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教団X (集英社文庫) 中村文則

2005年に「土の中の子供」で芥川賞を受賞した著者の2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説です。

この著者の作品は過去に読んだと思っていましたが、勘違いで読むのは初めてです。書店で名前をよく目にしていたためか読んだとばかり思っていました。

単行本で570ページ、文庫で600ページを超える長編ですが、話の流れやテンポはよく、苦になりません。訳あって単行本で読んだので、その本の重さを支え続けるのには辟易しましたが、、、

最終的にはオーム真理教のように若者を取り込みながら拡大していくカルト集団の暴走が描かれていますが、そうした宗教はいつの時代でもどこの国でも起きうることで、ありえねぇと一笑に付してしまうことは出来ませんでした。

また同時に、まともな集会や団体でも、そうしたカルトの疑いをかけられてしまうと、国家権力やマスメディアに一方的に叩かれ存続すらできなくなってしまうという見本でもあるでしょう。難しいですね。

オーム事件では多くの人が犠牲となり現在でも後遺症に苦しむ人がいます。この教団Xのように、現役の自衛隊員を洗脳して取り込み、他国へ攻撃を仕掛けるようなことが起きると、国内問題で済まなくなってきます。逆のケース(他国の軍人が暴走して日本を攻撃する)も考えられます。

わかりやすい国際テロリストはもちろん、そうした洗脳などによる想定外の出来事が起きる可能性があることを国際社会の中で共有し、互いに冷静な判断と対応をおこなう取り決めが必要なんだろうなと思った次第です。

宗教関係の小説には、常になにか重苦しい雰囲気がつきまといますが、そうした悪意的に決めつけもどうかとは思いますが、今はそれが社会の通念になっているのでしょう。

気持ち悪さと、そんな単純なことではないだろう?という思いなどが混ざり合って、考えさせられる小説でした。

★★☆

著者別読書感想(中村文則)

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新個人主義のすすめ (集英社新書 (0427)) 林 望

著者の名前をもじって「りんぼう先生」というのはずっと以前から知っていましたが、著作を読むのはこれが初めてです。ちょうど激しい競争を勝ち抜いてこられた団塊世代の方ですね。

この新書は2008年に発刊され、すでに11年が経過していますが、数多くの著作の中でもよく売れているようです。

個人主義とは、全体主義とか集団主義との対語で、個人の権利や自由を尊重する考え方で、古くから集団を作ってその中だけで生きてきた農耕民族の日本人がもっとも苦手とする考え方です。


著者はとにかく英国流の個人主義が大好きで、そればかりをまるで恋は盲目的に語りかけますが、そこまで力が入ると逆にだんだんと冷めてきてしまうのが残念です。

そして、こんな日本人の集団主義的な組織では、日本が戦争に勝てるわけがないと断言されていますが、日本が対外戦争で負けたのはあの1回とせいぜい援軍として送った白村江の戦いぐらいで、元寇から日清・日露・第一次世界大戦などその他多くの戦争ではすべて日本がすべて勝っているという著者にとって不都合な事実を無視するのもどうでしょうか。

新・個人主義の理想もいいのですが、せっかく日本独自に育んできた集団主義を下敷きにし、新・集団主義を形成していく方が日本人に合った良いものが、長い時間をかけずとも作れそうな気がしますがどうなのでしょうね。

★★☆

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暗夜を渉る―ジェッシイ・ストーン・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ロバート・B・パーカー

すでにスペンサーシリーズで人気を博していた著者が、新たな主人公を用い1997年に発刊(翻訳版は1998年)された新シリーズ「ジェッシイ・ストーン・シリーズ」の第1作目の作品で、翻訳文庫版は2001年に発刊されています。

このシリーズは、別の作家が後を引き継いで続編を出していると言うことですが、翻訳はされていないのか見かけません。

そしてこのシリーズは、2010年に著者が亡くなるまでに、下記の合計9作品が作られています。

作品名 原題 発刊年
暗夜を渉る Night Passage 1997
忍び寄る牙 Trouble in Paradise 1998
湖水に消える
Death in Paradise 2001
影に潜む Stone Cold 2003
訣別の海 Sea Change 2006
秘められた貌 High Profile 2007
容赦なき牙 Stranger in Paradise 2008
夜も昼も Night and Day 2009
暁に立つ Split Image 2010

ストーリーは、主人公がロサンゼルス警察の殺人課にいた当時、女優志望の女性と出会い結婚するも、その後妻の浮気が発覚したことで悩み、アルコール依存となり離婚します。

そして勤務中に酒を飲むようになりロス市警をクビになりますが、たまたま遠く離れた東海岸の小さな町で保安官を募集していてそこで採用されます。

1からやり直そうとアメリカ大陸を縦断するルート66を使って西海岸から東海岸までクルマで走ります。その大陸を横断するロードムービー的な情感が描かれていて素晴らしいです。

そして到着した町の保安官として就任し、実質的に町を牛耳る大物(=悪)と対峙するという、お決まり?の警察小説になっていきます。

このシリーズの舞台は、スペンサーシリーズがメインとするボストンにほど近く、この第1作目にはスペンサーシリーズに時々登場するマフィアのボス、ジノやその用心棒のガンマン、ヴィニー・モリス、州警察のヒーリー警部なども登場してきます。

逆にスペンサーシリーズの「真相」にもジェッシイ・ストーンが登場してきたり、行き来があって、馴染みの読者は思わずニヤリとなります。

ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ 

スペンサー(Spenser)シリーズ ロバート・B・パーカー著 一覧

新しい主人公登場という回でもあって、ボリュームも内容も濃く、なかなか面白く出来上がっていました。

ただスペンサーのようにハードボイルドか?って思って読むと、愛する女性に出て行かれてグジグジと悩み割り切れない生煮えの半熟卵って感じで、著者の作品としてはまたひと味違った面を味わえてそれはそれで楽しいかも知れません。

★★★

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)

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何者 (新潮文庫) 朝井 リョウ

2012年単行本、2015年文庫本が発刊された著者6作目の小説で、第148回直木三十五賞の受賞作です。男性では最年少(24歳)での受賞となりました。

また2016年には三浦大輔監督、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉などの出演で映画化されています。

内容は、2005年頃まで続いた就職氷河期が終わり、やや新卒就職戦線も楽になってきた2010年頃の話しですが、大手有名企業に就職するのは相変わらずハードルが高い頃でした。

ネット情報やSNSを駆使し、様々な新たな就職活動がおこなわれだした頃でもあり、そうした一喜一憂の就職活動が4名の男女を通して描かれています。

主人公はアルバイトをしながら学生の劇団に所属し、台本を書いたり公演をおこなったりしています。2DKのアパートでシェアルームしている同級生の友人はバンドのボーカルとして活動しています。

そして同じアパート内に、同じ大学で就職活動をしている女子学生がいて、共通の友人同士の関係で4人がお互いに情報交換しながら就活の共同戦線を張ることにします。

しかし、うまく行く人もいれば、焦りばかり募り、落ちてばかりする人もいて、だんだんとその仲間意識にヒビが入っていきますが、その辺りの感情の動きがうまく捉えられていて、面白い作品となっています。

私が就職したのはもう40年も前のことで、時代もその方法も全然違い、へぇー!と驚きの連続でした。

もっとも私は当時就職活動らしいことはほとんどせず、「どこでもいいや、雇ってくれるなら」というやる気のなさと意識低い系でしたので、有名どころか中堅企業にもひっかからず、社員数わずか20数名という零細企業に入ることになります。

でもその会社が40過ぎで退職する頃には、グループ企業を合わせると社員数は数千名という大企業になっていたわけで、人生なんてホントわかりません。

私のことはともかく、これから就職活動する人が、この実体験に近そうな小説を読むと、なんだか就活って面倒くさそうだとか、気持ちが落ち込みそうだと思われて心配です。もちろん就活って決して楽しいものではないですけどね。

★★☆

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リアルワールド (集英社文庫) 桐野夏生

2003年に単行本、2006年に文庫化された小説です。2003年と言えば、著者にとっては1999年に「柔らかな頬」で直木賞を受賞した後、多くの賞を次々と奪取していった頃で、ノリにノっていた時期です。

どういう小説かまったく知らずに読み始めましたが、さすがに売れっ子作家さんの作品だけあって、外れはないです。

主人公が現代の女子高校生という、私にとっては一番感情移入できない苦手な作品でしたが、漫画を読む感じで、次々とテンポよく事件が展開していき、ボリュームも少ないのでサクッと読めて退屈はしません。

若い人達の感情がこの小説に登場するような人ばかりだと、もっと複雑で混乱した社会になるのでしょうけど、これはあくまでも知的な作家さんがエンタメとして書いたもので、そう割り切って読むことを求められます。

それでも登場する女子高生が「死は誰もがいずれ経験するんだから、むしろわかりやすい結末を選んだっていう意味で敗北に近い。相手を殺すのは、自分の憤怒や屈辱や欲望に落とし前を付けただけで、それで問題が終了した訳じゃないのだから、取り返しがつかないことじゃない」とか「過酷な電車通学を選んだ両親への天誅。それが証拠に、謂われのない悪意を受けることがしばしばあったし、私は必要以上に邪険に扱われた。これが現実なのだ」と、心の中で考えるとか、あまりにも突飛推しもなく飛躍しすぎです。

著者の作品は調べると過去に「顔に降りかかる雨」「グロテスク」「残虐記」「東京島」「ファイアボール・ブルース」「ファイアボール・ブルース2」「水の眠り 灰の夢」の7作品を読んでいて、これが8作目です。どれも悪くない作品でした。

もっともリアルなことから遠そうで、破天荒なフィクションの世界を書いてくれる作家さんと言うことで、全般的に私の評価は高いです。

★★☆

著者別読書感想(桐野夏生)

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