出来不出来はともかく、できるだけ多くの人に読まれるといいですね。
★★☆
◇著者別読書感想(加治将一)
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逆流 越境捜査 (双葉文庫)
2014年単行本、2017年に文庫化された、「越境捜査シリーズ」の第4弾となる作品です。このシリーズは、2019年までに7作品まであります。
また2008年から2011年にかけて単発で柴田恭兵主演のテレビドラマが制作されています。
このシリーズは、「越境捜査」(2007年)、「挑発 越境捜査2」(2010年)、「破断 越境捜査3」(2011年)、「逆流 越境捜査
著者の作品は過去にシリーズ物ではない「時の渚」(2001年)、「太平洋の薔薇」(2003年)、「グリズリー」(2004年)を読んでいます。いずれもまずタイトルにグッと惹かれたのと、実際に読んでみてもたいへん面白く一気にファンとなりました。
主人公は警視庁捜査一課捜査協力係の警部補で、いろいろと庁内で波風を立てたために、出世はできず、遊軍として捜査の応援をしたり、古い未解決の事件を追いかけたりしています。
ファンと言っても読むのは久しぶりで、調べると2007年から今回12年ぶりと言うことになります(すみません、ファンとは言えません)。
なにか本格的警察ミステリーと言うよりは、「相棒」や「あぶない刑事」などのように、テレビドラマ化を視野に入れた感のあるエンタメ性重視の作品です。
となると、お定まりの主人公の相棒にはハチャメチャでお調子者の金髪の刑事や、主人公の身辺警護には柔道の達人でやたらとジグザウエルを振り回す若い女性刑事とか、テレビ映えするようになっています。
ストーリーとしてはよく練られている感じで面白かったけど、あまりにも非現実すぎてちょっとなぁ、、、って感じでした。
★☆☆
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友がみな我よりえらく見える日は (幻冬舎アウトロー文庫)
1996年に単行本、1999年に文庫化された20年以上前の作品ですが、古くささは微塵も感じません。
著者は団塊世代の70歳、週刊誌や雑誌などに寄稿しているエッセイストとして有名です。
タイトルは、石川啄木の「一握の砂」の「友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」から取られています。なかなか含蓄のある言葉です。
著者がインタビューしたり、旧友との再会など、人とのコミュニケーションの中で、格好付けではなく、そのまま感じたことを素直に文章として書いているって感じのエッセイです。
最近はエッセイと言いながらもまるでフィクションの小説のようなものも増えていますが、まだ13年前は純たるエッセイが生きていたのでしょう。著者にもよりますけど。
なにか問題を解決してくれるという内容ではなく、様々な交友関係や気になった人との面談を通じて、人が生きていくという気持ちを気づかせてくれるような内容です。
他人との関係に悩んだり、気持ちが塞いだときなど、ちょっと気分転換のつもりで読んでみるのも良いかもしれません。なにか吹っ切れるきっかけとなるかも知れません。
★★☆
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ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)
その新書は今から15年前の2004年に発刊されたもので、やや内容やデータが旧聞になってしまってはいますが、大枠として地方の郊外化と犯罪の拡がりなど様々な問題を知るのには役に立ちます。
タイトルの「ファスト風土化」は、チェーン展開する画一的なファストフードにモロひっかけたオヤジギャク的な著者の造語ですが、「下流社会」ほどには一般的に使われることはありませんでした。しかし言わんとする意味はよく理解できます。
この本が書かれた2009年頃は、リーマンショック直後ということもあり、不況の影が忍び寄り、犯罪認知件数が特に伸びだした時期で、こうした危険を啓発するのに適していましたが、その後は重大犯罪は大きく下降し、犯罪数そのものは横ばいに推移しているのは以前「暗黒の1950年代 2019/4/20(土)」で書いた通りです。
特に犯罪認知件数が増加している理由のひとつには、人の人権意識や弱者救済の理解が進み、例えば今まで泣き寝入りしていて犯罪とならなかった、いじめや校内暴力、ストーカー行為などが犯罪と認識され、それを訴える人が増えてきているという事情もあるでしょう。
都市部のしかも繁華街で起きていたような犯罪が、地方でも起き出したというのは、それが確かなのかもう少し期間を追った検証が必要でしょう。
大ベストセラーになり流行語にもなった「下流社会」は、著者の中でも最大のヒット作品ですが、同著も読みましたが、やや炎上商法とまでは言いませんが、著者の作品にはやや大げさに不安を煽るようなところがあるのかも知れません。それが著者の本業でもあるマーケティングの鉄則ってことなのでしょう。
確かに地方の主要国道を走ると、大手スーパー、ディスカウントチェーン店、ファミリーレストラン等、全国どこにでも都心の郊外と同じような風景が見られます。
だからと言ってそれが今まで都市部で多く起きていた犯罪が地方で起きてきたというぶっ飛んだ仮説はまだちょっと行きすぎかなと思えます。
現実的に少年犯罪も、重大犯罪も10年単位で見れば、ずっと減少傾向にあり、ホンのわずかな1~2年だけの比較を出して「この地域でこーんなに増えている」とか言うのはどうなのでしょう。
全体としては、参考になる話しもあり、勉強になりました。
★★☆
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ピストルズ (講談社文庫)
2007年から2009年にかけて雑誌群像に連載され、2010年に単行本として、2013年に文庫化された長編小説で、2010年には時代を象徴する優れた小説が選ばれる谷崎潤一郎賞を受賞しています。
著者の作品は初めてだったかな?と思って調べると2015年に「グランド・フィナーレ」(2005年刊)を読んでいました。
2015年5月後半の読書(グランド・フィナーレ)
小説の内容ですが、実在する著者の出身地山形県東根市神町を舞台に、古くから土着している魔術を操る一家についての話しで、その華やかな一家には一子相伝で魔術を操れる子孫が生まれるという筋書きです。
その一家にまつわるいろいろな噂を耳にした町の書店主が、小説を書いてデビューした一家の次女に頼み、一家にまつわる噂の真相や家の歴史について聞き出していきます。
とにかく祖父の代から父親、そして妹へと一子相伝の秘術が伝わっていく長い長い物語で、途中から退屈しながらも我慢して読み進めていくと、最後まで特に盛り上がることもなく、ズルズルと終わってしまう割と単調なストーリーでした。
そう言えば、タイトルのピストル(拳銃)って一度も出てこなかったなぁって不思議に思っていたら、文庫の解説で「雌しべ(Pistil)」のことだってことがわかりました。
これはいまいち理解出来ませんが、すべての母親が違っているという一家の4姉妹のことを表しているのでしょう。
★☆☆
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1330
光のない海 (集英社文庫)
2015年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。
著者の作品は割とお気に入りで、調べたら過去に直木賞受賞作の「ほかならぬ人へ」(2009年)や、山本周五郎賞の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(2009年)など17作品を読んでいますが、最近はご無沙汰していて、2016年に読んで以来、3年ぶりに読みました。
2012年4月上旬の読書「ほかならぬ人へ」
2013年7月前半の読書「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」
以前、横山秀夫著の「出口のない海」を読んでいたので、タイトルが似た名前だけにそういうイメージというか先入観がありましたが、まったく違うものでした。
主人公は中堅の建設資材販売会社の社長を務めていますが、離婚して独身です。
昔、ある販売員から買った壺が割れてしまい、そこからつながっていく不思議な(って言うかあり得なそうな)縁、自分が社長になったこれまた不思議な縁、会社の寮をまかせていた老夫婦がうけた凄まじい過去、その他にも主人公の上司と浮気をして出て行った妻との関係、幼なじみというか父親役だった若い経営者との関係など、とにかく盛りすぎってほど理由(ワケ)が盛られています。
その中でも自分を社長まで引き上げてくれた、女性経営者の存在が大きく、大きな年齢差を超えての密やかな恋愛というのが大きなテーマともなっています。
小説的には宮本輝氏の小説?って思うような、ちょっとした雑学が方々にちりばめられていて、まったく読んでいて飽きない小説です。
ただひとつの小説の中に、非現実的に、人の性悪なところをいろいろと盛り込みすぎって感じはゆがめません。面白かったですけどね。
★★☆
◇著者別読書感想(白石一文)
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地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
新書大賞を受賞した2014年刊の新書で、著者は建設省を辞めて1995年から岩手県知事を3期務め、その後日本創成会議座長なども歴任された官僚上がりの政治家です。最近では2016年に東京都知事選に出て小池百合子氏に敗れています。
本書の要点は、本ブログでも時々書いてきたり、すでに学者先生方が、すでに述べていたりしていることでもありますが、
「少子化が進んで日本は大変なことになる」
「すでに手遅れではあるが、未来は絶望的ではない」
「少子化を止めるには地方の雇用の場が重要」
「東京一極集中の限界が近い」
「20歳から40歳までの若い女性をいかに地方につなぎとめるか」
「複数の子供を産みやすい環境をどう整備していくか」
「限界集落と消滅可能性都市にできること」
「地方再生リーダーの養成」
などがテーマで、ポイントでしょうか。
私が書いてきた中にもこのようなものがあります。
1211 過疎と限界集落の行方とコンパクトシティ
1156 空き家バンクの無能ぶりと空き家に思う
1154 地方の可能性と限界
1053 空き家問題を考える
統計データを主にして、藻谷浩介氏(「里山資本主義」著)、小泉進次郎氏(衆議院議員)、須田善明氏(女川町長)、樋口美雄氏などとの対談を通じ、人口減少問題に警鐘を鳴らしています。
人間とは恐ろしいもので、いきなり2040年の推定人口構成を見せられると愕然となりますが、それが毎日の延長線上だと、なんとかなるさとばかりに、容認しちゃうところがあります。
都合の悪いことは忘れてしまうと言うのも、人間が生きていく上での能力なのかもしれません。
筆者にしてもいまの大物の学者や経営者は、60代を過ぎて、せいぜい長くてもあと20年ぐらいしか生きないわけで、「そんな自分がいなくなる先のことまで構っていられるか!」というのが本音で、政治家に至っては、暗い話題や、負担増になる話しばかりすれば落選するので、あえてこうした話題を避けようとします。
そうした中で、2019年現在67歳の著者が、口角泡を飛ばす勢いでこうした問題を広く提言するのは、多少自己主張が強いとは言え、善良な方だと思います。
そして今が歴史となった未来に、どうしてこの時代に動けなかったのか?というような歴史番組が作られたとき、「こういう意見も少数ながらあった」というようになるのでしょうか。
★★☆
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家守綺譚 (新潮文庫)
2004年に単行本、2006年に文庫化された連作短編集です。私と同世代といってよいベテランの作家さんですが、元々は児童文学や絵本といった分野で有名な方です。
過去には著者の小説としてはデビュー作品にあたる「西の魔女が死んだ」(1994年)を読んでいます。
2014年9月後半の読書「西の魔女が死んだ」
主人公は小説家を目指しコツコツと文章を書く仕事をしていますが、琵琶湖でボート練習中に亡くなった大学時代の友人の実家の留守番役として、古い大きな家に住んでいる独身男性です。
時代の設定は、およそ100年前というから、大正時代でしょうか。
舞台というか住まいの近くに琵琶湖疎水があると出てきますので、滋賀と京都の境目付近ってところでしょう。
そこの家に住んでいると、亡くなった友人の幽霊や、肉に誘われそのまま飼い犬となった不思議な野良犬、池に住むカッパや人魚、ツルツルで気持ちよくなでていると懸想されたサルスベリの木など、物の怪の世界です。
西岸良平氏の漫画「鎌倉ものがたり」や、それを原作とした映画「DESTINY 鎌倉ものがたり
著者自身がそうした滋賀と京都の間の疎水の流れる近く在住らしいので、そうした不思議な創作が湧いてくるのでしょう。
そう言えば、村上春樹氏の小説にも「東京奇譚集」というのがありずっと昔に読んだ記憶があります。調べたら2007年に文庫が発売されてすぐ買ったものの、しばらく積読状態で、読了したのは2009年と、今からちょうど10年前でした。
その他にも奇譚(綺譚)と名のつく小説で過去に読んだものは、浅田次郎著「草原からの使者 沙高樓奇譚」、綾辻行人著「眼球綺譚」です。
★★☆
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芥川症 (新潮文庫)
ユーモアたっぷりに芥川龍之介の小説をモチーフにした短編集です。もちろん著者の本職でもある医療との関わりがある内容が多く、笑いながらも怖くなってくること請け負いです。
2014年に単行本、2017年に文庫化されています。
短編のタイトルはそれぞれ、「病院の中」「他生門」「耳」「クモの意図」「極楽変」「バナナ粥」「或利口の一生」となっていて、どこかで聞いた名前ばかりとなっています。
「藪の中」→「病院の中」
「羅生門」→「他生門」
「鼻」→「「耳」
「蜘蛛の糸」→「クモの意図」
「地獄変」→「極楽変」
「芋粥」→「バナナ粥」
「或阿呆の一生」→「或利口の一生」
※前が芥川龍之介作の小説でそれをモチーフに作られて言います
著者の小説やエッセイを読むと、「医療に過大な期待はするな」というニュアンスが含まれていることが多くあります。
つまり医者も普通の人間ですから、期待以上のことを求めるのもいけないし、患者は神様ではないので、ほどほどの治療や投薬で我慢するべきだという考え方です。
エッセイの「日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか」(2007年)でも、国内での自然な老衰という死に方が減り、本人の意思とは無関係に、闇雲に生き長らえさせるために高年齢でも高度な医療(=高額医療)が駆使され、その結果、意識も戻らないまま脳死や内臓の不全等で死亡するというむなしさなどが綴られていました。
2017年2月後半の読書「日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか」
そうした実態を普段から目の当たりにする仕事ゆえ、わかることもあるでしょう。
時々書くのですけど、若くて健康な人に「もしかの時、延命治療を受けたいか?」と聞くとだいたいは「受けたくない」と答えるのに対し、余命間もない重病人に同じ質問をするとほとんどが「受けたい」と答える人間の弱さというか、立場の違いによって考え方も変わってしまうことが、人間的で自然なことでもあります。
とりあえずは、こうしたユーモアをもって、医療と人生について考えてみるのが良いのかもしれません。
★★☆
◇著者別読書感想(久坂部羊)
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バカ売れ法則大全
2017年に発刊された単行本で、ネットメディアの「ITmedia ビジネスオンライン」で取材がされたものをまとめたものです。
この景気停滞(減衰?)の中でも売れに売れている商品やサービスを取り上げ、なぜ売れる?を簡単に解説しています。
その数なんと54例ということで、読んでいるとなんでも売れるんじゃないのか?と、途中で感覚が麻痺してきます。
それぞれにワケがあったり、ラッキーだったりしていますが、最初から大当たりすると思って出たものはほとんどなさそうです。
現在は老いも若きも「雇われない働き方」を志向する人が増えてきているようなので、一種、独立してから「成功する秘訣」みたいな感じで読まれているのかな?と思いました。
でも実際に読んでみて、これは事業の参考にはなることはないな~と。
つまり過去形で、「こうした幸運があった」とか「その時に風が吹いた」みたいな話しが多く、そうした数多くの新商品やサービスの中で、たまたまうまくいった(現在のところいっている)ものの紹介であって、それが数年後の今でも通用するとも、人気が10年間持続するとかはどうも思えません。
一発アイデアやひらめき、それを実際に商品やサービスとしてモノにした行動力などは評価しますが、その後の継続とコモディティ化こそ事業の最大の難関であり、それがうまくいったときに、「さすが!」と言えるのでしょう。
もしこの本の著者がその気があれば、10年後とか20年後に同じ素材がその後どうなったか?というのを調べて書くと面白いかも。栄枯盛衰がわかり、何勝(その時も大ヒット)何敗(なくなった)何引き分け(かろうじて生き残っている)だった!みたいな展開が期待できそうです。
★☆☆
【関連リンク】
4月後半の読書 ガール・オン・ザ・トレイン、自由とは何か、きらきらひかる、Yの悲劇、デッドエンド
4月前半の読書 虚無への供物、未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること、白いしるし、フォルトゥナの瞳
3月後半の読書 教団X、新個人主義のすすめ、暗夜を渉る、何者、リアルワールド
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今日から令和元年です\(^o^)/
令和元年5月1日
1326
ガール・オン・ザ・トレイン (講談社文庫)
原題はThe Girl on the Trainで、国内では2015年に文庫として発刊されました。また2016年には監督テイト・テイラー、エミリー・ブラント主演で映画が製作され、日本でも公開されています。
主人公の女性は離婚をした女性で、その前の夫だった男性は、結婚当時に買った家で、別の女性と再婚して暮らしています。そしてその家の隣には幸せそうな若い夫婦が暮らしています。
主人公の女性は、ロンドンへ向かう電車の中から、その前の夫と暮らしていた家で再婚相手が幸せそうに暮らしている姿や、その隣の理想的な夫婦の姿を毎日鬱積した気持ちで眺めています。
それだけで、この女主人公ちょっと変なヤツ?って感じですが、そう、主人公の女性はアル中で、飲み過ぎたときには記憶をなくしてしまい、暴言を吐き、前の夫を始め多くの人に迷惑をかけ、仕事もそれで失っています。
そうした「電車の中から家をのぞいている」「アル中で記憶をなくす」というのがこのミステリーの最大要素というあまりにもお粗末な内容でした。
最後のクライマックスで判明する極悪人も最初の方でわかってしまいましたし、ミステリーファンにとっては物足りなさでいっぱいでしょう。
当然、記憶を失っていたことに起きたことはそのうちに思い出すし、電車の中から見たことの説明は無理矢理に意味を付けられるしという、それまでのモヤモヤしたのはなんだったの?ってくらい中身が浅く乏しいものです。
ま、暇つぶしぐらいに考えて読むには良いでしょうけど、映画までは見たいとは思わないです。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
自由とは何か (講談社現代新書)
著者は団塊世代の最後尾で育ってきた、今年暮れには70歳となる経済学者です。
この新書は今から15年前の2004年に発刊されています。2003年に米国を始めとする有志連合軍が、フセイン大統領が率いるイラクを攻撃した2003年の翌年にあたり、本書でもそのイラク攻撃に関して触れられています。
正直言って難解で哲学的で、やたらとヨーロッパの哲学者の主張が出てきて、自由というものをこれだけ難しく解説?した本って過去にあったでしょうか。知らないだけかも知れませんが。
一般的にいう「自由でいいなぁ~」って言葉は、現在の北朝鮮や、中東の難民キャンプ、軍事政権で圧政を強いられているアフリカ国々、80年前の日本では出てこなかったでしょう。
じゃ、今の日本社会やアメリカは自由なのか?と言えば、そうだという人もいれば、そうじゃないと言う人もいて問題は複雑になっていきます。
そうした自由に関する歴史や過去の哲学者などがこの自由についてどのように理解し定義していたのかなど、ハッキリ言ってどうでも良いかな?って話しが延々と続きますので、興味のを持った方は、蛍光ペンでも握りしめながら、覚悟してかかってください。
私は一応嫌々ながらも最後まで全文に目を通しましたが、「よくわからん、あと10回は読まないとわかりっこない」という結果に達し、自分の限界を痛切に感じたのでした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
きらきらひかる (新潮文庫)
1991年に単行本、1994年に文庫化された小説で、長編小説としてはこれがデビュー作品です。
1992年には松岡錠司監督、薬師丸ひろ子、豊川悦司などの出演で映画が製作されています。
上記の「ガール・オン・ザ・トレイン」の主人公と同じで、アル中、精神的にいっちゃっている女性が主人公という、同時期に読みつつちょっと混乱しかけました。
キッチンドランカーが増えているとか、女性の社会進出が増えて、ストレスフルになってその分精神障害になる人も増えているとかという話しも聞きますが、それにしてもこう続けて女性の精神にちょっときているアル中小説とはなんてこったです。
主人公は、結婚に積極的ではなかったものの、無理矢理設定されたお見合いで、訳ありの医者と意気投合してしまい、形だけの結婚をすることになります。
訳ありとは、つまりその男性医師はゲイで、男性の恋人がいるものの、両親から結婚すれば女性を好きになってくれるのではないかと無理にお見合いを設定されたという状況。
お互いに精神的に異常と同性愛者ということを相手の両親には伝えず、形式上の結婚をしてその後の日々が描かれていきます。
ま、LGBT活動華やかな時代ですから、こういうカップルがいても不思議ではないでしょうけど、夕飯は毎日ゲイの夫が作ってくれるし(医者ってそんな暇だっけ?)、妻は夫に恋人の彼氏のことをいつも聞きたがるし、どうなんでしょうかね。
そして、夫の彼氏や、主人公の友人、夫の勤務先病院の同僚(これまたゲイ)とか、入り乱れての、いかにも小説的でよくわからない人間関係です。
★☆☆
◇著者別読書感想(江國香織)
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Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)
原題は「The Tragedy of Y」で、ドルリー・レーンを探偵役とする「悲劇」4部作のうち、前作「Xの悲劇
ちなみにその4部作というのは、Xの悲劇
エラリー・クイーンという名前は誰もが知っているほど有名で、私も若いときに何作かは読んだ記憶があります。
しかし、このエラリー・クイーンというネームは、二人の男性作家が共通で使っていたペンネームで、二人の漫画家の名前を統一した藤子不二雄みたいな感じなのですね。ハハ、今の今まで知りませんでした。
この作品を含む4部作は、そのうちのひとりの作家のペンネーム「バーナビー・ロス」で最初は発刊されたそうです。
これだけ古い作品ですから、いくつもの出版社から出版されています。私が買って読んだのは、1959年に第1刷が発刊された鮎川信夫訳の創元推理文庫です。
1959年と言えば、今とは違って、文庫の文字は小さく、今で言うところの差別用語が普通にバンバン使われていてなにか時代を感じます。
先般読んだ日本の古典的なミステリー小説で、中井英夫著「虚無への供物」の発刊は1964年ですから、これらの本場英国ミステリーを参考にし、影響を受けているなというのが読んでいて節々でわかります。
さてストーリーですが、お金持ちだった主人が水死体で発見され、どうもそれが自殺っぽいとされます。
その亡くなった主人の家族は大きなお屋敷で暮らしていて、その後連続してその屋敷内で不幸が襲います。
ロンドン警察に頼られて、前作「Xの悲劇」で活躍した老齢の探偵が、コツコツと調べていきますが、やがてとてつもなく恐ろしい事実をつかんでいくというミステリーです。
いやー、探偵ものミステリー小説は数多く読んできましたが、この小説では、犯人はまったくわかりませんでした。予想だにしなかったというか。さすが、長く名作として残るだけの作品です。
しかし最後のオチというか、決着の付け方は、うまくぼやかしてありますが、現代だと倫理上も読者の感情的にも許されないことのような気もします。
さすがというか、歴史に残るだけのことはある面白しろい小説です。
★★★
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デッドエンド (双葉文庫)
2014年に単行本、2016年に文庫化された長編ハードボイルド小説です。
この著者は私と同年齢ということもあり、同じ社会を同じ期間だけ生きてきた、なにか作品に共鳴するところがあり、「私立探偵・神山健介シリーズ」や「有賀雄二郎シリーズ」など面白く読ませてもらっています。
この作品はシリーズ物ではなく、主人公は独自の設定で、東大卒、通産官僚ののち雑誌のライターへと転職していましたが、妻殺しの容疑で逮捕され、終身刑で千葉の刑務所で服役をしているという設定です。
ここでは詳しく書くとこれから読む方の興味がそがれるので書きませんが、読み進めていくうちに、主人公がなぜ妻殺しで逮捕されるに至ったのか?ということが明らかになっていきます。
逮捕されたのも、裁判で終身刑を受けたのも、千葉刑務所に収監されるのも、すべて計算ずくだったというのには驚かされます。
その主人公を付け狙う黒幕と、黒幕に依頼された殺し屋との対決がハードボイルドの魅力となっていきます。
ちょうど、この小説の前年に書かれた、「漂流者たち 私立探偵・神山健介」(2013年)で、ラストの堤防の上での死闘を彷彿させるようでゾクゾクします。
2017年8月後半の読書「漂流者たち 私立探偵・神山健介」
★★☆
◇著者別読書感想(柴田哲孝)
【関連リンク】
4月前半の読書 虚無への供物、未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること、白いしるし、フォルトゥナの瞳
3月後半の読書 教団X、新個人主義のすすめ、暗夜を渉る、何者、リアルワールド
3月前半の読書 悟浄出立、言ってはいけない 残酷すぎる真実、死者の奢り・飼育、獏の檻、君の膵臓をたべたい
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