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空き家の問題は年々深刻になってきていますが、空き家でも都市部やその近郊にあるならば、リフォームをして住めるようにしたり、倉庫や作業場として貸し出したり、最終的には更地にして売っぱらえば、多少でも財産価値があります。
地方の住宅地にある空き家も、相続の問題(遺産相続人が離れたところに住んでいて放置)が起きそうですが、限界集落地でもなければ、最悪は行政が対処(現在は空き家対策特別措置法)することで、荒れたまま長期的に放置とはならないでしょう。
「危険な空き家」自治体の撤去費用 3年間で17倍に(NHK)
「危険な空き家」の撤去に、昨年度、全国の自治体が投じた費用は合わせて3億8000万円あまりにのぼり、3年間で17倍と急増 |
そうした空き家の中で特に問題になりそうなのは、1970年代の第一次別荘ブームと、その後バブル時代の1980年代に起きたリゾート(別荘)ブームに建てられた、「市街地から遠く離れた場所に建てられた住宅(別荘)」が、40~50年の時を経てすっかり朽ち果て、しかも持ち主がすでに亡くなっていたり、権利関係が複雑だったりして、壊すに壊せず、かと言って電気や水道など公共インフラの維持は必要で面倒なことになってきています。
当時別荘として購入されたリゾートマンションも同様です。
別荘は統計上持ち主がいて、空き家ではないので、統計上は空き家のカウントには含まれていません。
元々別荘は「避暑地」というイメージがあるように、エアコンがまだ一般的でない時代に、裕福な人を中心に、暑い都会から逃れてくる場所で、その他にスキーやマリンスポーツなど趣味が高じて、ホテルの代わりに別荘を購入するとかでしょう。
ところが、すでに大都市圏に暮らす場合、エアコンがない生活は考えられず、昔は贅沢品と言って生活保護を受けている世帯では設置ができなかったこともありますが、現在は地域によりますがエアコンは死活問題として認められているぐらいです。つまり避暑としての役割はもうないと言うことです。
また、80年代頃の空前のスキーブームも遠い過去となり、古びたカビ臭い別荘に泊まるより、プールや温泉など施設が充実したホテルに泊まりたいと当たり前に考えるようになり、古い別荘の需要はますます下降気味です。
今まで深刻な社会問題として取り上げられてきた、住人が死亡したり老人ホームに入った後の住宅の空き家問題に加え、数は少ないとは言え、長年使われていない別荘が、今後急速に表面化してきて、社会問題化してくるのではないかなと危惧しています。
なぜ問題かと言うと、別荘の場合は、特定の人がずっと住んでいたわけではないので、住民票や地縁がなく、持ち主や相続者が不明だったり、所有者が複数いたり、また登記簿を見ても故人だったり共同名義だったりして不備が多そうだからです。
さらにある程度の規模のエリア内の別荘地やリゾートマンションの場合は、そこを終の棲家として永住している人もいますので、限界集落のように期限を決めて廃村にしたり、取り壊したりできないこともあります。少ない住人のためだけに水道・電気・ガス・通信・エレベーター・施設管理・道路等のインフラを維持するのはとても高コストです。
そうした人が来なくなった荒れた空き家や別荘が増えると、防犯上、衛生上、倒壊の危険性、治安悪化など様々な影響が出てきます。
ところで別荘って各都道府県にどれぐらい建っているかご存じでしょうか?
一般的に別荘と言えば、長野県(軽井沢など)や、栃木県(那須高原など)、静岡県(伊豆高原など)などが有名ですが、スキーが好きな人は北海道や東北に持ったでしょうし、マリンレジャーが好きな人は千葉県や和歌山県など、温泉好きなら、群馬県や山梨県など、登山が趣味なら岐阜県や富山県などにも多いでしょう。
その他にもゴルフ好きなら千葉県や茨城県、趣味で家庭農園をするなら山梨県や埼玉県、千葉県といった様々な理由や事情で全国各地に散らばっています。
国内の富裕層の中でもさらにその上位者は関東在住者に多いため、有名な別荘地も関東を中心にした場所が多いというのが特徴ですが、バブルの頃の別荘購入者は富裕層だけでなく、全国に散らばっています。
別荘の数を調べようとあちこち探し回って、総務省統計局公表の「平成30年住宅・土地統計調査」から調べてみました。
「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 全国・都道府県・市区町村」によると、別荘は全国に260,800軒あり、空き家の総数8,488,600軒と比べるとわずか3%に過ぎませんが、空き家の場合はリフォームや土地として市場で流通しやすい反面、別荘の売買は、特に古いものはそう簡単ではないでしょう。
都道府県別の別荘数、多い10県と少ない10県は下記の表の通りです。
長野県や静岡県が多いというのは実感と同じですが、沖縄県や北海道も多いのではと思っていましたが、沖縄県は27位、北海道は13位でした。やはり居住地から「クルマで行ける範囲」というのが理想だったようです。
関西圏では、9位に六甲山や淡路島、有馬温泉などがある兵庫県、11位に白浜などのリゾートや温泉がある和歌山県がありますが、やはり上位の多くは関東圏からクルマで行ける場所が圧倒的に多くなっています。
人口や世帯数が減ることで、住宅の空き家が増えていることを示す都道府県別の空き家率と、別荘数との関係について調べてみます。
まず、平成30年の空き家率の高い都道府県は、(1)山梨県(2)和歌山県(3)長野県(4)徳島県(5)高知県・鹿児島県(7)愛媛県(8)香川県(9)山口県(10)栃木県となっています。
空き家率が高い(上位10)上に、別荘も多い(上位10)都道府県は、長野県、山梨県、栃木県ということになります。今後、このあたりの別荘が、空き家と同様、社会問題化していくかも知れません。
こうしたことから、今やタダ同然で手に入れられる「古い別荘を元にした新しいビジネス」がなにかできないか、考えてみるのも楽しいかも知れませんね。
例えば「一定期間、戦争難民を受け入れて、子供には教育を、大人には働く技能を身につけてもらう」とか、国際貢献になり、人口減少社会にマッチするかも知れません。
【関連リンク】
1341 最新の住宅と空き家統計について語る
1156 空き家バンクの無能ぶりと空き家に思う
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1053 空き家問題を考える
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