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月と蟹 (文春文庫) 道尾秀介

サラリーマンから作家に転身し、今やすっかり若手の中でも超売れっ子作家の地位を築きあげ、デビューから9年目で手にした2011年の直木賞受賞作品です。過去には「骸の爪」(2006年)、「片眼の猿―One-eyed monkeys」(2007年)を読んでいます。

タイトルからは話の内容がまったくわからず、また予備知識もないまま読み始めました。

主人公は鎌倉で母親と、片足を失った元漁師の祖父と3人で暮らす中学生の男の子。父を病気で失い、高齢になった祖父と同居するために転校してきたこともあり、学校では地元出身の同級生にはとけ込めず、同じく関西から転校してきた同級生と仲良くなっていきます。

淡々とその中学生の生活が描かれています。子供だったらそういう遊びもするだろうなぁってその情景が目に浮かびます。

タイトルの月と蟹のエピソードは、終わり近くで祖父が話してくれることに由来ししていますが、その話しだけでタイトルになるほどのこととも思えず、ちょっと謎です。

私の子供時代は海が遠かったので、この小説で子供がするように、ヤドカリを捕まえて火であぶったりはしませんでしたが、田んぼにいるザリガニを捕まえ、その殻をむき、身を餌にして深くに潜んでいる別のザリガニを釣って遊んだり、時にはカエルを爆破したりと、小説に出てくる少年達と変わらず、今にして思えば残酷なことが平気でしていましたので変わりない感じです。

主人公少年の祖父が操っていた漁船に、調査活動のために乗り合わせていた同級生の母親が船の事故で亡くなっていたという過去や、主人公と仲良しになった友人が家庭内暴力にさらされているようだとか、大人の事情で子供の感情が揺さぶられていく過程がなかなか興味深く、直木賞の選考委員にうまくヒットしたのでしょう。

★★☆

著者別読書感想(道尾秀介)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫) 米原万里

ロシア語の通訳として活躍されていた筆者の実質デビュー作にあたる同著が1994年に単行本、1998年に文庫版が刊行されています。読売文学賞を受賞したエッセイ集です。

著者は書評が中心の「打ちのめされるようなすごい本」の中で触れているように、激しい闘病生活を送り、2006年に56歳の若さで亡くなっています。

この本はその通訳として仕事をしてきた上でのちょっとした笑い話や、通訳と翻訳の違いなどを面白く分析しています。

テレビで放送されるような同時通訳の場合、ま、多少の誤訳があってもそう大ごとには至りませんが、国と国との交渉ごとや、首脳同士の会話の場で誤訳などがあったりした場合にはとんでもないことに発展するという事例もあり驚かされます。

日本の政治家や官僚が「やんわりと断る」意味で普通に使う「善処します」「前向きに検討します」を、外国人にその通りに通訳すると、相手の外国人は「了解した」となってしまい、相手は一国の総理大臣がYesと言ったのに約束を守らないとはどういうことか!って怒ります。

そうした難しさがあって国際会議や首脳会談の通訳というのも国の未来を背負っている職業ということになりますね。

また翻訳の場合は自分が知らない単語やことわざが出てきても調べたり聞いたりすることができるのに対して、自分の知識の範囲で答えるしかない通訳は幅広い知識が必要だと言うこともよくわかります。

タイトルの意味は、同時通訳で話者の発言(原文)を忠実に正確に伝えていれば「貞淑」、原文を裏切っているようなら「不実」とし、訳された文章(通訳)がうまく整っていれば「美女」、ぎこちない文章なら「醜女」とし、もちろん一番いいのは「貞淑な美女」なのですが、通訳の世界ではそれはほとんど期待できず、多くの場合は「不実な美女」か「貞淑な醜女」のどちらかになるということです。

今なら国際化も進み、通訳しやすいように発言したり、事前に発言内容を準備しておくことも普通になりつつありますが、数十年前の通訳では同時通訳者をないがしろにした発言なども多く、そうした例がいくつも紹介されています。

また、英語がほとんどしゃべれない日本人重鎮が、リップサービスのつもりで最後に英語で一言「One Please!」ってのが、本人曰く「ひとつ、よろしく」の意味だったというのには苦笑せざるを得ません。

★☆☆

著者別読書感想(米原万里)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

左京区恋月橋渡ル (小学館文庫) 瀧羽麻子

京都のしかも京都大学がある左京区を舞台にした恋愛小説ということで、やはりというか著者は京大出身の方です。

京大卒業生にとっては、京都市左京区の中にある一番有名な場所と言えば、銀閣寺より、大原三千院より、平安神宮より、やっぱり京都大学とその周辺の地域ということになるのでしょう。

その先輩にあたりますが、似た経歴の作家さんには「鴨川ホルモー」の万城目学氏、「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦氏がいて、作風もなんとなく似通っている感じがするのは先入観ってやつでしょうか。

それでもこの3人に共通する小説の舞台が、出町柳の三角州、下鴨神社(糺ノ森)、吉田山とか、祭りと言えば葵祭だったりするところもよく似ています。京大生の行動範囲がだいたいそのあたりに限られているからでしょうか。

また小説の舞台となる場所は同じでも、児童養護施設送りになったこともある荒れた生活をしてきた花村萬月氏(現花園大学客員教授)著の「百万遍 古都恋情」とは大きく雰囲気が違います。いずれにしてもあの周辺はとかく小説の舞台にするには恰好のエリアなのかも知れません。

主人公は京大の理工系男子で大学の寮住まいをしています。ま、その女性にはめっぽう弱そうな理系男子のほのぼのとした甘ったるい初恋物語ってとこですが、女性作家が描いているだけあって、夢とロマンがあふれていて読んでいると回りに薔薇や星がきらめいている感じがします。同じ京大の学生寮でも鴨川ホルモーに出てくる九龍城のような寮とは対極です。

さて、この小説は2012年(文庫は2015年刊)に単行本が出版されていますが、その前の2009年に刊行された「左京区七夕通東入ル」の続編という形になっています。つまりシリーズ2巻目から読んでしまったという無粋なことをしてしまいました。

でも、登場人物の説明もキチンと本文中にあり、特に問題はなく、普通に読めましたが、できれば登場人物をよく知っておく意味では順番に読むのをお勧めします。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

交換殺人には向かない夜 (光文社文庫) 東川篤哉

2010年刊の「謎解きはディナーのあとで」が、第8回本屋大賞を受賞するなどして人気沸騰中(大げさ?)のミステリー作家さんの小説で、いくつかあるシリーズのうち「烏賊川市シリーズ」4作目の作品になります。2005年に刊行され、2010年に文庫化されています。

その「謎解きはディナーのあとで」は櫻井翔主演で2011年にテレビドラマ化、2013年には映画化もされていますので、ジャニーズファンの方にはお馴染みの作家さんなのかも知れません。私はこの著者の作品は今回初めて読みました。

それにしても小説の舞台が「烏賊川市」って「いかがわし」と人を食ったような(想像上の)地名で、内容もシリアスなものではなく、茶化したコミカルなミステリー小説となっています。

主人公は私立探偵の鵜飼杜夫で、周囲を探偵事務所が入っているビルの大家の女性、探偵事務所のアルバイト従業員男性、烏賊川市署の警部などが脇を固めています。なおテレビドラマでは、ビルの大家の女性役を剛力彩芽が演じて主役になっています。

★☆☆

【1000回まであと☆8】

【関連リンク】
 12月後半の読書 雪の夜話、銀河ヒッチハイク、首都崩壊、龍は眠る
 12月前半の読書 早春の化石、冬蛾、中国化する日本、恍惚の人
 11月後半の読書 ラストチャイルド(上・下) 、老いる覚悟、Nのために、昭和の犬

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988
雪の夜話 (中公文庫) 浅倉卓弥

デビュー作で映画化もされた「四日間の奇蹟」(2003年)をだいぶんと前に読んだことがある著者の2005年(文庫は2007年)の作品です。そしてここ5年ほどは目立った作品もなく、どういう生活をされているのか気にかかるところです。ほっとけ!って言われそうですが。

札幌出身の著者らしく、主人公は雪国の出身に設定。東京の美術学校を出て、東京の印刷会社に就職し、着々と商業デザイナーの地位を築いていきますが、人間関係に悩み、やがては会社を辞め、実家に舞い戻ってきます。

高校生の時、自宅近くの公園で、雪の降る夜中にふと見掛けて、少し話しをした少女に再び雪の降る夜に出会います。出ました雪女伝説?といきたいところですが、、、まぁ似たようなものでしょうか。

途中までは現実的な仕事の話しで興味津々面白く読めていたのですが、途中からガラリと雰囲気が変わって、読者は幻想的?な死者と幽霊、異次元の世界に導かれていきます。それだけでちょっと引いてしまう人も多そうな感じです。

デビュー作で大ヒットした「四日間の奇蹟」も同様な感じでしたから、この著者の成功パターンなのでしょう。

そうした幽霊?(登場する幽霊は自分は幽霊ではないと言い張りますが)はなにか目的を持っていることが多いのですが、メインに出てくる少女の目的とかはよくわかりません。

2003年のテレビドラマ「スカイハイ」に出てきた地獄の門番の釈由美子みたいな存在?っていうのもちょっと違うような気がするし。

昔ならそれなりに面白く読めたのでしょうが、歳を重ねるにつれて、こうした突拍子もない筋書きにはなかなか感情移入ができずにどうしてもつまらなく思えてしまう自分が残念です。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫) ダグラス・アダムス

原題は「The Hitchhiker's Guide to the Galaxy」とそのままで、タイトルだけではなんのこっちゃわからないナンセンスコメディのSF小説です。

元々は1978年にBBCのラジオドラマとして発表されたものですが、この小説シリーズは1979年以降順次刊行され、大ヒットして、全世界で約1,600万部が売れたとのこと。

ノルウェイの森」や「人間失格」が全世界で1200万部と言われていますので、それらを上回る大ベストセラーですね。そして2005年には映画にもなっています。

なんというか、英国人独特のジョークや下世話話しが下地にあるので、英国文化や英国流ジョークに馴染みがなく、しかも翻訳版を読むというのではこの作品の面白さは伝わりにくく、ちょっと無理があります。

ただ全体の発想はなかなかたいしたもので、よくこれほどバカバカしくも楽しい銀河世界を描ききったものだと感心も。

宇宙モノというと、なにかと異星人と人間の対決とか、地球滅亡の危機一髪というものが多うのですが、この小説では主人公の自宅が道路建設のために取り壊されそうになっていた矢先、地球も銀河ハイウェー計画のためにサクッと消されてしまうところが導入部ですから他のSFとは大きく異なることがわかります。

しかしこの広くて際限のなさそうな宇宙に、生命体が地球だけということは決してなく、人間よりもっと進化した生命があってもまったく不思議ではありません。そうした宇宙の様々な生命体が登場してくるこのコメディ小説は多くのシリアス路線とは違う新しい趣向でそれなりに楽しいかもです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

首都崩壊 (幻冬舎文庫) 高嶋哲夫

テロや事故、天災などによる影響を描き、元原子力の研究員でもあり、原発にも詳しい著者の2014年の最新刊で2015年に文庫化されています。過去にはデビュー作「イントゥルーダー」(1999年)や、「ミッドナイトイーグル」(2000年)など計5作品を読んでいます。

ここ数年、私が好んで(金銭的都合から)読む文庫版小説は、2011年の東日本大震災後に書かれた作品が大半を占めるようになり、その大震災を下敷きとしたり、影響を再確認して書かれています。それだけリアリティがあるというところでしょうか。

主人公は国土交通省のエリート官僚で、アメリカ留学から日本に戻ってきたばかりの独身男性。なんかミーハーな肉食女子ならほっておかないブランド男子ですね。

そのスーパー官僚の友人関係がもの凄い。アメリカ大統領の補佐官とアポなしで勝手に自宅を訪問する仲だったり、国立地震学会の学者や経済新聞社の女性記者、財務省女性官僚と同級生だったり。

とにかく東日本大震災のあと、プレート構造に異変が現れ、予想されている首都圏を遅う大地震が起きる確率が高まり、同時に起きる時期が早まってしまうと言う研究結果が出ます。

そうした首都が壊滅する可能性が高まってくることで、世界恐慌の引き金になることを恐れたアメリカ政府からの圧力と、歴史に名前を残したい総理大臣が、わずか6年後の首都遷都を決断し、走り始めることになります。

政治やハゲタカファンドなどの金融経済など、様々な要素が入り込んで、それなりにエンタメ的には楽しめるのでしょうけど、ちょっと政治も金融も建築土木も専門的に知識がある人から見れば、子供向けにデフォルメされたコミックか、観客を楽しませることだけに特化したハリウッドアクション映画ぐらいにしか映らないでしょう。

個人的には遷都は大いにやるべきと思いますが、それはこの小説のように、東京が壊滅する前に、政治家と高級官僚だけが逃げ出すかのようにバタバタとやるのではなく、もし東京が震度8に見舞われても、大きな被害を受けず、それによる死亡者も限定的という、強靱な東京を作るためにまずは首都機能を地方へ分散移転させるという流れでないと、国民、特に首都圏で生活する国民は納得しないでしょう。

最後のクライマックスで披露されますが、首都移転先の具体的な場所は、、、過去に候補として挙がったこともなく、まったく意外な場所で驚きましたが、個人的には悪くないと思います。

★☆☆

著者別読書感想(高嶋哲夫)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

龍は眠る (新潮文庫) 宮部みゆき

直木賞始め各種の文学賞の審査員を勤める今や押しも押されぬミステリー界の大物作家さんですが、この小説はまだ駆け出し?に近いデビュー4年目の1991年に発刊された長編ミステリーです。

直木賞候補にも上がり、1992年第45回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞した著者の代表する作品となりました。

過去には石黒賢、東幹久、鶴田真由などの出演で一度テレビドラマ化されたそうですが、同氏の著名な作品としては珍しく映画化はまだされていないようです。

内容はサイキック能力を扱った推理小説ですが、何度もその特殊能力に疑問符が付き、信じるか信じないかで登場人物も揺れ動くところがリアルでよく書けています。

主人公は新聞社の記者からある出来事がきっかけで、関連の週刊誌記者に出向している中年にさしかかる男性。その主人公が嵐の夜に、自転車がパンクしたと言ってずぶ濡れで困っていた少年を助けたことから始まります。この最初のプロローグの入り方は、嵐のような出来事を巻き込む予感を想像させてお見事です。

人の考えていることがその人に触れるだけでわかったり、人が触ったものに触れるだけで、誰が何の目的でどうしたということがわかってしまうと言うような能力は、想像すればいくらでも世の中で活躍できそうですが、テレビの下手物?番組でよく取り上げられる「FBIの犯罪捜査に協力!」とか、「迷宮入り事件を解決!」「スプーンが曲がった!」とかしか表に出てこないのは不思議です。

この小説のキーになっていますが、そうした能力を持って生まれると、人が信じられなくなり、また他人からは気味悪がられ、まともな生活ができなくなるようですが、個人的にはそういう能力があれば、駆け引きに負けることはなく、大金持ちになることも簡単ですし、犯罪摘発など社会の役に立てることもできますので、いったいなにが困るのかな?って気がします。

★★☆

著者別読書感想(宮部みゆき)


【関連リンク】
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982
早春の化石 私立探偵 神山健介 (祥伝社文庫) 柴田哲孝

渇いた夏」(2008年)に続く、私立探偵・神山健介シリーズの第2弾作品で、2010年発刊、2012年に文庫化されています。その「渇いた夏」から1年半過ぎたところから始まります。

主人公が福島県白河で探偵業を始めた前作から、浮気調査や家出少年、迷い犬の捜索などを細々と生業にしている中、東京の調査会社で元上司だった男から紹介を受けて、ある女性の失踪してしまった双子の姉を捜索して欲しいと依頼を受けることになります。

この姉は自殺したストーカーが書き置いた遺書で、すでに殺されたと考えられますが、その遺体の行方はまったくわからず、ただ、ストーカーが以前福島周辺に住んでいて土地勘があるということで、その足取りを追うことになります。

ちょっと人間関係が複雑で、しかも犯人との関係が満州に住んでいた依頼人の曾祖父までさかのぼったりします。

また書かれた時期が東日本大震災前で、いわきや小名浜など震災以前の町並みが出てきますので、それを知っている人が読むと懐かしく感じたりするでしょう。

シリーズ作品ということで、前作の事件の主犯だった男の名前なども出てきてしまいますので、できれば順番に読むほうがよさそうです。

★★☆

著者別読書感想(柴田哲孝)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

冬蛾 私立探偵 神山健介 (祥伝社文庫) 柴田哲孝

上記「早春の化石」に続く私立探偵・神山健介シリーズ第3弾で、2011年単行本発刊、2013年文庫化されています。夏→春ときて今回は冬です。主人公が住む福島白河の冬は寒そうです。

会津の山奥にあるわずか数軒の村から、主人公の元へ依頼が舞い込みます。1年前に事故で亡くなった村人の死に関係してその後すぐ失踪してしまった別の村人が関係しているのではないかと疑われています。

しかし過去数年のあいだに何人もの村人が事故や不審死していても警察に届けず、黙って土葬して許される村がこの日本にまだあるのか?ってちょっと無理目の設定が気にかかります。

それはともかく、今回はいろんな所を歩き回り、ヤクザや警察とも関わりながら事件の謎をあぶり出していくという古くからある私立探偵スタイルの物語ではなく、雪で閉ざされた地図にも出ていない村の中で、隠された秘密を暴いていくという新たなスタイルです。

それだけに、今まで出てきた常連さんの出番はほとんどなく、前作とは違って単独で読んでもまぁいけるかなって感じです。

タイトルは、プロローグで出てきた厳冬の中でも静かに活動する蛾と、本編の最後のほうに出てくる紅蓮の炎が蛾の羽を広げた姿とダブらせたものです。

最初の頃から比べて、ちょっとストーリー性が弱くなってきたように感じ、まさかネタ切れってことはないのでしょうけど、主人公の行動パターンがあまりにも普通すぎるような。ちょっと残念。

このシリーズもあと「秋霧の街」で四季シリーズが完結し、プラスアルファとして東日本大震災を絡めた「漂流者たち」を残すだけとなりました。その後も続編が出るのかどうかは不明です。

★☆☆

著者別読書感想(柴田哲孝)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫) 與那覇 潤

著者はいかにも沖縄出身の名前ですが、神奈川県出身、東京大学卒で愛知県立大学日本文化学部歴史文化学科准教授の学者さんです。中国の研究家ではないということもひとつキーになっています。

この刺激的なタイトルのせいで、読者やその道の人達のあいだでは賛否両論、喧喧囂囂、侃侃諤諤、議論百出していて、なかなか興味深く、そうした不毛な議論に参戦するつもりはないものの(しても誰も相手にしてくれない)、知識として様々な意見を知っておこうと読むことに。

この本のタイトルや副題は、著者が付けたのか出版社の編集員がつけたのかわかりませんが、誤解を招くのには最適、でも炎上必至というような感じもします。

いわゆる中世(唐、宋)から近代(元、明、清)初頭までの中国は、世界の中でもトップクラスの繁栄と高等文化を持っていて、その真似をした後進国が群雄していたヨーロッパが宗教戦争に勝利してようやく追いつき、そして一気に追い越していった中で、日本は中世の途中までその中国を見習ってきましたが、戦国時代以降はもっぱら独自の社会と文明を作り、そして現代になってからようやく中世中国の後追いを始めたという流れ。

話しは、明治維新以降、その「中国化」と日本独自の封建体制「江戸化」のせめぎ合いを繰り返してきましたが、現代の自民党一党支配体制と自由経済は、「中国化」に他ならないとの話しでした。

難しい話しを茶化しながらも軽く伝えようとしているところは好感ですが、Amazonの書評を見ても意見が分かれるように、中国文化の先進性を受け入れがたい人も多いのではないかと思った次第です。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

恍惚の人 (新潮文庫) 有吉佐和子

1972年に刊行され日本中に一大ブームを巻き起こし、翌年には森繁久彌、高峰秀子主演で映画化もされた作品です。認知症老人役の森繁久彌氏は当時はまだ60歳でした。

当時は現在のように高齢化社会でもなく、また認知症やアルツハイマー病という名称もなく、いわゆる呆け老人とか痴呆、耄碌(もうろく)爺じいとか言っていた時代です。

高齢になると癌とともに増える病気として当時から知られてはいましたが、分類上精神病の一種ということもあり、同居する家族は隠したがる傾向で、あまり表沙汰になることはありませんでした。

ちなみに1970年の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)はわずかに7%ほどで、現在は26%なので45年のあいだに高齢者の割合が3.7倍にまで増えています。それに比例して認知症患者の数も増えているということになります。

またこの小説が書かれた1970年の日本人の平均寿命は男性69.31歳、女性74.66歳でしたが、現在2014年の日本人の平均寿命は男性80.50歳、女性86.83歳と、44年間でそれぞれ、11.19歳、12.17歳伸びています。それだけ認知症に罹る割合や実数も格段に増えてきています。

この小説を原作とした映画が、私の中学生の頃にブームとなりましたが、当時の映画としては珍しくモノクロで、しかもなんとなく中学生がみる映画ではないという雰囲気だったので機会を逃し見ていません。今度レンタルDVDでも借りてくるかな。

主人公は大家族で暮らしながらも手に職を持って外で働き続けている嫁で、ある日元気にしていた義理の母が突然亡くなってしまい、それとほぼ同時に80歳過ぎの義父の様子が変になっていきます。今では認知症の症状だと誰でも知っていますが、健忘、徘徊、妄想とだんだんとひどくなっていく姿が当時としてはリアルで衝撃的です。

この小説は誰もが高齢になると(最近は若年層アルツハイマーとかもありますが)、そのようになる可能性があるのだよという、社会への警告でもあり、当時から問題としてありながら、「祖父母の面倒は嫁の仕事」みたいな古くからの慣習があり、なかなか行政も手を出せなかった中に一石を投じた作品です。そして先を見越し数十年後に高齢化社会を迎えることへの警鐘だったと考えることもできそうです。

この作品が売れに売れ、200万部を超す大ベストセラーになったおかげで、新潮社の本社の向かいに大きな別館ビル(別名恍惚ビル)が1974年に建設されたとも言われています(wikipedia)


★★★

著者別読書感想(有吉佐和子)


【関連リンク】
 11月後半の読書 ラストチャイルド(上・下) 、老いる覚悟、Nのために、昭和の犬
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 10月後半の読書 時の地図 上・下、贖罪、家族という病、ワーカーズ・ダイジェスト

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978
ラスト・チャイルド(ハヤカワ・ミステリ文庫)(上・下) ジョン・ハート

以前「川は静かに流れ」(2009年)を読んだことのある著者の2009年(翻訳版は2010年刊)発刊の作品です。

この著者の書く小説のイメージは、人間、特に家族の暗くて重いテーマを粛々と描くってところですが、この小説はその代表的なものかも知れません。

アメリカの地方に住む13歳の少年が主人公で、1年前に双子の少女が行方不明となり、続いて父親までが失踪してしまい普通の家族が一気に崩壊してしまいます。

一緒に暮らす母親は麻薬におぼれ、街の有力者の囲われ者となってしまい生きる気力さえ失いつつありますが、主人公の少年は健気にも行方不明になった双子の妹を探すため、街の中を一軒一軒訪ね歩き、不審者をあぶり出していきます。

登場する大人はすべて何かしらの問題を抱え、主人公少年の純粋さと勇気だけが光って見えますが、何度もピンチに陥りそうになりながらも、うまく機転を利かせて切り抜けていくという、ありえそうもない設定で、ホームアローンじゃないけれど、そうした年端もいかない賢い少年が、大人顔負けの大活躍をするっていうストーリーが、現実ではありえそうもないだけに、意外性があってうける素地があるのでしょう。

暗澹とした気分にさいなまれながら読む長編小説ですが、話しの流れのテンポがよく、サクサクと読むことができ、タイトルの「ラストチャイルド」って意味が最後の最後で明らかになる設定といい、「川は静かに流れ」同様、なかなかできのいいと感じる作品でした。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

老いる覚悟 (ベスト新書) 森村誠一

2011年に書かれたエッセーをまとめた新書で、今年82歳になる著者ですが、まだまだ意気軒昂って感じです。

著者の作品で最初に読んだのは「新幹線殺人事件」(1970年刊)で、今から40数年前の中学生のころです。それ以来、同氏の作品は10作以上を読んでいますが、過去に出版された作品数はすでに300作を超えているそうです。まったくアイデアと執筆意欲の枯れることがない凄い人です。

その著者が考える、リタイヤ後にやってくる老いと死に至るまでの覚悟を淡々と語っています。年齢的にはちょうどリタイアを迎える団塊世代向けに書いているのかなって感じです。

団塊世代260万人の中の100人に1人、1%の人が買ってくれれば、それだけで2万6千部ですからね。この世代に向けたビジネスはまだまだ有効です。

著者は戦前生まれで苦労してきた人だけあって、その含蓄には重みがあります。しかし死への覚悟という点で言えば、それは年齢と共に変化していくもので、いま50代の私が平均寿命の80代が持つべき覚悟についてはなかなか理解ができません。

この新書が東日本大震災のあとに書かれただけあって、震災と津波、そして原発事故避難による突然の死や、生活のすべてを失った絶望状態からの人生などについても深く書かれています。長く生きるとそれだけいろいろな自然災害含め人の生き死にを身近に見ることになります。

定年とか引退ということがほとんどない作家である著者と、一般的には定年後にそれからまだ2~30年の老後が残されている元サラリーマンとではだいぶんと考え方が違うんじゃないのかな?って思いましたが、作家になる前は今でいう社畜として10年間働いていた著者だけあって、そのあたりはぬかりなくよくわかってらっしゃるって感じです。

さらに雇用問題として、利益追求、効率重視の「成果主義」についても、「日本の国民性には合わない」とバッサリ斬り捨てているのもまったく納得。

定年退職後に「なにもしなくていい自由」ではなく、「なにをしてもいい自由」と考える人だけが、有意義な老後をおくれる人という点はなるほどって思うにしても、私のように足が不自由になってしまって、できることがかなり制約されてしまうと、前向きに「なにをしてもいい!」とは考えにくいのも確かです。

高齢になるとなにかしら病気はつきものといいますが、よりよい有意義な老後をおくるためには、いかに健康体であることが重要か身をもってそう思います。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

Nのために (双葉文庫) 湊かなえ

デビュー作品「告白」で一気にブレークした著者の4作目の長編小説で2010年単行本、2014年に文庫化されています。この著者の本を読むのは「告白」「夜行観覧車」「贖罪」に続き4作目です。どれもライトに読めて気分転換にいい感じです。

この長編は2014年に榮倉奈々、窪田正孝、賀来賢人などの出演でテレビドラマ化されたそうですが、見ていないのでまったく内容は知らずに読みました。

この長編は2014年に榮倉奈々、窪田正孝、賀来賢人などの出演でテレビドラマ化されたそうですが、見ていないのでまったく内容は知らずに読みました。

この著者の特徴でもありますが、ちょっと人間関係が複雑でややこしい設定となっている長編ミステリー小説です。この複雑さが不自然に映り、いかにも無理して役の設定をしたなぁって感じがしてあまり好きではありません。

主人公は四国の離島出身で、大学へ通うために上京してオンボロアパートに住んでいます。そのアパートで親しくなった友人と沖縄旅行へ行った際に知り合った、タワーマンションに住むセレブな夫婦と付き合いが始まります。

そのタワーマンションで主人公の女性などを招待して、食事会を開こうとしていたその時、商社マンの夫が妻を刺し殺すという事件が起き、その妻と不倫関係にあった男が、夫を燭台で殴打して殺すという事件が起きます。

ここまでがプロローグのようなもので、一件落着したように見えた、この殺人事件の謎や真相が次々と語られていくというストーリーです。

主要な登場人物の名前が成瀬、野口、西崎、野原、望、夏恵、奈央子と、タイトルの「N」とはいったい誰なのか?ってところがミソですが、注意して読むことでそれがわかるっていう仕組みではなく、最後まで読まないとわかりません。そういう意味では前作や前々作と同様なパターンと言えます。

★★☆

著者別読書感想(湊かなえ)

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昭和の犬 姫野カオルコ

2013年刊の小説で、2013年下半期の直木賞で、朝井まかて氏の「恋歌」と同時受賞した作品です。この受賞までには「受難」「ツ、イ、ラ、ク」「ハルカ・エイティ」「リアル・シンデレラ」と4作が直木賞候補にのぼり、この5回目の候補で受賞と相成りました。

昭和33年生まれの著者自身が歩んできた人生を、主人公に重ね合わせたような自伝的な小説と言うことで、私とほぼ同年代、しかも同じく関西出身と言うことで、小説に登場する様々な生活の場面、テレビ番組、社会背景が自分の人生にもかぶってきます。

それにしても私の子供時代(昭和30年代~40年代)に起きたことやその時の世相なんてすっかり忘れていましたが、この本のおかげで少し蘇ってきました。しかし「土居まさるのTVジョッキーでの白いギタープレゼント」や「心に愛がなければ、どんなに美しい言葉も 相手の胸には響かない…聖パウロの言葉より」なんて、よく覚えているものです。言われてみてそういうのあったなぁって思い出しました。

人は誰でも過去の体験を美化して話したがる傾向があります。成功者が必要以上に貧しかった生い立ちや、人並み以上の努力をしてきたことを語るのに似ています。

でもそこは作家さん、単なる歩んできた過去を美化した話しではなく、時代とそれに寄り添ってくれた犬や猫をうまく重ね、昭和後期と平成初期はこういう時代だったんだっていう思い出の記録の小説に仕上げています。

終盤、そうした昭和から、いきなり平成の現代へ飛びますが、紆余曲折あった主人公がほのぼのとして、肩から力が抜けるような人生を送っている姿を見せて、読み終わりも心地よい気分になれました。

★★★

著者別読書感想(姫野カオルコ)


【関連リンク】
 11月前半の読書 悪女について、空の中、アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風、青い約束
 10月後半の読書 時の地図 上・下、贖罪、家族という病、ワーカーズ・ダイジェスト
 10月前半の読書 羆嵐、幸せになる百通りの方法、努力しないで作家になる方法、幻影の星



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悪女について (新潮文庫) 有吉佐和子

タイトルからすると、まるで週刊誌に連載するようなエッセイ集のような気がしますが、1978年に「週刊朝日」で連載された有名な長編小説で、テレビドラマ化も2度おこなわれています。

主人公の富小路公子という名前を見ると、2003年に起きた有栖川宮詐欺事件を思い出しましたが、過去には一見すると皇室や貴族と誤解しそうな偽名や芸名などを使って相手を信用させる犯罪や売名行為はよく見られました。

この小説には実在するモデルはなく、フィクションですが、男社会だった戦後の高度成長期を、不幸な身の上にかかわらず、たくましく生き抜く女性主人公に多くの共感を呼んだのではないかと思われます。

その主人公女性ですが、生まれは八百屋の一人娘で父親は早くに交通事故で亡くし、貧しい家庭に育ちますが、女の武器を利用しながら、名門家の跡継ぎや資産家の奥方達を手玉にとり、また多くの後援者や味方も作りながら着実にやり手の女実業家として成長していく姿に魅了されていきます。

小説のスタイルはその主人公本人が語るのではなく、関係者27人がこの主人公の女性について語るという手法で展開されていきます。しかもいきなり主人公は不審死で亡くなったことが明かされて、その死の謎にも興味が沸く仕掛けとなっています。

それは芥川龍之介の「藪の中 」と同様、複数人の視点で主人公の生い立ちから現在の姿まで語らせることで、語る人によって「とても上品で優しい人」、「男をはめて賠償金目的の性悪女」など様々な見方がされ、テンポ良く読者を引きつけていく手法は圧巻とも言えます。

★★★

著者別読書感想(有吉佐和子)

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空の中 (角川文庫) 有川浩

女流作家が自衛隊を舞台にした小説を書くのは珍しいですが、著者のデビュー作にあたる「塩の街」(2004年)、「海の底」(2005年)とともに自衛隊三部作のひとつとされ、2004年に単行本、2008年に文庫版が発刊されています。

もっとも映画でも大ヒットした「図書館戦争」などの著者でもあるわけなので、そうしたミリタリーオタクが喜びそうな知識が豊富ということなのでしょうが、著者の本を最初に読んだのが「阪急電車」だっただけにその落差というか幅に広さには驚かされます。

そういえば「阪急電車」の登場人物にも上空を飛ぶヘリコプターの音を聞いただけで機首かがわかる人がいたような気がします。

「阪急電車」の感想
2012年2月前半の読書「迷宮 清水義範、阪急電車 有川浩、ひとがた流し 北村薫、読者は踊る 斎藤美奈子、九つの殺人メルヘン 鯨統一郎」

主人公は航空自衛隊のF15戦闘機のパイロットのひとり息子で、父親を飛行訓練中に謎の事故が起き亡くしています。

もうひとりの主人公は、戦後初の民間小型ジェット旅客機を製造するメーカーの男性で、この試作器も自衛隊の航空機と同じ場所でテスト飛行中に謎の爆発事故を起こしていて、その関連を調査するため、航空自衛隊に日参しています

この二人の主人公に共通するのが、古代から生息していたという高々度に浮かぶ、謎の浮遊体生命とコンタクトが取れることです。それがミステリー仕立てのSFホラー小説みたくなってきます。

あり得そうもないSFミステリーなのですが、事故で亡くなったF15パイロットの部下で、間一髪生き残った女性パイロットと、主人公、もうひとりの主人公(高校生)と隣に住む同級生の女の子の二組のカップルのコミカルな関係など、いかにも女性が書いたロマンティック色も忘れていない作品となっています。

★☆☆

著者別読書感想(有川浩)

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アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA) 神林長平

シリーズ1作目の「戦闘妖精・雪風」(1984年)、2作目の「グッドラック―戦闘妖精・雪風」(1999年)に続く3作目の作品で2009年に初出、2011年に文庫版が出ています。

前の作品を読まずにいきなりこの作品を読むと、きっとなんのこっちゃわからないということになりますから、面倒でも最初の作品から読みましょう。

最初から読んでいても、前作からしばらくあいだが空くと、なんのこっちゃって考えたりするぐらいですから。あ、それは単なる物忘れが激しくなってきているせいかも。

さて本編も前作同様「ジャムになった男」、「雪風帰還せず」、「さまよえる特殊戦」、「雪風が飛ぶ空」、「アンブロークンアロー」、「放たれた矢」の連作短編で構成されています。

2作目の終盤からいわゆる地球防衛軍(FAF)と異星生命体ジャムとの闘いが本格的になってきます。

そしてちょっと展開が複雑で哲学的になってきたというか、実体を持たない異星体との心理戦で、主に人間側の感情や心理面に関する話しが多くなり、なにが正しいのか、なにが本物なのかということが、歳を取って柔軟性に欠ける頭では追いつかず、苦労します。

起承転結があってスッキリと終わるというものではありませんので、それだけは覚悟が必要かも。

1作目が初出してから30年が過ぎていますが、まだ完結には遠い感じで、今後も続編が出てくるのは間違いなさそうです。著者も62歳ということで、作家としては脂がのって、これからとも言えますし、まだまだ頑張ってもらいたいものです。

★☆☆

著者別読書感想(神林長平)

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青い約束 (ポプラ文庫) 田村優之

著者は1961年生まれで、日本経済新聞社の記者として活躍されている(同書執筆時)方です。この本は「夏の光」という題名で発刊した小説を加筆修正し、同時にタイトルも変更して2012年に文庫化されました。

主人公は高校生の頃からエコノミストになりたいと勉強し、その夢はかなえたものの、勤務していた銀行が合併吸収され、難しい立場に置かれている男性。

さすがに著者が経済新聞記者だけあって、国債の発行と経済に関して主人公のエコノミストの言葉を借りてその仕組みと持論をわかりやすく語ってくれます。

それはいいのですが、ある日主人公が取材をしていた財務省で、大手新聞社の記者で高校の時以来プッツリと縁が切れていた同級生と出会い、その縁が切れた理由が読者には謎として浮上してきます。あることが原因で縁が切れるまでは親友だった相手です。

その理由について、小出しにして読者をじらし、だんだん邪魔くさくなてきますが、我慢して読み続けなければスッキリしません。

小説の主テーマでもあるところに「大きな謎」があることを序盤にハッキリ提示しておき、その謎をいつまでも明かさないというのは常套手段なのかもしれませんが、なにかもったいぶられているようで、また無駄に紙面を稼いでいるようで、超売れっ子作家が数ある中のひとつの手法として使うのでなければ、私は好きにはなれません。イライラするだけで。歳のせいでしょうか、やっぱり。

普段、著者が書いている経済新聞は、大見出しで結論を、記事本文でその詳細を簡潔に書いているわけで、その鬱憤?を晴らすためか、小説はその逆の手法、大見出しで謎を、本文ではダラダラと横道に逸れながら最後まで結論をひっぱるという手法でと考えておられるのでしょう。困ったものです。

★☆☆


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