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竜の道 飛翔篇 白川道

2009年に単行本を発刊、文庫本は2011年刊の長編小説です。白川道氏と言えば、やはり自伝的なハードボイルド小説「病葉流れて」シリーズが有名ですが、この1月にはその5作目となる最新作「浮かぶ瀬もあれ 新・病葉流れて」が発刊されています。そのシリーズともどこか通じるストーリーで、「飛翔篇」と銘打ってあることからシリーズ化されていきそうです。

主人公は捨て子だった双子の男性、竜一と竜二で、二人は差別を受けてきた世の中や、唯一優しく接してくれた知人を死に至らしめた企業に報復をするため、壮大な計画を練り、それに向かって着々と準備に取りかかります。

兄の竜一はコインの裏として、自分の名前を捨て、他人になりすまし暴力団の会長の懐に潜り込み、闇世界へと入っていきます。弟の竜二はコインの表として、大検をとり、東大へ入学、キャリア官僚の道へと順調に進んでいきます。

竜一が闇の世界でのし上がっていくための資金を得る方法として株取引の話しが登場しますが、著者にとってはバブル期に投資顧問会社を経営していたこともあり、途中少々食傷気味になるぐらい満載されています。

「投資ジャーナル」を発行し投資顧問を主宰していた中江滋樹氏がモデルと思われる人物や、蛇の目ミシン工業の株買い占めで有名な仕手筋集団「光進」事件など、バブル時に起きたインサイダー事件や仕手戦、業界新聞やゴルフ場会員権乱発など、株や金融に関する事件や犯罪を取り入れたものとなっています。

いや、あの頃の金融・証券業界は今思えば、まったく気が狂っているというか、凄かったの一言です。この時代のことを描くにはモデルには事欠かないでしょう。

読んでいて本当は、表の道を着々と進めていく双子の弟竜二の成長にも関心があるのですが、そちらはあっさりしたもので、大検に通って、東大に入り、卒業して運輸省(現国土交通省)に入省、亡くなった親が入っていた莫大な生命保険を使って華麗なエリート人生を送っているとそれだけしか書かれていません。

そこの点はちょっと残念で、ストーリーの中で並行して竜一と竜二の太陽と月の明暗を対比しながらその生き様を読んでみたかったなと。

著者別読書感想(白川道)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ルームメイト (中公文庫) 今邑 彩

1997年に初出、2006年に文庫化されたミステリー小説です。著者は先月3月6日に57歳の若さで自宅マンションで病死しているのを発見されましたが、独居のため発見が遅れ、死後約1ヶ月ぐらい経っていたそうです。ご冥福をお祈りいたします。

若いうちは1人住まいの気楽さや、自分で稼いだお金を自由に使えることなどいいと思うことも多く、それが結婚しない男女を増やしている要因でもあるでしょうけれど、健康に不安を覚えてくる50代以降ともなると、くも膜下出血や脳梗塞、急性心筋梗塞など、身近に誰かいないと助かる命も助からないこともあり、こうした不幸な出来事が、現在30代40代のシングルが年齢を重ねていくにつれ今後増えそうな気がします。

著者は以前に乳ガンを患っておられたとのことで、急性の病気ではなかったのかも知れません。

私の身近な知人にも、突然倒れた両方のケースがあります。独居の人(30代)は、会社を無断欠勤したことで、不審に思い家族に連絡したところ、自宅で亡くなっているのが発見され、DINKSの人(40代)は、自宅で倒れたとき配偶者がたまたま会社が休みだったため救急車をすぐ手配をして助かり、その後多少後遺症は残ったものの現在も元気に活躍中です。

この小説では、今流行のルームシェアをした相手がとんでもない人だったというところからスタートしますが、もし著者もルームシェアでもしていれば、もっと長生きできたのにという流れでこの本を読んだわけではありません。

以前読んだ「いつもの朝に」がなかなかよかったので、そのうちに読もうとお亡くなりになる前に買っておいた本です。

さて余計な前置きが長くなりましたが、東京に出てきた女学生がアパートが見つからず困っていた時、ちょうど同じく困っていた見知らぬ自称女子学生と意気投合し、相手の発案で二人で共同でマンションを借り、ルームシェアすることになります。

ところがしばらくすると、不在がちとなり、いつもなら入金されるはずの家賃の半分が、約束の日になっても入らず、困って相手の実家へ連絡すると全然別の人が電話に出るということに。

また一方では、籍は入れていないものの、旅先で知り合い、その後一緒に住み始め、内縁関係にあった女性がある日突然いなくなり、なにか事件に巻き込まれたのでは?と探し始めた男性がいます。

やがてその女子学生のルームメイトと内縁の妻は同一人物ということが判明し、女子学生が消えた女性を大学の先輩と一緒に探すことになります。そこで判明した驚愕の事実と、さらなる事件へと発展していくわけですが、さすがにこれ以上は書けません。

ひとつ書いておくと、本文に登場しますが、ダニエル・キイス著のノンフィクション「24人のビリー・ミリガン 」を読んでおくとモロモロ心理状態など理解しやすいかもしれません。

最後に二つのエンディングがあり、どちらを選ぶかは読者次第ということになっています。ところが二つめのエンディングはなにが言いたいのかよく理解ができませんでした。

著者別読書感想(今邑彩)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

父・こんなこと (新潮文庫) 幸田文

「父」は1949年、「こんなこと」は1950年に発刊された二つの随筆です。

「父」は著者の父親幸田露伴が、太平洋戦争が終わり、その敗戦のまだ癒えない1947年に、焼け野原となった東京の下町から千葉県市川市へ移り住み、当時としては長寿の満80才で亡くなる数ヶ月間を描いた著者のデビュー作です。文庫版は1961年に「こんなこと」を含め発刊されています。

少し前に著者の自伝的小説と言われている「きもの」を読みましたが、そこでも父親像が深く描かれていました。と同時に明治から昭和にかけての庶民生活や同氏の生い立ちなどがイメージでき、とてもいいものでした。

文化勲章をもらうような有名な父親をもつとその家族、特に子供は様々なメリットもあれば逆にデメリットもあるようです。

例えば老いて病気がちになった際は岩波書店の創業者岩波茂雄氏の紹介で、日本医師会会長まで上り詰め武見天皇とまで言われた医師武見太郎氏が最期を看取るまで主治医としてついていたり、著名人だと言うことで優遇されることもままあります。

逆に、家族はそういう立派な父親に恥をかかせるわけにはいかないと、いつも気を張ることになり、身の回りの世話のためお手伝いさんを雇っても、すぐに喧嘩をして追い出してしまう自分勝手でわがままな病人でも、それが父親なら黙って受け入れざるを得ません。

また療養中には多くの見舞客が次々と来ますが、その相手もしなくてはならず、葬式にいたっては故人とどのような関係があるのかわからない数多くの参列者からお悔やみをうけることになります。

終戦後間もない時代だけに、現在の葬式と違い、業者がすべてを仕切ってやってくれるわけではありませんので家族はそれらの応対だけでもたいへんです。

随筆というのはこういうものだと言ってしまえばそれまでなのですが、1人の高名な人物が病床に伏せって、やがて息を引き取るまでの数ヶ月間を娘が記憶に頼り、日記か記録のごとく書かれているものなので、これ自体は読んで興味が湧くとか面白いものではありません。

ところどころに出てくる、父親との会話と過去の思い出話などには惹かれるところがあります。

「こんなこと」は、その外面は偉いさんであってもうちの中ではこうだったという、娘視点で父親と掃除の仕方やふすまの張り替え、家庭菜園など日常生活に関した父親との思い出が中心に語られています。

これは伝記とは違い、外面は有名人だったけど癇癪持ちで細かなことまでうるさかった父親の生の姿を残しておこうという娘の愛情と使命感で書いたのではないかと勝手に解釈しています。


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701
弁護側の証人 (集英社文庫) 小泉喜美子

1963年というから今から50年も前に書かれた小説で、著者は1985年に亡くなっています。

この著者の作品を読むのは初めてで、全然知らなかったのですが、私の好きなハードボイルド作家生島治郎氏の最初の妻だった方です。

読んでいると、なんの違和感もなくとても50年も前の小説には思えない新鮮さがあります。つまり法廷ドラマというのは何十年経っても進歩がないということなのでしょう。

そう言えば法廷サスペンス映画「十二人の怒れる男」は1957年制作ですが、モノクロ映画ということと、登場人物の服装がみな年代物という以外、ストーリーには古臭さは感じられず、見応えのあるものでした。

主人公は身寄りがなくストリッパーで生計を立てていた女性で、ふとしたきっかけで名門の大企業のオーナー会長家の跡継ぎとされる男性から求婚され、身分の違いを超えて男性の家族の反対を押し切り結婚したものの、当然その男性の家族、親戚、雇われ人からは白い眼で見られています。

そのような中、夫の父親で大企業の会長を務める父親が自宅で何者かに殺されてしまいます。あとはびっくり仰天な仕掛けがあったりしますので詳しくは書けませんが、途中であれれ?と、一番最初に戻って読み返してみたりと、してやられたぁって感じです。

最後はもう少し身寄りも財産もない主人公にとって、ハッピーエンドで終われるとよかったなぁと感じた物語です。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

十三の冥府 (光文社文庫) 内田康夫

いったい何作品あるのかわからないほど数多くある浅見光彦シリーズのひとつで、この作品もすでに2008年にテレビドラマ化がされています。

この浅見光彦シリーズの楽しみは、紀行もの小説の体をとっていますが、ちょっと切り口を変えて日本各地の歴史や伝承に絡めたミステリーが楽しめるということです。

その多くは有名な誰でも知っている観光地ばかりではなく、日本地図でしか知らないようなところもあり、読んでいるといつかは行ってみたいなと思わせるものです。

今回は青森が舞台です。青森といえば、私はまだ未踏の地で、ありきたりに、いつかは奥入瀬渓流、恐山、竜飛岬などに行ってみたいなとぼんやりと思っていましたが、この「十三の冥府」を読み、面白そうなところがいっぱいあるので、もっとジックリと各地を回ってみたいなという気になりました。

例えばシジミ料理が美味しい十三湖、ウミネコ繁殖地で有名な蕪島、ちょっとマニアックな戸来(へらい)のキリストの墓などなど。主人公も食べる十三湖のシジミラーメンはぜひ食べたいものです。

それはさておき、旅行ルポライター浅見光彦が行く先には不可解な死や殺人が起こり、傲慢無礼な刑事が登場しと水戸黄門のようなワンパターンですが、それでもはまってしまうとなかなか抜け出せないのもやっぱり黄門様と同じです。

こうした紀行ものとミステリーがうまくマッチした小説がテレビ2時間ドラマ(実質90分)には最適なのでしょう。見る方も読むだけではわからない当地の美しい風景も楽しめます。

今回のミステリーの謎は、細かなところでは違っていましたが、なんとなく中盤でわかってしまいました。ただ年齢も近く、顔もそっくりよく似た人同士が偶然知り合い、それを使ったアリバイのトリックというのは、ちょっと無理があるなぁって思わなくもない。

それなら時々見かけますがまだそっくりな双子が身代わりになるトリックのほうが現実的でしょう。

タイトルの「十三の冥府」はこの事件に関連して亡くなった人の数や、事件の鍵となる人が住む十三湖、そして忌み数である13をうまくかけたようです。

著者別読書感想(内田康夫)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ハルカ・エイティ 姫野カオルコ

私とほぼ同学年(1歳違い)の姫野カオルコ氏の作品は意外にも今回初めて読みます。この「ハルカ・エイティ」(2005年初出)は直木賞候補にあがったものの、残念ながら受賞には至りませんでした。

主人公は大正9年(1920年)生まれの持丸遙、本書発刊当時の2005年時点では85歳になる女性の、ほぼ一生を描いた大河小説で、そのモデルは著者の伯母とのことです。

嘘か誠かNHK朝の連続ドラマを狙っているという通り、過去の朝ドラのパターンが踏襲されています。

現代に生きる老女が過去を振り返るパターン(これは姪の作家聞いたことを書くパターン)で、その主人公は学生時代には品がよく仲のよい友達が多くのびのびと育ち、やがて太平洋戦争中のどさくさで見合い結婚し、夫はすぐに出征、残された夫の両親と厳しい時代を乗り越える。

戦争が終わり、夫は無事に帰ってきたものの、仕事がなかなか安定せず、当時としてはまだ珍しいキャリアウーマンになるべく偶然見掛けた幼稚園園長の仕事に応募し見事に就職。やがては教育委員会へと順調に出世していきます。

惜しいかなNHKが朝の番組で取り上げるには、仕事もうまくいかないのに次々と外で女に手を出す女癖の悪い夫や、30半ばにして女に目覚めて浮気を繰り返す主人公、そのような両親を見ていて距離を置こうとする一人娘と、あまりにも現実的すぎるかもしれません。

しかしこのような戦前から戦中を描いた作品を読むといつも思うのですが、吉村昭氏や井上ひさし氏ならいざ知らず、この姫野氏や浅田次郎氏や柳広司氏、北村薫氏など、戦後生まれにも関わらず、まるで見てきたようにその時代の風景をうまく描写します。

「小説家は読者を騙すのが仕事だ」と誰か作家先生が書いていましたが、「騙す」というのが違っているとしても、聞いたり読んだりしたものを自分なりに想像して表現することに長けているということなのですね。

戦国時代や江戸時代のことなら、例え事実に大きく反することを書いたとしても、小説なら許され、そしてそれが事実に反するということは誰にも証明ができないのですが、太平洋戦争前後のことならば今でもよく知っている100歳前後の人がまだ多く読者にいるはずです。

あとがきにも書かれていましたが、それに文句を付ける人も少なからず出てくるのでしょう。

著者別読書感想(姫野カオルコ)


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698
世界の書籍三大ベストセラーは「聖書」、マルクスの「資本論」、サン・テグジュペリの「星の王子さま」と塩澤実信著「ベストセラーの風景」には書かれていますが、「コーラン」や「毛主席語録」は推定では聖書に次ぐ数十億冊が出版されているそうです。

無料で配布されることもある宗教本や政治本はベストセラーとは言えないという理屈であれば、上記のベストセラーからも「聖書」を外さなければなりません。

その世界のベストセラー本は果たして日本でも売れているのだろうか?と思って調べてみました。出典はWikipedia(2013年3月20日時点)を基本としていますが、調査年度や調査方法等にばらつきがあり、中には発行元が自主的に発表している信用のおけないデータも混じっているのでその点はあしからず。

聖書など宗教や思想、政治関連書籍および漫画は除き、単一本での発行部数で多かったとされる書籍ベスト10は、

(1)チャールズ・ディケンズ著「二都物語」 2億部
(2)J・R・R・トールキン著「指輪物語」 1億5000万部
(3)曹雪芹著「紅楼夢」 1億部
(4)J・R・R・トールキン著「ホビットの冒険」 1億部
(5)アガサ・クリスティ著「そして誰もいなくなった」 1億部


(6)パウロ・コエーリョ著「アルケミスト - 夢を旅した少年」 1億部
(7)C・S・ルイス「ライオンと魔女」 8500万部
(8)ヘンリー・ライダー・ハガード「洞窟の女王」 8300万部
(9)アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子さま」 8000万部
(10)ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」 8000万部
  ※部数は推定(以下同)


とされています。この中で読んだのは「星の王子さま」「そして誰もいなくなった」と「ダ・ヴィンチ・コード」だけです。たぶん平均的な50代日本人とほぼ一致しているのではないでしょうか。

日本人が書いたベストセラーでは、太宰治著「人間失格」と村上春樹著「ノルウェイの森」が共に1200万部となっています。

「ノルウェイの森」などは多国語に訳されてはいますが、やはり日本語の壁は厚いようです。

日本国内では50万部もでれば大ベストセラーですが、人口が日本の10倍の中国では50万部ぐらいでは果たしてどうでしょうか。人口が10倍でも熱心な読者人口も10倍いるかどうかはわかりませんが。

シリーズもの、あるいは定期刊行される書籍の累計ベストセラーは、

(1)J・K・ローリング著「ハリー・ポッターシリーズ」 4億5000万部
(2)R・L・スタイン著「グースパンプス」 3億5000万部
(3)E・S・ガードナー著「弁護士ペリーメイスン」 3億部
(4)スタン&ジャン・ベレンスティン「ベレンスティン・ベアーズ」 2億6000万部
(5)子供向けゲームブック「きみならどうする?」 2億5000万部

などとなっていますが、1位の「ハリー・ポッターシリーズ」は私も数巻読みましたが、それ以外は日本ではあまり知られていません。「グースバンプス」は今でもそこそこ売れていたりするのでしょうかね?

さて日本の書籍(シリーズもの累計)では、

(1)吉川英治著「宮本武蔵」 1億2000万部
(2)細木数子著「細木数子の六星占術あなたの運命」 9300万部
(3)池田大作著「人間革命/新・人間革命」 4000万部
(4)山岡荘八著「徳川家康」 3000万部

などとなっています。おそらく累計だと1億部はいっているはずのJTB時刻表などはカウントされないのですね。定期刊行物なのに。

「宮本武蔵」全8巻は読みましたが、元々は太平洋戦争前の1930年代に新聞連載小説として連載され、その後単行本や文庫になっています。

映画化やドラマ化でも定番の作品ですが、最近の若い人には同作品を原作としたコミック「バガボンド」のほうがよく知られているのでしょう。

8巻計1億2000万部が売れたと言うことは、単純計算すると、(発売開始後80年近く経っていることを考慮しなければ)全国民の8人に1人が8巻すべてを買ったか、赤ちゃん含め全国民が一人1巻を持っているという計算になりますから想像するとものすごい数です。

余談ですが、この吉川武蔵は巌流島の決闘で終わります。巌流島の決闘以降を描いた小山勝清著「それからの武蔵(全6巻)」も意外と知られていない武蔵の晩年が描がかれていて面白かったです。

細木数子氏の占い本(シリーズ)がこれほど売れていたとは驚きです。私は読んだことはありませんが、占い本として9300万部というのはギネス記録に認定されているそうです。

これだけ売れるともう完全に左うちわの印税生活でしょう。1冊552円として著者に入る印税が1割の55.2円×9300万部=51億3千万円ですからね。ホントか?

「人間革命/新・人間革命」は創価学会第2代会長・戸田城聖、第3代会長山本伸一の半生を描いたノンフィクション大河小説とのことですが、私は読んでいませんのでなんとも、、、実際に書いた人にはそれ相応の謝礼がちゃんと渡っているのかが唯一の関心事です。

4位の山岡荘八著の「徳川家康」(全26巻)とランク外の吉川英治著「新書太閤記」(全11巻)の超長編小説は、そのうちいつか読もうと思いつつ、まだ実現できていません。

仕事を引退してからか、大病を患い長期療養するなど、暇な時間がたっぷりとできてからゆっくりと味わうことになりそうです。

次に日本がお得意分野と思われる漫画作品(シリーズ累計)で見るとどうなるでしょうか?

世界の漫画(シリーズ含む)発行部数ランキング

(1)「クラシックス・イラストレイテッド」アルバート・ルイス・カンター作 10億部
(2)「X-メン」 マーベル・コミック作 5億部
(3)「タンタンの冒険旅行」エルジェ作 3億5000万部
(4)「アステリックス」ルネ・ゴシニ(原作)、アルベール・ユデルゾ(作画) 3億5000万部
(5)「ラッキー・ルーク」ルネ・ゴシニ(原作)、モリス(作画) 3億部
(6)「ピーナッツ」チャールズ・M・シュルツ作 3億部

と、意外にも上位6位に日本漫画は出てきません。やはりここにも日本語の壁があるのでしょうか。

が、しかし7位以下は、

(7)「ONE PIECE」 尾田栄一郎作 2億8000万
(8)「ドラゴンボール」 鳥山明作 2億3000万
(9)「キャプテン・アメリカ」 マーベル・コミック作 2億1000万
(10)「スーパーマン」 DCコミック作 2億
(11)「ゴルゴ13」 さいとう・たかを作 2億

と、ようやくお馴染みの作品が登場してきます。

今後の活躍次第ですが、まだ連載中の「ONE PIECE」や「ゴルゴ13」などは十分ベスト5入りの可能性もありそうです。ドラゴンボールは連載は終わっていますが今なお人気は高く、日本はもちろん海外でも人気があります。

もうひとつ意外に思ったのは、アニメの世界では圧倒的に強いウォルト・ディズニーものがないこと。コミックから早く抜け出して映画やテレビのアニメへとシフトしたせいでしょうか。

あと下記を見てもわかりますが女性漫画(ベルバラとかガラスの仮面、花より男子とか)の販売数は意外と伸びていません。

11位以降、日本の漫画だけを抜粋すると、

 ブラック・ジャック 手塚治虫作 1億7600万部
 ドラえもん 藤子・F・不二雄作 1億7000万部
 こちら葛飾区亀有公園前派出所 秋本治作 1億5527万部
 名探偵コナン 青山剛昌作 1億4000万部
 NARUTO -ナルト- 岸本斉史作 1億2650万部
 SLAM DUNK 井上雄彦作 1億1897万部
 美味しんぼ 雁屋哲(原作)、花咲アキラ(作画) 1億1120万部
 鉄腕アトム 手塚治虫作 1億部
 タッチ あだち充作 1億部
 北斗の拳 武論尊(原作)、原哲夫(作画) 1億部
 金田一少年の事件簿 天樹征丸(原案・原作)、金成陽三郎(原作)、さとうふみや(作画) 9000万部
 サザエさん 長谷川町子作 8600万部
 キャプテン翼 高橋陽一作 8000万部
 はじめの一歩 森川ジョージ作 7550万部

となり、13作品がシリーズで1億部を超えています。シリーズものの日本の小説で1億部を超えているのは「宮本武蔵」だけですから、やはり漫画の人気はさすがと言えます。

もう何十年間も若者の読書離れが言われ続けていますが、要は難しい文学や哲学、ビジネス書から漫画本へ移行しただけではないのか?とちょっと思ったり。

私はといえば、上記の漫画の中ではブラック・ジャックは昨年の夏休みに全巻一気読みしましたが、あとは読んでいないか1~2巻程度を喫茶店で暇つぶしで読んだぐらいです。

子供の頃は漫画よりもアニメが好きであまり漫画本を読んだ記憶はありません。今も小説と比べるとやっぱり小説をとってしまいます。


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695
アリアドネの弾丸(上)(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 海堂尊

チーム・バチスタの栄光」から始まる東城大学医学部付属病院シリーズ(不定愁訴外来 田口公平シリーズ)の第5弾作品で2010年(文庫は2012年)の発刊です。

現役医師が医療を扱った作品を書くというのは過去にも例が多く、それは医師になる人というのは、多彩な才能をもった人が多いということなのでしょうか、森鴎外や手塚治虫をはじめとして渡辺淳一氏、帚木蓬生氏など、最近では「神様のカルテ」で夏川草介氏も大ヒットを飛ばしています。

医療の世界というのはまだまだ学閥や師弟関係が重要視される閉鎖的で保守的な世界ですが、海堂氏は小説の中で厚労省との関係、製薬や医療機器会社との癒着、医療事故の責任問題など多くの話題を提供してきました。

しかし現実の社会において、つい行き過ぎたところもあり、Ai(エーアイ:死亡時画像診断)の理解促進に力を注ぐあまりに東大教授から訴えられ名誉毀損で敗訴しています。

古い慣習にとらわれない医療界の中では異端児とも言える医師ですが、そう言う人達が、硬直化しているように見える医療の現場を少しずつ変えていくのかも知れません。

物語は、主人公田口公平医師が病院長に呼び出され「エーアイセンター長」に任命されたところから始まります。

このエーアイセンター、その運用主導権を巡って診療側と警察など司法側が激しく主導権を巡り争っていて、その混乱必至の中へほりこまれるという構図です。

なぜ司法が死亡時画像診断において主導権を得たいのかというと、原因が明らかでない死亡者所見は、9割は司法の検死官の状況判断、1割だけ司法解剖をおこない、警察と法医学側がすべての権限を握っていました。

しかし最近流行し始めたDNA鑑定など新技術により、誤認逮捕だったことが明らかになる例が出てきたり、死亡原因が後に問題になってきたりして警察の自信と信頼が揺らいできています。

もし原因が不明の死亡者全員分のエーアイを実施しておけば、後々問題になったときの証拠として利用できると同時に、不可解な死因や警察が捜査上隠しておきたい場合でも、隠蔽されることなく診療側が行えば公正にオープンにできるということです。

そこで診療側主導で導入されてしまうと、今後司法捜査がやりにくくなるのではという危惧があり、その運用を司法側で押さえておき、あわよくばつぶしてしまおうという目論見があるからです(もちろん小説です)。

一方では診療界としては、本当の死因を究明しデータを蓄積することで医療の発展につながります。また遺族のことを考えると、原因が特定されていなくとも現状ではわずか1割しか解剖されず、証拠も残さないまま葬られてしまうケースをなくし、絶対的な権力を握る司法の暴走を食い止めることができると考えています。

このシリーズのオールスターキャストとまではいかないものの、田口公平と同級生の島津吾郎、火喰い鳥厚労省の白鳥圭輔、医師資格と弁護士資格も持つ才媛姫宮、元碧翠院桜宮病院医師だった桜宮小百合など過去のシリーズや、シリーズ外からもチラッと登場する場面もあって楽しめます。

著者別読書感想(海堂尊)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

パルテノン (実業之日本社文庫) 柳広司

トーキョー・プリズン」(2006年)「ジョーカー・ゲーム」(2008年)で完全にブレークした柳広司氏のこの作品は、それらの発表前、2004年に刊行、2010年に文庫化された古代ギリシアを舞台にした小説で、プロローグでも触れられていますが、柳氏が若い頃にギリシアをひとりで訪れた時この構想を考えついて一気に書き上げたもののようです。

巻末の解説で宮部みゆき氏も書いていますが、この著者柳氏の作品は、様々な時代をまるで見てきたかのように小説の中で再現して見せます。「トーキョー・プリズン」は終戦直後、「ザビエルの首」は400年前の戦国時代、そしてこの「パルテノン」は紀元前4世紀のギリシアと、その歴史考察力と創造力は見事です。

物語は「巫女」「テミストクレス案」「パルテノン」の三つの物語にわかれていて、書かれた時期は別々のようですが、それぞれに少しずつ関係する連作ともいえるものです。

時は紀元前5世紀から4世紀にかけてのギリシアの話しで、三度にわたるペルシア軍が襲ってくるペルシア戦争と、その後栄華を極めた都市アテナイ(首都アテネの古名)が誇るパルテノン神殿の建築、アテナイとスパルタの内戦などを中心とした歴史ストーリーで、いずれにしても日本人には馴染みの薄いギリシア古代史が、相当脚色されているとはいえ面白く読むことができます。

著者も脂がのった40代半ば、まだ大きな賞には恵まれていませんが(「ジョーカー・ゲーム」で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞は受賞されていますが)、近いうちにきっと大物を釣り上げるそうなのは間違いないでしょうから、ますます楽しみな作家さんです。

著者別読書感想(柳広司)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ニライカナイの語り部―作家六波羅一輝の推理 (中公文庫) 鯨統一郎

2008年に発表、2010年に文庫化された「作家六波羅一輝シリーズ」の二作目です。同シリーズ第1作目の「白骨の語り部 - 作家六波羅一輝の推理」と第3作目「京都・陰陽師の殺人―作家六波羅一輝の推理」はテレ朝系土曜ワイド劇場でそれぞれ2010年と2012年にドラマ化がされていますのでそちらを先に見て知った方も多いのではないでしょうか。

物語の主人公はデビュー作こそヒットしたものの、次作がなかなか書けずに出版界からも忘れ去られそうになっているミステリー作家で(決して著者そのものを反映しているというわけではないでしょう)、このシリーズは筆者お得意の歴史もの+西村京太郎氏や内田康夫氏らが得意とする紀行ものを合わせた推理小説と言っていいでしょう。

「ニライカナイ」という言葉、普通の関東在住関西人にとっては初めて聞く言葉で、Wikipediaによると「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。」「遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。」とのことで、よくわかりませんが、なんとなくロマンがありそうです。

その伝承が残る地域にリゾート施設を作ろうとする人と、建設に反対をする住人の対立があります。主人公達がその地に取材に訪れたあと、関係者が何者かに殺害されるという事件が起き、「ニライカナイ」の伝承とリゾート施設建設に絡む利権を暴き出し、主人公の作家と相棒の新人編集者が謎を解いていくこととなります。

物語の中には、ジュースの中の氷を紙ナプキンで釣り上げる方法やスパムメールの語源など、ストーリーとは関係がないうんちく話しが盛り込まれていて、そういうところもこの作者の作品ならではの楽しみ方です。特にデビュー作「邪馬台国はどこですか?」は一番のお勧めです。

著者別読書感想(鯨統一郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

そして、警官は奔る (講談社文庫) 日明恩

昨年読んだ「鎮火報」が、たいへん面白かった日明恩(たちもりめぐみ)氏の作品で、2004年(文庫は2008年)発刊されています。あとで知りましたが、この作品はシリーズ化されていてこの本が第2作目です。シリーズ1作目は「それでも、警官は微笑う」が2002年に発刊されています。

しまったなと思うのは、登場人物などその1作目からの流れに関係すると思われることが結構でてきますので、この2作目から読むとなにのことを言っているのか意味不明の箇所がいくつかあります。

シリーズものの場合、どれから読んでも影響がない作品もありますが、そういうところを気をつけて読まなければいけませんね。

寡黙な警視庁蒲田署の刑事武本と、武本を慕う元部下で現在は退官している潮崎の二人を主人公としたこの作品は、外国人の不法滞在とその子供達がテーマとなっています。

おそらくシリーズ1作目でなにかが起きて警視庁を退官してしまったらしい潮崎が、この作品では国家I種試験に合格し、いわゆるキャリアとして警察庁入庁をほぼ決めてから先輩武本の前に現れます。ところがこのコンビがどうして生まれてどういう関係なのかは2作目から読むとわかりません。つまり1作目から読み直せということなのかしら。

多くの警察物小説にも共通しますが、警察内部のことが詳しく書かれていて、よく調べたなと感心します。特に女性作家でこのような男の刑事を主役とする小説を書いている人は少ないでしょう。

ちなみに国家I種試験でキャリアの道を歩むのと、通常、高卒・大卒で巡査から入るのとでどれだけの差があるかというと、I種合格者が入庁し7年経つと自動的に階級で言うと上から5番目の警視になります。

大学卒業と同時に22歳で入庁すれば29歳で一般的に各地の警察署長に多い警視の階級になれるわけです。

一方でもっとも下の9番目の階級で巡査から入れば警視まで上がるのは難しく(キャリアも含め警察官全体のわずか2.5%)、しかも順調に昇任したとしても45歳以上となります。

実務能力があろうとなかろうと関係なく、入るときに大きな格差があるわけです。

読み進めていると、堂場瞬一氏の警察小説「刑事・鳴沢了シリーズ」と雰囲気が共通するところがあります。同シリーズは全部を読みましたが、いま思うと昇進や権力には興味がなく、勧善懲悪、クールだが心の中は温かいと理想に近い刑事で、ちょっと現実的にはあり得ねぇと思ったり。

正直に言うと「鎮火報」の主人公のような軽いノリの軽快なストーリーを期待していたのですが全然違っていて、どちらが本当の日明恩氏の作風なのかよくわからなくなりました。

まぁ両方っていう答えなのでしょうけれど。

しかしこの手の刑事を主人公とした小説は数多くあり、デビュー作からのシリーズとは言え、厳しく言えばこの作者のものでなければならない特徴も理由も特に見つけられません。それゆえにこの作者には刑事以外を主人公とした作品を強く望みたいところです。

著者別読書感想(日明恩)


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対岸の彼女 (文春文庫) 角田光代

2004年に発刊(文庫は2007年)された直木賞受賞作品です。小説のスタイルとしては二人の主人公がいて、そのうちのひとりは高校生だった頃と現在、もうひとりの主人公は現在だけで、それぞれの視点で過去と現在が交互にいったりきたりします。

女子高生の葵は中学校時代からどうも同級生同士の人間関係に不安があり、横浜の中学校ではいじめに遭い、高校へ進学するときには両親に頼み、母親の実家がある群馬県の高校へ入学することにします。そこで魚子(ななこ)といういたってマイペースな同級生と知り合い、親友になっていきます。

その葵は東京の大学卒業後に旅行会社を起業しますが、新規事業として家庭向けの清掃サービスを立ち上げるため従業員を募集します。その従業員に応募してきたのが来たのがもうひとりの主人公小夜子です。

小夜子は結婚してまだ小さな子供を抱えていますが、同じような子供を抱える母親同士のつき合いなど人間関係が苦手で、それが子供にも影響していくことを日々恐れています。

夫や姑の反対を押し切って、清掃の仕事を覚え、開拓していきますが、やがて葵との関係に亀裂が入り始めます。

女性の感性で書かれているので、なかなか男、特に古い男には理解しがたい感覚のところが多々ありますが、そういうものなのかぁとあらためて結婚した女性の悩みを知ることにも。

主人公二人ともいつうつ病になってもおかしくなさそうな、よく言えば繊細、悪く言えば神経質っぽいところで、読み進めていくのが重くつらかったりしますが、最後の展開で救われた思いをしました。

著者別読書感想(角田光代)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

発火点 (講談社文庫) 真保裕一

真保氏の作品は過去に数多くを読んでいますが、テーマとする幅が広く、また想定される読者層にも偏ったものではなく、しかも長編が多いので読み応えを感じます。この「発火点」も560ページを超える長編です。

デビュー作の「連鎖」は公務員を、「ボーダーライン」ではロサンゼルスの日系人探偵、映画にもなった「ホワイトアウト」はダムの運転員を、「奇跡の人」は脳死から復活した記憶喪失の男、「奪取」は偽札作り、「朽ちた樹々の枝の下で」は森林作業員を、「黄金の島」ではベトナム難民と日本のヤクザを、「アマルフィ」では外交官をと、バラエティにとんでいて、どの作品をどこから読んでも飽きません。私にとっては「読みたい本がないときの真保頼み」となっています。

「発火点」は2002年に初出(文庫は2005年)の小説です。主人公は21歳の若者で過去に父親を父親の幼なじみに殺されるという過去を持っています。

その父親を失った経緯や理由が、本文中ではずっとチラみせだけで、なかなか本題に入ってこないので、ちょっとイラっときてしまいます。

ストーリーは家を出てアルバイトを転々としすさんだ生活をおくる現在と、父親が殺された12歳の頃の話しが行ったり来たりするのは上記角田光代氏の「対岸の彼女」と同じような構成です。

著者自身、高校を卒業後、志望していた企業に落ち、その後多くの仕事を転々とした経験があり、21歳の鬱積した青春をおくっている主人公には、著者のその頃の思いや考え方が反映されているのかなと勝手に判断しています。と書いたあとで文庫の「あとがき」を読んだらそのようなことが書かれていました。

著者別読書感想(真保裕一)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

泥棒は詩を口ずさむ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ローレンス・ブロック

初出は1979年というからかなり前に書かれた作品(文庫は1994年刊ですが現在は廃刊?)です。著者ローレンス・ブロックはチャンドラー、パーカー亡き後、私が認める数少ない読ませるハードボイルダーですが、この作品は欠かさず読むアル中探偵「マット・スカダー・シリーズ」や切手収集が趣味の殺し屋「ケラーシリーズ」ではなく、コメディタッチで軽めの「泥棒バーニイ・シリーズ」の3番目の作品です。

古書店「バーネガット書店」を営む天才的泥棒のバーニーは、来店客から稀覯本を高価で手に入れたいが、それがいまどこにあるかということを聞かされます。

つまり彼が泥棒だということを知っていて、高額を支払うから盗んできてほしいと頼まれるわけです。

高性能なセキュリティをかいくぐり、無事大富豪の家に忍び込み、他の宝石や現金には一切手をつけず、その稀覯本を手に入れますが、その後、いざ引き渡しをするところで見事に騙され、稀覯本は奪われてしまいます。

おまけに薬で眠らされている間に拳銃を握らされ、銃殺された死体と一緒に置き去りにされているところに警察官が押しかけてくるという絶体絶命のピンチに陥ります。

ま、ちょっと設定には無理がありすぎるのと、コメディと絡めながら妙に推理小説っぽく書かれているのがちょっとどうかと思いますが、元々推理小説家というジャンルではないので仕方がないかなと。

なぜ「マット・スカダーシリーズ」が大ヒットして、こちらのシリーズがイマイチなのかがわかる作品でもあります。このシリーズを読むのはこれで2冊目ですが、もういいかな。

ちなみにマット・スカダーシリーズでは「八百万の死にざま」「死者との誓い」、殺し屋ケラーシリーズでは短編連作の「殺し屋」と長編「殺しのリスト」がお勧めです。

著者別読書感想(ローレンス・ブロック)


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