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チルドレン (講談社文庫) 伊坂 幸太郎

2004年に単行本、2007年に文庫本が発刊された短編集です。「バンク」、「チルドレン」、「レトリーバー」、「チルドレン2」、「イン」の5編からなりますが、「短編集のふりをした長編小説」というちょっと不思議な体裁になっています。

というのも、この5編には陣内という同じ男性が登場してきますが、主人公(語り手)はこの陣内ではなく、それぞれに違っています。

「バンク」は陣内の大学の友人が主人公で、ふたりで銀行の閉店間際に預金を下ろそうと飛び込んだところ、偶然にも銀行強盗と出くわしてしまい、他の客ともども人質にされてしまいます。

「チルドレン」と「チルドレン2」では陣内が働く職場(家庭裁判所)の後輩が、「レトリーバー」と「イン」は前の「バンク」の銀行強盗事件で陣内らと一緒に人質になっていた盲目の青年とその彼女が主人公です。

このすべての短編に出てくる陣内という男がなかなかユニークで笑わしてくれます。確かにクラスにひとりぐらいはこういうおしゃべりで自信過剰なお調子者は必ずいるもので、どちらかと言えば無口だった私はいつも羨ましく見ていました。

「チルドレン」の中で、家庭裁判所調査官が非行少年に宿題として渡した芥川龍之介の「侏儒の言葉」は面白そうなので買おうとメモっていましたが、青空文庫に入っていることがわかり、とりあえずそれをスマホにダウンロード。暇なときにでもじっくり眺めてみたいと思います。

著者別読書感想(伊坂幸太郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

親鸞 (講談社文庫)(上)(下) 五木寛之

2010年に単行本が、2011年に文庫本が発刊されました。上下巻で750ページの長編小説で、すでにこの続編「親鸞 激動篇(上)(下)」も発刊されています。

さらにその後「親鸞 完結篇」まで続くそうです。五木寛之おん歳81歳、まだまだ続きそうな「青春の門」もそうですが、大丈夫なのか?

先に述べておくと、この実在した歴史上有名な僧侶をタイトルにした歴史小説は、その多くの部分はフィクションで、根拠に乏しい話しがかなり含まれています。

それは著者が小説として創造したもので、仏教や親鸞の研究をしようという人や、真面目に学ぶために読むものではなく、歴史小説の場合はほとんどそうなのですが、エンタテーメントとして読むのが正しそうです。

親鸞は平安末期~鎌倉時代に生きて、師匠の法然上人とともに仏教を日本の各地に広めると同時に、自ら法然上人の浄土宗を元にしてもっと先へと進めた浄土真宗の開祖で、中学校の教科書などにも出てくるほどの有名人ですが、自伝的な記録がほとんどなく、その生涯についてはあまり知られていません。

ちなみに現在の日本の宗派ごとの仏教信徒(門徒)数は、この親鸞が広めた浄土真宗(本願寺派と大谷派の合計)がもっとも多いとのことです(2位は曹洞宗、3位に浄土宗)。そういやうちの実家もそうだったかも。

親鸞はまだ子供の頃に父親が家族を捨てて出家してしまい、母親は病死、仕方なく兄弟はバラバラになり親戚に預けられます。長男だった親鸞は比較的まだ恵まれた叔父の家に預けられ育てられますが、まだ幼い兄弟が下にいるので、9歳の時にお寺へ預けられ、やがて出家することになります。

親鸞が幼少の頃(1180年頃)に住んでいた京都は、後白河法皇が治める平安末期で源氏と平家の戦乱と、度重なる飢饉のため荒廃していて、京の都ですら餓死者が道のあちこちに放置されているようなひどい状態です。余談ですがこの時代を描いたSF時代映画「五条霊戦記 GOJOE」(2000年)はなかなか秀逸でしたのでぜひご覧ください。

そうした中で、親鸞はふとしたことから町の底辺に住むの男達と縁ができ、その後の人生にも大きな役割を果たすことになります。

比叡山(延暦寺)は最澄が開いたとされる名門中の名門の寺社で、親鸞は幸いそこで修行を積むことがかないますが、上流家庭の子弟でないことで出世はかなわず、また僧侶の生活の乱れにもヘキヘキし、修行も途中のまま山を下ります。

そして同じく比叡山で修行を積み、現在は袂をわかち、庶民から武士まで幅広く布教をして人気を集めている法然に影響を受けることになります。

法然も親鸞も今風に言えば、苦学して三流大学から財務省へ入省したものの、東大派閥に嫌気がさし数年で辞め、その後ベンチャー企業を立ち上げて成功したみたいな感じでしょうか。

しかし仏教を高貴な人達だけではなく、広く大衆に布教していこうとする法然やその弟子の思想が、古くからの既得権益者だった仏教界から危険視され、やがて当時の政権や比叡山など権力者によって排除されていくことになります。

この小説では親鸞の子供時代から、比叡山での修行、そして山を下りてから六角堂の百日参籠後に法然の元へ通い、その後弟子となり、やがては京の都から越後へと流される34歳までの半生をエンタテーメント性たっぷりで描かれたものです。

たいへん面白かったので続編の「親鸞 激動篇(上)(下)」も買ってこなくっちゃ。

著者別読書感想(五木寛之)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

政治家の殺し方 中田宏

典型的な血気盛んな若手政治家(と言っても著者は松下政経塾で政治家のプロを目指し、衆議院選挙で当選もしたことのあるプロ政治家)が、前市長の長期多選の弊害を訴え、巨大な横浜市の市長に当選し、そこで財政健全化を目指して公約を実現しようと突っ走った結果、過去何十年と脈々と築きあげられてきた与党や既得権益団体に徹底していじめ抜かれて、最終的にはこういうことになりましたという新書で、2011年に発刊されています。

中田氏が市長を務めた横浜は、私が住む川崎とは隣の市で、当選時は「政治の風向きが変わった!?」と大きな話題となりました。その後のスキャンダルについても報道が刺激的で過激だったので、自然と刷り込まれています。

しかしその数年後に様々なスキャンダルについて勝訴した裁判のことなどはまったく情報として入ってきませんので、「あぁ、あのなんかよくわからないけどスキャンダルまみれで辞めた市長」ぐらいの知識しかありませんでした。それが普通の国民・市民の感覚でしょう。

今まで波風を立てないようにオール与党体制でやってきた横浜市ですが、新市長誕生で既得権益者にとってはタブーだったところに手を入れだしてきたものだから、当然反感を買い、様々な手法で市長の追い落としが始まります。その内容が書かれています。

既得権者側は、数年後に裁判で明らかになる真実などどうでもよく、次々に市長とその家族、支援する取り巻きのスキャンダルをでっち上げて市民に悪いイメージを植え付けることに注力します。

それにより辞めさせる(逃げ出す)ことが狙いだったということが書かれています。今さら聞いても遅いわいと思わなくもないです。

でも政治家になる以上、こうした反発やスキャンダル捏造は多かれ少なかれあると想定した上で、毅然とした対応や、サポートしてくれる仲間作りをしておかなくっちゃなと思うのですが、既得権益者ばかりではなく、ほとんどのマスコミにもこの市長は不興だったようで、周囲に善意の味方が少なかったのが最大の敗因だったような気がします。

あれほど地元から人気(票)を集め、敵も多けれど怖いものなしだった大阪市長でも、既得権益団体や他の政治団体、マスコミから失言や過去のスキャンダルを必要以上に大きく取り上げられ、窮地に陥りそうなところで、かろうじてどうにか踏ん張っているという状態とも似ています。いや~政治の世界というのは本当に一歩先は真っ暗な闇って感じです。

先月読んだ真保裕一氏の「ダイスをころがせ!」は、完全な架空の小説ですが、中田氏と同様に無所属で長年波風が立たなかった選挙区への立候補という状況が似ていて、やはり既得権益者と思われる団体から様々な嫌がらせや脅し、捏造スキャンダルなどで苦しめられる様子が描かれています。

しかしそれが現実がそうだとして、こうした政治や政治活動を長い間「良し」と受け入れてきた我々「国民や市民が結局は愚かなんだ」と言われているようで、読後の後味は決してよくありません。

できれば元市長本人ではなく、誰かノンフィクションライターがインタビュー形式で、私感や第三者から見た元市長の奮闘なども織り交ぜながら書いた方が、ずっと説得力も違っただろうになというのが感想です。それが売れるかどうかはわかりませんが。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった (講談社文庫) 福井晴敏

週刊現代に連載されていた小説が2007年に文庫として発刊されたものです。

2011年の東日本大震災前に書かれましたので、その際に実際に震度5.5に襲われしばらく都市機能が停止した東京とはまた少し違うものですが、もし2011の時より被害が大きくなる想定の首都直下型地震が起きた時に、最低知っておくべきことがたくさん書かれています。

著者福井晴敏氏は当初「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」など戦争物、歴史物が多い作家と思っていましたが、先日読んだ「小説・震災後」やこの小説のように現代の生活や思想に直結した作品もあり、また昨年に映画化された「人類資金」など多様な作品を生み出しています。

小説の内容は、仕事で東京都庁を訪れていた主人公が、いきなり東京湾北部で発生したマグネチュード7.3の地震に遭い、想定される都内の惨状と、墨田区にある自宅と家族の元へ帰るための奮闘を描いたシュミレーション風のものとなっています。

巨大地震が起きた時、都内の超高層ビルのエレベーターに乗っていた場合にどうなるのか?、歩いて帰宅する場合はなにが必要か?、火事場泥棒と遭遇した時は?、被害の大きな地域ではどういう行動が求められるかなど、その場面ごとにエレベータに乗り合わせた謎の男性(甲斐節男:お節介とも解説男とも読み取れます)の解説と適確なアドバイスでコンパクトにまとめられています。

2011年震災前のこの時のシュミレーションでは想定が多少甘く感ずるところもあり(東京下町の液状化には触れられてはいますが、津波が川をさかのぼってくることや、ガスタンクや工場の爆発炎上、道路の大渋滞と帰宅困難者の群れなど危険箇所の特定やルートの危険度がない)、東日本大震災の時の教訓を追加して、面白く読める役立つ実用本として多少アップデートした版を再発行してもいいかも知れません。

東京都内の地域危険度マップ(小説の主人公が住む墨田区やその隣の荒川区は真っ赤です)

著者別読書感想(福井晴敏)


【関連リンク】
 4月後半の読書 下流志向-学ばない子どもたち、働かない若者たち、ダブルジョーカー、真珠湾 十二月八日の終戦、星の王子様
 4月前半の読書 慈雨の音(流転の海 第6部)、天使のナイフ、ある微笑み、ダイスをころがせ
 3月後半の読書 戦闘妖精・雪風<改>、グッドラック―戦闘妖精・雪風、春嵐、Facebookというビジネス

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下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) 内田樹

2007年に単行本として発刊された本で、2009年に文庫化されました。イメージ的には新書なのでしょうが、なぜか単行本→文庫の流れで発刊されています。

内容は著者が講演したセミナーの内容をまとめたもので、様々な本や自分が勤める大学の学生を見てきて、自分なりの分析と感想を述べたもので、「学ばない子供」や「働かない若者」をどうにかしたい!っていう実用書として役立てるものではありません。

ズバズバと斬って斬りまくる相変わらずの内容ですが、決して古今東西老人が若者に対して抱く「最近の若者は・・」といった愚痴ではなく、具体的な(極端な)例をひとつひとつあげていきながら、現代の(一部の)若者達が陥ってしまっている問題を指摘していきます。

中でも注力しているのは「今の若者は子供の頃からすべて物事を自分に決定権がある消費者の意識として考える」傾向にあり、したがって、例え親や友人が「間違っている」と言い聞かせても、本人は自らが消費者意識なので「自らで決めたことなので間違っていない」という錯覚に陥ってしまうということ。

つまり学校で真剣に学ばないのも、社会に出ても積極的に働かないのも、それらは自分が決めたことで、それが自分にとって合理的で最善だと信じこんでいることが危険だということです。そしてそこに様々な格差が生じてしまう社会になってきたとも言えます。

格差社会とは決して今に始まったわけでもなく、戦前にはれっきとした身分制度があり、性差や納税額の多寡によって政治家を選ぶ選挙権があったりなかったりしました。戦後の高度成長期においても、また一億総中流と言われたバブル時代においても歴然とした格差は常に存在してきました。

失われた20年と言われたバブル期以降に流行語となった「勝ち組と負け組」、「情報弱者」、「ワーキングプア」、「(悪意を持って言われる)ゆとり世代」などは現代の格差の象徴とも言えるものでしょう。

しかしこの本でいう格差は、自らの意志で、役に立たないと判断して学ばない、働かないという自分にとっては最善の道を選択した結果において新たな格差を作っていくという流れができてしまっていることを懸念しています。

章立ては大きく「学ばない若者」「働かない若者」を中心に、なぜそのようになってのか?を分析していきます。タイトルにあるように、自らの意志で「勉強せず」「働かず」、上を目指すことは本意ではないという若者が増えてきた社会に警鐘を鳴らしています。

ところどころに理解ができない(私の能力の問題)ところもありましたが、社会や教育のゆがみを痛烈に批判している内容です。

著者別読書感想(内田樹)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ダブル・ジョーカー (角川文庫) 柳広司

2009年に吉川英治文学新人賞受賞を受賞した「ジョーカー・ゲーム」のD機関シリーズ第二弾で2009年に単行本、2012年に文庫版が出ています。その「ジョーカーゲーム」はすでに映画化が決まっていて、来年2015年に公開される予定です。

小説に出てくるD機関とは第二次世界大戦前に日本陸軍内部に組織したスパイ養成・運営部隊で、そこで中心的な役割をなすのが魔王と怖れられる結城陸軍中佐です。D機関のモデルは昨年亡くなった小野田寛郎氏も卒業したエリートが集まる陸軍中野学校ですが、D機関はあくまで想像の産物です。

このシリーズはいずれも1話完結の短編で構成されています。本のタイトル「ダブルジョーカー」は最初の短編のタイトルで、自分の思いのままに動かせないD機関を苦々しく思っている陸軍の幹部が、有能な部下にもうひとつのスパイ組織「風機関」を組織させ、「陸軍に二つのスパイ組織は不要」という名目でD機関をつぶそうと目論みます。そして双方に諜報活動で競わせるというストーリーのものです。つまり「スパイ組織=ジョーカー」で二つのスパイ組織という意味のタイトルです。

その他に、ソ連に内通する軍内部のスパイをあぶり出す「蠅の王」、民間人の通信技術者を利用してインドシナ(ベトナム)で暗躍する犯罪者を一斉検挙しようとする「仏印作戦」、「柩」「ブラックバード」の5編(文庫版は「眠る男」の6編)からなります。いずれも見事なストーリーテラーぶりで、この著者の才能はいったいどこまでいくのか大いに楽しみです。

著者別読書感想(柳広司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

真珠湾―十二月八日の終戦 (角川文庫) 池上司

単行本が2002年、文庫本は2004年に発刊された歴史実話をモチーフとした小説長編小説です。著者の作品は好きで、この本を含め全5冊とも読み終えましたが、なぜだか2005年に「ミッドウェイの刺客」が出て以来、その後新しい小説は出てきません。

この小説は著者の作品で以前読んだ、終戦間際の北方領土に不可侵条約を一方的に破棄し、ソ連軍がなだれ込んできた時の模様を描いた「八月十五日の開戦」とタイトルは対をなすものですが、直接その小説とは関係がありません。

内容は、海軍軍令部から連合艦隊司令長官に異動した山本五十六と、ハワイのホノルルでアメリカの太平洋艦隊の情報収集活動をおこなった予備役下士官(実在した吉川猛夫氏がモデル)を中心として、無謀と言える対米開戦を決意せざるを得なかった日本のリーダー達の苦悩と決断、そして挫折を描いたものです。

これを読んで当時の日本が様々な問題を抱え、そして軍部はもちろん、世論やマスコミなどにも煽動され、かなうはずのないアメリカとの戦いを決定せざるをえない状況に追い詰められていく過程と、さらに最後まで開戦を反対していた山本五十六が、どうしてもやるなら「奇襲攻撃で太平洋艦隊を殲滅+アメリカ世論の厭世観を背景に早期講和」しか日本を救う道はないと職を賭けて提案する場面はなんど読んでも胸が熱くなります。

しかし結局はアメリカに宣戦布告書を手渡すのが大きく遅れてしまうことになり、結果、宣戦布告前の不意打ち、だまし討ちという汚名を着せられてしまい、アメリカの国民感情の反日意識を刺激してしまいます。また奇襲攻撃したハワイにはいるはずだった太平洋艦隊主力の空母がなく、それらによって山本五十六が最後の手段と考えていた「早期講和」が消えてなくなり、逆に卑怯な日本をこらしめろ的な世論に火がつき、この戦争の行方は知れたことになってしまいます。

最近きな臭くなってきた、中国との関係において、再び日本でも好戦派が盛り返してきている雰囲気がありますが、正しい歴史を学ばないと、何度でも同じ過ちを繰り返すことにつながりかねません。政治は世論やマスコミの動向を気にして動くもので、後から見れば決して正しい判断をしているとは言い難いこともよくあり、誠意ある国民は常に注視していかなければなりません。

著者別読書感想(池上司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

星の王子さま (集英社文庫) アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

1943年に発刊された世界で8000万部を超える世界的ベストセラーで、私も小学校の時に学校で習い、その後に1冊をちゃんと読む機会もありましたが、すでにその記憶がほとんどなくなっているのと、米Amazonの「一生のうちに読むべき100冊」にも入っていることからもう一度ちゃんと読んでおこうと思い買ってきました。

ま、その内容についてはあらためて語るのは野暮というものですから特に書きませんが、この本がアメリカで初めて出版された1943年というと日本では太平洋戦争が泥沼化し、山本五十六連合艦隊司令長官が自殺に近い前線視察へと出掛け、米軍の攻撃で亡くなった年です。

アメリカでは、ヨーロッパ戦線と太平洋戦線の両面で財政的にも世論的にも厳しい社会だったにもかかわらず、そのような状況下でもドイツに降伏したフランスから逃げてきたパイロット兼作家(サン=テグジュペリ)の一種ファンタジー小説が出版できる国内状態だったというのはまったく驚きです。その米国と精神論と特攻や玉砕しか戦う方法がなく、内地においても食糧はもちろん燃料や紙までが配給制だった日本が長引く戦争でかなうはずもなく。

サン=テグジュペリは、アメリカでこの本を出版した翌年、自ら志願をしてアメリカ軍の偵察機パイロットとしてアフリカ戦線へ出向き、ドイツ降伏まであと10ヶ月という1944年7月に地中海上空でドイツ空軍に撃墜され死亡します(公式には偵察中未帰還)。撃墜したとされるドイツ軍パイロットは「サン=テグジュペリの著作本のファンだった。もし彼が乗っているとわかっていれば撃墜などしなかった」と後で述べたとか。


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慈雨の音: 流転の海 第六部 (新潮文庫) 宮本輝

宮本輝氏の自伝的なライフワーク作品として続いている「流転の海」の第6作目の作品です。

シリーズの過去の作品は、

1「流転の海」(1984年)
2「地の星 (流転の海 第二部)」(1992年)
3「血脈の火(流転の海 第三部)」(1996年)
4「天の夜曲(流転の海 第四部)」(2002年)
5「花の回廊(流転の海 第五部)」(2007年)
6「慈雨の音(流転の海 第六部)」(2011年)

となっています。( )内は単行本の発刊年

小説の主人公はいずれも著者の父親をイメージした松坂熊吾という人物で、大阪で様々なビジネスを起こし、そして事業の失敗や、仲間からこっぴどい裏切りに遭ったりする、憎めないが魅力のある剛胆な大阪商人とその家族を中心に描かれています。

第1部は敗戦の2年後、事業の再起をかけて闇商売に奔走しているところから始まり、そして主人公が50歳にして初めての息子が授かります。この息子が著者自身です。

愛読者が困る点は、前作から次の作品が発刊されるまでに8年、4年、6年、5年、4年といずれもかなり間隔が開きますので、読み始めてもなかなか前作までの流れが思い出せずに苦心します。

五木寛之氏のやはり自伝的小説「青春の門」シリーズも似たようなところがありますが、こちらは比較的登場する人物が少なく助かっています。

このシリーズでは複雑な人間関係が絡み合っていて、前作や前々作に登場していた人物が、主人公や家族とどういう関係だったか、誰が誰の産みの親で、誰が育ての親で、など、あらためて説明がないので、記憶力のいい人以外は混乱必至です。外国小説のように主な登場人物の説明がせめてカバーにでも書いてあると助かるのですが、新潮さんなんとかなりませんかね?

ちょっと数えてみたら、第1部から第6部までに主な登場人物はざっと50名にのぼります。それ以外にもちょい役で登場する人や、話しの中に出てくる人(何々ちゃんのお母さんとか)も含めると軽く100名以上にのぼるでしょう。自分のためにも人物相関図を作ってみようかと思いましたが、かなり時間と労力がかかりそうなので断念しました。

この第6部は昭和34年の皇太子ご成婚や東京オリンピックの準備で日本が高度成長時代へまっしぐらの頃で、第1部では50歳だった主人公はこの6巻で60過ぎになっています。

昔の商売仲間から大阪駅近くの学校跡地の有効利用を任され、そこに住み込みながら巨大なモータープール(駐車場)の経営を成功させ、また事務所を構えず身ひとつでおこなう中古車売買(エアブローカー)の仕事も順調にいき、貧しさや病気、差別、裏切りなどで重苦しかったこのシリーズの中では割と安定した生活をおくっています。

私が小学生に上がる前のまだ幼児だった頃(1960年代初め)の大阪をふと思い出しましたが、中心部以外では焼け跡に建てられたようなバラック小屋がまだ多くあり、駅には戦争で手足をなくした人が空き缶を前に置いて物乞いしている姿も多く見た記憶が残っています。

この小説ではまだ一部に焼け野原が残る1950年代の大阪で、たくましい商人達が懸命に生きる姿と徐々に復興し、近代化されていく大阪の街の姿がなんとなく懐かしい思いです。

著者別読書感想(宮本輝)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

天使のナイフ (講談社文庫) 薬丸岳

2005年の江戸川乱歩賞を受賞した著者の作家としてのデビュー作品で、文庫版は2008年に発刊されています。著者は私も以前とても面白く読んだ高野和明著の「13階段」を読んで感動を受け、小説を書くようになったということです。

「作家としてのデビュー作」と書いたのは、すでに映画の脚本や漫画の原作などを書いていた経歴がある方で、その頃はまだ紆余曲折の仕事人生だったようです。

死刑囚を匂わせる「13階段」とは違い、例え殺人という重犯罪を犯しても刑罰を受けることがない少年犯罪をテーマとし、ある殺人事件をきっかけに起きた新たな犯行と、その中に潜む人間関係の謎を主人公が追いかけるというミステリー長編小説となっています。

主人公は毎朝愛娘を保育園に預け、セルフ式カフェのオーナーとして働いている男性です。ひとりで子育てをしているのは、結婚して子供が生まれたばかりの時、自宅にいた妻が空き巣に入ってきた中学生の少年達に殺害されたからです。

妻を殺された主人公は、少年犯罪として少年達の名前すら少年法の壁で知ることができず、少年達が謝罪のために来ることもなく、なぜ妻が無惨な殺され方をしなければならないのか理解できません。そして当時の法律では少年犯罪は原則的に刑法で罰せられることはありませんでした。

そのような中で、主人公の男性は、あるマスコミの取材中に感情的になり、思わず「司法が殺人犯を裁けないなら自分の手で犯人を殺してやりたい」と言い放ち、それが大きく報道されます。

そして事件から4年後のある日、自分の店の近くの公園で、妻を殺した犯人のひとりが何者かによって殺害されます。その時間帯は閉店後でアルバイトが帰り、ひとりで店で残務処理をしていた時間でアリバイはなく、過去の発言から主人公に疑いの目が向けられます。

ジャンルからすれば主人公を追い詰めていく謎の人物の存在とその理由は?というミステリー小説ですが、一方では頼りにならない警察を信用せずに、自分ひとりで殺された妻や殺した少年達のことを調べて回るというハードボイルド小説の要素も含まれています。

さすがに江戸川乱歩賞を受賞しただけのことがある、最後は見事な話の展開と、妻の殺人に秘められた謎があったことを解き明かす過程がとても印象に残った作品です。

著者別読書感想(薬丸岳)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ある微笑 (新潮文庫) フランソワーズ・サガン

1954年に「悲しみよこんにちは」で衝撃的なデビューをしたサガンの1956年の作品で、アメリカで映画にもなっています。

麻薬漬け、浪費癖、多くの愛人の存在などスキャンダラスで破天荒な人生を歩んだ著者ですが、当時の抑圧された民衆の中にあって、読者の願望や夢を自らが体現していくことで、多くの大衆から支持を得たのかもしれません。

著者の代表作「ブラームスはお好き」も、離婚を経験した経済的に自立したキャリアウーマンが、二人の独身男性とうまく付き合っていくというある意味では束縛された結婚よりも、金と自由を手に入れて、しかも二人の男性との恋も手に入れるという一種生活に疲れて欲求不満な女性の理想型のようなスタイルが描かれています。

この小説では、主人公はフランスの中流家庭の女子大生で、付き合っている大学生の恋人がいながら、その恋人の叔父の既婚男性からの誘惑も受け入れ、2週間の夏休みをリゾート地で一緒に過ごすという、1950年代当時としてはかなり先進的な考えの持ち主で、それがいかにもフランス的です。

日本の女性作家の中にはこうしたサガンの作品を現代風に変えたストーリーで恋愛を描いていると思われる作家さんも少なくなく、この作品が書かれてから60年後の今読んでも、十分に現代恋愛事情として通用してしまいそうなところが面白いところです。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ダイスをころがせ! (講談社文庫) 真保裕一

「ダイスをころがせ(Tumbling Dice)」と言うと音楽好きならローリング・ストーンズや、それをカバーしたリンダ・ロンシュタットの1970年代の曲かと思われそうですが、こちらは2002年初出の長編小説です。

著者の小説は好きで、「ホワイトアウト」や「黄金の島」「奇跡の人」など数えてみると今までに15作品読みましたが、いずれもハズレはなく、どの作品も安心して読める作家さんです。すでにいくつもの文学賞を受賞されていますが、直木賞だけはどうも縁がなく、時間の問題のような気がしていましたが2003年の「繋がれた明日」以来なぜか最近はノミネートにも上がりません。

この小説の主人公は34歳で総合商社に勤務していた時に、関わっていた開発事業の失敗の責任を押しつけられて、子会社へ飛ばされます。その子会社でも上司のミスの責任をかぶることになり、嫌になって後先考えずに退職したものの、まともな仕事にありつけず困っていたときに、高校の同級生で新聞社に勤めている恋人を取り合った仲でもある元ライバルと出会います。

その同級生から新聞社を既に退職し、1年後の衆議院選挙に地元の静岡から無所属で立候補することを告げられ、その選挙参謀兼秘書をやってくれないかと頼まれます。

小説とはいえ、あまり知られていない国政選挙に出るときの諸々が書かれています。選挙資金はこれだけ必要で、どうやって事前運動を始めるのかなど、まるで立候補マニュアルのようなところがあります。

この本のタイトルは、せっかく国民の意志を反映するための唯一の選挙に、特に若い人が投票に足を運ばないことを危惧して「手の中にあるサイコロをなぜふろうとしないのか?」という辻立ちの演説の中からとられているようです。

政党に所属せず無所属で立候補することの難しさが強調され、それは結局、現職の国会議員が自らの首を絞めるような改革や制度設計ができるはずがないという流れにもっていってますが、一方ではある一定規模の政党の縛りがないと、単にテレビで有名人だからとか、無所属で特定のスポンサーや極端な思想に偏った政党に所属しない候補者が選挙で乱立してしまう可能性も否定できません。

被選挙権のすべてが自由・平等・公平というのは言葉では美しく響きますが、現実の中ではそれがいいとは言い切れません。例えば、被選挙権者の中にも当然貧富の差があり、運動員や施設、PRにより多額のお金を使えるお金持ちしか政治家になれないとうのでは、自由・平等であっても公平とは言えません。

特に現在の選挙のように浮動票が過半数を超えるような社会では、その移り気な浮動票の行方次第で頻繁に政治の風向きが変わってしまうことになり、メリットばかりではなくデメリットも生じてくるのは想像ができます。

この小説では、そのような現在の選挙制度や政党にしか配られない交付金、企業や組合、宗教団体の組織で戦う旧来の選挙についての問題提起もありますが、これからはもっと若い人が選挙に関心をもって、自分で一票を投票する行動で、日本の政治に責任をもってもらいたいという著者の願いが込められているようです。

著者別読書感想(真保裕一)


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ロバート・B・パーカー(Robert Brown Parker)は1932年アメリカ生まれの小説家で、2010年1月に77歳で亡くなるまで、数多くの小説を残しました。

中でもデビュー作で、スペンサーシリーズ1作目となる「ゴッドウルフの行方 (The Godwulf Manuscript)」(1973年)※以来、40年で39作品(1作品は邦訳版なし)にのぼる私立探偵スペンサーシリーズは著者の代表作であり、多くのファンを獲得しています。
※邦訳版の早川書房からは3作目の「失投」が1作目よりも先に発刊されているようです

私がパーカーの小説にはまるきっかけになったのは、それまで愛読していたレイモンド・チャンドラー(1888年~1959年)の小説をすべて読み終わり、さて次はと思っていたら、チャンドラーが執筆途中で亡くなり未完だった「プードル・スプリングス物語」(1990年邦訳版発刊)を、パーカーがあとを引き継いで完成させたものを読んでからです。

また同じくチャンドラーの「大いなる眠り」の続編としてパーカーが書いた、私立探偵フィリップ・マーローを主人公とした「夢を見るかもしれない」(1992年)にもすぐ食いつきました。

したがって70年代、80年代からの純粋なパーカーファンからすると、90年代になってようやくチャンドラーから流れてきた”にわかファン”と言われても仕方がないわけですが、パーカー自身もチャンドラーには大きく影響を受けていたのは間違いなく、チャンドラーのファンがその後パーカーファンとなるのはごく自然な流れと言えるでしょう。

余談ですがパーカー同様にチャンドラーを信奉するマイクル・コナリーの「ヒエロムニス(ハリー)・ボッシュシリーズ」や、日本の小説家原りょう氏の「私立探偵沢崎シリーズ」も欠かさず読んでいます。

もうひとつ余談ですが、個人的な感想として、パーカーの師とも言えるレイモンド・チャンドラーですが、ほぼ同年代にイギリスで活躍した作家で「007シリーズ」が代表作のイアン・フレミングとも似ているところがあるように思えます。

イアン・フレミングのほうが10数年後のデビューですから、チャンドラーの影響を受けたと言えるかも知れません。

なんとなくですが、フィリップ・マーローとジェームズ・ボンド(映画ではなく小説のです)、そしてスペンサーが似ているんですよねぇ。

そのパーカーの遺作となった「春嵐」(2011年)は、一昨年2012年に日本でも発刊され、これでパーカーが書いたスペンサーシリーズが幕を下ろしました(未翻訳1作除く)。

40年間の長きに渡り、偉大なるマンネリにも負けず書き続けてきたことは賞賛すべきことで、これからもチャンドラーやダシール・ハメットとはまたちょっと違った形でハードボイルド小説の大御所として歴史に名を残していくことになるのでしょう。

パーカーより6歳若いローレンス・ブロックが書く、同じく私立探偵の「マット・スカダーシリーズ」はパーカーのスペンサーから遅れること3年の1976年に初登場してから、著者や読者と同様に年々歳を重ね、最近の作品では、仕事を引退して昔のことを思い出す好好爺的雰囲気を漂わせていますが、スペンサーシリーズは年齢にはほとんど触れず、いつまでも若々しい姿のままで終わりました。

せっかくこのシリーズ全作を読み終えたので、なにか備忘録的にまとめて残しておこうと考えて、別ページでユニークな文庫のカバー表紙(1~23作目は辰巳四郎氏のデザイン)と、カバー裏の紹介文をまとめておきました。

邦訳版のタイトルには邦訳版の、英語の原題には原書のペーパーバック版またはKindle版へのリンクを付けておきました。これから読もうと思っている人の参考になれば嬉しいです。

◆スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著一覧

日本の文庫本のカバーは海外のペーパーバック版とはまったく違った装丁で、特に初期のものはとてもユニークかつ印象的です。

ただし再版されたカバーはまた別の装丁が使われているようで、どの版を買うかでカバーが変わりそうです。

上記のリンク先に表紙の写真をまとめた私の持っている全巻は、文庫の初版または初版に近いカバーだと思います。

パーカーには、このスペンサーシリーズ以外にも、前述のフィリップ・マーローを主人公とした作品や、警察署長 ジェッシイ・ストーンシリーズ、女性私立探偵サニー・ランドルシリーズ、その他単発の作品があり、その中のいくつかは読みましたが、どうしてもスペンサーシリーズに思い入れが強く、それだけの構成となっています。

あとできれば、上記の余談にも書いたとおり、すべて揃っているハズのチャンドラーの作品とフレミングの作品も一緒に並べておいてもいいかもですね。それはまた折を見て。

スペンサーシリーズの古い作品は大型書店やAmazonにも在庫がないものが結構あります。それに残念ながら一部の人気作品以外はもう再版されることもないのでしょう。

こだわりと言えるかも知れませんが、私はできるだけ古書ではない本を買いたかったので、丸善本店や紀伊国屋本店、八重洲ブックセンターなど大手書店の近くへ行く用事がある時は、まだ読んでいないタイトルをメモっておき、見つかれば小躍りしながら買ったものです。

なのでこのシリーズは読んだ時期が発行順ではなく、かなり前後しました。10年ほど前の話しですが、リアル店舗でこのシリーズが一番充実していたのは、当時できたばかりの丸の内オアゾの丸善丸の内本店でした。

今はジュンク堂やリブロの池袋本店、ブックファースト新宿店など比較的新しい大型書店もあるのでどうかわかりません。

書店やAmazonで買った(古書ではない)本は、新しい本なのに、たぶんもう何年もずっと在庫だったか書棚に置かれたままだったらしく、まるで古本のようにカバーの色や紙の色も変色しているものが何冊もありました。

書店の棚ならわかりますが、Amazonから送られてきたものを見ると「え、これが新品?」と不安に思うこともありました。きっと長くどこかの書棚に置かれていて、それが回り回ってAmazonの倉庫へやってきたのでしょうね。

これを機会に出版元の早川書房から新装丁版で38冊をまとめたセット版が出てくるといいなと思いましたが、こうした地味なファンにしか売れない書籍は制作・流通コストがほとんどかからない電子書籍への移行時期でもあり、その可能性はとても低そうです。

かくいう私も新たにもう1セット買うかと聞かれても、部屋の中はすでに本で埋まっていて、飾っておける場所もないのでたぶん買わないでしょう。

◆スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著一覧


【関連リンク】
1782 イアン・フレミング著「007ジェームズ・ボンドシリーズ」全巻まとめ
327 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー

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805
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA) 神林長平

この小説は今から35年も前の1979年に「SFマガジン」に掲載され、その後1983年まで連載された連作短編小説で、1984年に文庫本として発刊されました。

その後1999年に続編の「グッドラック―戦闘妖精・雪風」が単行本として発刊されるときにあらためて「戦闘妖精・雪風〈改〉」として多少修正が加えられ再文庫化されたものです。

まだ詳細は不明ですが、これを原作とした実写版の映画「YUKIKAZE」がハリウッドで製作されているそうで、主演はトム・クルーズという話しが1年前にありました。

原作(この本)では主人公は偵察機雪風のパイロットで日本人の深井零(ふかいれい)中尉ですが、ハリウッドへ行くとそのあたりは地球を救うのはいつもアメリカ人というお約束のパターンに変えられてしまうのでしょうかね。

主人公の愛機が最新鋭の「スーパー・シルフ」という戦術戦闘電子偵察機で、この3番機の愛称が「雪風」です。

その愛称を付けたのは主人公の友人で、日本通のイギリス人上官。もちろん名称の由来は圧倒的不利な状況の太平洋戦争で激しい戦闘に16回出撃して16度ともほとんど無傷で帰ってきた奇跡と言える日本海軍の駆逐艦名からです。

ストーリーの背景をすごく大雑把に言えば、謎の異性体ジャムが地球に襲来し、地球側も国を越えて共同で防衛軍を組織し、押し返しているという状況。

その反撃する防衛軍の組織にブーメラン戦隊と呼ばれる最新の戦闘機でありながら敵の情報を得るだけで、例え目の前で仲間が敵機にやられていても援護ぜず帰ってくるという冷酷無比な特殊偵察部隊にいるのが主人公です。

ブーメランのように必ず帰ってくるというのが激しい戦闘に参加しても必ず帰還した駆逐艦雪風になぞられています。

本書が出た1979年頃と言えば、まだパソコンはマニア以外には普及していない時代ですが、小説ではやがて来るであろう「コンピューター(人工知能)対人間」という未来の世界をうまく描いています。

それは人間がコンピューターを扱っていると思っていたら、コンピュータは人間の知識を超えてさらに進化していき、やがてコンピュータが「人間は間違うものだ」ということを学び、勝手なことをしてしまうという、「2001年宇宙の旅」(アーサー・C・クラーク著)や、最近読んだ中では「アイの物語」(山本弘著)などでも書かれていたことと似ています。

確かに人間の寿命なんて長くてもせいぜい100年程度しかありませんが、人工知能を育てていけば、1000年でも1万年でも連続した活動ができ、しかも知識の蓄積と移行が簡単にできますので、時間や環境など生命維持という制限がある人間にはできない作業は今後機械((コンピュータ)に任せるという可能性が高くなるでしょう。

そう考えると未来の戦争は、人間同士の争いではなく、コンピュータで制御された機械同士が戦うという時代がやってくるのかも知れません。そしてそこのところにSF的要素として、現代に生きる人間がもっとも興味のあるところでしょう。

この最初の連作短編では、

00 FAF・特殊戦隊
01 妖精の舞う空
02 騎士の価値を問うな
03 不可知戦域
04 インディアン・サマー
05 フェアリイ・冬
06 全系統異常なし
07 戦闘妖精
08 スーパーフェニックス

の9編と雪風の概説からなります。

著者別読書感想(神林長平)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA) 神林長平

戦闘妖精・雪風(改)の続編にあたる作品で1999年に単行本、2001年に文庫本が刊行されています。

あと、まだ未読ですが、その後の作品として2009年に「アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 」(文庫は2011年)があります。

前作と同様、SFマガジンに掲載された短編をまとめたもので、物語の背景は基本的に前作と変わりがなく、それはすでに書きましたので省略します。

前作の最後で愛機のスーパーシルフ雪風が異星体ジャムに撃墜され、その直前に雪風から脱出した主人公は重傷を負い植物人間状態で救出されますが、その後復活し、やがて新しい最新型の無人偵察機と交流を始め、再び偵察活動とジャムとの戦いに臨むことになります。

収められている各短編のタイトルは下記の通りです。

00 FAF特殊戦から来た手紙
01 ショック・ウエーヴ
02 戦士の休暇
03 戦闘復帰
04 戦闘意識
05 戦略偵察・第一段階
06 戦略偵察・第二段階
07 戦意再考
08 グッドラック

前作で出てきた最初の雪風が撃墜される直前に新型の偵察機に人工知能データのすべてを送ったため、新しい雪風は主人公が育て上げてきたノウハウや知識のすべてを受け継いでいるという設定です。

この小説では未来の戦争においてひ弱な人体は不必要なものとされ、日々膨大な量の最新情報を得て処理される中央コンピュータとネットワークで結ばれている人工知能により制御された戦闘マシンが最前線に投入されるという構図です。

確かに重力や加速度、衝撃に対し極めて弱く、間違いを犯しやすい人間が乗って操縦するよりも、人は乗らずに機械の限界性能をフルに使って行動する方が兵器としてはずっと合理的です。

現実の社会でも無人偵察機や無人車両の実戦配備が進められていますが、未来の戦争の姿は確実にそうなっていくのかも知れません。

そう考えると未来にはヤマトやガンダムのような人が乗って戦う兵器というのは、過去の兵器の形式を引きずったままの姿で、よく考えると旧式っぽくてあり得なさそうです。

もうひとつどうしても疑問に思えるのが、他の多くのSFでもそうなのですが、地球までやってきて攻め入るだけの高度な知性と技術力を持った異星人の戦闘機や母艦が、人間や人間が作った戦闘機と対等のレベルにしかないのか。

普通に考えればはるかに進んだ戦略兵器やシステムをもっているはずで、とうていかなうはずがないというのが実際でしょう。言ってみれば槍や剣で武装した18世紀の軍隊と、21世紀の軍隊が戦うようなものでハナから勝負になりません。

それにもし人間がはるか宇宙に飛び出して資源開発や食料生産のため他の星に植民地を拡げようと考えたとき、その活動はやはり寿命の短い生物が担うのではなく、メンテさえすれば何百年間でも稼働する人工知能をもった機械に任されることになるのでしょう。

もし地球制服をたくらむ知性体があったとして、それはこの小説で書かれているように、目に見える戦闘機や兵器類はあってもそれを操る異星人など生物の実体はどこにもなく、どこかにコントロールしている人工知能体だけが存在しているということになり、他のSF小説の多くにあるような異星人がいきなり人間の前にやってくることはなさそうです。

そうした未来の戦争の姿と、そうした中においての人間の存在価値を、創造力豊かに描いたのがこのシリーズかなと思います。

著者別読書感想(神林長平)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

春嵐〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 ロバート・B・パーカー

2010年に亡くなった著者の最後の作品で、2012年に邦訳の文庫が発刊されています。ボストンの私立探偵スペンサーシリーズは40年間続き39作品、このシリーズを読むのもこれが38作目(1作は邦訳版なし)で最後となります。

今回は前作同様に準レギュラーだった相棒ホークが旅行中ということで登場しないぐらいで、内容的には従来のものと特に変わったことはなく、著者としてはまだまだスペンサーシリーズを書きたかったんだろうなと思えてきます。

老いてタフな探偵から引退するスペンサーを描く気はなかったと見えます。

ストーリーは、ある映画俳優が宿泊していたホテルの部屋で、若い女性が絞殺された状態で発見され、当然その俳優が疑われます。

スペンサーの知り合いの刑事がやってきて、どうも不明な点が多く、興味本位のマスコミは俳優へのバッシングを続ける中、なにか引っかかるということで調査を頼まれ、俳優を守りたい映画制作会社と弁護士を通して調査を引き受けることになります。

この作品ではもうひとりの主役がいます。それは殺人容疑者のかかる映画俳優のボディガードを勤めていたものの、スペンサーにこてんぱんに痛めつけられたことでクビとなり、スペンサーの元へ弟子入り?することになったアメリカ先住民(インディアン)の男ゼブロン・シックスキル(通称Z)です。

今までクワークやホークをはじめとして多くのタフガイを仲間にしてきましたが、今回新たな仲間入りをすることになったZは残念ながら最初で最後の登場となってしまいました。

とは言え、スペンサーシリーズは別の作家が後を引き継いで書くらしいので、それらの作品にはまたホークもZも登場することになるのでしょう。

007シリーズのジェームズ・ボンドが原作者イアン・フレミング亡き後、すでに何作も作られているような感じでしょうか。

最近のアメリカでのエンタティメントでは出演者の人種構成にとても過敏で、映画やドラマ、コマーシャルフィルムなどを見ても、昔のように白人ばかりが出てくるというのは皆無で、例え白人が主役でも、必ず人種構成比を考慮しアフリカ系や先住民系、南米系、東洋系などのマイノリティを混ぜることが求められています。

それに配慮したかどうかは不明ですが、このシリーズではアフリカ系のホークがほぼレギュラーで登場し、その他にもスペイン系(メキシコ系)や東洋系(主に中華レストランですか)の人物がよく登場してきます。それが今回ではアメリカ先住民ということなのでしょう。

名作だった「初秋」で両親からほとんど捨てられた状態の少年ポールに対し、愛情と強い生き方を教えたように、家庭や友人に恵まれず、クスリと酒浸りになっていたZに、立ち直るきっかけとして強い意志と立ち向かう力を時間をかけて教えていきます。なんとなく初期の頃の作品初秋をもう一度読み返したくなりました。

ロバート・B・パーカーの最後の小説「春嵐」のエンディング、つまり筆者が死ぬ直前に書いたこの小説の最後はこのように締められています。

ボストンに戻ると、スウェットに着替え、清潔な服とひげ剃り道具をジムバックに入れて、ハーバー・ヘルス・クラブに出かけた。
ウェイトを挙げた。

スピードバッグを打った。
全身汗をかき、シャツに染みこむまでサンドバッグを打った。
それからスチームルームに入り、長いこと座っていた。
出たあとシャワーを浴び、ひげを剃って、清潔な服を着た。
クラブから出たときにはまだ雨が降っていた。
が、西のほうでは少し弱まっているようにも見えた。
ケンブリッジのあたり、スーザンが住んでいるところだ。

雨が上がれば、世界はおそらく私のように、すっかり洗い清められたように見えるのだろう。
清潔さが幻想であるのはまずまちがいない。
よくて束の間の思いこみだ。
けれども、それを言えば、人生の大半はたとえ話だ。

私は車に乗って、西へ向かった。

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

徹底解析!! Facebookというビジネス (洋泉社MOOK)

マイクロソフト、アップル、Google、Amazonなどアメリカ発のITやネット系の巨大ビジネスはいくつもありますが、その中でも大学生が起業して一躍巨大ビジネスとなったFacebookについて、アメリカと日本において両面からみたビジネスや将来性を○人のジャーナリスト達が取材し書いたもので、一種雑誌のようなような書籍です。

発刊は2012年で、こうした本の寿命は短く、すでに内容は一部陳腐化し始めていますが、映画「ソーシャル・ネットワーク」では描かれない、大きなビジネスとして立ち上がって以降のフェイスブック社のことが書かれていて、それなりに面白く読めました。

と言ってもよくありそうな創業者マーク・ザッカーバーグの成功物語や提灯本ではなく、他のSNSとの考え方の違い、なぜ実名主義にこだわったのか、格差社会としてみるSNS、このビジネスの限界や弱点はなにかなど、様々な切り口でFacebookを斬っています。

いずれにしてもやがて成長が鈍化し、なにかをきっかけとしてユーザーが一斉に他のサービスへ移ってしまえば崩壊の道しかない競争の激しいビジネスですが、その中にあってもグローバルで見ると一番期待度が高いとされているのは2年前も今も変わりません。

テーマと筆者は下記の通り

【PART1 フェイスブックを解き明かす】
筆者 山路達也

【PART2 在米リポート SNSバブルの功罪】
アメリカで発生中のSNS上場バブル 勝者と敗者を分けるものとは? 筆者 飯塚真紀子
フェイスブックが変えた、政治とジャーナリズム 筆者 加藤靖子

【PART3 フェイスブックは世界をどう変える?】
インタビュー 中川淳一郎、濱野智史、舛田淳、西田宗千佳

【PART4 フェイスブックの危険な落とし穴】
筆者 山田順

【PART5 ビジネス活用での手ごたえ】
企業がフェイスブックを活用するということ 筆者 大山貴弘
ソーシャルメディアを分析することで、何が分かるか 執筆 今田智仁

どういうときにこれを読むといいのか?と聞かれると、ちょっと答えに詰まりそうです。

Facebookというビジネスに(SNS本来ではなく)興味があれば、あまり深くは掘り下げられていないけど、ザックリとよくまとめられているので時間の節約になりますよって感じかな。

私は個人的にPART4の「フェイスブックの危険な落とし穴」が面白く読めました。こうしたネットのサービスはいつまでも最初できた頃と同じスタイルで運営されることは滅多になく、日々機能やビジネスモデル(収益構造)が変わっていきます。

そうした中でビジネスとして一番注目されるのが個人情報や行動履歴というプライバシィに関わるもので、いつ何時その情報がどういう目的かわからないまま使われ、そして他の企業に売り飛ばされてしまうかというリスクは常についてくるということです。

もっともそれらの個人情報で企業が魅力と考えるものは、購買力のある資産家や有名人、強い権限を持つエグゼクティブなどのごく一部であって、その他大部分の一般人の個人情報なんて、十把一絡げのバルクとしての価値しかありませんけどね。

【関連リンク】
 3月前半の読書 三千枚の金貨、「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト、下町ロケット、ふたたびの恋
 2月後半の読書 神様のカルテ3、卵をめぐる祖父の戦争、シューカツ、迷惑メールやって良いこと悪いこと
 2月前半の読書 北帰行、天地明察(上)(下)、微笑む人、ジェノサイド(上)(下)

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